(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022123627
(43)【公開日】2022-08-24
(54)【発明の名称】衣服
(51)【国際特許分類】
A41D 1/02 20060101AFI20220817BHJP
【FI】
A41D1/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021021057
(22)【出願日】2021-02-12
(71)【出願人】
【識別番号】500560129
【氏名又は名称】株式会社ニトリホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】230116816
【弁護士】
【氏名又は名称】成川 弘樹
(74)【代理人】
【識別番号】100174850
【弁理士】
【氏名又は名称】大崎 絵美
(72)【発明者】
【氏名】安孫子 正次
【テーマコード(参考)】
3B031
【Fターム(参考)】
3B031AA08
3B031AA09
3B031AA10
3B031AB13
3B031AC14
3B031AC15
(57)【要約】
【課題】使用時における見た目や生地面の質感等を収納状態のまま判断することができる折畳収納可能な衣服を提供すること。
【解決手段】本発明に係る衣服は、衣服本体に裏と表で見た目ないし質感が異なる裏表のある生地が用いられ、衣服本体には内面の少なくとも一面に上記裏表のある生地の表が現れるように形成された袋状収納部が設けられている。この袋状収納部は、例えば衣服本体に設けられたポケットである。不使用時には袋状収納部を裏返して衣服本体が折り畳み収納される。袋状収納部を外に引き出して裏返した状態にすると衣類本体の表の面と同じ生地面が現れる。その結果、衣類本体の使用時における色や模様といった見た目や生地面の質感等を、収納状態のまま判断することができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣服本体に裏と表で見た目ないし質感が異なる裏表のある生地が用いられ、前記衣服本体には内面あるいは外面の少なくとも一面に前記裏表のある生地の表が現れるように形成された袋状収納部が設けられており、不使用時には前記袋状収納部をそのままあるいは裏返して生地の表を外側に向けた状態で内部に前記衣服本体が折り畳み収納される衣服。
【請求項2】
前記袋状収納部は、前記衣服本体に設けられたポケットである、請求項1に記載の衣服。
【請求項3】
前記ポケットには、衣服本体を袋状収納部内に収納された状態に維持するための留め具が形成される請求項2に記載の衣服。
【請求項4】
前記衣服本体は上半身に着る上衣と下半身に着る下衣とからなり、前記袋状収納部は前記上衣と下衣の少なくとも一方に設けられるとともに仕切布により第1の袋状収納部と第2の袋状収納部に分割されており、不使用時には、前記下衣が前記第1の袋状収納部に、前記上衣が前記第2の袋状収納部に、それぞれ折り畳み収納される、請求項1~3の何れか1項に記載の衣服。
【請求項5】
前記上衣と下衣とは、生地の表の見た目ないし質感を異ならせて形成され、前記袋状収納部が、前記第1の袋状収納部の内面の一方に前記下衣の生地の表が現れるとともに他方に前記上衣の生地の表が現れるか、もしくは、前記第2の袋状収納部の内面の一方に前記上衣の生地の表が現れるとともに他方に前記下衣の生地の表が現れるように形成されている、請求項4に記載の衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服本体に袋状収納部を備え、不使用時には袋状収納部をそのままあるいは裏返して生地の表を外側に向けた状態で内部に衣服本体を折り畳み収納可能な衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
衣服本体に収納袋を設け、不使用時には衣服本体を収納袋に折り畳み収納することを可能とした衣服は公知である。例えば、特許文献1には、ジャケットの背中に収納部を設け、この収納部に本体を折り畳み収納可能にしたジャケットの考案が開示されている。また、特許文献2には、裏地の裏側に収納部裏部材を取付けて収納部を設け、裏地の左右の左右半部の合わせ部に収納部の開口部を設けて、ここから折り畳んだジャケットを収納部内へ収納することで収納作業を容易かつ迅速にする折り畳み収納可能なジャケットの考案が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3088492号明細書
【特許文献2】実用新案登録第3208960号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述したような従来の折り畳み収納可能な衣服では、当該衣服が使用時においてどのような色や模様なのかといった使用時の見た目や、衣服の表面がどのような素材や織物組織の生地からなるものなのかといった質感が、収納状態では判断できない。このため、販売のために店頭陳列する際には、買物客が使用時における衣服の見た目や質感を確認できるように折り畳まない状態で陳列せざるを得ない。また、購入後の衣服についても、自宅で折り畳み収納している衣服がどのような見た目や質感であるかを確認等するためには折り畳み状態を解く必要がある。
【0005】
さらに、上述したような従来の折り畳み収納可能な衣服は、上衣であるジャケットを折り畳み収納するものであるため、衣服本体が上衣と下衣のセットであるような場合には一体的に収納することができず、上衣と下衣を別々に収納する必要がある。
【0006】
衣服の使用時の見た目や質感を収納した状態で確認できるようにすれば、店頭陳列が効率的なものとなるし、自宅での使用の利便性も高めることができる。また、衣服本体が上衣と下衣のセットものである場合に、衣服本体を一体的に収納可能とすると、携帯性等を高めることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、本発明に係る衣服は、衣服本体に裏と表で見た目ないし質感が異なる裏表のある生地が用いられ、前記衣服本体には内面あるいは外面の少なくとも一面に前記裏表のある生地の表が現れるように形成された袋状収納部が設けられており、不使用時には前記袋状収納部をそのままあるいは裏返して生地の表を外側に向けた状態で内部に前記衣服本体が折り畳み収納されることを特徴とする。
【0008】
例えば、前記袋状収納部は、前記衣服本体に設けられたポケットである。
【0009】
好ましい態様では、前記ポケットには、衣服本体を袋状収納部内に収納された状態に維持するための留め具が形成される。
【0010】
本発明に係る衣服は、前記衣服本体が上半身に着る上衣と下半身に着る下衣とからなり、前記袋状収納部は前記上衣と下衣の少なくとも一方に設けられるとともに仕切布により第1の袋状収納部と第2の袋状収納部に分割されており、不使用時には、前記下衣が前記第1の袋状収納部に、前記上衣が前記第2の袋状収納部に、それぞれ折り畳み収納される構成とすることもできる。
【0011】
上記構成において、前記袋状収納部が、前記第1の袋状収納部の内面の一方に前記下衣の生地の表が現れるとともに他方に前記上衣の生地の表が現れるか、もしくは、前記第2の袋状収納部の内面の一方に前記上衣の生地の表が現れるとともに他方に前記下衣の生地の表が現れるように形成されている態様とすることもできる。
【0012】
例えば、前記上衣と下衣とは、生地の表の見た目ないし質感を異ならせて形成され、前記第1の袋状収納部の内面の一方が前記下衣の表と共の生地面であるとともに他方が前記上衣の表と共の生地面であり、前記第2の袋状収納部の内面の一方が前記下衣の表と共の生地面であるとともに他方が前記下衣の裏と共の生地面である態様とすることができる。
【0013】
もしくは、前記第2の袋状収納部の内面の一方が前記上衣の表と共の生地面であるとともに他方が前記下衣の表と共の生地面であり、前記第1の袋状収納部の内面の一方が前記上衣の表と共の生地面であるとともに他方が前記上衣の裏と共の生地面である態様とすることもできる。
【0014】
一例として、上記袋状収納部は略矩形を有し、当該袋状収納部は一辺が20cm以下の略矩形である。
【0015】
また、好ましくは、上記袋状収納部はナイロンとポリエステルの混紡の生地からなる。
【0016】
さらに、上記袋状収納部の開口部近傍にスナップボタンや面ファスナーやボタンなどの留め具を備えている態様としてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、衣服の使用時における色や模様といった見た目や手触りなどの生地の質感を、収納状態のまま判断することができる。その結果、収納状態で店頭陳列しても、買物客は、使用時における衣服の見た目や質感を確認できる。また、自宅で折り畳み収納している衣服の場合、折り畳み状態を解くことなく、その見た目や質感を確認することができる。
【0018】
さらに、本発明に係る衣服は、衣服本体が上衣と下衣のセットであるような場合でも、これらを一体的に収納することができ、携帯性等を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の適用例としてのパーカーの正面図(a)および裏面図(b)である。
【
図2】
図1に示したパーカーを裏返した状態での正面図(a)および裏面図(b)である。
【
図3】袋状収納部としての左ポケットの使用時の状態を示す図(a)および外に引き出した状態を示す図(b)である。
【
図4】パーカーの折畳手順の一例を説明する図である。
【
図5】パーカーの収納手順の一例を説明する図である。
【
図6】本発明の一実施例としてのルームウェアの正面図(a)および裏面図(b)である。
【
図7】
図6に示したルームウェアを裏返した状態での正面図(a)および裏面図(b)である。
【
図8】左ポケットの縫合状態を説明するための図で、(a)は表側から見た状態、(b)は左ポケットを引き出した状態の図である。
【
図9】実施例において袋状収納部として機能する2重構造の右ポケットの縫合状態を説明するための図で、(a)は表側から見た状態、(b)は第1の袋状収納部を引き出した状態の図、(c)は第2の袋状収納部を引き出した状態の図である。
【
図10】実施例におけるルームウェアの下衣であるルームパンツの折畳手順を説明する図である。
【
図11】本実施例におけるルームウェアの下衣であるルームパンツの収納手順を説明する図である。
【
図12】実施例におけるルームウェアの上衣であるTシャツの折畳手順を説明する図である。
【
図13】実施例におけるルームウェアの収納手順を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照して、本発明に係る衣服について説明する。なお、本発明において、裏と表で見た目ないし質感が異なる裏表のある生地とは、例えば、編物からなる場合には、一般に編み方によって見栄えがする面が表で、見栄えがしないない面が裏の生地であり、織物の場合には、例えば後染めや後加工によって表裏の違いがもたらされるものであれば、このような後染め等により見た目や質感(外観、手触り)が高められたりする面が表で、見た目が劣ったり、あるいは質感が肌触りを考慮したような面が裏の生地である。言い換えれば、裏面を表側にして着衣しているときに、他人に裏返しと指摘されるべきような明らかな表裏の違いがある生地である。
【0021】
図1は、本発明の適用例としてのパーカーの正面図(a)および裏面図(b)である。
【0022】
図1を参照して、パーカー1は、右前身頃10aおよび左前身頃10bと、後身頃20と、フード30と、右袖40aおよび左袖40bと、右ポケット50aおよび左ポケット50bとからなり、これらが縫合されて一体化されている。なお、これらは何れも一枚の布地からなる。また、右前身頃10aと左前身頃10bの合わせ部には係合手段としてのファスナー60が設けられて前開きできるようになっている。
【0023】
このパーカー1には、縦横両方向へのストレッチ性に優れ、皴になりにくいとともに皴回復性の高い生地を使用している。このような生地としては、綿にポリエステルなどを混紡して吸湿性を高めた素材を使って織り上げたスウェット生地や、吸湿性や速乾性が高くカビや虫害を受けにくいナイロン生地やポリエステル生地などが例示される。この適用例では、触れるとひんやり感じる「接触冷感」が特徴の、ナイロンとポリエステルの混紡の生地を用いている。
【0024】
本適用例で用いた生地は湿気を吸収して放出する機能ももっており、これによりサラサラした肌触りを感じることができる。この生地は伸縮性に優れるとともに、皴が付きにくく皴回復性も高いので、本発明のような折り畳み収納する衣料に適するだけではなく、通気性にも優れ、清涼感があり、軽量でもあるため、夏物衣料に好適である。
【0025】
図2は、パーカー1を裏返した状態(すなわち、パーカー生地の裏面を表に出した状態)の正面図(a)および裏面図(b)であり、本適用例ではパーカー生地の表の面と裏の面では質感が異なる。なお、この例では、裏返した状態のパーカー1は、概ね全体がパーカー生地の裏の面となっているが、右袖40aおよび左袖40bの折り返し部分(右袖折返し部分45aおよび左袖折返し部分45b)は、パーカー生地の表の面となっている。
【0026】
図2(a)に示すように、この適用例では、袋状収納部として機能する右ポケット50aおよび左ポケット50bは、一辺が20cm程度の略矩形を有している。ポケットの形状を略矩形としているのは、パーカー1本体をきれいに収納しやすくするためであり、また、略矩形の一辺が20cm程度とされているのは携帯性を考慮してのものである。
【0027】
これらポケット50a、50bは、衣服本体と共の生地からなる略矩形の2片の布の両者の縁が縫製ライン縫合されたものである袋状部材55a、55bを、パーカー1のポケット形成部の裏側に重ね、周囲を縫合することにより形成されている。これにより、パーカー1のポケット形成部の裏側に袋状部材55a、55bが固定されてその袋状の空間がポケットとして機能する。なお、この適用例では、略矩形の袋部材55a、55bの上辺部は縫合されていないが、これは縫い目が表に現れて美観を損なわないようにすることに加え、ポケットを外に引き出しやすくするためのものである。後述のとおり、本適用例において右ポケット50aおよび左ポケット50bは裏返した状態で袋状収納部として機能することとなるが、ここに示した例では、パーカー生地は表の面と裏の面で質感が異なるから、これらポケット50a、50bが設けられた衣服部も表と裏で質感が異なる生地からなる。なお、パーカー生地の表の面と裏の面は、質感に限らず、色や模様といった見た目の違いなどがあってもよい。
【0028】
図3は、袋状収納部としての左ポケット50bの使用時の状態を示す図(a)および左ポケット50bの内面が外に現れるように外に引き出した状態を示す図(b)である。なお、右ポケット50aの基本的構造は、後述する留め具としてのスナップボタンが設けられていない点を除き、左ポケット50bの構造と異なる点はない。
【0029】
図3(a)に示されているように、左前身頃10b側に雄70aの、左ポケット50bの外側の開口部近傍に雌70bの、スナップボタン70が縫い付けられており、衣服本体を左ポケット50bに収納した状態でぱちんと指で押し付けて留めることができる。また、
図3(b)に示されているように、左ポケット50bを外に引き出して裏返した状態にするとパーカー1の表の面と同じ生地面が現れる。したがって、後述のとおり、パーカー1の使用時における色や模様といった見た目や生地面の質感を収納状態のまま判断することができる。この適用例では、袋状収納部としての左ポケット50bの内面全体にパーカー1の表の面と同じ生地面が現れるように形成されているが、内面の一面にパーカー1の表の面と同じ生地面が現れるように形成してもよい。なお、袋状部材55bは、左ポケット50bを外に引き出した状態にしたときに縫い代を突出させない態様で縫着されている。このように縫着することで、ポケットを裏返しても縫い目が出ないため、見栄えが良くなる。なお、留め具には、面ファスナーやボタンを用いてもよい。
【0030】
次に、
図4および
図5に基づいてパーカー1の折畳手順と収納手順の一例を説明する。
【0031】
まず、ファスナー60を閉じた状態でパーカー1を広げて置き(
図4(a))、裏返した状態で後身頃20側にフード30を内側に折り込む(
図4(b))。次に、右前身頃10aおよび左前身頃10bも両肩の中間部で内側に折り込み(
図4(c))、右袖40aを右前身頃10a側に折り込むとともに左袖40bを左前身頃10b側に折り込む(
図4(d))。続いて、上側から1/3程度の部分を下方へ折り(
図4(e))、その状態で下側から1/3程度の部分に折り重ねると背丈方向の1/3程度の長さに折り畳まれる(
図4(f))。この状態で左ポケット50bの内側に手を入れて引っ張り出し(
図5(a))、裏返した状態の左ポケット50bに折り畳まれたパーカー1を収納し(
図5(b))、スナップボタン70を指で押し付けて留める(
図5(c))。
【0032】
上述したように、左ポケット50bを外に引き出して裏返した状態にするとパーカー1の表の面と同じ生地面が現れるから、パーカー1の使用時における色や模様といった見た目や生地面の質感等を、収納状態のまま判断することができる。また、左ポケット50bの開口部近傍にはスナップボタン70が縫い付けられており、パーカー1の本体を左ポケット50bに収納した状態でぱちんと指で押し付けて留めることができるため、収納状態がコンパクトに維持され、手軽な携帯が可能となる。パーカー1を使用する際には、スナップボタン70の係止を解き、裏返り状態の左ポケット50bから引き出して展開すればよい。
【0033】
なお、上述の適用例では、衣服本体に裏と表で見た目ないし質感が異なる裏表のある生地を用い、衣服本体に、内面の少なくとも一面に裏表のある生地の表が現れるように形成された袋状収納部を設け、不使用時には袋状収納部を裏返して生地の表を外側に向けた状態で内部に衣服本体を折り畳み収納するようにしているが、衣服本体に、外面の少なくとも一面に裏表のある生地の表が現れるように形成された袋状収納部を設け、不使用時には袋状収納部を裏返さずにそのままにして生地の表を外側に向けた状態で内部に衣服本体が折り畳み収納される態様にしてもよい。その場合、当該袋状収納部は、開口部のみを衣服本体に縫合することで収納が容易になる。また、上記の適用例では、左ポケット50bにパーカー1の本体を収納するようにしたが、右ポケット50aに収納することもできる。その場合、右ポケット50aにも、左ポケット50bと同様に、開口部近傍にスナップボタン70を設けるのが好ましい。
【0034】
このように、上述の本発明の適用例では、パーカー本体に設けられたポケットの内面が衣服本体の表と共の生地面であり、不使用時にはこのポケットを裏返してパーカー本体を折り畳み収納するため、携帯性に優れるだけではなく、当該パーカーの使用時における色や模様といった見た目や生地面の質感等を、収納状態のまま判断することができる。
【0035】
また、ナイロンとポリエステルの混紡の生地を用いているので、皺になりにくいだけではなく、伸縮性に優れるために畳みやすく収納しやすい。
【0036】
さらに、右ポケット50aおよび左ポケット50bは、一辺が20cm程度の略矩形を有しているため、パーカー1本体をきれいに収納しやすく、携帯性にも優れている。なお、上記のポケットの大きさは一例であり、袋状収納部が折り畳んだ状態の衣服本体を収納可能であればよいが、袋状収納部の内容積が折り畳んだ状態の衣服本体の大きさとほぼ同じであると収納効率に優れる。
【0037】
以下に、本発明に係る衣服を、実施例により説明する。なお、下記の実施例では、衣服本体が上半身に着る上衣と下半身に着る下衣とからなり、下衣の右ポケットを袋状収納部として利用しているが、下衣の左ポケットを袋状収納部として利用してもよいし、左右両方のポケットを袋状収納部として利用できるに形成してもよい。また、袋状収納部は、下衣にではなく、上衣に設けるようにしてもよい。
【実施例0038】
図6は、本発明の一実施例としてのルームウェアの正面図(a)および裏面図(b)であり、このルームウェア2は、上衣であるクルーネックのTシャツ100と下衣であるルームパンツ200のセットものである。
【0039】
ルームウェア2のTシャツ100の生地には伸縮性に優れたナイロンとポリエステルの混紡が用いられており、前身頃110と後見頃120は何れも1片の布からなり、これら2片の布の縁が縫合されるとともに、右袖130aと左袖130bが縫い付けられ、その前身頃110の左胸部分にはポケット140が設けられている。本実施例においても、これらは何れも一枚の布地からなる。
【0040】
下衣であるルームパンツ200も同様に伸縮性に優れたナイロンとポリエステルの混紡の生地からなり、右前身頃210aおよび左前身頃210bと右後身頃220aおよび左後見頃220bの4片の布の縁を縫合したものである。ルームパンツ200のウエスト部分230はゴムタイプとされ、そこに紐が通されている。また、このルームパンツ200の左右には、後述するような右ポケット250aと左ポケット250bが縫合されている。ルームパンツ200もまた、上記4片の布は何れも一枚の布地からなる。
【0041】
図7は、ルームウェア2のTシャツ100とルームパンツ200を裏返した状態(すなわち、上衣と下衣の生地の裏の面を表に出した状態)の正面図(a)および裏面図(b)であり、
図6と比較すると、本実施例のルームパンツ200は、生地の見た目と質感が、表の面と裏の面で異なることがわかる。
【0042】
この実施例では、袋状収納部として機能するポケットを右ポケット250aとしているが、
図7(a)に示すように、右ポケット250aは、長辺が20cm程度で短辺が15cm程度の略矩形を有している。後述するように、右ポケット250aは、Tシャツ100本体と共の生地からなる略矩形の1片の布とルームパンツ200本体と共の生地からなる略矩形の1片の布の間に上述の仕切布280が縫合されたものである2重構造の袋状部材255aをルームパンツ200の右ポケット形成部の裏側に重ね、長辺の一辺と短辺の一辺を縫合することにより形成されている。上述したように、ポケットの形状を略矩形としているのは、ルームウェア本体をきれいに収納しやすくするためであり、一辺が15cmないし20cm程度とされているのは携帯性を考慮してのものである。なお、左ポケット250bは、この実施例では袋状収納部として機能させてはいないが、右ポケット250aに合わせて、長辺が20cm程度で短辺が15cm程度の略矩形とされている。
【0043】
図8は左ポケット250bの縫合状態を説明するための図で、(a)は表側から見た状態、(b)は左ポケット250bの内面が外に現れるように左ポケット250bを引き出した状態の図である。この図に示したように、左ポケット250bは、Tシャツ100本体と共の生地からなる略矩形の1片の布Aとルームパンツ200本体と共の生地からなる略矩形の1片の布Bの両者の縁が縫製ライン縫合されたものである袋状部材255bを、ルームパンツ200の左ポケット形成部の裏側に重ね、周囲を縫合することにより形成されている。これにより、ルームパンツ200の左ポケット形成部の裏側に袋状部材255bが固定されてその袋状の空間が左ポケットとして機能する。なお、
図8(b)に示すように、上記袋状部材255bは、左ポケット250bの内面(すなわち、左ポケット250bを引き出した状態で表となる面)が、Tシャツ100およびルームパンツ200の表と同じ面となるように縫合されている。
【0044】
図9は本実施例において袋状収納部として機能する右ポケット250aの、第1の袋状収納部260と第2の袋状収納部270に分割された2重構造の右ポケットの縫合状態を説明するための図で、(a)は表側から見た状態、(b)は第1の袋状収納部260を引き出した状態の図、そして、(c)は第2の袋状収納部270を引き出した状態の図である。
【0045】
図9(a)に示したように、右ポケット250aは、仕切布280により、第1の袋状収納部260と第2の袋状収納部270に分割された2重構造となっている。
【0046】
図9(b)に示すように、第1の袋状収納部260は、内面(すなわち、第1の袋状収納部260を引き出した状態で表となる面)の前身頃側がTシャツ100の表と同じ面Aとなり、内面の後身頃側がルームパンツ200の表と同じ面Bとなるように縫合されている。また、
図9(c)に示すように、第2の袋状収納部270は、内面(すなわち、第2の袋状収納部270を引き出した状態で表となる面)の前身頃側がルームパンツ200の裏と同じ面Cとなり、後見頃側がルームパンツ200の表と同じ面Bとなるように縫合されている。
【0047】
具体的には、第1の袋状収納部260と第2の袋状収納部270は、ルームパンツ200の本体と共の生地からなる仕切布280により分割されており、この仕切布の一方面が第1の袋状収納部260の内面の後身頃側となり、他方面が第2の袋状収納部270の前身頃側となるように縫合されている。このような仕切布280を用いることにより第1の袋状収納部260の内面の後身頃側がルームパンツ200の表と同じ面となり、第2の袋状収納部270の内面の前身頃側がルームパンツ200の裏と同じ面となる。
【0048】
このような右ポケット250aは、Tシャツ100本体と共の生地からなる略矩形の1片の布とルームパンツ200本体と共の生地からなる略矩形の1片の布の間に上述の仕切布280が縫合されたものである2重構造の袋状部材255aを、ルームパンツ200の右ポケット形成部の裏側に重ね、長辺の一辺と短辺の一辺を縫合することにより形成されている。これにより、ルームパンツ200の右ポケット形成部の裏側に、袋状部材255aが固定されてその袋状の空間が右ポケットとして機能するとともに、右ポケット250aを引き出して裏返しやすくしている。
【0049】
上述したような右ポケット250aを外に引き出して裏返した状態にすると、Tシャツ100本体の表面とルームパンツ200本体の表面と同じ生地面が現れるから、ルームウェア2の使用時における色や模様といった見た目や生地面の質感等を、収納状態のまま判断することができる。なお、
図9(b)および(c)に示すとおり、袋状部材255aは、右ポケット250aを外に引き出した状態にしたときに縫い代を突出させない態様で縫着されている。このように縫着することで、右ポケット250aを裏返しても縫い目が出ないため、見栄えが良くなる。
【0050】
なお、
図9に示されているように、右ポケット250aの外側の開口部近傍に雌の、仕切布の上端部近傍に雄のスナップボタン290が縫い付けられており、ルームパンツ200を第1の袋状収納部に、Tシャツ100を第2の袋状収納部に、それぞれ折り畳み収納した状態でぱちんと指で押し付けて留めることができる。
【0051】
次に、
図10~13に基づいてルームウェア2の折畳手順と収納手順の一例を説明する。
【0052】
図10および
図11は、それぞれ、本実施例におけるルームウェア2の下衣であるルームパンツ200の折畳手順および収納手順を説明する図である。まず、ルームパンツ200を広げて置き(
図10(a))、後身頃側に2つに折り畳み(
図10(b))、さらに、右ポケット250aの外側の開口部近傍に取り付けられているスナップボタンの雌が表側に出るように2つに折り畳む(
図10(c))。次に、ルームパンツ200の下側から上側に向かって、スナップボタンの雌が表側に出ている面と反対側の面側に、15cm程度の幅で折り重ねる(
図10(d)~(e))。最後に、右ポケット250aの開口部から2重構造となっている右ポケット250aの第1の袋状収納部260の内側に手を入れて引っ張り出しながら裏返し(
図11(a))、裏返した第1の袋状収納部260に折り畳まれた状態のルームパンツ200を収納する(
図11(b))。この折り畳み収納により、第1の袋状収納部260の内面が表に現れることとなり、一方面にはTシャツ100本体の表の面と同じ生地面が、他方面にはルームパンツ200本体の表の面と同じ生地面が、表に現れる。なお、右ポケット250aの第2の袋状収納部270は、上記の第1の袋状収納部260の裏返しに伴って裏返されることとなり、折畳状態での外ポケットとなる。
【0053】
図12は、本実施例におけるルームウェア2の上衣であるTシャツ100の折畳手順を説明する図である。まず、Tシャツ100を広げて置き(
図12(a))、左右の袖を内側に折り畳み(
図12(b))、さらに、Tシャツ100の下側から上側に向かって、15cm程度の幅となるように幾重かで折り重ねる(
図12(c)~(d))。続いて、右ポケット250aの第2の袋状収納部270に収容可能なサイズとなるまで長手方向に幾重かに折り畳んでゆく(
図12(e)~(f))。
【0054】
図13は、本実施例におけるルームウェアの収納手順を説明する図である。右ポケット250aの第2の袋状収納部270は、第1の袋状収納部260の裏返しに伴って裏返されて折畳状態での外ポケットとなっているから(
図13(a))、この外ポケットに折り畳んだTシャツ100を収納すると、上衣と下衣が一体的に収納されることとなる(
図13(b))。
【0055】
上述したように、右ポケット250aの第1の袋状収納部260の裏返しによってTシャツ100本体の表の面とルームパンツ200本体の表の面と同じ生地面が現れるから、収納状態の一方面にはルームパンツ200本体の表の面と同じ生地面が現れ(
図13(c))、他方面にはTシャツ100本体の表の面と同じ生地面が現れることとなる(
図13(d))。これにより、ルームウェア2の使用時における色や模様といった見た目や生地面の質感等を、収納状態のまま判断することができる。
【0056】
また、左ポケット250aの開口部近傍にはスナップボタン290が縫い付けられているから、ルームウェア2の上下衣を左ポケット250aに収納した状態でぱちんと指で押し付けて留めることができ、収納状態がコンパクトに維持され、手軽な携帯が可能となる。収納状態のルームウェア2を使用する際には、スナップボタンの係止を解き、左ポケット250aの第2の袋状収納部270からTシャツ100本体を、第1の袋状収納部260からルームパンツ200本体を引き出して展開すればよい。
【0057】
このように、上記本発明の実施例では、ルームウェア本体に設けられたポケットの内面が衣服本体の表と共の生地面であり、不使用時にはこのポケットを裏返してルームウェア本体を折り畳み収納するため、携帯性に優れるだけではなく、当該ルームウェアの使用時における色や模様といった見た目や生地面の質感等を、収納状態のまま判断することができる。なお、上述の実施例においても、第1および第2の袋状収納部からなる袋状収納部を、外面の少なくとも一面に裏表のある生地の表が現れるように形成された袋状収納部とし、不使用時には袋状収納部を裏返さずにそのままにして生地の表を外側に向けた状態で内部に衣服本体が折り畳み収納される態様にしてもよい。その場合も、当該袋状収納部は、開口部のみを衣服本体に縫合することで収納が容易になる。
【0058】
また、ナイロンとポリエステルの混紡の生地を用いているので、皺になりにくいだけではなく、伸縮性に優れるために畳みやすく収納しやすい。
【0059】
さらに、右ポケット250aは、一辺が15cm乃至20cm程度の略矩形を有しているため、ルームウェア2本体をきれいに収納しやすく、携帯性にも優れている。なお、上記の右ポケット250aの大きさは一例であり、第1の袋状収納部が折り畳んだ状態の下衣を収納可能であり、第2の袋状収納部が折り畳んだ状態の上衣を収納可能であればよいが、第1および第2の袋状収納部のそれぞれの内容積が、折り畳んだ状態の下衣および上衣の大きさとほぼ同じであると収納効率に優れる。
【0060】
以上に説明したように、本発明によれば、衣服の使用時における色や模様といった見た目や手触りなどの生地の質感を、収納状態のまま判断することができる。その結果、収納状態で店頭陳列しても、買物客は、使用時における衣服の見た目や質感を確認できる。また、自宅で折り畳み収納している衣服の場合、折り畳み状態を解くことなく、その見た目や質感を確認することができる。
【0061】
また、本発明に係る衣服は、衣服本体が上衣と下衣のセットであるような場合でも、これらを一体的に収納することができ、携帯性等を高めることができる。