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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022123480
(43)【公開日】2022-08-24
(54)【発明の名称】鋳造品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22C 9/10 20060101AFI20220817BHJP
   B22D 17/24 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
B22C9/10 M
B22C9/10 S
B22C9/10 R
B22D17/24 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021020816
(22)【出願日】2021-02-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005256
【氏名又は名称】株式会社アーレスティ
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】今井 啓太
(72)【発明者】
【氏名】片山 操
(72)【発明者】
【氏名】久保田 実
【テーマコード(参考)】
4E093
【Fターム(参考)】
4E093NA01
4E093NA02
4E093NA10
4E093NB01
4E093NB07
4E093QA04
(57)【要約】
【課題】置中子に離型剤を塗布する作業、成形後の置中子の取り出し作業を不要にでき、置中子の取り出し作業による鋳造品の損傷の補修作業を生じ難くできる鋳造品の製造方法を提供すること。
【解決手段】鋳造品の製造方法は、金型のキャビティ内に置中子を配置するセット工程と、置中子が配置されたキャビティ内に充填した溶湯を凝固させて鋳造品を得る鋳造工程と、金型から鋳造品を離型する離型工程と、鋳造品に鋳包まれた置中子を完全に切削除去して穴を形成する除去工程と、を備える。置中子の材料は、鋳造品の材料と同じである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型のキャビティに溶湯を充填して鋳造品を成形する鋳造品の製造方法であって、
前記キャビティ内に置中子を配置するセット工程と、
前記置中子が配置された前記キャビティ内に充填した溶湯を凝固させて前記鋳造品を得る鋳造工程と、
前記金型から前記鋳造品を離型する離型工程と、
前記鋳造品に鋳包まれた前記置中子を完全に切削除去して穴を形成する除去工程と、を備え、
前記置中子の材料は、前記鋳造品の材料と同じである鋳造品の製造方法。
【請求項2】
前記置中子は、前記鋳造工程において、前記金型の中で前記鋳造品と同時に成形する請求項1記載の鋳造品の製造方法。
【請求項3】
前記置中子は、前記鋳造品とは異なる鋳造品を成形する金型の中で、前記異なる鋳造品と同時に成形する請求項1記載の鋳造品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鋳造品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、金型のキャビティ内に突出した中子を引き抜いて鋳造品に穴を形成する鋳造品の製造方法が開示されている。そのほかに、鋳造品に穴を形成するために、置中子をキャビティ内に配置して、成形後に鋳造品から置中子を取り外す方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-59946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし上記技術では、置中子に離型剤を塗布する作業、成形後に置中子を取り出して穴を形成する作業などの付帯作業が生じるという問題点がある。さらに、置中子を取り出すときに鋳造品の擦りキズなどの損傷が発生しやすいから、鋳造品の補修作業が生じやすくなるという問題点がある。
【0005】
本発明はこれらの問題点を解決するためになされたものであり、置中子に対する付帯作業を不要にでき、鋳造品に対する補修作業を生じ難くできる鋳造品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明の鋳造品の製造方法は、金型のキャビティ内に置中子を配置するセット工程と、置中子が配置されたキャビティ内に充填した溶湯を凝固させて鋳造品を得る鋳造工程と、金型から鋳造品を離型する離型工程と、鋳造品に鋳包まれた置中子を完全に切削除去して穴を形成する除去工程と、を備える。置中子の材料は、鋳造品の材料と同じである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の鋳造品の製造方法によれば、除去工程において、置中子を完全に切削除去して穴を得るから、置中子に対する付帯作業を不要にでき、鋳造品に対する補修作業を生じ難くできる。置中子の材料は鋳造品と同じ材料であるから、置中子の材料が鋳造品の材料と異なる場合に比べて、溶湯と置中子との化学反応が生じ難い。除去工程において、化学反応によって生じた反応層を取り除く必要がないから、穴の寸法精度を向上できる。さらに鋳造工程において、置中子付近が最終凝固部でなくなり、溶湯のうち置中子に接している部分が、それ以外の部分に比べて早く冷やされ早く固まるので、鋳造品のうち置中子を除去して形成される穴の鋳巣の露出を低減することができる。
【0008】
請求項2記載の鋳造品の製造方法によれば、鋳造工程において、置中子は同じ金型の中で鋳造品と同時に成形されるから、請求項1の効果に加え、置中子を製造するための金型を別途製作する工程や置中子を鋳造および切削等により製造する工程がいらなくなる。
【0009】
請求項3記載の鋳造品の製造方法によれば、置中子が使用される鋳造品とは異なる鋳造品を成形するための金型の中で、鋳造品とは異なる鋳造品と同時に成形されるから、請求項1の効果に加え、置中子を製造するための金型を別途製作する工程や置中子を鋳造および切削等により製造する工程がいらなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施の形態における金型を型締めした時の断面の模式図である。
図2】(a)は入れ子の斜視図であり、(b)は置中子の側面図および(c)は置中子の背面図である。
図3】(a)は置中子が切削除去される前の鋳造品の断面の模式図であり、(b)は置中子が切削除去された後の鋳造品の断面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は一実施の形態における金型10を型締めした時の断面の模式図である。
【0012】
金型10は、低圧鋳造、重力鋳造、ダイカスト鋳造および金型を使用するその他の鋳造方法に用いられる。金型10は、第1型1と第2型2の一対の金型を備える。第1型1は、図1における紙面上向きに動作する。第1型1及び第2型2に配置される第1嵌込型11と第2嵌込型12は、互いに型締めされてキャビティ13を形成する。キャビティ13に充填された溶湯によって鋳造品40(後述する)が成形される。金型10は、第1嵌込型11又は第2嵌込型12が配置されるそれぞれのおも型の図示が省略されている。
【0013】
第2嵌込型12には、入れ子20、引き抜き中子15が配置される。入れ子20のキャビティ13側の先端に置中子30が配置される。第1嵌込型11には、キャビティ13表面のうち第1嵌込型11が形成する部分の表面から突出可能な複数の押出ピン(図示しない)を備える。本実施の形態では、入れ子20及び引き抜き中子15は第2嵌込型12に配置されているが、入れ子20及び引き抜き中子15の少なくとも一つが第1嵌込型11に配置されても良い。鋳造品40の形状にもよるが、引き抜き中子15は省略できる。
【0014】
入れ子14は、第1嵌込型11に取り付けられている。入れ子14の材料は、例えば、耐溶損性、耐ヒートチェック性が高く、熱処理歪みの少ない材質であるSKD6及びSKD61などの熱間工具鋼が用いられる。入れ子14は、キャビティ13内に溶湯が充填されない部分を形成するための部材である。
【0015】
引き抜き中子15は、溶湯の凝固後に引き抜かれる部材である。引き抜き中子15の材料は、例えばSKD6及びSKD61が用いられる。引き抜き中子15は、第2嵌込型12にキャビティ13とは反対側へ引き抜き可能に挿入され、引き抜き中子15の先端はキャビティ13内に突出している。
【0016】
金型10は、キャビティ13の他に、置中子30を同時に成形するための別のキャビティ16が、第1嵌込型11及び第2嵌込型12を型締めした入れ子17及び入れ子18によって形成される。入れ子17は第1嵌込型11に取り付けられ、入れ子18は第2嵌込型12に取り付けられている。第1嵌込型11及び入れ子17には、キャビティ16表面のうち入れ子17が形成する部分の表面から突出可能な複数の押出ピン(図示しない)が設けられている。
【0017】
図2(a)は入れ子20の斜視図であり、図2(b)は置中子30の側面図であり、図2(c)は置中子30の背面図である。
【0018】
図1及び図2(a)に示すように入れ子20は、第2嵌込型12に挿入される軸部21と、キャビティ13側の先端部22と、を備える。軸部21は、キャビティ13から離れるにしたがって太くなるようにテーパ状に形成されている。先端部22は、キャビティ13が形成する表面に沿って配置される。先端部22は、置中子30の取付部31(後述する)が取り付けられる嵌合部23が形成され、嵌合部23の周囲には置中子30が配置される座部24が形成される。
【0019】
入れ子20は、金型10が破損しても直接金型10を交換、修理しなくても済むように交換可能に金型10に挿入される部材である。入れ子20は、第2嵌込型12に配置されて繰り返し使用される。入れ子20の材料は、熱伝導率が置中子30の材料と同程度か、置中子30よりも高い材料を使用するのが望ましい。この場合、溶湯から置中子30、置中子30から入れ子20に熱が伝わり、溶湯内の熱を外に放出しやすくなり、置中子30の周辺部分の溶湯を冷却しやすくすることができる。
【0020】
図1図2(b)及び図2(c)に示すように置中子30は、入れ子20の嵌合部23に取り付けられる取付部31と、キャビティ13内に配置される突出部32と、を備える。突出部32の中心線の延びる方向は、取付部31が入れ子20から取り外される方向と異なる。突出部32の中心線は、突出部32の断面の重心を通る直線である。取付部31の形状は、入れ子20の嵌合部23の形状に対応して嵌合する形状に形成される。
【0021】
突出部32は、キャビティ13側の先端の小径部34と、取付部31側で小径部34よりも径が大きい大径部35と、を備える。小径部34と大径部35とが連絡する隅は、面取りが施されている。大径部35の取付部31と連絡する面は、段差を有する段差部36が形成されている。段差部36は、入れ子20の座部24に対応して置中子30の位置決めをする部分である。
【0022】
突出部32は、突出部32の外周の周方向に等分した2か所に、突出部32の中心線が延びる方向に沿って溝33が設けられている。溝33は突出部32の外周よりも置中子30の内側に凹んで、小径部34及び大径部35の外周に設けられている。溝33は、小径部34及び大径部35の突出部32のキャビティ13側の先端まで延びている。
【0023】
置中子30の材料は、溶湯の材料と同じである。置中子30の材料は、溶湯と同じ材料であるから、溶湯との化学反応を生じ難い。
【0024】
図3(a)及び図3(b)を参照して鋳造品40を説明する。図3(a)は置中子30が切削除去される前の鋳造品40の断面図である。図3(b)は置中子30が切削除去された後の鋳造品40の断面図である。図3(b)は、鋳造品40の一部の図示が省略されている。
【0025】
図3(a)に示すように、置中子30が切削除去される前の鋳造品40は、本体部41と、置中子30を鋳包む鋳包み面42と、除去部43と、本体部41に設けられた止まり穴44と、を備える。鋳造品40は、例えば自動車部品、船舶部品、航空機部品および光学機器部品に用いられる。本体部41は、切削除去されずに残る部分であり、自動車部品などの製品の本体部分に該当する部分である。除去部43は、鋳造品40のうち鋳包み面42を含んで置中子30と一緒に切削除去されて取り除かれる部分である。止まり穴44は、引き抜き中子15が引き抜かれて形成される部分である。
【0026】
置中子30は、鋳造品40の穴45を得たい位置に配置され切削除去される。本実施形態では、穴45は鋳造品40を厚さ方向に貫通する貫通穴だが、これに限られるものではない。穴45を止まり穴にすることは当然可能である。穴45は、例えば液体や気体の通路やねじ穴として用いられる。置中子30は完全に除去されて穴45を得るため、置中子30のうち鋳造品40に埋まる部分は、穴45の形状と同じ寸法かつ同じ形状であるか、少なくとも穴45よりも小さい形に設定される。なお、置中子30は完全に切削除去されるから、除去部43は無くても構わない。除去部43は可能な限り小さくすることが好ましい。
【0027】
鋳造品40は、金型10のキャビティ13内(図1参照)に充填された溶湯が凝固して得られる。置中子30の材料は、鋳造品40の材料と同じである。鋳造品40は、置中子30を鋳包む鋳包み面42において化学反応が生じ難くなる。置中子30を切削除去するときに、化学反応によって生じる反応層を取り除く必要がないから、穴45の寸法精度を向上できる。
【0028】
鋳造品40の材料は、例えばアルミニウム合金、マグネシウム合金および亜鉛の合金のいずれかである。アルミニウム合金は、ダイカスト鋳造用として、ADC1、ADC3、ADC5、ADC6、ADC10、ADC10Z、ADC12、ADC12Z、ADC14及びAl-Si系合金、Al-Mg系合金が例示される。ダイカスト鋳造用として、このうち特にADC12が好適に用いられる。アルミニウム合金は、そのほかの金型鋳造用として、AC1B、AC2A、AC2B、Al-Cu系合金、Al-Si系合金、Al-Mg系合金、Al-Zn系合金が例示される。
【0029】
マグネシウム合金はダイカスト鋳造用として、Mg-Al-Mn系合金、Mg-Al-Zn系合金およびMg-Al-Si系合金が例示される。マグネシウム合金はその他の金型鋳造用として、Mg-Al系合金、希土類元素(Ce、Ndなど)を含むものが例示される。亜鉛合金はダイカスト鋳造用として、ZDC1及びZDC2が例示される。
【0030】
鋳造品40の製造方法を説明する。セット工程において、置中子30を入れ子20の先端部22に配置する。置中子30の突出部32がキャビティ13内に配置され、置中子30の取付部31が入れ子20の嵌合部23に取り付けられる。置中子30の大径部35の取付部31側の端面は、段差部36によって、入れ子20の座部24に対応し、置中子30の位置決めがされている。
【0031】
次に、鋳造工程において、第1型1及び第2型2を型締めして形成されるキャビティ13,16に注湯口(図示しない)から溶湯を充填する。充填された溶湯は凝固して、キャビティ13で鋳造品40が成形され、キャビティ16で置中子30が成形される。キャビティ13内の溶湯は、金型10(引き抜き中子15や置中子30を含む)に接している部分が最終凝固部でなくなり、それ以外の部分に比べて早く冷やされるので、鋳造品40のうち金型10に接している部分の鋳巣の発生を低減できる。置中子30は中実なので、溶湯が凝固するときに置中子30が変形しないようにできる。
【0032】
離型工程において金型10を開く。第1嵌込型11及び入れ子14は一体となって動作する。キャビティ13で成形された鋳造品40、及び、入れ子20の先端部22に配置されて鋳造品40に鋳包まれた置中子30は、第1嵌込型11及び入れ子14にそれぞれ付着している。
【0033】
鋳造品40は、第1型1が型開きする際に第2型2から離型される。第2型2から鋳造品40が取り外される方向(図1上下方向、以下「離型方向」と称す)に沿って引抜き中子15は延びているので、第2嵌込型12から引き抜き中子15を引き抜かなくても鋳造品40の止まり穴44は作られる。引き抜き中子15の延びる向きが離型方向と異なる場合は、鋳造品40を離型する前に、引き抜き中子15を引き抜いて鋳造品40の止まり穴44を形成する。
【0034】
置中子30の突出部32は、鋳造品40の離型方向と異なる方向に延びている。置中子30の取付部31は、離型方向と同じ方向に入れ子20の嵌合部23から取り外されるから、置中子30を入れ子20の嵌合部23から取り外しやすくでき、置中子30は鋳造品40に鋳包まれたまま第2型2から離型される。第1嵌込型11に配置された押出ピン(図示しない)をキャビティ13内に突出させて、第1嵌込型11及び入れ子14に付着している鋳造品40を第1嵌込型11及び入れ子14から取り外す。取り外された鋳造品40は、置中子30が鋳包まれている。置中子30の取付部31は、鋳造品40の外側に突出する。
【0035】
金型10を開いたときにキャビティ16で成形された置中子30は、入れ子17に付いたまま脱型される。第1嵌込型11及び入れ子17に配置された押出ピン(図示しない)をキャビティ16内に突出させて、入れ子17に付着している置中子30を入れ子17から取り外す。取り外された置中子30は、充分に空冷などの方法で冷却されたのち、次の鋳造品40を成形するとき以降に、入れ子20のキャビティ13側の先端に配置される。
【0036】
次いで除去工程において、鋳造品40の鋳包み面42で鋳包まれている置中子30を、鋳造品40の外側に突出している取付部31を含んで置中子30の全部と、除去部43と、を切削除去する。切削除去する方法としては、ドリル加工、エンドミル加工などの種々の切削加工が適宜選択される。
【0037】
置中子30の全部と除去部43とを切削除去して穴45を得る。置中子30の周囲に除去部43が存在するから、除去部43の厚さの範囲で、置中子30の傾き、位置決め及び寸法誤差が許容される。従って置中子30は、入れ子20に対する高い位置決め精度および寸法精度を必要としない。よって置中子30及び入れ子20の設計、製造を容易にすることができる。
【0038】
置中子30は、除去工程において完全に切削除去されるから、鋳造品40の鋳包み面42に置中子30が残らない。よって穴45の強度不良、気密漏れなどの不具合を低減できる。
【0039】
置中子30の全部を切削除去してできた穴45は、置中子30を設けないで鋳造品40を切削して穴を形成する場合に比べ、穴45に露出する鋳巣を低減できる。よって穴45の強度不良、気密漏れなどの不具合を低減できる。
【0040】
置中子30の材料は溶湯(本体部41)の材料と同じであるから、溶湯と置中子30との化学反応を生じ難く、鋳包み面42で置中子30が溶着し難い。そのため除去工程において置中子30を切削除去する際に、置中子30は、そのままでは回転工具と共回りしやすい。しかし図2(b)に示すように置中子30は、溝33が突出部32に設けられているから、鋳造工程において、突出部32の外周部よりも内側に凹んだ溝33の中で溶湯が凝固する。置中子30の回転が規制されるから、回転工具と置中子30との共回りを低減し、置中子30の共回りによる回転工具の破損、鋳造品40のキズの発生を低減できる。
【0041】
置中子30は、共回りを防ぐ溝33が、突出部32の外周面が内側に凹んでいる形状をしているから、突出部32の外周面から外側に突出する形状と比べ、除去工程において除去される除去部43の量を少なくできる。よって穴45に露出する鋳巣を低減できる。置中子30は、溝33が、小径部34及び大径部35の突出部32のキャビティ13側の先端まで延びているから、除去工程において回転工具が加工する鋳造品40の深さ方向の終端まで置中子30と回転工具の共回りを低減できる。
【0042】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、キャビティ13に配置される置中子30の数や引き抜き中子15の数は一例であり適宜設定できる。
【0043】
実施形態では、キャビティ13は、第1型1と第2型2に配置される第1嵌込型11と第2嵌込型12の一対の上下型で形成されるが、必ずしもこれに限定されない。キャビティ13は、第1嵌込型11と第2嵌込型12の一対の上下型内に入れ子を配置して、上下型内の入れ子によってキャビティ13の一部または全部を形成することは当然可能である。さらに第1嵌込型11及び第2嵌込型12の他に、他の金型がキャビティ13の一部を形成していても良い。例えば上下型である一対の金型および横型によりキャビティ13を形成する場合、横型を開くことができるから、上下型のみでは離型し難いアンダーカット部を有するような複雑な形状を成形できる。キャビティ13は、左右に開閉する一対の横型で形成されることや、一対の横型および横型に配置される入れ子で形成されることも当然可能である。
【0044】
実施形態では、鋳造品40の内部に空洞を形成するために入れ子14を第1嵌込型11に取り付けたが、必ずしもこれに限定されない。入れ子14はなくても構わない。入れ子14を用いず鋳造品40に貫通穴を形成する場合は、キャビティ13の表面の一部を形成している第1嵌込型11の表面に小径部34の先端が当接するように、第2嵌込型12に配置される入れ子20に置中子30を配置すれば良い。入れ子14は、入れ子14に代えて第1嵌込型11及び第2嵌込型12の少なくとも一方に配置されて、第1嵌込型11や第2嵌込型12からキャビティ13と反対側に引き抜かれる引き抜き中子を用いても良い。さらに入れ子14は、そのまま離型できない形状であれば、例えば、入れ子14に代えて溶湯の熱によって熱破壊する材料、振動により破壊する材料である中子を用いても良い。
【0045】
実施形態では、置中子30を成形するためのキャビティ16は、第1嵌込型11及び第2嵌込型12に取り付けられた入れ子17,18によって形成されるが、溶湯をキャビティ13に供給する通路であるランナー部分(図示しない)にキャビティ16を設けることは当然可能である。この場合、置中子30はガスや不純物の少ない溶湯で成形できるから、置中子30にガスや不純物による欠陥を発生し難くできる。
【0046】
実施形態では、置中子30を成形するためのキャビティ16は、1か所のキャビティ13に対して1か所のキャビティ16が金型10に形成されているが、必ずしもこれに限定されない。複数の置中子30を一度に成形するために、キャビティ16を金型10の複数か所に形成することは当然可能である。複数の置中子30が一度に成形できるから、複数の置中子30を製造する工程を別途設ける必要をなくすことができる。
【0047】
実施形態では、置中子30を使用して成形される鋳造品40を得る同じ金型10の中で置中子30を成形しているが、必ずしもこれに限定されない。同じ材料を使用するのであれば、置中子30を使用して成形される鋳造品40を得る金型10とは異なる別の金型の中で、置中子30を成形することは当然可能である。
【0048】
実施形態では、置中子30は、入れ子20の先端部22の嵌合部23に取付部31を取り付けて配置されるが、必ずしもこれに限定されない。置中子30は、第1嵌込型11及び第2嵌込型12、鋳造品40を成形するためのキャビティ13を形成する入れ子、又は、横型に直接配置することは当然可能である。この場合、置中子30の取付部31は、第1嵌込型11及び第2嵌込型12、鋳造品40を成形するためのキャビティ13を形成する入れ子、又は、横型に着脱可能で、置中子30の突出部32の中心線の延びる方向と異なる方向で取り付けられる。
【0049】
実施形態では、置中子30の取付部31は、突出部32から第2嵌込型12側に突出して、入れ子20の凹んだ嵌合部23に差し込まれる形状であるが、必ずしもこれに限定されない。嵌合部23をキャビティ13側に突出する形状にしたり、キャビティ13側に突出するピンを第2嵌込型12や入れ子20に設けたりすることは当然可能である。この場合、キャビティ13側に突出する嵌合部やピンがはまる取付部が、置中子30を凹ませて設けられる。キャビティ13側に突出する嵌合部やピンと置中子30の凹みとが接していれば、鋳造時の置中子30の変形を防ぎ、置中子30による溶湯の冷却効果を確保できる。
【0050】
実施形態では、置中子30の外周部の2か所に軸方向に延びる溝33を設けて廻り止め機構としているが、必ずしもこれに限定されない。溝33は2か所以上あっても良いし、1か所であっても良い。また、突出部32の少なくともキャビティ13側の先端を多角形にしたり、突出部32の外周に角や隅や凹凸を設けたりすることは当然可能である。
【0051】
実施形態では、穴45は、鋳造品40の内側の直径が外側の直径よりも小さい段差形状であるが、必ずしもこれに限定されない。穴45は、例えば、鋳造品40の内側の直径が外側の直径よりも大きい段差形状、鋳造品40の内側や外側に向かって拡径するテーパ状であっても良い。複数の穴が交差していても良い。切削加工によって置中子30を除去できれば、穴45は、そのほかの形状であっても良い。この場合、置中子30の形状は、穴45の形状に合わせて設定するのが望ましい。
【0052】
実施形態では、穴45は断面が円形状の貫通穴であるが、必ずしもこれに限定されない。穴45は、置中子30を切削除去できる形状であれば、断面が多角形となる形状および凹凸がある形状としても、丸形状および楕円形状とすることも当然可能である。雌ねじを穴45に設けても良い。穴45は止まり穴のような貫通しない形状であっても良い。穴45を貫通しない形状とする場合、置中子30のキャビティ13側の先端が、金型10(入れ子14を含む)に接しないように配置される。
【0053】
実施形態では、鋳造品40に設けた除去部43を切削除去して穴45を形成しているが、必ずしもこれに限定されない。置中子30を完全に切削除去できれば、除去部43は設けなくても構わない。この場合、鋳造品40は切削除去される部分がないから、切削によって鋳巣の発生しやすい鋳造品40の内側が穴45に露出しない。よって除去部43を設ける場合より、穴45に露出する鋳巣を低減できる。
【符号の説明】
【0054】
10 金型
13 キャビティ
30 置中子
31 取付部
32 突出部
40 鋳造品
45 穴
図1
図2
図3