IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-タイヤのマッド性能の評価方法 図1
  • 特開-タイヤのマッド性能の評価方法 図2
  • 特開-タイヤのマッド性能の評価方法 図3
  • 特開-タイヤのマッド性能の評価方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022123662
(43)【公開日】2022-08-24
(54)【発明の名称】タイヤのマッド性能の評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/02 20060101AFI20220817BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
G01M17/02
B60C19/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021021111
(22)【出願日】2021-02-12
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】山本 尚岐
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB01
3D131BC17
3D131LA22
(57)【要約】      (修正有)
【課題】排土性能を精度良く評価する。
【解決手段】マッド性能の評価方法である。溝に、第1の色を有する第1の土を充填した土充填タイヤを準備する第1工程S1と、土充填タイヤを、第2の色を有する第2の土で覆われた表面に接触させて回転させる第2工程S2と、第2工程S2の後、溝内に残った第1の土の状態に基づいて、排土性能を評価する第3工程S3とを含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部に溝が設けられたタイヤのマッド性能を評価するための方法であって、
前記溝に、第1の色を有する第1の土を充填した土充填タイヤを準備する第1工程と、
前記土充填タイヤを、第2の色を有する第2の土で覆われた表面に接触させて回転させる第2工程と、
前記第2工程の後、前記溝内に残った前記第1の土の状態に基づいて、排土性能を評価する第3工程とを含む、
タイヤのマッド性能の評価方法。
【請求項2】
前記第2の色は、人間の視覚を通して、前記第1の色と区別可能である、請求項1に記載のタイヤのマッド性能の評価方法。
【請求項3】
前記第1の土の粘度は、前記第2の土の粘度と実質的に同じである、請求項1又は2に記載のタイヤのマッド性能の評価方法。
【請求項4】
前記表面が、実路面である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のタイヤのマッド性能の評価方法。
【請求項5】
前記第2工程では、前記土充填タイヤを車両に装着した状態で回転させる、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のタイヤのマッド性能の評価方法。
【請求項6】
前記第2工程は、前記土充填タイヤを前記表面上で空転させる工程を含む、請求項5に記載のタイヤのマッド性能の評価方法。
【請求項7】
前記第3工程において、前記溝内に残った第1の土の状態が、前記溝内に残った前記第1の土の容積である、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のタイヤのマッド性能の評価方法。
【請求項8】
前記第3工程において、前記溝内に残った第1の土の状態は、下記式(1)で求まる排土率Aである、請求項1ないし7のいずれか1項に記載のタイヤのマッド性能の評価方法。
A={1-|(B-C)/C|}×100…(1)
但し、
B:前記溝内に残った第1の土が占める溝容積
C:前記第1工程で充填した前記第1の土が占める溝容積
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤのマッド性能の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、タイヤのマッド性能評価試験方法が記載されている。この評価試験方法では、泥濘路面上に実車を走行させた上で、ドライバーが官能によってマッド性能を評価していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-112047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような官能で評価されるマッド性能には、トレッド部の溝内に入り込む土の排出の容易さである排土性能と、前記溝による土へのせん断性能とが含まれている。このため、上記特許文献1の評価試験方法では、排土性能のみを精度良く評価することができないという問題があった。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、排土性能を精度良く評価することができるタイヤのマッド性能の評価方法を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部に溝が設けられたタイヤのマッド性能を評価するための方法であって、前記溝に、第1の色を有する第1の土を充填した土充填タイヤを準備する第1工程と、前記土充填タイヤを、第2の色を有する第2の土で覆われた表面に接触させて回転させる第2工程と、前記第2工程の後、前記溝内に残った前記第1の土の状態に基づいて、排土性能を評価する第3工程とを含む。
【0007】
本発明に係るはタイヤのマッド性能の評価方法は、前記第2の色が、人間の視覚を通して、前記第1の色と区別可能である、のが望ましい。
【0008】
本発明に係るはタイヤのマッド性能の評価方法は、前記第1の土の粘度が、前記第2の土の粘度と実質的に同じである、のが望ましい。
【0009】
本発明に係るはタイヤのマッド性能の評価方法は、前記表面が、実路面である、のが望ましい。
【0010】
本発明に係るはタイヤのマッド性能の評価方法は、前記第2工程では、前記土充填タイヤを車両に装着した状態で回転させる、のが望ましい。
【0011】
本発明に係るはタイヤのマッド性能の評価方法は、前記第2工程が、前記土充填タイヤを前記表面上で空転させる工程を含む、のが望ましい。
【0012】
本発明に係るはタイヤのマッド性能の評価方法は、前記第3工程において、前記溝内に残った第1の土の状態が、前記溝内に残った前記第1の土の容積である、のが望ましい。
【0013】
本発明に係るはタイヤのマッド性能の評価方法は、前記第3工程において、前記溝内に残った第1の土の状態は、下記式(1)で求まる排土率Aである、のが望ましい。
A={1-|(B-C)/C|}×100…(1)
但し、B:前記溝内に残った第1の土が占める溝容積
C:前記第1工程で充填した前記第1の土が占める溝容積
【発明の効果】
【0014】
本発明は、上記の構成を採用することで、排土性能を精度良く評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態の土充填タイヤを示す斜視図である。
図2】本発明の評価方法のフローチャートである。
図3】第2工程を模式的に示す断面図である。
図4】第2工程の一実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
本実施形態のタイヤのマッド性能の評価方法(以下、単に「評価方法」という場合がある。)では、タイヤ1(図1に示される)の排土性能が評価される。本実施形態の評価方法では、乗用車用、自動二輪車用、または、重荷重用等、種々のタイヤの排土性能を評価することができる。
【0017】
図1は、この評価方法で評価されるタイヤ1の一実施形態の斜視図である。図1に示されるように、タイヤ1は、トレッド部2に溝3が設けられている。溝3は、例えば、タイヤ周方向に連続して伸びる縦溝4と、タイヤ軸方向に延びる横溝5とを含んでいる。縦溝4は、例えば、タイヤ軸方向の両端側に配された一対のショルダー縦溝4A、4Aと、ショルダー縦溝4Aのタイヤ軸方向の内側に配された一対のクラウン縦溝4B、4Bとを含んでいる。横溝5は、各ショルダー縦溝4Aからタイヤ軸方向の外側に延びるショルダー横溝5Aと、ショルダー縦溝4Aとクラウン縦溝4Bとを継ぐミドル横溝5Bと、一対のクラウン縦溝4Bを継ぐクラウン横溝5Cとを含んでいる。なお、本実施形態の評価方法で評価されるタイヤ1は、周知のものでよく、このような態様に限定されるものではない。
【0018】
次に、本実施形態の評価方法が説明される。図2は、評価方法のフローチャートである。本実施形態の評価方法は、土充填タイヤ1A(図1に示す)を準備する第1工程S1と、土充填タイヤ1Aを回転させる第2工程S2と、第2工程S2の後の土充填タイヤ1Aに基づいて排土性能を評価する第3工程S3とを含んでいる。
【0019】
先ず、第1工程S1が行われる。図1に示されるように、本実施形態の第1工程S1において、土充填タイヤ1Aは、評価されるタイヤ1の溝3に第1の色を有する第1の土6を充填することで成形される。第1の土6は、例えば、各縦溝4、各横溝5の全てに充填されるのが望ましい。溝3に第1の土6を充填するとき、溝3からはみ出した第1の土6は、例えば図示しないへら等で除去するのが望ましい。
【0020】
第1の色としては、特に限定されるものではなく、種々の色から選択される。また、第1の土6は、特に限定されるものでなく、種々の粘度及び/又は材料が使用される。
【0021】
次に、第2工程S2が行われる。図3は、第2工程S2を模式的に示す断面図である。図3に示されるように、本実施形態の第2工程S2では、土充填タイヤ1が、第2の色を有する第2の土7で覆われた表面8に接触されて回転される。これにより、溝3内に充填されていた第1の土6が排出されるとともに、その排出された部分に第2の土7が入り込むか、または、排出された状態が保持される。第2の土7は、例えば、表面8に埋り込む土充填タイヤ1Aの深さd以上の厚さtで形成されるのが望ましい。
【0022】
本実施形態では、第2の色は、人間の視覚を通して、第1の色と区別可能である。これにより、容易に、第1の色と第2の色とを見分けることができる。なお、第2の色は、第1の色と異なっていればよい。本実施形態では、第1の色として黒色が用いられ、第2の色として茶色が用いられる。また、第2の土7の粘度は、第1の土6の粘度と実質的に同じであるのが望ましい。これにより、実際にタイヤ1が装着された車両Sが泥濘地等の路面を走行したときの土の排出が再現されやすくなり、排土性能をより精度よく評価することができる。
【0023】
前記「実質的に同じ」とは、土の上に鉄球を落とした時に鉄球がめり込んだ深さが一定の範囲の差であるか否かによって判断される。例えば、鉄球としては、質量が2.2kgのものが採用される。前記深さの差としては、4~8cmであれば、実質的に同じと判断される。
【0024】
図4は、第2工程S2の一実施例を示す斜視図である。図4に示されるように、本実施形態の第2工程S2では、土充填タイヤ1Aが車両Sに装着された状態で回転させる。土充填タイヤ1Aは、本実施形態では、車両Sの駆動輪として装着される。
【0025】
車両Sが用いられる場合、表面8は、実路面8Aとされる。実路面8Aとは、車両Sが実際に走行可能な路面のことである。第2工程S2は、本実施形態では、車両Sのアクセルを操作することにより、土充填タイヤ1Aが回転される。このとき、土充填タイヤ1Aの回転速度は、あらかじめ定められた範囲内であるのがよい。
【0026】
また、第2工程S2では、土充填タイヤ1Aを表面8上で空転させるのが望ましい。本実施形態では、土充填タイヤ1Aを実路面8A上で空転させるのが望ましい。前記「空転」は、土充填タイヤ1Aが同じ位置に留まって回転することをいう。本実施形態では、車両Sが周知の保持具9で移動不可能に保持されることで、実路面8A上で土充填タイヤ1Aが空転される。なお、第2工程S2は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、実路面8a上を、土充填タイヤ1Aが装着された車両Sを移動させて、土充填タイヤ1Aを回転させてもよい(図示省略)。
【0027】
第3工程S3では、溝3内に残った第1の土6の状態に基づいて、排土性能が評価される。第1の土6と第2の土7とは、色が異なるので、第3工程S3において、溝3内に残ったままの第1の土6と、第2工程S2で溝3内に入った第2の土7とを区別することができる。このため、本実施形態の評価方法では、排土性能を精度良く評価することができる。本実施形態では、第1の色と第2の色とが、人間の視覚を通して区別可能であるので、さらに容易に、第1の土6を識別することができる。
【0028】
第3工程S3では、例えば、溝3内に残った第1の土6の容積で評価される。換言すると、第3工程S3では、第2工程S2で排出されなかった第1の土6を定量的に評価することができる。これにより評価の精度が高められる。
【0029】
第3工程S3では、例えば、下記式(1)で求まる排土率Aで評価される。
A={1-|(B-C)/C|}×100…(1)
但し、
B:溝3内に残った第1の土6が占める溝容積(cc)
C:第1工程S1で充填した第1の土6が占める溝容積(cc)、である。
このような式(1)は、タイヤ1の排土性能をより定量的に表すことができるので、溝3の形状や容積が異なるタイヤ1同士を一層精度よく評価することができる。
【0030】
本実施形態の評価方法は、例えば、第1工程S1で充填された第1の土6の質量と、第3工程S3で溝3内に残った第1の土6の質量との比で評価しても良い。この場合においても、第2の土7と第1の土6とが明瞭に区別されるので、第1の土6の質量を正確に測定できるため、精度よく排土性能を評価することができる。
【0031】
次に、本実施形態の評価方法による排土性能のテスト結果が参考例として示される。第2工程S2は、図4で示されるように、土充填タイヤ1Aが車両Sに装着されて行われた。第3工程S3は、上記式(1)による排土率Aが用いられた。テストに使用されるタイヤ1のサイズは、265/65R18、リムサイズは、18×7.5J、内圧は、230kPaである。また、このタイヤ1は、図1に示されるパターンを有している。
【0032】
結果は、各溝4、5毎に排土率Aが算出されて評価される。各縦溝4の排土率Aは10%、各ショルダー横溝5Aの排土率Aは60%、各ミドル横溝5Bの排土率Aは10%、各クラウン横溝5Cの排土率Aは10%であった。このタイヤ1では、ショルダー横溝5Aの排土性能が良いことが理解される。このように、本実施形態の評価方法では、各溝4、5毎に排土性能を評価することができる。なお、本発明の評価方法は、タイヤ1毎で評価しても良いのはいうまでもない。
【0033】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施し得る。
【符号の説明】
【0034】
1A 土充填タイヤ
3 溝
6 第1の土
7 第2の土
8 表面
S1 第1工程
S2 第2工程
S3 第3工程
図1
図2
図3
図4