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特開2022-12350パイプ、スプール形成金型、及び、パイプの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022012350
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】パイプ、スプール形成金型、及び、パイプの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 9/00 20060101AFI20220107BHJP
   B21D 41/02 20060101ALI20220107BHJP
   B21D 51/16 20060101ALI20220107BHJP
   F16L 9/02 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
F16L9/00 Z
B21D41/02 A
B21D51/16 B
F16L9/02
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020114147
(22)【出願日】2020-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】泉川 大輔
(72)【発明者】
【氏名】若山 実久人
(72)【発明者】
【氏名】細井 雅仁
(72)【発明者】
【氏名】角谷 高志
【テーマコード(参考)】
3H111
【Fターム(参考)】
3H111AA04
3H111BA02
3H111CB02
3H111CB14
3H111CB28
3H111DB08
3H111EA09
3H111EA18
(57)【要約】
【課題】スプールの高さのばらつきと、クラックの発生とを抑制する。
【解決手段】パイプ1は、第1側から第2側に延び、側壁12とスプール2とを備える。スプール2は、側壁12におけるパイプ1の外周面13から突出するように湾曲し、外周面13を囲むように延びる。また、側壁12におけるスプール2を形成する部分は、第1側に位置する第1部分20と、第2側に位置する第2部分21とを有する。また、スプール2の頂部22では、第1部分20と第2部分21との間に隙間が形成されており、根元部23では、第1部分20と第2部分21とが略当接する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1側から第2側に延びるパイプであって、
前記パイプの内部と外部とを隔てる側壁と、
前記側壁における前記パイプの外周面から突出するように湾曲した部分であって、前記外周面を囲むように延びる部分であるスプールと、を備え、
前記側壁における前記スプールを形成する部分は、前記第1側に位置する第1部分と、前記第2側に位置する第2部分とを有し、
前記スプールにおける外周側の端部を含む部分である頂部では、前記第1部分と前記第2部分との間に隙間が形成されており、
前記頂部と、前記側壁における前記スプールの周辺部分との間に位置する根元部では、前記第1部分と前記第2部分とが略当接する
パイプ。
【請求項2】
請求項1に記載されたパイプにおいて、
前記頂部における前記第1及び第2部分の少なくとも一方には、略平面状に広がる領域であるストレート部が形成されている
パイプ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載されたパイプにおいて、
前記スプールは、前記パイプにおける拡管又は縮管が行われた部分に形成されている
パイプ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載されたパイプにおいて、
前記パイプは、鉄製である
パイプ。
【請求項5】
パイプの外周面を囲むように延びるスプールを形成するため、他の金型と共に用いられるスプール形成金型であって、
前記スプールの形成の際、前記外周面を覆い、前記外周面を囲むように配置される外側面と、
前記スプールの形成の際、前記外周面に対し間隔を有しながら前記外周面を囲むように配置され、前記他の金型と当接するよう構成される当接面と、
前記外側面に繋がっており、前記スプールの形成の際、前記外周面を囲むように延び、前記当接面に当接した前記他の金型に対し間隔を有することで、前記当接面と前記外周面との間に、前記外周面を囲む空間を形成するよう構成される非当接面と、
を備え、
前記非当接面において、前記スプールの形成の際に前記外周面を囲むように延びる領域を内側領域とし、前記スプールの形成の際に前記外周面を囲むように延びる領域であって、前記内側領域よりも前記当接面側に位置する領域を、外側領域とし
前記外側領域は、前記内側領域よりも、前記他の金型の反対側に向かって陥没している
スプール形成金型。
【請求項6】
他の部材との接続に用いられ、外周面を囲むように延びるスプールが前記外周面に設けられたパイプの製造方法であって、
前記パイプを囲み、且つ、前記パイプに沿って並ぶようにスプール形成金型と他の金型とが配置され、
前記パイプの開口を囲む縁部を押圧しつつ、前記スプール形成金型と前記他の金型とを当接させることで、前記スプールが形成され、
前記スプール形成金型は、
前記スプールの形成の際、前記外周面を覆い、前記外周面を囲むように配置される外側面と、
前記スプールの形成の際、前記外周面に対し間隔を有しながら前記外周面を囲むように配置され、前記他の金型と当接するよう構成される当接面と、
前記外側面に繋がっており、前記スプールの形成の際、前記外周面を囲むように延び、前記当接面に当接した前記他の金型に対し間隔を有することで、前記当接面と前記外周面との間に、前記外周面を囲む空間を形成するよう構成される非当接面と、を備え、
前記非当接面において、前記スプールの形成の際に前記外周面を囲むように延びる領域を内側領域とし、前記スプールの形成の際に前記外周面を囲むように延びる領域であって、前記内側領域よりも前記当接面側に位置する領域を、外側領域とし
前記外側領域は、前記内側領域よりも、前記他の金型の反対側に向かって陥没しており、
前記他の金型は、
前記スプールの形成の際、前記外周面を覆い、前記外周面を囲むように配置される他の外側面と、
前記スプールの形成の際、前記外周面を囲むように配置され、前記スプール形成金型と当接するよう構成される他の当接面と、を備える
パイプの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スプールが形成されたパイプと、パイプにスプールを形成するためのスプール形成金型と、スプール形成金型を用いたパイプの製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
パイプの側壁の一部を外周面から突出するように湾曲させることで、外周面を周回するスプールを形成する技術が知られている。スプールは、パイプと他の部材とを接続するために用いられる。また、特許文献1に開示されているスプールの一例である円鍔部は、パイプの外周面から突出し、パイプの軸方向に重なる第1及び第2部分を有する。そして、これらの部分は、スプールの頂部における湾曲部で繋がっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-141580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の円鍔部では、第1及び第2部分の間には隙間が設けられていないため、スプールの頂部の湾曲の度合いが大きくなる。このため、スプールの頂部に応力が集中し、クラックが生じやすくなる。
【0005】
本開示の一態様においては、スプールの高さのばらつきと、クラックの発生とを抑制するのが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、第1側から第2側に延びるパイプであって、側壁と、スプールとを備える。側壁は、パイプの内部と外部とを隔てる。スプールは、側壁におけるパイプの外周面から突出するように湾曲した部分であって、外周面を囲むように延びる部分である。また、側壁におけるスプールを形成する部分は、第1側に位置する第1部分と、第2側に位置する第2部分とを有する。また、スプールにおける外周側の端部を含む部分である頂部では、第1部分と第2部分との間に隙間が形成されている。また、頂部と、側壁におけるスプールの周辺部分との間に位置する根元部では、第1部分と第2部分とが略当接する。
【0007】
上記構成によれば、スプールの根元部では、第1及び第2部分が略当接しているため、スプールの高さがばらつくのを抑制できる。一方、頂部では、第1及び第2部分の間に隙間が形成されているため、スプールの頂部の湾曲が大きくなり過ぎるのを抑制でき、頂部に応力が集中するのを抑制できる。したがって、スプールの高さのばらつきと、クラックの発生とを抑制できる。
【0008】
なお、頂部における第1及び第2部分の少なくとも一方には、略平面状に広がる領域であるストレート部が形成されていても良い。
上記構成によれば、スプールのストレート部と他の部材のロック機構とを面接触させることで、パイプと他の部材との接続をロックすることが可能となる。すなわち、ロックされているパイプと他の部材とを離隔させようとする際、ストレート部が他の部材のロック機構と面接触し、離隔を阻止するよう構成できる。これにより、ロックされているパイプと他の部材とを離隔させるのに必要な荷重が増加する。このため、パイプと他の部材とのロックが解除されるのを抑制できる。
【0009】
また、スプールは、パイプにおける拡管又は縮管が行われた部分に形成されていても良い。
パイプにおける拡管又は縮管が行われた部分は、他の部分に比べ、加工硬化が懸念される。これに対し、上記構成によれば、拡管又は縮管が行われた部分に形成されたスプールの頂部に応力が集中するのを抑制できる。このため、効果的にクラックの発生を抑制できる。
【0010】
また、パイプは、鉄製であっても良い。
上記構成によれば、スプールの高さのばらつきと、クラックの発生とを良好に抑制できる。
【0011】
また、本開示の一態様は、パイプの外周面を囲むように延びるスプールを形成するため、他の金型と共に用いられるスプール形成金型である。スプール形成金型は、外側面と、当接面と、非当接面とを備える。外側面は、スプールの形成の際、外周面を覆い、外周面を囲むように配置される。当接面は、スプールの形成の際、外周面に対し間隔を有しながら外周面を囲むように配置され、他の金型と当接するよう構成される。非当接面は、外側面に繋がっており、スプールの形成の際、外周面を囲むように延び、当接面に当接した他の金型に対し間隔を有することで、当接面と外周面との間に、外周面を囲む空間を形成するよう構成される。また、非当接面において、スプールの形成の際に外周面を囲むように延びる領域を内側領域とし、スプールの形成の際に外周面を囲むように延びる領域であって、内側領域よりも当接面側に位置する領域を、外側領域とする。そして、外側領域は、内側領域よりも、他の金型の反対側に向かって陥没している。
【0012】
このようなスプール形成金型と他の金型とを用いることで、頂部では第1部分と第2部分との間に隙間が形成されており、根元部では第1部分と第2部分とが略当接するスプールを形成できる。そして、スプールの根元部では、第1及び第2部分が略当接しているため、スプールの高さがばらつくのを抑制できる。一方、頂部では、第1及び第2部分の間に隙間が形成されているため、スプールの頂部の湾曲が大きくなり過ぎるのを抑制でき、頂部に応力が集中するのを抑制できる。したがって、スプールの高さのばらつきと、クラックの発生とを抑制できる。
【0013】
また、本開示の一態様は、他の部材との接続に用いられ、外周面を囲むように延びるスプールが外周面に設けられたパイプの製造方法である。該製造方法では、パイプを囲み、且つ、パイプに沿って並ぶようにスプール形成金型と他の金型とが配置される。そして、パイプの開口を囲む縁部を押圧しつつ、スプール形成金型と他の金型とを当接させることで、スプールが形成される。
【0014】
また、スプール形成金型は、外側面と、当接面と、非当接面とを備える。外側面は、スプールの形成の際、外周面を覆い、外周面を囲むように配置される。当接面は、スプールの形成の際、外周面に対し間隔を有しながら外周面を囲むように配置され、他の金型と当接するよう構成される。非当接面は、外側面に繋がっており、スプールの形成の際、外周面を囲むように延び、当接面に当接した他の金型に対し間隔を有することで、当接面と外周面との間に、外周面を囲む空間を形成するよう構成される。また、非当接面において、スプールの形成の際に外周面を囲むように延びる領域を内側領域とし、スプールの形成の際に外周面を囲むように延びる領域であって、内側領域よりも当接面側に位置する領域を、外側領域とする。外側領域は、内側領域よりも、他の金型の反対側に向かって陥没している。
【0015】
一方、他の金型は、他の外側面と、他の当接面とを備える。他の外側面は、スプールの形成の際、外周面を覆い、外周面を囲むように配置される。他の当接面は、スプールの形成の際、外周面を囲むように配置され、スプール形成金型と当接するよう構成される。
【0016】
上記構成によれば、頂部では第1部分と第2部分との間に隙間が形成されており、根元部では第1部分と第2部分とが略当接するスプールを有するパイプを製造できる。そして、スプールの根元部では、第1及び第2部分が略当接しているため、スプールの高さがばらつくのを抑制できる。一方、頂部では、第1及び第2部分の間に隙間が形成されているため、スプールの頂部の湾曲が大きくなり過ぎるのを抑制でき、頂部に応力が集中するのを抑制できる。したがって、スプールの高さのばらつきと、クラックの発生とを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】軸線に沿ったパイプの断面図である。
図2】パイプの軸線に沿ったスプールの断面図である。
図3】パイプの軸線に沿ったスプールの断面図である。
図4】パイプの軸線に沿ったスプールの断面図である。
図5】パイプの軸線に沿ったスプールの断面図である。
図6】パイプの軸線に沿ったスプールの断面図である。
図7】パイプの軸線に沿ったスプールの断面図である。
図8】パイプの軸線に沿ったスプールの断面図である。
図9】パイプの軸線に沿ったスプールの断面図である。
図10】パイプと、パイプに接続されたクイックコネクタとについての、パイプの軸線に沿った断面図である。
図11】パイプと第1及び第2金型とについての、パイプの軸線に沿った断面図である。
図12】パイプのスプールと第1及び第2金型とについての、パイプの軸線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本開示の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0019】
[1.パイプの概要]
本実施形態のパイプ1は、第1側から第2側へと軸線10に沿って略直線状に延びる(図1参照)。なお、パイプ1における軸線10に直交する断面は、一例として略円形であり、軸線10は該断面の略中心を通過する。以後、パイプ1における第2側の開口を、第2開口11と記載する。また、パイプ1は、一例として鉄製である。より詳しくは、パイプ1は、例えば、ステンレス製であっても良いし、ハイテン鋼により形成されていても良い。また、パイプ1は、鉄以外の金属により形成されていても良い。パイプ1は、側壁12と、拡管部15と、テーパ部16と、本体部17と、スプール2とを備える。
【0020】
側壁12は、パイプ1の内部と外部とを隔てる壁状の部位である。側壁12の外側の面はパイプ1の外周面13を形成し、内側の面は内周面14を形成する。
拡管部15は、パイプ1における径を拡大させるための加工(以後、拡管)が施された部分である。本実施形態では、一例として、パイプ1の第2側の端部に、拡管部15が設けられている。この他にも、パイプ1には、例えば、径を縮小させるための加工(以後、縮管)が施された部分が設けられていても良い。パイプ1における拡管又は縮管が施された部分は、他の部分に比べ加工硬化が懸念される。
【0021】
一方、本体部17は、パイプ1における拡管がなされていない部分であり、テーパ部16は、本体部17と拡管部15とを繋ぐ部分である。テーパ部16は、テーパ状であり、第2側に向かうに従い径が大きくなる。
【0022】
スプール2は、パイプ1の第2開口11の付近に設けられる。スプール2は、パイプ1の外周面13から突出し、外周面13を囲むように延びる。スプール2は、側壁12の一部を外周面13から突出するように湾曲させることで形成される。また、詳細は後述するが、スプール2は、パイプ1を他の部材に接続するために用いられる。
【0023】
また、本実施形態では、スプール2は、一例として、拡管部15に形成されている。しかし、スプール2は、例えば、パイプ1における縮管がなされた部分に形成されていても良い。また、スプール2は、例えば、パイプ1における拡管及び縮管がなされていない部分に形成されていても良い。
【0024】
[2.スプールについて]
スプール2は、側壁12の一部である第1及び第2部分20、21を有する(図2~9参照)。第1及び第2部分20、21は、側壁12の一部における外周面13から突出するように湾曲した部分である。第1及び第2部分20、21は、軸線10の方向に沿って重なっており、第1部分20は第1側に、第2部分21は第2側にそれぞれ位置する。
【0025】
また、スプール2における外周側の端部を含む部分を、頂部22と記載する。また、頂部22と、側壁12におけるスプール2の周辺部分との間の部分を、根元部23と記載する。頂部22及び根元部23は、それぞれ、軸線10を囲むように延びる。
【0026】
つまり、頂部22は、第1及び第2部分20、21の外周側の端部を含んでおり、第1及び第2部分20、21が繋がる湾曲部を形成する。また、根元部23は、第1及び第2部分20、21における頂部22の内周側の部分を含んでいる。
【0027】
そして、頂部22では、第1及び第2部分20、21の間に隙間が形成されており、該隙間は、軸線10を囲むように延びる。具体的には、第1及び第2部分20、21の少なくとも一方は、当該部分が位置する側に膨らむように湾曲しており、該湾曲により該隙間が形成される。
【0028】
具体的には、図2~7に示すように、頂部22では、第1及び第2部分20、21が、それぞれ、第1側、第2側に膨らむように湾曲していても良い。また、図8、9に示すように、頂部22では、第2部分21のみが第2側に膨らむように湾曲していても良い。無論、頂部22では、第1部分20のみが第1側に膨らむように湾曲していても良い。
【0029】
また、図2~5に示すように、頂部22における第1及び第2部分20、21は、軸線10に直交する基準面を中心に略対称となる形状であっても良い。また、図6~9に示すように、頂部22における第1及び第2部分20、21は、非対称な形状であっても良い。
【0030】
一方、根元部23では、第1及び第2部分20、21が略当接しており、該当接した部分は、軸線10を囲むように延びる。すなわち、略当接とは、根元部23における第1及び第2部分20、21が当接するか(図2、3、6、8参照)、又は、該第1及び第2部分20、21が若干の隙間を空けて近接していることを意味する(図4、5、7、9参照)。詳細は後述するが、スプール2を形成する際には、根元部23にて第1及び第2部分20、21が当接した状態となるようにパイプ1が押圧される。しかし、スプリングバックにより、押圧を解除した後、根元部23の全部又は一部で、第1部分20と第2部分21とが離れる可能性がある。根元部23における第1及び第2部分20、21が近接した状態は、一例として、スプリングバックにより第1部分20と第2部分21とが離れことで発生し得る。
【0031】
また、図3、5、8、9に示すように、頂部22には、軸線10と交差する向きに略平面状に広がる領域であるストレート部24が形成されていても良い。本実施形態では、ストレート部24は、一例として、軸線10に略直交する向きに広がる。しかし、ストレート部24の向きは、適宜定められ得る。また、詳細は後述するが、ストレート部24は、パイプ1と他の部材との接続をロックするために用いられる。
【0032】
また、本実施形態では、一例として、頂部22における第1部分20にストレート部24が形成される。しかし、頂部22における第2部分21にストレート部24が形成されても良い。また、第1及び第2部分20、21に、ストレート部24が形成されても良い。
【0033】
また、図3、5に示すように、頂部22の第1部分20の一部にストレート部24が形成されても良い。また、図8、9に示すように、頂部22の第1部分20の全部にストレート部24が形成され、頂部22の第1部分20と根元部23の第1部分20とが、面一になるように形成されていても良い。
【0034】
[3.パイプの接続について]
本実施形態のパイプ1は、一例として、車両に搭載され、車両の燃料の流路として用いられる。パイプ1の第2開口11は、車両に搭載されるクイックコネクタ7の接続口70に接続される(図10参照)。クイックコネクタ7は、樹脂製の部材であり、本体部71と、開口部72と、チャッカー73とを備える。
【0035】
本体部71は、パイプ1を挿入可能な穴部が形成されている。なお、穴部の径はパイプ1におけるスプール2の径よりも小さく、パイプ1におけるスプール2よりも第2側の部分が、本体部71に挿入可能となっている。
【0036】
開口部72は、本体部71の穴部の開口を囲むように設けられる。このため、穴部に接続されたパイプ1のスプール2は、開口部72の内側に位置する。以後、開口部72の内側にスプール2が位置するときのパイプ1の位置を、接続位置と記載する。
【0037】
チャッカー73は、接続口70を囲むように開口部72に設けられており、本体部71に挿入されたパイプ1に対し接近したり離れたりすることで、ロック位置と開放位置とに変位可能となっている。
【0038】
チャッカー73が開放位置にある場合、パイプ1におけるスプール2が形成された部分は、チャッカー73を通過可能となる。このため、接続位置に到達するまでパイプ1をクイックコネクタ7に挿入可能であると共に、接続位置にあるパイプ1を、クイックコネクタ7から抜くことが可能となる。
【0039】
一方、チャッカー73がロック位置にある場合、接続位置にあるパイプ1のスプール2は、チャッカー73により係止される。このため、パイプ1をクイックコネクタ7から抜こうとしても、スプール2がチャッカー73に当接し、パイプ1を抜くことができない。なお、図10に示すように、スプール2の第1部分20にストレート部24が形成されている場合には、接続位置にあるパイプ1をチャッカー73から抜こうとした際、ストレート部24と、ロック位置にあるチャッカー73とが面接触し得る。その結果、チャッカー73によりロックされたパイプ1を、クイックコネクタ7から無理やり抜くために必要な荷重が増加する。また、チャッカー73がロック位置にある場合には、接続位置に到達するまでパイプ1をクイックコネクタ7に挿入することができない。
【0040】
[4.金型セットについて]
次に、パイプ1の第2開口11の付近にスプール2を形成するために用いられる金型セット3について説明する(図11、12参照)。金型セット3は、一例として、図8又は9に示されているスプール2を形成するよう構成されており、第1金型4と第2金型5とを備える。スプール2の形成時には、第1及び第2金型4、5は、パイプ1の外周面13に隣接し、且つ、外周面13を囲むように配置される。この時、第1及び第2金型4、5は、軸線10に沿って並び、第1金型4が第1側に位置すると共に、第2金型5が第2側に位置する。
【0041】
第1金型4は、スプール2の形成時にはパイプ1により貫通された状態となり、第1外側面40と第1当接面41とを備える。
第1外側面40は、スプール2の形成時に、パイプ1の外周面13を囲むように配置され、外周面13におけるスプール2の形成位置よりも第1側の領域を覆う。具体的には、第1外側面40は、拡管部15におけるスプール2の第1側の部分と、テーパ部16と、本体部17とを覆う。
【0042】
第1当接面41は、第1外側面40における第2側の端部に繋がる略平面であり、スプール2の形成時に、外周面13を囲むように配置され、該端部からパイプ1の径方向の外側に広がり、第2金型5の第2当接面61に当接するよう構成される。また、第1当接面41は、スプール2の形成位置に配置される。また、本実施形態では、一例として、第1当接面41は、パイプ1の軸線10に略直交する向きに広がる。しかし、第1当接面41の向きは、適宜定められ得る。
【0043】
第2金型5は、基部50と、内側部51と、押圧部53と、外側部6とを備える。
基部50は、スプール2の形成時に、パイプ1の第2開口11に対面するように配置される。内側部51及び外側部6は、基部50から突出するように設けられる。
【0044】
内側部51は、円柱状の部位であり、スプール2の形成時には、第2開口11からパイプ1の内部に挿入され、軸線10に沿って延びた状態となる。この時、内側部51の端部は、一例として、拡管部15におけるスプール2の形成位置よりも第1側の位置まで到達する。しかし、これに限らず、内側部51の端部は、例えば、テーパ部16又は本体部17まで到達しても良い。また、内側部51における外周面を、内側面52とする。スプール2の形成時には、内側面52の全域がパイプ1の内周面14を覆う。
【0045】
外側部6は、内側部51の内側面52に対し隙間を開けた状態で、内側面52を囲むように設けられる。外側部6は、スプール2の形成時に、軸線10に沿って延びるように配置され、外側部6と内側部51との間に、パイプ1の側壁12が配置される。
【0046】
外側部6は、第2外側面60と、第2当接面61と、頂面62と、非当接面63とを備える。
第2外側面60は、スプール2の形成時に、外周面13を囲むように配置され、外周面13におけるスプール2の形成位置よりも第2側の領域全体を覆う。
【0047】
第2当接面61は、スプール2の形成時に、外周面13に対し間隔を有しながら外周面13を囲むように配置される。第2当接面61は、パイプ1の径方向に広がる略平面であり、第1当接面41に当接するよう構成される。また、第2当接面61は、スプール2の形成位置に配置される。また、本実施形態では、一例として、第2当接面61は、パイプ1の軸線10に略直交する向きに広がる。しかし、第2当接面61の向きは、適宜定められ得る。
【0048】
頂面62は、スプール2の形成時に、第2当接面61における外周面13側の端部から第2側に広がり、外周面13との距離を略一定に保ちながら、外周面13を囲むように延びる。
【0049】
非当接面63は、スプール2の形成時に、頂面62における第2側の端部から、第2外側面60における第1側の端部まで広がり、外周面13を囲むように延びる。また、この時、非当接面63は、第2当接面61に当接した第1金型4の第1当接面41に対し間隔を有することで、第2当接面61と外周面13との間に、外周面13を囲む空間(以後、スプール空間)を形成する。
【0050】
そして、非当接面63は、外側領域64と内側領域65とを有する。内側領域65は、第2外側面60に沿って外周面13を囲むように延びる。一方、外側領域64は、外周面13を囲むように延び、内側領域65よりも第2当接面61側(換言すれば、外側)に位置する。外側領域64は、頂面62に隣接し、頂面62に沿って外周面13を囲むように延びる。そして、外側領域64は、内側領域65よりも第2側に陥没するように形成される。
【0051】
さらに、押圧部53は、基部50における内側部51と外側部6との間の隙間の奥に位置する部位である。スプール2の形成時には、外側部6と内側部51との間に配置されたパイプ1の側壁12における第2側の端部は、押圧部53により押圧される。換言すれば、スプール2の形成時には、パイプ1の第2開口11を囲む縁部は、押圧部53により押圧される。
【0052】
[5.スプールの形成について]
次に、金型セット3を用いたパイプ1におけるスプール2の形成方法について説明する。換言すれば、該形成方法は、スプール2が形成されたパイプ1の製造方法に該当する。該形成方法は、配置ステップと、押圧ステップとを有する。
【0053】
配置ステップでは、拡管部15、テーパ部16、及び本体部17が形成されており、スプール2が形成されていないパイプ1を囲むように、第1及び第2金型4、5を配置する(図11参照)。この時、第1金型4が第1側に、第2金型5が第2側にそれぞれ配置され、第1金型4の第1外側面40の全域が、パイプ1の外周面13におけるスプール2の形成位置よりも第1側の部分を覆う。
【0054】
また、この時、第2金型5における内側部51と外側部6との間に、パイプ1における第2側の端部を含む部分が挿入される。これにより、第2金型5の第2外側面60の全域が、パイプ1の外周面13におけるスプール2の形成位置よりも第2側の部分を覆い、第2金型5の内側面52の全域が、パイプ1の内周面14を覆う。また、第2金型5の押圧部53は、パイプ1の第2開口11を囲む縁部に当接する。また、この時、第1金型4の第1当接面41と、第2金型5の第2当接面61とは、間隔を有している。
【0055】
続く押圧ステップでは、第1金型4の第1当接面41と第2金型5の第2当接面61とが当接するよう、第1及び第2金型4、5のうちの少なくとも一方を変位させる。具体的には、例えば、第2金型5を第1側へと変位させても良いし、第1金型4を第2側へと変位させても良いし、第2金型5を第1側へと変位させつつ、第1金型4を第2側へと変位させても良い。これにより、パイプ1の第2開口11を囲む縁部が、第2金型5の押圧部53により押圧される。また、該押圧は、第1当接面41と第2当接面61とが当接するまで行われる。
【0056】
この時、パイプ1の外周面13におけるスプール2の形成位置では、第2金型5の頂面62及び非当接面63により、外周面13を囲むように延びるスプール空間が形成される。一方、外周面13におけるスプール2の形成位置以外の部分は、第1金型4の第1外側面40と、第2金型5の第2外側面60とにより覆われている。また、パイプ1の内周面14は、第2金型5の内側面52により覆われている。
【0057】
このため、押圧部53によるパイプ1の第2開口11の縁部の押圧により、パイプ1の側壁12におけるスプール空間に隣接する部分は、スプール空間へと突出するように湾曲し、該湾曲した部分がスプール2を形成する。そして、該湾曲した部分における第1側、第2側の部分が、それぞれ、第1部分20、第2部分21を形成する。
【0058】
また、スプール空間の第1側、第2側には、それぞれ、第1当接面41、非当接面63が配置される。このため、新たに形成されるスプール2は、これらの面により挟持され、該スプール2の第1部分20、第2部分21は、それぞれ、第1当接面41、非当接面63により押圧される。
【0059】
そして、第1当接面41は略平面状に広がる。このため、新たに形成されるスプール2の第1部分20は、図8、9に示すように、軸線10に略直交する向きに略平面状に広がる。また、非当接面63は、外側領域64が内側領域65よりも第2側に陥没している。このため、該スプール2の第2部分21では、内側領域65により、根元部23が第1側に向けて押圧され、頂部22は第2側に膨らむように湾曲する。その結果、根元部23では、第2部分21は第1部分20に当接する。なお、該押圧の終了後、スプリングバックにより、根元部23では、第2部分21が第2側に変位し、第1及び第2部分20、21の間に若干の隙間が生じ得る(図9参照)。一方、頂部22では、第2部分21は、第2側に湾曲した結果、第1部分20との間に隙間を形成する。
【0060】
[6.効果]
(1)上記実施形態のパイプ1によれば、スプール2の根元部23では、第1及び第2部分20、21が略当接しているため、スプール2の高さがばらつくのを抑制できる。一方、頂部22では、第1及び第2部分20、21の間に隙間が形成されているため、スプール2の頂部22の湾曲が大きくなり過ぎるのを抑制でき、頂部22に応力が集中するのを抑制できる。特に、例えば第1、第2金型4、5によりパイプ1にスプール2を形成した後、これらの金型をパイプ1から離す際にスプール2が引っ張られる可能性があるが、このような引っ張りによりスプール2の頂部22に内部クラックが生じるのを抑制できる。したがって、スプールの高さのばらつきと、クラックの発生とを抑制できる。
【0061】
(2)また、スプール2の第1部分20に形成されたストレート部24と、クイックコネクタ7のチャッカー73とを面接触させることで、クイックコネクタ7とパイプ1との接続がロックされる。これにより、ロックされたパイプ1をクイックコネクタ7から無理やり抜くのに必要な荷重が増加する。このため、パイプと他の部材とのロックが解除されるのを抑制できる。
【0062】
(3)また、スプール2は、拡管部15に形成されており、加工硬化している可能性のある部分で、スプール2の頂部22に応力が集中するのを抑制できる。このため、効果的にクラックの発生を抑制できる。
【0063】
(4)また、上記実施形態の金型セット3を用いることで、好適にパイプ1にスプール2を形成できる。
[7.他の実施形態]
(1)上記実施形態では、パイプ1における直線状に延びる部分にスプール2が形成されている。しかし、パイプにおける湾曲した部分に、上記実施形態と同様のスプールが形成されていても良い。
【0064】
(2)上記実施形態では、第2金型5は、内側部51と外側部6とが一体化された構成を有している。しかし、内側部51と外側部6とは、別の金型として構成されていても良い。そして、配置ステップと同様にして、外側部6に相当する金型(以後、外側金型)と内側部51に相当する金型(以後、内側金型)とを配置しても良い。さらに、押圧ステップと同様にして、パイプ1の第2開口11を囲む縁部を第1側に押圧しつつ、外側金型、内側金型、及び第1金型4を変位させても良い。このような場合であっても、同様にしてスプール2を形成できる。
【0065】
(3)上記実施形態の第1金型4における第1当接面41には、第2金型5の第2当接面61に設けられているものと同様の頂面及び非当接面が形成されていても良い。これにより、第1当接面41は、スプール2の形成時に、外周面13に対し間隔を有しつつ外周面13を囲むように配置され、第1及び第2当接面41、61の内側に、スプール空間が形成される。このため、図2~7のように、頂部22にて、第1及び第2部分20、21の各々が、第1側、第2側に膨らむように湾曲したスプール2が形成される。
【0066】
さらに、第1金型4の第1当接面41に頂面及び非当接面を設けると共に、第2金型5の第2当接面61には頂面及び非当接面を設けず、第2当接面61を、第2外側面60の第1側の端部に繋がる面として構成しても良い。このような第1、第2金型4、5を用いることで、第2部分21が略平面状に広がり、頂部22にて第1部分20が第1側に膨らむスプール2が形成される。
【0067】
(4)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0068】
[9.文言の対応関係]
上記実施形態の第1金型4が他の金型の一例に、第2金型5がスプール形成金型の一例にそれぞれ相当する。また、第1外側面40、第1当接面41が、それぞれ、他の金型における他の外側面、他の当接面の一例に相当する。また、第2外側面60、第2当接面61が、それぞれ、スプール形成金型の外側面、当接面の一例に相当する。
【符号の説明】
【0069】
1…パイプ、10…軸線、11…第2開口、12…側壁、13…外周面、15…拡管部、2…スプール、20…第1部分、21…第2部分、22…頂部、23…根元部、24…ストレート部、3…金型セット、4…第1金型、40…第1外側面、41…第1当接面、5…第2金型、51…内側部、52…内側面、53…押圧部、6…外側部、60…第2外側面、61…第2当接面、62…頂面、63…非当接面、64…外側領域、65…内側領域、7…クイックコネクタ、73…チャッカー。
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