(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022123737
(43)【公開日】2022-08-24
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
F02N 11/10 20060101AFI20220817BHJP
F02N 11/08 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
F02N11/10 D
F02N11/08 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021021242
(22)【出願日】2021-02-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】兼松 崇
(72)【発明者】
【氏名】石井 大資
(57)【要約】
【課題】エンジンストール後のエンジンの始動を速やかに容易に行うことができる車両の制御装置を提供すること。
【解決手段】制御部は、シフト操作部のシフト位置が走行位置にある状態でエンジンのエンジンストールが発生した場合であって、ブレーキ操作がされた状態で車速が所定速度以下に低下した場合(ステップS1でYES)は、シフト操作部における始動位置への変更操作の有無を判別する(ステップS2)。そして、制御部は、始動位置への変更操作が行われなかった場合は、自動変速機の実変速段を始動位置に対応する変速段に変更する(ステップS5)。そして、制御部は、実変速段の変更後にブレーキ操作が解除された場合(ステップS6でYES)は、エンジンを始動し(ステップS7)、エンジンの始動後に実変速段を走行位置に対応する変速段に変更する(ステップS8)。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンおよび自動変速機と、
車両の走行が可能な走行位置と、前記エンジンの始動が可能な始動位置と、を含むシフト位置への変更操作を行うシフト操作部と、
前記エンジンおよび前記自動変速機を制御する制御部と、を搭載する車両の制御装置であって、
前記制御部は、
前記シフト位置が前記走行位置にある状態で前記エンジンのエンジンストールが発生した場合であって、ブレーキ操作がされた状態で車速が所定速度以下に低下した場合は、前記シフト操作部における前記始動位置への変更操作の有無を判別し、
前記始動位置への変更操作が行われなかった場合は、前記自動変速機の実変速段を前記始動位置に対応する変速段に変更し、
前記実変速段の変更後に前記ブレーキ操作が解除された場合は、前記エンジンを始動し、前記エンジンの始動後に前記実変速段を前記走行位置に対応する変速段に変更することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記始動位置への変更操作が行われなかった場合は、前記エンジンの始動操作がされた場合であっても前記エンジンを始動しないことを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記始動位置への変更操作が行われなかった場合であって、前記ブレーキ操作が複数回解除された場合は、前記エンジンを始動させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記始動位置への変更操作の有無の判断を、前記ブレーキ操作がされた状態で車速が所定速度以下に低下してから所定時間が経過するまでの期間に行うことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドライバの運転操作を支援する装置として、特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載のものは、運転席のシートを振動させることにより、シフトポジションに対応する刺激パターンの刺激をドライバに与えるようになっている。これにより、特許文献1に記載のものは、振動を通じてドライバにシフトポジションを報知することができ、シフト操作の誤操作をドライバに認識させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、エンジンを始動させる際は、ドライバは、シフト位置をPレンジ(駐車レンジ)またはNレンジ(ニュートラルレンジ)にセットし、ブレーキペダルを踏んだ状態でイグニッションキー(またはスタートボタン)を操作する始動手順を実行する必要がある。これにより、エンジンの始動時の車両の飛び出しが防止される。このようなエンジンの始動手順は、車両の走行中の急制動に起因してエンジンストールが発生した場合も同様であり、ドライバは、PレンジかNレンジにシフト位置を切り替える必要がある。したがって、走行中の急制動に起因してエンジンストールが発生した場合、ドライバが心理的に動揺している場合であっても、エンジンの始動が速やかに容易に行われることが望ましい。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のものは、シフト操作の誤操作をドライバに認識させることはできるが、エンジンストール後のエンジンの始動を速やかに容易に行うことができないという問題があった。
【0006】
本発明は、上述したような事情に鑑みてなされたもので、エンジンストール後のエンジンの始動を速やかに容易に行うことができる車両の制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的達成のため、エンジンおよび自動変速機と、車両の走行が可能な走行位置と、前記エンジンの始動が可能な始動位置と、を含むシフト位置への変更操作を行うシフト操作部と、前記エンジンおよび前記自動変速機を制御する制御部と、を搭載する車両の制御装置であって、前記制御部は、前記シフト位置が前記走行位置にある状態で前記エンジンのエンジンストールが発生した場合であって、ブレーキ操作がされた状態で車速が所定速度以下に低下した場合は、前記シフト操作部における前記始動位置への変更操作の有無を判別し、前記始動位置への変更操作が行われなかった場合は、前記自動変速機の実変速段を前記始動位置に対応する変速段に変更し、前記実変速段の変更後に前記ブレーキ操作が解除された場合は、前記エンジンを始動し、前記エンジンの始動後に前記実変速段を前記走行位置に対応する変速段に変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、エンジンストール後のエンジンの始動を速やかに容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係る車両の制御装置を搭載した車両の構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係る車両の制御装置によって実行されるエンジン始動補助動作の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施の形態に係る車両の制御装置は、エンジンおよび自動変速機と、車両の走行が可能な走行位置と、エンジンの始動が可能な始動位置と、を含むシフト位置への変更操作を行うシフト操作部と、エンジンおよび自動変速機を制御する制御部と、を搭載する車両の制御装置であって、制御部は、シフト位置が走行位置にある状態でエンジンのエンジンストールが発生した場合であって、ブレーキ操作がされた状態で車速が所定速度以下に低下した場合は、シフト操作部における始動位置への変更操作の有無を判別し、始動位置への変更操作が行われなかった場合は、自動変速機の実変速段を始動位置に対応する変速段に変更し、実変速段の変更後にブレーキ操作が解除された場合は、エンジンを始動し、エンジンの始動後に実変速段を走行位置に対応する変速段に変更することを特徴とする。これにより、本発明の一実施の形態に係る車両の制御装置は、エンジンストール後のエンジンの始動を速やかに容易に行うことができる。
【実施例0011】
以下、
図1、
図2を参照して、本発明の一実施例について説明する。
図1に示すように、本発明の一実施例に係る車両の制御装置を搭載した車両10は、エンジン1、自動変速機4、アクセルペダルセンサ7、ブレーキペダルセンサ8、車速センサ9、駆動輪11、制御部6を含んで構成されている。
【0012】
エンジン1は、吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を行うとともに、圧縮行程及び膨張行程の間に点火を行い車両10の駆動力を発生させる4サイクルのガソリンエンジンによって構成されている。なお、エンジン1は、ディーゼルエンジンで構成されてもよい。
【0013】
自動変速機4は、変速機構2と、クラッチ3と、アクチュエータ12とを備えている。変速機構2は、手動変速機に一般的に用いられる平行軸歯車式の変速機構として構成されており、常時噛み合い式の複数の変速ギヤを有する。
【0014】
クラッチ3は、乾式単板クラッチとして構成されており、エンジン1のクランクシャフト1Aに連結されたフライホール3Aと、変速機構2の入力軸2Aに連結されたクラッチディスク3Bとを有する。
【0015】
クラッチ3は、クラッチディスク3Bとフライホール3Aとが締結(接続)状態に切換えられた場合にエンジン1の動力を変速機構2に伝達し、開放状態に切換えられた場合にエンジン1から変速機構2への動力の伝達を遮断する。
【0016】
アクチュエータ12は、電動アクチュエータまたは電動油圧アクチュエータとして構成されており、自動変速機4の変速操作を行うように駆動する。アクチュエータ12が行う変速操作には、クラッチ3を締結または開放するクラッチ断続操作と、変速機構2の変速段(ギヤ段)を切換える変速段切換操作とがある。アクチュエータ12は、制御部6に電気的に接続されており、制御部6からの制御信号によって制御される。このように、自動変速機4は、手動変速機の変速操作を自動化したAMT(Automated Manual Transmission)により構成されている。
【0017】
アクチュエータ12は図示しない変速アクチュエータを備えており、この変速アクチュエータにより変速段切換操作を行う。また、アクチュエータ12は図示しないクラッチアクチュエータを備えており、このクラッチアクチュエータによりクラッチ3を締結または開放する。詳しくは、クラッチアクチュエータは、自動変速機4の図示しないレリーズロッドを操作することで、変速段切換操作の前にクラッチ3を開放し、変速段切換操作の後にクラッチ3を締結する。
【0018】
このように構成された車両10において、エンジン1から出力された回転は、自動変速機4で成立している変速段に応じた変速比で変速され、図示しないディファレンシャル装置と、左右のドライブシャフト11Aとを介して左右の駆動輪11に伝達される。
【0019】
アクセルペダルセンサ7は、アクセルペダル7Aに設けられており、アクセルペダル7Aの踏み込み量を検出する。ブレーキペダルセンサ8は、ブレーキペダル8Aに設けられており、ブレーキペダル8Aの踏み込み量を検出する。
【0020】
車速センサ9は、ドライブシャフト11Aに設けられており、このドライブシャフト11Aの回転速度に基づく車速を検出する。
【0021】
アクセルペダルセンサ7、ブレーキペダルセンサ8および車速センサ9は、制御部6に電気的に接続されており、検出信号を制御部6に出力する。
【0022】
本実施例では、車両10は、シフト位置の変更操作を行うシフト操作部20を備えている。シフト操作部20には、駐車位置であるPレンジと、後進位置であるRレンジと、ニュートラル位置であるNレンジと、前進位置であるDレンジとが設けられている。ドライバがシフト位置の変更操作を行うと、変更後のシフト位置に対応する変速段に、自動変速機4の実際の変速段(以下、実変速段という)が変更される。なお、シフト操作部20は、Dレンジに加えて、前進の変速段を低速段に制限するLレンジを有していてもよい。シフト操作部20は、シフト位置を検出し、検出信号を制御部6に出力する。
【0023】
本実施例におけるDレンジおよびRレンジは、車両の走行が可能なシフト位置であり、本発明における走行位置を構成する。また、本発明におけるPレンジおよびNレンジは、エンジン1の始動が可能なシフト位置であり、本発明における始動位置を構成する。
【0024】
車両10は、エンジン1の始動操作を行う始動操作部21を備えている。始動操作部21は、例えばイグニッションキーまたはスタートボタンであり、ドライバによる始動操作を検出し、検出信号を制御部6に出力する。
【0025】
制御部6は、所定の自動停止条件の成立時にエンジン1を停止し、所定の始動条件の成立時にエンジン1を始動するアイドルストップ制御を実行する。自動停止条件は、例えば、車速が閾値以下であること、アクセル操作が行われていないこと、ブレーキ操作が行われていること等の全ての条件を満たすことである。始動条件は、ブレーキ操作が解除されたことを含んでいる。
【0026】
制御部6は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、フラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されており、制御対象を電気的に制御する。すなわち、制御部6は、ECU(Electronic Control Unit)から構成されている。
【0027】
制御部6のROMには、各種制御定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットを制御部6として機能させるためのプログラムが記憶されている。すなわち、制御部6において、CPUがROMに記憶されたプログラムを実行することにより、当該コンピュータユニットは、制御部6として機能する。
【0028】
制御部6の入力ポートには、上述したアクセルペダルセンサ7、ブレーキペダルセンサ8および車速センサ9等の各種センサ類が接続されている。
【0029】
制御部6の出力ポートには、エンジン1と、自動変速機4のアクチュエータ12とが接続されている。制御部6は、各種センサ類の検出情報に基づいてエンジン1と自動変速機4を制御する。
【0030】
ここで、例えば、自動変速機がDレンジに設定された状態で車両10が走行しているときに、ドライバが衝突回避等のために急制動を行ったことによりエンジン回転数が急低下してエンジンストールが発生する場合がある。このような状況でエンジンストールが発生した場合、ドライバは、エンジン1を始動するために、シフト位置を始動位置であるPレンジまたはNレンジに変更し、かつブレーキペダル8Aを踏んだ状態で始動操作部21を操作する必要がある。しかし、ドライバは、衝突回避等のために急制動を行った直後の動揺した心理状態であり、エンジンストールが発生していることを認識できない場合もある。また、エンジンストールを認識できた場合であってもエンジン1の始動手順を速やかに実行できない場合も考えられる。したがって、エンジンストールが発生したときにエンジン1の始動を速やかに容易にできることが望ましい。
【0031】
そこで、本実施例において、制御部6は、シフト操作部20のシフト位置が走行位置にある状態でエンジン1のエンジンストールが発生した場合であって、ブレーキ操作がされた状態で車速が所定速度以下に低下した場合は、シフト操作部20における始動位置への変更操作の有無を判別する。なお、アイドルストップ制御によるエンジン1の停止は、エンジンストールには含まれない。
【0032】
そして、制御部6は、始動位置への変更操作が行われなかった場合は、アクチュエータ12を駆動して自動変速機4の実変速段を始動位置に対応する変速段に変更する。つまり、ドライバが心理的に動揺している等により始動位置への変更操作をしなかった場合は、エンジン1の始動手順のうち、始動位置であるPレンジまたはNレンジに対応する変速段への自動変速機4の変更を、ドライバに代わって制御部6が行う。
【0033】
そして、制御部6は、自動変速機4の実変速段の変更後にブレーキ操作が解除された場合は、エンジン1を始動し、エンジン1の始動後に自動変速機4の実変速段を走行位置に対応する変速段に変更する。つまり、ドライバに代わって制御部6が自動変速機4の実変速段を変更した場合、ブレーキ操作が解除されることによりエンジン1が始動され、エンジン1の始動後に自動変速機4の実変速段が元の変速段に戻される。ブレーキ操作の解除に基づくエンジン1の始動は、アイドルストップ制御におけるエンジン1の始動に類似する挙動であり、ドライバに違和感を与えることがない。制御部6は、始動位置への変更操作が行われなかった場合であって、ブレーキ操作が複数回解除された場合は、エンジン1を始動させることが好ましい。
【0034】
制御部6は、始動位置への変更操作の有無の判断を、ブレーキ操作がされた状態で車速が所定速度以下に低下してから所定時間が経過するまでの期間に行う。上記の所定期間は、変更操作の有無を判断するための監視期間である。制御部6は、所定時間が経過するまでの期間に始動位置への変更操作が行われなかった場合は、始動位置への変更操作が無いとの判断を、所定時間が経過するタイミングで行う。一方、制御部6は、所定時間が経過するまでの期間に始動位置への変更操作が行われた場合は、始動位置への変更操作が有るとの判断を、変更操作が行われたタイミングで即座に行う。
【0035】
制御部6は、ドライバによる始動位置への変更操作が行われなかった場合は、エンジン1の始動操作がされた場合であってもエンジン1を始動しない。
【0036】
次に、
図2を参照して、本実施例に係る制御部6によって実行されるエンジン始動補助動作の流れについて説明する。このエンジン始動補助動作は、自動変速機4がDレンジまたはRレンジにある状態で車両10が停止または走行しているときにエンジンストールが発生した場合に実行される。また、このエンジン始動補助動作は所定の短い周期で繰り返し実行される。
【0037】
図2に示すように、制御部6は、ブレーキONかつ車速が所定車速以下であるか否かを繰り返し判別する(ステップS1)。ブレーキONとは、ブレーキ操作が行われている状態をいう。所定車速以下とは、車速が零(車両停止状態)の場合も含む。
【0038】
制御部6は、ステップS1の判別がYESの場合、シフト操作部20のシフト位置(図中、シフトポジションと記す)が始動位置であるPレンジまたはNレンジに変更されたか否かを判別する(ステップS2)。このステップS2において変更されない場合の判別は、ブレーキ操作がされた状態で車速が所定速度以下に低下してから所定時間が経過した時点で行われる。一方、ステップS2において変更された場合の判断は、変更操作が行われたタイミングで即座に行う。
【0039】
PレンジまたはNレンジに変更されていた場合(ステップS2でYES)、制御部6は、エンジン1の始動操作がドライバにより行われたか否かを判別する(ステップS3)。このステップS3における始動操作とは、ブレーキペダル8Aを踏んだ状態で始動操作部21を操作することをいう。制御部6は、始動操作が行われたと判別するまでステップS3を繰り返し(ステップS3でNO)、始動操作が行われた場合(ステップS3でYES)は、エンジン1を始動する(ステップS4)。
【0040】
一方、PレンジまたはNレンジに変更されていない場合(ステップS2でNO)、制御部6は、自動変速機4の実変速段(図中、実ギヤと記す)を、始動位置であるPレンジまたはNレンジに対応する変速段に変更する(ステップS5)。
【0041】
ステップS5に次いで、制御部6は、ブレーキOFFであるか否かを判別する(ステップS6)。ブレーキOFFとは、ブレーキ操作が行われていない状態、つまり、ブレーキ操作が解除されている状態をいう。ブレーキOFFでない場合、つまりブレーキ操作が継続されている場合(ステップS6でNO)、制御部6は、ステップS2に戻る。
【0042】
一方、ブレーキOFFである場合、つまりブレーキ操作が解除された場合(ステップS6でYES)、制御部6は、エンジン1を始動する(ステップS7)。ここで、ブレーキ操作の解除に基づくエンジン1の始動は、アイドルストップ制御における始動と類似する動作であり、ドライバに違和感を感じさせることがない。
【0043】
ステップS7に次いで、制御部6は、自動変速機4の実変速段を、シフト操作部20のシフト位置に対応する変速段に変更し(ステップS8)、今回の動作を終了する。ステップS8では、例えば、ステップS1以前にDレンジが選択されており、ステップS8の実行時もシフト操作部20においてDレンジが維持されている場合、制御部6は、実変速段をDレンジに対応する変速段に戻す。
【0044】
なお、ステップS2でYESの場合(PレンジまたはNレンジに変更されていた場合)は、ドライバが冷静であり、制御による介入は不要であるため、制御部6は、ブレーキ操作の解除に基づくエンジン1の始動を行わない。
【0045】
なお、本願において、エンジン始動は、図示しないスタータまたはISG(Integrated Starter Generator)の何れかによって行われてもよい。
【0046】
以上説明したように、本実施例では、制御部6は、シフト操作部20のシフト位置が走行位置にある状態でエンジン1のエンジンストールが発生した場合であって、ブレーキ操作がされた状態で車速が所定速度以下に低下した場合は、シフト操作部20における始動位置への変更操作の有無を判別する。そして、制御部6は、始動位置への変更操作が行われなかった場合は、自動変速機4の実変速段を始動位置に対応する変速段に変更する。そして、制御部6は、実変速段の変更後にブレーキ操作が解除された場合は、エンジン1を始動し、エンジン1の始動後に自動変速機4の実変速段を走行位置に対応する変速段に変更する。
【0047】
これにより、エンジンストール後のエンジン1の始動のためにシフト操作部20のシフト位置を始動位置に変更する必要があることをドライバが気づいていない場合であっても、制御部6によって自動変速機4の実変速段が始動位置に対応する変速段に変更され、エンジン1の始動手順の一部が補助されるので、ドライバの心理的負担を減らしつつ、不慮の事故の発生を防ぐことができる。
【0048】
また、エンジンストールの発生をドライバが気づいてない場合であっても、ブレーキ操作が解除されることでエンジン1が始動されるので、ドライバはアイドルストップと同様の操作により車両を始動させることができる。
【0049】
この結果、エンジンストール後のエンジン1の始動を速やかに容易に行うことができる。
【0050】
また、本実施例では、制御部6は、始動位置への変更操作が行われなかった場合は、エンジン1の始動操作がされた場合であってもエンジン1を始動しない。
【0051】
これにより、自動変速機4の実変速段の変更が制御部6により行われたにも関わらず、ドライバが自ら始動位置への変更操作を行ったと誤認することを防止できる。また、仮にエンジン1を始動させた場合に車両10が誤発進することを防止できる。
【0052】
また、本実施例では、制御部6は、シフト操作部20における始動位置への変更操作が行われなかった場合であって、ブレーキ操作が複数回解除された場合は、エンジン1を始動させる。
【0053】
これにより、エンジンストール後に、ドライバがシフト位置の変更操作の必要性を認知しつつも足を休めるためにブレーキ操作を解除し続けた場合はエンジン1が始動されない。このため、ドライバの意図しないエンジン1の始動による車両10の誤発進を防止できる。
【0054】
また、本実施例では、制御部6は、始動位置への変更操作の有無の判断を、ブレーキ操作がされた状態で車速が所定速度以下に低下してから所定時間が経過するまでの期間に行う。
【0055】
これにより、エンジンストール後に、ドライバがシフト位置の変更操作の必要性を認知しつつも足を休めるためにブレーキ操作を解除し続けた場合はエンジン1が始動されない。このため、ドライバの意図しないエンジン1の始動による車両10の誤発進を防止できる。
【0056】
上述の通り、本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。