(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022123515
(43)【公開日】2022-08-24
(54)【発明の名称】微細水粒子放出装置および微細水粒子放出方法
(51)【国際特許分類】
A61L 9/015 20060101AFI20220817BHJP
A61L 9/22 20060101ALI20220817BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20220817BHJP
B05B 5/03 20060101ALI20220817BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20220817BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20220817BHJP
A01N 59/00 20060101ALI20220817BHJP
A01N 25/02 20060101ALI20220817BHJP
A61L 2/18 20060101ALI20220817BHJP
A61P 17/00 20060101ALN20220817BHJP
A61K 33/00 20060101ALN20220817BHJP
A61K 8/19 20060101ALN20220817BHJP
A61Q 19/00 20060101ALN20220817BHJP
A61L 101/10 20060101ALN20220817BHJP
A61L 101/22 20060101ALN20220817BHJP
【FI】
A61L9/015
A61L9/22
A61L9/01 E
B05B5/03
A01P1/00
A01P3/00
A01N59/00 A
A01N25/02
A61L2/18 100
A61L2/18 102
A61P17/00 101
A61K33/00
A61K8/19
A61Q19/00
A61L101:10
A61L101:22
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021020873
(22)【出願日】2021-02-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 明良
(72)【発明者】
【氏名】山黒 顕
(72)【発明者】
【氏名】井上 慎介
【テーマコード(参考)】
4C058
4C083
4C086
4C180
4F034
4H011
【Fターム(参考)】
4C058AA23
4C058AA28
4C058BB07
4C058DD07
4C058EE26
4C058JJ07
4C058JJ24
4C083AB051
4C083CC03
4C083EE11
4C083FF04
4C086AA10
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4C086MA63
4C086ZA90
4C180AA07
4C180AA10
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4C180DD17
4C180EA17X
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4C180HH02
4C180HH03
4C180HH05
4C180LL06
4F034AA08
4F034BA14
4F034BB04
4F034BB07
4F034BB12
4F034BB15
4H011AA02
4H011AA04
4H011BA01
4H011BB18
4H011BC18
4H011DA21
(57)【要約】
【課題】 菌或いはウイルスを除去しつつ、微細水粒子を放出することができる、微細水粒子放出装置を提供すること。
【解決手段】 微細水粒子放出装置1は、筒状のケース13と、ケース13内に収容され、無帯電且つ粒径50nm以下の微細水粒子を発生可能な微細水粒子発生素子11と、ケース13の一方端から空気を流入させるとともに他方端から空気を放出させるファン12と、アース極141及び放電極142を有し、電圧印加によりこれらの間の放電空間DSにて放電可能に構成され、微細水粒子発生素子11にて発生した微細水粒子が空気とともに放電空間DSを通過するように、微細水粒子発生素子11の下流に配設された放電素子14と、微細水粒子発生素子11にて発生する水分の量である発生水分量及び放電を制御することができる制御装置40と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端が開口した筒状に形成されたケースと、
前記ケース内に収容され、無帯電であり且つ粒径が50ナノメートル以下の微細水粒子を発生することができるように構成される微細水粒子発生素子と、
前記ケースの一方端から空気を前記ケース内に流入させるとともに前記ケース内に流入した空気を前記ケースの他方端から放出させることができるように動作する送風部材と、
互いに離間した第一電極及び第二電極を有し、前記第一電極と前記第二電極との間に電圧が印加されることにより前記第一電極と前記第二電極との間の放電空間にて放電を起こすことができるように構成され、前記微細水粒子発生素子にて発生した前記微細水粒子が前記送風部材の動作により前記ケース内に流入した空気とともに前記放電空間を通過するように、前記微細水粒子発生素子の下流に配設された放電素子と、
前記微細水粒子発生素子にて発生する水分の量である発生水分量及び前記放電を制御する制御装置と、
を備える、
微細水粒子放出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の微細水粒子放出装置であって、
前記放電素子が前記ケース内に収容されている、微細水粒子放出装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の微細水粒子放出装置であって、
前記微細水粒子発生素子は、導電性の基材及び前記基材の表面に形成された導電性高分子膜を備え、前記導電性高分子膜に吸収されている水分を放出することにより前記微細水粒子が発生し、前記導電性高分子膜の温度が高いほど前記発生水分量が多くなるように構成されている、微細水粒子放出装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の微細水粒子放出装置であって、
前記制御装置は、前記放電素子に通電される電流の値である放電電流値が、前記放電空間内でコロナ放電が起きるための放電電流値の上限である上限電流値以下となるように、前記放電電流値に基づいて前記発生水分量を制御する安定化制御処理を実行し得るように構成される、微細水粒子放出装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の微細水粒子放出装置であって、
前記制御装置は、前記放電空間にて放電が起きることにより生成されるオゾンと過酸化水素の発生量を、前記発生水分量を制御することにより制御するガス発生量制御処理を実行し得るように構成される、微細水粒子放出装置。
【請求項6】
請求項5に記載の微細水粒子放出装置であって、
前記制御装置は、
前記微細水粒子放出装置の動作モードがオゾン抑制及び過酸化水素増加モードであるときに、前記ガス発生量制御処理にて、前記発生水分量が所定の高水分量以上に維持されるように前記発生水分量を制御する高水分量制御を実行し、
前記動作モードがオゾン増加及び過酸化水素抑制モードであるときに、前記ガス発生量制御処理にて、前記発生水分量が、前記高水分量よりも少ない所定の低水分量以下に維持されるように前記発生水分量を制御する低水分量制御を実行する、微細水粒子放出装置。
【請求項7】
請求項3乃至6のいずれか1項に記載の微細水粒子放出装置であって、
前記制御装置は、
前記放電空間にて放電が起きていない状態にて前記微細水粒子発生素子から前記微細水粒子が発生している無帯電微細水粒子放出モードと、前記放電空間にて放電が起きている状態にて前記微細水粒子発生素子から前記微細水粒子が発生している帯電微細水粒子放出モードとを、任意のタイミングで切り替えることができる交互運転処理を実行し得るように構成される、微細水粒子放出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な水粒子を放出できるように構成された微細水粒子放出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、微細水粒子放出装置を開示する。特許文献1に開示の微細水粒子放出装置は、導電性高分子膜であるPEDOT/PSSのコアシェル構造の積層体膜に水分が吸収される作用、及び、吸収された水分が無帯電の微細水粒子として放出される作用、を利用して、微細水粒子を放出するように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
(発明が解決しようとする課題)
ナノサイズの微細水粒子を人体の皮膚に照射すると、微細水粒子が効率的に皮膚に浸透して皮膚を保湿することができる。また、人体の皮膚表面には数多くの常在菌が存在するが、ナノサイズの微細水粒子はこれら常在菌の増殖を促進することも知られている。よって、ナノサイズの微細水粒子を皮膚に照射した場合、皮膚表面の常在菌のうち、表皮ブドウ球菌のような有益菌が増殖することは好ましいが、黄色ブドウ球菌のような悪玉菌が増殖することは好ましくない。さらに、皮膚表面、毛髪、衣類等に病原性の高いウイルス、菌が付着しているような場合には、微細水粒子の照射により皮膚表面等に付着したウイルス、菌が増殖する虞がある。このような事態の発生も防止しなければならない。
【0005】
また、ナノサイズの微細水粒子を人体の毛髪、特に頭髪に照射すると、微細水粒子が効率的に毛髪に浸透して毛髪に潤いを与えることができる。しかし、毛髪が静電気を帯びていると、毛髪を痛め、毛髪の櫛通りを悪化させる。従って、静電気を除去するのが望ましいが、無帯電の微細水粒子は毛髪の静電気を十分に除去することができない。
【0006】
そこで、本発明は、菌或いはウイルスを除去しつつ、微細水粒子を放出することができる、微細水粒子放出装置を提供することを目的とする。また、本発明は、静電気を効率的に除去しつつ、微細水粒子を放出することができる、微細水粒子放出装置を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、両端が開口した筒状に形成されたケース(13)と、ケース内に収容され、無帯電であり且つ粒径が50ナノメートル以下の微細水粒子を発生することができるように構成される微細水粒子発生素子(11)と、ケースの一方端から空気をケース内に流入させるとともにケース内に流入した空気をケースの他方端から放出させることができるように動作する送風部材(12)と、互いに離間した第一電極(141)及び第二電極(142)を有し、第一電極と第二電極との間に電圧が印加されることにより第一電極と第二電極との間の放電空間(DS)にて放電を起こすことができるように構成され、微細水粒子発生素子にて発生した微細水粒子が送風部材の動作によりケース内に流入した空気とともに放電空間を通過するように、微細水粒子発生素子の下流に配設された放電素子(14)と、微細水粒子発生素子にて発生する水分の量である発生水分量及び放電を制御する制御装置(40)と、を備える、微細水粒子放出装置(1)を提供する。
【0008】
本発明に係る微細水粒子放出装置によれば、微細水粒子発生素子にて発生した無帯電の微細水粒子(無帯電微細水粒子)が送風部材の動作により空気とともに放電空間を通過する。このとき放電空間にて放電が起きている場合、放電空間内にプラズマ領域が形成される。このプラズマ領域を空気及び無帯電微細水粒子が通過することにより、空気及び水を原料としたイオンが生成され、無帯電微細粒子の一部が前記イオンと結合して帯電した微細水粒子(帯電微細水粒子)が生成される。また、同様にこのプラズマ領域を空気及び無帯電微細水粒子が通過することにより、酸素を原料としてオゾンが生成され、主に水を原料として過酸化水素が生成される。従って、本発明に係る微細水粒子放出装置から、帯電微細水粒子、無帯電微細水粒子、オゾン、及び過酸化水素等を放出することができる。
【0009】
オゾン或いは過酸化水素は抗菌作用及び抗ウイルス作用を有する。従って、本発明に係る微細水粒子放出装置からの放出物質を例えば人体の皮膚に照射した場合、放出物質のうちオゾン、過酸化水素により皮膚表面に付着した菌或いはウイルスを除去することができる。さらに、オゾン、過酸化水素が、同時に放出される無帯電微細水粒子或いは帯電微細水粒子と結合することで、皮膚等の対象物の表面にオゾン或いは過酸化水素が吸着、浸透しやすくなって、抗菌作用及び抗ウイルス作用をより発揮しやすくなることが期待できる。また、放出物質のうちの無帯電微細水粒子或いは帯電微細水粒子が人体の皮膚に浸透して皮膚を保湿することができる。つまり、本発明に係る微細水粒子放出装置によれば、菌或いはウイルスを除去しつつ、微細水粒子を放出することができる。
【0010】
また、本発明に係る微細水粒子放出装置によれば、放電素子の電極に負電圧を印加した場合は、負に帯電した帯電微細水粒子を生成することができ、放電素子の電極に正電圧を印加した場合は、正に帯電した帯電微細水粒子を生成することができる。また、放電素子の電極に交番電圧(交流電圧等)を印加すると、正及び負に帯電した帯電微細水粒子を生成することができる。そして、本発明に係る微細水粒子放出装置からの放出物質を人体の毛髪に照射した場合、放出物質のうちの帯電微細水粒子により静電気を除去することができる。すなわち、人体の毛髪は一般的に正に帯電しているため、前記の方法により負に帯電した帯電微細水粒子を放出することにより、毛髪の静電気を中和、除去することが可能である。また、毛髪に限らず様々なものの静電気除去が可能である。例えば衣類等は、材質により正、負それぞれに帯電するが、そのように帯電した衣類等の静電気を中和、除去することも可能である。また、本発明に係る微細水粒子放出装置からの放出物質のうちの無帯電微細水粒子が人体の毛髪に浸透して毛髪に潤いを与えることができる。つまり、本発明に係る微細水粒子放出装置によれば、静電気を除去しつつ、微細水粒子を放出して例えば保湿を行うことができる。
【0011】
放電素子は、ケース内に収容されているとよい。これによれば、ケース内に微細水粒子発生素子及び放電素子が収納されることにより、微細水粒子発生素子及び放電素子が一体化される。このため微細水粒子放出装置をコンパクトに構成することができる。また、微細水粒子発生素子及び放電素子を交換する場合には、ケースごと交換すればよいので、メンテナンス性が向上する。
【0012】
微細水粒子発生素子は、導電性の基材(111)及び基材の表面に形成された導電性高分子膜(112)を備え、導電性高分子膜に吸収されている水分を放出することにより微細水粒子が発生し、導電性高分子膜の温度が高いほど発生水分量が多くなるように構成されているとよい。これによれば、導電性高分子膜の温度制御により、発生水分量を制御することができる。なお、本明細書に言う「発生水分量」とは、単位時間当たりにおける、微細水粒子発生素子にて発生する水分の量である。ここで、本発明に係る微細水粒子発生素子から、主に微細水粒子及び水蒸気分子が発生する。従って、発生水分量は、微細水粒子及び水蒸気分子の単位時間当たりにおける発生量である。
【0013】
また、制御装置は、放電素子に通電される電流の値である放電電流値(i)が、放電空間内でコロナ放電が起きるための放電電流値の上限である上限電流値(imax)以下となるように、放電電流値に基づいて発生水分量を制御する安定化制御処理を実行し得るように構成されるとよい。これによれば、制御装置が安定化制御処理を実行することにより、放電空間にて安定的にコロナ放電が起きる。このため帯電微細水粒子、オゾン及び過酸化水素を安定的に放出することができる。
【0014】
また、制御装置は、放電空間にて放電が起きることにより生成されるオゾンと過酸化水素の発生量を、発生水分量を制御することにより制御するガス発生量制御処理を実行し得るように構成されるとよい。これによれば、制御装置がガス発生量制御処理を実行することにより、微細水粒子放出装置から放出されるオゾンの発生量及び過酸化水素の発生量を制御することができる。
【0015】
この場合、制御装置は、微細水粒子放出装置の動作モードがオゾン抑制及び過酸化水素増加モードであるときに、ガス発生量制御処理にて、発生水分量が所定の高水分量以上に維持されるように発生水分量を制御する高水分量制御を実行し、動作モードがオゾン増加及び過酸化水素抑制モードであるときに、ガス発生量制御処理にて、発生水分量が、高水分量よりも少ない所定の低水分量以下に維持されるように発生水分量を制御する低水分量制御を実行するとよい。
【0016】
本発明に係る微細水粒子放出装置を用いて人体の皮膚を保湿するような場合、オゾン、過酸化水素及び微細水粒子を皮膚に照射することができる。オゾン或いは過酸化水素は皮膚表面に付着した菌或いはウイルスを除去する効果を有するが、過酸化水素と比較してオゾンの方が人体に対する有害性が高いため、オゾンの照射量が多いと人体に悪影響を及ぼす虞がある。従って、このような場合には、微細水粒子放出装置の動作モードが、オゾンの発生量を抑制(減少)するとともに過酸化水素の発生量を増加して、オゾン濃度を人体に対し安全な濃度に抑えつつ菌或いはウイルスを除去する効果を有するオゾン抑制及び過酸化水素増加モードであるのがよい。このオゾン抑制及び過酸化水素増加モードであるときに制御装置がガス発生量制御処理にて発生水分量を所定の高水分量以上に維持する高水分量制御を実行することにより、放電空間内の湿度が高めに維持され、これによりオゾンの発生量が抑えられ、過酸化水素の発生量が増加する。このためオゾンの照射による悪影響の発生を防止しながら微細水粒子を人体に照射して皮膚の保湿等を図ることができる。一方、例えば本発明に係る微細水粒子放出装置を用いて人のいない室内を除菌しながら加湿するような場合には、オゾンの発生量を多くして効率的に室内除菌を図るのがよい。従って、効率的な室内除菌を図るためには、微細水粒子放出装置の動作モードが、多量のオゾンが放出されるオゾン増加及び過酸化水素抑制モードであるのがよい。このオゾン増加及び過酸化水素抑制モードであるときに制御装置がガス発生量制御処理にて発生水分量を所定の低水分量以下に維持する低水分量制御を実行することにより、放電空間内の湿度が低めに維持され、これにより多量のオゾンが発生する。このため効率的に室内除菌を行うことができる。
【0017】
また、制御装置は、放電空間にて放電が起きていない状態にて微細水粒子発生素子から微細水粒子が発生している無帯電微細水粒子放出モードと、放電空間にて放電が起きている状態にて微細水粒子発生素子から微細水粒子が発生している帯電微細水粒子放出モードとを、任意のタイミングで切り替えることができる交互運転処理を実行し得るように構成されていてもよい。これによれば、制御装置が交互運転処理を実行することにより、無帯電微細水粒子放出モードと帯電微細水粒子放出モードが交互に切り替わる。これにより、例えば帯電微細水粒子放出モードであるときにオゾン及び過酸化水素を人体に照射することによって除菌或いは静電気の除去を行い、無帯電微細水粒子放出モードであるときに無帯電微細水粒子を人体に照射して皮膚の保湿或いは毛髪への水分供給を行うことができる。また、無帯電微細水粒子放出モードであるときに無帯電微細水粒子を有益菌に照射してこれらの培養を促進し、その一方で、帯電微細水粒子放出モードであるときにオゾン或いは過酸化水素を悪玉菌に照射してこれらの増殖を阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る微細水粒子放出装置の概略構成を表す図である。
【
図2】
図2は、ケース内に収容された微細水粒子発生素子の概略構成を示す図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す微細水粒子発生素子11の一部の断面概略図である。
【
図5】
図5は、放電電流値iと、放電空間の湿度との関係を示すグラフである。
【
図6】
図6は、制御装置が実行する安定化制御処理ルーチンの流れを示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、制御装置が実行するガス発生量制御処理ルーチンの流れを示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、高水分量制御の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、低水分量制御の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、放電空間内の相対湿度と、その放電空間内でコロナ放電が起きている時に発生するオゾンの発生量及び過酸化水素の発生量との関係を示す図である。
【
図11】
図11は、第一交互運転処理の実行時における動作モードの切替態様の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、第二交互運転処理の実行時における動作モードの切替態様の一例を示す図である。
【
図13】
図13は、帯電微細水粒子放出モードに設定された微細水粒子放出装置からの放出物質を菌類に照射することによる菌類の増殖抑制効果を示す図である。
【
図14】
図14は、他の例に係る放電素子を備える微細水粒子放出装置のカートリッジの概略図である。
【
図15】
図15は、他の例に係る放電素子をケースの軸方向から見た図である。
【
図16】
図16は、さらに他の例に係る放電素子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本実施形態に係る微細水粒子放出装置の概略構成を表す図である。
図1に示すように、本実施形態に係る微細水粒子放出装置1は、微細水粒子放出カートリッジ10と、ファン電源21と、カートリッジ電源22と、放電用高圧電源23と、制御装置40と、操作部50とを備える。
【0020】
微細水粒子放出カートリッジ10は、微細水粒子発生素子11と、ファン12(送風部材)と、ケース13と、放電素子14とを備える。
【0021】
ケース13は、両端が開口した略円筒状に形成される。ケース13の内部には、ケース13の一方端から他方端に亘って連通する流路13aが形成される。ケース13の一方端側の開口が吸入口131を構成し、他方端側の開口が放出口132を構成する。
【0022】
送風部材としてのファン12は、図示しないモータにより回転駆動するプロペラファンであり、ケース13内の吸入口131に近い位置に収容される。なお、ファン12は、シロッコファン等でも良い。ファン12は、モータの回転に連動して回転して、ケース13の吸入口131から空気を流路13a内に流入させ、流入した空気をケース13の放出口132から放出させることができるように構成される。
【0023】
微細水粒子発生素子11は、ファン12とともにケース13の流路13a内に収容される。微細水粒子発生素子11は、ケース13内にてファン12よりも下流側(放出口132に近い側)の位置に配設される。
【0024】
図2は、ケース13内に収容された微細水粒子発生素子11の概略構成を示す図である。
図2に示すように、微細水粒子発生素子11は、ケース13内の流路13aの横断面の全体に広がるように配設される。ただし、微細水粒子発生素子11は、空気が流通可能なように形成される。従って、流路13aを吸入口131から放出口132に向かって流れる空気は、微細水粒子発生素子11を通過することになる。
【0025】
図3は、
図2に示す微細水粒子発生素子11をケース13の中心軸を通る平面で切断した断面の一部を示した図である。微細水粒子発生素子11は、
図3に示すように、基材111と、基材111の一表面或いは両表面(
図3では一表面)に形成された導電性高分子膜112とを有する。基材111は、ステンレス系金属、銅系金属等の金属材料、炭素材料、導電性セラミックス材料(例えばITO等)、導電性樹脂材料(例えば、金属蒸着された樹脂フィルム、ナノ銀コーティング樹脂、CNT(カーボンナノチューブ)コーティング樹脂)、等の、導電性を有する材料で形成される。本実施形態では、アルミニウムが添加されたステンレス鋼の金属箔が用いられる。基材111は、流路13a内に配設されたときに、流路13a内の空気が流通可能であるような形状に形成される。さらに、基材111は、流路13a内に配設されたときに、流路13a内を流れる空気との接触面積ができるだけ大きくなるように、すなわち表面積ができるだけ大きくなるように、形成される。この場合、基材111は、例えば、複数の平板により形成されていても良い。また、基材111は、流路13aに垂直な断面形状がハニカム形状又は渦巻き形状となるように形成されていてもよい。なお、基材111が導電性を有する材料で形成されるのは、後述するように基材111に通電することにより導電性高分子膜112の温度を上昇させるためである。従って導電性高分子膜112の温度を上昇させるための手段が別途講じられていれば、基材111は、セラミック等の絶縁性の材料でも良い。この場合、例えば微細水粒子発生素子11の上流側にヒータを配設し、ヒータの温風により導電性高分子膜112を加熱するように構成してもよい。
【0026】
導電性高分子膜112は、導電性を有する高分子化合物、例えばチオフェン系の導電性高分子化合物により膜状に形成される。本実施形態では、導電性高分子膜は、チオフェン系の導電性高分子のうち、PEDOT/PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸))により形成される。PEDOT/PSSは、水に不溶なPEDOTが集合したコアを親水的なPSS(シェル)が取り囲んだコアシェル構造を呈し、単体のコアシェルの形状は概ね楕円体形状である。このような楕円体形状の粒子(コアシェル粒子)が整列して積層構造をなすことにより、導電性高分子膜112が膜状に形成される。そして、隣接するコアシェル粒子間に2nm程度のナノメートルサイズの隙間が形成され、斯かる隙間が繋がることにより、導電性高分子膜112の表面に開口するナノチャンネルが形成される。また、各コアシェル粒子の中央のコア(PEDOT)が疎水性であるため、シェル(PSS)の外周に親水性のスルホン酸基が多く存在している。このため,コアシェル粒子の外壁に囲まれているナノチャンネルにはスルホン酸基が多く存在している。スルホン酸基は極性官能基であり水素結合可能である。従って、ナノチャンネル内の空気中の水分がスルホン酸基と水素結合して、結合水として、ナノチャンネル内に保持され得る。
【0027】
導電性高分子膜112の表面の水分量がナノチャンネル内の結合水の水分量よりも多い場合には、両者の水分濃度差を駆動源として表面の水分がナノチャンネル内に移動して、結合水として保持される。これによりナノチャンネル内に水分が吸収される。その反対に、表面の水分量がナノチャンネル内の結合水の水分量よりも少ない場合には、両者の水分濃度差を駆動源としてナノチャンネル内の結合水が表面に向かって移動する。これによりナノチャンネルに吸収され保持されている水分がナノチャンネルから放出される。このように、導電性高分子膜112は、水分濃度差により、水を吸収する吸収状態と、水を放出する放出状態が切り替えられるように構成される。
【0028】
また、導電性高分子膜112の温度を上昇させると、水分濃度差により水を放出する場合と比べて放出がより促され、導電性高分子膜の温度を低下させると、水分濃度差により水を吸収する場合と比べて吸収がより促される。このように、導電性高分子膜112は、温度変化により、吸収状態と放出状態が切り替えられるようにも構成される。
【0029】
また、ナノチャンネルの流路幅は、概ね2nm(ナノメートル)程度である。従って、ナノチャンネルから放出される水分は、2nm以下の粒径のナノ粒子である。粒径2nmのナノ粒子は、ナノチャンネルの開口付近で凝集(クラスタ化)しても、50nm以下の粒径に留まる。このため導電性高分子膜112は、水分の放出時に粒径50nm以下の微細水粒子、及び水蒸気分子を発生する。加えて、ナノチャンネル内に保持されていた結合水は帯電していない。従って、導電性高分子膜112は、水分の放出時に、粒径が50nm以下であり、且つ、無帯電の微細水粒子、及び、水蒸気分子を発生する。
【0030】
このように、微細水粒子発生素子11は、導電性の基材111及び基材111の表面に形成された導電性高分子膜112を備え、導電性高分子膜112に吸収され保持されている水分を放出することにより微細水粒子及び水蒸気分子が発生し、さらに、導電性高分子膜112の温度が高いほど微細水粒子及び水蒸気分子の放出が促されてその発生量(発生水分量)が多くなるように構成されている。なお、このような微細水粒子発生素子の詳細な説明は特許文献1に記載されているため、これ以上の説明は省略する。
【0031】
放電素子14は、微細水粒子発生素子11及びファン12とともにケース13の流路13a内に収容される。放電素子14は、ケース13内にて微細水粒子発生素子11の下流側(放出口132に近い側)の位置に配設される。このように、本実施形態においては、微細水粒子発生素子11及び放電素子14がケース13内にて一体化される。
【0032】
図4は、
図1のIV-IV線断面図であり、ケース13内に収容された放電素子14の断面を表す。
図4に示すように、この放電素子14は、アース極141(第一電極)と、放電極142(第二電極)と、支持体143と、を備える。アース極141と放電極142は、互いに空間的に離間している。
【0033】
アース極141は、ケース13の内周面に沿うようにケース13と同軸なリング状に形成され、例えばステンレス材料により構成される。放電極142は、アース極141の内周空間内に配置され、例えばステンレス材料により構成される。放電極142はリング状に形成され、ケース13の軸方向においてアース極141とほぼ同一の位置に位置し、アース極141と同軸配置される。放電極142は、アース極141の内径よりも小さい外径を有するリング状の本体部142aを有し、この本体部142aの外周壁には径外方に突出した複数の突部142bが設けられる。複数の突部142bは、本体部142aの周方向に等間隔に配設される。
図4では、12個の突部142bが設けられているが、突部142bの数はこれに限定されない。そして、アース極141の内周面と放電極142の外表面との間には、放電空間DSが形成されている。アース極141と放電極142との間に所定の電圧が印加されると、放電空間DSにて放電が起こり、放電空間DS内にプラズマ領域が形成される。
【0034】
支持体143は、絶縁体により形成される2つの棒状部材を直交させることにより構成され、各棒状部材の両端がケース13に固定される。この支持体143に、ケース13内のアース極141及び放電極142が固定及び支持される。
【0035】
図1に示すファン電源21及びカートリッジ電源22には、AC100V等の電力が供給される。ファン電源21は、供給された電力をファン12のモータの駆動に適した電力に変換し、変換した電力をファン用第一電線31a及びファン用第二電線31bに出力可能に構成される。カートリッジ電源22は、カートリッジ用第一電線32aを介して微細水粒子発生素子11の基材111に設けられた図示しない正極端子に電気的に接続され、カートリッジ用第二電線32bを介して微細水粒子発生素子11の基材111に設けられた図示しない負極端子に電気的に接続される。また、カートリッジ電源20の負極端子、微細水粒子発生素子11の基材111に設けられた負極端子は、カートリッジ用第二電線32bを介して各々グランドライン35に電気的に接続される。カートリッジ電源22は、供給された電力を、基材111への供給に適した電力に変換し、変換した電力をカートリッジ用第一電線32a及びカートリッジ用第二電線32bに出力可能に構成される。
【0036】
放電用高圧電源23は、アース端子及び放電端子を備え、放電端子が放電用電線33aを介して放電素子14の放電極142に電気的に接続され、アース端子がアース用電線33bを介してグランドライン35に電気的に接続される。また、放電素子14のアース極141は、放電素子用アース電線34を介してグランドライン35に接続される。放電用高圧電源30は、放電素子14のアース極141と放電極142との間に所定の電位を印加させることができるように構成される。また、放電用電線33aの途中に、電流計36が介装される。電流計36は、放電用電線33aを流れる電流、すなわち放電素子14に通電される電流の値を、放電電流値iとして検出する。なお、微細水粒子発生素子11の基材111に設けられた負極端子と放電素子14のアース極141との間を金属等でつなぐことにより、放電素子用アース電線34を省略して配線本数を削減することができる。この場合、例えば、ケース13を金属製として、微細水粒子発生素子11の基材111の負極端子と放電素子14のアース極とを金属ケースでつなぐような構成を採用することができる。
【0037】
ファン用第一電線31aに第一常開型切替スイッチ41が介装され、カートリッジ用第一電線32aに第二常開型切替スイッチ42が介装され、放電用電線33aに第三常開型切替スイッチ43が介装される。第一常開型切替スイッチ41は、開作動することによりファン用第一電線31aの導通を遮断し、閉作動することによりファン用第一電線31aの導通を許容する。第二常開型切替スイッチ42は、開作動することによりカートリッジ用第一電線32aの導通を遮断し、閉作動することによりカートリッジ用第一電線32aの導通を許容する。第三常開型切替スイッチ43は、開作動することにより放電用電線33aの導通を遮断し、閉作動することにより放電用電線33aの導通を許容する。
【0038】
操作部50は、例えば微細水粒子放出カートリッジ10を支持する筐体等の表面に設けられた複数の操作ボタン及びディスプレイにより構成される。操作部50をユーザが操作することにより、微細水粒子放出装置1の電源のオンオフ、微細水粒子放出装置1の動作モード、等が設定される。
【0039】
制御装置40には、操作部50の操作状況が入力される。制御装置40は、入力された操作部50の操作状況、特に微細水粒子放出装置1の動作モードに応じて、第一常開型切替スイッチ41、第二常開型切替スイッチ42、及び第三常開型切替スイッチ43の切り換え状態を制御する。制御装置40は、これらの切替スイッチを制御することにより、微細水粒子放出装置1の動作を制御する。具体的には、制御装置40は、第一常開型切替スイッチ41を制御することによりファン12の動作を制御し、第二常開型切替スイッチ42を制御することにより微細水粒子発生素子11にて発生する水分(微細水粒子及び水蒸気分子)の単位時間当たりの発生量である発生水分量を制御する。さらに、制御装置40は、第三常開型切替スイッチ43を制御することにより、放電空間DSでの放電状態を制御する。また、制御装置40には、放電素子14の動作状態、ファン12の動作状態、微細水粒子発生素子11の動作状態、電流計36が検知した放電電流値i、等が入力される。
【0040】
上記構成の微細水粒子放出装置1の動作モードは、例えば、「無帯電微細水粒子放出モード」、「帯電微細水粒子放出モード」、「交互運転モード」等の、複数の動作モードのいずれかに設定することができる。なお、動作が矛盾しない複数の動作モードを同時に設定することもできる。これらの動作モードは、ユーザが操作部50を操作することにより設定される。操作部50の操作により設定された動作モードは制御装置40に入力され、制御装置40は入力された動作モードに対応した制御処理を実行することにより、各動作モードに応じて微細水粒子放出装置1が動作する。なお、上記の動作モード以外に他の動作モードが存在していても良い。例えば後述の「オゾン抑制及び過酸化水素増加モード」、「オゾン増加及び過酸化水素抑制モード」等が、存在していてもよい。
【0041】
無帯電微細水粒子放出モードは、放電空間DSにて放電が起きていない状態にて微細水粒子発生素子11から微細水粒子が発生している動作モードである。微細水粒子放出装置1の動作モードが無帯電微細水粒子放出モードに設定されたとき、制御装置40は、第一常開型切替スイッチ41及び第二常開型切替スイッチ42の双方が閉作動し、第三常開型切替スイッチ43が開作動するように、各切替スイッチを制御する。これにより、ファン電源21からファン12のモータに電力が供給されるとともにカートリッジ電源22から微細水粒子発生素子11の基材111に電力が供給される。ファン12のモータに電力が供給されることにより、モータが回転するとともにこれに連動してファン12が回転し、ケース13の吸入口131から流路13a内に空気が流入する。流路13aに流入した空気は、微細水粒子発生素子11を経由した後に、放出口132から放出される。また、微細水粒子発生素子11の基材111に通電されて導電性の基材111に電流が流れることにより、基材111がジュール熱を発生して発熱する。基材111の発熱は基材111上の導電性高分子膜112に伝熱され、これにより導電性高分子膜112の温度が上昇する。なお、導電性高分子膜112自体に通電して導電性高分子膜112を発熱及び温度上昇させてもよいし、導電性高分子膜112の存在する空間を温めて温度上昇させても良い。こうして導電性高分子膜112が温度上昇することにより導電性高分子膜112からの水分の放出が促される。その結果、微細水粒子発生素子11から、無帯電且つ50nm以下の粒径の微細水粒子及び水蒸気分子が発生する。発生した微細水粒子及び水蒸気分子は、ファン12の動作によりケース13の流路13a内に流入した空気に混ざり、空気とともに、微細水粒子発生素子11の下流に配設されている放電素子14の放電空間DSを通過して、放出口132から放出される。なお、無帯電微細水粒子放出モードであるときには第三常開型切替スイッチ43が開作動しているため、放電素子14に電力は供給されておらず、放電素子14は作動していない。よって、微細水粒子発生素子11にて発生した無帯電且つ粒径50nm以下の微細水粒子は、非作動状態の放電素子14を単に通過し、放出口132から空気とともに放出される。つまり、無帯電微細水粒子放出モードであるときには、微細水粒子放出装置1からは、無帯電且つ粒径50nm以下の微細水粒子、すなわち無帯電微細水粒が、空気とともに放出される。
【0042】
帯電微細水粒子放出モードは、放電空間DSにて放電が起きている状態にて微細水粒子発生素子11から微細水粒子が発生している動作モードである。微細水粒子放出装置1の動作モードが帯電微細水粒子放出モードに設定されたとき、制御装置40は、第一常開型切替スイッチ41、第二常開型切替スイッチ42、及び第三常開型切替スイッチ43が全て閉作動するように、各切替スイッチを制御する。第一常開型切替スイッチ41及び第二常開型切替スイッチ42が閉作動することにより、上記したように、ファン12が回転してケース13の吸入口131から流路13a内に空気が流入するとともに、導電性高分子膜112が温度上昇して微細水粒子発生素子11から無帯電且つ粒径50nm以下の微細水粒子及び水蒸気分子が発生する。
【0043】
発生した微細水粒子及び水蒸気分子は、ファン12の動作によりケース13の流路13a内に流入した空気と混ざり、空気とともに、微細水粒子発生素子11の下流に配設されている放電素子14の放電空間DSを通過する。ここで、帯電微細水粒子放出モードであるときには第三常開型切替スイッチ43が閉作動しているため、放電素子14に電力が供給され、アース極141と放電極142との間に所定の電圧が印加される。これにより、放電空間DSにてコロナ放電が起きる。このコロナ放電により、放電空間DSにプラズマ領域が形成される。従って、放電空間DSを通過する無帯電の微細水粒子、水蒸気分子及び空気はプラズマ領域を通過することになる。
【0044】
プラズマ領域を空気及び無帯電微細水粒子が通過することにより、空気及び水を原料としたイオンが生成され、無帯電微細粒子の一部が前記イオンと結合して帯電した微細水粒子(帯電微細水粒子)が生成される。また、同様にこのプラズマ領域を空気及び無帯電微細水粒子が通過することにより、酸素を原料としてオゾンが生成され、主に水を原料として過酸化水素が生成される。従って、帯電微細水粒子放出モードであるときには、微細水粒子放出装置1からは、帯電微細水粒子、無帯電微細水粒子、オゾン、過酸化水素が、空気とともに放出される。
【0045】
なお、微細水粒子発生素子11の作動中は、微細水粒子発生素子11の基材111に間欠的に電力が供給される。つまり、基材111に電力を連続的に供給する通電期間と、基材111に電力を連続的に供給しない非通電期間が、交互に繰り返される。通電期間中に導電性高分子膜112が温度上昇することにより、微細水粒子発生素子11から微細水粒子が発生する。一方、非通電期間中には基材111に電力が供給されないので基材111は発熱せず、このため基材111から導電性高分子膜112に伝熱されない。また、ファン12の回転による送風によって導電性高分子膜112が冷却されるため、導電性高分子膜112の温度が低下する。こうして導電性高分子膜112が温度低下して空気中の水分子を吸着することにより導電性高分子膜112への水分の吸収が促される。その結果、微細水粒子発生素子11を通過する空気中の水分が導電性高分子膜112に吸収される。つまり、通電期間中に導電性高分子膜112から微細水粒子が放出され、非通電期間中に導電性高分子膜112に水分が補充される。よって、微細水粒子発生素子11の作動中は、導電性高分子膜112から微細水粒子が間欠的に発生する。
【0046】
このように、本実施形態に係る微細水粒子放出装置1は、帯電微細水粒子放出モードに設定されたときには、無帯電微細水粒子、帯電微細水粒子、オゾン、過酸化水素を空気とともに放出する。これらの放出物質のうち、オゾンや過酸化水素は、菌類やウイルスの増殖を抑制して不活性化させる効果を有する物質(以下、抑制物質と言うこともある)である。よって、帯電微細水粒子放出モードに設定された微細水粒子放出装置1を人体の皮膚に向けて動作させて放出物質を皮膚に照射した場合、抑制物質により人体に悪影響を及ぼす常在菌或いはウイルスを除去しつつ、微細水粒子(帯電微細水粒子及び無帯電微細水粒子)を皮膚に浸透させて皮膚の保湿を図ることができる。また、上記の放出物質のうち、帯電微細水粒子は毛髪の静電気を除去する効果を有する。よって、帯電微細水粒子放出モードに設定された微細水粒子放出装置1を人体の頭髪に向けて動作させて放出物質を頭髪に照射した場合、帯電微細水粒子により頭髪の静電気を除去しつつ、無帯電微細水粒子を頭髪に浸透させて頭髪に潤いを与えることができる。
【0047】
また、本実施形態に係る微細水粒子放出装置1においては、ケース13内に、微細水粒子発生素子11及び放電素子14が収容されている。つまり、微細水粒子発生素子11及び放電素子14がケース13により一体化されている。このため、微細水粒子放出装置1をコンパクトに構成することができる。また、微細水粒子発生素子11及び放電素子14を交換する際には、ケース13ごと(すなわち微細水粒子放出カートリッジ10ごと)交換すればよい。このため、メンテナンス性が向上する。
【0048】
さらに、本実施形態に係る微細水粒子放出装置1においては、
図1に示すように、微細水粒子発生素子11の基材111の負極端子、カートリッジ電源22の負極端子、放電用高圧電源23のアース端子、及び放電素子14のアース極141が、共通のグランドライン35に電気的に接続されている。このため、それぞれの電極及び端子を別々に接地する場合と比較して、電気配線のコンパクト化を図ることができる。さらに、上記したように放電素子14のアース極141と微細水粒子発生素子11の基材111の負極端子とを金属ケース等で電気的に接続することにより、放電素子用アース電線34を省略して配線本数を削減することができる。
【0049】
本実施形態に係る微細水粒子放出装置1が備える制御装置40は、放電素子14のアース極141と放電極142との間に所定の定電圧が印加されているときに、放電空間DSにてコロナ放電が安定して起きるように、安定化制御処理を実行することができるように構成される。以下、安定化制御処理について説明する。
【0050】
図5は、放電素子14のアース極141と放電極142との間に一定の電圧を印加して放電空間DSにて放電が起きている場合に放電素子14に通電される電流の値(電流計36により検出される放電電流値i)と、放電空間DS内の湿度との関係を示すグラフである。
図5の横軸が放電空間DS内の相対湿度H(%RH)、縦軸が放電電流値i(μA)である。また、
図5中、放電電流値iの上限電流値imaxが一点鎖線により示される。放電電流値iが上限電流値imax以下であるとき、放電空間DSにてコロナ放電が起きる。一方、放電電流値iが上限電流値imaxを超えると、放電空間DSにて火花放電が起きる。火花放電は不安定な放電であり、またオゾンの発生量が急増するため好ましくない。よって、放電空間DSでは安定的にコロナ放電が起きるのが望ましい。なお、前記放電電流値、上限電流値は、放電素子の構成及び放電電圧値に固有の値であるので、それらが変われば当然、前記放電電流値、上限電流値は変わる。
【0051】
図5に示すように、放電空間DS内の相対湿度Hが70%RH以下である場合、放電電流値iは上限電流値imaxよりも小さく、ほぼ一定である。よって、相対湿度Hが70%RH以下の場合、放電空間DSにて安定的にコロナ放電が起きる。また、相対湿度Hが70%RHを超えるあたりから、相対湿度Hの上昇につれて放電電流値iが急激に上昇する。そして、相対湿度Hが上限湿度Hmaxであるとき放電電流値iが上限電流値imaxに達する。さらに相対湿度Hが上限湿度Hmaxを超えると、放電電流値iが上限電流値imaxを超えて、放電空間DSにて火花放電が起こる。火花放電は上記のように好ましくないので、放電空間DSにて安定的にコロナ放電を起こすためには、放電空間DS内の相対湿度を上限湿度Hmax以下に維持する必要がある。
【0052】
また、帯電微細水粒子放出モードに設定されているときには、放電空間DSには、微細水粒子発生素子11にて発生した微細水粒子及び水蒸気分子が空気とともに流入する。従って、放電空間DS内の湿度は、微細水粒子発生素子11にて発生した水分(微細水粒子及び水蒸気分子)の単位時間当たりの発生量、すなわち発生水分量に影響する。具体的には、発生水分量が多ければ放電空間DS内の湿度は高くなり、発生水分量が少なければ放電空間DS内の湿度は低くなる。本実施形態に係る制御装置40は、安定化制御処理によって、放電電流値iに基づいて発生水分量を制御することにより、放電空間DS内の湿度を調整して放電電流値iを上限電流値imax以下に制御して、放電空間DSにてコロナ放電が安定的に起きるように、放電状態を制御している。
【0053】
図6は、制御装置40が実行する安定化制御処理ルーチンの流れを示すフローチャートである。
図6のルーチンは、微細水粒子放出装置1に電源が投入され、微細水粒子発生素子11が微細水粒子を発生するように動作し、且つファン12が回転してケース13内に空気が流入しているときに、所定の短時間ごとに繰り返し実行される。このルーチンが起動すると、制御装置40は、まず、
図6のステップ(以下、ステップをSと略記する)11にて、放電素子14の動作状態がON状態であるか否か、すなわち放電素子14のアース極141と放電極142との間に所定の定電圧が印加されているか否かを判断する。
【0054】
放電素子14の動作状態がOFF状態である場合、すなわち放電素子14のアース極141と放電極142との間に電圧が印加されていない場合(S11:No)、放電素子14にて放電が行われていないことになるので、この安定化処理を行う必要もない。従って制御装置40はこのルーチンの実行を一旦終了する。一方、放電素子14の動作状態がON状態である場合、制御装置40はS12に処理を進める。S12では、制御装置40は、電流計36から放電電流値iを取得する。続いて制御装置40はS13に処理を進めて、発生水分量wを推定する。ここで、制御装置40は、
図5に示すような、放電電流値iと放電空間DS内の相対湿度Hとの関係を表す電流-湿度マップ、及び、発生水分量wと放電空間DS内の相対湿度Hとの関係を表す発生水分量-湿度マップ、を記憶している。そして、制御装置40は、S13にて、電流-湿度マップを参照して、S12にて取得した放電電流値iに対応する相対湿度を求め、次いで、発生水分量-湿度マップを参照して、求めた相対湿度に対応する発生水分量wを求める。このようにして、制御装置40は、発生水分量wを推定することができる。
【0055】
次いで、制御装置40はS14に処理を進めて、S12にて取得した放電電流値iが閾値電流値ith以下であるか否かを判断する。この閾値電流値ithは、上限電流値imax以下の値に設定される。閾値電流値ithは、例えば、この安定化制御処理の実行により放電電流値iが上限電流値imaxを越えないように、上限電流値imaxよりも少し低い電流値に設定することができる。
【0056】
S14にて、放電電流値iが閾値電流値ith以上であると判断された場合(S14:Yes)、制御装置40はS16に処理を進めて、発生水分量wを減少させるための発生水分量減少処理を実行する。この発生水分量減少処理は、例えば、微細水粒子発生素子11の基材111への通電電力を所定量だけ減少させる通電電力減少処理であってもよい。通電電力減少処理の実行により基材111への通電電力を減少させて導電性高分子膜112の温度を低下させることにより、発生水分量wが減少する。或いは、発生水分量減少処理は、例えば、基材111への通電期間を短くする通電期間減少処理であってもよい。通電期間減少処理の実行により微細水粒子の発生期間を短くすることにより、発生水分量wが減少する。さらに、発生水分量減少処理は、例えば、基材111への非通電期間を短くする非通電期間減少処理であってもよい。非通電期間減少処理の実行により非通電期間が短くされた場合、導電性高分子膜112に吸着される水分量が減少する。吸着される水分量が減少すると、放出される水分量も頭打ちとなって、多くの微細水粒子を放出することができない。このため発生水分量wが減少する。制御装置40は、S16にて上記の例のような発生水分量減少処理を実行した後に、このルーチンを一旦終了する。
【0057】
一方、S14にて、放電電流値iが閾値電流値ith未満であると判断された場合(S14:No)、制御装置40はS15に処理を進めて、S13にて推定した発生水分量wが、閾値水分量wth以下であるか否かを判断する。閾値水分量wthは、一定の効果をもたらすために必要な水分量として、予め設定される。この閾値水分量wthは、ユーザが任意の値を設定することができるように構成されていてもよい。
【0058】
S15にて、発生水分量wが閾値水分量wthよりも大きいと判断された場合(N15:No)、制御装置40は、発生水分量wが適度であると判断して、このルーチンを一旦終了する。一方、S15にて、発生水分量wが閾値水分量wth以下であると判断された場合(S15:Yes)、制御装置40は、発生水分量wが少ないと判断し、S17に処理を進めて、発生水分量wを増加させるための発生水分量増加処理を実行する。この発生水分量増加処理は、例えば、微細水粒子発生素子11の基材111への通電電力を所定量だけ増加させる通電電力増加処理であってもよい。通電電力増加処理の実行により基材111への通電電力を増加させて導電性高分子膜112を昇温することにより、発生水分量wが増加する。この場合、例えば、導電性高分子膜112への水分の吸入が十分になされるように非通電期間を増加して通電期間と非通電期間との時間配分を適正化するとともに、通電期間にて通電電力を増加させることにより、短時間に多量の水分を放出し、且つ、導電性高分子膜112内の水分が不足することを防止することができる。また、発生水分量増加処理として、導電性高分子膜112から発生する水分が不足しないような処理(例えば非通電期間中に導電性高分子膜112の温度を十分に低下させて、非通電期間中に多くの水分を導電性高分子膜112に取り込む処理等)を施した上で、微細水粒子発生素子11の基材111への通電期間を長くする通電期間増加処理を行っても良い。このような通電期間増加処理の実行により通電期間が長くなるため、発生水分量wが増加する。制御装置40は、S16にて上記の例のような発生水分量増加処理を実行した後に、このルーチンを一旦終了する。
【0059】
制御装置40が上記した安定化制御処理を繰り返して実行することにより、放電電流値iが閾値電流値ith以上である場合、発生水分量wが減少する。発生水分量wが減少すると、空気と共に放電空間に流入する微細水粒子及び水蒸気分子の流入量も減少し、その結果、放電空間DS内の相対湿度Hが低下する。こうして相対湿度Hを低下させることにより、相対湿度Hが上限湿度Hmaxを超えることを防止し、それにより放電電流値iが上限電流値imaxを上回って火花放電が起きる可能性を低減することができる。したがって、安定化制御処理の実行により、放電空間DS内でのコロナ放電を安定的に維持することができる。
【0060】
また、制御装置40が上記した安定化制御処理を実行することにより、放電電流値iが閾値電流値ith未満であり、且つ発生水分量wが閾値水分量wth以下である場合、発生水分量wが増加する。これにより、放電電流値iが閾値電流値ith未満の状態、すなわち放電空間にてコロナ放電が起きている状態下において、できるだけ多くの微細水粒子を発生させて、微細水粒子を供給することによる効果、例えば人体の皮膚の保湿効果、或いは頭髪への水分補給効果、を、より高めることができる。
【0061】
また、制御装置40は、放電空間DSにてコロナ放電が起きているときに、微細水粒子放出装置1から放出される抑制物質、具体的にはオゾン及び過酸化水素の発生量を制御するガス発生量制御処理を実行することができるように構成されている。以下、このガス発生量制御処理について説明する。
【0062】
上記したように放電空間DSにてコロナ放電が起きている場合、放電空間DSにプラズマ領域が形成される。このプラズマ領域を空気及び無帯電微細水粒子が通過することにより、空気及び水を原料としたイオンが生成され、生成したイオンに無帯電微細粒子の一部が結合して帯電微細水粒が生成される。また、プラズマ領域を空気及び無帯電微細水粒子が通過することにより、酸素を原料としてオゾンが生成され、主に水を原料として過酸化水素が生成される。従って、微細水粒子放出装置1から、帯電微細水粒子、無帯電微細水粒子、オゾン、及び過酸化水素等を放出することができる。
【0063】
ここで、本実施形態に係る微細水粒子放出装置1を用いて人体の皮膚を保湿するような場合、オゾン、過酸化水素及び微細水粒子が皮膚に照射される。オゾン或いは過酸化水素は皮膚表面に付着した菌或いはウイルスを除去する効果を有するが、過酸化水素と比較してオゾンの方が人体に対する有害性が高いため、オゾンの照射量が多いと人体に悪影響を及ぼす虞がある。従って、このような場合には、オゾンの発生量を抑制するとともに過酸化水素の発生量を増加して、オゾン濃度を人体に対し安全な濃度に抑えつつ菌或いはウイルスを除去するのがよい。一方、例えば本実施形態に係る微細水粒子放出装置1を用いて人のいない室内を除菌しながら加湿するような場合には、オゾンの発生量を多くして効率的に室内除菌を図るのがよい。本実施形態に係る制御装置40は、こうした要請に応えるために、ガス発生量制御処理を実行し得るように構成されており、斯かる処理の実行により、オゾン及び過酸化水素の発生量を制御することができる。
【0064】
図7は、制御装置40が実行するガス発生量制御処理ルーチンの流れを示すフローチャートである。このルーチンは、微細水粒子放出装置1に電源が投入され、微細水粒子発生素子11が微細水粒子を発生するように動作し、且つファン12が回転してケース13内に空気が流入しているときに、所定の短時間ごとに繰り返し実行される。このルーチンが起動すると、制御装置40は、まず、
図7のS21にて、放電素子14の動作状態がON状態であるか否か、すなわち放電素子14のアース極141と放電極142との間に所定の電圧が印加されているか否かを判断する。放電素子14の動作状態がOFF状態である場合(S21:No)、オゾン及び過酸化水素は発生しないため、これらのガスの発生量を制御することはできない。よって、制御装置40はこのルーチンを一旦終了する。一方、放電素子14の動作状態がON状態である場合(S21:Yes)、制御装置40はS22に処理を進める。
【0065】
S22にて制御装置40は、電流計36から放電電流値iを取得する。次いで、S23にて、放電電流値iに基づいて発生水分量wを推定する。その後、制御装置40は、S24に処理を進めて、微細水粒子放出装置1の動作モードが、「オゾン抑制及び過酸化水素増加モード」に設定されているか否かを判断する。ここで、ユーザは、操作部50を操作することにより、オゾンの発生が少量に抑制される(すなわちオゾンの発生量が抑制(減少)される)とともに過酸化水素の発生が促進される(すなわち過酸化水素の発生量が増加する)ように微細水粒子放出装置1を動作させる「オゾン抑制及び過酸化水素増加モード」と、オゾンの発生が促進される(すなわちオゾンの発生量が増加する)とともに過酸化水素の発生が少量に抑制される(すなわち過酸化水素の発生量が抑制(減少)される)ように微細水粒子放出装置1を動作させる「オゾン増加及び過酸化水素抑制モード」とを、選択することができる。ユーザが「オゾン抑制及び過酸化水素増加モード」を選択することにより、微細水粒子放出装置1の動作モードがオゾン抑制及び過酸化水素増加モードに設定され、ユーザが「オゾン増加及び過酸化水素抑制モード」を選択することにより、微細水粒子放出装置1の動作モードがオゾン増加及び過酸化水素抑制モードに設定される。
【0066】
S24にて動作モードがオゾン抑制及び過酸化水素増加モードに設定されていると判断した場合(S24:Yes)、制御装置40はS26に処理を進めて、高水分量制御を実行する。この高水分量制御は、発生水分量wを所定の高水分量以上に維持するために実行される制御である。
【0067】
図8に、高水分量制御の処理の一例を示す。
図8によれば、制御装置40は、高水分量制御において、まず、
図8のS261にて、推定された発生水分量wが、予め設定されている高水分量wH未満であるか否かを判断する。発生水分量wが高水分量wH以上である場合(S261:No)、制御装置40はこのルーチンを終了する。一方、発生水分量wが高水分量wH未満である場合(S261:Yes)、制御装置40は、S262に処理を進めて、発生水分量増加処理を実行する。この発生水分量増加処理は、例えば、上記した通電電力増加処理であってもよいし、通電期間増加処理であってもよい。これにより、発生水分量wが増加する。その後、制御装置40は、このルーチンを終了する。このような高水分量制御を実行した後に、制御装置40は、
図7のガス発生量制御処理ルーチンを一旦終了する。
【0068】
制御装置40が上記した高水分量制御を実行することにより、発生水分量wが、高水分量wH以上に維持される。ここで、高水分量wHは、発生水分量wが高水分量wH以上であるときに、放電空間DS内の相対湿度Hが比較的高くなるような水分量であるように、予め設定されている。
【0069】
図10は、放電空間DS内の相対湿度Hと、その放電空間DSにてコロナ放電が起きている時に発生するオゾンの発生量及び過酸化水素の発生量との関係の一例を示す図である。
図10に示すように、放電空間DS内の相対湿度Hが増加するにつれて、過酸化水素の発生量が増加し、その逆にオゾンの発生量が減少する。従って、オゾンの発生量を減少する場合及び過酸化水素の発生量を増加する場合には、放電空間DS内の相対湿度Hを高くすればよい。ここで、上記した高水分量制御によれば、発生水分量wが高水分量wH以上に維持されるため、多くの水分が放電空間DSに流入し、それにより相対湿度Hは高くなる。
図10には、発生水分量wが高水分量wHであるときの相対湿度HがH1として示されている。相対湿度HがH1以上の領域におけるオゾンの発生量は、相対湿度HがH1未満の領域におけるオゾンの発生量よりも少なく、相対湿度HがH1以上の領域における過酸化水素の発生量は、相対湿度HがH1未満の領域における過酸化水素の発生量よりも多い。つまり、高水分量制御の実行により、相対湿度HがH1以上に維持されて、オゾンの発生が少量に抑制されるとともに過酸化水素の発生が促進されてその発生量が増加する。なお、放電空間DS内の相対湿度Hが高い場合にオゾンの発生量が減少し過酸化水素の発生量が増加する原因は、相対湿度Hが高い場合には放電空間DS内における水分子の割合が多く酸素分子の割合が少ないためであると考えられる。
【0070】
また、制御装置40は、
図7のS24にて、微細水粒子放出装置1の動作モードがオゾン抑制及び過酸化水素増加モードに設定されていないと判断した場合(S24:No)、S25に処理を進めて、動作モードがオゾン増加及び過酸化水素抑制モードに設定されているか否かを判断する。S25にて動作モードがオゾン増加及び過酸化水素抑制モードに設定されていないと判断した場合(S25:No)、制御装置40はこのルーチンを一旦終了する。一方、S25にて動作モードがオゾン増加及び過酸化水素抑制モードに設定されていると判断した場合(S25:Yes)、制御装置40は、S27に処理を進めて、低水分量制御を実行する。低水分量制御は、発生水分量wを所定の低水分量以下に維持するために実行される制御である。
【0071】
図9に低水分量制御の処理の一例を示す。
図9によれば、制御装置40は、低水分量制御において、まず、
図9のS271にて、推定された発生水分量wが、低水分量wLよりも大きいか否かを判断する。低水分量wLは、高水分量wHよりも少ない水分量として予め設定される。
【0072】
発生水分量wが低水分量wL以下と判断した場合(S271:No)、制御装置40はこのルーチンを終了する。一方、発生水分量wが低水分量wLよりも大きいと判断した場合(S271:Yes)、制御装置40は、S272に処理を進めて、発生水分量減少処理を実行する。この発生水分量減少処理は、例えば、上記した通電電力減少処理であってもよいし、通電期間減少処理であっても良いし、非通電期間減少処理であってもよい。これにより発生水分量wが減少する。その後、制御装置40は、このルーチンを終了するとともに
図7のガス発生量制御処理ルーチンを一旦終了する。
【0073】
制御装置40が上記した低水分量制御を実行することにより、発生水分量wが、低水分量wL以下に維持される。ここで、低水分量wLは、発生水分量wが低水分量wL以下であるときに、放電空間DS内の相対湿度Hが比較的低くなるような水分量であるように、予め設定されている。
【0074】
図10のグラフに示すように、オゾンの発生量を増加させる場合には、放電空間DS内の相対湿度Hを低くすればよい。ここで、上記した低水分量制御によれば、発生水分量wが低水分量wL以下に維持される。発生水分量wが低水分量wL以下に維持されている場合、放電空間DSには少量の微細水粒子及び水蒸気分子が流入するにとどまり、それにより放電空間DS内の相対湿度Hは低くなる。
図10には、発生水分量wが低水分量wLであるときの相対湿度HがH2として示されている。相対湿度HがH2以下の領域におけるオゾンの発生量は、相対湿度HがH2よりも大きい領域におけるオゾンの発生量よりも多く、相対湿度HがH2以下の領域における過酸化水素の発生量は、相対湿度HがH2よりも大きい領域における過酸化水素の発生量よりも少ない。つまり、低水分量制御の実行により、相対湿度HがH2以下に維持され、これにより、オゾンの発生が促進されて多量のオゾンが発生するとともに過酸化水素の発生が少量に抑制される。なお、放電空間DSの相対湿度Hが低い場合に多量のオゾンが発生し且つ過酸化水素の発生量が減少する原因は、相対湿度が低い場合には放電空間DS内の水分子の割合が少なく酸素分子の割合が多いためであると考えられる。
【0075】
このように、制御装置40は、ガス発生量制御処理にて、オゾン抑制及び過酸化水素増加モードであるときに高水分量制御を実行する。これによりオゾンの発生量が抑制されるとともに過酸化水素の発生量が増加する。従って、例えば微細水粒子放出装置1から放出物質を人体の皮膚、髪及び着衣に照射するような場合にオゾン抑制及び過酸化水素増加モードに設定することにより、皮膚や髪に悪影響を及ぼさない範囲でオゾンが人体に照射される。また、オゾンの発生量の減少を補うように過酸化水素の発生量が増加し、これらの抑制物質の照射によって菌類或いはウイルスが十分に除去される。そして、微細水粒子放出装置1から放出された微細水粒子を皮膚や髪に浸透させてこれら保湿することができる。また、制御装置40は、ガス発生量制御処理にて、オゾン増加及び過酸化水素抑制モードであるときに低水分量制御を実行することにより、多量のオゾンが微細水粒子とともに放出される。従って、例えば、微細水粒子放出装置1から放出物質を人のいない室内に照射するような場合に、比較的多量のオゾンが微細水粒子とともに室内に照射される。このため速やかに室内の除菌を行うことができる。
【0076】
また、制御装置40は、微細水粒子放出装置1の動作モードが交互運転モードに設定されている場合、第一交互運転処理又は第二交互運転処理を実行することができるように構成される。この第一交互運転処理及び第二交互運転処理は、いずれも、無帯電微細水粒子放出モードと、帯電微細水粒子放出モードとが、交互に切り替わるように、放電素子14を制御する処理である。第一交互運転処理を実行するか第二交互運転処理を実行するかは、ユーザが操作部50を操作することにより選択することができる。
【0077】
図11に、第一交互運転処理の実行時における微細水粒子放出装置1の動作モードの切替態様を示す。
図11に示すように、制御装置40が第一交互運転処理を実行すると、最初に、微細水粒子放出装置1の動作モードが帯電微細水粒子放出モードにされる。これにより微細水粒子放出装置1から帯電微細水粒子、無帯電微細水粒子、及び抑制物質が空気とともに放出される。所定時間経過後に、無帯電微細水粒子放出モードに動作モードが切り替わる。これにより微細水粒子放出装置1から、無帯電微細水粒子が空気とともに放出される。このようなモード切替が少なくとも1回以上行われる。モード切替の繰り返し回数は、例えばユーザが操作部50を操作することにより設定することができる。また、モードの切替タイミングは、ユーザが任意に設定することができる。モードの切替は自動的に行われても良いし、手動で行われても良い。モードの切替が手動で行われる場合、例えば操作部50に切替スイッチを設けておき、この切替スイッチをユーザが操作することにより、モードが切り替わるように構成されていてもよい。このように、第一交互運転処理は、無帯電微細水粒子放出モードと帯電微細水粒子放出モードとを、任意のタイミングで切り替えることができる処理である。
【0078】
第一交互運転処理は、例えば、人体の皮膚或いは頭髪の保湿を行うようなときに実行される。人体の皮膚の保湿を行うときに第一交互運転処理を実行する場合、まず帯電微細水粒子放出モードにて放出されるオゾン及び過酸化水素が皮膚に照射されることにより、皮膚表面の悪玉菌やウイルスが除去される。その後、無帯電微細水粒子放出モードにて放出される無帯電微細水粒子が皮膚に浸透することにより、皮膚が保湿される。また、頭髪の保湿を行うときに第一交互運転処理を実行する場合、まず帯電微細水粒子放出モードにて放出される帯電微細水が頭髪の静電気を除去する。その後、無帯電微細水粒子放出モードにて放出される無帯電微細水粒子が頭髪に浸透することにより、頭髪に潤いがもたらされる。また、無帯電微細水粒子放出モードの実行後に頭髪に薬剤(カラー剤、パーマ剤、ブリーチ剤等)を塗布することにより、これらの薬剤がより浸透する。
【0079】
図12に、第二交互運転処理の実行時における動作モードの切替態様の一例を示す。
図12に示すように、第二交互運転処理においては、最初に、動作モードが無帯電微細水粒子放出モードにされる、所定時間経過後に、帯電微細水粒子放出モードに動作モードが切り替わる。このようなモード切替が少なくとも1回以上行われる。モード切替の繰り返し回数は、例えばユーザが操作部50を操作することにより設定することができる。また、第一交互運転処理と同様に、モードの切替タイミングは、ユーザが任意に設定することができる。モードの切替は自動的に行われても良いし第一交互運転処理の例で示したように手動で行われても良い。このように、第二交互運転処理も、無帯電微細水粒子放出モードと帯電微細水粒子放出モードとを、任意のタイミングで切り替えることができる処理である。
【0080】
第二交互運転処理は、例えば効率的に除菌するようなときに実行される。すなわち、第二交互運転処理を実行すると、まず無帯電微細水粒子放出モードにて放出される無帯電微細水粒子が菌或いはウイルスに付着することにより、これらの外郭に微細水粒子が吸着し、浸透する。その後、帯電微細水粒子放出モードにて放出される抑制物質(オゾン及び過酸化水素)が、微細水粒子を吸着した菌或いはウイルスに効率的に照射されることにより、除菌効果が高められる。
【0081】
また、第一交互運転処理及び第二交互運転処理は、有益菌の培養時にも実行することができる。これらの交互運転処理によって無帯電微細水粒子が有益菌の培養容器に照射されることによって有益菌を増殖させることができる。また、これらの交互運転処理によって帯電微細水粒子が培養容器に照射されることにより、有益菌ではない他の菌を失活させることができる。このため、有益菌の培養をより一層促すことができる。
【0082】
図13は、帯電微細水粒子放出モードに設定された微細水粒子放出装置1からの放出物質を黒麹菌に照射することによる増殖抑制効果を示す図である。
図13(a)は、微細水粒子放出装置1から放出物質を照射していない黒麹菌を48時間放置した培養結果を示す顕微鏡写真である。一方、
図13(b)は、帯電微細水粒子放出モードに設定された微細水粒子放出装置1からの放出物質を黒麹菌に1時間照射し、その後、放出物質の照射を停止して48時間放置した培養結果を示す顕微鏡写真である。
図13(a)と
図13(b)とを比較してわかるように、帯電微細水粒子放出モードに設定された微細水粒子放出装置1からの放出物質を菌類に照射することにより、菌類が減少している。すなわち除菌されていることがわかる。従って、第一交互運転処理或いは第二交互運転処理の実行により除菌効果があることが確認された。
【0083】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるべきものではない。例えば、上記実施形態では、放電素子として
図4に示す形状を有する放電素子14を採用したが、それ以外の形状の放電素子を用いても良い。
図14は、他の例に係る放電素子を備える微細水粒子放出装置の微細水粒子放出カートリッジ60の概略図である。
図14に示すように、微細水粒子放出カートリッジ60の構成は、放電素子54を備えることを除き、上記実施形態に係る微細水粒子放出カートリッジ10と同様の構成である。微細水粒子放出カートリッジ60が備える放電素子54は、アース極541と放電極542とを有する。
図14に示すように、アース極541と放電極542は、ケース13の軸方向において異なる位置に配置される。具体的には、アース極541は、放電極542よりも、ケース13の軸方向における放出口132に近い側(下流側)に配置される。
【0084】
図15は、ケース13の軸方向から見た放電素子54を示す。
図15(a)が放電極542の正面図を示し、
図15(b)がアース極541の正面図を示す。
図15に示すように、放電極542及びアース極541は、ともに、ケース13の内径とほぼ同じ外径を有する円板状に形成され、同軸的に配置している。放電極542の一方の面(アース極541に対面する側の面)には、複数の突起542aがアース極541に向かって延びるように形成される。アース極541には、軸方向に貫通する複数の貫通孔541aが形成される。突起542aの個数と貫通孔541aの個数は同じである。そして、複数の突起542aと複数の貫通孔541aは、それぞれ、径方向位置が一致するように形成される。つまり、ケース13の軸方向から見たときに、複数の突起542aの位置と複数の貫通孔541aの位置が全て一致するように、これらの突起542a及び貫通孔541aの位置が決められている。
【0085】
このような形状の放電素子54を用いた場合、放電極542の突起542aの先端からアース極541に向けてコロナ放電が起きることにより、放電空間(放電極542とアース極541との間の空間)にプラズマ領域が形成される。
【0086】
図16は、さらに他の例に係る放電素子64を示す図である。
図16は、ケース13内に収容された放電素子64をケース13の軸方向に直交する平面で切断した断面図である。
図16に示すように、放電素子64は、アース極641と、放電極642と、支持枠643と、クッション材644とを有する。クッション材644は、弾性力を有する部材により、外形がケース13の内径と同径の円形状に形成される。このクッション材644の中央に矩形状の貫通孔が形成され、この貫通孔内に矩形状の支持枠643が組み込まれている。支持枠643は絶縁性材料により構成される。そして、支持枠643内に、アース極641と放電極642が配設される。
【0087】
アース極641は、複数の板状部材により構成される。複数の板状部材のそれぞれは
図16の上下に長く形成され、上端が支持枠643の上辺に、下端が支持枠643の下辺に、それぞれ固定されることにより、支持枠643に支持される。また、各板状部材は、
図16の左右方向に所定の間隔を開けて支持枠643内に配置される。複数の板状部材はそれぞれ電気的に接続されている。
【0088】
一方、放電極642は、複数のワイヤにより構成される。複数のワイヤのそれぞれは
図16の上下に延びるように配設され、上端が支持枠643の上辺に、下端が支持枠643の下辺に、それぞれ固定されることにより、支持枠643に支持される。また、放電極642を構成する各ワイヤは、アース極641を構成する複数の板状部材のうち隣接する板状部材との間の空間内にそれぞれ配設される。複数のワイヤはそれぞれ電気的に接続されている。
【0089】
このような形状の放電素子64を用いた場合、複数のワイヤにより構成される放電極642から複数の板状部材により構成されるアース極641に向けてコロナ放電が起きることにより、放電空間にプラズマ領域が形成される。
【0090】
また、上記実施形態では、ケース13内に微細水粒子発生素子11と放電素子14が共に収容され、ケース13内で微細水粒子発生素子11と放電素子14が一体化されている例について説明した。しかしながら、微細水粒子発生素子11がケース13に収納され、放電素子14はケース13に収納されていないように構成しても良い。この場合、ケース13から放出された微細水粒子発生素子11にて発生した微細水粒子が放電素子14の放電空間内に導かれるような流路が形成されているとよい。また、上記実施形態では、制御装置40が実行する複数の処理を説明したが、矛盾しない複数の処理が同時に実行されてもよい。例えば、ガス発生制御処理と安定化制御処理が同時に実行されてもよい。これによれば、コロナ放電が安定的に起きる範囲内で、オゾンの発生量或いは過酸化水素の発生量を所望の量に制御することができる。
【0091】
また、上記の実施形態においては、交互運転処理として第一交互運転処理及び第二交互運転処理について説明したが、任意の時間だけ帯電微細水粒子放出モードにて帯電微細水粒子及び抑制物質等を放出し、その後、任意の時間だけ無帯電微細水粒子放出モードにて無帯電微細水粒子を放出するように、またはその逆に、任意の時間だけ無帯電微細水粒子放出モードにて無帯電微細水粒子を放出し、その後、任意の時間だけ帯電微細水粒子放出モードにて帯電微細水粒子及び抑制物質等を放出するように、制御装置40が交互運転処理を実行してもよい。
【0092】
また、上記の安定化制御処理においては、発生水分量を減少させるための処理(発生水分量減少処理)の実行により放電電流値iが上限電流値imaxを超えないようにする例について説明したが、放電電圧を低下させることによっても、放電電流値iが上限電流値imaxを超えないようにすることもできる。
【0093】
また、本発明に係る微細水粒子放出装置1は、人体、室内への照射以外に、様々な用途に用いることができる。例えば、ヘアサロン等に設置されている備品類に、微細水粒子放出装置1を用いることができる。具体的には、椅子のひじ掛け、カット時に客が被るガウン、ハサミ、櫛等の道具類に、本発明に係る微細水粒子放出装置1からの放出物質を照射して、除菌等を効率的に行うことができる。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、変形可能である。
【符号の説明】
【0094】
1…微細水粒子放出装置、10,60…微細水粒子放出カートリッジ、11…微細水粒子発生素子、111…基材、112…導電性高分子膜、12…ファン(送風部材)、13…ケース、131…吸入口、132…放出口、14,54,64…放電素子、141,541,641…アース極、142,542,642…放電極、21…ファン電源、22…カートリッジ電源、23…放電用高圧電源、36…電流計、40…制御装置、50…操作部、i…放電電流値、imax…上限電流値、w…発生水分量、wH…高水分量、wL…低水分量
【手続補正書】
【提出日】2022-02-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端が開口した筒状に形成されたケースと、
前記ケース内に収容され、無帯電であり且つ粒径が50ナノメートル以下の微細水粒子を発生することができるように構成される微細水粒子発生素子と、
前記ケースの一方端から空気を前記ケース内に流入させるとともに前記ケース内に流入した空気を前記ケースの他方端から放出させることができるように動作する送風部材と、
互いに離間した第一電極及び第二電極を有し、前記第一電極と前記第二電極との間に電圧が印加されることにより前記第一電極と前記第二電極との間の放電空間にて放電を起こすことができるように構成され、前記微細水粒子発生素子にて発生した前記微細水粒子が前記送風部材の動作により前記ケース内に流入した空気とともに前記放電空間を通過するように、前記微細水粒子発生素子の下流に配設された放電素子と、
前記微細水粒子発生素子にて発生する水分の量である発生水分量及び前記放電を制御する制御装置と、
を備える、
微細水粒子放出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の微細水粒子放出装置であって、
前記放電素子が前記ケース内に収容されている、微細水粒子放出装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の微細水粒子放出装置であって、
前記微細水粒子発生素子は、導電性の基材及び前記基材の表面に形成された導電性高分子膜を備え、前記導電性高分子膜に吸収されている水分を放出することにより前記微細水粒子が発生し、前記導電性高分子膜の温度が高いほど前記発生水分量が多くなるように構成されている、微細水粒子放出装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の微細水粒子放出装置であって、
前記制御装置は、前記放電素子に通電される電流の値である放電電流値が、前記放電空間内でコロナ放電が起きるための放電電流値の上限である上限電流値以下となるように、前記放電電流値に基づいて前記発生水分量を制御する安定化制御処理を実行し得るように構成される、微細水粒子放出装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の微細水粒子放出装置であって、
前記制御装置は、前記放電空間にて放電が起きることにより生成されるオゾンと過酸化水素の発生量を、前記発生水分量を制御することにより制御するガス発生量制御処理を実行し得るように構成される、微細水粒子放出装置。
【請求項6】
請求項5に記載の微細水粒子放出装置であって、
前記制御装置は、
前記微細水粒子放出装置の動作モードがオゾン抑制及び過酸化水素増加モードであるときに、前記ガス発生量制御処理にて、前記発生水分量が所定の高水分量以上に維持されるように前記発生水分量を制御する高水分量制御を実行し、
前記動作モードがオゾン増加及び過酸化水素抑制モードであるときに、前記ガス発生量制御処理にて、前記発生水分量が、前記高水分量よりも少ない所定の低水分量以下に維持されるように前記発生水分量を制御する低水分量制御を実行する、微細水粒子放出装置。
【請求項7】
請求項3乃至6のいずれか1項に記載の微細水粒子放出装置であって、
前記制御装置は、
前記放電空間にて放電が起きていない状態にて前記微細水粒子発生素子から前記微細水粒子が発生している無帯電微細水粒子放出モードと、前記放電空間にて放電が起きている状態にて前記微細水粒子発生素子から前記微細水粒子が発生している帯電微細水粒子放出モードとを、任意のタイミングで切り替えることができる交互運転処理を実行し得るように構成される、微細水粒子放出装置。
【請求項8】
両端が開口した筒状空間を提供する筒状空間提供ステップと、
前記筒状空間において、無帯電であり且つ粒径が50ナノメートル以下の微細水粒子を発生させる微細水粒子発生ステップと、
前記筒状空間の一方端から空気を前記筒状空間内に流入させるとともに前記筒状空間内に流入した空気を前記筒状空間の他方端から放出させることができるように送風する送風ステップと、
前記微細水粒子発生ステップにて発生した前記微細水粒子が前記送風ステップによって前記筒状空間内に流入した空気とともに放電空間を通過するように、電圧の印加により互いに離間した第一電極と第二電極との間に放電を起こす前記放電空間を提供する放電空間提供ステップと、
前記微細水粒子発生ステップにおける発生水分量及び前記放電空間提供ステップにおける前記放電を制御する制御ステップと、
を備える、微細水粒子放出方法。
【請求項9】
請求項8に記載の微細水粒子放出方法であって、前記放電を前記筒状空間の内部で発生させるステップを備える、微細水粒子放出方法。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の微細水粒子放出方法であって、前記微細水粒子発生ステップは、温度が高いほど前記発生水分量が多くなるように構成された、水分を吸収または放出する導電性高分子膜を提供するステップを備える、微細水粒子放出方法。
【請求項11】
請求項8乃至10のいずれか1項に記載の微細水粒子放出方法であって、前記制御ステップは、前記第一電極と前記第二電極の間を流れる放電電流値が前記放電空間内にコロナ放電を起こすための放電電流値の上限以下となるように、前記放電電流値に基づき前記発生水分量を制御する安定化制御ステップを備える、微細水粒子放出方法。
【請求項12】
請求項8乃至11のいずれか1項に記載の微細水粒子放出方法であって、前記制御ステップは、前記発生水分量を制御することにより、前記放電空間内において前記放電により生成されるオゾンと過酸化水素の発生量を制御するように構成されたガス発生量制御ステップを備える、微細水粒子放出方法。
【請求項13】
請求項12に記載の微細水粒子放出方法であって、前記ガス発生量制御ステップは、前記発生水分量を所定の高水分量以上に維持することによりオゾンを抑制し過酸化水素を増加させる高水分量制御ステップと、前記発生水分量を前記高水分量よりも少ない所定の低水分量以下に維持することによりオゾンを増加させ過酸化水素を抑制する低水分量制御ステップとを備える、微細水粒子放出方法。
【請求項14】
請求項10乃至13のいずれか1項に記載の微細水粒子放出方法であって、前記制御ステップは、前記放電空間内に放電が起きていない状態において前記微細水粒子発生ステップによる前記微細水粒子を発生させる無帯電微細水粒子放出ステップと、前記放電空間内に放電が起きている状態において前記微細水粒子発生ステップによる前記微細水粒子を発生させる帯電微細水粒子放出ステップとを、任意のタイミングで切り替えることができる交互運転ステップを備える、微細水粒子放出方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、微細な水粒子を放出できるように構成された微細水粒子放出装置および微細水粒子放出方法に関する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
そこで、本発明は、菌或いはウイルスを除去しつつ、微細水粒子を放出することができる、微細水粒子放出装置および微細水粒子放出方法を提供することを目的とする。また、本発明は、静電気を効率的に除去しつつ、微細水粒子を放出することができる、微細水粒子放出装置および微細水粒子放出方法を提供することを、目的とする。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明は、両端が開口した筒状に形成されたケース(13)と、ケース内に収容され、無帯電であり且つ粒径が50ナノメートル以下の微細水粒子を発生することができるように構成される微細水粒子発生素子(11)と、ケースの一方端から空気をケース内に流入させるとともにケース内に流入した空気をケースの他方端から放出させることができるように動作する送風部材(12)と、互いに離間した第一電極(141)及び第二電極(142)を有し、第一電極と第二電極との間に電圧が印加されることにより第一電極と第二電極との間の放電空間(DS)にて放電を起こすことができるように構成され、微細水粒子発生素子にて発生した微細水粒子が送風部材の動作によりケース内に流入した空気とともに放電空間を通過するように、微細水粒子発生素子の下流に配設された放電素子(14)と、微細水粒子発生素子にて発生する水分の量である発生水分量及び放電を制御する制御装置(40)と、を備える、微細水粒子放出装置(1)を提供する。また、本発明は、両端が開口した筒状空間を提供する筒状空間提供ステップと、前記筒状空間において、無帯電であり且つ粒径が50ナノメートル以下の微細水粒子を発生させる微細水粒子発生ステップと、前記筒状空間の一方端から空気を前記筒状空間内に流入させるとともに前記筒状空間内に流入した空気を前記筒状空間の他方端から放出させることができるように送風する送風ステップと、前記微細水粒子発生ステップにて発生した前記微細水粒子が前記送風ステップによって前記筒状空間内に流入した空気とともに放電空間を通過するように、電圧の印加により互いに離間した第一電極と第二電極との間に放電を起こす前記放電空間を提供する放電空間提供ステップと、前記微細水粒子発生ステップにおける発生水分量及び前記放電空間提供ステップにおける前記放電を制御する制御ステップと、を備える、微細水粒子放出方法を提供する。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明に係る微細水粒子放出装置および微細水粒子放出方法によれば、微細水粒子発生素子にて発生した無帯電の微細水粒子(無帯電微細水粒子)が送風部材の動作により空気とともに放電空間を通過する。このとき放電空間にて放電が起きている場合、放電空間内にプラズマ領域が形成される。このプラズマ領域を空気及び無帯電微細水粒子が通過することにより、空気及び水を原料としたイオンが生成され、無帯電微細水粒子の一部が前記イオンと結合して帯電した微細水粒子(帯電微細水粒子)が生成される。また、同様にこのプラズマ領域を空気及び無帯電微細水粒子が通過することにより、酸素を原料としてオゾンが生成され、主に水を原料として過酸化水素が生成される。従って、本発明に係る微細水粒子放出装置および微細水粒子放出方法によれば、帯電微細水粒子、無帯電微細水粒子、オゾン、及び過酸化水素等を放出することができる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
オゾン或いは過酸化水素は抗菌作用及び抗ウイルス作用を有する。従って、本発明に係る微細水粒子放出装置および微細水粒子放出方法による放出物質を例えば人体の皮膚に照射した場合、放出物質のうちオゾン、過酸化水素により皮膚表面に付着した菌或いはウイルスを除去することができる。さらに、オゾン、過酸化水素が、同時に放出される無帯電微細水粒子或いは帯電微細水粒子と結合することで、皮膚等の対象物の表面にオゾン或いは過酸化水素が吸着、浸透しやすくなって、抗菌作用及び抗ウイルス作用をより発揮しやすくなることが期待できる。また、放出物質のうちの無帯電微細水粒子或いは帯電微細水粒子が人体の皮膚に浸透して皮膚を保湿することができる。つまり、本発明に係る微細水粒子放出装置および微細水粒子放出方法によれば、菌或いはウイルスを除去しつつ、微細水粒子を放出することができる。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
また、本発明に係る微細水粒子放出装置および微細水粒子放出方法によれば、放電素子の電極に負電圧を印加した場合は、負に帯電した帯電微細水粒子を生成することができ、放電素子の電極に正電圧を印加した場合は、正に帯電した帯電微細水粒子を生成することができる。また、放電素子の電極に交番電圧(交流電圧等)を印加すると、正及び負に帯電した帯電微細水粒子を生成することができる。そして、本発明に係る微細水粒子放出装置および微細水粒子放出方法による放出物質を人体の毛髪に照射した場合、放出物質のうちの帯電微細水粒子により静電気を除去することができる。すなわち、人体の毛髪は一般的に正に帯電しているため、前記の方法により負に帯電した帯電微細水粒子を放出することにより、毛髪の静電気を中和、除去することが可能である。また、毛髪に限らず様々なものの静電気除去が可能である。例えば衣類等は、材質により正、負それぞれに帯電するが、そのように帯電した衣類等の静電気を中和、除去することも可能である。また、本発明に係る微細水粒子放出装置および微細水粒子放出方法による放出物質のうちの無帯電微細水粒子が人体の毛髪に浸透して毛髪に潤いを与えることができる。つまり、本発明に係る微細水粒子放出装置および微細水粒子放出方法によれば、静電気を除去しつつ、微細水粒子を放出して例えば保湿を行うことができる。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
微細水粒子放出装置においては、放電素子は、ケース内に収容されているとよい。微細水粒子放出方法においては、放電を筒状空間の内部で発生させるステップを備えても良い。これによれば、ケース内に微細水粒子発生素子及び放電素子が収納されることにより、微細水粒子発生素子及び放電素子が一体化される。このため微細水粒子放出装置をコンパクトに構成することができる。また、微細水粒子発生素子及び放電素子を交換する場合には、ケースごと交換すればよいので、メンテナンス性が向上する。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
微細水粒子放出装置においては、微細水粒子発生素子は、導電性の基材(111)及び基材の表面に形成された導電性高分子膜(112)を備え、導電性高分子膜に吸収されている水分を放出することにより微細水粒子が発生し、導電性高分子膜の温度が高いほど発生水分量が多くなるように構成されているとよい。微細水粒子放出方法においては、微細水粒子発生ステップは、温度が高いほど発生水分量が多くなるように構成された、水分を吸収または放出する導電性高分子膜を提供するステップを備えていても良い。これによれば、導電性高分子膜の温度制御により、発生水分量を制御することができる。なお、本明細書に言う「発生水分量」とは、単位時間当たりにおける、微細水粒子発生素子にて発生する水分の量である。ここで、本発明に係る微細水粒子発生素子から、主に微細水粒子及び水蒸気分子が発生する。従って、発生水分量は、微細水粒子及び水蒸気分子の単位時間当たりにおける発生量である。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
また、微細水粒子放出装置においては、制御装置は、放電素子に通電される電流の値である放電電流値(i)が、放電空間内でコロナ放電が起きるための放電電流値の上限である上限電流値(imax)以下となるように、放電電流値に基づいて発生水分量を制御する安定化制御処理を実行し得るように構成されるとよい。微細水粒子放出方法においては、制御ステップは、第一電極と第二電極の間を流れる放電電流値が放電空間内にコロナ放電を起こすための放電電流値の上限以下となるように、放電電流値に基づき発生水分量を制御する安定化制御ステップを備えていても良い。これによれば、制御装置が安定化制御処理を実行することにより、放電空間にて安定的にコロナ放電が起きる。このため帯電微細水粒子、オゾン及び過酸化水素を安定的に放出することができる。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
また、微細水粒子放出装置においては、制御装置は、放電空間にて放電が起きることにより生成されるオゾンと過酸化水素の発生量を、発生水分量を制御することにより制御するガス発生量制御処理を実行し得るように構成されるとよい。微細水粒子放出方法においては、制御ステップは、発生水分量を制御することにより、放電空間内において放電により生成されるオゾンと過酸化水素の発生量を制御するように構成されたガス発生量制御ステップを備えていても良い。これによれば、制御装置がガス発生量制御処理を実行することにより、微細水粒子放出装置から放出されるオゾンの発生量及び過酸化水素の発生量を制御することができる。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
この場合、微細水粒子放出装置においては、制御装置は、微細水粒子放出装置の動作モードがオゾン抑制及び過酸化水素増加モードであるときに、ガス発生量制御処理にて、発生水分量が所定の高水分量以上に維持されるように発生水分量を制御する高水分量制御を実行し、動作モードがオゾン増加及び過酸化水素抑制モードであるときに、ガス発生量制御処理にて、発生水分量が、高水分量よりも少ない所定の低水分量以下に維持されるように発生水分量を制御する低水分量制御を実行するとよい。微細水粒子放出方法においては、ガス発生量制御ステップは、発生水分量を所定の高水分量以上に維持することによりオゾンを抑制し過酸化水素を増加させる高水分量制御ステップと、発生水分量を高水分量よりも少ない所定の低水分量以下に維持することによりオゾンを増加させ過酸化水素を抑制する低水分量制御ステップとを備えていても良い。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
本発明に係る微細水粒子放出装置および微細水粒子放出方法を用いて人体の皮膚を保湿するような場合、オゾン、過酸化水素及び微細水粒子を皮膚に照射することができる。オゾン或いは過酸化水素は皮膚表面に付着した菌或いはウイルスを除去する効果を有するが、過酸化水素と比較してオゾンの方が人体に対する有害性が高いため、オゾンの照射量が多いと人体に悪影響を及ぼす虞がある。従って、このような場合には、微細水粒子放出装置の動作モードが、オゾンの発生量を抑制(減少)するとともに過酸化水素の発生量を増加して、オゾン濃度を人体に対し安全な濃度に抑えつつ菌或いはウイルスを除去する効果を有するオゾン抑制及び過酸化水素増加モードであるのがよい。このオゾン抑制及び過酸化水素増加モードであるときに制御装置がガス発生量制御処理にて発生水分量を所定の高水分量以上に維持する高水分量制御を実行することにより、放電空間内の湿度が高めに維持され、これによりオゾンの発生量が抑えられ、過酸化水素の発生量が増加する。このためオゾンの照射による悪影響の発生を防止しながら微細水粒子を人体に照射して皮膚の保湿等を図ることができる。一方、例えば本発明に係る微細水粒子放出装置および微細水粒子放出方法を用いて人のいない室内を除菌しながら加湿するような場合には、オゾンの発生量を多くして効率的に室内除菌を図るのがよい。従って、効率的な室内除菌を図るためには、微細水粒子放出装置の動作モードが、多量のオゾンが放出されるオゾン増加及び過酸化水素抑制モードであるのがよい。このオゾン増加及び過酸化水素抑制モードであるときに制御装置がガス発生量制御処理にて発生水分量を所定の低水分量以下に維持する低水分量制御を実行することにより、放電空間内の湿度が低めに維持され、これにより多量のオゾンが発生する。このため効率的に室内除菌を行うことができる。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0044
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0044】
プラズマ領域を空気及び無帯電微細水粒子が通過することにより、空気及び水を原料としたイオンが生成され、無帯電微細水粒子の一部が前記イオンと結合して帯電した微細水粒子(帯電微細水粒子)が生成される。また、同様にこのプラズマ領域を空気及び無帯電微細水粒子が通過することにより、酸素を原料としてオゾンが生成され、主に水を原料として過酸化水素が生成される。従って、帯電微細水粒子放出モードであるときには、微細水粒子放出装置1からは、帯電微細水粒子、無帯電微細水粒子、オゾン、過酸化水素が、空気とともに放出される。
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0054
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0054】
放電素子14の動作状態がOFF状態である場合、すなわち放電素子14のアース極141と放電極142との間に電圧が印加されていない場合(S11:No)、放電素子14にて放電が行われていないことになるので、この安定化
制御処理を行う必要もない。従って制御装置40はこのルーチンの実行を一旦終了する。一方、放電素子14の動作状態がON状態である場合、制御装置40はS12に処理を進める。S12では、制御装置40は、電流計36から放電電流値iを取得する。続いて制御装置40はS13に処理を進めて、発生水分量wを推定する。ここで、制御装置40は、
図5に示すような、放電電流値iと放電空間DS内の相対湿度Hとの関係を表す電流-湿度マップ、及び、発生水分量wと放電空間DS内の相対湿度Hとの関係を表す発生水分量-湿度マップ、を記憶している。そして、制御装置40は、S13にて、電流-湿度マップを参照して、S12にて取得した放電電流値iに対応する相対湿度を求め、次いで、発生水分量-湿度マップを参照して、求めた相対湿度に対応する発生水分量wを求める。このようにして、制御装置40は、発生水分量wを推定することができる。
【手続補正17】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0062
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0062】
上記したように放電空間DSにてコロナ放電が起きている場合、放電空間DSにプラズマ領域が形成される。このプラズマ領域を空気及び無帯電微細水粒子が通過することにより、空気及び水を原料としたイオンが生成され、生成したイオンに無帯電微細水粒子の一部が結合して帯電微細水粒子が生成される。また、プラズマ領域を空気及び無帯電微細水粒子が通過することにより、酸素を原料としてオゾンが生成され、主に水を原料として過酸化水素が生成される。従って、微細水粒子放出装置1から、帯電微細水粒子、無帯電微細水粒子、オゾン、及び過酸化水素等を放出することができる。
【手続補正18】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0078
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0078】
第一交互運転処理は、例えば、人体の皮膚或いは頭髪の保湿を行うようなときに実行される。人体の皮膚の保湿を行うときに第一交互運転処理を実行する場合、まず帯電微細水粒子放出モードにて放出されるオゾン及び過酸化水素が皮膚に照射されることにより、皮膚表面の悪玉菌やウイルスが除去される。その後、無帯電微細水粒子放出モードにて放出される無帯電微細水粒子が皮膚に浸透することにより、皮膚が保湿される。また、頭髪の保湿を行うときに第一交互運転処理を実行する場合、まず帯電微細水粒子放出モードにて放出される帯電微細水粒子が頭髪の静電気を除去する。その後、無帯電微細水粒子放出モードにて放出される無帯電微細水粒子が頭髪に浸透することにより、頭髪に潤いがもたらされる。また、無帯電微細水粒子放出モードの実行後に頭髪に薬剤(カラー剤、パーマ剤、ブリーチ剤等)を塗布することにより、これらの薬剤がより浸透する。
【手続補正19】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0090
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0090】
また、上記実施形態では、ケース13内に微細水粒子発生素子11と放電素子14が共に収容され、ケース13内で微細水粒子発生素子11と放電素子14が一体化されている例について説明した。しかしながら、微細水粒子発生素子11がケース13に収納され、放電素子14はケース13に収納されていないように構成しても良い。この場合、ケース13から放出された微細水粒子発生素子11にて発生した微細水粒子が放電素子14の放電空間内に導かれるような流路が形成されているとよい。また、上記実施形態では、制御装置40が実行する複数の処理を説明したが、矛盾しない複数の処理が同時に実行されてもよい。例えば、ガス発生量制御処理と安定化制御処理が同時に実行されてもよい。これによれば、コロナ放電が安定的に起きる範囲内で、オゾンの発生量或いは過酸化水素の発生量を所望の量に制御することができる。