(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022123545
(43)【公開日】2022-08-24
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 9/19 20060101AFI20220817BHJP
H02K 5/20 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
H02K9/19 A
H02K5/20
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021020921
(22)【出願日】2021-02-12
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】植松 拓
【テーマコード(参考)】
5H605
5H609
【Fターム(参考)】
5H605AA01
5H605CC01
5H605DD13
5H609PP02
5H609PP06
5H609QQ05
5H609QQ12
5H609QQ13
5H609QQ16
5H609QQ17
5H609RR37
(57)【要約】
【課題】比較的簡易な構成でステータの外周に冷却油を行き渡らせることができるとともに、トルクの低下や鉄損を抑制できる回転電機を提供する。
【解決手段】回転電機は、ロータを内側に収容するとともに、内周側にコイルが巻回される円筒状のステータと、ステータの外周面に嵌合されてステータを外側から覆うとともに、ステータの外周面に臨む内周面に溝が形成されたハウジングと、を備え、ステータの外周面とハウジングの溝によって形成され、ステータの外周に冷却油を流す油路を有する。上記の溝は、ステータの中間部に配置され、ステータの周方向に延びる第1の溝と、第1の溝から分岐して第1の溝と交差する方向に延び、ステータの軸方向端部に第1の溝からの冷却油を導く複数の第2の溝と、を含む。第2の溝は、ステータの周方向に間隔をあけて配置される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータを内側に収容するとともに、内周側にコイルが巻回される円筒状のステータと、
前記ステータの外周面に嵌合されて前記ステータを外側から覆うとともに、前記ステータの外周面に臨む内周面に溝が形成されたハウジングと、を備え、
前記ステータの外周面と前記ハウジングの溝によって形成され、前記ステータの外周に冷却油を流す油路を有し、
前記溝は、
前記ステータの中間部に配置され、前記ステータの周方向に延びる第1の溝と、
前記第1の溝から分岐して前記第1の溝と交差する方向に延び、前記ステータの軸方向端部に前記第1の溝からの前記冷却油を導く複数の第2の溝と、を含み、
前記第2の溝は、前記ステータの周方向に間隔をあけて配置される
ことを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記第2の溝は、前記ステータの軸方向に延びる
ことを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記第1の溝による流路の断面積は、前記第2の溝による流路の断面積よりも大きい
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記第2の溝は、前記コイルの周方向の配置間隔以下で前記周方向に配置される
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の回転電機。
【請求項5】
前記ハウジングは、前記第1の溝に連通し、前記冷却油を前記第1の溝に導く給油路を1つ有する
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の回転電機。
【請求項6】
前記第2の溝による流路の断面積は、前記給油路からの距離が近い上流側に比べて、前記給油路からの距離が離れた下流側が大きく設定されている
ことを特徴とする請求項5に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ステータコアに巻回されたコイルの冷却効率を高めるために、ステータの外周に冷却油を接触させてステータを冷却する回転電機が提案されている。例えば、特許文献1は、ステータコアの外周に溝を刻んで、フレームとステータの間に周方向または軸方向に冷却油の流路を形成した回転電機を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、ステータの外周に冷却油を行き渡らせるためにステータの周方向の複数箇所から冷却油を供給している。そのため、冷却油の供給管のレイアウトや加工が複雑となり、製造コストが増加してしまう。例えば、軸方向に延びる複数の溝に対してそれぞれ冷却油の供給口を設ける場合には回転電機の製造コストが一層増加する。
【0005】
また、特許文献1では、ステータコアの外周に溝を形成することからステータ外周の溝付近では部分的に磁束密度が高くなり、磁束の飽和によって回転電機のトルクが低下することが懸念される。
【0006】
また、回転電機のフレームに対してステータを焼き嵌めで締結する場合、締め代分の圧縮応力がステータに作用することでモータの鉄損が増加することが知られているが、かかる鉄損を抑制することも要望されている。
【0007】
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであって、比較的簡易な構成でステータの外周に冷却油を行き渡らせることができるとともに、トルクの低下や鉄損を抑制できる回転電機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の回転電機は、ロータを内側に収容するとともに、内周側にコイルが巻回される円筒状のステータと、ステータの外周面に嵌合されてステータを外側から覆うとともに、ステータの外周面に臨む内周面に溝が形成されたハウジングと、を備え、ステータの外周面とハウジングの溝によって形成され、ステータの外周に冷却油を流す油路を有する。上記の溝は、ステータの中間部に配置され、ステータの周方向に延びる第1の溝と、第1の溝から分岐して第1の溝と交差する方向に延び、ステータの軸方向端部に第1の溝からの冷却油を導く複数の第2の溝と、を含む。第2の溝は、ステータの周方向に間隔をあけて配置される。
【0009】
上記の回転電機において、第2の溝は、ステータの軸方向に延びてもよい。
上記の回転電機において、第1の溝による流路の断面積は、第2の溝による流路の断面積よりも大きくてもよい。
上記の回転電機において、第2の溝は、コイルの周方向の配置間隔以下で周方向に配置されてもよい。
【0010】
上記の回転電機において、ハウジングは、第1の溝に連通し、冷却油を第1の溝に導く給油路を1つ有していてもよい。また、第2の溝による流路の断面積は、給油路からの距離が近い上流側に比べて、給油路からの距離が離れた下流側が大きく設定されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様の回転電機によれば、比較的簡易な構造でステータの外周に冷却油を行き渡らせることができるとともに、トルクの低下や鉄損を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図4】モータ内の第2油路の形状を模式的に示す斜視図である。
【
図5】周方向流路および吐出流路を拡大して示す軸方向断面図である。
【
図6】吐出流路を拡大して示す周方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
実施形態では説明を分かり易くするため、本発明の主要部以外の構造や要素については、簡略化または省略して説明する。また、図面において、同じ要素には同じ符号を付す。なお、図面に示す各要素の形状、寸法などは模式的に示したもので、実際の形状、寸法などを示すものではない。
【0014】
図1は、回転電機の一例である本実施形態のモータを示す斜視図である。
図2は、本実施形態のモータ1の縦断面図である。本実施形態のモータ1は、インナーロータ型モータであって、ロータ2と、ステータ3と、ハウジング4とを備える。
【0015】
ロータ2は、例えば磁石埋込型または表面磁石型のロータである。ロータ2の中心には、回転軸Axに沿って鉄心を貫通するようにシャフト5が嵌入されている。なお、以下の説明では、回転軸Axを中心とする周方向を単に周方向と称し、回転軸Axを中心とする径方向を単に径方向と称する。
【0016】
ステータ3は、円筒状のステータコアを有し、僅かなエアギャップを隔ててロータ2の外周に同心状に配置される。ロータ2を内側に収容するステータコアの内周には、回転軸Axに向けて径方向内側に突出するティース(不図示)が周方向に等間隔をおいて櫛歯状に複数設けられている。ステータコアの隣り合うティースの間(スロット)にはコイル6が巻回される。なお、ステータコアのティースおよびスロットはいずれも軸方向に沿って延びている。
【0017】
モータ1においては、コイル6の電流制御によりステータ3側の磁界を順番に切り替えることで、ロータ2の磁界との吸引力または反発力により、ロータ2が回転軸Axを中心として回転する。
【0018】
ハウジング4は、軸方向の一方側および他方側が開口した円筒状の空間を有する筐体である。ハウジング4の円筒状の空間内には、ステータ3およびロータ2が配置される。ステータ3はハウジング4の内周に焼き嵌めで嵌合され、ハウジング4はステータ3の外周面を覆うように取り付けられる。また、ハウジング4の一方側および他方側には、それぞれシャフト5を軸支する蓋体(不図示)が取り付けられ、蓋体によりハウジング4の両側の開口が塞がれる。なお、ハウジング4と各蓋体はいずれも鋳造で製造される。
【0019】
ハウジング4の内周面には、
図3に示すように、後述の周方向流路14を構成するための第1の溝4aおよび後述の吐出流路15を構成するための第2の溝4bが刻まれている。第2の溝4bは、ハウジング4の内周に焼き嵌めされるステータ3との接触面積を小さくする機能も担う。
【0020】
また、モータ1は、冷却油を流通させる第1油路11および第2油路12を有する。第1油路11は、コイル6のコイル端6aに冷却油を散布するための油路であり、第2油路12は、ステータ3の外周に冷却油を流す油路である。
【0021】
図2に示すように、第1油路11は、ステータ3よりも
図1、
図2中上側に配置され、軸方向に沿ってハウジング4内を延びている。第1油路11は、オイルポンプ(不図示)から冷却油を受ける入口11aを有している。ハウジング4の一方側および他方側における第1油路11の両端部には、コイル端6aに冷却油を散布するシャワーヘッド(不図示)がそれぞれ取り付けられる。
【0022】
第2油路12は、ハウジング4に形成される接続油路13と、ハウジング4およびステータ3の間に形成される周方向流路14および複数の吐出流路15とを有する。
【0023】
図2に示すように、第2油路12の接続油路13は、モータ1の上側に配置され、第1油路11から分岐して下側に向けて延びている。接続油路13は、第1油路11よりも径方向内側に位置する周方向流路14と連通しており、第1油路11から周方向流路14に冷却油を導く給油路としての機能を担う。なお、接続油路13は、第1油路11を介さずにオイルポンプから冷却油を直接受けてもよい。
【0024】
図4は、モータ1内の第2油路12の形状を模式的に示す斜視図である。
図5は、周方向流路14および吐出流路15を拡大して示す軸方向断面図である。
図6は、吐出流路15を拡大して示す周方向断面図である。
【0025】
図5に示すように、周方向流路14は、ハウジング4の内周に刻まれた第1の溝4a(
図3参照)と、ハウジング4に焼き嵌めされたステータ3の外周面とによって形成される。また、
図5、
図6に示すように、吐出流路15は、ハウジング4の内周に刻まれた第2の溝4b(
図3参照)と、ハウジング4に焼き嵌めされたステータ3の外周面とによって形成される。したがって、周方向流路14および吐出流路15は、いずれもステータ3の外周面に臨んでいる。
【0026】
周方向流路14を構成するための第1の溝4aは、ハウジング4の軸方向中央に配置され、ステータ3の外周に沿って環状に形成されている。周方向流路14は、ステータ3の軸方向中央で冷却油を周方向に導くとともに、各々の吐出流路15に冷却油を供給する機能を担う。
【0027】
吐出流路15は、周方向流路14を基端として軸方向の一方側と他方側にそれぞれ形成される流路である。吐出流路15を構成するための第2の溝4bは、ステータ3の周方向に等間隔をおいて複数配置されている。各々の第2の溝4bは、第1の溝4aから分岐してハウジング4の一方側の端部または他方側の端部まで軸方向に沿って延びている。したがって、吐出流路15は、周方向流路14からの冷却油を軸方向に導くことができる。なお、ハウジング4を鋳造で形成する場合、第2の溝4bを軸方向に延びる形状とすると溝の形成が容易となる。
【0028】
また、ステータ3はハウジング4に焼き嵌めされるが、
図6に示すように、吐出流路15の位置ではステータ3はハウジング4と接触しない。周方向に複数配置された吐出流路15は、ステータ3とハウジング4の周方向の接触部分を小さくし、焼き嵌めでステータ3に作用する圧縮応力を逃がす空間としても機能する。したがって、焼き嵌めによるステータ3内部の残留応力が吐出流路15によって緩和されることで、モータ1の鉄損を抑制することができる。
【0029】
ここで、周方向流路14および吐出流路15の仕様は、コイル6の冷却効果やモータ1の鉄損抑制効果を考慮して、例えば以下のように設定される。
【0030】
コイル6の温度分布は、放熱の容易なコイル端6aから離れるにつれて温度が上がり、一般にスロット内の軸方向中央が高熱となる。また、周方向流路14の流量は、複数の吐出流路15に冷却油を分配するために吐出流路15の流量よりも大きくする必要がある。そのため、周方向流路14の断面積は、吐出流路15の断面積よりも大きく設定される。
【0031】
これにより、周方向流路14の冷却油の流量が吐出流路15の冷却油の流量よりも大きくなる。すると、スロット内のコイル6の高温部位(軸方向中央)において冷却油との熱交換が容易となり、ステータ3の高温部位の冷却能力を向上させることができる。また、吐出流路15の断面積が周方向流路14の断面積よりも小さくなることで吐出流路15での冷却油の流速が速くなり、スロット内のコイル6を軸方向に沿って効率的に冷却できる。
【0032】
また、焼き嵌めによるステータ3内部の残留応力は、ティースの肉厚部分の方がスロットの肉薄部分よりも高くなると考えられる。そのため、ステータ3内部の残留応力をより適切に緩和するためには、吐出流路15の配置間隔は、ステータ3のスロットの配置間隔以下に設定することが好ましい。これにより、各ティースに対して1以上の吐出流路15が臨むので、ステータ3のティースの部位での残留応力を周方向にほぼ均一に緩和できる。一例として、スロット数が48であるステータの場合、吐出流路15の配置間隔は周方向において7.5°以下の間隔(360°/48=7.5°)で配置されることが好ましい。
【0033】
また、吐出流路15とコイル6の位置は周方向において一致していてもよく、ずれていてもよい。例えば、周方向においてコイル6と吐出流路15の位置が一致する場合、吐出流路15からコイル6まで距離が短くなるため、吐出流路15を流れる冷却油により発熱源のコイル6を効率的に冷却できる。一方で、焼き嵌めによるステータ3内部の残留応力を緩和する観点からは、残留応力の高いティースの位置に吐出流路15を配置する方が好ましい。したがって、吐出流路15の配置は、コイル6の冷却性能やステータ3内部の残留応力の緩和の程度を考慮して適宜調整すればよい。
【0034】
また、吐出流路15の断面積は、周方向の位置に応じて異なっていてもよい。例えば、接続油路13に近い上流側の吐出流路15と接続油路13から離れた下流側の吐出流路15を比べると、下流側の吐出流路15には冷却油を送りにくい。また、周方向流路14を通過する距離が長くなる分、下流側の吐出流路15では途中での熱交換で冷却油の温度も高くなってしまう。
【0035】
そのため、下流側の吐出流路15の冷却効率を高めるために、下流側の吐出流路15の断面積を上流側の吐出流路15の断面積よりも大きくしてもよい。上記の構成によれば、下流側の吐出流路15では断面積が相対的に大きくなる分冷却油の流量が増加し、上流側と下流側の吐出流路15間での冷却性能の偏りを抑制できる。
【0036】
上記のように下流側の吐出流路15の断面積を大きくする場合、第2の溝4bの径方向の深さを大きくしてもよく、第2の溝4bの周方向の幅を大きくしてもよい。なお、第2の溝4bの周方向の幅を大きくする場合、ステータ3とハウジング4の周方向の接触部分がより小さくなるので、焼き嵌めによるステータ3内部の残留応力を抑制する点でも有利である。
【0037】
ここで、本実施形態では冷却油によるステータ3の冷却は以下のように行われる。
まず、冷却油は、第1油路11の入口11aから供給されて第1油路11の両端に向けて流れる。第1油路11からハウジング4の一方側に流れる冷却油は、一方側のシャワーヘッドを通過して一方側のコイル端6aに上側から散布される。同様に、第1油路11からハウジング4の他方側に流れる冷却油は、他方側のシャワーヘッドを通過して他方側のコイル端6aに上側から散布される。これにより、コイル端6aに接触した冷却油が熱を奪うことで、コイル端6aが冷却される。
【0038】
また、第1油路11を流れる冷却部の一部は、第2油路12の接続油路13から周方向流路14に流れ込む。接続油路13から周方向流路14の上側に供給される冷却油は、周方向流路14の左回り方向と右回り方向の両側から下側にむけて流れる。これにより、ステータ3の軸方向中央において冷却油が周方向流路14の周方向全体に行き渡り、ステータ3の軸方向中央が冷却油との熱交換により冷却される。
【0039】
また、周方向流路14の冷却油は、周方向流路14から分岐して各々の吐出流路15に流れ込む。吐出流路15を流れる冷却油は、軸方向に沿ってハウジング4の一方側の端部または他方側の端部に向けて流れ、コイル端6a側の空間に吐出される。各々の吐出流路15を流れる冷却油によってステータ3が外周から冷却されることで、スロット内のコイル6が軸方向に沿って冷却される。なお、吐出流路15から吐出される冷却油の一部は、コイル端6aと接触してコイル端6aを冷却する。
【0040】
そして、第1油路11を経て上側から散布される冷却油と、第2油路12の吐出流路15から吐出される冷却油は、ハウジング4の底面近傍のオイルパン領域に貯留される。冷却油は、オイルポンプ(不図示)の駆動によって底面側のオイルパン領域から第1油路11の入口11aに再び供給される。
【0041】
以下、本実施形態のモータ1の効果を説明する。
本実施形態の第2油路12では、第1の溝4aの周方向流路14により、ステータ3の軸方向中央で冷却油を周方向に亘って流す。そして、第2の溝4bの吐出流路15により、周方向流路14から分岐してステータ3の軸方向に沿って冷却油を流す。これにより、ステータ3の外周に冷却油を行き渡らせることができ、スロット内のコイル6の高温部位を冷却することができる。
【0042】
また、本実施形態の第2の油路12では、上側1か所の給油路(接続油路13)から周方向流路14に冷却油を供給すれば、ステータ3の外周に冷却油を行き渡らせることができる。そのため、本実施形態のモータ1の構成は、複数の給油路からステータの外周に冷却油を供給する構成に比べてシンプルになり、製造コストも抑制できる。
【0043】
また、本実施形態では、ハウジング4側に溝4a,4bを形成してステータ3の外周との間に第2の油路12を形成するので、ステータ3の外周面を周方向に平滑にできる。そのため、ステータ3側に溝を設けて冷却油を流す構成と比べると、ステータ3での磁束飽和が生じにくくなり、モータ1のトルク低下を抑制できる。
【0044】
また、本実施形態では、ハウジング4の周方向に複数配置された第2の溝4bにより、焼き嵌めによるステータ3内部の残留応力が緩和される。そのため、モータ1の鉄損を抑制することができる。
【0045】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。
【0046】
上記実施形態では、回転電機の一例としてモータ1の構成例を説明したが、本発明の回転電機は、発電機に適用することも可能である。
【0047】
上記実施形態では、吐出流路15が軸方向に沿って並列に延びる構成例を説明した。しかし、本発明の回転電機は、吐出流路15が軸方向に対して傾いた方向に並列に延びるスキュー状の構成であってもよい。
【0048】
上記実施形態では、周方向流路14がステータ3の軸方向中央に配置される例を説明した。しかし、本発明の回転電機では、周方向流路14の位置がステータ3の軸方向中央からずれている構成も含みうる。つまり、周方向流路14は、ステータ3の軸方向端部を除く中間部に形成されていてもよい。
【0049】
上記実施形態では、周方向流路14を周方向に環状に形成する構成例を説明した。しかし、本発明の回転電機では、周方向流路が周方向全体に設けられていなくてもよく、例えば下側に周方向流路の形成されていない部分があってもよい。
【0050】
加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0051】
1…モータ、2…ロータ、3…ステータ、4…ハウジング、4a…第1の溝、4b…第2の溝、5…シャフト、6…コイル、6a…コイル端、11…第1油路、11a…入口、12…第2油路、13…接続油路、14…周方向流路、15…吐出流路
【手続補正書】
【提出日】2022-03-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータを内側に収容するとともに、内周側にコイルが巻回される円筒状のステータと、
前記ステータの外周面に嵌合されて前記ステータを外側から覆うとともに、前記ステータの外周面に臨む内周面に溝が形成されたハウジングと、を備え、
前記ステータの外周面と前記ハウジングの溝によって形成され、前記ステータの外周に冷却油を流す油路を有し、
前記溝は、
前記ステータの中間部に配置され、前記ステータの周方向に延びる第1の溝と、
前記第1の溝から分岐して前記第1の溝と交差する方向に延び、前記ステータの軸方向端部に前記第1の溝からの前記冷却油を導く複数の第2の溝と、を含み、
前記第2の溝は、前記ステータの周方向に間隔をあけて配置され、
前記第2の溝の周方向の配置間隔は、前記コイルの周方向の配置間隔以下である
ことを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記第2の溝は、前記ステータの軸方向に延びる
ことを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記第1の溝による流路の断面積は、前記第2の溝による流路の断面積よりも大きい
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記ハウジングは、前記第1の溝に連通し、前記冷却油を前記第1の溝に導く給油路を1つ有する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の回転電機。
【請求項5】
前記第2の溝による流路の断面積は、前記給油路からの距離が近い上流側に比べて、前記給油路からの距離が離れた下流側が大きく設定されている
ことを特徴とする請求項4に記載の回転電機。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明の一態様の回転電機は、ロータを内側に収容するとともに、内周側にコイルが巻回される円筒状のステータと、ステータの外周面に嵌合されてステータを外側から覆うとともに、ステータの外周面に臨む内周面に溝が形成されたハウジングと、を備え、ステータの外周面とハウジングの溝によって形成され、ステータの外周に冷却油を流す油路を有する。上記の溝は、ステータの中間部に配置され、ステータの周方向に延びる第1の溝と、第1の溝から分岐して第1の溝と交差する方向に延び、ステータの軸方向端部に第1の溝からの冷却油を導く複数の第2の溝と、を含む。第2の溝は、ステータの周方向に間隔をあけて配置され、第2の溝の周方向の配置間隔は、コイルの周方向の配置間隔以下である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
上記の回転電機において、第2の溝は、ステータの軸方向に延びてもよい。
上記の回転電機において、第1の溝による流路の断面積は、第2の溝による流路の断面積よりも大きくてもよい。