(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022123779
(43)【公開日】2022-08-24
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/00 20060101AFI20220817BHJP
G03G 15/06 20060101ALI20220817BHJP
G03G 15/16 20060101ALI20220817BHJP
G03G 15/02 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
G03G15/00 303
G03G15/06 101
G03G15/16
G03G15/02 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021021315
(22)【出願日】2021-02-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(72)【発明者】
【氏名】柴田 千晴
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓太
【テーマコード(参考)】
2H073
2H200
2H270
【Fターム(参考)】
2H073BA02
2H073BA13
2H073BA23
2H073BA25
2H073BA28
2H073BA33
2H073BA36
2H073CA22
2H200GA12
2H200GA23
2H200GA44
2H200GA47
2H200GA56
2H200HA12
2H200HA29
2H200HB03
2H200HB28
2H200HB48
2H200JB06
2H200JB10
2H200JB49
2H200JB50
2H200PA02
2H200PB17
2H200PB27
2H200PB28
2H200PB33
2H270KA04
2H270LA18
2H270LA24
2H270LA28
2H270LA80
2H270LA94
2H270MA01
2H270MA02
2H270MA13
2H270MA14
2H270MB11
2H270MB27
2H270MB36
2H270ZC03
2H270ZC04
2H270ZC08
(57)【要約】
【課題】シートのうちの画像が形成されないはずの部分にトナーが付着することを抑制できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】
画像形成装置1は、感光ドラム4Yと、スコロトロン型帯電器5Yと、現像ローラ72Yと、ワイヤ電圧印加回路12と、現像電圧印加回路13と、制御装置14とを備える。ワイヤ電圧印加回路12は、スコロトロン型帯電器5Yのワイヤ51Yにワイヤ電圧を印加する。現像電圧印加回路13は、現像ローラ72Yに現像電圧を印加する。制御装置14は、現像電圧の目標値Vbに基づいて、グリッド電圧の目標値Vgと現像電圧の目標値Vbとの電位差ΔVが所定の電位差になるように、グリッド電圧の目標値Vgを設定し、グリッド電圧が目標値になるように、ワイヤ電圧を制御する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光ドラムと、
ワイヤとグリッドとを有し、前記感光ドラムを帯電させるスコロトロン型帯電器と、
前記感光ドラムにトナーを供給する現像ローラと、
前記ワイヤにワイヤ電圧を印加するワイヤ電圧印加回路と、
前記現像ローラに現像電圧を印加する現像電圧印加回路と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記現像電圧の目標値に基づいて、前記グリッドに生じる電圧であるグリッド電圧の目標値と前記現像電圧の目標値との電位差が所定の電位差になるように、前記グリッド電圧の目標値を設定し、
前記グリッド電圧が目標値になるように、前記ワイヤ電圧を制御する、画像形成装置。
【請求項2】
前記制御装置は、特定の条件における前記所定の電位差のデータテーブルを参照して、前記グリッド電圧の目標値を設定する、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記画像形成装置は、
本体筐体と、
トナーを収容する現像筐体と、前記現像ローラとを有する現像カートリッジであって、前記本体筐体に装着可能な現像カートリッジと、を備え、
前記特定の条件は、前記本体筐体内の温度、前記本体筐体内の相対湿度、および、未使用の前記現像カートリッジが前記本体筐体に装着された後に印刷されたページ数の少なくとも1つを含む、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
画像形成装置は、
ベルトを有する転写装置と、
前記ベルト上に転写されたトナーパッチの濃度を検出する濃度センサと、を備え、
前記制御装置は、前記濃度センサによって検出された前記トナーパッチの濃度に基づいて、前記現像電圧の目標値を設定する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記画像形成装置は、
本体筐体と、
トナーを収容する現像筐体と、前記現像ローラとを有する現像カートリッジであって、前記本体筐体に装着可能な現像カートリッジと、を備え、
前記制御装置は、
未使用の前記現像カートリッジが前記本体筐体に装着された後に印刷されたページ数が増加するにつれて、前記現像電圧の目標値を下げる、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スコロトロン型帯電器を備える画像形成装置において、グリッドバイアス電圧が一定になるようにフィードバック制御することが知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1に記載の画像形成装置では、例えば、画像形成装置の使用環境、トナーの劣化状態、感光ドラムの劣化状態などの条件に合わせて現像電圧を変更すると、現像電圧と感光ドラムの表面電位との電位差が変わり、シートのうちの画像が形成されないはずの部分にトナーが付着する可能性がある。
【0005】
そこで、本開示の目的は、シートのうちの画像が形成されないはずの部分にトナーが付着することを抑制できる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の画像形成装置は、感光ドラムと、スコロトロン型帯電器と、現像ローラと、ワイヤ電圧印加回路と、現像電圧印加回路と、制御装置とを備える。スコロトロン型帯電器は、ワイヤとグリッドとを有する。スコロトロン型帯電器は、感光ドラムを帯電させる。現像ローラは、感光ドラムにトナーを供給する。ワイヤ電圧印加回路は、ワイヤにワイヤ電圧を印加する。現像電圧印加回路は、現像ローラに現像電圧を印加する。
【0007】
制御装置は、現像電圧の目標値に基づいて、グリッド電圧の目標値と現像電圧の目標値との電位差が所定の電位差になるように、グリッド電圧の目標値を設定する。グリッド電圧は、グリッドに生じる電圧である。制御装置は、グリッド電圧が目標値になるように、ワイヤ電圧を制御する。
【0008】
このような構成によれば、現像電圧の目標値を変更した場合、変更された現像電圧の目標値に基づいて、グリッド電圧の目標値と現像電圧の目標値との電位差が所定の電位差になるように、グリッド電圧の目標値を設定する。
【0009】
そのため、現像電圧の目標値を変更したとしても、現像電圧の目標値にグリッド電圧の目標値を追従させることができ、現像電圧と感光ドラムの表面電位との電位差を維持することができる。
【0010】
その結果、シートのうちの画像が形成されないはずの部分にトナーが付着することを抑制できる。
【0011】
(2)制御装置は、特定の条件における所定の電位差のデータテーブルを参照して、グリッド電圧の目標値を設定してもよい。
【0012】
(3)画像形成装置は、本体筐体と、現像カートリッジとを備える。現像カートリッジは、現像筐体と現像ローラとを有する。現像筐体は、トナーを収容する。現像カートリッジは、本体筐体に装着可能である。特定の条件は、本体筐体内の温度、本体筐体内の相対湿度、および、未使用の現像カートリッジが本体筐体に装着された後に印刷されたページ数の少なくとも1つを含んでもよい。
【0013】
このような構成によれば、本体筐体内の温度、本体筐体内の相対湿度、および、未使用の現像カートリッジが本体筐体に装着された後に印刷されたページ数の少なくとも1つに応じて、現像電圧と感光ドラムの表面電位との電位差を確保できる。
【0014】
そのため、シートのうちの画像が形成されないはずの部分にトナーが付着することを、より抑制できる。
【0015】
(4)画像形成装置は、転写装置と、濃度センサとを備える。転写装置は、ベルトを有する。濃度センサは、ベルト上に転写されたトナーパッチの濃度を検出する。制御装置は、濃度センサによって検出されたトナーパッチの濃度に基づいて、現像電圧の目標値を設定してもよい。
【0016】
このような構成によれば、実際にベルト上に転写されたトナーパッチの濃度に基づいて、現像電圧の目標値、および、グリッド電圧の目標値を設定できる。
【0017】
そのため、現像電圧の目標値、および、グリッド電圧の目標値を、トナーパッチの濃度の実測に基づいて最適化できる。
【0018】
その結果、シートのうちの画像が形成されないはずの部分にトナーが付着することを、より抑制できる。
【0019】
(5)制御装置は、未使用の現像カートリッジが本体筐体に装着された後に印刷されたページ数が増加するにつれて、現像電圧の目標値を下げてもよい。
【0020】
未使用の現像カートリッジが本体筐体に装着された後に印刷されたページ数が増加すると、すなわち、現像カートリッジ内のトナーが劣化すると、トナーの帯電量が低下する。トナーの帯電量が低下した状態で、現像電圧の目標値を下げない場合、現像電圧と感光ドラムの表面電位との電位差が、トナーの帯電量に対して大きくなってしまう。そのため、現像ローラから感光ドラムに供給されるトナーの量が過度に増加してしまう。
【0021】
しかし、本開示の画像形成装置によれば、未使用の現像カートリッジが本体筐体に装着された後に印刷されたページ数が増加するにつれて、現像電圧の目標値を下げる。
【0022】
そのため、トナーの帯電量の低下に現像電圧の目標値を追従させることができる。
【0023】
その結果、現像ローラから感光ドラムに供給されるトナーの量が過度に増加することを、抑制できる。
【発明の効果】
【0024】
本開示の画像形成装置によれば、シートのうちの画像が形成されないはずの部分にトナーが付着することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図2】
図2は、スコロトロン型帯電器、現像ローラ、ワイヤ電圧印加回路、現像電圧印加回路、制御装置および濃度センサの電気的な接続を説明するためのブロック図である。
【
図3】
図3は、ワイヤ電圧の制御を説明するためのフロー図である。
【
図4】
図4は、特定の条件が「本体筐体内の温度」である場合の、現像電圧の目標値、現像電圧の目標値とグリッド電圧の目標値との電位差、グリッド電圧の目標値、および、感光ドラムの表面電位の例を示す表である。
【
図5】
図5は、特定の条件が「本体筐体内の温度」であり、かつ、印刷速度が低速である場合の、現像電圧の目標値、現像電圧の目標値とグリッド電圧の目標値との電位差、グリッド電圧の目標値、および、感光ドラムの表面電位の例を示す表である。
【
図6】
図6は、特定の条件が「本体筐体内の相対湿度」である場合の、現像電圧の目標値、現像電圧の目標値とグリッド電圧の目標値との電位差、グリッド電圧の目標値、および、感光ドラムの表面電位の例を示す表である。
【
図7】
図7は、特定の条件が「未使用の現像カートリッジが本体筐体に装着された後に印刷されたページ数」である場合の変形例を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
1.画像形成装置1の概略
図1を参照して、画像形成装置1の概略について説明する。
【0027】
画像形成装置1は、本体筐体2と、シート収容部3と、複数の感光ドラム4Y,4M,4C,4Kと、複数のスコロトロン型帯電器5Y,5M,5C,5Kと、露光装置6と、複数の現像カートリッジ7Y,7M,7C,7Kと、転写装置8と、定着装置9とを備える。
【0028】
1.1 本体筐体2
本体筐体2は、シート収容部3と、感光ドラム4Y,4M,4C,4Kと、スコロトロン型帯電器5Y,5M,5C,5Kと、露光装置6と、現像カートリッジ7Y,7M,7C,7Kと、転写装置8と、定着装置9とを収容する。
【0029】
1.2 シート収容部3
シート収容部3は、シートSを収容する。シート収容部3内のシートSは、シート収容部3から感光ドラム4Yに向かって搬送される。シートSは、例えば、印刷用紙である。シート収容部3は、シートカセットであってもよい。
【0030】
1.3 感光ドラム4Y,4M,4C,4K
感光ドラム4Yは、第1方向に延びる。感光ドラム4Yは、ドラム軸A1について回転可能である。ドラム軸A1は、第1方向に延びる。
【0031】
感光ドラム4M,4C,4Kのそれぞれについての説明は、感光ドラム4Yについての説明と同様である。そのため、感光ドラム4M,4C,4Kについての説明は、省略される。感光ドラム4Y,4M,4C,4Kは、第2方向に並ぶ。第2方向は、第1方向と交差する。好ましくは、第2方向は、第1方向と直交する。
【0032】
1.4 スコロトロン型帯電器5Y,5M,5C,5K
スコロトロン型帯電器5Yは、感光ドラム4Yを帯電させる。スコロトロン型帯電器5Yは、ワイヤ51Yとグリッド52Yとを有する。
【0033】
スコロトロン型帯電器5Mは、感光ドラム4Mを帯電させる。スコロトロン型帯電器5Cは、感光ドラム4Cを帯電させる。スコロトロン型帯電器5Kは、感光ドラム4Kを帯電させる。スコロトロン型帯電器5M,5C,5Kのそれぞれについての説明は、スコロトロン型帯電器5Yについての説明と同様である。そのため、スコロトロン型帯電器5M,5C,5Kについての説明は、省略される。
【0034】
1.5 露光装置6
露光装置6は、スコロトロン型帯電器5Yによって帯電された感光ドラム4Yを露光する。本実施形態では、露光装置6は、レーザースキャンユニットである。露光装置6は、感光ドラム4Yだけでなく、感光ドラム4M,4C,4Kも露光可能である。露光装置6は、LEDアレイを有する露光ヘッドであってもよい。
【0035】
1.6 現像カートリッジ7Y,7M,7C,7K
現像カートリッジ7Y,7M,7C,7Kのそれぞれは、本体筐体2に装着可能である。現像カートリッジ7Yは、現像筐体71Yと、現像ローラ72Yとを有する。言い換えると、画像形成装置1は、現像ローラ72Yを備える。
【0036】
現像筐体71Yは、トナーを収容する。トナーは、摩擦により帯電可能な非磁性一成分系トナーである。本実施形態では、トナーは、摩擦により正帯電する。
【0037】
現像ローラ72Yは、現像筐体71Yに支持される。現像カートリッジ7Yが本体筐体2に装着された状態で、現像ローラ72Yは、現像筐体71Y内のトナーを感光ドラム4Yに供給する。現像ローラ72Yは、第1方向に延びる。現像ローラ72Yは、現像軸A2について回転可能である。現像軸A2は、第1方向に延びる。
【0038】
現像カートリッジ7M,7C,7Kのそれぞれについての説明は、現像カートリッジ7Yについての説明と同様である。そのため、現像カートリッジ7M,7C,7Kについての説明は、省略される。
【0039】
1.7 転写装置8
転写装置8は、ベルト81と、複数の転写ローラ82Y,82M,82C,82Kとを有する。
【0040】
ベルト81は、感光ドラム4Y,4M,4C,4Kと接触する。ベルト81は、シート収容部3からのシートSを、定着装置9に向けて搬送する。
【0041】
転写ローラ82Yは、感光ドラム4Y上のトナーを、ベルト81によって搬送されているシートSに転写する。転写ローラ82Mは、感光ドラム4M上のトナーを、ベルト81によって搬送されているシートSに転写する。転写ローラ82Cは、感光ドラム4C上のトナーを、ベルト81によって搬送されているシートSに転写する。転写ローラ82Kは、感光ドラム4K上のトナーを、ベルト81によって搬送されているシートSに転写する。
【0042】
1.8 定着装置9
定着装置9は、トナーが転写されたシートSを加熱および加圧して、シートSにトナーを定着させる。定着装置9を通過したシートSは、本体筐体2の上面に排紙される。
【0043】
2.画像形成装置1の詳細
次に、
図2を参照して、画像形成装置1の詳細について説明する。
【0044】
なお、以下の説明では、感光ドラム4Y、スコロトロン型帯電器5Yおよび現像カートリッジ7Yを例に挙げて説明し、感光ドラム4M,4C,4K、スコロトロン型帯電器5M,5C,5Kおよび現像カートリッジ7M,7C,7Kについての説明を省略する。
【0045】
画像形成装置1は、濃度センサ11と、ワイヤ電圧印加回路12と、現像電圧印加回路13と、制御装置14とを備える。
【0046】
2.1 濃度センサ11
画像形成装置1は、シートSに画像を形成していない状態で、ベルト81にトナーパッチを形成する。濃度センサ11は、ベルト81上に転写されたトナーパッチの濃度を検出する。
【0047】
2.2 ワイヤ電圧印加回路12
ワイヤ電圧印加回路12は、ワイヤ51Yと電気的に接続される。ワイヤ電圧印加回路12は、制御装置14からの制御信号に基づいて、ワイヤ51Yにワイヤ電圧を印加する。
【0048】
2.3 現像電圧印加回路13
現像カートリッジ7Yが本体筐体2に装着された状態で、現像電圧印加回路13は、現像ローラ72Yと電気的に接続される。現像電圧印加回路13は、制御装置14からの制御信号に基づいて、現像ローラ72Yに現像電圧を印加する。
【0049】
2.4 制御装置14
制御装置14は、濃度センサ11と電気的に接続される。制御装置14は、濃度センサ11が検出したトナーパッチの濃度を、濃度センサ11から取得可能である。
【0050】
制御装置14は、ワイヤ電圧印加回路12および現像電圧印加回路13と電気的に接続される。制御装置14は、ワイヤ電圧印加回路12および現像電圧印加回路13を制御する。
【0051】
制御装置14は、グリッド52Yと電気的に接続される。制御装置14は、グリッド52Yに流れるグリッド電流をモニター可能である。
【0052】
3.ワイヤ電圧の制御
次に、
図3および
図4を参照して、ワイヤ電圧の制御について説明する。
【0053】
図3に示すように、制御装置14は、現像電圧の目標値Vbを設定する処理(S1)と、グリッド電圧の目標値Vgを設定する処理(S2)と、ワイヤ電圧を制御する処理(S3)とを実行する。
【0054】
(1)現像電圧の目標値Vbを設定する処理(S1)
制御装置14は、濃度センサ11によって検出されたトナーパッチの濃度に基づいて、現像電圧の目標値Vbを設定する(S1)。詳しくは、制御装置14は、メモリ141を有する。メモリ141は、トナーパッチの濃度と現像電圧の目標値Vbとを関連付けたデータテーブルDT1を記憶している。画像形成装置1に未使用の現像カートリッジ7Yが装着された場合、画像形成装置1は、装着された現像カートリッジ7Yを使用して、ベルト81にトナーパッチを形成する。そして、制御装置14は、濃度センサ11からトナーパッチの濃度を取得する。その後、データテーブルDT1を参照して、トナーパッチの濃度に対応する現像電圧の目標値Vbを設定する。
【0055】
トナーパッチの濃度と現像電圧の目標値Vbとは、現像電圧の目標値Vbが、感光ドラム4Yの露光部分の表面電位よりも高く、かつ、感光ドラム4Yの非露光部分の表面電位よりも低くなるように、関連付けられる。感光ドラム4Yの露光部分とは、感光ドラム4Yの表面のうち、露光装置6によって露光された部分である。感光ドラム4Yの非露光部分とは、感光ドラム4Yの表面のうち、露光装置6によって露光されていない部分である。
【0056】
本実施形態では、本体筐体2内の温度が10℃以上30℃未満である場合、感光ドラム4Yの露光部分の表面電位は、+200Vである。トナーパッチの濃度と現像電圧の目標値Vbとは、現像電圧の目標値Vbが、感光ドラム4Yの露光部分の表面電位よりも200V高くなるように、関連付けられる。
【0057】
そのため、本体筐体2内の温度が10℃以上30℃未満である場合、
図4に示すように、制御装置14は、トナーパッチの濃度に基づいて、現像電圧の目標値Vbを、+400Vに設定する。
【0058】
また、本体筐体2内の温度が30℃以上である場合、感光ドラム4Yの露光部分の表面電位は、+150Vである。トナーパッチの濃度と現像電圧の目標値Vbとは、現像電圧の目標値Vbが、感光ドラム4Yの露光部分の表面電位よりも200V高くなるように、関連付けられる。
【0059】
そのため、本体筐体2内の温度が30℃以上である場合、制御装置14は、トナーパッチの濃度に基づいて、現像電圧の目標値Vbを、+350Vに設定する。
【0060】
(2)グリッド電圧の目標値Vgを設定する処理(S2)
次に、
図3に示すように、制御装置14は、現像電圧の目標値Vbに基づいて、グリッド電圧の目標値Vgと現像電圧の目標値Vbとの電位差ΔVが所定の電位差になるように、グリッド電圧の目標値Vgを設定する(S2)。なお、グリッド電圧は、ワイヤ51Yがコロナ放電している状態でグリッド52Yに生じる電圧である。グリッド電圧は、グリッド52Yに流れるグリッド電流から計算できる。
【0061】
詳しくは、制御装置14のメモリ141は、特定の条件における所定の電位差ΔVのデータテーブルDT2を記憶している。制御装置14は、データテーブルDT2を参照して、グリッド電圧の目標値Vgを設定する。本実施形態では、特定の条件は、本体筐体2内の温度である。
【0062】
本実施形態では、
図4に示すように、本体筐体2内の温度が10℃以上30℃未満である場合、および、本体筐体2内の温度が30℃以上である場合の両方で、制御装置14は、データテーブルDT2を参照して、所定の電位差ΔVとして、350Vを取得する。
【0063】
そして、制御装置14は、現像電圧の目標値Vbに所定の電位差ΔVを加算して、グリッド電圧の目標値Vgを設定する。
【0064】
本体筐体2内の温度が10℃以上30℃未満である場合、現像電圧の目標値Vbである+400Vに所定の電位差ΔVである350Vを加算して、グリッド電圧の目標値Vgを、+750Vに設定する。
【0065】
本体筐体2内の温度が30℃以上である場合、現像電圧の目標値Vbである+350Vに所定の電位差ΔVである350Vを加算して、グリッド電圧の目標値Vgを、+700Vに設定する。
【0066】
(3)ワイヤ電圧を制御する処理(S3)
次に、画像形成装置1がシートSに対する画像形成を開始すると、
図3に示すように、制御装置14は、グリッド電圧が目標値Vgになるように、ワイヤ電圧を制御する。詳しくは、制御装置14は、グリッド電流をモニターする。そして、グリッド電流からグリッド電圧を計算し、計算したグリッド電圧が目標値Vgになるように、ワイヤ電圧を制御する。
【0067】
すると、
図4に示すように、本体筐体2内の温度が10℃以上30℃未満である場合、グリッド電圧が+750Vに調節されることにより、感光ドラム4Yの表面は、+750Vに帯電される。
【0068】
そして、露光装置6が感光ドラム4Yの表面を露光すると、感光ドラム4Yの露光部分の表面電位は、+200Vになる。なお、感光ドラム4Yの非露光部分の表面電位は、+750Vである。
【0069】
そのため、現像カートリッジ7Y内のトナーが感光ドラム4Yに供給されるときに、現像電圧(+400V)と、感光ドラム4Yの露光部分の表面電位(+200V)との電位差を確保でき、感光ドラム4Yの露光部分へのトナーの供給量を確保できる。
【0070】
さらに、現像電圧(+400V)と、感光ドラム4Yの非露光部分の表面電位(+750V)との電位差も確保でき、感光ドラム4Yの非露光部分にトナーが供給されることを抑制できる。その結果、シートSのうちの画像が形成されないはずの部分にトナーが付着することを抑制できる。
【0071】
また、本体筐体2内の温度が30℃以上である場合、グリッド電圧が+700Vに調節されることにより、感光ドラム4Yの表面は、+700Vに帯電される。
【0072】
そして、露光装置6が感光ドラム4Yの表面を露光すると、感光ドラム4Yの露光部分の表面電位は、+150Vになる。なお、感光ドラム4Yの非露光部分の表面電位は、+700Vである。
【0073】
そのため、本体筐体2内の温度が上がった場合でも、現像カートリッジ7Y内のトナーが感光ドラム4Yに供給されるときに、現像電圧(+350V)と、感光ドラム4Yの露光部分の表面電位(+150V)との電位差を確保でき、感光ドラム4Yの露光部分へのトナーの供給量を確保できる。
【0074】
さらに、現像電圧(+350V)と、感光ドラム4Yの非露光部分の表面電位(+700V)との電位差も確保でき、感光ドラム4Yの非露光部分にトナーが供給されることを抑制できる。その結果、シートSのうちの画像が形成されないはずの部分にトナーが付着することを抑制できる。
【0075】
4.作用効果
(1)画像形成装置1によれば、
図4に示すように、現像電圧の目標値Vbを変更した場合、変更された現像電圧の目標値Vbに基づいて、グリッド電圧の目標値Vgと現像電圧の目標値Vbとの電位差ΔVが所定の電位差になるように、グリッド電圧の目標値Vgを設定する。
【0076】
そのため、現像電圧の目標値Vbを変更したとしても、現像電圧の目標値Vbにグリッド電圧の目標値Vgを追従させることができ、現像電圧と感光ドラム4Yの表面電位との電位差を維持することができる。
【0077】
その結果、シートSのうちの画像が形成されないはずの部分にトナーが付着することを抑制できる。
【0078】
(2)画像形成装置1によれば、
図4に示すように、制御装置14は、特定の条件における所定の電位差ΔVのデータテーブルを参照して、グリッド電圧の目標値Vgを設定する。本実施形態では、特定の条件は、本体筐体2内の温度である。
【0079】
そのため、本体筐体2内の温度に応じて、現像電圧と感光ドラム4Yの表面電位との電位差を確保できる。
【0080】
その結果、シートSのうちの画像が形成されないはずの部分にトナーが付着することを、より抑制できる。
【0081】
(3)画像形成装置1によれば、制御装置14は、濃度センサ11によって検出されたトナーパッチの濃度に基づいて、現像電圧の目標値Vbを設定する。
【0082】
これにより、実際にベルト81上に転写されたトナーパッチの濃度に基づいて、現像電圧の目標値Vb、および、グリッド電圧の目標値Vgを設定できる。
【0083】
そのため、現像電圧の目標値Vb、および、グリッド電圧の目標値Vgを、トナーパッチの濃度の実測に基づいて最適化できる。
【0084】
その結果、シートSのうちの画像が形成されないはずの部分にトナーが付着することを、より抑制できる。
【0085】
5.変形例
次に、
図5から
図8を参照して、変形例について説明する。以下の変形例において、上記した実施形態と同じ部材には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0086】
(1)
図5に示すように、印刷速度を低下させた場合に、制御装置14は、現像電圧の目標値Vb、および、グリッド電圧の目標値Vgを小さくしてもよい。
【0087】
詳しくは、上記した実施形態において、本体筐体2内の温度が10℃以上30℃未満である場合に、印刷速度を低下させた場合、制御装置14は、現像電圧の目標値Vbを、400Vから370Vに下げる。
【0088】
印刷速度を低下させると、現像ローラ72Yの回転速度が低下するため、トナーの帯電量が低下する。トナーの帯電量が低下した状態で、現像電圧の目標値Vbを下げない場合、現像電圧と感光ドラム4Yの露光部分の表面電位との電位差が、トナーの帯電量に対して大きくなってしまう。そのため、現像ローラ72Yから感光ドラム4Yに供給されるトナーの量が過度に増加してしまう。
【0089】
この点、印刷速度を低下させた場合に現像電圧の目標値Vbを小さくすることにより、トナーの帯電量の低下に合わせて、現像電圧と感光ドラム4Yの露光部分の表面電位との電位差を小さくできる。
【0090】
その結果、印刷速度を低下させた場合に、現像ローラ72Yから感光ドラム4Yに供給されるトナーの量が過度に増加することを抑制できる。
【0091】
なお、本体筐体2内の温度が30℃以上である場合、制御装置14は、現像電圧の目標値Vbを、+350Vから+320Vに下げる。
【0092】
次に、制御装置14は、グリッド電圧の目標値Vgと現像電圧の目標値Vbとの電位差ΔVを、上記した実施形態よりも小さくする。
【0093】
詳しくは、印刷速度を低下させると、感光ドラム4Yの回転速度が低下する。そのため、グリッド電圧の目標値Vgを下げない場合、スコロトロン型帯電器5Yによって、感光ドラム4Yの表面が過度に帯電されてしまう可能性がある。そこで、感光ドラム4Yの表面電位が過度に高くならないように、制御装置14は、グリッド電圧の目標値Vgと現像電圧の目標値Vbとの電位差ΔVを、上記した実施形態よりも下げて、グリッド電圧の目標値Vgを低く設定する。
【0094】
具体的には、制御装置14は、所定の電位差ΔVを、350Vから300Vに下げる。
【0095】
そして、制御装置14は、現像電圧の目標値Vbに所定の電位差ΔVを加算して、グリッド電圧の目標値Vgを設定する。
【0096】
本体筐体2内の温度が10℃以上30℃未満である場合、現像電圧の目標値Vbである+370Vに所定の電位差ΔVである300Vを加算して、グリッド電圧の目標値Vgを、+670Vに設定する。グリッド電圧が、+670Vに調節されることにより、感光ドラム4Yの表面は、+720Vに帯電される。そのため、現像電圧(+370V)と、感光ドラム4Yの露光部分の表面電位(+200V)との電位差を確保でき、感光ドラム4Yの露光部分へのトナーの供給量を確保できる。また、現像電圧(+370V)と、感光ドラム4Yの非露光部分の表面電位(+720V)との電位差も確保でき、感光ドラム4Yの非露光部分にトナーが供給されることを抑制できる。
【0097】
また、本体筐体2内の温度が30℃以上である場合、現像電圧の目標値Vbである+320Vに所定の電位差ΔVである300Vを加算して、グリッド電圧の目標値Vgを、+620Vに設定する。
【0098】
この変形例においても、上記した実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0099】
(2)
図6に示すように、特定の条件は、本体筐体2内の相対湿度であってもよい。
【0100】
詳しくは、本体筐体2内の相対湿度が下がるにつれて、制御装置14は、現像電圧の目標値Vbを上げる。
【0101】
相対湿度が低いほど、トナーの帯電量は、高くなる。そのため、印刷濃度を確保するために、現像電圧と感光ドラム4Yの露光部分の表面電位との電位差を大きくする。
【0102】
具体的には、感光ドラム4Yの露光部分の表面電位が+150Vである場合、本体筐体2内の相対湿度が下がるにつれて、制御装置14は、現像電圧の目標値Vbを、+350Vから+400Vに上げる。
【0103】
また、感光ドラム4Yの非露光部分にトナーが供給されることを抑制するために、グリッド電圧の目標値Vgと現像電圧の目標値Vbとの電位差ΔVも大きくする。
【0104】
具体的には、制御装置14は、所定の電位差ΔVを、300Vから350Vに上げる。
【0105】
本体筐体2内の相対湿度が80%以上である場合、制御装置14は、現像電圧の目標値Vbである+350Vに所定の電位差ΔVである300Vを加算して、グリッド電圧の目標値Vgを+650Vに設定する。
【0106】
また、制御装置14は、本体筐体2内の相対湿度が10%以上80%未満である場合、現像電圧の目標値Vbである+400Vに所定の電位差ΔVである350Vを加算して、グリッド電圧の目標値Vgを+750Vに設定する。
【0107】
この変形例においても、上記した実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0108】
(3)特定の条件は、未使用の現像カートリッジ7Yが本体筐体2に装着された後に印刷されたページ数であってもよい。「未使用の現像カートリッジ7Yが本体筐体2に装着された後に印刷されたページ数」を、印刷ページ数と定義する。
【0109】
印刷ページ数が増加すると、すなわち、現像カートリッジ7Y内のトナーが劣化すると、トナーの帯電量が低下する。トナーの帯電量が低下した状態で、現像電圧の目標値Vbを下げない場合、現像電圧と感光ドラム4Yの露光部分の表面電位との電位差が、トナーの帯電量に対して大きくなってしまう。そのため、現像ローラ72Yから感光ドラム4Yに供給されるトナーの量が過度に増加してしまう。
【0110】
そこで、この変形例では、制御装置14は、印刷ページ数が増加するにつれて、現像電圧の目標値Vbを下げる。
【0111】
具体的には、
図7に示すように、印刷ページ数が0ページから1000ページまで増加するにつれて、現像電圧の目標値Vbを、1000ページあたり5Vの割合で、連続的に下げる。
【0112】
また、制御装置14は、グリッド電圧の目標値Vgと現像電圧の目標値Vbとの電位差ΔVが一定となるように、グリッド電圧の目標値Vgを下げる。この変形例では、グリッド電圧の目標値Vgと現像電圧の目標値Vbとの電位差ΔVは、350Vである。
【0113】
この変形例によれば、印刷ページ数が増加するにつれて、現像電圧の目標値Vbを下げる。
【0114】
そのため、トナーの帯電量の低下に、現像電圧と感光ドラム4Yの露光部分の表面電位との電位差を追従させることができる。
【0115】
その結果、現像ローラ72Yから感光ドラム4Yに供給されるトナーの量が過度に増加することを、抑制できる。
【0116】
なお、画像形成装置1は、1000ページ印刷するごとに、ベルト81にトナーパッチを形成して、トナーパッチの濃度を測定する。制御装置14は、測定されたトナーパッチの濃度に基づいて、現像電圧の目標値Vbを補正する。そして、制御装置14は、補正後の現像電圧の目標値Vbを基準として、印刷ページ数が増加するにつれて、現像電圧の目標値Vbを下げる。
【0117】
(4)特定の条件は、感光ドラム4Yの劣化度合い、例えば、感光ドラム4Yを有するドラムカートリッジが本体筐体2に装着された後の印刷ページ数であってもよい。
【0118】
感光ドラム4Yが劣化すると、感光ドラム4Yの電荷輸送性能が低くなるため、感光ドラム4Yの露光部分の表面電位が高くなる。
【0119】
そのため、制御装置14は、印刷ページ数が増加するにつれて、すなわち、感光ドラム4Yが劣化するにつれて、現像電圧の目標値Vbを上げてもよい。
【0120】
これにより、現像電圧と感光ドラム4Yの露光部分の表面電位との電位差を確保でき、印刷濃度の低下を抑制できる。
【0121】
(5)上記した実施形態、および、上記(1)から(4)の変形例は、互いに組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0122】
1 画像形成装置
2 本体筐体
4Y 感光ドラム
5Y スコロトロン型帯電器
7Y 現像カートリッジ
8 転写装置
11 濃度センサ
12 ワイヤ電圧印加回路
13 現像電圧印加回路
14 制御装置
51Y ワイヤ
52Y グリッド
72Y 現像ローラ
81 ベルト
S シート