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特開2022-123670圧力検出装置および圧力検出装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022123670
(43)【公開日】2022-08-24
(54)【発明の名称】圧力検出装置および圧力検出装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 19/06 20060101AFI20220817BHJP
【FI】
G01L19/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021021121
(22)【出願日】2021-02-12
(71)【出願人】
【識別番号】591257111
【氏名又は名称】サーパス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】今井 弘
【テーマコード(参考)】
2F055
【Fターム(参考)】
2F055AA39
2F055BB20
2F055CC02
2F055DD09
2F055EE12
2F055FF49
2F055GG22
(57)【要約】
【課題】金属イオンの溶出による液体の品質低下を抑制することが可能な圧力検出装置を提供する。
【解決手段】圧力検出ユニット10と、流路ユニット20と、を備え、流路ユニット20が、圧力検出ユニット10に接触した状態で配置される接触部22を有し、接触部22が、圧力検出面に接触した状態で配置されるとともに圧力検出面と液体との接触を遮断する保護膜22aと、流路21aの端部に配置される開口部22cを形成する本体部22bと、を有し、保護膜22aおよび本体部22bは、熱可塑性フッ素樹脂により形成されており、保護膜22aは、本体部22bの開口部22cを閉塞するように配置されるとともに軸線X回りの周方向に延びる環状領域で本体部22bに溶着されている圧力検出装置100を提供する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の圧力を検出する圧力検出面を有する圧力検出部と、
前記圧力検出面に液体を導くとともに軸線に沿って延びる流路が形成された流路部と、を備え、
前記流路部が、前記圧力検出部に接触した状態で配置される接触部を有し、
前記接触部が、
前記圧力検出面に接触した状態で配置されるとともに前記圧力検出面と液体との接触を遮断する薄膜状の保護部と、
前記流路の端部に配置される開口部を形成する本体部と、を有し、
前記保護部および前記本体部は、熱可塑性フッ素樹脂により形成されており、
前記保護部は、前記本体部の前記開口部を閉塞するように配置されるとともに前記軸線回りの周方向に延びる環状領域で前記本体部に溶着されている圧力検出装置。
【請求項2】
前記開口部は、前記軸線に沿って延びる所定内径を有する円筒状に形成されており、
前記軸線に直交する径方向において、前記開口部の内周面の位置と前記環状領域の内周側端部の位置が一致している請求項1に記載の圧力検出装置。
【請求項3】
前記熱可塑性フッ素樹脂は、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂である請求項1または請求項2に記載の圧力検出装置。
【請求項4】
前記軸線に直交する径方向における前記環状領域の幅が0.5mm以上かつ1.5mm以下である請求項1に記載の圧力検出装置。
【請求項5】
液体の圧力を検出する圧力検出面を有する圧力検出部と、
前記圧力検出面に液体を導くとともに軸線に沿って延びる流路が形成された流路部と、を備える圧力検出装置の製造方法であって、
前記流路部が、前記圧力検出部に接触した状態で配置される接触部を有し、
前記接触部が、
前記圧力検出面に接触した状態で配置されるとともに前記圧力検出面と液体との接触を遮断する薄膜状の保護部と、
前記流路の端部に配置される開口部を形成する本体部と、を有し、
前記保護部および前記本体部は、熱可塑性フッ素樹脂により形成されており、
前記本体部の前記開口部を閉塞するように前記保護部を配置する工程と、
前記軸線回りの周方向に沿って前記保護部にレーザ光を照射して前記保護部と前記本体部とが溶着した環状領域を形成する溶着工程と、を備える圧力検出装置の製造方法。
【請求項6】
前記開口部は、前記軸線に沿って延びる所定内径を有する円筒状に形成されており、
前記溶着工程は、前記軸線に直交する径方向において、前記開口部の内周面の位置と前記環状領域の内周側端部の位置が一致するように前記保護部と前記本体部とを溶着させる請求項5に記載の圧力検出装置の製造方法。
【請求項7】
前記熱可塑性フッ素樹脂は、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂である請求項5または請求項6に記載の圧力検出装置の製造方法。
【請求項8】
前記溶着工程は、前記軸線に直交する径方向における前記環状領域の幅が0.5mm以上かつ1.5mm以下となるように、前記保護部と前記本体部とを溶着させる請求項5に記載の圧力検出装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路を流通する液体の圧力を検出する圧力検出装置および圧力検出装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薬液等の液体が導かれる流路が形成されたハウジングと、流路に導かれた液体と接する感圧部に伝達される液体の圧力を検出するセンサ素子とを備える圧力検出装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示される圧力検出装置は、圧力検出面を形成するダイヤフラムを有する圧力検出ユニットと、流路を形成するとともに圧力検出ユニットに接触する流路ユニットとを有する。
【0003】
特許文献1に開示される圧力検出装置は、ダイヤフラムと流路ユニットとの間に薄膜状の保護膜を配置し、流路ユニットの圧力検出ユニットと対向する面に設けられた凹溝部にOリングを配置したものである。この圧力検出装置は、保護膜とOリングとが接触して形成される円環状のシール領域により、流路に導かれた液体が圧力検出ユニットの内部へ侵入することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-72106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される圧力検出装置のようにゴム等により形成されるOリングを用いる場合、例えば、フッ化水素酸などの薬液と接触することにより薬液中に金属イオンが溶出し、薬液の品質を低下させてしまう可能性がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、金属イオンの溶出による液体の品質低下を抑制することが可能な圧力検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するため、下記の手段を採用した。
本発明の一態様にかかる圧力検出装置は、液体の圧力を検出する圧力検出面を有する圧力検出部と、前記圧力検出面に液体を導くとともに軸線に沿って延びる流路が形成された流路部と、を備え、前記流路部が、前記圧力検出部に接触した状態で配置される接触部を有し、前記接触部が、前記圧力検出面に接触した状態で配置されるとともに前記圧力検出面と液体との接触を遮断する薄膜状の保護部と、前記流路の端部に配置される開口部を形成する本体部と、を有し、前記保護部および前記本体部は、熱可塑性フッ素樹脂により形成されており、前記保護部は、前記本体部の前記開口部を閉塞するように配置されるとともに前記軸線回りの周方向に延びる環状領域で前記本体部に溶着されている。
【0008】
本発明の一態様にかかる圧力検出装置によれば、軸線に沿って延びる流路を有する流路部により導かれた液体を、圧力検出部が有する圧力検出面に導くことにより、液体の圧力が検出される。薄膜状の保護部により圧力検出面と液体との接触が遮断されるため、圧力検出面に液体が直接接触することが防止される。保護部は、流路部により形成される流路の端部に配置される開口部を閉塞するように配置され、軸線回りの周方向に延びる環状領域で接触部の本体部に溶着されている。
【0009】
保護部および本体部がそれぞれ熱可塑性フッ素樹脂により形成されているため、保護部と本体部とが互いに溶け合った溶着部が形成される。この溶着部には金属イオンが溶出される他の材料が存在しない。そのため、圧力検出面に導かれた液体が溶着部に侵入したとしても金属イオンが溶出せず、金属イオンの溶出による液体の品質低下を抑制することができる。
【0010】
本発明の一態様に係る圧力検出装置において、前記開口部は、前記軸線に沿って延びる所定内径を有する円筒状に形成されており、前記軸線に直交する径方向において、前記開口部の内周面の位置と前記環状領域の内周側端部の位置が一致している構成が好ましい。
【0011】
本構成の圧力検出装置によれば、開口部の内周面の位置と環状領域の内周側端部の位置が一致しているため、保護部と本体部との間に溶着されずに接触している領域が存在しない。そのため、保護部と本体部との間の溶着されずに接触している領域に液体に含まれるパーティクルが蓄積し、蓄積したパーティクルが流出して液体の本質を低下させることがない。
【0012】
本発明の一態様にかかる圧力検出装置において、前記熱可塑性フッ素樹脂は、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)である構成が好ましい。
本構成の圧力検出装置によれば、保護部および本体部がパーフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)により形成されているため、安定して接着強度が高い溶着部を形成することができる。
【0013】
本発明の一態様にかかる圧力検出装置において、前記軸線(X)に直交する径方向における前記環状領域の幅が0.5mm以上かつ1.5mm以下である構成が好ましい。
本構成の圧力検出装置によれば、環状領域の幅を0.5mm以上かつ1.5mm以下とすることにより、環状領域によるシール機能の耐久性を十分に高めることができる。
【0014】
本発明の一態様にかかる圧力検出装置の製造方法は、液体の圧力を検出する圧力検出面を有する圧力検出部と、前記圧力検出面に液体を導くとともに軸線に沿って延びる流路が形成された流路部と、を備える圧力検出装置の製造方法であって、前記流路部が、前記圧力検出部に接触した状態で配置される接触部を有し、前記接触部が、前記圧力検出面に接触した状態で配置されるとともに前記圧力検出面と液体との接触を遮断する薄膜状の保護部と、前記流路の端部に配置される開口部を形成する本体部と、を有し、前記保護部および前記本体部は、熱可塑性フッ素樹脂により形成されており、前記本体部の前記開口部を閉塞するように前記保護部を配置する工程と、前記軸線回りの周方向に沿って前記保護部にレーザ光を照射して前記保護部と前記本体部とが溶着した環状領域を形成する溶着工程と、を備える。
【0015】
本発明の一態様にかかる圧力検出装置の製造方法によれば、保護部は、流路部により形成される流路の端部に配置される開口部を閉塞するように配置され、軸線回りの周方向に延びる環状領域で流路部の本体部に溶着される。
【0016】
保護部および本体部がそれぞれ熱可塑性フッ素樹脂により形成されているため、保護部と本体部とが互いに溶け合った溶着部が形成される。この溶着部には金属イオンが溶出される他の材料が存在しない。そのため、圧力検出面に導かれた液体が溶着部に侵入したとしても金属イオンが溶出せず、金属イオンの溶出による液体の品質低下を抑制することができる。
【0017】
本発明の一態様にかかる圧力検出装置の製造方法において、前記開口部は、前記軸線に沿って延びる所定内径を有する円筒状に形成されており、前記溶着工程は、前記軸線に直交する径方向において、前記開口部の内周面の位置と前記環状領域の内周側端部の位置が一致するように前記保護部と前記本体部とを溶着させる構成とするのが好ましい。
【0018】
本構成の圧力検出装置の製造方法によれば、開口部の内周面の位置と環状領域の内周側端部の位置が一致するように保護部と本体部とが溶着されるため、保護膜と本体部との間に溶着されずに接触している領域が存在しない。そのため、保護膜と本体部との間の溶着されずに接触している領域に液体に含まれるパーティクルが蓄積し、蓄積したパーティクルが流出して液体の本質を低下させることがない。
【0019】
本発明の一態様にかかる圧力検出装置の製造方法において、前記熱可塑性フッ素樹脂は、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)である構成が好ましい。
本構成の圧力検出装置の製造方法によれば、保護部および本体部がパーフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)により形成されているため、安定して接着強度が高い溶着部を形成することができる。
【0020】
本発明の一態様にかかる圧力検出装置の製造方法において、前記軸線に直交する径方向における前記環状領域の幅が0.5mm以上かつ1.5mm以下である構成が好ましい。
本構成の圧力検出装置の製造方法によれば、環状領域の幅を0.5mm以上かつ1.5mm以下とすることにより、環状領域によるシール機能の耐久性を十分に高めることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、金属イオンの溶出による液体の品質低下を抑制することが可能な圧力検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態の圧力検出装置を示す縦断面図である。
図2図1に示す圧力検出装置の部分拡大図である。
図3図1に示す圧力検出装置の分解図である。
図4図3に示す接触部を軸線に沿って上方からみた平面図である。
図5図3に示す接触部の縦断面図である。
図6】本発明の一実施形態の圧力検出装置の製造方法を示すフローチャートである。
図7】接触部の本体部に接触部の保護膜を配置した状態を示す縦断面図である。
図8】接触部の本体部と接触部の保護膜とを溶着させる溶着工程を示す縦断面図である。
図9】他の実施形態の圧力検出装置を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態の圧力検出装置100を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態の圧力検出装置を示す縦断面図である。図2は、図1に示す圧力検出装置100の部分拡大図である。図3は、図1に示す圧力検出装置100の分解図である。
【0024】
図1および図2に示すように、本実施形態の圧力検出装置100は、液体の圧力を検出する圧力検出ユニット10と、流路21aが内部に形成される流路本体21を有する流路ユニット20とを備える。流路21aは、圧力検出ユニット10のダイヤフラム(圧力検出面)11aに液体を導くとともに軸線Xに沿って延びるように形成されている。
【0025】
流路21aは、流体が流通する配管(図示略)から分岐された流路(図示略)に接続される。本実施形態における液体は、半導体製造装置による半導体製造工程で用いられる薬液、溶剤、純水等である。
【0026】
次に、本実施形態の圧力検出装置100が備える流路ユニット20について説明する。
流路ユニット20は、流路本体21と、接触部22と、ナット23とを有する。図3に示すように、流路本体21には、凹部21bが形成されており、凹部21bの内周面には雌ねじ21dが形成されている。
【0027】
また、図2に示すように、凹部21bの底面(収容部)21cは、接触部22を収容する収容部となっている。底面21cには、軸線X回りに周方向に沿って延びる円環状の溝部21eが形成されている。溝部21eには、接触部22が有する突起部22dが挿入される。溝部21eに突起部22dを挿入することにより、流路21aの内部の液体が圧力検出ユニット10側へ漏れないように密閉するシール領域が形成される。
【0028】
流路本体21は、軸線Xに沿って直線状に延びる流路21aが内部に形成されており、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、PFA(パーフルオロアルコキシフッ素樹脂)等のフッ素樹脂材料により形成されている。
【0029】
接触部22は、図1および図2に示すように、後述する圧力センサ11に接触した状態で配置される部材である。接触部22は、圧力センサ11のダイヤフラム11aおよび歪みゲージ11bからなる圧力検出面に対向する領域に配置されている。接触部22は、保護膜(保護部)22aと、本体部22bと、を有する。図4は、図3に示す接触部22を軸線に沿って上方からみた平面図である。図5は、図3に示す接触部22の縦断面図である。
【0030】
保護膜22aは、圧力センサ11のダイヤフラム11aに接触した状態で配置されるとともにダイヤフラム11aと液体との接触を遮断する薄膜状の部材である。保護膜22aは、熱可塑性フッ素樹脂であるPFA(パーフルオロアルコキシフッ素樹脂)により形成されている。図4に示すように、保護膜22aは、軸線Xに沿って平面視した場合に円形に形成されている。保護膜22aは、0.05mm以上かつ2.5mm以下の厚さを有し、好ましくは0.05mm以上かつ0.1mm以下の厚さを有するものとする。
【0031】
本体部22bは、軸線X回りに環状に形成されるとともに、流路21aの端部に配置される開口部22cを形成する部材である。本体部22bは、熱可塑性フッ素樹脂であるPFA(パーフルオロアルコキシフッ素樹脂)により形成されている。本体部22bには、軸線X回りの周方向に延びる円環状の突起部22dが形成されている。図5に示すように、開口部22cは、軸線Xに沿って延びるとともに軸線Xを中心とした内径R1を有する円筒状に形成された穴である。
【0032】
図4および図5に示すように、保護膜22aは、本体部22bの開口部22cを閉塞するように配置される。また、保護膜22aは、軸線X回りの周方向に延びる環状領域ARで本体部22bに溶着されている。図2に示す溶着部WPは、同一材料により形成される保護膜22aと本体部22bとが溶けあって一体となった部分を示す。溶着部WPは、保護膜22aの上方からレーザ光(例えば、炭酸ガスレーザ光)を照射することにより形成される。
【0033】
図4および図5に示すように、環状領域ARは、軸線Xに直交する径方向RDにおいて、内周側端部が内径R1となり、外周側端部が内径R3となる領域である。図4に示すように、径方向RDにおいて、開口部22cの内周面の位置と、環状領域ARの内周側端部の位置は一致している。内径R2は、環状領域ARの中心位置(軸線Xと平行な軸線Yが通過する位置)の内径であり、以下の式(1)を満たす。
R2=(R1+R3)/2 (1)
【0034】
図4および図5に示すように、環状領域ARは、径方向RDにおいて幅W1を有する。幅W1は、以下の式(2)の範囲のいずれかの値となるように設定する。
0.5mm≦W1≦1.5mm (2)
式(2)の範囲は、環状領域ARによるシール機能の耐久性を十分に高めることができ、かつ環状領域ARの幅を不要に広げないように設定された範囲である。
【0035】
ナット23は、流路本体21と流体が流通する配管(図示略)から分岐された流路(図示略)とを接続する部材である。ナット23の内周面に形成された雌ねじ23aを分岐された流路の外周面に形成された雄ねじ(図示略)に締結することにより、流路本体21の流路21aと分岐された流路とが接続される。
【0036】
次に、本実施形態の圧力検出装置100が備える圧力検出ユニット10について説明する。
圧力検出ユニット10は、ダイヤフラム11aに伝達される液体の圧力を検出する装置である。
【0037】
図1および図2に示すように、圧力検出ユニット10は、液体の圧力を検出する圧力センサ(圧力検出部)11と、センサホルダ12と、センサ基板14と、基板保持部材15と、ハウジング16と、を備える。以下、圧力検出ユニット10が備える各部について説明する。
【0038】
図2に示すように、圧力センサ11は、薄膜状に形成されるダイヤフラム11aと、ダイヤフラム11aに貼り付けられる抵抗体である歪みゲージ11bと、ダイヤフラム11aを保持するベース部11cとを備える。圧力センサ11は、ダイヤフラム11aに伝達される圧力に応じて変化する歪みゲージ11bの抵抗値に応じた圧力信号を出力する歪みゲージ式の圧力センサである。ダイヤフラム11aと歪みゲージ11bとが、液体の圧力を検出する圧力検出面を形成する。
【0039】
ダイヤフラム11aは、保護膜22aと接触する下面と保護膜22aと接触しない上面とを有し、上面に歪みゲージ11bが貼り付けられている。ダイヤフラム11aは、耐腐食性および耐薬品性のある非導電性材料(例えば、サファイア、セラミックスなど)により形成されている。
【0040】
図3に示すように、センサホルダ12は、軸線X回りに円筒状に形成される部材であり、外周面に雄ねじ12aが形成されている。センサホルダ12は、流路本体21に形成された凹部21b(図3参照)の底面21cに接触部22を収容した状態で、外周面に形成された雄ねじ12aを凹部21bの内周面に形成された雌ねじ21dに締結することにより、圧力センサ11および接触部22の軸線X方向の位置を固定する。雄ねじ12aと雌ねじ21dとが締結されるため、圧力センサ11のダイヤフラム11aと接触部22の保護膜22aとは、所定の押圧力が付与された状態で接触する。
【0041】
センサ基板14は、圧力センサ11が出力する圧力信号を増幅する増幅回路(図示略)と、増幅回路により増幅された圧力信号をケーブル200(図1図2参照)の圧力信号線(図示略)に伝達するインターフェース回路と、ケーブル200を介して外部から供給される電源電圧を圧力センサ11へ伝達する電源回路(図示略)とを備える。
【0042】
基板保持部材15は、センサホルダ12に対してセンサ基板14を保持する部材である。図2に示すように、基板保持部材15は、スペーサ18を挟んだ状態で締結ねじ19によりセンサホルダ12の上面に形成された締結穴13bに締結されている。
【0043】
次に、本実施形態の圧力検出装置100を製造する製造方法について図面を参照して説明する。図6は、本実施形態の圧力検出装置100の製造方法を示すフローチャートである。図7は、接触部22の本体部22bに接触部22の保護膜22aを配置した状態を示す縦断面図である。図8は、接触部22の本体部22bと接触部22の保護膜22aとを溶着させる溶着工程を示す縦断面図である。
【0044】
ステップS101の配置工程において、作業者は、溶着治具300に本体部22bを配置し、本体部22bの開口部22cを閉塞するように保護膜22aを配置する。溶着治具300には、軸線X回りの周方向に延びる円環状に形成される溝部301が形成されている。作業者は、本体部22bに形成された突起部22dを溝部301に挿入することにより、本体部22bを溶着治具300に固定する。
【0045】
配置工程において、作業者は、保護膜22aの中心軸が軸線Xと一致するように、溶着治具300に固定された本体部22bの上面に保護膜22aを配置する。作業者は、更に保護膜22aの上面の全体に接触するようにガラス板310を配置する。
【0046】
ガラス板310は、例えば石英ガラスにより形成されるが、他の態様であってもよい。ガラス板310に替えて、透明性があり透過率が高い他の材料(例えば、ゲルマニウム)により形成される板を用いても良い。特に、ゲルマニウムにより形成される板の両面に反射防止膜を施したものとすることにより、レーザ光の透過特性を高めることができる。
【0047】
ガラス板310を配置しているのは、ガラス板310の上方から照射されるレーザ光により本体部22bと保護膜22aとの接触面が加熱される際に、ガラス板310と接触する保護膜22aの上面から熱を奪うためである。ガラス板310と接触する保護膜22aの上面から熱を奪うことにより、保護膜22aの上面が溶融して凹凸形状が形成されないようにする。これにより、保護膜22aからダイヤフラム11aへの圧力伝達特性を一定に維持することができる。
【0048】
ステップS102の溶着工程において、軸線X回りの周方向に沿って保護膜22aにレーザ光LBを照射し、保護膜22aと本体部22bとが溶着した環状領域ARを形成する。図8に示すように、溶着治具300に接触部22を固定し、かつ接触部22にガラス板310を配置した状態で、軸線Xから径方向RDに内径R2だけ離れた位置(軸線Xと平行な軸線Yが通過する位置)にレーザ照射装置400を設置する。そして、軸線Xから径方向RDに内径R2だけ離れた位置を保持した状態でレーザ照射装置400を軸線X回りの周方向に移動させる。
【0049】
レーザ照射装置400は、図4に示す内径R2の位置を軸線X回りの1周に渡ってレーザ光LBを接触部22へ向けて照射する。レーザ光LBを照射することにより、接触部22には、保護膜22aと本体部22bを形成する熱可塑性フッ素樹脂であるPFAが溶けあった溶着部WPが形成される。溶着部WPは、保護膜22aと本体部22bとが接触する接触面の近傍にのみ形成され、保護膜22aとガラス板310とが接触する面には形成されない。
【0050】
図8に示すように、溶着工程において、レーザ照射装置400は、径方向RDにおいて、開口部22cの内周面の位置と環状領域ARの内周側端部の位置が一致するように保護膜22aと本体部22bとを溶着させる。また、溶着工程において、レーザ照射装置400は、径方向RDにおける環状領域ARの幅W1が0.5mm以上かつ1.5mm以下となるように、保護膜22aと本体部22bとを溶着させる。
【0051】
ここで、レーザ照射装置400は、例えば、炭酸ガスレーザ光を照射する装置である。レーザ照射装置400は、例えば、7.5W以上かつ10.5W以下の出力範囲でレーザ光LBを照射する。また、レーザ照射装置400は、2mm/秒以上かつ11mm/秒以下の速度で周方向に沿ってレーザ光を照射しながら移動する。レーザ照射装置400は、軸線Xから内径R2の位置を1周分だけレーザ光LBで照射する。
【0052】
ステップS103の組立工程で、作業者は、保護膜22aと本体部22bとが溶着された接触部22を含む圧力検出装置100の各部を組み立て、図1に示す状態とする。具体的に、作業者は、流路本体21に接触部22を取り付け、接触部22に圧力センサ11を配置する。その後、作業者は、センサホルダ12の雄ねじ12aを流路本体21の雌ねじ21dに締結し、圧力センサ11のダイヤフラム11aが接触部22の保護膜22aに接触する状態とする。
【0053】
以上説明した本実施形態の圧力検出装置100が奏する作用および効果について説明する。
本実施形態の圧力検出装置100によれば、軸線Xに沿って延びる流路21aを有する流路ユニット20により導かれた液体を、圧力検出ユニット10が有する圧力検出面であるダイヤフラム11aに導くことにより、液体の圧力が検出される。薄膜状の保護膜22aによりダイヤフラム11aと液体との接触が遮断されるため、ダイヤフラム11aに液体が直接接触することが防止される。保護膜22aは、流路ユニット20により形成される流路21aの端部に配置される開口部22cを閉塞するように配置され、軸線X回りの周方向に延びる環状領域ARで接触部22の本体部22bに溶着されている。
【0054】
保護膜22aおよび本体部22bがそれぞれ熱可塑性フッ素樹脂であるPFAにより形成されているため、保護膜22aと本体部22bとが互いに溶け合った溶着部WPが形成される。この溶着部WPには金属イオンが溶出される他の材料が存在しない。そのため、圧力検出面に導かれた液体が溶着部WPに侵入したとしても金属イオンが溶出せず、金属イオンの溶出による液体の品質低下を抑制することができる。
【0055】
また、本実施形態の圧力検出装置100によれば、開口部22cの内周面の位置と環状領域ARの内周側端部の位置が一致しているため、保護膜22aと本体部22bとの間に溶着されずに接触している領域が存在しない。そのため、保護膜22aと本体部22bとの間の溶着されずに接触している領域に液体に含まれるパーティクルが蓄積し、蓄積したパーティクルが流出して液体の本質を低下させることがない。
【0056】
また、本実施形態の圧力検出装置100によれば、保護膜22aおよび本体部22bがパーフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)により形成されているため、安定して接着強度が高い溶着部WPを形成することができる。
【0057】
また、本実施形態の圧力検出装置によれば、環状領域ARの幅W1を0.5mm以上かつ1.5mm以下とすることにより、環状領域ARによるシール機能の耐久性を十分に高めることができる。
【0058】
〔他の実施形態〕
以上の説明において、圧力検出装置100は、流路ユニット20が、流路本体21と、流路本体21とは別部材であり流路本体21に固定される接触部22とを有するものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、図9に示すような圧力検出装置100Aであってもよい。
【0059】
図9に示す圧力検出装置100Aは、図1に示す圧力検出装置100の変形例であり、以下で特に説明する部分を除き、図1に示す圧力検出装置100と同一であるものとする。図9に示す圧力検出装置100Aは、流路21aが形成された流路ユニット20Aを備える。流路ユニット20Aは、流路本体21Aと、接触部22Aと、ナット23とを有する。流路本体21Aと接触部22Aは、熱可塑性フッ素樹脂であるPFA(パーフルオロアルコキシフッ素樹脂)により一体に成形されている。
【0060】
図9に示す圧力検出装置100Aによれば、流路本体21Aと接触部22AがPFAにより一体に形成されているため、これらを別の部材として形成して組み立てる場合に比べ、流路本体21と接触部22とが接触する接触部分から液体が漏れる不具合を確実に抑制することができる。
【符号の説明】
【0061】
10 圧力検出ユニット(圧力検出部)
11 圧力センサ
11a ダイヤフラム(圧力検出面)
11b 歪みゲージ
11c ベース部
12 センサホルダ
20,20A 流路ユニット(流路部)
21,21A 流路本体
21a 流路
22,22A 接触部
22a 保護膜
22b 本体部
22c 開口部
22d 突起部
23 ナット
100,100A 圧力検出装置
300 溶着治具
301 溝部
310 ガラス板
400 レーザ照射装置
AR 環状領域
RD 径方向
WP 溶着部
X 軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9