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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022123483
(43)【公開日】2022-08-24
(54)【発明の名称】フロアパネル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/024 20060101AFI20220817BHJP
   E04F 15/18 20060101ALI20220817BHJP
   H05B 3/20 20060101ALI20220817BHJP
   C23C 18/32 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
E04F15/024 601A
E04F15/18 X
H05B3/20 317
C23C18/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021020819
(22)【出願日】2021-02-12
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年11月25日~12月25日 日本経済新聞社及び一般社団法人サステナブル経営推進機構主催の「エコプロ Online 2020」
(71)【出願人】
【識別番号】303028734
【氏名又は名称】オーエム産業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000103404
【氏名又は名称】オーエム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002206
【氏名又は名称】弁理士法人せとうち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 宜幸
(72)【発明者】
【氏名】福田 千紗
(72)【発明者】
【氏名】次田 亮一
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 誠二
(72)【発明者】
【氏名】阿部 孝史
(72)【発明者】
【氏名】中谷 嘉孝
【テーマコード(参考)】
2E220
3K034
4K022
【Fターム(参考)】
2E220AA04
2E220AB08
2E220AC03
2E220BA01
2E220BA26
2E220EA01
2E220FA01
2E220GA25X
2E220GB02X
2E220GB05X
2E220GB17X
2E220GB23X
2E220GB25X
2E220GB28X
2E220GB33X
2E220GB34X
2E220GB35X
2E220GB37X
2E220GB43X
2E220GB45X
2E220GB46X
2E220GB47X
3K034AA02
3K034AA15
3K034BB08
3K034BB13
3K034BC12
3K034HA10
3K034JA09
4K022AA16
4K022AA18
4K022AA31
4K022AA41
4K022BA14
4K022CA06
4K022DA01
(57)【要約】
【課題】上面が短時間で均一に昇温し、暖房効率が高い薄型のフロアパネルを提供する。
【解決手段】基材、絶縁層、及び断熱層がこの順で積層され、前記絶縁層の前記断熱層と対向する表面にめっき層からなる配線が形成され、該配線に通電することによって発熱する、フロアパネルである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材、絶縁層、及び断熱層がこの順で積層され、前記絶縁層の前記断熱層と対向する表面にめっき層からなる配線が形成され、該配線に通電することによって発熱する、フロアパネル。
【請求項2】
前記断熱層が木質材からなる、請求項1に記載のフロアパネル。
【請求項3】
前記基材が鋼板からなる、請求項1又は2に記載のフロアパネル。
【請求項4】
前記絶縁層が樹脂層である、請求項1~3のいずれかに記載のフロアパネル。
【請求項5】
前記絶縁層が電着塗装層を含む、請求項4に記載のフロアパネル。
【請求項6】
前記絶縁層が粉体塗装層をさらに含み、前記基材、前記電着塗装層及び前記粉体塗装層がこの順で積層された、請求項5に記載のフロアパネル。
【請求項7】
前記絶縁層と前記めっき層との界面が粗化されてなる、請求項1~6のいずれかに記載のフロアパネル。
【請求項8】
前記絶縁層の表面に溝が形成されるとともに、該溝に前記めっき層が充填されてなる、請求項1~7のいずれかに記載のフロアパネル。
【請求項9】
前記基材の表面に樹脂を塗装して前記絶縁層を形成し、
無電解めっきを行うことにより、前記絶縁層の表面に前記めっき層を形成し、
前記基材と断熱材とを積層させる、請求項1~8のいずれかに記載のフロアパネルの製造方法。
【請求項10】
前記絶縁層表面の一部の領域にパルスレーザーを照射することにより、前記領域の表面を粗化し、
前記無電解めっきを行うことにより、前記領域の表面に前記めっき層を形成する、請求項9に記載のフロアパネルの製造方法。
【請求項11】
無電解めっきを行うことにより、樹脂フィルムの表面に前記めっき層からなる配線を形成し、
前記基材、前記樹脂フィルム及び断熱材を積層させる、請求項1~4のいずれかに記載のフロアパネルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロアパネル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ビル等の建物において、基礎床と上床の間にOA機器の配線等のための空間が設けられた、OAフロアやフリーアクセスフロア等と呼ばれる二重床が広く採用されている。このような二重底の建物において床暖房を行う場合、従来、フロアパネル(上床)の下にヒーターが設置されたフロアヒーター等が用いられていた。しかしながら、当該フロアヒーターは、基礎床に放熱されることにより暖房効率が低下する、熱が上床の上面に伝わるまでに長時間を要するうえに上面の温度ムラも大きい、ヒーターを設置することによって、基礎床と上床の間の空間が狭くなる等の問題を有しており、それらの改善が求められていた。
【0003】
特許文献1には、フリーアクセスフロアを構成するヒーター機能付きフロアパネルであって、パネル基体の上面の4辺を凸状に形成してシート状ヒーターと均熱板を収納する枠体を備え、当該枠体内に均熱板が固定されずに収納されたヒーター機能付きフロアパネルが記載され、前記シート状ヒーターとしてカーボンヒーターが好ましいと記載されている。特許文献1には、このようなフロアパネルは、シート状ヒーターがフロアパネル表面(上面)に取り付けられているため、効率的に床面が暖まる、ヒーターの熱を均一に広げる均熱板がシート状ヒーターの保護にもなり、ヒーターの破損を防止できる、均熱板がフロアパネルの枠体内にあって、固定をせずに収納されるのでヒーターの熱による歪みが均熱板に発生することを防止できて、凹凸やガタツキ等の無いフロアパネルを提供できる等の効果を有すると記載されている。しかしながら、当該フロアパネルは、フロアパネル上面の昇温速度がなお低いうえに、中心部と周縁部の温度差が大きかった。さらに、特許文献1に記載されたフロアパネルはシート状ヒーターを有するため、ヒーターを有しない一般的なフロアパネルよりも厚かった。そのため、両者を組み合わせて使用する場合、段差が生じないように、製造時または施工時に厚み調整が必要であり、コストが上昇した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-101718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、上面が短時間で均一に昇温し、暖房効率が高い薄型のフロアパネル及びその簡便な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、基材、絶縁層、及び断熱層がこの順で積層され、前記絶縁層の前記断熱層と対向する表面にめっき層からなる配線が形成され、該配線に通電することによって発熱する、フロアパネルを提供することによって解決される。
【0007】
前記断熱層が木質材からなることが好ましい。前記基材が鋼板からなることも好ましい。前記絶縁層が樹脂層であることが好ましく、前記絶縁層が電着塗装層を含むことがより好ましく、前記絶縁層が粉体塗装層をさらに含み、前記基材、電着塗装層及び前記粉体塗装層がこの順で積層されていることがさらに好ましい。
【0008】
前記絶縁層と前記めっき層との界面が粗化されていることが好ましい。前記絶縁層の表面に溝が形成されるとともに、該溝に前記めっき層が充填されていることも好ましい。
【0009】
上記課題は、前記基材の表面に樹脂を塗装して前記絶縁層を形成し、無電解めっきを行うことにより、前記絶縁層の表面に前記めっき層を形成し、前記基材と断熱材とを積層させる、前記フロアパネルの製造方法を提供することによっても解決される。
【0010】
前記製造方法において、前記絶縁層表面の一部の領域にパルスレーザーを照射することにより、前記領域の表面を粗化し、前記無電解めっきを行うことにより、前記領域の表面に前記めっき層を形成することが好ましい。
【0011】
また、上記課題は、無電解めっきを行うことにより、樹脂フィルムの表面に前記めっき層からなる配線を形成し、前記基材、前記樹脂フィルム及び断熱材を積層させる、前記フロアパネルの製造方法を提供することによっても解決される。
【発明の効果】
【0012】
本発明のフロアパネルは、上面全体が短時間で均一に昇温するとともに、下面から基礎床等への放熱も抑制されるため暖房効率も高い。また、前記フロアパネルは、極めて薄いめっき層からなる配線によって発熱するため薄くし易い。本発明の製造方法によれば、このようなフロアパネルを簡便に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1のフロアパネルの斜め下方から見た分解斜視図である。
図2】実施例1のフロアパネルの斜め上方から見た分解斜視図である。
図3】比較例1のフロアヒーターを示す図である。
図4】実施例1及び比較例1における、通電開始から60分後のフロアパネル上面のサーモグラフィー画像である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のフロアパネルは、基材、絶縁層、及び断熱層がこの順で積層され、前記絶縁層の前記断熱層と対向する表面にめっき層からなる配線が形成され、該配線に通電することによって発熱するものである。前記絶縁層の表面に極めて薄い前記めっき層からなる配線が直接形成されていることが本発明の大きな特徴である。前記絶縁層及び前記めっき層からなる配線は極めて薄いため、本発明のフロアパネルはヒーター機能を有しない既存のフロアパネルと同等の厚みである。したがって、本発明のフロアパネルをOAフロアやフリーアクセスフロア等の二重床の上床として用いた場合に、基礎床と上床の間に広い空間が確保される。また、配線に通電することによって発生した熱が短時間で基材上面全体に伝わるとともに、前記断熱層によって基礎床への放熱が抑制されるため、暖房効率が高い。
【0015】
図1は、後述する実施例1のフロアパネルの斜め下方から見た分解斜視図であり、図2は、実施例1のフロアパネルの斜め上方から見た分解斜視図である。以下、図1及び図2を参照しながら説明する。耐久性や熱伝導性が高い観点から、前記基材2として、鋼板、銅板、アルミ板、ステンレス板等の金属板が好ましく、中でも鋼板がより好ましい。前記基材2の厚みは、通常0.1~10mmである。
【0016】
耐食性が向上する観点から、前記鋼板の表面に亜鉛めっき層が形成されていることが好ましい。当該亜鉛めっき層は前記鋼板の上面と下面のいずれか一方に形成されていてもよいし、両面に形成されていてもよい。前記亜鉛めっき層が前記鋼板の上面に形成されていることが好ましい。前記鋼板の下面に後述する電着塗装層を形成する場合、当該下面に亜鉛めっき層が形成されていないことが好ましい。前記亜鉛めっき層は一般的な溶融亜鉛めっき方法により形成することができる。
【0017】
前記基材2の下側に前記絶縁層3が配置される。前記配線4からの漏電を防止できるものであれば前記絶縁層3の種類は特に限定されない。前記絶縁層3として、樹脂層、セラミックス層、ガラス層(ガラスシート、ガラスコート等)等が挙げられ、中でも樹脂層が好ましい。前記樹脂層に主成分として含まれる樹脂としては、ポリイミド、エポキシポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン(PE、PP等)、ポリアミド、ポリエステル(PET等)、ポリウレタン、エポキシ樹脂、アクリル、液晶ポリマー、フッ素樹脂(PTFE、PFA等)、ポリカーボネート等が挙げられ、中でもポリイミド及びエポキシポリエステルが好ましく、ポリイミドがより好ましい。ここで主成分とは、前記樹脂層中に50質量%以上含まれる成分を意味する。前記樹脂層は、後述するとおり、前記基材2に樹脂を塗装することにより形成することができる。また、後述するとおり、予め製膜された樹脂フィルムを前記樹脂層として用いることもできる。
【0018】
前記絶縁層3の厚みは特に限定されないが、5~2000μmが好ましい。前記絶縁層3の厚みが5μm未満の場合には、絶縁性が不十分になるおそれがある。前記厚みは10μm以上がより好ましく、20μm以上がさらに好ましい。一方、前記厚みが2000μmを超える場合には、前記フロアパネル1上面の昇温速度が低下するおそれがある。前記厚みは1000μm以下がより好ましく、500μm以下がさらに好ましく、500μm以下が特に好ましく、300μm以下が最も好ましい。
【0019】
前記絶縁層3の前記断熱層5と対向する表面にめっき層からなる配線4が形成される。このように、前記絶縁層3の表面に直接薄いめっき層が形成されることにより、前記フロアパネル1上面の昇温速度が向上するとともに、フロアパネル1を薄くし易くなる。本発明のフロアパネル1は、めっき層からなる配線4に通電することによって発熱するものである。このときに発生する熱の量は電流の二乗と配線の電気抵抗に比例するため、前記めっき層はある程度の電気抵抗を有するとともに、耐熱性に優れていることが好適である。かかる観点から、前記めっき層が、ニッケル、亜鉛、コバルト、鉄、白金、錫、鉛、イリジウム、ロジウム、クロム、ビスマス、カドミウム、パラジウム、インジウム、金、タングステン、モリブデン及びこれらの合金からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。ここでいう合金とは、上記の少なくとも1種の金属元素を50質量%以上含有するもののことをいう。好適に用いられる合金としては、ニクロムなどが挙げられる。
【0020】
電気抵抗と耐熱性のバランスの観点から、中でも、前記めっき層が、ニッケル、亜鉛、コバルト、鉄、白金、錫及びこれらの合金からなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。無電解めっき法によって容易にめっき層を形成することができる観点から、中でも、前記めっき層が、ニッケル、コバルト、鉄及びこれらの合金からなる群から選択される少なくとも1種であることがさらに好ましい。
【0021】
前記めっき層の厚みは0.1~500μmであることが好ましい。めっき層の厚みが0.1μm未満の場合、断線するおそれがある。めっき層の厚みは0.5μm以上であることがより好ましく、1μm以上であることがさらに好ましく、2μm以上であることが特に好ましい。一方、めっき層の厚みが500μmを超える場合、前記フロアパネル1の製造コストが上昇するおそれがある。めっき層の厚みは、250μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがさらに好ましく、50μm以下が特に好ましく、30μm以下が最も好ましい。
【0022】
前記めっき層からなる配線4の幅が0.2~50mmであることが好ましい。前記幅が0.2mm未満の場合、断線するおそれがある。前記幅は0.5mm以上であることがより好ましく、1mm以上であることがさらに好ましい。一方、前記幅が50mmを超える場合、必要なめっきの厚さを確保できないおそれがある。前記幅は、20mm以下であることがより好ましく、10mm以下であることがさらに好ましい。
【0023】
前記絶縁層3の表面に形成される前記めっき層からなる配線4のパターンは特に限定されないが、前記フロアパネル1の上面全体が均一に昇温する観点から、前記フロアパネル1の概ね全面に配線4が形成されていることが好ましい。前記めっき層からなる配線4は、前記絶縁層3表面の任意の位置に容易に形成される。
【0024】
前記絶縁層3の下側に断熱層5が配置される。高い断熱性及び上側からの荷重を支えられるだけの強度を有するものであれば、前記断熱層5の種類は特に限定されない。前記断熱層5として、木質材、モルタル、樹脂、セラミックス、ガラス、石膏等の断熱材が用いられ、断熱性及び強度が高く、環境面でも優れる点から、木質材が好ましい。前記木質材としては、パーティクルボード、合板、MDF(中密度繊維板)、HDF(高密度繊維板)等が挙げられ、中でもパーティクルボードが好ましい。
【0025】
前記断熱層5の厚みは、通常1~50mmである。前記厚みが1mm未満の場合、得られるフロアパネル1の断熱性及び強度が不十分になるおそれがある。前記厚みは、2mm以上が好ましく、3mm以上がより好ましい。一方、前記厚みが50mmを超える場合、フロアパネル1の製造コストが上昇したり、フロアパネル1と基礎床の間の空間が狭くなったりするおそれがある。前記厚みは、30mm以下が好ましく、20mm以下がより好ましい。
【0026】
前記断熱層5には、前記絶縁層3表面の配線4の接続部8と、外部の電源、サーモスタット又はヒューズ等とを接続したり、サーモスタット又はヒューズ、サーミスタを設置したりするための孔9が形成されていてもよい。
【0027】
フロアパネル1の強度や耐久性がさらに向上する観点から、前記断熱層5の下側に保護層6が配置されていることが好ましい。保護層6として、金属板が好ましい。当該金属板として、基材2として用いられるものとして上述したものが用いられる。金属板として表面に亜鉛めっき層が形成された鋼板を用いる場合、鋼板の下側に亜鉛めっき層が形成されていることが好ましい。前記保護層6には、前記絶縁層3表面の配線4の接続部8と、外部の電源、サーモスタット又はヒューズ、サーミスタ等とを接続するための孔10が形成されていてもよい。
【0028】
本発明の効果を阻害しない範囲であれば、前記フロアパネル1が基材2、絶縁層3、断熱層5及び保護層6以外の他の層を有していてもよい。前記フロアパネル1の厚みをより薄くする点からは、前記他の層を有さないことが好ましい。
【0029】
本発明のフロアパネル1の製造方法は特に限定されないが、前記基材2の表面に樹脂を塗装して前記絶縁層3を形成し、めっきを行うことにより、前記絶縁層3の表面に前記めっき層4を形成し、前記基材2と断熱材とを積層させる方法が好ましい。めっき方法としては、後述する無電解が好ましい。
【0030】
前記基材2と前記絶縁層3との密着性を向上させる観点から、塗装前に前記基材2の前処理を行っても構わない。前処理としては、化成処理、亜鉛めっき層の除去処理、エッチング処理、ブラスト処理、プライマー処理が挙げられる。前処理により前記基材2の表面に凹凸を形成することが好ましい。
【0031】
前記基材2の表面に樹脂を塗装する方法は特に限定されず、電着塗装、粉体塗装、スプレー塗装、浸漬塗装等が挙げられ、電着塗装及び粉体塗装が好ましく、電着塗装がより好ましい。電着塗装とは、塗装しようとする樹脂又はその前駆体が含まれる電解液中で前記基材2と電極に電圧を印加することにより、前記基材2表面に樹脂又はその前駆体を凝着させた後、必要に応じて熱処理することにより塗膜を形成する方法である。また、粉体塗装とは、粉末状の樹脂を、静電気により基材2に付着させた後、必要に応じて熱処理することにより塗膜を形成する方法である。電着塗装や粉体塗装の条件として、一般的な条件が採用される。これらの方法は併用しても構わない。塗装される樹脂としては、前記樹脂層に含有される樹脂として上述したものが挙げられる。
【0032】
前記絶縁層3が前記塗装方法により形成された塗装層を含むことが好ましい。前記基材2表面に直接形成された薄い塗装層を介して前記めっき層からなる配線4を配置することにより、前記フロアパネル1上面の昇温速度がさらに向上する。前記絶縁層3が前記塗装層のみからなることがより好ましい。また、前記塗装層が電着塗装層及び粉体塗装層の少なくとも一方を含むことが好ましく、電着塗装層及び粉体塗装層の少なくとも一方のみからなることがより好ましい。均一な厚さの前記絶縁層3が形成される観点から、前記塗装層が電着塗装層を含むことが好ましい。このとき、電着塗装層が前記基材2の表面に形成されていることがより好ましい。前記電着塗装層に含有される樹脂としては、ポリイミド、エポキシ樹脂、アクリル、ポリウレタン、ポリアミド、フッ素樹脂が好ましい。絶縁性がさらに向上する観点から、前記絶縁層3が電着塗装層及び粉体塗装層を含み、前記基材2、前記電着塗装層及び前記粉体塗装層がこの順で積層されていることが好ましい。前記粉体塗装層に含有される樹脂としては、エポキシ-ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、フッ素樹脂が好ましい。
【0033】
前記絶縁層3が電着塗装層及び粉体塗装層を含む場合、前記電着塗装層の厚みは5~500μmが好ましい。前記厚みが5μm未満の場合には、絶縁性が低下するおそれがある。前記厚みは10μm以上がより好ましく、20μm以上がさらに好ましい。一方、前記厚みが500μmを超える場合には、前記フロアパネル1上面の昇温速度が低下するおそれがある。前記厚みは300μm以下がより好ましく、200μm以下がさらに好ましく、150μm以下が特に好ましく、100μm以下が最も好ましい。
【0034】
前記絶縁層3が電着塗装層及び粉体塗装層を含む場合、前記粉体塗装層の厚みは10~1500μmが好ましい。前記厚みが10μm未満の場合には、絶縁性が低下するおそれがある。前記厚みは50μm以上がより好ましく、100μm以上がさらに好ましい。一方、前記厚みが1500μmを超える場合には、前記フロアパネル1上面の昇温速度が低下するおそれがある。前記厚みは1000μm以下がより好ましく、500μm以下がさらに好ましく、300μm以下が特に好ましく、200μm以下が最も好ましい。
【0035】
めっきを行うことにより、前記絶縁層3の表面に前記めっき層からなる配線4を形成する。配線4の形成方法は特に限定されないが、様々な配線パターンへの対応が容易であり、不良品の発生も少ない点から、前記絶縁層3表面の一部の領域にレーザーを照射することにより、前記領域の表面を粗化した後、無電解めっきを行うことにより、前記領域の表面に前記めっき層からなる配線4を形成する方法が好ましい。
【0036】
前記絶縁層3表面の配線4を形成すべき領域にレーザーを照射することにより、前記領域の表面を粗化する。前記フロアパネル1において、前記絶縁層3と前記めっき層との界面が粗化されていることが好ましい。界面が粗化されていることで、前記絶縁層3と前記めっき層との密着性が良好になる。
【0037】
レーザーの照射方式は特に限定されないが、前記絶縁層3表面を効率良く粗化できる点から、前記領域にパルスレーザーを照射することが好ましい。通常、パルスレーザーのパルス幅(秒)は、1×10-18秒以上1×10-4秒以下であり、周波数は1~10000kHzであり、加工点での平均出力は0.01~1000Wである。レーザーの種類も特に限定されず、YAGレーザー、ファイバーレーザー、半導体レーザーなどの固体レーザー;炭酸ガスレーザー、エキシマレーザーなどの気体レーザーを用いることができる。パルスレーザーの波長は特に限定されず、絶縁層3の種類などにより適宜設定することができ、通常は100~12000nmである。
【0038】
前記絶縁層3の表面に溝が形成されるとともに、該溝に前記めっき層が充填されていることが好ましい。これにより、前記めっき層のからなる配線4が破損しにくくなるとともに、フロアパネル1上面の昇温速度がさらに高まる。溝の形成方法は特に限定されないが、前記絶縁層3の表面にレーザーを照射することにより、前記絶縁層3の表面に溝を形成する方法が挙げられる。前記塗装層3の表面にレーザーを照射することにより、前記絶縁層3の界面の粗化と前記溝の形成とを同時に行うことが好ましい。
【0039】
前記溝の深さが0.1~1000μmであることが好ましい。溝の深さが0.1μm未満の場合、前記めっき層が溝から外れやすくなる場合がある。溝の深さは1μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることがさらに好ましい。一方、溝の深さが1000μmを超える場合、溝を形成するためのコストが上昇するおそれがある。溝の深さは300μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがさらに好ましい。
【0040】
前記溝の底の部分における前記絶縁層3の厚みは、5~1000μmが好ましい。前記厚みが5μm未満の場合、前記絶縁層3に穴が開いて絶縁性が失われるおそれがある。前記厚みは、20μm以上がより好ましく、30μm以上がさらに好ましい。一方、前記厚みは、が1000μmを超える場合、前記フロアパネル1上面の昇温速度が低下するおそれがある。前記厚みは500μm以下がより好ましく、400μm以下がさらに好ましく、300μm以下が特に好ましく、200μm以下が最も好ましい。前記絶縁層3が電着塗装層及び粉体塗装層を含み、前記基材2、前記電着塗装層及び前記粉体塗装層がこの順で積層されている場合、前記溝の底が前記電着塗装層まで到達していないことが好ましい。すなわち、前記溝の底における前記絶縁層3が電着塗装層及び粉体塗装層を含み、粉体塗装層の表面に前記めっき層が形成されることが好ましい。
【0041】
前記絶縁層3のレーザーが照射された前記領域に無電解めっきを行うことにより、前記領域の表面に前記めっき層からなる配線4を形成する。前記絶縁層3の表面に無電解めっき触媒を付着させる。無電解めっき触媒としては特に限定されず、無電解めっき液に対して触媒作用を有する金属元素を含有するものであればよい。当該金属元素としては、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)などが挙げられる。これらの金属元素は、無電解めっき液の種類により適宜選択できる。そして、前記絶縁層3を上記金属元素を含む水溶液で処理した後に還元剤を含む水溶液で処理して、無電解めっき触媒を活性化させることができる。
【0042】
めっきを行う前に、前記レーザーが照射されていない部分に付着した前記触媒を選択的に除去する、又は前記触媒を選択的に失活させることが好ましい。これらの具体的な方法としては、特開2020-113469号公報の[0044]~[0050]に記載された方法が採用される。
【0043】
無電解めっきを行うことにより、レーザーを照射した領域に前記めっき層を形成する。無電解めっきを複数回行ってもよい。また、無電解めっきを行った後、さらに電解めっきを行ってもよい。複数回めっきを行う場合、形成するめっき層の種類は同じであっても異なっていてもよい。例えば、配線4と端子とのはんだ付性を考慮して、配線4において端子が接続される接続部8に銅めっき層、金めっき層、銀めっき層、スズめっき層などをさらに形成することができる。
【0044】
無電解めっきを行うことにより、前記絶縁層3の表面に前記めっき層からなる配線4を形成する方法として、前記めっき層が形成されるべき部分のみが露出されるように、前記絶縁層3の表面をマスキングした後、無電解めっきを行うことにより、前記めっき層からなる配線4を形成する方法も好ましい。この場合、コストが低減する点から、前記絶縁層3が電着塗装層のみからなることが好ましい。
【0045】
前記絶縁層3の表面に、前記めっき層からなる配線4を形成した後、前記絶縁層3及び配線4の表面に保護層を形成してもよい。この場合、配線4を保護する観点から、めっき層の厚みと溝の深さは同じであるか、又は溝の深さよりもめっき層の厚みは小さい方が好ましい。前記絶縁層3及び配線4の表面に形成される保護層種類は特に限定されず、前記絶縁層3として、上述したものが挙げられ、中でも、樹脂層及びガラス層(ガラスシート、ガラスコート等)が好ましい。
【0046】
前記絶縁層3の表面に、前記めっき層からなる配線4を形成した後、前記基材2と前記断熱材とを積層させる。このとき、前記基材2に形成された前記絶縁層3と断熱材とが対向するように積層させる。接着剤や接着シート等を用いて前記絶縁層3と断熱材とを接着させることが好ましい。
【0047】
前記断熱層5の下側に保護層6を配置する場合、両者を接着剤や接着シート等を用いて接着させることが好ましい。また、フロアパネル1の強度や耐久性の観点から、前記基材2と前記保護層6とが一体化していることが好ましい。前記基材2と前記保護層6とを一体化させる方法としては、前記基材2と前記保護層6の少なくとも一方の周縁部7を折り曲げて、周縁部同士をカシメ加工することにより両者を一体化させる方法が挙げられる。
【0048】
本発明のフロアパネルの製造方法として、無電解めっきを行うことにより、樹脂フィルムの表面に前記めっき層からなる配線を形成し、前記基材、前記樹脂フィルム及び前記断熱材を積層させる方法も好ましい。
【0049】
前記樹脂フィルムに用いられる樹脂としては、前記絶縁層3に用いられる樹脂として上述したものが挙げられ、中でもポリイミド、ポリエステル(PET)、ポリオレフィン、エポキシ、ポリエステル、フッ素樹脂(PTFE)が好ましい。樹脂フィルムの表面に前記めっき層からなる配線を形成する方法としては、上述した、絶縁層(塗装層)の表面に前記めっき層を形成する方法が採用される。前記基材、前記めっき層からなる配線が形成された前記樹脂フィルム及び前記断熱材を積層する。このとき、前記樹脂フィルムの配線が形成されていない面と前記基材とを対向させ、前記樹脂フィルムの配線が形成された面と前記断熱材とを対向させる。前記基材と前記樹脂フィルムとは、接着剤や接着シートにより接着することが好ましい。
【0050】
こうして得られるフロアパネル1は、配線4の接続部8に電源、サーモスタット及びヒューズ等を接続した後、通電することにより発熱する。配線4はフロアパネル1の全面に配置され得るとともに、前記絶縁層3及び前記めっき層からなる配線4は極めて薄く、配線4からフロアパネル1上面までの距離が近いため、短時間でフロアパネル1の上面全体が昇温する。また、前記断熱層5によって基礎床への放熱が抑制される。したがって、フロアパネル1は暖房効率が非常に高い。さらに、前記フロアパネル1はヒーター機能を有しない既存のフロアパネルと同等の厚みである。したがって、当該フロアパネル1は、両者を組み合わせて使用する場合に、段差が生じないように製造時または施工時に厚み調整をする必要がなく、既存のフロアパネルと互換性があるため、コストの上昇を抑えつつ、当該フロアパネル1を自由にレイアウトすることができる。また、施工後のレイアウト変更も容易にできる。本発明のフロアパネル1はビル、住宅等の建物の床、例えば、OAフロアやフリーアクセスフロア等の二重床の上床、洗面所や浴室の床等として好適に用いられる。
【実施例0051】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。
【0052】
実施例1
両表面に亜鉛めっき層が形成された略正方形の亜鉛めっき鋼板からなる基材2(一辺の長さ510mm、厚み0.5mm)の片面にエッチング処理を行うことによって凹凸を形成した後に、ポリイミドを電着塗装することにより、当該基材の表面に厚み50μmの電着塗装層を形成した。さらに、当該電着塗装層の表面にエポキシ-ポリエステル系の粉体塗料を粉体塗装することにより、厚み70~150μmの粉体塗装層を形成した。こうして、基材2の表面に電着塗装層及び粉体塗装層からなる絶縁層3を形成した。
【0053】
株式会社アマダウエルドテック製のファイバーレーザーマーカー「ML-7350DL-3D」を用いて、前記粉体塗装層の表面にレーザ照射(波長:1064nm、周波数:50kHz、出力:20W)することにより、深さ13μm、幅1.5mmの溝のパターンを形成するとともに、溝の底面を粗化した。
【0054】
特開2020-113469の実施例に記載された方法により、無電解めっき(前処理、無電解めっき触媒付着処理、触媒除去処理、活性化処理及び無電解Niめっき処理)を行うことにより、前記溝の底面に厚み11.5μm、幅1.5μmの無電解Niめっき層からなる配線4を形成した。
【0055】
前記基材2の前記配線4が形成された面と、略正方形(一辺の長さ470mm、厚み18mm)のパーティクルボード(断熱層5)が対向するように、接着剤を用いて両者を張り合わせた。また、前記パーティクルボードの前記基材2が張り合わされていない面と、周縁部7が上側に曲折した略正方形の亜鉛めっき鋼板(保護層6)を接着剤を用いて張り合わせた。さらに、前記基材2と前記亜鉛めっき鋼板の周縁部同士をカシメ加工することにより両者を一体化させた。こうして図1及び2に示されるフロアパネル1を得た。フロアパネル1の上面全体にタイルカーペットを積層させ、フロアパネル1の配線4の接続部8に、電源、サーモスタット及びヒューズを接続した。電力50W(配線の両端間の抵抗値を800Ωに設定して、200V(AC))で配線4に通電し、このときの温度変化をサーモグラフィーで測定した。タイルカーペット中央の温度が10℃上昇するのに12分間要した。通電開始から60分後のサーモグラフィー画像を図4図4の右図)に示す。図4からも分かるように、タイルカーペット全体が均一に昇温したことが確認された。フロアカーペット中央の温度を38℃に制御して12時間通電したところ、後述する比較例1のフロアヒーターを用いた場合と比較して、30%以上消費電力が削減された。
【0056】
実施例2
片面にのみ亜鉛めっき層が形成された略正方形の亜鉛めっき鋼板からなる基材(一辺の長さ500mm、厚み0.5mm)の亜鉛めっき層が形成されていない面に、ポリイミドを電着塗装することにより、厚み50μmの電着塗装層を形成した。配線パターンが形成されるべき部分が露出するように、電着塗装層の表面をシリコーンゴムでマスキングした。マスキングされた前記基材に対して、触媒除去処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして無電解めっきを行うことにより、電着塗装層の表面に厚み11.5μm、幅1.5mmの無電解Niめっき層からなる配線を形成した。このとき形成された配線パターンは実施例1と同様である。実施例1と同様にして、前記基材、前記パーティクルボード(断熱層)及び亜鉛めっき鋼板(保護層)を張り合わせた後、カシメを行うことにより、フロアパネルを得た。実施例1と同様にして、得られたフロアパネルに通電したところ、フロアパネルの上面に積層させたタイルカーペット中央の温度が10℃上昇するのに12分間要した。このときのタイルカーペットの温度変化をサーモグラフィーで測定したところ、全面が均一に昇温したことが確認された。
【0057】
実施例3
配線パターンが形成されるべき部分が露出するように、略正方形の3M製の(接着剤付き)ポリイミドフィルム「7413D」(縦470mm、横450mmの長方形、総厚65μm、フィルム厚み25μm)の表面をシリコーンゴムでマスキングした。マスキングされた前記ポリイミドフィルムに対して、実施例2と同様にして無電解めっきを行うことにより、ポリイミドフィルムの表面に厚み11.5μm、幅1.5mmの無電解Niめっき層からなる配線を形成した。片面にのみ亜鉛めっき層が形成された略正方形の亜鉛めっき鋼板からなる基材(一辺の長さ510mm、厚み0.5mm)の亜鉛めっき層が形成されていない面と、前記ポリイミドフィルムの前記配線が形成されていない面とを接着剤を用いて張り合わせた。実施例1と同様にして、前記基材、前記パーティクルボード(断熱層)及び亜鉛めっき鋼板(保護層)を張り合わせた後、カシメを行うことにより、フロアパネルを得た。実施例1と同様にして、得られたフロアパネルに通電したところ、フロアパネルの上面に積層させたタイルカーペット中央の温度が10℃上昇するのに15分間要した。このときのタイルカーペットの温度変化をサーモグラフィーで測定したところ、上面全体が均一に昇温したことが確認された。
【0058】
比較例1
図3に示される、フロアパネル11の下にヒーター12が設置された従来のフロアヒーター上面にタイルカーペットを積層させた。フロアヒーターに電力50Wで通電し、このときの温度変化をサーモグラフィーで測定した。タイルカーペット中央の温度が10℃上昇するのに60分間要した。通電開始から60分後のサーモグラフィー画像を図4図4の左図)に示す。図4に示されるとおり、タイルカーペット中心部に比べて周縁部の温度が著しく低かった。また、フロアカーペット中央の温度を38℃に制御して12時間通電したときの使用電力を測定し、上述のとおり、実施例1と比較したところ、比較例1と比較して、実施例1のフロアパネル1は30%以上消費電力が少なかった。ヒーター12からの熱がフロアパネル11上面まで伝わりにくいうえに、基礎床13に放熱されやすいため、消費電力が多く、昇温に長時間要するとともに、フロアカーペット表面の温度ムラが大きかったものと考えられる。
【符号の説明】
【0059】
1 フロアパネル
2 基材
3 絶縁層
4 配線
5 断熱層
6 保護層
7 周縁部
8 接続部
9、10 孔
11 フロアパネル
12 ヒーター
13 基礎床
図1
図2
図3
図4