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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022012369
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】産業車両
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20220107BHJP
   B66F 9/24 20060101ALI20220107BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20220107BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B66F9/24 L
B66F9/24 W
B66F9/24 Z
G05D1/02 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020114171
(22)【出願日】2020-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 将崇
【テーマコード(参考)】
3F333
5H181
5H301
【Fターム(参考)】
3F333AA02
3F333AB13
3F333FA11
3F333FA29
3F333FA36
3F333FE05
5H181AA27
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181CC24
5H181FF04
5H181FF05
5H181FF07
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL09
5H181LL14
5H181MB04
5H301BB07
5H301CC03
5H301CC06
5H301LL01
5H301LL07
(57)【要約】
【課題】作業性の低下を抑制すること。
【解決手段】産業車両は、障害物検出装置と、主制御装置と、を備える。障害物検出装置は、センサと、位置検出装置と、を備える。位置検出装置は、ワールド座標系における障害物の位置を検出する。主制御装置は、ワールド座標系に設定された検知範囲に障害物が存在している場合に警報及び車速制限を行う。主制御装置は、産業車両の現在位置に対応付けられた検知範囲を設定する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサと、
前記センサの検出結果から実空間上の座標系での障害物の位置を検出する障害物位置検出部と、
前記障害物位置検出部により検出された前記障害物が、前記実空間上の座標系に設定された検知範囲に存在している場合に警報及び車速制限の少なくともいずれかを行う制御部と、
産業車両の現在位置に対応付けられた前記検知範囲を設定する検知範囲設定部と、を備える産業車両。
【請求項2】
前記現在位置を導出する位置導出部と、
前記産業車両が用いられる区域に設定された制限エリアと前記検知範囲とを対応付けた対応関係が記憶された記憶装置と、を備え、
前記検知範囲設定部は、前記位置導出部により導出された前記現在位置が前記制限エリアに該当する場合、前記対応関係によって前記制限エリアに対応付けられた前記検知範囲を設定する請求項1に記載の産業車両。
【請求項3】
前記位置導出部は、前記区域に設置された固定機が送信した無線信号を受信し、受信した前記無線信号の受信態様から前記現在位置を導出する請求項2に記載の産業車両。
【請求項4】
前記検知範囲設定部は、通路幅が広い位置ほど前記検知範囲が広くなるように前記検知範囲を設定する請求項1~請求項3のうちいずれか一項に記載の産業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、産業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車両は、障害物を検出するための障害物検出装置を備える。特許文献1に開示の障害物検出装置は、ステレオカメラと、検出部と、を備える。ステレオカメラは、車両の周囲を撮像するように配置されている。検出部は、ステレオカメラによって撮像された画像から障害物の存在領域を検出している。検出部により障害物が検出されると、車速制限や警報が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-164564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フォークリフトやトーイングトラクタ等の産業車両は、産業車両を走行させられる領域が狭い領域で作業を行う場合がある。このような産業車両に障害物検出装置が搭載される場合、ステレオカメラによって撮像される画像には障害物の存在を判定する検知範囲内に障害物が写りやすい。すると、車速制限や警報が頻繁に行われることになる。結果として、作業性の低下を招く。
【0005】
本開示の目的は、作業性の低下を抑制できる産業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する産業車両は、センサと、前記センサの検出結果から実空間上の座標系での障害物の位置を検出する障害物位置検出部と、前記障害物位置検出部により検出された前記障害物が、前記実空間上の座標系に設定された検知範囲に存在している場合に警報及び車速制限の少なくともいずれかを行う制御部と、産業車両の現在位置に対応付けられた前記検知範囲を設定する検知範囲設定部と、を備える。
【0007】
障害物位置検出部によって検出された障害物が検知範囲に存在している場合に警報及び車速制限の少なくともいずれかが行われる。検知範囲は、産業車両の現在位置に対応付けられているため、産業車両の現在位置に応じた検知範囲が設定されることになる。これにより、検知範囲に常に障害物が入り込むことを抑制することができる。頻繁に警報や車速制限が行われることが抑制されるため、作業性の低下が抑制される。
【0008】
上記産業車両について、前記現在位置を導出する位置導出部と、前記産業車両が用いられる区域に設定された制限エリアと前記検知範囲とを対応付けた対応関係が記憶された記憶装置と、を備え、前記検知範囲設定部は、前記位置導出部により導出された前記現在位置が前記制限エリアに該当する場合、前記対応関係によって前記制限エリアに対応付けられた前記検知範囲を設定してもよい。
【0009】
上記産業車両について、前記位置導出部は、前記区域に設置された固定機が送信した無線信号を受信し、受信した前記無線信号の受信態様から前記現在位置を導出してもよい。
上記産業車両について、前記検知範囲設定部は、通路幅が広い位置ほど前記検知範囲が広くなるように前記検知範囲を設定してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、作業性の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態における産業車両が用いられる環境を示す模式図。
図2】第1実施形態における産業車両の斜視図。
図3】第1実施形態における産業車両の概略構成図。
図4】ステレオカメラで撮像された第1画像の一例を示す図。
図5】第1実施形態における位置検出装置が行う処理を示すフローチャート。
図6】ワールド座標系のXY平面における障害物の位置を示す模式図。
図7】第1実施形態における主制御装置が行う処理を示すフローチャート。
図8】制御エリア及び産業車両の状態の組み合わせと、検知範囲との対応関係を示す図。
図9】産業車両が走行状態の場合の第1検知範囲を示す模式図。
図10】産業車両が走行状態の場合の第2検知範囲を示す模式図。
図11】産業車両が発進状態の場合の第1検知範囲を示す模式図。
図12】産業車両が発進状態の場合の第2検知範囲を示す模式図。
図13】第3実施形態における産業車両が用いられる環境を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、産業車両の第1実施形態について説明する。
図1に示すように、産業車両10は、倉庫、工場、公共施設、商用施設などの屋内のうち予め定められた区域A1で用いられる。区域A1には、複数の棚S1,S2,S3,S4,S5が設けられている。棚S1,S2,S3,S4,S5は、互いに間隔を空けて並んで配置されている。複数の棚S1,S2,S3,S4,S5のそれぞれを第1棚S1、第2棚S2、第3棚S3、第4棚S4、第5棚S5とすると、各棚S1~S5は第1棚S1→第2棚S2→第3棚S3→第4棚S4→第5棚S5の順に整列して並んでいる。第1棚S1と第2棚S2との間隔d1と、第2棚S2と第3棚S3との間隔d2は互いに同一である。第3棚S3と第4棚S4との間隔d3と、第4棚S4と第5棚S5との間隔d4は互いに同一である。間隔d1,d2は、間隔d3,d4より短い。棚S1~S5は、例えば、支柱によって棚板を支持しているものであり、平面視において一方向に延びている。棚S1~S5を平面視した場合、一方向への寸法は、当該一方向に直交する方向に比べて長いといえる。棚S1~S5の延びる方向と、棚S1~S5の並ぶ方向とは互いに直交している。棚S1~S5同士の間は、産業車両10の通過可能な通路P1,P2,P3,P4である。棚S1~S5同士の間隔d1,d2,d3,d4は、通路P1,P2,P3,P4の通路幅といえる。第1棚S1と第2棚S2の間の通路P1、及び第2棚S2と第3棚S3の間の通路P2を第1通路P1,P2と称する。第3棚S3と第4棚S4との間の通路P3、及び第4棚S4と第5棚S5との間の通路P4を第2通路P3,P4と称する。第1通路P1,P2の通路幅は、第2通路P3,P4の通路幅よりも狭い。
【0013】
区域A1には、トラックTの停車位置となるトラックヤードTYが設けられている。トラックヤードTYには、柱Piが存在している。本実施形態の区域A1では、荷役作業が行われる。荷役作業は、トラックTや棚S1~S5に荷Wを置く荷置き作業、及びトラックTや棚S1~S5から荷Wを取る荷取り作業を含む。本実施形態の産業車両10は、荷役作業に用いられるフォークリフトである。
【0014】
区域A1には、複数の固定機WTが設けられている。固定機WTは、区域A1の天井等、産業車両10の進行を阻害しない位置に設けられている。固定機WTは、予め定められた位置に設けられており、この位置から移動しない。固定機WTは、周期的に無線信号を送信している。この無線信号には、固定機WT毎に個別に設定された識別情報が含まれている。無線信号には、固定機WTの位置を示す位置情報が含まれ得る。
【0015】
図2に示すように、産業車両10は、車体11と、車体11の前下部に配置された2つの駆動輪12と、車体11の後下部に配置された2つの操舵輪14と、荷役装置20と、を備える。車体11は、運転席の上部に設けられたヘッドガード15を備える。
【0016】
荷役装置20は、車体11の前部に立設されたマスト21と、マスト21とともに昇降可能に設けられた一対のフォーク22と、マスト21を昇降動作させるリフトシリンダ23と、を備える。フォーク22には、荷Wが積載される。リフトシリンダ23は油圧シリンダである。リフトシリンダ23の伸縮によってマスト21が昇降すると、これに伴いフォーク22が昇降する。本実施形態の産業車両10は、操作者による操作によって走行動作及び荷役動作が行われるものである。
【0017】
図3に示すように、産業車両10は、アクセルペダル16と、ディレクションレバー17と、主制御装置31と、補助記憶装置34と、アクセルセンサ35と、ディレクションセンサ36と、測位装置37と、走行用モータ41と、回転数センサ42と、走行制御装置43と、障害物検出装置51と、バス60と、を備える。
【0018】
主制御装置31は、プロセッサ32と、記憶部33と、を備える。プロセッサ32としては、例えば、CPU:Central Processing Unit、GPU:Graphics Processing Unit、DSP:Digital Signal Processorが用いられる。記憶部33は、RAM:Random access memory及びROM:Read Only Memoryを含む。記憶部33には、産業車両10を動作させるためのプログラムが記憶されている。記憶部33は、処理をプロセッサ32に実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納しているといえる。記憶部33、即ち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。主制御装置31は、ASIC:Application Specific Integrated CircuitやFPGA:Field Programmable Gate Array等のハードウェア回路によって構成されていてもよい。処理回路である主制御装置31は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASICやFPGA等の1つ以上のハードウェア回路、或いは、それらの組み合わせを含み得る。
【0019】
補助記憶装置34としては、例えば、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、EEPROM:Electrically Erasable Programmable Read Only Memory等の、データを書き換え可能な不揮発性記憶装置が用いられる。
【0020】
補助記憶装置34には、産業車両10が用いられる環境の地図を示す環境地図が記憶されている。環境地図とは、産業車両10の用いられる環境の形状、広さなど、産業車両10の周辺環境の物理的構造に関する情報である。環境地図は、産業車両10の用いられる環境、即ち、図1に示す区域A1を地図座標系での座標で表したデータといえる。地図座標系は、原点を基準とした座標で産業車両10の用いられる環境の物理的構造に関する位置を表現したものである。地図座標系は、水平方向に互いに直交する軸の1つをX軸、X軸とは異なる軸をY軸とする直交座標系である。地図座標系は、X軸及びY軸に直交するZ軸を備えていてもよい。環境地図は、水平方向での座標で表された2次元マップでもよいし、水平方向及び鉛直方向の座標で表された3次元マップであってもよいといえる。以下の説明において、地図座標系での座標を地図座標と称する。
【0021】
アクセルセンサ35は、アクセルペダル16の操作量、即ち、アクセル開度を検出する。アクセルセンサ35は、アクセル開度に応じた電気信号を主制御装置31に出力する。主制御装置31は、アクセルセンサ35からの電気信号によりアクセル開度を認識可能である。
【0022】
ディレクションセンサ36は、進行方向を指示するディレクションレバー17の操作方向を検出する。ディレクションセンサ36は、中立を基準として、前進を指示する方向にディレクションレバー17が操作されているか、後進を指示する方向にディレクションレバー17が操作されているかを検出する。ディレクションセンサ36は、ディレクションレバー17の操作方向に応じた電気信号を主制御装置31に出力する。主制御装置31は、ディレクションセンサ36からの電気信号によりディレクションレバー17の操作方向を認識可能である。主制御装置31は、操作者により前進が指示されているか、後進が指示されているか、いずれも指示されていないかを把握することができる。
【0023】
位置導出部としての測位装置37は、産業車両10の現在位置を導出する。産業車両10の現在位置とは、地図座標系における産業車両10の位置である。測位装置37は、固定機WTから送信されている無線信号を受信して、受信した無線信号の受信態様から産業車両10の現在位置を導出する。受信態様には、無線信号の受信強度及び伝搬時間が含まれる。測位装置37は、受信強度や伝搬時間を距離に換算することで、産業車両10の現在位置を導出する。
【0024】
無線信号の受信強度を利用して産業車両10の現在位置を導出する場合、測位装置37は、無線信号の受信強度に基づき固定機WTから測位装置37までの距離を推定する。ここで、無線信号に含まれる識別情報から、測位装置37は受信した無線信号が複数の固定機WTのうちいずれの固定機WTから送信されたものかを判別することができる。測位装置37は、無線信号を送信している固定機WT毎に個別に固定機WTからの距離を推定することができる。各固定機WTの地図座標と、各固定機WTの識別情報との対応関係を把握できていれば、測位装置37は多点測位により、産業車両10の現在位置を導出することができる。各固定機WTの地図座標と各固定機WTの識別情報との対応関係は、測位装置37が備える記憶媒体や主制御装置31の記憶部33に記憶されていてもよい。また、無線信号に固定機WTの地図座標が位置情報として含まれていれば、各固定機WTの地図座標と各固定機WTの識別情報との対応関係は記憶されていなくてもよい。無線信号の受信強度を利用して産業車両10の現在位置を導出する場合、無線信号としては、Bluetooth(登録商標)Low Energy規格に準拠した電波やWI-FI(登録商標)規格に準拠した電波が用いられる。
【0025】
無線信号の伝搬時間を利用して産業車両10の現在位置を導出する場合、測位装置37は、無線信号の伝搬時間に基づき固定機WTから測位装置37までの距離を推定する。伝搬時間とは、固定機WTによる無線信号の送信から測位装置37による無線信号の受信までの時間である。無線信号の受信強度を利用する場合と同様に、測位装置37は多点測位により、産業車両10の現在位置を導出することができる。伝搬時間は、測位装置37と固定機WTとで時刻同期を行うことで計測できるようにしてもよいし、異なる周波数の位相差を利用して計測できるようにしてもよい。無線信号の伝搬時間を利用して産業車両10の現在位置を導出する場合、無線信号としては、UWB:Ultra Wide Bandの電波やWI-FI規格に準拠した電波が用いられる。このように、無線信号の伝搬時間を利用した測位方式は、TOA:time of Arrival方式といわれる。
【0026】
上記したように、本実施形態の環境地図は、固定機WTの地図座標から産業車両10の現在位置を導出するために用いられる。このため、本実施形態の環境地図には、必ずしも、棚S1~S5などの構造物の地図座標が反映されていなくてもよい。
【0027】
走行用モータ41は、産業車両10を走行させるための駆動装置である。走行用モータ41の駆動により、駆動輪12が回転することで産業車両10は走行する。
回転数センサ42は、走行用モータ41の回転数を検出する。回転数センサ42としては、例えば、ロータリエンコーダを用いることができる。回転数センサ42は、走行用モータ41の回転数に応じた電気信号を走行制御装置43に出力する。
【0028】
走行制御装置43は、走行用モータ41の回転数を制御するモータドライバである。走行制御装置43は、回転数センサ42の電気信号から、走行用モータ41の回転数、及び回転方向を認識可能である。
【0029】
障害物検出装置51は、センサとしてのステレオカメラ52と、ステレオカメラ52によって撮像された画像から障害物の位置を検出する位置検出装置55と、警報装置58と、を備える。図1に示すように、ステレオカメラ52は、ヘッドガード15に配置されている。ステレオカメラ52は、産業車両10の上方から産業車両10の走行する路面を鳥瞰できるように配置されている。本実施形態のステレオカメラ52は、産業車両10の後方を撮像する。従って、位置検出装置55で検出される障害物は、産業車両10の後方の障害物となる。警報装置58及び位置検出装置55は、ステレオカメラ52とユニット化されて、ステレオカメラ52とともにヘッドガード15に配置されていてもよい。また、警報装置58及び位置検出装置55は、ヘッドガード15とは異なる位置に配置されていてもよい。
【0030】
図3に示すように、ステレオカメラ52は、第1カメラ53と、第2カメラ54と、を備える。第1カメラ53及び第2カメラ54としては、例えば、CCDイメージセンサや、CMOSイメージセンサを用いたものが挙げられる。第1カメラ53及び第2カメラ54は、互いの光軸が平行となるように配置されている。本実施形態において、第1カメラ53及び第2カメラ54は、互いに水平方向に並んで配置されている。第1カメラ53によって撮像された画像を第1画像、第2カメラ54によって撮像された画像を第2画像とすると、第1画像と第2画像では同一障害物が横方向にずれて写ることになる。詳細にいえば、同一障害物を撮像した場合、第1画像に写る障害物と、第2画像に写る障害物では、横方向の画素[px]に第1カメラ53と第2カメラ54との間の距離に応じたずれが生じることになる。第1画像及び第2画像は、画素数が同じであり、例えば、640×480[px]=VGAの画像が用いられる。第1画像及び第2画像は、RGB信号で表される画像である。
【0031】
位置検出装置55は、CPUやGPU等のプロセッサ56と、RAM及びROMを含む記憶部57と、を備える。記憶部57には、ステレオカメラ52によって撮像された画像から障害物を検出するための種々のプログラムが記憶されている。記憶部57は、処理をプロセッサ56に実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納しているといえる。記憶部57、即ち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。位置検出装置55は、ASICやFPGA等のハードウェア回路によって構成されていてもよい。処理回路である位置検出装置55は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASICやFPGA等の1つ以上のハードウェア回路、或いは、それらの組み合わせを含み得る。
【0032】
位置検出装置55は、以下の障害物検出処理を所定の制御周期で繰り返し行うことで、産業車両10の周囲に存在する障害物の位置を検出する。障害物の位置とは、産業車両10と障害物との相対的な位置である。
【0033】
以下の説明では、一例として、図4に示す環境をステレオカメラ52によって撮像した場合の障害物検出処理について説明する。図4は、産業車両10の後方を撮像することで得られた第1画像I1である。第1画像I1から把握できるように、産業車両10の後方には、障害物が存在している。障害物は、人、及び人以外の物体を含む。なお、説明の便宜上、障害物が存在する第1画像I1上の座標を枠AAで示しているが、実際の第1画像I1には枠AAは存在しない。
【0034】
図5に示すように、ステップS10において、位置検出装置55は、ステレオカメラ52の各カメラ53,54から同一フレームの画像を取得する。
次に、ステップS11において、位置検出装置55は、視差画像を取得する。視差画像は、画素に対して視差[px]を対応付けた画像である。視差は、第1画像I1と、第2画像とを比較し、各画像に写る同一特徴点について第1画像I1と第2画像の画素数の差を算出することで得られる。なお、特徴点とは、障害物のエッジなど、境目として認識可能な部分である。特徴点は、輝度情報などから検出することができる。位置検出装置55は、各画像を一時的に格納するRAMを用いて、RGBからYCrCbへの変換を行う。なお、位置検出装置55は、歪み補正、エッジ強調処理などを行ってもよい。位置検出装置55は、第1画像I1の各画素と第2画像の各画素との類似度を比較して視差を算出するステレオ処理を行う。なお、ステレオ処理としては、画素毎に視差を算出する手法を用いてもよいし、各画像を複数の画素を含むブロックに分割してブロック毎の視差を算出するブロックマッチング法を用いてもよい。位置検出装置55は、第1画像I1を基準画像、第2画像を比較画像として視差画像を取得する。位置検出装置55は、第1画像I1の画素毎に、最も類似する第2画像の画素を抽出し、第1画像I1の画素と、当該画素に最も類似する画素の横方向の画素数の差を視差として算出する。これにより、基準画像である第1画像I1の各画素に視差が対応付けられた視差画像を取得することができる。視差画像とは、必ずしも表示を要するものではなく、視差画像における各画素に視差が対応付けられたデータのことを示す。なお、位置検出装置55は、視差画像から路面の視差を除去する処理を行ってもよい。
【0035】
次に、ステップS12において、位置検出装置55は、実空間上の座標系であるワールド座標系における特徴点の座標を導出する。まず、位置検出装置55は、カメラ座標系における特徴点の座標を導出する。カメラ座標系は、ステレオカメラ52を原点とする座標系である。カメラ座標系は、光軸をZ軸とし、光軸に直交する2つの軸のそれぞれをX軸、Y軸とする3軸直交座標系である。カメラ座標系における特徴点の座標は、カメラ座標系におけるZ座標Zc、X座標Xc及びY座標Ycで表わすことができる。Z座標Zc、X座標Xc及びY座標Ycは、それぞれ、以下の(1)式~(3)式を用いて導出することができる。
【0036】
【数1】
【0037】
【数2】
【0038】
【数3】
(1)式~(3)式におけるBは基線長[mm]、fは焦点距離[mm]、dは視差[px]である。xpは視差画像中の任意のX座標であり、x’は視差画像の中心座標のX座標である。ypは視差画像中の任意のY座標であり、y’は視差画像の中心座標のY座標である。
【0039】
xpを視差画像中の特徴点のX座標とし、ypを視差画像中の特徴点のY座標とし、dを特徴点の座標に対応付けられた視差とすることで、カメラ座標系における特徴点の座標が導出される。
【0040】
ここで、産業車両10が水平面に位置している状態で、水平方向のうち産業車両10の車幅方向に延びる軸をX軸、水平方向のうちX軸に直交する方向に延びる軸をY軸、X軸及びY軸に直交する軸をZ軸とする3軸直交座標系をワールド座標系とする。ワールド座標系のY軸は、産業車両10の進行方向である産業車両10の前後方向に延びる軸である。ワールド座標系のZ軸は、鉛直方向に延びる軸である。ワールド座標系における座標は、X座標Xw、Y座標Yw及びZ座標Zwで表わすことができる。
【0041】
位置検出装置55は、以下の(4)式を用いてカメラ座標をワールド座標に変換するワールド座標変換を行う。ワールド座標とは、ワールド座標系における座標である。
【0042】
【数4】
ここで、(4)式におけるHはワールド座標系におけるステレオカメラ52の設置高さ[mm]であり、θは第1カメラ53及び第2カメラ54の光軸と、水平面とがなす角+90°の角度である。
【0043】
本実施形態において、ワールド座標系の原点は、X座標Xw及びY座標Ywをステレオカメラ52の位置とし、Z座標Zwを路面の位置とする座標である。ステレオカメラ52の位置とは、例えば、第1カメラ53のレンズと、第2カメラ54のレンズとの中間位置である。
【0044】
ワールド座標変換で得られたワールド座標のうちX座標Xwは、産業車両10の車幅方向に対する原点から特徴点までの距離を示す。Y座標Ywは、産業車両10の進行方向に対する原点から特徴点までの距離を示す。Z座標Zwは、路面から特徴点までの高さを示す。特徴点は、障害物の表面の一部を表す点である。なお、図中の矢印Xはワールド座標系のX軸、矢印Yはワールド座標系のY軸、矢印Zはワールド座標系のZ軸を示す。
【0045】
次に、ステップS13において、位置検出装置55は、特徴点をクラスタ化することで障害物の抽出を行う。位置検出装置55は、障害物の一部を表す点である特徴点のうち同一障害物を表していると想定される特徴点の集合を1つの点群とし、当該点群を障害物として抽出する。位置検出装置55は、ステップS12で導出されたワールド座標から、所定範囲内に位置する特徴点を1つの点群とみなすクラスタ化を行う。位置検出装置55は、クラスタ化された点群を1つの障害物とみなす。なお、ステップS13で行われる特徴点のクラスタ化は種々の手法で行うことができる。即ち、クラスタ化は、複数の特徴点を1つの点群とすることで障害物とみなすことができれば、どのような手法で行われてもよい。
【0046】
次に、ステップS14において、位置検出装置55は、ワールド座標系における障害物の位置を導出する。位置検出装置55は、ワールド座標系における障害物の位置として、ワールド座標系のXY平面における障害物の座標を導出する。位置検出装置55は、クラスタ化された点群を構成する特徴点のワールド座標から障害物のワールド座標を認識できる。例えば、クラスタ化された点群のうち端に位置する複数の特徴点のX座標Xw、Y座標Yw及びZ座標Zwを障害物のX座標Xw、Y座標Yw及びZ座標Zwとしてもよいし、点群の中心となる特徴点のX座標Xw、Y座標Yw及びZ座標Zwを障害物のX座標Xw、Y座標Yw及びZ座標Zwとしてもよい。即ち、ワールド座標系の障害物の座標は、障害物全体を表すものであってもよいし、障害物の一点を表すものであってもよい。
【0047】
位置検出装置55は、障害物のX座標Xw、Y座標Yw及びZ座標Zwをワールド座標系のXY平面に投影することで、ワールド座標系におけるXY平面での障害物のX座標Xw及びY座標Ywを導出する。即ち、位置検出装置55は、障害物のX座標Xw、Y座標Yw及びZ座標ZwからZ座標Zwを除去することで、水平方向における障害物のX座標Xw及びY座標Ywを導出する。なお、ワールド座標系における障害物の位置として、ワールド座標系のX座標Xw、Y座標Yw、Z座標Zwで表される3次元座標が導出されるようにしてもよい。
【0048】
図6に示す障害物Oは、第1画像I1に示す枠AAに存在する障害物の位置を示している。ステップS10~ステップS14の処理を行うことで、第1画像I1及び第2画像から、ワールド座標系における障害物Oの位置を導出することができる。位置検出装置55は、障害物位置検出部として機能している。
【0049】
警報装置58は、産業車両10の搭乗者や産業車両10の周囲に存在する人に対して警報を行う装置である。警報装置58としては、例えば、音による警報を行うブザー、光による警報を行うランプ、あるいは、これらの組み合わせ等を挙げることができる。産業車両10の搭乗者に警報を行う場合には、搭乗者の視認可能な位置に設けられた表示部を警報装置として用いて、表示部への警報の表示により警報を行ってもよい。このように、警報装置58は、任意の構成とすることができる。
【0050】
図3に示すように、主制御装置31、走行制御装置43及び障害物検出装置51は、バス60によって互いに情報を取得可能に構成されている。主制御装置31、走行制御装置43及び障害物検出装置51は、CAN:Controller Area NetworkやLIN:Local Interconnect Networkなどの車両用の通信プロトコルに従った通信を行うことで、互いに情報を取得することが可能である。
【0051】
主制御装置31は、走行制御装置43から走行用モータ41の回転数及び回転方向を取得することで産業車両10の車速及び進行方向を導出する。産業車両10の車速は、走行用モータ41の回転数及び回転方向、ギヤ比、駆動輪12の外径等を用いることで導出可能である。産業車両10の進行方向とは、前進方向及び後進方向のいずれかである。産業車両10の進行方向は、走行用モータ41の回転方向から導出可能である。
【0052】
主制御装置31は、バス60を介して警報指令を送信することで、警報装置58を作動させることができる。詳細にいえば、障害物検出装置51は、警報装置58を作動させる作動部を備え、警報指令を受信すると作動部は警報装置58を作動させる。
【0053】
産業車両10では、産業車両10の現在位置と障害物との位置関係に応じて、警報装置58を用いた警報及び車速制限が行われる。主制御装置31は、所定の制御周期で以下の制御を繰り返し行うことで、警報及び車速制限を行う。
【0054】
図7に示すように、ステップS21において、主制御装置31は、測位装置37から産業車両10の現在位置を示す情報を取得する。これにより、主制御装置31は産業車両10の現在位置を把握する。
【0055】
次に、ステップS22において、主制御装置31は、産業車両10の現在位置が制限エリアに該当するか否かを判定する。制限エリアとは、区域A1の場所によって設定されたエリアである。図1に示す例では、3つの制限エリアLA1,LA2,LA3が設定されている。3つの制限エリアLA1,LA2,LA3は、第1通路P1,P2を含む第1制限エリアLA1と、第2通路P3,P4を含む第2制限エリアLA2と、トラックヤードTYを含む第3制限エリアLA3とを含む。主制御装置31の記憶部33あるいは補助記憶装置34には、各制限エリアLA1,LA2,LA3の地図座標が記憶されている。主制御装置31は、ステップS21で取得した産業車両10の現在位置を示す情報と、記憶部33あるいは補助記憶装置34に記憶された各制限エリアLA1,LA2,LA3の地図座標から、産業車両10の現在位置が制限エリアLA1,LA2,LA3に該当するか否かを判定することができる。図7に示すように、ステップS22の判定結果が肯定の場合、主制御装置31は、ステップS23の処理を行う。ステップS22の判定結果が否定の場合、主制御装置31は、ステップS24の処理を行う。
【0056】
ステップS23において、主制御装置31は、制限エリアLA1,LA2,LA3に対応した検知範囲を設定する。図1に示す例では、制限エリアLA1,LA2,LA3毎に、異なる大きさの検知範囲DAが設定される。検知範囲DAとは、警報及び車速制限を行うか否かを判定するための範囲である。検知範囲DAは、ワールド座標で規定される。本実施形態では、ワールド座標系のX座標Xw及びY座標Ywにより検知範囲DAを規定しているが、ワールド座標系のX座標Xw及びY座標Ywに加えてZ座標Zwにより検知範囲DAは規定されてもよい。検知範囲DAは、ワールド座標系に設定されるといえる。検知範囲DAは、産業車両10から後方に拡がる範囲である。本実施形態の検知範囲DAは、産業車両10から後方に離れるにつれて徐々に幅が広くなり、その後一定幅となる。これは、ステレオカメラ52の水平画角によって産業車両10の近傍では、障害物を検出できる範囲が制限されるためである。なお、検知範囲DAの広さとは、ワールド座標系のXY平面での検知範囲DAの面積である。検知範囲DAの幅とは、ワールド座標系のX軸方向の最大寸法である。検知範囲DAの長さは、ワールド座標系のY軸方向の最大寸法である。
【0057】
図8に示すように、主制御装置31の記憶部33あるいは補助記憶装置34には、制限エリアLA1,LA2,LA3と検知範囲DAとの対応関係が記憶されている。詳細にいえば、主制御装置31の記憶部33あるいは補助記憶装置34には、検知範囲DAを規定するためのワールド座標が記憶されており、このワールド座標で表される範囲が検知範囲DAとなる。また、本実施形態では、制限エリアLA1,LA2,LA3に加えて、産業車両10の状態に応じて検知範囲DAが設定される。即ち、検知範囲DAは、産業車両10の現在位置と産業車両10の状態との組み合わせによって設定されるといえる。制限エリアLA1,LA2,LA3と検知範囲DAとの対応関係が記憶された記憶部33あるいは補助記憶装置34が記憶装置として機能している。
【0058】
産業車両10の状態としては、例えば、走行状態と、発進状態と、を挙げることができる。走行状態とは、産業車両10が走行している状態である。発進状態とは、産業車両10が走行停止状態から走行状態に遷移する状態である。産業車両10が走行状態か否かは、主制御装置31により算出される車速から判定することができる。主制御装置31は、産業車両10の車速が走行判定用閾値よりも高ければ、産業車両10は走行状態であると判定できる。主制御装置31は、産業車両10の車速が走行判定用閾値以下であれば産業車両10は走行停止状態であると判定できる。走行判定用閾値は、例えば、0[km/h]~0.5[km/h]の範囲内で設定される。発進状態は、少なくとも産業車両10が走行停止状態であることを条件とする状態である。例えば、走行停止状態を発進状態としてもよいし、走行停止状態、かつ、ディレクションレバー17により後進が指示されている状態を発進状態としてもよい。以下の説明において、適宜、第1制限エリアLA1に対応付けられた検知範囲DAを第1検知範囲DA1、第2制限エリアLA2に対応付けられた検知範囲DAを第2検知範囲DA2、第3制限エリアLA3に対応付けられた検知範囲DAを第3検知範囲DA3と称する。
【0059】
第1制限エリアLA1及び第2制限エリアLA2を例に挙げて、産業車両10が走行状態の場合に設定される検知範囲DAについて説明する。
図9及び図10に示すように、第1制限エリアLA1に対応付けられた第1検知範囲DA1の幅W1は、第1通路P1の通路幅よりも狭い。第2制限エリアLA2に対応付けられた第2検知範囲DA2の幅W2は、第2通路P3の通路幅よりも狭い。第2検知範囲DA2の幅W2は、第1検知範囲DA1の幅W1よりも広い。なお、産業車両10が走行状態の場合、第1検知範囲DA1の長さL1と第2検知範囲DA2の長さL2とは同一である。第2制限エリアLA2に存在する第2通路P3は、第1制限エリアLA1に存在する第1通路P1より通路幅が広いため、通路幅が広い位置ほど検知範囲DA1,DA2の幅は広く設定されているといえる。
【0060】
第1制限エリアLA1及び第2制限エリアLA2を例に挙げて、産業車両10が発進状態の場合に設定される検知範囲DAについて説明する。
図11及び図12に示すように、第1検知範囲DA1の長さL1は、産業車両10が棚S1~S3に荷Wを置く際や棚S1~S3から荷Wを取る際に、産業車両10の後方に位置する棚S1~S3が第1検知範囲DA1に入り込まないように設定されている。例えば、第1検知範囲DA1の長さL1は、第1通路P1の通路幅から車体11の長さを減算した値よりも短く設定されている。第2検知範囲DA2の長さL2は、産業車両10が棚S3~S5に荷Wを置く際や棚S3~S5から荷Wを取る際に、産業車両10の後方に位置する棚S3~S5が第2検知範囲DA2に入り込まないように設定されている。例えば、第2検知範囲DA2の長さL2は、第2通路P3の通路幅から車体11の長さを減算した値よりも短く設定されている。第2検知範囲DA2の長さL2は、第1検知範囲DA1の長さL1よりも長い。なお、産業車両10が発進状態の場合、第1検知範囲DA1の幅W1と第2検知範囲DA2の幅W2とは同一である。第2制限エリアLA2に存在する第2通路P3は、第1制限エリアLA1に存在する第1通路P1より通路幅が広いため、通路幅が広い位置ほど検知範囲DA1,DA2の長さは長く設定されているといえる。
【0061】
上記したように、産業車両10が走行状態であっても発進状態であっても、検知範囲DA1,DA2に棚S1~S5が入り込むことを抑制するように検知範囲DA1,DA2は設定されている。産業車両10が走行状態の場合、通路幅が広いほど検知範囲DA1,DA2の幅W1,W2は広くなる。産業車両10が発進状態の場合、通路幅が広いほど検知範囲DA1,DA2の長さL1,L2は長くなる。これにより、産業車両10が走行状態か発進状態かに関わらず、通路幅が広いほど検知範囲DA1,DA2は広くなるといえる。
【0062】
ここで、産業車両10が荷置き作業及び荷取り作業を含む荷役作業を行う際の動作を考えると、産業車両10は棚S1~S5に沿って通路P1~P4を走行した後に、旋回することで棚S1~S5を向く。そして、荷役作業を行うために走行停止状態となる。荷役作業を終えた後には、産業車両10は発進状態となる。このように、産業車両10が走行状態のときには、産業車両10は棚S1~S5の延びる方向に進行している場合が多い。産業車両10が発進状態のときには、産業車両10は荷取り作業又は荷置き作業を終えて、後方に位置する棚S1~S5に向けて、即ち、棚S1~S5の延びる方向に直交する方向に進行しようとする場合が多い。主制御装置31は、産業車両10の走行状態と発進状態に合わせて検知範囲DA1,DA2の幅W1,W2を変更するか長さL1,L2を変更するかを異ならせている。これにより、産業車両10の進行方向が棚S1~S5の延びる方向であれば検知範囲DA1,DA2の幅W1,W2が、産業車両10の進行方向が棚S1~S5の延びる方向に直交する方向であれば検知範囲DA1,DA2の長さL1,L2が変更されると捉えることができる。
【0063】
第1制限エリアLA1と第2制限エリアLA2を例に挙げて説明したが、図1に示すように、第3制限エリアLA3についても第3制限エリアLA3に対応付けられた第3検知範囲DA3が設定される。第1制限エリアLA1及び第2制限エリアLA2は、障害物となり得る棚S1~S5が常に周囲に存在している場所である。これに対し、第3制限エリアLA3は、第1制限エリアLA1や第2制限エリアLA2に比べて、障害物が常に周囲に存在している状況が生じにくい場所である。このため、第3検知範囲DA3は、検知範囲DA1,DA2よりも広く設定してもよい。例えば、産業車両10が走行状態の場合の第3検知範囲DA3の長さL3は、産業車両10が走行状態の場合の第1検知範囲DA1の長さL1より長くてもよい。同様に、産業車両10が走行状態の場合の第3検知範囲DA3の幅W3は、産業車両10が走行状態の場合の第1検知範囲DA1の幅W1より広くてもよい。上記したように、検知範囲DAの幅や長さは、場所によって適宜変更することができる。検知範囲DAの幅及び長さは、周囲に棚S1~S5等の構造物が存在するか否か、産業車両10の走行可能な領域の大きさ、人や車両の交通量などの要因によって異なる値を設定することができる。図7に示すように、主制御装置31は、ステップS23の処理を終えると、ステップS25の処理を行う。ステップS23の処理を行うことで、主制御装置31は、検知範囲設定部として機能している。
【0064】
ステップS24において、主制御装置31は、デフォルトの検知範囲DAを設定する。デフォルトの検知範囲DAとは、産業車両10の現在位置が制限エリアLA1,LA2,LA3に該当していない場合に設定される検知範囲である。デフォルトの検知範囲DAは、産業車両10の管理者が任意に設定することができる。制限エリアLA1,LA2,LA3に対応付けられた検知範囲DA1,DA2,DA3と同様に、デフォルトの検知範囲DAは産業車両10の状態によって広さが変動してもよい。主制御装置31は、ステップS24の処理を終えると、ステップS25の処理を行う。
【0065】
ステップS25において、主制御装置31は、検知範囲DAに障害物が存在しているか否かを判定する。主制御装置31は、位置検出装置55から障害物のワールド座標を取得することで、産業車両10の周囲に存在する障害物と、産業車両10との位置関係を把握可能である。主制御装置31は、障害物のワールド座標と、ステップS23あるいはステップS24で設定された検知範囲DAとに基づき、検知範囲DAに障害物が存在しているか否かを判定する。なお、障害物が検知範囲DAの内外に跨がって位置している場合、検知範囲DAに障害物が存在していると判定されるようにしてもよいし、検知範囲DAに障害物が存在していないと判定されるようにしてもよい。
【0066】
図6に示すようにワールド座標系における障害物Oの位置が検出された場合を例に挙げて説明する。図6に示す例では、検知範囲DAに2つの障害物Oが存在している。従って、主制御装置31は検知範囲DAに障害物Oが存在していると判定する。図7に示すように、ステップS25の判定結果が肯定の場合、主制御装置31は、ステップS26の処理を行う。ステップS25の判定結果が否定の場合、主制御装置31は、ステップS27の処理を行う。
【0067】
ステップS26において、主制御装置31は、警報及び車速制限を行う。主制御装置31は、警報装置58を作動させることで、警報を行う。また、主制御装置31は、車速上限値を設定し、車速が車速上限値を上回らないようにすることで、車速制限を行う。車速上限値は、産業車両10の到達し得る最高速度よりも低い値に設定される。車速上限値は、0[km/h]を含む。即ち、車速制限には、産業車両10の走行禁止を含む。
【0068】
警報及び車速制限は、障害物との距離に応じて変更してもよい。例えば、主制御装置31は、障害物との距離が近いほど、警報を強くしてもよい。警報を強くするとは、産業車両10の搭乗者や産業車両10の周囲の人に産業車両10の接近を認識させやすくすることである。警報装置58が音による警報を行うものであれば、障害物との距離が近いほど音を大きくしてもよいし、警報装置58が光の点滅によって警報を行うものであれば、点滅速度を速くしてもよい。主制御装置31は、障害物との距離が近いほど、車速上限値を低く設定してもよい。ステップS25及びステップS26の処理を行うことで、主制御装置31は、制御部として機能している。
【0069】
ステップS27において、主制御装置31は、警報及び車速制限を解除する。詳細にいえば、主制御装置31は、過去の制御周期での処理により警報及び車速制限が行われていれば警報及び車速制限を解除し、警報及び車速制限が行われていなければ、この状態を維持する。検知範囲DAに障害物が存在している間にはステップS25が継続して肯定になることで警報及び車速制限が行われる。検知範囲DAに障害物が存在しなくなると、ステップS25が否定になることで警報及び車速制限が解除される。
【0070】
なお、位置検出装置55による障害物検出処理は、産業車両10が後進している場合や産業車両10が後方に発進する場合にのみ行われてもよい。即ち、障害物検出処理は、産業車両10が前進している場合や産業車両10が前方に発進する場合には行われなくてもよい。産業車両10が後進していることは、ディレクションセンサ36の検出結果や走行用モータ41の回転方向から判断することができる。産業車両10が後方に発進することは、ディレクションセンサ36の検出結果から判断することができる。同様に、警報及び車速制限は、産業車両10が後進している場合や産業車両10が後方に発進する場合にのみ行われてもよい。即ち、警報及び車速制限は、産業車両10が前進している場合や産業車両10が前方に発進する場合には行われなくてもよい。産業車両10の進行方向に関わらず障害物検出処理を行い、警報及び車速制限は産業車両10が後進している場合や産業車両10が後方に発進する場合にのみ行われるようにしてもよい。本実施形態のように、位置検出装置55が産業車両10の後方に存在する障害物を検出する場合、少なくとも、産業車両10の進行方向が後方の場合に警報及び車速制限が行われるようにすればよい。
【0071】
第1実施形態の作用について説明する。
主制御装置31は、産業車両10の現在位置に対応付けられた検知範囲DAを設定する。主制御装置31は、位置検出装置55によって検出された障害物が検知範囲DAに存在している場合には警報及び車速制限を行う。一方で、主制御装置31は、位置検出装置55によって検出された障害物が検知範囲DAに存在していない場合には、検知範囲DA外に障害物が存在していても警報及び車速制限を行わない。検知範囲DAは、警報及び車速制限を行う範囲を制限しているといえる。
【0072】
仮に、検知範囲DAが過剰に広い場合、産業車両10の位置によっては警報及び車速制限が頻繁に行われることになる。例えば、産業車両10の位置に関わらず、第2検知範囲DA2が常に設定されるとすると、産業車両10が第1通路P1,P2を走行している場合には、第2検知範囲DA2に常に棚S1~S3が入り込むおそれがある。第1通路P1,P2を走行している場合に常に警報及び車速制限が行われると、産業車両10の作業性の低下や、第1通路P1,P2で作業を行っている人の作業性の低下を招く。更に、棚S1~S3が第2検知範囲DA2に入り込むことで警報及び車速制限が常に行われると、第1通路P1,P2に進行を阻害する障害物が存在しているか否かに関わらず継続して警報及び車速制限が行われることになる。結果として、第1通路P1,P2に障害物が存在している場合であっても、産業車両10の搭乗者が障害物の存在に気付けないおそれがある。産業車両10は、荷役作業を行う関係上、必然的に棚S1~S5など障害物となり得る構造物に近付くことがある。このため、上記したように検知範囲DAを過剰に広くすると、検知範囲DAに常に構造物が入り込むおそれがあり、警報及び車速制限が頻繁に行われることで作業性が低下するおそれがある。検知範囲DAを過剰に狭くすると、構造物を障害物として検出することによる警報や車速制限を抑制し得る一方で、産業車両10の進行を阻害する障害物が検知範囲DAに入りにくい。このため、警報や車速制限が行われるタイミングが遅くなるおそれがある。
【0073】
本実施形態では、産業車両10の現在位置に応じた検知範囲DAが設定される。この検知範囲DAは、制限エリアLA1,LA2,LA3に存在する棚S1~S5等の構造物が検知範囲DAに常に入り込むことを抑制できるように設定されている。これにより、検知範囲DAに常に障害物が入り込むことを抑制することができる。
【0074】
第1実施形態の効果について説明する。
(1-1)産業車両10の現在位置に応じた検知範囲DAが設定されることで、検知範囲DAに常に障害物が入り込むことを抑制できる。頻繁に警報や車速制限が行われることが抑制されるため、作業性の低下が抑制される。
【0075】
(1-2)主制御装置31は、測位装置37によって導出された産業車両10の現在位置が制限エリアLA1,LA2,LA3に該当するか否かを判定している。主制御装置31は、産業車両10の現在位置が制限エリアLA1,LA2,LA3に該当する場合には、制限エリアLA1,LA2,LA3に対応付けられた検知範囲DA1,DA2,DA3を設定している。区域A1にマーカーを設けて、このマーカーを読み取ることで検知範囲DAを設定することも考えられる。この場合、区域A1にマーカーを設けることによる手間が生じる。また、産業車両10にマーカーを読み取る装置を設けて、この装置がマーカーを読み取ることができる位置にマーカーを配置する必要があり、配置上の制約が生じる。これに対し、測位装置37は、マーカーを読み取ることなく、産業車両10の現在位置を導出することができる。従って、区域A1にマーカーを設ける手間や、配置上の制約が生じにくい。無線信号の受信態様を利用する測位装置37を用いる場合、区域A1に固定機WTを設ける必要はあるものの、無線信号を測位装置37に受信させることができれば固定機WTの配置位置は自由である。このため、固定機WTはマーカーに比べて配置上の制約が少ない。また、固定機WTは、測位装置37で多点測位をできる数だけ配置すればよく、マーカーに比べて配置する手間も少ない。
【0076】
(1-3)測位装置37は、固定機WTから送信された無線信号の受信態様によって産業車両10の現在位置を導出する。従って、屋内であっても産業車両10の現在位置を導出することができる。GNSS:Global Navigation Satellite Systemを用いて測位を行うことができない屋内であっても産業車両10の現在位置を導出できるため、屋内で使用される産業車両10であっても、現在位置に応じた検知範囲DAを設定することができる。
【0077】
(1-4)主制御装置31は、通路幅が広い位置ほど検知範囲DAが広くなるように検知範囲DAを設定する。検知範囲DAを一定にした場合、通路幅が広いほど検知範囲DAに含まれない部分、即ち、死角が生じ易い。通路幅が広いほど検知範囲DAを広くすることで、死角が生じることを抑制できる。
【0078】
(1-5)産業車両10の進行方向が棚S1~S5の延びる方向であれば検知範囲DAの幅、産業車両10の進行方向が棚S1~S5の延びる方向に直交する方向であれば検知範囲DAの長さがそれぞれ変更される。産業車両10が棚S1~S5の延びる方向に進行している場合、棚S1~S5は検知範囲DAの幅方向に位置しているため、検知範囲DAの幅を調整して、検知範囲DAに棚S1~S5が入り込むことを抑制しつつ通路P1~P4に存在する障害物を検出できるようにすることが好ましい。産業車両10の進行方向が棚S1~S5の延びる方向に直交する方向の場合、棚S1~S5は検知範囲DAの長さ方向に位置しているため、検知範囲DAの長さを調整して、検知範囲DAに棚S1~S5が入り込むことを抑制しつつ通路P1~P4に存在する障害物を検出できるようにすることが好ましい。上記したように検知範囲DAを変更することで、産業車両10の状況に応じた適切な検知範囲DAが設定される。
【0079】
(第2実施形態)
以下、産業車両の第2実施形態について説明する。第1実施形態と同様な部分については説明を省略し、第1実施形態との相違点について説明する。
【0080】
第1実施形態では、測位装置37を用いて産業車両10の現在位置を導出していたのに対し、第2実施形態では、主制御装置31による自己位置推定によって産業車両10の現在位置を導出する。第2実施形態の産業車両10は、測位装置37を備えていなくてもよい。
【0081】
主制御装置31は、自己位置及び姿勢を推定する自己位置推定を行う。自己位置とは、産業車両10の現在位置である。姿勢とは、地図座標系での産業車両10の向きである。詳細にいえば、姿勢とは、地図座標系のX軸あるいはY軸に対する産業車両10の傾きである。本実施形態において、自己位置推定は、少なくともステレオカメラ52を用いたランドマークのマッチングにより行われる。主制御装置31は、位置検出装置55により検出された障害物の地図座標と、環境地図のランドマークとのマッチングを行うことで、自己位置を推定する。第2実施形態では、環境地図として、区域A1に存在する構造物の地図座標をランドマークとして記憶する必要がある。ランドマークとして用いる構造物としては、時間経過によって位置が変動しない、あるいは、位置が変動しにくいものが用いられる。図1に挙げた区域A1であれば、例えば、棚S1~S5や柱Piの地図座標をランドマークとして用いることができる。また、ランドマークとしては、壁の地図座標を用いてもよい。環境地図は、SLAM:Simultaneous Localization and Mappingによるマッピングにより作成されてもよいし、区域A1の物理的構造が予めわかっていれば事前に作成されてもよい。
【0082】
自己位置推定は、ランドマークを用いた手法に加えて、走行用モータ41の回転数を用いて自己移動量を推定するオドメトリを組み合わせて行われてもよい。走行用モータ41の回転数は、回転数センサ42の検出結果を用いることができる。回転数センサ42の検出結果は、バス60を介して走行制御装置43から取得することができる。
【0083】
主制御装置31は、自己位置推定により産業車両10の現在位置を導出し、産業車両10の現在位置に対応付けられた検知範囲DAを設定する。検知範囲DAの設定は、第1実施形態と同様の手法で行うことができる。第2実施形態では、主制御装置31が位置導出部として機能している。
【0084】
また、第2実施形態では、産業車両10の姿勢を推定することができるため、産業車両10の現在位置、産業車両10の状況に加えて、産業車両10の姿勢に応じた検知範囲DAを設定してもよい。例えば、産業車両10が向く方向に存在する障害物の存在に応じて、検知範囲DAを変更することができる。産業車両10の向く方向に棚S1~S5などの既知の構造物が存在していれば、当該構造物が検知範囲DAに入り込まないように検知範囲DAを設定してもよい。また、産業車両10が棚S1~S5の延びる方向を向いていれば検知範囲DAの幅が変更され、産業車両10の向きが棚S1~S5の延びる方向に直交する方向であれば検知範囲DAの長さが変更されるようにしてもよい。
【0085】
第2実施形態の効果について説明する。
(2-1)主制御装置31は、自己位置推定によって産業車両10の現在位置を導出している。障害物を検出するために設けられたステレオカメラ52を用いて自己位置推定を行うことができる。従って、測位装置37を省略することができる。
【0086】
(2-2)自己位置推定を行うことで、産業車両10の姿勢を導出することができる。従って、産業車両10の姿勢に応じた検知範囲DAを設定することができる。
(第3実施形態)
以下、産業車両の第3実施形態について説明する。第1実施形態と同様な部分については説明を省略し、第1実施形態との相違点について説明する。
【0087】
図13に示すように、区域A1にはマーカーM1,M2,M3が設けられている。マーカーM1,M2,M3としては、2次元的に配列された複数の矩形又は複数のドットを含む識別画像であるARマーカーやQRコード(登録商標)、バーコードを含む1次元コード、カラーコードを含む多次元コード等、種々のマーカーを用いることができる。マーカーM1,M2,M3は、第1制限エリアLA1、第2制限エリアLA2、及び第3制限エリアLA3のそれぞれに設けられている。第1制限エリアLA1に設けられたマーカーM1を第1マーカーM1、第2制限エリアLA2に設けられたマーカーM2を第2マーカーM2、第3制限エリアLA3に設けられたマーカーM3を第3マーカーM3とする。第1マーカーM1、第2マーカーM2及び第3マーカーM3はそれぞれ形状や色彩などの模様が異なる。言い換えれば、第1マーカーM1、第2マーカーM2及び第3マーカーM3のそれぞれで紐付けられた情報が異なる。
【0088】
産業車両10は、マーカーM1,M2,M3を読み取るための撮像装置を備える。撮像装置としては、ステレオカメラ52を兼用してもよいし、ステレオカメラ52とは別にマーカーM1,M2,M3を読み取るための撮像装置を設けてもよい。
【0089】
マーカーM1,M2,M3は、撮像装置が読み取り可能な位置に配置されている。撮像装置の画角は予め定まっているため、この画角を考慮して、マーカーM1,M2,M3の位置は定められている。産業車両10が第1制限エリアLA1に位置している場合には第1マーカーM1、産業車両10が第2制限エリアLA2に位置している場合には第2マーカーM2、産業車両10が第3制限エリアLA3に位置している場合には第3マーカーM3がそれぞれ撮像されるようにマーカーM1,M2,M3の位置は定められている。マーカーM1,M2,M3は、棚S1~S5、壁、柱Pi、床など、各制限エリアLA1,LA2,LA3に位置している構造物に取り付けられる。
【0090】
主制御装置31は、撮像装置によって撮像されたマーカーM1,M2,M3から、画像認識機能によって情報を読み取る。マーカーM1,M2,M3に紐付けられた情報としては、位置情報、あるいは、検知範囲DAを示す情報を挙げることができる。第1マーカーM1を例に挙げて説明すると、第1マーカーM1に位置情報が紐付けられる場合、位置情報としては、第1制限エリアLA1であることを示す情報が紐付けられる。主制御装置31は、第1マーカーM1に紐付けられた位置情報から、産業車両10の現在位置が第1制限エリアLA1であることを認識し、第1検知範囲DA1を設定する。第1マーカーM1に検知範囲DAを示す情報が紐付けられる場合、第1検知範囲DA1を示す情報が第1マーカーM1に紐付けられる。第1検知範囲DA1を示す情報としては、第1検知範囲DA1を規定するワールド座標であってもよい。主制御装置31は、第1マーカーM1に紐付けられた検知範囲DAを示す情報から、第1検知範囲DA1を設定する。
【0091】
上記したように、第1マーカーM1は、産業車両10が第1制限エリアLA1に位置している場合に撮像装置に撮像されるように配置されているため、撮像装置により第1マーカーM1が撮像されている場合、産業車両10は第1制限エリアLA1に位置しているといえる。即ち、産業車両10の現在位置を導出しなくても、第1制限エリアLA1に対応付けられた第1検知範囲DA1が設定される。第1マーカーM1の読み取りにより第1検知範囲DA1を設定する場合には、環境地図を記憶しておく必要がないといえる。また、産業車両10は測位装置37を備えていなくてもよい。更に、第1マーカーM1に検知範囲DAを示す情報が紐付けられている場合には、主制御装置31の記憶部33や補助記憶装置34に制限エリアLA1,LA2,LA3と検知範囲DA1,DA2,DA3との対応関係を記憶しておく必要がない。一例として、第1マーカーM1を挙げて説明したが、第2マーカーM2及び第3マーカーM3についても同様のことがいえる。
【0092】
なお、マーカーM1,M2,M3の配置位置によっては、制限エリアLA1,LA2,LA3外からであっても撮像装置によるマーカーM1,M2,M3の撮像が行われるおそれがある。この場合、産業車両10の現在位置が制限エリアLA1,LA2,LA3外にも関わらず、マーカーM1,M2,M3が配置された制限エリアLA1,LA2,LA3に対応付けられた検知範囲DA1,DA2,DA3が設定されるおそれがある。主制御装置31は、撮像装置によって撮像されるマーカーM1,M2,M3の大きさ、即ち、マーカーM1,M2,M3の画素数が予め定められた閾値未満の場合には、マーカーM1,M2,M3に紐付けられた情報を読み取らないようにしてもよい。これにより、産業車両10の現在位置が制限エリアLA1,LA2,LA3外にも関わらず、マーカーM1,M2,M3が配置された制限エリアLA1,LA2,LA3に対応付けられた検知範囲DA1,DA2,DA3が設定されることを抑制できる。
【0093】
第3実施形態の効果について説明する。
(3-1)主制御装置31は、画像認識によりマーカーM1,M2,M3に紐付けられた情報を読み取ることで、検知範囲DAの設定を行う。マーカーM1,M2,M3を用いて検知範囲DAの設定を行うことで、産業車両10の現在位置を導出しなくても、産業車両10の現在位置に対応付けられた検知範囲DAを設定することができる。
【0094】
各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。各実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
○各実施形態において、制限エリアLA1,LA2,LA3に対応付けられた検知範囲DA1,DA2,DA3は、産業車両10の管理者が任意に設定することができる。例えば、棚S1~S5などの構造物が少ない一方で車両や人を含む移動体が頻繁に通行する場所では検知範囲DAを広くしてもよい。
【0095】
○各実施形態において、産業車両10が走行状態の場合における第1検知範囲DA1の長さL1と、第2検知範囲DA2の長さL2とは異なっていてもよい。同様に、産業車両10が発進状態の場合における第1検知範囲DA1の幅W1と第2検知範囲DA2の幅W2とは異なっていてもよい。
【0096】
○各実施形態において、産業車両10の状態には、荷役作業状態が含まれていてもよい。主制御装置31は、産業車両10が荷役作業状態の場合、走行状態や発進状態とは異なる検知範囲DAを設定してもよい。例えば、主制御装置31は、産業車両10が荷役作業状態の場合、産業車両10が走行状態の場合に比べて、検知範囲DAの長さを長くしてもよい。
【0097】
○各実施形態において、検知範囲DAは、産業車両10の現在位置に対応付けられたものであればよく、産業車両10の状態によって検知範囲DAの広さは変わらなくてもよい。
【0098】
○各実施形態において、検知範囲DAはどのような形状であってもよい。例えば、検知範囲DAは、産業車両10から円状や扇状に広がる範囲であってもよい。
○各実施形態において、主制御装置31は、産業車両10の速度が速いほど検知範囲DAの長さを長くしてもよい。
【0099】
○各実施形態において、検知範囲DAの設定は位置検出装置55で行われてもよい。この場合、位置検出装置55は、検知範囲DA外に存在する障害物は障害物ではないとみなしてもよい。即ち、位置検出装置55は、検知範囲DA外に障害物が存在している場合であっても、検知範囲DA外の障害物のワールド座標を主制御装置31に送信しなくてもよい。
【0100】
○第1実施形態の測位装置37は、無線信号の入射角を利用して産業車両10の現在位置を導出するものであってもよい。測位装置37は、固定機WTから送信された無線信号の入射角を導出する。測位装置37は、複数の無線信号の入射角から、産業車両10の現在位置を導出する。無線信号の受信態様には、無線信号の入射角を含むといえる。この場合、無線信号としては、WI-FI規格に準拠した電波や音波などを用いることができる。このように、無線信号の入射角を利用した測位方式は、AOA:Angle of Arrival方式といわれる。なお、測位装置37は、電波到達時間差方式等、無線信号を利用したものであれば、上記したもの以外の方式のものであってもよい。
【0101】
○第1実施形態において、産業車両10の現在位置は、区域A1に設けられた測位装置によって導出されてもよい。この場合、産業車両10は、区域A1に設けられた固定機WTに無線信号を送信する無線送信部を備える。区域A1に設けられた測位装置は、固定機WTでの無線信号の受信態様から産業車両10の現在位置を導出する。言い換えれば、無線信号の送信と受信の関係が固定機WTと産業車両10で逆になる。第1実施形態や上記変形例で記載した方式と同様の方式で区域A1に設けられた測位装置は産業車両10の現在位置を導出することができる。この場合、区域A1に設けられた測位装置は、産業車両10の現在位置を示す情報を産業車両10に送信する。これにより、主制御装置31は、産業車両10の現在位置を認識することができる。
【0102】
○第1実施形態において、測位装置37は、GNSSを用いて測位を行うものであってもよい。GNSSは、GPS、GLONASS、IRNSS、及びQZSSを含む。測位装置37は、GNSS衛星から送信される衛星信号を受信して、受信した衛星信号から産業車両10の現在位置を導出する。この場合、産業車両10は、屋外で使用される。また、測位装置37として、第1実施形態の測位装置37と、GNSSを用いて測位を行うものを併用することで、屋内であっても屋外であっても産業車両10の現在位置を導出できるようにしてもよい。
【0103】
○第2実施形態において、自己位置推定は、加速度センサやジャイロセンサを用いたデッドレコニングを用いて行われてもよいし、上記したGNSSを用いて行われてもよい。また、これらの自己位置推定と、第2実施形態に記載した自己位置推定とを組み合わせて自己位置推定は行われてもよい。
【0104】
○第1実施形態において、測位装置37により産業車両10の現在位置を導出するのに代えて、路面の色彩から検知範囲DAを設定してもよい。産業車両10が用いられる環境には複数の路面色が存在している場合がある。例えば、工場では、人の通行する歩行帯や危険地帯では、他の位置と路面色を異ならせることで、その位置がどのような場所であるかを路面色によって表現している場合がある。歩行帯は、歩行帯であることを認識させるために青色で塗装されていたり、危険地帯は、危険地帯であることを認識させるために黄色と黒とを交互に配置したゼブラゾーンとなっている場合がある。このように、路面色が位置に対応付けられている環境では、路面色に対応付けて検知範囲DAを設定することで、産業車両10の現在位置に応じた検知範囲DAが設定されるといえる。例えば、歩行帯は、人が存在していることが多いため、人をいち早く検出できるように検知範囲DAの大きさを設定してもよい。
【0105】
路面の色彩を検出するため、産業車両10は、路面を撮像するように配置された撮像装置を備える。撮像装置としては、例えば、CCDイメージセンサや、CMOSイメージセンサを用いたものが挙げられる。主制御装置31の記憶部33あるいは補助記憶装置34には、色彩と検知範囲DAとを対応付けた対応関係が記憶される。主制御装置31は、撮像装置によって撮像された画像から、路面の色彩を検出する。主制御装置31は、路面の色彩に対応付けられた検知範囲DAを設定する。
【0106】
○各実施形態において、位置検出装置55は、ステップS14の処理を行った後に、検出した障害物が人か人以外の障害物かを判定する処理を行ってもよい。障害物が人か否かの判定は、種々の方法で行うことができる。例えば、位置検出装置55は、ステレオカメラ52の2つのカメラ53,54のうちいずれかで撮像された画像に対して、人検出処理を行うことで、障害物が人か否かの判定を行う。位置検出装置55は、ステップS14で得られたワールド座標系における障害物の座標をカメラ座標に変換し、当該カメラ座標をカメラ53,54によって撮像された画像の座標に変換する。例えば、位置検出装置55は、ワールド座標系における障害物の座標を第1画像の座標に変換する。位置検出装置55は、第1画像における障害物の座標に対して、人検出処理を行う。人検出処理は、例えば、特徴量抽出と、事前に機械学習を行った人判定器と、を用いて行われる。特徴量抽出としては、例えば、HOG:Histogram of Oriented Gradients特徴量、Haar-Like特徴量などの画像における局所領域の特徴量を抽出する手法が挙げられる。人判定器としては、例えば、教師有り学習モデルによる機械学習を行ったものが用いられる。教師有り学習モデルとしては、例えば、サポートベクタマシン、ニューラルネットワーク、ナイーブベイズ、ディープラーニング、決定木等を採用することが可能である。機械学習に用いる教師データとしては、画像から抽出された人の形状要素や、外観要素などの画像固有成分が用いられる。形状要素として、例えば、人の大きさや輪郭などが挙げられる。外観要素としては、例えば、光源情報、テクスチャ情報、カメラ情報などが挙げられる。光源情報には、反射率や、陰影等に関する情報が含まれる。テクスチャ情報には、カラー情報等が含まれる。カメラ情報には、画質、解像度、画角等に関する情報が含まれる。
【0107】
このように、障害物が人か否かを判定する場合、障害物が人か否かに応じて主制御装置31で行われる処理を変更してもよい。主制御装置31は、検知範囲DAに存在する障害物が人の場合には、障害物が人ではない場合に比べて警報を強くしてもよい。主制御装置31は、検知範囲DAに存在する障害物が人の場合には、障害物が人ではない場合に比べて車速上限値を低く設定してもよい。
【0108】
○各実施形態において、主制御装置31は、検知範囲DAに障害物が存在している場合に警報及び車速制限のいずれかを行ってもよい。主制御装置31が警報を行わない場合、産業車両10は警報装置58を備えていなくてもよい。
【0109】
○各実施形態において、障害物検出装置51は、産業車両10の進行方向のうち前進方向に存在する障害物の位置を検出するものであってもよい。この場合、ステレオカメラ52は、産業車両10の前方を向いて配置される。障害物検出装置51により産業車両10の前進方向に存在する障害物の位置を検出する場合、検知範囲DAは産業車両10から前方に拡がる。また、産業車両10の進行方向が前進方向の場合に、警報及び車速制限が行われることになる。
【0110】
障害物検出装置51としては、産業車両10の進行方向のうち後進方向及び前進方向の両方に存在する障害物の位置を検出できるものであってもよい。この場合、1つの障害物検出装置51により産業車両10の進行方向のうち後進方向及び前進方向の両方に存在する障害物を検出可能にしてもよいし、前進方向用の障害物検出装置51と、後進方向用の障害物検出装置51を設けてもよい。産業車両10の進行方向のうち後進方向及び前進方向の両方に存在する障害物の位置を検出する場合、産業車両10の進行方向が前進方向の場合には、前進方向に存在する障害物によって警報及び車速制限が行われることになる。産業車両10の進行方向が後進方向の場合には、後進方向に存在する障害物によって警報及び車速制限が行われることになる。
【0111】
○各実施形態において、障害物検出装置51は、センサとしてステレオカメラ52に代えて、ToF:Time of Flightカメラ、LIDAR:Laser Imaging Detection and Ranging、ミリ波レーダー等を用いてもよい。TOFカメラは、カメラと、光を照射する光源と、を備え、光源から照射された光の反射光を受光するまでの時間からカメラによって撮像された画像の画素毎に奥行き方向の距離を導出するものである。LIDARは、照射角度を変更しながらレーザーを照射し、レーザーが当たった部分から反射された反射光を受光することで周辺環境を認識可能な距離計である。ミリ波レーダーとは、所定の周波数帯域の電波を周囲に照射することで周辺環境を認識可能なものである。ステレオカメラ52、ToFカメラ、LIDAR、及びミリ波レーダーは、ワールド座標系における3次元座標を導出することができるセンサである。障害物検出装置51としては、3次元座標を計測することができるセンサを備えることが好ましい。なお、障害物検出装置51は、ステレオカメラ52とLIDAR等、複数のセンサを組み合わせたものを備えていてもよい。
【0112】
障害物検出装置51は、ステレオカメラ52に代えて、水平方向のうち一方向をX軸、X軸に直交する方向の軸をY軸とする2軸直交座標系の座標を導出することができるセンサを備えていてもよい。即ち、センサとしては、障害物の水平方向の座標である2次元座標を導出することができるものを用いてもよい。この種のセンサとしては、例えば、水平方向への照射角度を変更しながらレーザーの照射を行う2次元のLIDAR等を用いることができる。
【0113】
また、センサは、上記した各センサと、単眼カメラとの組み合わせであってもよい。この場合、センサの検出結果は障害物のワールド座標を検出することに用い、単眼カメラによって撮像された画像はセンサにより検出された障害物が人か否かを判定するのに用いてもよい。
【0114】
○各実施形態において、ステレオカメラ52は、3つ以上のカメラを備えていてもよい。
○各実施形態において、ワールド座標系は、直交座標系に限られず、極座標系としてもよい。
【0115】
○各実施形態において、カメラ座標からワールド座標への変換はテーブルデータによって行われてもよい。テーブルデータは、Y座標YcとZ座標Zcの組み合わせにY座標Ywを対応させたテーブルデータと、Y座標YcとZ座標Zcとの組み合わせにZ座標Zwを対応させたテーブルデータである。これらのテーブルデータを位置検出装置55の記憶部57に記憶しておくことで、カメラ座標系におけるY座標YcとZ座標Zcから、ワールド座標系におけるY座標Yw及びZ座標Zwを求めることができる。なお、実施形態では、カメラ座標系におけるX座標Xcと、ワールド座標系におけるX座標Xwとは一致するため、X座標Xwを求めるためのテーブルデータは記憶されない。
【0116】
○各実施形態において、警報装置58は、障害物検出装置51以外が備えていてもよい。
○各実施形態において、警報装置58は、主制御装置31が直接作動させるようにしてもよい。
【0117】
○各実施形態において、産業車両10は、駆動装置であるエンジンの駆動によって走行するものでもよい。この場合、走行制御装置43は、エンジンへの燃料噴射量などを制御する装置となる。
【0118】
○各実施形態において産業車両10は、自動で動作するものであってもよいし、自動での動作と手動での動作とを切り替えられるものでもよい。
○各実施形態において、産業車両10は、産業車両10に搭乗していない操作者により遠隔操作されるものであってもよい。
【0119】
○各実施形態において、産業車両10は、主制御装置31の機能と位置検出装置55の機能とを備える1つの装置を備えていてもよい。即ち、主制御装置31の機能と位置検出装置55の機能を1つの装置に集約してもよい。
【0120】
○各実施形態において、障害物位置検出部は、複数の装置によって構成されていてもよい。
○各実施形態において、主制御装置31、走行制御装置43及び障害物検出装置51は、無線機によって互いの情報を取得可能に構成されていてもよい。
【0121】
○各実施形態において、補助記憶装置34に記憶される情報は、主制御装置31の記憶部33や位置検出装置55の記憶部57等、補助記憶装置34以外の記憶媒体に記憶されていてもよい。この場合、産業車両10は補助記憶装置34を備えていなくてもよい。
【0122】
○各実施形態において、産業車両10としては、荷等の搬送に用いられる牽引車、ピッキング作業に用いられるオーダーピッカー、トーイングトラクタ等どのようなものであってもよい。
【符号の説明】
【0123】
A1…区域、DA…検知範囲、LA1,LA2,LA3…制限エリア、WT…固定機、10…産業車両、31…制御部、検知範囲設定部、位置導出部として機能する主制御装置、33…記憶装置としての記憶部、34…記憶装置としての補助記憶装置、37…位置導出部としての測位装置、52…センサとしてのステレオカメラ、55…障害物位置検出部としての位置検出装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13