(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022123799
(43)【公開日】2022-08-24
(54)【発明の名称】ハンドカバー
(51)【国際特許分類】
A41D 13/08 20060101AFI20220817BHJP
A41D 13/05 20060101ALI20220817BHJP
A61F 13/02 20060101ALI20220817BHJP
A61F 13/10 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
A41D13/08 102
A41D13/05 156
A61F13/02 310T
A61F13/10 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021026877
(22)【出願日】2021-02-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2021021251
(32)【優先日】2021-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】520103159
【氏名又は名称】根橋 兼子
(74)【代理人】
【識別番号】100089509
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 清光
(72)【発明者】
【氏名】根橋 兼子
【テーマコード(参考)】
3B011
【Fターム(参考)】
3B011AA06
3B011AB01
3B011AC22
3B011AC24
(57)【要約】
【課題】手へ着脱自在に付着してその全面を覆うハンドカバーを、容易かつ迅速に装着できるとともに、取り外し及び廃棄も容易かつ迅速であり、しかも汚染面へ触ることなく安全に作業できるようにする。
【解決手段】ハンドカバー10は、シート状をなし、手のひらを覆う手のひら部12と、親指3を覆う親指部13、親指以外の4指を覆う4指部14とからなる指被覆部17とが設けられたカバー部10aを備える。手のひら部12には、手を押しつけることにより手のひら側へ付着する付着部15を備える。ハンドカバー10が付着された手を下向けると、カバー部10aが付着部15から垂れ下がって垂れ下がり部19をなし、安全な取り外し及び廃棄を容易かつ迅速にする。付着部15は剥離部材20で覆われている。剥離部材20は付着部15の周囲へ張り出すはみ出し部21が形成され、剥離を容易にする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手のひらを覆う手のひら部(12)と、指を覆う指被覆部(17)とからなるカバー部(10a)を備え、付着部(15)により手の内面へ付着されるハンドカバーにおいて、
前記付着部(15)は、前記カバー部(10a)の特定位置へ部分的に配置されるとともに、
前記特定位置は、カバー部(10a)の周囲近傍であって、手の内面周囲の一部へ付着される位置であり、
前記カバー部(10a)が手の内面へ付着された使用状態で、手のひらを下に向けると、手の周囲における前記付着位置から下方へ垂れ下がって垂れ下がり部(19)を形成する位置であることを特徴とするハンドカバー。
【請求項2】
請求項1において、前記特定位置は、前記カバー部(10a)の指先側もしくは手首側又は前記手のひら部(12)の左右方向端部近傍であることを特徴とするハンドカバー。
【請求項3】
手のひらを覆う手のひら部(12)と、指を覆う指被覆部(17)とからなるカバー部(10a)を備え、付着部(15)により手の内面へ付着されるハンドカバーにおいて、
前記付着部(15)は前記カバー部(10a)の特定位置へ部分的に配置され、
この特定位置は、前記カバー部(10a)が手の内面へ付着された使用状態で、手のひらを下に向けると、前記カバー部(10a)が前記付着部(15)から下方へ垂れ下がって垂れ下がり部(19)を形成する位置であるとともに、
前記付着部(15)は、手の内面側へ付着する第1面(15a)と、前記カバー部(10a)の前記特定位置へ付着する第2面(15b)とを備え、
前記第1面(15a)は剥離部材(20)で剥離可能に覆われ、
前記剥離部材(20)は付着部(15)より大きく、前記付着部(15)の周囲へ張り出すはみ出し部(21)が形成されていることを特徴とするハンドカバー。
【請求項4】
請求項3において、前記付着部(15)は、前記第1面の面積(S1)より、前記第2面の面積(S2)が大きいとともに、
前記剥離部材(20)の面積(S3)は、前記第2面の面積(S2)より大きいことを特徴とするハンドカバー。
【請求項5】
請求項3又は4において、前記付着部(15)は、前記手のひら部(12)の中央部側にのみ設けられ、使用状態で、手のひらを下に向けると、前記付着部(15)を挟んで、前記手のひら部(12)の手首側端部(18)及び前記指被覆部(17)の先端部(14a)がそれぞれ対向して下方へ垂れ下がって垂れ下がり部(19)を形成することを特徴とするハンドカバー。
【請求項6】
請求項3において、前記剥離部材(20)は、手から取り外されて、グリップ面(10b)を内側にして折りたたまれた折りたたみカバー(10A)を開かないように固定して保持する固定機能部(40・50・52・53)を備えていることを特徴とするハンドカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は電車の吊り革などのグリップを把持するときに、手の内側にてグリップを覆うことにより、グリップから手への汚染を防止するハンドカバーに関する。
なお、手の内面とは手のひら側の面をいう。
また、ハンドカバー及び手についての前後方向及び左右方向は、
図2の図示状態を基準にし、指先側を前方、手首側を後方、前後方向に直交する方向を左右方向とする。
【背景技術】
【0002】
このようなハンドカバーは公知である(特許文献1参照)。このハンドカバーは、手のひら及び指を含む手の内面全体を覆うシート状をなし、全面が粘着剤により手の内面へ粘着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハンドカバーは、グリップを握るときだけ装着することが求められる部材である。例えば、電車やバス等の吊り革であるグリップを握るとき、乗車時には素早く手に装着してグリップを握り、グリップに付着した細菌等の汚れが手のひらへ付着することを回避する。
また降車時には、ハンドカバーの汚染された面を掴まないようにしつつ、素早く手から取り外して廃棄することが求められる。
【0005】
しかし、上記のようにハンドカバーの全面を手の内面へ粘着させると、取り外すときはハンドカバーを設けていない他側の手でハンドカバーを手から剥がす必要があり、ハンドカバーの取り外しに比較的手間を要し、迅速な取り外しを実現できない。しかも、他側の手でハンドカバーを掴んで引き剥がすとき、ハンドカバーのグリップを覆っていた面(内面、グリップ面)に接触してしまうので、このような取り外し時における汚染を防止することが強く求められる。
【0006】
なお、手のひらをグリップと接触させないようにする目的では手袋の使用も考えられる。しかし、手袋は上記ハンドカバー以上に取り外しに手間を要する。
また、手袋を外すときには手袋を嵌めていない手を使わなければならず、このとき手袋の表面に付着した汚れが接触し易いので、グリップからの汚染を防止しにくい。
【0007】
そこで本発明者は、装着及び取り外しを迅速にするため、ハンドカバーの手のひらを覆う部分である手のひら部に両面テープを部分的に設け、両面テープの粘着層へ手を押しつけることでハンドカバーを手へ迅速に取付けて装着性を向上させるとともに、取り外し時には、手を下に向けることで、両面テープの粘着層による付着部分からハンドカバーを下方へ垂れ下がらせて垂れ下がり部とし、ここを掴むことにより、汚染を招かず迅速に取り外すことを着想した。
【0008】
図15は上記着想を参考例として示す図であり、
図15のAは平坦面上に置かれたハンドカバー10の斜視図である。
図15のBは垂れ下がり部の形成を示す断面図である。
図15のCは手からハンドカバーを引きはがす際における両面テープの近傍部を拡大して示す断面図である。
図15のDは剥離紙を剥がす際における両面テープ部分の拡大断面図である。
【0009】
ハンドカバー10は、手のひらを覆う手のひら部12と親指を覆う親指部13及び他の4指を覆う4指部14からなり、全体が不織布で形成されている。
手のひら部12には両面テープの小片300が局部的に取付けられている。小片300は粘着剤からなる付着部150とその一面を覆う剥離紙200で構成されている。
付着部150の設けられている位置はハンドカバー10のほぼ中央であり、小片300を挟んで、4指部14の先端側端部14aと手のひら部12の手首側端部18が反対側に位置している。
【0010】
図15のAにおいて、剥離紙200を剥がし、ハンドカバー10の上へ手のひらを押しつけると、付着部150が手のひらに粘着し、ハンドカバー10は手の内面へ付着されるので、迅速かつ簡単に手へ装着される。
この状態から指先を上に向けて手を立て、手のひら部12、親指部13及び4指部14で手の内側全面を覆う状態とし、グリップ(
図5参照)を握ると、手をグリップと接触させずに握ることができる。
【0011】
ハンドカバーを手へ付着させた使用状態でグリップの握りを解き、手のひらを下に向けて手を略水平に寝かせると、
図15のBに示すように、付着部150を挟んで、手のひら部12の手首側端部18側及び指先側先端部14a側が対向して垂れ下がる垂れ下がり部19を形成する。グリップで汚染されているおそれがあるグリップ面10b(
図15のB)は各垂れ下がり部19の内側に対面している。
【0012】
そこで、各垂れ下がり部19の外面10c(グリップ面10bの反対側となる面)を掴んで引っ張ると、ハンドカバー10が容易に手から取り外される。このとき手はグリップ面10bに接触しないから、ハンドカバー側からの汚染を防止しつつ、取り外し及び廃棄を容易かつ迅速にでき、グリップ面10bからの汚染を避けて安全に作業できる。
【0013】
ところで、手からハンドカバー10を取り外すとき、付着部150を手から剥離させることになる。このとき、付着部150の手に対する粘着力が強いと、付着部150は手から離れず、逆に、手のひら部12の付着部150が粘着している部分周囲が破断されてしまう場合がある。
【0014】
図15のA及びCに示す符号121は破断部を示す。破断部121は手のひら部12から引き離され、付着部150とともに手側へ分離して残る。
図15のCに示す符号122は破断部121の分離によって生じた手のひら部12側の破断跡(凹部)である。その結果、ハンドカバー10の取り外し後、さらに破断部121及び付着部150を手から除去することが必要となり、手間が多くなってしまった。
【0015】
このような手のひら部12側の破断を防ぐには、付着部150の手に対する粘着力を小さくすればよい。このためには、両面テープの小片300をできるだけ微小にして、手に対する粘着面積を小さくすることになる。
しかし、このように両面テープの小片300を微小にすると、
図15のDに示すように、剥離紙200と付着部150がそれぞれ小さくなる。
【0016】
そのうえ、それぞれが同寸で、左右及び前後の各端面が一致しているため、剥離紙200を指先に掛けて剥離させることが困難になり、ともすると、付着部150も一緒に剥がしてしまうことになって、剥離紙200の剥離に手間取ることとなった。したがって、微小になった両面テープの小片300に対して、剥離紙200を迅速に剥離することが求められることになった。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため本願発明に係るハンドカバー(10)は、
手のひらを覆う手のひら部(12)と、指を覆う指被覆部(17)とからなるカバー部(10a)を備え、付着部(15)により手の内面へ付着されるハンドカバーにおいて、
前記付着部(15)は、前記カバー部(10a)の特定位置へ部分的に配置されるとともに、
前記特定位置は、カバー部(10a)の周囲近傍であって、手の内面周囲の一部へ付着される位置であり、
前記カバー部(10a)が手の内面へ付着された使用状態で、手のひらを下に向けると、手の周囲における前記付着位置から下方へ垂れ下がって垂れ下がり部(19)を形成する位置であることを特徴とする。
【0018】
このようにすると、手をカバー部(10a)へ押しつければ、カバー部(10a)の特定位置へ部分的に配置されている付着部(15)により、ハンドカバーは簡単かつ迅速に手へ付着される。
ハンドカバーを手から取り外すには、ハンドカバーが手へ付着されている使用状態で、グリップの握りを解き、手のひらを下に向けると、ハンドカバーは手の周囲における付着位置から下方へ垂れ下がって垂れ下がり部(19)を形成する。
【0019】
そこでこの垂れ下がり部(19)を持って引っ張れば、手から簡単かつ迅速に取り外され廃棄される。このとき、垂れ下がり部(19)のグリップ面に触らずに持つことが容易であるため、グリップ面からの汚染を避けて安全に作業できる。
しかも、垂れ下がり部(19)は手のひらの下方を開放した状態になるので、手のひらとの接触を避けて取り外すことが容易になり、取り外し及び廃棄作業が容易かつ迅速になる。
【0020】
なお、特定位置をカバー部(10a)の指先側もしくは手首側又は手のひら部(12)の左右方向端部近傍にすることができる。
特定位置をカバー部(10a)の指先側にすると、カバー部(10a)の指先側を手の指先へ付着させることができる。
【0021】
そこで、グリップを握りために使用状態で手を立てると、カバー部(10a)は手の指先から垂れ下がる状態で手の内面を覆い、指先側が折れ曲がらないので、スムーズにグリップを握ることができる。このためグリップの握りが容易かつ迅速になる。
また、垂れ下がり部(19)は、指先側に形成されるので、手のひらの下方を大きく開放することできる。
【0022】
特定位置をカバー部(10a)の手首側にすると、カバー部(10a)の手首側を手の手首近傍へ付着させることができる。垂れ下がり部(19)は、手首側に形成されるので、手のひらの下方を大きく開放することできる。しかも、グリップから手を放したとき、あまり手を下へ傾けなくても、直ちに指先側から垂れ下がるので、取り外しが迅速になる。
【0023】
特定位置をカバー部(10a)のうち手のひら部(12)の左右方向端部近傍にすると、垂れ下がり部(19)は、手のひら部(12)の左右方向いずれか側の端部近傍に形成され、指先側及び手首側が付着部(15)を挟んで二つ折り状になって対向している。
しかも折れ線は、手のひら部(12)の左右方向いずれか側端部近傍に設けられている付着部(15)から下方へ傾斜するので、手のひらの下方を大きく開放する。
また、垂れ下がり部(19)の対向面がグリップ面をなすため、グリップ面に触らず、外面だけに触って安全に取り外し及び廃棄の作業ができる。
【0024】
また、本願発明に係る別のハンドカバーは、手のひらを覆う手のひら部(12)と、指を覆う指被覆部(17)とからなるカバー部(10a)を備え、付着部(15)により手の内面へ付着されるハンドカバーにおいて、
前記付着部(15)は前記カバー部(10a)の特定位置へ部分的に配置され、
この特定位置は、前記カバー部(10a)が手の内面へ付着された使用状態で、手のひらを下に向けると、前記カバー部(10a)が前記付着部(15)から下方へ垂れ下がって垂れ下がり部(19)を形成する位置であるとともに、
前記付着部(15)は、手の内面側へ付着する第1面(15a)と、前記カバー部(10a)の前記特定位置へ付着する第2面(15b)とを備え、
前記第1面(15a)は剥離部材(20)で剥離可能に覆われ、
前記剥離部材(20)は付着部(15)より大きく、前記付着部(15)の周囲へ張り出すはみ出し部(21)が形成されていることを特徴とする。
【0025】
このハンドカバーを平坦面上に置き、付着部(15)の手のひら側に設けられている剥離部材(20)を剥がし、上から手を押しつけると、付着部(15)が手へ付着されるので、ハンドカバーが付着部(15)を介して手へ付着され、手の内面全体がハンドカバーで覆われる。この状態でグリップを握ると、手は介在するハンドカバーによりグリップと接触せず、グリップからの汚染が防止される。
【0026】
グリップの握りを解き、手のひらを下に向けると、付着部(15)が部分的に設けられているため、少なくとも付着部(15)からカバー部(10a)が垂れ下がる。
そこで、垂れ下がり部の外面を持って引っ張ると、付着部(15)が手から分離し、ハンドカバーが手から取り外される。
また、グリップ面に触らないようにできるので、取り外し時におけるハンドカバー側からの汚染も防止される。
【0027】
また、付着部(15)を部分的に設けて微小にすることにより、付着部(15)の手に対する付着力を調整し、取り外し時におけるハンドカバー側の破断を防ぐことができる。
そのうえ、付着部(15)が微小化していても、剥離部材(20)が付着部(15)より大きく、付着部(15)から張り出すはみ出し部(21)を形成しているので、このはみ出し部(21)に指先を掛けて剥離させる。
【0028】
さらにまた、前記付着部(15)を、手側となる第1面の面積(S1)より、カバー部(10a)側となる第2面の面積(S2)が大きくするとともに、
前記剥離部材(20)面積(S3)が前記第2面の面積(S2)より大きくなるようにすることもできる。
【0029】
このようにすると、付着部(15)における付着面積のうち、第1面の面積(S1)が第2面の面積(S2)より小さいので、カバー側との付着力を強固にしたまま、手との付着力を小さくなるように調整でき、取り外し時に付着部(15)が手側から確実に分離される。
そのうえ、第1面の面積(S1)を小さくしても、剥離部材(20)の面積(S3)が第2面の面積(S2)より大きいので、剥離部材(20)に付着部(15)から張り出すはみ出し部(21)が確実に形成される。
【0030】
また、上記はみ出し部(21)を有する剥離部材(20)と付着部(15)を有する構成において、前記付着部(15)を、手のひら部(12)の中央部側にのみ設け、使用状態で手のひらを下に向けたとき、手のひらの中央部において、前記付着部(15)を挟んで、前記手のひら部(12)の手首側端部(18)及び前記指被覆部(17)の先端部(14a)がそれぞれ対向して下方へ垂れ下がるようにすることもできる。
【0031】
このようにすると、手のひらの中央部において対向して垂れ下がる各垂れ下がり部のうち、グリップに接触していた内面であるグリップ面を向い合わせにし、各外面を指で摘むことにより、ハンドカバーを取り外し、廃棄することもできるとともに、グリップ面へ触らずに作業できる。
【0032】
また、剥離部材(20)は、手から取り外されて、グリップ面(10b)を内側にして折りたたまれた折りたたみカバー(10A)を開かないように固定して保持する固定機能部(40・50・52・53)を備えるようにすることができる。
このようにすると、剥離部材(20)はその固定機能部(40・50・52・53)により、手から取り外されてグリップ面(10b)を内側にして折りたたまれた折りたたみカバー(10A)を、開かないように固定して保持する。
【発明の効果】
【0033】
本願発明に係るハンドカバーは、付着部(15)をカバー部(10a)の周囲近傍であって、手の内面周囲へ部分的に付着される特定位置に設けたので、手をカバー部(10a)へ押しつければ、カバー部(10a)の特定位置が手へ付着される。このためハンドカバーを手へ簡単かつ迅速に装着でき、装着性が向上する。
また、ハンドカバーの使用状態でグリップを放し、手のひらを下に向けると、ハンドカバーは手の周囲における付着位置から垂れ下がって手の周囲に垂れ下がり部(19)を形成し、この垂れ下がり部(19)を持って引っ張れば、手から簡単かつ迅速に取り外して廃棄できる。
このとき、垂れ下がり部(19)は比較的大きく、かつ手のひらの下方を開放した状態になるので、手で持ちやすくなるとともに、垂れ下がり部(19)のグリップ面に触らずに作業することが容易になる。したがって、取り外し及び廃棄を安全にしかも容易かつ迅速に作業できる。
【0034】
なお、特定位置をカバー部(10a)の指先側もしくは手首側又は手のひら部(12)の左右方向端部近傍にすることができる。
このようにすると、垂れ下がり部(19)の形成時に、手のひらの下方をより大きく開放することできる。
【0035】
また、部分的に設けた付着部(15)により手へ付着されるハンドカバーにおいては、これを手から取り外すとき付着部(15)にてハンドカバー側が破損されないよう、微小にして付着力を調整する必要がある。このとき付着部(15)を同大の剥離部材(20)で覆うと、これを剥がすときに手間取り、迅速な装着をできない場合がある。
しかし、本願発明の剥離部材(20)は、付着部(15)より大きく、付着部(15)から張り出すはみ出し部(21)を形成しているので、このはみ出し部(21)に指先を掛けて容易かつ迅速に剥離させることができる。したがって、微小な付着部(15)を使用する場合でも、ハンドカバーの装着性を向上させることができる。
【0036】
さらにまた、付着部(15)の手側となる第1面の面積(S1)より、カバー部(10a)側となる第2面の面積(S2)が大きく、さらに剥離部材(20)の面積(S3)が第2面の面積(S2)より大きくなるようにすると、カバー側との付着力を強固にしたまま、手との付着力を小さくでき、取り外し時におけるカバー部(10a)の破損を防止するよう付着力の調整が容易になる。
そのうえ、剥離部材(20)の面積(S3)が第2面の面積(S2)より大きいので、付着部(15)を微小にして第1面の面積(S1)を小さくしても、剥離部材(20)に付着部(15)から張り出すはみ出し部(21)を形成でき、このはみ出し部(21)により剥離部材(20)を容易に剥離できるので、ハンドカバーの装着性を向上させることができる。
【0037】
また、はみ出し部(21)を有する剥離部材(20)を設けたハンドカバーにおいて、前記付着部(15)を、手のひら部(12)の中央部側にのみ設け、使用状態で手のひらを下に向けると、手の中央部において前記付着部(15)を挟んで、前記手のひら部(12)の手首側端部(18)及び前記指被覆部(17)の先端部(14a)がそれぞれ対向して垂れ下がるようにすることもできる。
このようにすると、手の中央部において対向して垂れ下がる各垂れ下がり部を比較的短くするとともに、各垂れ下がり部のグリップに接触していたグリップ面を向い合わせにし、各外面を指で摘むことにより、グリップ面へ触らずにハンドカバーを取り外し、廃棄することもできる。したがって、はみ出し部(21)を形成することにより装着性を向上させた前記効果を維持するとともに、ハンドカバーの取り外し及び廃棄を安全にしかもより容易かつ迅速に作業できる。
【0038】
また、剥離部材に固定機能部を備えると、手から取り外されて、グリップ面(10b)を内側にして折りたたまれた折りたたみカバー(10A)を開かないように固定して保持することができる。したがって、手から取り外されたハンドカバーをグリップ面が包まれて露出しない状態にして保持できるので、適時に適所にて剥離部材とハンドカバーを一緒に廃棄でき、廃棄を安全にしかもより容易かつ迅速に作業できる。そのうえ、剥離部材を有効に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図2】第1実施例に係るハンドカバーの手に対する取付けを示す展開斜視図
【
図3】第1実施例に係る付着部及び剥離部材部分を拡大して示す図
【
図4】第1実施例に係るハンドカバーの垂れ下がり部を示す断面図
【
図5】第1実施例に係るハンドカバーを用いてグリップを握る際の説明図
【
図6】第2実施例に係るハンドカバーの展開斜視図及び断面図
【
図7】第2実施例に係るハンドカバーの使用状態を示す図
【
図8】第3実施例に係るハンドカバーの展開斜視図及び断面図
【
図9】第3実施例に係るハンドカバーの使用状態を示す図
【
図10】第3実施例に係るハンドカバーの他の使用状態を示す図
【
図11】第4実施例に係る付着部及び剥離部材を両面テープから形成する説明図
【
図13】第5実施例に係るハンドカバーの廃棄方法を説明する図
【
図14】第6実施例に係るさらに別のハンドカバーの廃棄方法を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1~
図5により第1実施例を説明する。
図1は右手用のハンドカバー10を示す。なお、左手用については説明を省略するが、右手用のハンドカバーと対称に構成することができる。
図2はハンドカバー10を手の内面へ取り付ける状態を示す展開斜視図である。
図3はAとして
図1における付着部及び剥離部材部分を拡大して示し、BにAにおける3-3線に沿う断面図を示す。
図4は使用状態における垂れ下がり部の形成を示す断面図である。
図5はグリップを握る際の状態を示す図であり、Aにグリップを握る前の状態、Bにグリップを握った状態、Cにグリップを握った状態の側面図を示す。
【0041】
まず、ハンドカバーの概要を説明する。ハンドカバー10は、その上に重ねられた手の内面全体を覆うことができる大きさに形成された不織布からなる繊維素材製であり、シート状をなし、グリップ9(
図5)に巻き付けることができる程度の柔軟性を有する部材である。但し、織布等の通気性のある布からなる繊維素材製のものでもよい。また、グリップからの汚染をより確実に防止するためには、ポリエチレンやポリ塩化ビニールなどの適宜な合成樹脂製の非通気性フィルムもしくはシートでもよく、種々な材料が利用可能である。
【0042】
ハンドカバー10には、手の概略輪郭形状をなすガイドライン11が印刷等で表示されている。このガイドライン11内へ手1を重ねることで、ハンドカバー10に対する手1の位置決めが容易になる。ガイドライン11はガイドの一例である。
なお、ハンドカバー10の両面のうち、手のひら2側の面を裏面、反対側のグリップ9へ重ねる面を表面ということにする。表面は使用時のグリップ面になる。
図1は裏面を示している。
【0043】
ハンドカバー10は、
図1に示すように、仮想線で示す手1よりも若干大きく形成され、手のひら2を覆う手のひら部12と、これから斜めに突出して開いた状態の親指3を覆う親指部13と、手のひら部12から上方へ突出する親指以外の4指4Fを覆う4指部14とを備える。これら手のひら部12、親指部13及び4指部14からなる部分をカバー部10aとする。
【0044】
手のひら部12には、手のひら2へ付着する付着部15を備える。付着部15は手1のほぼ中央部に相当する手のひら部12上の特定位置へ1点だけ設けられ、微小かつカバー部10aに対して部分的に配置されている。
この付着部15は接着剤もしくは粘着剤で構成することができる(以下、粘着剤の例を示す)。
【0045】
また付着部15は
図3のBに示すように、手のひら側及び手のひら部12側に向いた二つの面を備え、第2面15bが予め手のひら部12の中央部へ粘着され、他側の面である第1面15aには剥離部材20が粘着され、剥離部材20により剥離可能に覆われている。
剥離部材20は付着部15より大きく、中央部で付着部15へ粘着されるとともに、周囲部分は付着部15の周囲へ張り出すはみ出し部21になっている。
【0046】
図1に示す手1は、手のひら2側を上に向けて示す右手の平面図である。
手1は、手のひら2と、その側部から斜めに側方へ延出する親指3(開いた状態)と、手のひら2の上部(指の付け根)から上方へ延出する4指4Fを有する。4指4Fは、人差し指4、中指5、薬指6及び小指7からなる。これらは親指3以外の4指をなす。手のひら2の後端部(図おける下部)は手首8をなす。
親指3と人差し指4の付け根側はV字状の股部3aになっている(親指3が開いた状態)。
なお、親指3はグリップ時に中指5の付け根側へ重なるように回動させることができる。
【0047】
図2は、ハンドカバー10の上方に、手のひら2を下に向けた手1(右手)を配置し、剥離部材20を剥がした付着部15の上へ手のひら2を押しつけようとする状態を示す。
ハンドカバー10を手のひら2へ取付けるには、裏面を上に向けたハンドカバー10を平坦面上に置き、まず剥離部材20を剥離し、付着部15の第1面15aを露出させる。このとき、剥離部材20は付着部15より大きく、周囲へ張り出すはみ出し部21が形成されているため、このはみ出し部21を指先に掛けることにより容易に剥離させることができる。
【0048】
次に、手のひら2を下向きにして、手1をガイドライン11内へ入るように調整しながらハンドカバー10の上に重ね、手のひら2を手のひら部12へ押しつける。
すると、付着部15が手のひら2に粘着し、ハンドカバー10は付着部15の1点だけで手1のほぼ中央部へ取付けられる。
これにより、ハンドカバー10は手1の内面全体を覆うとともに、手1と一緒になって容易に取り扱い可能になり、ハンドカバー10を介在させてグリップを握ることを可能にする。
【0049】
なお、
図2における直線Lは、4指部14及び手のひら部12の各幅方向における略1/2位置を通る幅方向の中間線である。ここで、指先側先端部14a側を前方、手首側端部18側を後方とすれば、直線Lは前後方向へ通り、この直線Lに直交する方向が幅方向もしくは左右方向となる。
付着部15は直線L上にあり、その位置は、前後方向及び幅方向でそれぞれほぼ中央位置になる。また、付着部15が設けられる位置を特定位置とする。この例の特定位置は手の略中央部となる。
【0050】
図2の直線Lに沿う断面に相当する
図4に示すように、ハンドカバー10を取り付けた使用状態で、手のひら2を下に向けて手1を水平にすると、ハンドカバー10は付着部15による1点のみで手1のほぼ中央部へ付着されているため、付着部15を挟んでその前後が折れ曲がって垂れ下がり、垂れ下がり部19を形成する。
なお、図中の符号19には、垂れ下がり部分の主体をなしているハンドカバー10の構成部分の符号を()付きで添えてある。
【0051】
垂れ下がり部19は、下端が指先側先端部14aとなる主として4指部14からなる前側部分と、下端が手首側端部18となる主として手のひら部12からなる後側部分とからなり、これらが対向して一対で形成されている。
なお、グリップを握る際には、予め手のひらを上に向けると、ハンドカバー10の全面が手の内面全体を覆うように広がる。そこで、手を慎重に立てて迅速にグリップへ押しつけることにより、ハンドカバー10をグリップに巻き付かせるようにして握ることができる。
【0052】
次に、付着部15及び剥離部材20の詳細を説明する。
付着部15は、カバー部10aの特定位置に設けられる。また、手のひら部12に対して相対的に微小の大きさであり、カバー部10aへ部分的に設けられる。
特定位置とは、
図4に示すように、ハンドカバー10を取り付けた使用状態で、手のひら2を下に向けて手1を略水平にしたとき、付着部15から折れ曲がって垂れ下がり部19を形成できる位置であり、本例では、手1のほぼ中央部に相当する位置である。
【0053】
この位置は、手1の前後方向並びに幅方向における中央部もしくは中間部である。
付着部15が付着する部位は、手1の前後方向並びに幅方向における中央部になる。
具体的には、付着部15は手のひら2の上縁部のうち中指5の付け根近傍に取付けられる。手のひら2の上縁部は4指の各付け根部分である。中指5の付け根部分は、上縁部の幅方向中央部である。また中指5の先端から手首8までの前後方向における中間部でもある。
なお、手1の中央に相当する上記特定位置は一例であり、他の種々な位置が可能である。これについては後述する。
【0054】
図3のBに示すように、付着部15は、一例として円錐台形状をなし、面積がS1と小さな第1面15aと、面積がS2とより大きな第2面15bを備える(S1<S2)。
第2面15bは大きな面積S2で手のひら部12へより強固に粘着される。
第1面15aは小さな面積S1による相対的に小さな粘着力で手のひら2側へ粘着される。これらの面積は粘着面積である。
【0055】
付着部15は、皮膚へ直接貼り付けられる絆創膏のような、皮膚に刺激の少ない生体用粘着剤が適している。但し、生体用粘着剤に限らず、種々な用途の粘着剤や接着剤が可能である。手のひら2を押しつけることにより付着できるものであればよい。
【0056】
付着部15は、取り外し時に破断部121(
図15のA及びC)が形成されないよう、粘着力を調整された微小のものである。微小とは、手のひら2の大きさに対する相対的な大きさが極めて小さいことである。具体的な大きさは粘着力に応じて設定されるため一定には決まらないが、概ね、第1面15aの面積S1が手のひら2の面積の1/10以下となる小さなものいう。部分的も同様であり、手1の内側に上記微小な付着部15を配置するとき、その配置範囲が手の大きさに対して相対的に微小な範囲となる手の一部分をなすことをいう。
【0057】
第1面15aの面積S1は小さいほど、粘着力を低くして手のひら部12側の破損を招かずに手からの取り外しが容易になる。粘着力は粘着剤の組成や粘着相手側の素材により異なるが、第1面15aの面積S1で調整する場合、概ね手のひら部12の面積の1/10より大きくなれば、手のひら部12側の破損を招き易くなる。但し、微小にし過ぎると手1への粘着が不安定となる。したがって、手のひら2の面積を仮に60cm2としたとき、第1面15aの面積S1を、3~1.2cm2程度、すなわち手のひら2の面積の1/20~1/50程度にすることが好ましい。
【0058】
なお、付着部15は微小でかつ1又は数個の少数で設けられる。良好な取り外し性と、垂れ下がり部19の確実な形成を期すためである。したがって、付着部15はカバー部10a内の微小な位置である特定位置に設けられる。このような配置を部分的な配置という。
【0059】
本例における付着部15は、略円錐台をなし、第1面15aの面積S1<第2面15bの面積S2、と大小に異なっている。なお、略円錐台は単純化したモデルであり、実際は面積が異なる第1面と第2面を備えた立体形状であればよい。
このようにすると、手側への粘着力<<カバー部側への粘着力、となるように調整が容易となる。S1とS2の比も、付着部15の組成や粘着相手側の素材により異なるので一概に定まらないが、概ね1/4~1/2程度が好ましい。
【0060】
このような付着部15の形成は種々可能であり、例えば、粘性液状態の粘着剤をカバー部10aへ滴状に滴下させれば容易に形成できる。また、チューブから少量ずつ絞り出しても容易に形成できる。
なお、付着部15の略円錐台は一例であり、上記製法によれば、例えば、不定形状でも円錐台もしくは円錐に類似した種々な形状が生じ得るが、このようなものも使用できる。
また、はみ出し部21を有する剥離部材20を設けることにより、必ずしも第1面15aの面積S1と第2面15bの面積S2が異なるものでなく、同面積のものでもよい。これについては
図11にて後から説明する。
【0061】
剥離部材20は、表面にシリコーン樹脂等からなる剥離層が形成された剥離紙又は剥離フィルムであり、市販品を適宜使用できる。
付着部15の第1面15aへ粘着される剥離部材20の面積S3は、第1面15aの面積S1より大きくなっている。さらに本例では第2面15bの面積S2より大きくなっている(S1<S2<S3)。
【0062】
これにより、剥離部材20は周囲部分が、付着部15の周囲へ寸法Dで大きく張り出すはみ出し部21をなし、このはみ出し部21により剥離を容易にしている。特に第2面15bの面積S2より大きく張り出すため、第2面15b側へ干渉せず、より剥離を容易にできる。
【0063】
本例の剥離部材20は、正方形もしくは長方形の矩形であって、手のひら部12から4指部14の各半分程度を一体に覆っている。このように大きいと、剥離が極めて容易になる。また、複数のハンドカバー10を積み重ねてある場合にも、各ハンドカバー10間を密着せず、迅速に分離して使用できる。
【0064】
なお、はみ出し部21は、中央の第1面15aへ粘着される部分から周囲へ張り出す部分全てであり、剥離部材20の周囲いずれの方向からでも剥離させることができる。
但し、はみ出し部21の形成は付着部15の周囲全方向でなく、いずれか1方向でもよい。
また、剥離部材20の形状は、矩形に限らず、円形、多角形もしくは不定形等種々可能である。大きさも、はみ出し部21が形成できるものであれば制限がない。
【0065】
次に、ハンドカバー10の詳細を
図1及び
図2により説明する。
図1に示すように、4指部14は、4指4Fを密に隣り合わせにした状態の輪郭よりも大きく形成され、4指4Fの先端まで覆い、4指部14の先端である指先側先端部14aは4指4Fの先端に沿うアール状をなす。4指部14の側縁は、指の長さ方向に沿って上下方向の略直線状をなす。
【0066】
親指部13は、親指3の先端まで覆い、前縁が4指部14の側縁である4指部側縁14bよりも外側方へ所定量張り出す親指部前縁13aをなす。
親指部前縁13aは親指3の先端よりも所定高さだけ4指部14の先端側となる位置にある。この高さは、親指3を手のひら2の内側(中指5の付け根近傍)へ回動させても親指部13が常時親指3を覆うことができるように設定されている。
【0067】
4指部側縁14bから親指部前縁13aへ階段状に変化し、親指部前縁13aと4指部側縁14bの間に凹入部16が形成されている。
親指部13の側縁は前後方向に略直線状をなす親指部側縁13bになっている。親指部側縁13bは親指3の先端よりも外側へ張り出す位置に設けられ、その前端は4指部側縁14bに連続し、後端はハンドカバー10の手首側端部18に連続する。
親指部側縁13bと手首側端部18の連続部が親指後側コーナー13cをなす。
【0068】
親指部13のうち、親指部側縁13bと親指後側コーナー13c及び手首側端部18に囲まれ、かつ親指3の下方となる部分は、親指部後部13dをなす。親指部後部13dは親指後側コーナー13cを直角の頂部とする略直角3角形状の部分であり、親指3によりグリップ9へ巻き付けられる部分である。
【0069】
次に、
図5によりハンドカバー10を介してグリップ9を握る手順を説明する。
グリップ9は電車やバスの吊り輪であり、本例では輪状をなす。但し、三角形状等種々の形状のグリップが使用可能である。
まず、
図2に示すハンドカバー10を手1へ取付けた使用状態で、手1を立て、ハンドカバー10の表面をグリップ9の側面へ向けると
図5のAとなる。
【0070】
図5のAに示す手1を立てた状態では、指先側先端部14a側が上方となり、手首側端部18側が下方となる。また、手1を立てるとき、上方側を若干後傾させた状態にすると、指先側先端部14a側が折れ曲がらず、ハンドカバー10全体が手1を覆う状態を維持できる。
なお、
図5のAはグリップ9に重なるハンドカバー10の表面側を示す図である(この状態を使用状態の正面図ということにする)。また、グリップを握る際における上下方向は
図5の図示状態を基準にする。
【0071】
図5のAに示す段階は、ハンドカバー10の親指部13や4指部14を曲げる前であり、ハンドカバー10の正面視形状は、平面視形状(
図1)と同じである。
この状態で、グリップ9の下部9aがハンドカバー10の中央部へ重なるとともに、付着部15の上を通り、かつ凹入部16の上を通っている。また、4指部14が穴9bに臨んでいる。
手のひら部12及び親指部13は下部9aから下方へ延出している。
【0072】
そこで、4指4Fを曲げて4指部14を穴9b内へ折り曲げると、
図5のBに示すように、4指部14が下部9aの上側を巻くように折り曲げられて、上方から下部9aの上に重なる。このとき下部9aは付着部15の上に重なり、4指4Fのうち少なくとも中指5の先端も付着部15の上に重なる。
【0073】
下部9aの上側に重なった4指部14の先端側は、4指4Fの先端より長く突出しているので、下部9aと4指4Fの間に介在し、4指4Fを下部9aに接触させず、下部9a上の汚染細菌等が4指4Fへ付着しないようにする。
【0074】
この4指部14の折り曲げに際して、指先側先端部14aがアール状をなすので、下部9aをスムーズに通過して曲がり、下部9aの円形曲線に沿い外観が良好である。
また、凹入部16を設けたことにより、4指部14の折れ曲がりがさらに容易になる。
特に、グリップ9が吊り輪等でリング状などの曲線の場合に、長さ方向のしわが発生しやすいので、このような曲線状のグリップ9に使用する場合に好適となる。
【0075】
また、親指3を手のひら2の上へ重なるように回動させると、
図5のBに示すように、親指部13が親指3により折り曲げられ、手のひら部12及び親指部13が下部9aの下部を巻くように折り曲がり、下部9aの反対側(付着部15に対面する側の反対側、すなわち正面側)へ回り込み、下部9aを挟んでその上へ重なる。
【0076】
このとき手のひら部12及び親指部後部13dも折り曲げられて略三角形状をなし、既に下部9aの上に折り曲げられている4指4Fの上に重なる。
このように、下部9aは、下側から手のひら部12及び親指部13で巻かれるため、親指3から股部3a及び手のひら2の上部は、手のひら部12及び親指部13の介在により、下部9aと接触しないように保護されている。
【0077】
また、親指部13は親指部前縁13aが親指3の先端より長く突出するように突出量を設けられているため、親指3はその回動中も親指部13及び親指部後部13dから外れて露出することなく、下部9aに対して確実に覆われる。
なお、手のひら2の下半部は、親指部後部13dや手のひら部12の下半部側が上方へめくれ上がるように折れ曲がっているため、手のひら部12等で覆われず露出している。但し、この部分は下部9aと接触するおそれがないので露出していても問題がない。
【0078】
図5のCは、
図5のBにおける握り状態の側面図である。但し、中指5と親指3で握っている状態を示し、下部9aは断面にしてある。なお、中指5は例示であり、4指のうちの他の指も同様である。
【0079】
この図に示すように、下部9aを手1で握ることにより、4指部14が下部9aの上側を巻き、手のひら部12及び親指部13が下部9aの下側を巻くので、ハンドカバー10は、下部9aの周囲を巻いて、下部9aと手1の間に介在し、手1を下部9aに接触しないように覆うことができる。このため下部9a上に付着した汚染から手1を効果的に保護できる。
【0080】
次に、本実施形態の作用を説明する。
ハンドカバー10を手1へ取付けるには、
図2に示すように、まず、裏面を上にしたハンドカバー10を略水平に置き、剥離部材20を剥離して取り去り、付着部15の第1面15aを露出させる。
続いて、ハンドカバー10の上方へ手のひら2を下向きにした手1を置き、手のひら2を手のひら部12へ押しつける。すると、付着部15が第1面15aにて手のひら2へ付着される。したがって、この押しつけ作業だけで、ハンドカバー10が付着部15の1点で手1へ取付けられる。
【0081】
このとき、ガイドライン11を設け、この内側に手1重ねることにより、手1をハンドカバー10に対して容易に位置決めでき、付着部15を手のひら2の特定位置へ取付けできる。
したがってハンドカバー10の手1に対する装着が容易かつ迅速になり、乗車後直ちにハンドカバー10を介して吊り輪等のグリップ9を握ることができ、乗車後の立ち姿勢を安定に保つことができる。
【0082】
なお、本例における特定位置は、手のひら2上部で中指5の付け根部近傍である。この部分は、手1における前後方向及び幅方向の各中央部である。このようにすると、ハンドカバー10を手1に対して、1ケ所だけの付着部15で取付けるにもかかわらず、手1へバランスよく支持させることができる。
【0083】
また、付着部15を局部的に設けて微小にすることにより、付着部15の手に対する付着力を調整し、取り外し時にハンドカバー側の破断を防ぐことができる。
特に
図3のBに示すように、付着部15は、略円錐台形状をなし、粘着面積がS1と小さな第1面15aと、粘着面積がS2とより大きな第2面15bを備え、第1面15aが相対的に小さな粘着力で手のひら2側へ粘着される。このため、付着部15の手に対する付着力をより調整し易くなる。
【0084】
そのうえ、剥離部材20の面積S3が、付着部15の粘着面積S1及びS2のいずれよりも大きく、付着部15の周囲へ張り出すはみ出し部21が形成されているので、このはみ出し部21に指先を掛けて剥離部材20を容易に剥離させることができる。したがって、付着部15が微小化していても、剥離部材20を容易かつ迅速に剥離させることができ、ハンドカバー10の装着を快適かつ迅速化させることができる。
【0085】
次に、ハンドカバー10を装着した手1でグリップ9を握る。このとき、ハンドカバー10を装着した状態の手1で下部9aを握ることにより、手のひら部12、親指部13及び4指部14が下部9aを巻回し、手1と下部9aの間にハンドカバー10が介在し、手側がグリップ9側へ直接接触することを防止するので、下部9aに付着した細菌等の汚れが手1へ付着することを回避し、手1を汚染から保護することができる。
【0086】
このグリップ9に対する握りに際して、ハンドカバー10は開いた状態の親指3を覆う親指部13を備え、この親指部13を親指3より大きく突出させることにより、グリップ時には親指3が親指部13及び手のひら部12の下部を下部9aへ巻き付ける。するとハンドカバー10を手のひら2及び親指3と下部9aの間に介在させることができ、手のひら2及び親指3を確実に覆うことができる。
【0087】
特に、親指部13の大きさは、親指3の回動軌跡を含めるように大きく設定されるので、回動中に親指3が親指部13から外れて露出するようなことがない。
このため下部9aの手のひら2と反対側へ出ても親指部13によりカバーされ、下部9aへ接触しやすい親指3側の保護を確実にすることができる。
【0088】
また、
図5に示すように、4指部14も4指4Fの先端よりも延出するよう大きく形成されるので、下部9aを握ったとき、4指部14で4指4Fを確実に覆うことができる。なお、手のひら2の下部9aに重なる部分は、親指部13と4指部14に連続する手のひら部12により覆われ、下部9aへ接触しないようにされている。
【0089】
4指部14の先端は、アール形状の指先側先端部14aになっているので、指先側先端部14a側を穴9b内へ容易に入れて折り曲げでき、指先側先端部14aを穴9bの曲線形状に沿わせることができるので、外観を良好にできる。
【0090】
さらに、親指部13と4指部14の間に凹入部16を設け、4指部14を親指部13側よりも幅狭にすることで、4指部14を穴9b内へ入れ易くなり、かつ下部9aに沿って曲げやすくなる。
特に、吊り輪等の輪状をなすグリップのカバーに好適なものとなる。
【0091】
降車時には、グリップ9の握りを解き、ハンドカバー10を手から取り外して廃棄する。このとき、グリップ9の握りを解いた手1を、
図4に示すように、手のひら2を下に向けて略水平に寝かせる。すると、カバー部10aの付着部15より前方側の4指部14を主体とする部分と、付着部15より後方側の手のひら部12を主体とする部分が、それぞれ下方へ折れ曲がって、指先側先端部14a及び手首側端部18を下にして垂れ下がり、垂れ下がり部19を形成する。
【0092】
しかも、付着部15が手1の前後方向におけるほぼ中央部に設けられているため、前後の垂れ下がり部19はほぼ同じ長さで二つ折り状に形成され、付着部15を指先側の先端部等のカバー部10a周囲に設けた場合に比べて、垂れ下がり部19は比較的短いものになる。また、それぞれのグリップ面10bを内側にして向かい合わせになるよう、対向して一対で形成される。
【0093】
そこで、両垂れ下がり部19の各外面を、ハンドカバーをつけていない他方の手(本例では左手)の例えば、親指3と人さし指4で摘み、下方へ引っ張ると、付着部15は速やかに手のひら2から引き剥がされ、ハンドカバー10が手1から取り外される。
このとき、付着部15の手1に対する粘着力は比較的小さく、カバー部10a側の破損を招かない程度の適度なものに設定されているので、付着部15の剥離を確実にして、手側へ残らないようにすることができ、手1からの取り外しを容易かつ迅速にする。
【0094】
このため、手袋を取り外すときのような手間をなくして容易かつ迅速に取り外すことができ、取り外し性を向上させることができる。
また、付着部15を手1のほぼ中央部へ設けることにより、一対の垂れ下がり部19がほぼ同長となるのため、双方を一緒に掴むことが容易になり、この点でも取り外し性が良くなる。
【0095】
さらに、グリップ9から汚染されている可能性がある双方のグリップ面10bは向かい合わせにされているので、外面10cだけに触り、グリップ面10bに触わることなく取り外して直ちに廃棄できる。
したがって、ハンドカバー10のグリップ面10b側からの汚染を確実に防止しながら、汚染から保護された安全な取り外しと廃棄が可能になる。
【0096】
次に、第2実施例を
図6及び
図7により説明する。なお、この実施例は、前第1実施例に
対して付着部の配置及び剥離部材の形状等を変更しただけなので、この変更点以外の共通部分は前第1実施例と共通符号を用いる。
図6のAはハンドカバー10へ剥離部材20Aを取り付ける状態を示す展開斜視図である。
図6のBは、剥離部材20Aを取り付けた状態のハンドカバー10に対する
図6のAにおける6-6線に沿う断面図である。
図7のAは、ハンドカバーを手に装着する状態を示す断面図である。
図7のBは、グリップを握るため手を立てた状態を示す断面図である。
【0097】
図6のAに示すように、ハンドカバー10上には、6-6線(
図2の直線Lに相当する)に沿って2つの付着部15A及び付着部15Bが配置されている。
付着部15Aは、
図2の付着部15と同じであり、同じ特定位置、すなわち手1のほぼ中央部に相当する位置に設けられている。
【0098】
付着部15Bは付着部15Aと同じ構成のものであるが、指先側先端部14a近傍でガイドライン11の外側となる別の位置に設けられている。なお付着部15Bは手側へ付着するものではなく機能が異なるため、この位置は特定位置ではない。
【0099】
剥離部材20Aは、剥離部材20と寸法及び形状が異なり、ハンドカバー10と同形・同寸に形成され、ハンドカバー10全体の上に重なるようになっている。
この剥離部材20Aをハンドカバー10へ重ねると、ハンドカバー10の全体を完全に覆うとともに、指先先端側及び中央部の2つの位置で粘着される。
図6のBはこの状態を示す。
【0100】
図7のAは、ハンドカバー10を手1へ付着する状態を示す。剥離部材20Aの手首側端部を掴んで前方へめくり上げると、剥離部材20Aは指先先端側が付着部15Bにて付着された状態でカバー部10aの裏面を開放し、付着部15Aの第1面15aを露出させる。
そこで、カバー部10aの上へ手のひら2を下に向けた手1を押しつけると、付着部15Aが手のひら2へ付着し、ハンドカバー10が手1へ装着される。
【0101】
なお、4指4Fの指先は付着部15Bに付着していない。
そこで、
図7Bに示すように、剥離部材20Aを手1の上へ戻して、手1を立てると、4指4Fの指先は、付着部15Bで結合された剥離部材20Aの先端部とカバー部10aの指先側先端部14aとで袋状をなす空間に入っている。
【0102】
したがって、カバー部10aの指先側先端部14aは折れ曲がらず、起立状態を維持するので、比較的ゆっくりした動作でグリップ9の側方へ沿わせることができる。その後、剥離部材20Aを付着部15Bから剥がして取り去れば、4指部14をグリップ9の穴9b(
図5のA参照)内へ折り曲げることができる。このため、ハンドカバー10を装着してからグリップ9を握る作業が容易になる。
【0103】
なお、グリップ9の握りを解いて、手1を下に向けて略水平にすれば、ハンドカバー10は手1の中央部に相当する位置を特定位置とする付着部15Aの1点のみで手のひら2へ付着しているから、仮想線で示すように、垂れ下がり部19は付着部15Aを挟んで二つ折り状に対向する一対で形成されている。付着部15Bは手1側へ付着していないから、指先側先端部14a側の垂れ下がり部19先端(図の下端)に露出している。
【0104】
また、グリップ時には、付着部15Bの近傍に4指4Fの指先が位置し、付着部15Bよりも4指4Fの指先がかなり大きいので、手のひら部12がグリップ9を巻いて指先側先端部14aに接近しても、4指4Fの指先に邪魔されるから付着部15Bが手のひら部12に付着するおそれが少ない。
【0105】
したがって、グリップ9の握りを解いたとき、手のひら部12に付着した付着部15Bが障害となってハンドカバー10をグリップ9から離しにくくするようなおそれは少ない。
なお、付着部15Bの位置は直線L上に限定されない。
図6のAに示すように、人さし指側へずれた位置である付着部15Cもしくは小指側へずれた位置である付着部15Dとしてもよい。
【0106】
また、剥離部材20Aは完全にハンドカバー10を覆うので、梱包や収納時のように、ハンドカバー10を複数積み重ねた場合でも、相互の密着を防ぎ、下側のハンドカバーから簡単かつ迅速に分離できるとともに、剥離部材20A自体も十分に大きいので、簡単かつ迅速に剥離できる。
【0107】
但し、付着部15Aから付着部15Bを連続して一体に覆うことができる大きさであれば、付着部15Aより手首側の一部を省略して前後方向の長さを縮小しても良い。
さらに
図6のAに剥離部材20Bとして示すように、単純な長方形にしてもよい。この長方形は剥離部材20A全体を収容できる大きさである。
【0108】
次に、第3実施例を
図8~
図10により説明する。なお、この実施例は、前第2実施例に
対して付着部15の配置を変更しただけなので、この変更点以外の共通部分は前第2実施例と共通符号を用いる。
【0109】
図8は
図6と同様の図であり、Aにハンドカバーを手に装着する状態の断面図を示す。
Bは、Aの8-8線に沿う剥離部材20Aを取り付けた状態のハンドカバー10に対する断面図である。
図9は
図7と同様の図であり、Aはハンドカバーを手に装着する状態を示す断面図である。
Bは、グリップを握るため手を立てた状態を示す断面図である。
Cは、ハンドカバーの取り外しを説明するための断面図である。
Dは、Aと同じ断面で付着部を異なる配置にした状態を説明する図である。
図10のAは、横断面にて側部に付着部を配置した状態を説明する図である。
Bは、側部に付着部を設けた場合における垂れ下がり部を示す斜視図である。
【0110】
図8のAに示すように、直線L(8-8線)上における前方側位置に付着部15Eが設けられている。
また、グリップ時には、付着部15Bの近傍に4指4Fの指先が位置するので、指先側先端部14aの上に手のひら部12側が重なっても、これに付着するおそれが少なく、グリップ9の握りを解いたとき、付着部15Bが障害となってハンドカバー10をグリップ9から離しにくくするようなおそれは少ない。
なお、付着部15Bの位置は直線L上に限定されない。
図6のAに示すように、人さし指側へずれた位置である付着部15Cもしくは小指側へずれた位置である付着部15Dとしてもよい。
【0111】
このようにすると、
図8のBに示すように、剥離部材20Aは、先端側の付着部15Eのみで付着されている。
そこで、
図9のAに示すように、剥離部材20Aを取り去り、手1をガイドライン11に合わせてカバー部10aへ押しつける。すると手1は4指4F(中指5)の先端部のみが付着部15Eに付着し、ハンドカバー10が手1へ装着される。
【0112】
続いて、
図9のBに示すように、手1を立てると、4指4F(中指5)の指先は、付着部15Eでカバー部10aの指先側先端部14a近傍部と結合されているので、カバー部10aの指先側先端部14aは折れ曲がらず、起立状態を維持し、グリップ9の側方へ沿わせることができる。その後、4指4Fを曲げて4指部14をグリップ9の下部9a上を巻くように折り曲げることができる。このため、ハンドカバー10を装着してからグリップ9を握る作業が容易になる。
【0113】
なお、グリップ9の握りを解いて、手1を下に向けて略水平にすれば、
図9のAに示すように、ハンドカバー10は指先側端部に相当する位置を特定位置とする付着部15Eの1点のみで4指部14の指先側先端部14a近傍部が4指4F(中指5)の指先へ付着しているから、付着部15Eより手首側が比較的長い垂れ下がり部19となる。4指部14の指先側先端部14a側はあまり垂れ下がらない。
【0114】
このため、取り外し及び廃棄は、
図9のCに示すように、グリップ面10bが内側になるように垂れ下がり部19を輪状に曲げ、指先側先端部14aと手首側端部18がほぼ重なるようにしてから、この重なった端部を摘んで下方へ引っ張ると、容易に付着部15Eを指先から引き離すことができる。
【0115】
このとき、垂れ下がり部19が比較的長くて大きく形成されているので、グリップ面10bの反対側となる外面10c側からグリップ面10bが内側になるようにリング状に曲げ、重なった部分の両外面10cを外側から掴むことが容易になる。これにより、垂れ下がり部19を引っ張ってハンドカバー10を手1から取り外して廃棄できる。このため、グリップ面10bへ触らず安全に取り外し及び廃棄の作業をすることができる。
【0116】
なお、付着部の位置は指先側位置に限定されない。
図8のAに示すように、手首側端部18近傍となる位置に付着部15Fを設けてもよい。この位置は直線L上でかつガイドライン11の内側である。
この位置に設けると、
図9のDに示すように、垂れ下がり部19は、付着部15Fより前方となる手のひら部12と4指部14並びに親指部13が垂れ下がることにより形成される。手首側端部18側はほとんど垂れ下がらない。
【0117】
この場合も
図9のCに示した垂れ下がり部19の摘み方と同様な方法で、ハンドカバー10を手1から取り外して廃棄できる。
しかも、付着部15Fの位置が手首近傍となるので、グリップの握りを解いたとき、手1をあまり水平側へ傾けなくても、グリップを放すと直ちにハンドカバー10はほぼ全体が垂れ下がって垂れ下がり部19になる。
【0118】
したがって、手1をある程度立てた状態で、ハンドカバー10を手1から迅速に取り外して廃棄できる。
また、手1を下向きに寝かせると、ハンドカバー10は手首18の近傍で垂れ下がり、手1の内面全体がほぼ開放される。したがって、手1への接触を気にせずにハンドカバー10を容易に取り外しできる。
【0119】
また、特定位置は、直線L上に限定されない。例えば、
図8のAに示すように、手のひら部12における親指3の付け根に相当する位置である付着部15Gや、直線Lを挟んで反対側となる位置であり、小指相当位置より手首側となり、手のひら部12の側方位置である付着部15Hでもよい。付着部15Gはカバー部10aの親指部側縁13b近傍にあり、付着部15Hは親指部側縁13bの反対側となるカバー部10aの小指側側端部10d(
図8のA)近傍にある。
【0120】
図10のAは、手のひらを下に向けた状態の右手を前方(指先側)から示す図であり、付着部15Gを設けた状態を実線で示し、付着部15Hを仮想線で示す。
この図に示すように、特定位置を付着部15Gの位置にすると、カバー部10aの小指側側端部10dを下にして垂れ下がり、親指3の付け根近傍から下方に仮想線で示す垂れ下がり部19が形成される。
【0121】
特定位置を付着部15Hの位置にすると、カバー部10aの親指部側縁13bを下にして小指側側端部10d側から垂れ下がり、小指側側端部10d近傍から下方に仮想線で示す垂れ下がり部19が形成される。
【0122】
図10のBは、特定位置を付着部15Hの位置にした際の垂れ下がり部19を斜め後方(手首側)から示す斜視図である(但し、手のひら及び付着部については便宜的に断面で示す。なお、後述する
図12も同様)。垂れ下がり部19は、付着部15Hを挟んで前方側の4指部14を主体とする部分と、後方側の手のひら部12及び親指部13を主体とする部分が、対向して二つ折り状に形成される。このときの折れ線10eは幅方向に形成される。しかもこの折れ線10eは付着部15Hを起点に親指部側縁13b側へ傾斜する(傾き角θ)。傾き角θは、カバー部10aの素材が有する硬さ等の材質により様々である。
【0123】
このようすると、手のひら2の下方にて一対の垂れ下がり部19が各グリップ面10bを向かい合わせにして二つ折り状になっているので、取り外し時に摘みやすくなる。
しかも折れ線10eが傾斜しているため、手1の内面全体をほぼ開放し、手1への接触を気にせずにハンドカバー10をさらに容易に取り外しできる。
なお、特定位置を付着部15Gの位置にした場合は、折れ線10eの傾斜が逆方向になるだけであるため、一対の垂れ下がり部19は同様に形成され、同様の効果が得られる。
【0124】
このように特定位置を横断方向の端部にしても、摘みやすい垂れ下がり部が形成されるので、取り外し及び廃棄を容易・迅速かつ安全にすることができる。
なお、
図8に示した各種の特定位置は、いずれも付着部が確実に手1へ付着できるよう、ガイドライン11の内側にすることが好ましい。
【0125】
次に、第4実施例を
図11により説明する。この例は、付着部15及び剥離部材20を両面テープ30で形成するものである。
図11のAは、両面テープ30から部分的に粘着剤を除去する第1工程を示す。
両面テープ30は市販のものであり、粘着剤からなる粘着層31(付着部)と剥離紙32が積層されたテープであり、各幅は一致している。したがって、長さ方向端面及び幅方向端面とも面一をなし、はみ出し部が存在しない。
【0126】
そこで、粘着層31の幅方向を、中央部31aとその両側の側部31bに区分する。中央部31aは必要な粘着面積を有する部分であり、側部31bは除去すべき部分である。
中央部31aと側部31bは、カッター33で長さ方向に形成されるカットライン34で分離される。なお、カットライン34は剥離紙32に達しないよう粘着層31にのみ設けられる。
【0127】
カットライン34の形成後、両側の側部31bは除去される。この段階では、付着部として中央部31aのみが長さ方向へ連続している一次加工テープになる。
【0128】
図11のBは一次加工テープから必要な大きさの小片35を切り出す第2工程を示す。
この工程では、一次加工テープを長さ方向へ等間隔にカットし、小片35を切り出す。小片35は局部的に設けられるとともに、取り外し性を考慮した微小のものである。
36は長さ方向に直交するカットラインである。カットライン36の間隔は、小片35の粘着部である中央部31aの面積が所定のものになるように設定される。
【0129】
図11のCは、小片35の断面を示し、この断面はカットライン36による端面である。
剥離紙32は当初の幅寸法と同じであるが、中央部31aと重なる中央部32aの左右にはみ出し部37が形成されている。
はみ出し部37は側部31bの除去された残り部分であり、中央部31aの左右へ寸法Dで張り出している。したがって、中央部31aの露出面をカバー部10a側へ粘着させれば、剥離紙32ははみ出し部37が中央部31aの左右へ張り出しているため、ここに指をかけて容易に剥離できる。
【0130】
なお、この例は粘着部(中央部31a)の第1面と第2面の面積が同大の例である。このように二面が同面積の場合、仮にはみ出し部37を形成せず、剥離紙32を中央部31aと同大の中央部32aとすれば、小片35が微小であるため、中央部32aの剥離が極めて難しくなる。
【0131】
また、粘着層31の両側を除去せず、残す部分を左右いずれか側へ片寄せれば、長さ方向カットライン34を1本にでき、工数を削減できる。このようにしても片側にはみ出し部37が形成されているので、ここを利用して剥離させることができる。
このようにすると、市販の両面テープ30を用いて、本願発明の付着部15及び剥離部材20を形成できる。
【0132】
次に、ハンドカバー10を折りたたんで廃棄する方法を説明する。
図12はハンドカバー1のみを用いるものであり、第1実施例のハンドカバーを例にしてある。
図12のAは
図4に相当する垂れ下がり部の側面図、
図12のBはAに示す垂れ下がり部を廃棄のために折りたたむ中間状態を示す図、
図12のCは折りたたみ完了の状態を示す図である。
【0133】
まず、
図12のAにおいて、ハンドカバー10は前後方向の中間部で二つ折り状に曲がって、一対の垂れ下がり部19が対向して形成され、それぞれの内面であるグリップ面10bが対面している。そこで各グリップ面10bを向かい合わせにするように、各外面10cを例えば、親指3と人さし指4で摘む。このとき、一対の垂れ下がり部19の連結部19aは付着部15で手のひら2へ付着している。なお図示する二つ折り等した状態のものを折りたたみカバー10Aということがある。
【0134】
続いて
図12のBに示すように、ハンドカバー10を矢示aのように下方へ引っ張って付着部15を手のひら2から引き離す。さらに、付着部15が一側面へ出るように、一方の垂れ下がり部19を他方に対してずらす。続いて矢示bに示すように、垂れ下がり部19の下部19c側を上方へ折り曲げる。
【0135】
続いて
図12のCに示すように、垂れ下がり部19の上部19b側を矢示cのように下方へ折り曲げ、付着部15を折れ曲がっている下部19cの外面10cに重ね、付着部15の上を強く押す。すると、上部19b及び下部19cの各折り曲げ部は重なって付着部15で結合する。その結果、ハンドカバー10は3つに折りたたまれた状態になるとともに、付着部15により結合されて曲がり部が開かない。
【0136】
しかも、外周は外面10cで構成されており、グリップ面10bは包み込まれて接触しないようになっている。
したがって、この状態で保持し、適時に廃棄することができる。しかも、グリップ面10bが露出せず衛生的なものとなり、特別な袋へ入れて廃棄する必要もなく、それほど場所を選ばずに廃棄できる。
【0137】
なお、迅速に廃棄する必要があるときは、
図12のAに示す段階で、手からハンドカバー10を外してそのまま廃棄すればよい。
図12のB及びCに示す折りたたみ処理は、このような迅速の廃棄ができない場合に有効な廃棄方法となる。
また、手に対する付着が終わった付着部15をさらに有効利用することができ、廃棄専用袋等の別部材も不要になる。
【0138】
さらに、
図6に示したように付着部15Bを指先側に設けた場合には、
図12のBに示す状態で折り曲げられた下部19cを付着部15Bで固定できる。
また、付着部を中央に設けず、例えば、
図9に示すように前後等の縁部に設けた場合にも、同様に折りたたんで、その折りたたみ状態を固定できる。
図9のCに示す状態では、下部側を一度折り曲げ、その後上端部を2回折り曲げれば、先端の付着部15Eにより固定できる。
【0139】
次に、剥離部材を利用して折りたたみ状態を固定する方法を説明する。
図13は第5実施例に係り、
図13のAは、
図6のAに類似した斜視図であり、大きな剥離部材20Cを用いた例である。この剥離部材20Cは
図6のAに示す大型長方形の剥離部材20Bに類似するものであるが、ポケット40が設けられている点で異なる。
【0140】
剥離部材20Cの大きさは、二つ折り状態の折りたたみカバー10A(
図14のB参照)を収容できる程度のポケット40を有する大きさである。
なお、ポケット40は折りたたみカバー10Aを二つ折り等した状態で開かないように固定して保持することができ、本願発明の固定機能部に相当する。
【0141】
図13のBに示すように、剥離部材20Cは本体41の上に蓋部42を折り曲げて重ね、例えば、側部を結合部43で結合することにより、袋状のポケット40を形成したものである。ポケット空間44は前後方向一端側へ開放され、開口及びポケット空間44の大きさは、折りたたみカバー10Aを開口縁部42aから差し込みできるように設定される。開口縁部42aは本体41の端部と重ならないようにずれた位置に設けられ、折りたたみカバー10Aの差し込みを容易にしている。
【0142】
ハンドカバー10の使用時に、
図13のAに示すように、剥離部材20Cを付着部15から剥がして適宜場所に保管して携行する。
その後、ハンドカバー10を手から取り外したときは、ハンドカバー10を二つ折りにして折りたたみカバー10Aとする。
【0143】
次に、
図13のBに示すように、保管場所から取り出した剥離部材20Cのポケット40に対して、折りたたみカバー10Aを開口縁部42aからポケット空間44内へ差し込む。これにより、折りたたみカバー10Aは二つ折り状態に固定され、開くことがない。
このとき、付着部15がポケット40の内面に接触して付着すると、ポケット40内の折りたたみカバー10Aは脱落しにくくなる。
【0144】
そこで、この状態のまま携帯し、適時に、折りたたみカバー10Aと剥離部材20Cを一緒にした状態で廃棄する。
この廃棄に際して、グリップ面10bを露出させずに折りたたみ状態を固定でき、かつ外面10cのみを触るようにしたので、廃棄が適時にかつ場所を限定されず容易になる。
しかも、剥離部材20Cを有効に利用できる。
なお、ハンドカバー10を二つ折りでなく、さらに四つ折り等に折れば、それだけ、剥離部材20Cのサイズを小さくすることができる。
【0145】
図14は、第6実施例に係り、剥離部材20Dを用いた別の廃棄方法を示す。
図14のAは、剥離部材20Dを取り去ってハンドカバー10を使用することを示す。
ハンドカバー10から取り除かれた剥離部材20Dは、適宜場所に保管して携行される。
【0146】
剥離部材20Dは剥離部材20Cとほぼ同様の大型長方形をなすが、この例では、ポケットに変えてスリット50が設けられている。
スリット50は折りたたみカバー10Aを二つ折り等した状態で開かないように固定して保持することができ、本願発明の固定機能部に相当する。
【0147】
スリット50は幅方向に沿って全幅より若干短い程度に形成され、両端に切れ込み防止のストップ穴51が設けられている。ストップ穴51はスリット50が周囲へ切れ込むことを防止する。
【0148】
図14のBはハンドカバー10が手から取り外されたとき、二つ折りされて折りたたみカバー10Aにされることを示す。なお、折りたたみカバー10Aは二つ折りに限定されず、四つ折り等種々な折り方で折りたたまれたものでもよい。
【0149】
図14のCは、保管場所から取り出した剥離部材20Dに対して、折りたたみカバー10Aの一端をスリット50へ入れて押し込む。折りたたみカバー10Aは幅よりも半折りされた前後方向の寸法が短い場合、平面内で90°回転させてスリット50へ差し込む。
折りたたみカバー10Aはスリット50から半分程度押し込む。これにより、二つ折りされた状態は剥離部材20Dにより固定され、開かなくなる。
また、付着部15が剥離部材20Dの内面へ重なっていれば、付着部15の付着により脱落しにくくなる。
【0150】
そこで、この状態で携帯し、この状態のまま適時にて適所に廃棄される。
このようにすると、剥離部材20Dを薄い状態で使用でき、かつ剥離部材20Dを有効利用できるとともに、製造も容易である。
【0151】
図14のDは、スリットの変形例であり、V字スリット52になっている。このV字は折りたたみカバー10Aの差し込み方向へ凸にされる。このようにすると差し込み時の開口を大きくすることができる。また、スリット方向が前後方向へ向くので、切れ込みが生じても側縁へ達しにくくなる。
【0152】
図14のEは、スリットの他の変形例であり、波線形状スリット53になっている。このようにしても差し込み時の開口を大きくすることができる。
これらのスリット52及び53はいずれも本願発明の固定機能部に相当する。
また、スリットの形状は、これらに限らず、例えば、半円弧状などの曲線でもよい。
さらにこの場合も、ハンドカバー10を二つ折りでなく四つ折り等に折れば、それだけ剥離部材20Dのサイズを小さくすることができる。
【0153】
なお、本願発明は上記の各実施例に限定されるものではなく、発明の原理内において種々に変形や応用が可能である。
例えば、グリップは電車やバス等の吊り輪で、リング状等の曲線をなすものに限定されず、手すり等の直線的なものでもよい。さらにこれら硬質素材のものばかりではなく、植物や肉類などの軟質の素材であっても手で握るものならば本願発明の対象となるグリップにできる可能性がある。
【0154】
また、ガイドライン11は位置決め用のものであるから、手の概略輪郭形状だけでなく、例えば、三角や十文字などの単純な位置合わせマークのようなものでもよい。
さらに、付着部における剥離部材の迅速・容易な剥離を目的とせず、垂れ下がり部を設けて、安全かつ迅速・容易な脱着を目的とする場合は、必ずしもはみ出し部を有する剥離部材と組合わせる必要はなく、付着部をはみ出し部のない両面テープ(例えば、
図15)等と組み合わせてもよい。
この場合は、部分的な付着部の配置により装着性を向上し、垂れ下がり部の形成により、安全な取り外し及び廃棄を容易かつ迅速にする効果を享受できる。
【符号の説明】
【0155】
1:手 2:手のひら 3:親指 4F:4指 5:中指 9:グリップ 10:ハンドカバー 10a:カバー部 10b:グリップ面 10c:外面 11:ガイドライン 12:手のひら部 13:親指部 14:4指部 14a:指先側先端部 15:付着部
18:手首側端部 19:垂れ下がり部 20:剥離部材 21:はみ出し部
【手続補正書】
【提出日】2021-06-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
手のひらを覆う手のひら部(12)と、指を覆う指被覆部(17)とからなるカバー部(10a)を備え、付着部(15)により手の内面へ付着されるハンドカバーにおいて、
前記付着部(15)は、前記カバー部(10a)の特定位置へ部分的に配置されるとともに、
前記特定位置は、カバー部(10a)の周囲近傍であって、手の内面周囲の一部へ付着される位置であり、
前記カバー部(10a)が手の内面へ付着された使用状態で、手のひらを下に向けると、手の周囲における付着位置から下方へ垂れ下がって垂れ下がり部(19)を形成する位置であることを特徴とするハンドカバー。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
上記課題を解決するため本願発明に係るハンドカバー(10)は、
手のひらを覆う手のひら部(12)と、指を覆う指被覆部(17)とからなるカバー部(10a)を備え、付着部(15)により手の内面へ付着されるハンドカバーにおいて、
前記付着部(15)は、前記カバー部(10a)の特定位置へ部分的に配置されるとともに、
前記特定位置は、カバー部(10a)の周囲近傍であって、手の内面周囲の一部へ付着される位置であり、
前記カバー部(10a)が手の内面へ付着された使用状態で、手のひらを下に向けると、手の周囲における付着位置から下方へ垂れ下がって垂れ下がり部(19)を形成する位置であることを特徴とする。