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特開2022-123675無線通信装置、無線通信方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022123675
(43)【公開日】2022-08-24
(54)【発明の名称】無線通信装置、無線通信方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 76/18 20180101AFI20220817BHJP
   H04W 12/08 20210101ALI20220817BHJP
   H04W 84/10 20090101ALI20220817BHJP
   H04W 52/20 20090101ALI20220817BHJP
【FI】
H04W76/18
H04W12/08
H04W84/10 110
H04W52/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021021127
(22)【出願日】2021-02-12
(71)【出願人】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】中脇 望
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA35
5K067FF23
5K067GG08
5K067HH22
(57)【要約】
【課題】無線通信装置に対する不特定の情報端末からの無効な接続要求を効果的に回避できるようにする。
【解決手段】この発明の一態様は、複数の情報端末のうち特定の情報端末との間で無線リンクを接続してデータを転送する無線通信装置において、前記複数の情報端末から接続要求を受信した場合に、当該接続要求が前記特定の情報端末からの有効なものかまたはそれ以外の不特定の情報端末からの無効なものかを判定し、無効と判定された前記接続要求の発生状況を表す統計情報を生成し保存する。そして、前記統計情報を予め設定された回避条件と比較し、前記統計情報が前記回避条件を満たした場合に前記不特定の情報端末からの前記接続要求を回避するための回避処理を行うようにしたものである。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の情報端末のうち特定の情報端末との間で無線リンクを接続してデータを転送する無線通信装置であって、
前記複数の情報端末から接続要求を受信した場合に、当該接続要求が前記特定の情報端末からの有効なものかまたはそれ以外の不特定の情報端末からの無効なものかを判定する判定処理部と、
無効と判定された前記接続要求の発生状況を表す統計情報を生成し保存する統計情報生成処理部と、
前記統計情報を予め設定された回避条件と比較し、前記統計情報が前記回避条件を満たした場合に、前記不特定の情報端末からの前記接続要求を回避するための回避処理を行う回避処理部と
を備える無線通信装置。
【請求項2】
前記統計情報生成処理部は、無効と判定された前記接続要求の発生回数、発生頻度または発生確率を前記統計情報として保存し、
前記回避処理部は、前記接続要求の発生回数、発生頻度または発生確率が前記回避条件として設定されたしきい値以上になった場合に前記回避処理を行う、
請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記無線通信装置が、前記情報端末に向けアドバタイズ信号を送信する場合に、
前記回避処理部は、前記回避処理として、前記アドバタイズ信号の送信電力値を低下させる処理を行う、請求項1又は2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記回避処理部は、前記回避処理として、前記アドバタイズ信号の送信電力値を段階的に低下させながら前記不特定の前記情報端末からの前記無効な接続要求の受信の有無を監視し、当該無効な接続要求が受信されなくなった時点での前記送信電力値を、前記アドバタイズ信号の送信電力値として設定する、請求項3に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記回避処理部は、前記統計情報または前記回避処理が必要であることを表す報知情報を、ビーコン信号を用いて前記特定の情報端末へ送信する処理をさらに行う、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記回避処理部は、前記統計情報または前記回避処理が必要であることを表す報知情報を、前記無線通信装置において表示する処理をさらに行う、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項7】
複数の情報端末のうち特定の情報端末との間で無線リンクを接続してデータを転送する無線通信装置が実行する無線通信方法であって、
前記複数の情報端末から接続要求を受信した場合に、当該接続要求が前記特定の情報端末からの有効なものかまたはそれ以外の不特定の情報端末からの無効なものかを判定する過程と、
無効と判定された前記接続要求の発生状況を表す統計情報を生成し保存する過程と、
前記統計情報を予め設定された回避条件と比較し、前記統計情報が前記回避条件を満たした場合に前記不特定の情報端末からの前記接続要求を回避するための回避処理を行う過程と
を備える無線通信方法。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれかに記載の無線通信装置が備える前記各処理部による処理を、前記無線通信装置が備えるプロセッサに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の情報端末のうち特定の情報端末との間で無線リンクを接続してデータを転送する無線通信装置と、その無線通信方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、血圧計等のセンシング装置において測定された血圧データ等のセンシングデータを、ユーザが所有するスマートフォン等の情報端末に転送する方式として、近距離無線通信技術、特にBluetooth(登録商標)を使用する方式が知られている。一般に、Bluetoothの通信(コネクション)は、無線LAN(Wireless Local Area Network)通信に比べると小規模かつ省電力に実現可能であり、さらにBluetoothの仕様のバージョン4.0により定義されるBLE(Bluetooth Low Energy)を使用すれば、従前の仕様に比べて消費電力をさらに少なくすることが可能である(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-033448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、BLEを使用した通信では、情報端末はセンシング装置から送信されるアドバタイズを受信すると、センシング装置との間でペアリング設定されていない第三者の情報端末であっても、センシング装置との間に無線リンクを接続することができる。このため、例えばアパートの隣接する部屋にいる第三者が、自身の情報端末を使用して故意に上記センシング装置との間に無線リンクを接続してしまうと、ペアリング設定されたユーザの本来の情報端末が上記センシング装置に接続されず、センシングデータの転送が行えなくなるという不具合が発生する。
【0005】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、無線通信装置に対する不特定の情報端末からの無効な接続要求を効果的に回避できるようにする技術を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためにこの発明の第1の態様は、複数の情報端末のうち特定の情報端末との間で無線リンクを接続してデータを転送する無線通信装置に関するもので、無線通信装置は、判定処理部と、統計情報生成処理部と、回避処理部とを備える。判定処理部は、前記複数の情報端末から接続要求を受信した場合に、当該接続要求が前記特定の情報端末からの有効なものかまたはそれ以外の不特定の情報端末からの無効なものかを判定する。統計情報生成処理部は、無効と判定された前記接続要求の発生状況を表す統計情報を生成し保存する。回避処理部は、前記統計情報を予め設定された回避条件と比較し、前記統計情報が前記回避条件を満たした場合に、前記不特定の情報端末からの前記接続要求を回避するための回避処理を行う。
【0007】
この発明の第1の態様によれば、例えば、不特定の情報端末が故意に無効な接続要求を頻発した場合に、その統計情報が回避条件を満たした時点で自動的に回避処理が実行される。この結果、不特定の情報端末による無効な接続処理が行われないようにして、特定の情報端末との接続処理を適切に行うことが可能となる。
【0008】
この発明の第2の態様は、前記統計情報として、無効と判定された前記接続要求の発生回数、発生頻度または発生確率を保存し、前記接続要求の発生回数、発生頻度または発生確率が前記回避条件として設定されたしきい値を超えた場合に、前記回避処理を行うようにしたものである。
【0009】
この発明の第2の態様によれば、不特定の情報端末からの無効な接続要求の発生回数、発生頻度または発生確率をもとに、回避処理の要否を比較的簡単に判定することが可能となる。
【0010】
この発明の第3の態様は、前記無線通信装置が、前記情報端末に向けアドバタイズ信号を送信する場合に、前記回避処理として、前記アドバタイズ信号の送信電力値を低下させる処理を行うようにしたものである。
【0011】
この発明の第3の態様によれば、例えば不特定の情報端末が特定の情報端末より遠い場所にいる場合に、アドバタイズ信号の送信電力値が自動的に低下する。このため、以後不特定の情報端末がアドバタイズ信号を受信し難くなり、これにより無効な接続要求の送信が行われないようにすることができる。
【0012】
この発明の第4の態様は、前記回避処理として、前記アドバタイズ信号の送信電力値を段階的に低下させながら前記不特定の情報端末からの無効な接続要求の受信の有無を監視し、当該無効な接続要求が受信されなくなった時点での前記送信電力値を、前記アドバタイズ信号の送信電力値として設定するようにしたものである。
【0013】
この発明の第4の態様によれば、無線通信装置によるアドバタイズ信号の送信電力値が、不特定の情報端末が受信不可能な範囲の中で最も高い値に、つまり不特定の情報端末からの無効な接続要求の送信を回避する上で最適な値に自動調整することができる。
【0014】
この発明の第5の態様は、前記回避処理において、前記統計情報または前記回避処理が必要であることを表す報知情報を、ビーコン信号を用いて前記特定の情報端末へ送信する処理をさらに行うようにしたものである。
【0015】
この発明の第5の態様によれば、無線通信装置からユーザが使用する特定の情報端末に対し、前記統計情報または前記回避処理が必要であることを表す報知情報が送信される。この結果、ユーザは所有する自身の情報端末において上記統計情報または報知情報を確認することが可能となり、これによりユーザは例えば無線通信装置を不特定の情報端末からさらに離れた位置に移動させるといった対応策を講じることが可能となる。
【0016】
この発明の第6の態様は、前記回避処理において、前記統計情報または前記回避処理が必要であることを表す報知情報を、前記無線通信装置において表示する処理をさらに行うようにしたものである。
【0017】
この発明の第6の態様によれば、前記統計情報または前記回避処理が必要であることを表す報知情報が無線通信装置に表示される。このため、ユーザは例えば血圧等のセンシング動作後に、この無線通信装置において上記統計情報または報知情報を確認することが可能となり、これによりユーザは例えば無線通信装置を不特定の情報端末からさらに離れた位置に移動させるといった対応策を講じることが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
すなわちこの発明によれば、無線通信装置に対する不特定の情報端末からの無効な接続要求を効果的に回避できるようにした技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、この発明の一実施形態に係る無線通信装置として使用されるセンシング装置の適用例を示す図である。
図2図2は、この発明の一実施形態に係る無線通信装置として使用されるセンシング装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3図3は、この発明の一実施形態に係る無線通信装置として使用されるセンシング装置のソフトウェア構成を示すブロック図である。
図4図4は、図3に示したセンシング装置の制御部が実行するセンシングデータ転送処理の処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
図5図5は、図4に示した処理手順のうち無効接続回避処理の処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
図6図6は、図3に示したセンシング装置とユーザの情報端末および第三者の情報端末との間のBLE接続処理の手順を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照してこの発明に係わる実施形態を説明する。
【0021】
[一実施形態]
(構成例)
(1)システム
図1は、この発明の一実施形態に係る無線通信装置として使用されるセンシング装置の適用例を示す図である。
【0022】
図1において、UEはユーザの居室、TEは第三者の居室をそれぞれ示している。センシング装置SDは、ユーザが使用するスマートフォン等の情報端末UTと共に上記ユーザの居室UE内で使用される。なお、情報端末UTは、スマートフォンに限らず、例えばタブレット型端末やノート型またはデスクトップ型のパーソナルコンピュータ、ウエアラブル端末であってもよい。
【0023】
センシング装置SDとユーザの情報端末UTとの間は、Bluetoothの仕様のバージョン4.0により定義されるBLEにより相互にペアリング設定され、これによりユーザの情報端末UTはセンシング装置SDに対し特定の端末として動作する。センシング装置SDにより測定されたセンシングデータは、上記BLEで規定されるプロトコルに従い形成される無線リンクを介して情報端末UTへ転送される。
【0024】
一方、第三者の居室TEでは、第三者が情報端末TPを使用している。この第三者の情報端末TPもBLEを使用した無線データ通信が可能である。但し、この第三者の情報端末TPは、上記センシング装置SDとはペアリング設定がなされていない。このため、第三者の情報端末TPは、センシング装置SDに対しては不特定の端末として動作する。
【0025】
(2)センシング装置SD
図2および図3は、それぞれセンシング装置SDのハードウェア構成およびソフトウェア構成を示すブロック図である。
【0026】
センシング装置SDは、例えば血圧計からなり、制御ユニット1と、センシングユニット2と、BLE通信モジュール3と、入力部4aおよび表示部4bとを備えている。
【0027】
センシングユニット2は、制御ユニット1の制御の下で例えば血圧データを含むセンシングデータの測定動作を行い、測定されたセンシングデータを制御ユニット1へ出力する。なお、センシングユニット2は、血圧データ以外に、脈拍数や心電波形、血糖値、活動量、ストレス度等に係るその他のバイタルデータを単独または複合して測定するデバイスであってもよい。
【0028】
BLE通信モジュール3は、上記情報端末UTとの間で、BLEの規格で定義された通信プロトコルに従い無線制御信号およびデータの送受信を行う。なお、BLE通信モジュール3は、センシング装置SDに内蔵されるものに限らず、付属の通信用アダプタとして外設されるものであってもよく、また独立して使用されるIoT機器やルータ、セットトップボックス(STB)が備える通信モジュールであってもよい。
【0029】
制御ユニット1は、例えば中央処理ユニット(Central Processing Unit:CPU)等のハードウェアプロセッサを使用した制御部11を備える。なお、制御部11は、暗号化処理等を行うためにDSP(Digital Signal Processor)を備えていてもよい。
【0030】
上記制御部11には、バス17を介して、プログラム記憶部12およびデータ記憶部13を有する記憶ユニットと、センサインタフェース(以後インタフェースをI/Fと記載する)14と、通信I/F15と、入出力I/F16が接続されている。
【0031】
センサI/F14は、制御部11の制御の下、センシングユニット2に対する各種制御信号の授受、およびセンシングユニット2から出力されるセンシングデータを受け取って制御部11に渡す処理を行う。通信I/F15は、制御部11の制御の下、BLE通信モジュール3の動作に係る各種制御信号の授受と、制御部11により生成されるパケットをBLE通信モジュール3へ出力する処理を行う。
【0032】
プログラム記憶部12は、例えば、記憶媒体としてHDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)等の随時書込みおよび読出しが可能な不揮発性メモリと、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリとを組み合わせて構成したもので、OS(Operating System)等のミドルウェアに加えて、一実施形態に係る各種制御処理を実行するために必要なプログラムを格納する。
【0033】
データ記憶部13は、例えば、記憶媒体として、SSD等の随時書込みおよび読出しが可能な不揮発性メモリと、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリとを組み合わせたもので、一実施形態を実施するために必要な主たる記憶部として、センシングデータ記憶部131と、ペアリング情報記憶部132と、メッセージ記憶部133とを備えている。
【0034】
センシングデータ記憶部131は、センシングユニット2により測定されたセンシングデータを、その測定日時を表す情報等と紐付けた状態で記憶するために使用される。
【0035】
ペアリング情報記憶部132は、上記ユーザの情報端末UTとの間に設定されたBLEのペアリング情報等を記憶するために使用される。
【0036】
メッセージ記憶部133は、第三者が使用する不特定の情報端末TPから受信した無効な接続要求に対する回避処理を行う際に、ユーザに対しその旨を報知するために使用される回避メッセージを記憶する。
【0037】
なお、データ記憶部13は、制御部11の各種処理の過程で生成されるデータを一時保持する記憶領域も有する。
【0038】
制御部11は、一実施形態を実施するために必要な主たる機能として、センシング制御部110と、BLE通信制御部111と、無効接続要求計数処理部112と、無効接続回避処理部113と、回避メッセージ出力処理部114と、センシングデータ送信処理部115とを備える。これらの制御部および処理部111~115は、何れもプログラム記憶部12に格納されたプログラムを制御部11のハードウェアプロセッサに実行させることにより実現される。
【0039】
センシング制御部110は、入力部4aにおいて血圧データを含むバイタルデータの測定動作のトリガとなる操作が行われた場合に、センサI/F14を介してセンシングユニット2を起動する。そして、センシングユニット2により測定されたセンシングデータをセンサI/F14を介して取り込み、取り込んだ上記センシングデータを、測定日時を表す情報を対応付けてセンシングデータ記憶部131に記憶させる処理を行う。
【0040】
BLE通信制御部111は、BLE通信方式で規定された通信プロトコルに従い、ユーザが使用する特定の情報端末UTとの間でBLEのアドバタイジングの送信および接続シーケンスを実行して、情報端末UTとの間にBLEの無線リンクを確立する一連の処理を実行する。
【0041】
なお、BLE通信制御部111は、第三者が使用する不特定の情報端末TPから送信される接続要求も受信するが、上記不特定の情報端末TPとの間にはペアリング情報が設定されていないので、切断処理を行う。
【0042】
無効接続要求計数処理部112は、上記不特定の情報端末TPから送信される無効な接続要求を受信した場合に、この無効な接続要求の発生状況を表す統計情報を生成する処理を行う。この例では、統計情報として無効な接続要求の発生回数を計数するが、他に例えば単位時間あたりの発生頻度または発生確率を算出するようにしてもよい。
【0043】
無効接続回避処理部113は、上記無効接続要求計数処理部112により計数された無効な接続要求の発生回数を、回避条件として予め設定されたしきい値と比較し、上記発生回数がしきい値以上となった場合に、上記無効な接続要求に対する回避処理を実行する。回避処理としては、例えば、上記BLE通信制御部111に対し、アドバタイズの送信電力値を一定レベルずつ複数段階に渡って低下させる指示を行う。そして、無効な接続要求が受信されなくなった時点での送信電力値を、以後アドバタイズの送信電力値として固定設定するようにBLE通信制御部111に指示する。
【0044】
回避メッセージ出力処理部114は、上記無効接続回避処理部113において無効な接続要求の発生回数がしきい値以上になったと判定された場合に、上記無効な接続要求の回避の発生をユーザに報知するための回避メッセージをメッセージ記憶部133から読み出し、読み出された上記回避メッセージと、上記無効な接続要求の発生回数の計数値とをもとに報知メッセージを生成する。そして、生成された上記報知メッセージを、BLEのビーコンによりユーザの情報端末UTへ送信すると共に、センシング装置SDSの表示部4bに表示させる処理を行う。
【0045】
センシングデータ送信処理部115は、上記BLE通信制御部111により正規の情報端末UTとの間にBLEの無線リンクが確立された状態で、センシングデータ記憶部131から未送信のセンシングデータを読み出し、当該センシングデータを通信I/F15を介してBLE通信モジュール3へ出力し、BLE通信モジュール3から送信させる処理を行う。
【0046】
(動作例)
次に、センシング装置SDの動作例を説明する。
図4、5はセンシング装置SDの制御部11による処理手順と処理内容の一例を示すフローチャート、図6はセンシング装置SDとユーザの情報端末UTおよび第三者の情報端末TPとの間のBLE接続処理手順の一例を示すシーケンス図である。
【0047】
(1)センシング装置SDにおけるセンシング動作
センシング装置SDにおいて、被測定者であるユーザがセンシングのための操作を行ったとする。このときの操作としては、例えば入力部4aに設けられた測定ボタンの押下が挙げられるが、ユーザが腕や手首等の被測定部位にカフを装着する操作等であってもよい。
【0048】
センシング装置SDの制御部11は、上記操作をステップS10により検知すると、センシング制御部110の制御の下、ステップS11においてセンシングユニット2を起動させる。そして、センシングユニット2により測定され出力されたセンシングデータを、ステップS12によりセンサI/F14を介して取得し、取得されたセンシングデータを、測定日時を表す情報を付加した後にセンシングデータ記憶部131に記憶させる。センシング制御部110は、上記1回のセンシング動作が終了すると、ステップS13においてセンシング動作が終了したか否かを判定する。そして、被測定者が測定ボタンを再度押下した場合には、ステップS11に戻って上記センシング動作を繰り返し実行する。
【0049】
なお、この例では、センシングデータとして、収縮期血圧(Systolic Blood Pressure)、拡張期血圧(Diastolic Blood Pressure)および脈拍数を表すデータが取得されるが、センシングデータには、脈拍数や心電波形、血糖値、活動量、ストレス度等に係るその他のバイタルデータが単独または複合して含まれていてもよい。
【0050】
(2)BLE接続制御
(2-1)BLEのアドバタイジングおよび接続要求の受信
センシング装置SDの制御部11は、上記ステップS13においてセンシング動作が終了したと判定すると、BLE通信制御部111の制御の下、ステップS14において例えば一定の時間間隔で間欠的にBLEのアドバタイズの送信を開始する。このときの上記アドバタイズの送信電力値は、BLEの規格において定められた範囲で十分大きい初期値に設定される。
【0051】
一方、ユーザの情報端末UTは、上記センシング装置SDから送信されるBLEアドバタイズを監視しており、当該アドバタイズを受信すると、接続要求を生成してセンシング装置SDへ送信する。しかし、このとき例えば隣接する居室TEにおいて、第三者の情報端末TPが上記アドバタイズを受信可能な位置に存在していると、この第三者の情報端末TPも上記アドバタイズの受信に対し接続要求を送信することが可能である。特に、例えば第三者が妨害目的で、情報端末TPの動作モードを故意に接続要求を送信するモード設定にしていたとすると、第三者の情報端末TPは上記センシング装置SDからアドバタイズを受信する毎に、その都度接続要求を送信する。
【0052】
これに対し、センシング装置SDの制御部11は、上記アドバタイズの送信期間中にステップS15において接続要求の受信を監視している。そして、この状態で接続要求を受信すると、ステップS16においてアドバタイズの送信を停止し、BLE製造制御に移行する。但し、このときセンシング装置SDがユーザの情報端末UTからの接続要求より先に、第三者の情報端末TPからの接続要求を受信してしまうと、センシング装置SDはユーザの情報端末UTからの接続要求を受信することができなくなる。
【0053】
またこの場合、上記第三者の情報端末TPが妨害目的の接続要求を繰り返し送信する動作に対し何も対策を講じていなければ、センシング装置SDは上記第三者の情報端末TPからの接続要求を受信する毎に通常通りBLE接続制御を実行してしまい、結果的にユーザの情報端末UTは半永久的にセンシング装置SDに接続することができなくなる。
【0054】
(2-2)無効接続の回避処理
一実施形態のセンシング装置SDの制御部11は、上記第三者の情報端末TPからの妨害目的の接続要求の繰り返し送信動作に対し、以下のような対応策を実行している。
【0055】
センシング装置SDの制御部11は、BLE通信制御部111の制御の下、ステップS17において、受信された接続要求が有効であるか無効であるかを判定する。この有効であるか無効であるかの判定は例えば次のように行う。すなわち、BLE通信制御部111は、第三者の情報端末TPから、上記接続要求に続いて送信されるペアリング情報または暗号化要求を受信する。そして、受信された上記ペアリング情報または暗号化要求と、ペアリング情報記憶部132に記憶されているペアリング情報とに基づいて、要求元の情報端末TPとセンシング装置SDとの間にペアリング設定がなされているか否かを判定する。そして、ペアリング設定がなされていなければ、上記要求元の情報端末TPから送られた接続要求を無効と判定する。なお、情報端末TPからペアリング情報等の要求が何も送られてこない場合にも、上記接続要求を無効と判定する。
【0056】
接続要求を無効と判定すると、センシング装置SDの制御部11は、次に無効接続要求計数処理部112の制御の下、ステップS18により上記無効接続要求の発生回数を計数しその計数値を保存する。そして、続いてステップS19に移行し、無効接続回避処理部113の制御の下、以下のように回避処理を実行する。
【0057】
図5は、無効接続回避処理部113による回避処理の手順と処理内容を示すフローチャートである。無効接続回避処理部113は、先ずステップS191において、上記保存されている無効接続要求の発生回数の計数値をしきい値と比較し、当該計数値がしきい値以上になったか否かを判定する。この判定の結果、上記計数値がしきい値に達していなければステップS195に移行し、BLE通信制御部111に対し切断指示を与えて切断処理を実行させる。
【0058】
そして、センシング装置SDの制御部11は、ステップS14に戻り、以後ステップS14~ステップS19により、BLEのアドバタイズの送信から接続要求の受信、無効接続の回避処理までの一連の処理を実行する。以後、上記無効接続要求の発生回数がしきい値に達するまで、センシング装置SDの制御部11は上記一連の処理を繰り返し実行する。
【0059】
一方、情報端末TPによる無効接続が一定回数繰り返され、上記計数値がしきい値以上になったとする。この場合無効接続回避処理部113は、ステップS192において、アドバタイズの送信電力値を予め設定された一定レベル低下させるための指示を、上記BLE通信制御部111に対し与える。
【0060】
この結果、BLE通信制御部111は、上記切断処理後、次に送信するアドバタイズの送信電力値を上記指示に従い一定レベルだけ低下させるようにBLE通信モジュール3を制御する。この結果、センシング装置SDが次に送信するアドバタイズの送信電力値は、上記一定レベルだけ小さくなる。
【0061】
上記アドバタイズの送信電力値の低下処理後、センシング装置SDの制御部11は、ステップS15により情報端末からの接続要求の受信の有無を監視する。そして、この状態で接続要求が受信されると、ステップS17により当該接続要求が有効か無効かを判定する。この判定の結果、受信された接続要求が依然として第三者の情報端末TPから送られる無効な接続要求であれば、無効接続要求計数処理部112により無効接続要求の発生回数の計数値をインクリメント(カウントアップ)した後、無効接続回避処理部113により図5で述べた手順に従い、先に述べた無効接続に対する回避処理を実行する。以後、受信された接続要求がユーザの情報端末からの有効な接続要求と判定されるまで、上記ステップS14~ステップS19による処理を繰り返す。
【0062】
従って、センシング装置SDから送信されるアドバタイズの送信電力値は、上記無効接続要求の発生回数がしきい値に達するまでの回避処理実行過程において、上記一定レベルずつ段階的に低下するように制御され、これによりアドバタイズの送信電力値は徐々に小さくなる。
【0063】
また、センシング装置SDの制御部11は、上記送信電力値が段階的に低下する毎に、低下後の送信電力値をBLE通信制御部111に保持する。このため、上記回避処理の実行過程終了後において、上記送信電力値の最終的な値がBLE通信制御部111にそのまま保持される。従って、以後アドバタイズを送信する際に、センシング装置SDは上記保持された最終的な送信電力値を用いてアドバタイズを送信する。
【0064】
(2-3)無効接続回避のための報知メッセージの出力
センシング装置SDの制御部11は、上記無効接続回避処理において、回避メッセージ出力処理部114の制御下、ステップS193において、無効な接続要求の発生をユーザに報知するための回避メッセージの定型文をメッセージ記憶部133から読み出す。そして、読み出された上記回避メッセージ(例えば定型文)と、上記無効接続発生回数の計数値とに基づいて、無効接続の発生をユーザに報知するための報知メッセージを生成する。そして、生成された上記報知メッセージを、BLE通信モジュール3からBLEの規格で定義されたビーコンを用いてユーザの情報端末UTに向け送信する。
【0065】
従って、ユーザの情報端末UTでは、上記ビーコンにより送られた上記報知メッセージが表示され、この報知メッセージによりユーザは無効接続が発生していることを認識し、例えば情報端末UTの位置をセンシング装置SDにさらに近づけるといった対応策を実施することが可能となる。
【0066】
また回避メッセージ出力処理部114は、ステップS194において、上記報知メッセージを入出力I/F16を介して表示部4bへ出力し、表示部4bに表示させる。これによりユーザは、センシング装置SDにおいても上記報知メッセージを確認することが可能となり、センシング装置SDをより適切な場所に移動させるといった対応策を行うことが可能となる。
【0067】
(2-4)ユーザの情報端末UTとの間のBLE接続処理
上記無効接続回避処理によるアドバタイズの送信電力値の段階的な低下処理により、第三者の情報端末TPがセンシング装置SDから送信されるアドバタイズをある段階で受信できなくなると、第三者の情報端末TPからの接続要求の送信は停止される。
【0068】
一方、ユーザの情報端末UTは、センシング装置SDと同一の居室UE内において、隣接する居室TE内で使用されている第三者の情報端末TPよりセンシング装置SDに対し近い位置に存在する。このため、ユーザの情報端末UTは、センシング装置SSDから送信される、送信電力値が低下されたアドバタイズを受信することができる。そして、上記アドバタイズを受信すると、情報端末UTはセンシング装置SDに対し接続要求を送信する。
【0069】
これに対し、センシング装置SDの制御部11は、上記ユーザの情報端末UTから送信された接続要求を受信すると、BLE通信制御部111の制御の下、ステップS17において、受信された上記接続要求が有効なものか無効なものかを判定する。このとき、要求元の情報端末UTはセンシング装置SDとの間でペアリング設定されている。このため、BLE通信制御部111は、上記接続要求について有効なものと判定する。
【0070】
接続要求が有効と判定されると、センシング装置SDの制御部11は、BLE通信制御部111の制御の下、ステップS20において接続シーケンスを実行する。次に、上記接続シーケンスの実行により、情報端末UTとの間にBLEの無線リンクが形成されると、センシングデータ送信処理部115の制御の下、ステップS21からステップS22に移行し、センシングデータ記憶部131から未送信のセンシングデータを読み出す。そして、読み出された上記センシングデータを通信I/F15を介してBLE通信モジュール3へ出力し、このBLE通信モジュール3から情報端末UTに向け送信する。最後に、ステップS23により情報端末UTから送信される切断要求を受信すると、無線リンクを開放して待受状態に復帰する。
【0071】
(作用・効果)
以上述べたように一実施形態では、センシング装置SDにおいて、情報端末から接続要求を受信した場合に、当該接続要求がユーザの情報端末UTから送信された有効なものか、或いは第三者の情報端末TPから送信された無効なものかを判定する。そして、無効と判定された場合に、その発生回数を計数してその計数値がしきい値以上になったか否かを判定する。この判定の結果、上記発生回数がしきい値以上になった場合に、アドバタイズの送信電力値を低下させてアドバタイズが第三者の情報端末TPに届かないようにすることにより、第三者の情報端末TPからの無効な接続要求の発生を停止させて、無効な接続要求を回避するようにしている。
【0072】
従って、例えば第三者の情報端末TPが妨害目的で故意に無効な接続要求を頻発した場合に、上記第三者の情報端末TPがセンシング装置SDから送信されるアドバタイズを受信できなくなり、これにより無効な接続要求の送信が永続的に続かないようにすることが可能となる。この結果、妨害目的の接続要求の送信に対する回避処理を効果的にかつ自動的に行うことができる。
【0073】
また一実施形態では、無効な接続要求の発生回数を計数してその計数値がしきい値に達する毎に、アドバタイズの送信電力値を一定レベルずつ段階的に低下させ、この段階的な低下制御の過程で無効な接続要求が受信されなくなったときの送信電力値を、以後アドバタイズの送信電力値として固定設定するようにしている。
【0074】
これにより、センシング装置SDによるアドバタイズの送信電力値が、第三者の情報端末TPが受信不可能な範囲でかつ最も高い値に設定することができる。すなわち、アドバタイズの送信電力値を、第三者の情報端末TPからの無効な接続要求の送信を回避した上で、ユーザの情報端末UTからの接続要求を確実に受信可能な最適な値に自動調整することができる。
【0075】
さらに一実施形態では、無効な接続要求が発生しても即時回避処理を行わず、無効な発生回数がしきい値により定義される所定の複数回数に達した時点で回避処理を行うようにしている。
【0076】
このため、例えばユーザの情報端末UTからの有効な接続要求が、例えばフェージング等の一時的な無線環境の劣化により正しく受信されず、無効な接続要求と判定された場合に、アドバタイズの送信電力値を即時低下させないようにすることができる。
【0077】
さらに一実施形態では、無効接続に対する回避処理が行われた場合に、回避メッセージと無効接続発生回数とをもとに、ユーザに無効接続の発生を通知するための報知メッセージを生成し、当該報知メッセージをビーコンを用いてユーザの情報端末UTに送信すると共に、センシング装置SDの表示部4bに表示するようにしている。
【0078】
このため、ユーザは、情報端末UTにおいても、またセンシング装置SDにおいても、無効接続が発生していることを認識して、例えば情報端末UTの位置またはセンシング装置SDの位置を、より適切な位置に移動させるといった対応策を実施することが可能となる。
【0079】
[その他の実施形態]
無効接続の発生回数を判定するためのしきい値は任意に設定することができ、例えば1回に設定することも可能である。この場合、明らかに無効な接続要求が受信された場合に、即時回避処理を実行することができ、これによりセンシングデータの転送を遅れることなく迅速に行うことが可能となる。また、アドバタイズの送信電力値を段階的に低下させるときの一段階あたりの低下幅も任意に設定することができる。
【0080】
また、一実施形態では、センシング装置として血圧計を用いた場合を例にとって説明したが、血圧データ以外のバイタルデータを測定するデバイスであってもよい。またセンシング装置は、バイタルデータ以外に温度や湿度、気圧等の環境データを測定するデバイスや、排気ガス等の大気汚染に係る物質や水質、振動、騒音等を測定するデバイスであってもよい。
【0081】
その他、無線通信装置の構成、処理手順および処理内容、伝送対象データの種類やデータ構造などについても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施可能である。
【0082】
以上、本発明の実施形態を詳細に説明してきたが、前述までの説明はあらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。つまり、本発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。
【0083】
要するにこの発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0084】
SD…センシング装置
UT…ユーザの情報端末
TP…第三者の情報端末
NW…ネットワーク
1…制御ユニット
2…センシングユニット
3…BLE通信モジュール
4a…入力部
4b…表示部
11…制御部
12…プログラム記憶部
13…データ記憶部
14…センサI/F
15…通信I/F
16…入出力I/F
110…センシング制御部
111…BLE通信制御部
112…無効接続要求計数処理部
113…無効接続回避処理部
114…回避メッセージ出力処理部
115…センシングデータ送信処理部
131…センシングデータ記憶部
132…ペアリング情報記憶部
133…メッセージ記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6