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  • 特開-架橋ポリメチルメタクリレート粒子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022012380
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】架橋ポリメチルメタクリレート粒子
(51)【国際特許分類】
   C08F 20/14 20060101AFI20220107BHJP
   H01M 50/409 20210101ALI20220107BHJP
   C08F 20/20 20060101ALI20220107BHJP
   C08L 33/12 20060101ALI20220107BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20220107BHJP
   C08K 5/20 20060101ALI20220107BHJP
   C08K 5/3415 20060101ALI20220107BHJP
   C08J 9/26 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
C08F20/14
H01M2/16 P
C08F20/20
C08L33/12
C08L79/08
C08K5/20
C08K5/3415
C08J9/26 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020114186
(22)【出願日】2020-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100193404
【弁理士】
【氏名又は名称】倉田 佳貴
(72)【発明者】
【氏名】佐川 弥
【テーマコード(参考)】
4F074
4J002
4J100
5H021
【Fターム(参考)】
4F074AA74
4F074CB04
4F074CB17
4F074DA13
4F074DA49
4J002BG06W
4J002CM04X
4J002EP016
4J002EU026
4J002GQ00
4J002HA06
4J100AL03P
4J100AL61Q
4J100CA03
4J100CA23
4J100DA22
4J100FA03
4J100FA20
4J100JA43
5H021BB01
5H021BB12
5H021CC03
5H021EE06
5H021EE17
5H021EE39
5H021HH03
5H021HH06
(57)【要約】
【課題】溶媒中での良好な分散性を有する、ポリメチルメタクリレート粒子を提供する。
【解決手段】本発明の架橋ポリメチルメタクリレート粒子は、
熱重量分析における5%減量温度が、300℃以上であり、かつ
動的光散乱法により測定した平均粒子径が、1.0μm以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱重量分析における5%減量温度が、300℃以上であり、かつ
動的光散乱法により測定した平均粒子径が、1.0μm以下である、
架橋ポリメチルメタクリレート粒子。
【請求項2】
前記平均粒子径が50nm~500nmである、請求項1に記載の架橋ポリメチルメタクリレート粒子。
【請求項3】
アクリル系架橋剤によって前記架橋ポリメチルメタクリレート粒子の架橋がされている、請求項1又は2に記載の架橋ポリメチルメタクリレート粒子。
【請求項4】
セパレータ製造用である、請求項1~3のいずれか一項に記載の架橋ポリメチルメタクリレート粒子。
【請求項5】
分散媒体、及び
前記分散媒体中に分散している、請求項1~4のいずれか一項に記載の架橋ポリメチルメタクリレート粒子
を含有している、架橋ポリメチルメタクリレート粒子分散体。
【請求項6】
分散媒体、及び
前記分散媒体中に分散している、架橋ポリメチルメタクリレート粒子
を含有している、セパレータ製造用架橋ポリメチルメタクリレート粒子分散体。
【請求項7】
前記分散媒体が、N-メチルピロリドン及び/又はジメチルアセトアミドである、請求項5又は6に記載の分散体。
【請求項8】
ポリアミック酸を更に含有している、請求項5~7のいずれか一項に記載の分散体。
【請求項9】
請求項8に記載の分散体を、被塗布材に塗布すること、及び
塗布した前記分散体に熱処理を施すことにより、前記ポリアミック酸を反応させてポリイミドのマトリックスを形成し、かつ前記架橋ポリメチルメタクリレート粒子を消失させて連通孔を形成すること
を含む、多孔質セパレータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋ポリメチルメタクリレート粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車の電源として、リチウムイオン二次電池が広く用いられている。ここで用いられるリチウムイオン二次電池用セパレータは、金属リチウムをアノードに用いる場合に生じ得るデンドライト状のリチウム成長による突き破りを回避することが要求されている。また、リチウムイオン二次電池用セパレータは膜厚(薄さ)、機械的強度、イオン伝導度(電解液含有時)、電気的絶縁性、耐電解液性、シャットダウン効果、電解液に対する保液性、及び濡れ性などの種々の特性を満足することが要求されている。かかる要求を満足するセパレータとして、機械的強度に優れた3次元規則配列マクロポア(3DOM)構造を有するポリイミド製のセパレータが提案されている。
【0003】
特許文献1では、空孔が三次元立体規則配列構造を有し、空孔が連通孔により互いに連通された多孔質樹脂膜からなる二次電池用セパレータの製造方法であって、分散媒に、狭分散球状微粒子を均一に分散させて、微粒子分散スラリーを調製する狭分散球状微粒子分散スラリー調製工程と、当該微粒子分散スラリーを乾燥させて、狭分散球状微粒子分散膜を得る狭分散球状微粒子分散膜調製工程と、当該膜を熱処理して、樹脂マトリクス内に当該微粒子が三次元立体規則配列している微粒子-樹脂膜を形成する微粒子-樹脂膜形成工程と、当該微粒子-樹脂膜を、フッ酸を除く無機酸、有機酸、水、又はアルカリ溶液と接触させて当該微粒子を溶解除去するか、又は当該微粒子-樹脂膜を加熱して当該微粒子を除去し、連通孔により互いに連通されて三次元立体規則配列構造を有する空孔を当該樹脂マトリクス内に形成させる多孔質樹脂膜形成工程と、を含み、当該分散媒は、当該樹脂マトリクスを構成する樹脂の前駆体を含み、当該狭分散球状微粒子の表面は、当該分散媒に対して不活性であることを特徴とする、二次電池用セパレータの製造方法が開示されている。
【0004】
特許文献2では、N,N-ジメチルアセトアミド中ポリアミック酸、エチレングリコール、及び非イオン界面活性剤の混合物に、370℃よりも高くポリイミドの分解温度以下の温度範囲にて熱分解可能で、且つポリイミドのガラス転移点よりも低いガラス転移点を有する高分子粒子を混合してスラリーを調製し、当該スラリーから膜を形成し、当該膜を酸素濃度10vol%以下の不活性ガス雰囲気下で、370℃よりも高くポリイミドの分解温度以下の温度にて熱処理して、ポリアミック酸を熱イミド化反応によりポリイミドとし、当該高分子粒子を熱分解させて除去し、均一な形状及び寸法の複数のマクロポアが3次元方向に規則正しく配列された3DOM構造を形成させ、当該3DOM構造を有するポリイミドセパレータを得ることを特徴とする、ポリイミドセパレータの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2014/196656号
【特許文献2】特開2018-97915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
熱分解によって高分子粒子を除去して3DOM構造を得ることは、安全性の観点から好ましい。しかしながら、ここに用いられる高分子粒子、例えばポリメチルメタクリレート粒子は、ポリアミック酸を溶解させる溶媒に対して溶解性がある。これによれば、粒子がこの溶媒中で膨潤し、その結果、安定した3DOM構造が得られないことがあった。
【0007】
そこで、ポリイミドセパレータの製造方法等において用いる溶媒中での良好な非溶解性及び非膨潤性分散性を有する、ポリメチルメタクリレート粒子を提供する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討したところ、以下の手段により上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、下記のとおりである:
〈態様1〉熱重量分析における5%減量温度が、300℃以上であり、かつ
動的光散乱法により測定した平均粒子径が、1.0μm以下である、
架橋ポリメチルメタクリレート粒子。
〈態様2〉前記平均粒子径が50nm~500nmである、態様1に記載の架橋ポリメチルメタクリレート粒子。
〈態様3〉アクリル系架橋剤によって前記架橋ポリメチルメタクリレート粒子の架橋がされている、態様1又は2に記載の架橋ポリメチルメタクリレート粒子。
〈態様4〉セパレータ製造用である、態様1~3のいずれか一項に記載の架橋ポリメチルメタクリレート粒子。
〈態様5〉分散媒体、及び
前記分散媒体中に分散している、態様1~4のいずれか一項に記載の架橋ポリメチルメタクリレート粒子
を含有している、架橋ポリメチルメタクリレート粒子分散体。
〈態様6〉分散媒体、及び
前記分散媒体中に分散している、架橋ポリメチルメタクリレート粒子
を含有している、セパレータ製造用架橋ポリメチルメタクリレート粒子分散体。
〈態様7〉前記分散媒体が、N-メチルピロリドン及び/又はジメチルアセトアミドである、態様5又は6に記載の分散体。
〈態様8〉ポリアミック酸を更に含有している、態様5~7のいずれか一項に記載の分散体。
〈態様9〉態様8に記載の分散体を、被塗布材に塗布すること、及び
塗布した前記分散体に熱処理を施すことにより、前記ポリアミック酸を反応させてポリイミドのマトリックスを形成し、かつ前記架橋ポリメチルメタクリレート粒子を消失させて連通孔を形成すること
を含む、多孔質セパレータの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ポリイミドセパレータの製造方法等において用いる溶媒中での良好な非溶解性及び非膨潤性分散性を有する、ポリメチルメタクリレート粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1(a)は、実施例2の架橋ポリメチルメタクリレート粒子を用いて得たセパレータの走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。図1(b)は、図1(a)の画像の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
《架橋ポリメチルメタクリレート粒子》
本発明の架橋ポリメチルメタクリレート粒子は、
熱重量分析における5%減量温度が、300℃以上であり、かつ
動的光散乱法により測定した体積平均粒子径が、1.0μm以下である。
【0012】
一般に、ポリメチルメタクリレート粒子は、ポリアミド製のセパレータを製造する際に用いられる溶媒、例えばN-メチルピロリドン及びジメチルアセトアミドに分散させた際に溶解又は膨潤し、その結果、粒子径のばらつきが大きくなることがあった。これに対し、上記の構成を有する架橋ポリメチルメタクリレート粒子は、強固な化学結合が形成されており、その結果、上記の溶媒に分散させた場合でも、膨潤が抑制され、その結果、セパレータの制御された多孔性をもたらすことができる。
【0013】
本発明において、「5%減量温度」とは、熱重量分析(TGA)において、質量20mgの試料を窒素中で昇温速度20℃/minで昇温させたときに、質量が5%減少するときの温度を意味するものである。この5%減量温度は、300℃以上、305℃以上、310℃以上、315℃以上、又は320℃以上であってよく、また350℃以下、345℃以下、340℃以下、335℃以下、又は330℃以下であってよい。この分析は、例えばThermo plus EVO DSC8230(リガク社)を用いて行うことができる。
【0014】
架橋ポリメチルメタクリレート粒子の体積平均粒子径は、1.0μm以下、900nm以下、800nm以下、700nm以下、600nm以下、500nm以下、又は450nm以下であることが、セパレータの多孔性を良好に制御する観点から好ましい。この平均粒子径は、50nm以上、70nm以上、100nm以上、120nm以上、150nm以上、170nm以上、又は200nm以上であってよい。この平均粒子径は、動的光散乱法により測定した散乱強度分布によるヒストグラム平均粒子径(D50)の値を意味するものである。動的光散乱法による測定は、例えばDelsaMax CORE(ベックマン・コールター社)を用いて行うことができる。
【0015】
架橋ポリメチルメタクリレート粒子の粒子径の変動係数は、20%未満である。この変動係数は、18%以下、15%以下、13%以下、10%以下、又は8%以下であってよく、また0%超、1%以上、2%以上、3%以上、4%以上、5%以上、7%以上、10%以上、12%以上、15%以上、又は17%以上であってよい。かかる変動係数によってもたらされる粒子径の一様さによれば、この粒子をセパレータの製造に用いたときに、均一性の高い連通孔を有するセパレータをもたらすことができる。なお、ここでいう変動係数は、動的光散乱法により測定した散乱強度分布から導かれる粒度分布に基づいて算出したものである。
【0016】
架橋ポリメチルメタクリレート粒子の架橋は、アクリル系架橋剤によってされていることが、上記の5%減量温度、体積平均粒子径及び変動係数を満足する観点から好ましい。アクリル系架橋剤としては、例えば1,4-ブタンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等のアクリレート架橋剤、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等のメタクリレート架橋剤を用いることができる。
【0017】
この架橋ポリメチルメタクリレート粒子は、例えば乳化重合法により製造することができる。乳化重合法は、油相を作製すること、水相を作製すること、及び油相と水相とを混合させて油相の成分を乳化した後に重合させる工程からなる方法である。
【0018】
油相は、アクリル系モノマー、及び架橋剤を含有している。
【0019】
アクリル系モノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等を用いることができる。
【0020】
架橋剤としては、上記の架橋剤を用いることができる。
【0021】
水相は、水、界面活性剤、及び重合開始剤を含有していてよい。
【0022】
水としては、イオン交換水、蒸留水等を用いることができる。
【0023】
界面活性剤としては、特に限定されず、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、及びノニオン性界面活性剤等を用いることができる。
【0024】
カチオン性界面活性剤としては、例えば塩化テトラメチルアンモニウム等のアンモニウム塩系界面活性剤、モノメチルアミン塩酸塩等のアルキルアミン塩型界面活性剤等を用いることができる。
【0025】
アニオン性界面活性剤としては、例えばオクタン酸ナトリウム等のカルボン酸型界面活性剤、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホン酸系界面活性剤等を用いることができる。
【0026】
ノニオン性界面活性剤としては、例えばラウリン酸グリセリン等のエステル型界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のエーテル系界面活性剤等を用いることができる。
【0027】
油相の成分を乳化し、更に重合させる工程は、水相に油相を投入し、ホモジナイザー等を用いて所定の温度に加温しながら乳化混合することにより行うことができる。
【0028】
重合開始剤としては、例えば過硫酸アンモニウム等を用いることができる。
【0029】
《架橋ポリメチルメタクリレート粒子分散体》
本発明の架橋ポリメチルメタクリレート粒子分散体は、
分散媒体、及び
分散媒体中に分散している、架橋ポリメチルメタクリレート粒子
を含有している。
【0030】
本発明の架橋ポリメチルメタクリレート粒子分散体は、セパレータ製造用架橋ポリメチルメタクリレート粒子分散体であってよい。
【0031】
本発明の架橋ポリメチルメタクリレート粒子分散体は、ポリイミド前駆体としてのポリアミック酸を更に含有していてもよい。
【0032】
(分散媒体)
分散媒体は、例えばポリイミド製のセパレータの製造において一般に用いられる分散媒体であってよい。分散媒体としては、例えばN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等の非プロトン性極性溶媒、クレゾール類等のフェノール系溶媒、ジグライム等のグリコール系溶媒が挙げられる。これらの分散媒は、単独で、又は2種以上混合して用いることができる。
【0033】
(架橋ポリメチルメタクリレート粒子)
架橋ポリメチルメタクリレート粒子としては、例えば上記の架橋ポリメチルメタクリレート粒子を用いることができる。
【0034】
架橋ポリメチルメタクリレート粒子の含有率は、架橋ポリメチルメタクリレート粒子分散体の質量全体を基準として、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、又は35質量%以上であることが、連通性を良好にする観点から好ましい。この含有率は、架橋ポリメチルメタクリレート粒子分散体の質量全体を基準として、70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下、又は45質量%以下であってよい。
【0035】
(ポリアミック酸)
ポリアミック酸は、テトラカルボン酸とジアミンとの重合物であり、テトラカルボン酸とジアミンの少なくとも1つずつを等モル重合させたポリイミドの前駆体である。ポリアミック酸は、下記のテトラカルボン酸の酸無水物、特に酸二無水物とジアミンとを重合させることにより得ることができる。
【0036】
ポリアミック酸の含有率は、架橋ポリメチルメタクリレート粒子分散体の質量全体を基準として、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、又は30質量%以上であることが、セパレータの空隙率を抑制し、その結果、リチウムによる突き破りを抑制する観点から好ましい。この含有率は、架橋ポリメチルメタクリレート粒子分散体の質量全体を基準として、40質量%以下、35質量%以下、又は33質量%以下であることが、連通孔を良好に生じさせ、その結果、リチウムイオンの透過性を良好にする観点から好ましい。
【0037】
ポリアミック酸の含有量は、架橋ポリメチルメタクリレート粒子分散体における架橋ポリメチルメタクリレート粒子100質量部に対して、100質量部以上、150質量部以上、170質量部以上、200質量部以上、又は220質量部以上であることが、セパレータの空隙率を抑制し、その結果、リチウムによる突き破りを抑制する観点から好ましい。この含有量は、架橋ポリメチルメタクリレート粒子分散体における架橋ポリメチルメタクリレート粒子100質量部に対して、500質量部以下、450質量部以下、400質量部以下、350質量部以下、300質量部以下、280質量部以下、250質量部以下であることが、連通孔を良好に生じさせ、その結果、リチウムイオンの透過性を良好にする観点から好ましい。
【0038】
(ポリアミック酸:テトラカルボン酸)
ポリアミック酸を構成するテトラカルボン酸は、エチレンテトラカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸、1,2,3,4-シクロヘキサンテトラカルボン酸、ピロメリット酸(1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸-1,2,4,5-)、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,2,6,6-ビフェニルテトラカルボン酸、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、4,4-(p-フェニレンジオキシ)ジフタル酸、4,4-(m-フェニレンジオキシ)ジフタル酸、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸、1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸、9,9-ビスフタル酸フルオレン等のうちの一種又は複数種を用いることができる。
【0039】
(ポリアミック酸:ジアミン)
ポリアミック酸を構成するジアミンとしては、脂肪酸ジアミン、芳香族ジアミン等を単独で又は混合して用いることができる。
【0040】
脂肪族ジアミンとしては、例えば炭素数が2~15程度のものを好ましく用いることができ、例えばペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン等を用いることができる。
【0041】
芳香族ジアミンとしては、フェニル基が一個又は2~10個程度が結合したジアミノ化合物を好ましく用いることができ、例えばフェニレンジアミン及びその誘導体、ジアミノジフェニル化合物及びその誘導体、ジアミノトリフェニル化合物及びその誘導体、ジアミノナフタレン及びその誘導体、アミノフェニルアミノインダン及びその誘導体、ジアミノテトラフェニル化合物及びその誘導体、ジアミノヘキサフェニル化合物及びその誘導体、カルド型フルオレンジアミン誘導体である。
【0042】
フェニレンジアミンとしては、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン等を用いることができ、フェニレンジアミン誘導体としては、メチル基、エチル基等のアルキル基が結合したジアミン、例えば2,4-トリフェニレンジアミン等を用いることができる。
【0043】
ジアミノジフェニル化合物は、二つのアミノフェニル基が他の基を介してフェニル基同士の結合したものである。結合は、エーテル結合、スルホニル結合、チオエーテル結合、アルキレン又はその誘導体基による結合、イミノ結合、アゾ結合、ホスフィンオキシド結合、アミド結合、ウレイレン結合等である。アルキレン結合は、炭素数が1~6程度のものであり、その誘導体基はアルキレン基の水素原子の1以上がハロゲン原子等で置換されたものである。
【0044】
ジアミノジフェニル化合物の例としては3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルケトン、3,4’-ジアミノジフェニルケトン、2,2-ビス(p-アミノフェニル)プロパン、2,2’-ビス(p-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4-メチル-2,4-ビス(p-アミノフェニル)-1-ペンテン、4-メチル-2,4-ビス(p-アミノフェニル)-2-ペンテン、イミノジアニリン、4-メチル-2,4-ビス(p-アミノフェニル)ペンタン、ビス(p-アミノフェニル)ホスフィンオキシド、4,4’-ジアミノアゾベンゼン、4,4’-ジアミノジフェニル尿素、4,4’-ジアミノジフェニルアミド等を挙げることができる。
【0045】
ジアミノトリフェニル化合物は、二つのアミノフェニル基と一つのフェニレン基がいずれも他の基を介して結合したものであり、他の基はジアミノジフェニル化合物と同様のものが選ばれる。
【0046】
ジアミノトリフェニル化合物の例としては、1,3-ビス(m-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(p-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(p-アミノフェノキシ)ベンゼン等を挙げることができる。ジアミノナフタレンの例としては、1,5-ジアミノナフタレン及び2,6-ジアミノナフタレンを挙げることができる。アミノフェニルアミノインダンの例としては、5又は6-アミノ-1-(p-アミノフェニル)-1,3,3-トリメチルインダンを挙げることができる。
【0047】
ジアミノテトラフェニル化合物としては、例えば4,4’-ビス(p-アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2’-ビス[p-(p’-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン及び2,2’-ビス[p-(p’-アミノフェノキシ)ビフェニル]プロパン、2,2’-ビス[p-(m-アミノフェノキシ)フェニル]ベンゾフェノン等を用いることができる。
【0048】
カルド型フルオレン誘導体としては、9,9-ビスアニリンフルオレン等を用いることができる。
【0049】
なお、これらの芳香族ジアミンの水素原子がハロゲン原子、メチル基、メトキシ基、シアノ基、フェニル基などの群より選択される少なくとも1種の置換基により置換された化合物であってもよい。
【0050】
《多孔質セパレータの製造方法》
多孔質セパレータを製造する本発明の方法は、
ポリアミック酸を含有している上記の架橋ポリメチルメタクリレート分散体を、被塗布材に塗布すること、及び
塗布した分散体に熱処理を施すことにより、前記ポリアミック酸を反応させてポリイミドのマトリックスを形成し、かつ架橋ポリメチルメタクリレート粒子を消失させることにより連通孔を形成すること
を含む。
【0051】
被塗布材としては、分散体に対して不活性であり、乾燥後に容易に剥離することができる表面が平坦な形状であれば制限なく用いることができ、例えばガラス板、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、アラミド、セルロース、ポリテトラフルオロエチレン等のポリマーシート、ステンレス等の金属シート等を用いることができる。
【0052】
熱処理の温度は、ポリアミック酸を反応させてポリイミドのマトリックスを熱分解させることなく形成すること、及び架橋ポリメチルメタクリレート粒子を消失させることができる温度であれば特に限定されず、例えば300℃以上、320℃以上、330℃以上、340℃以上、又は345℃以上であってよく、また500℃以下、480℃以下、450℃以下、400℃以下、380℃以下、又は360℃以下であってよい。
【0053】
この熱処理は、酸素濃度が低い窒素雰囲気中で行うことができる。この酸素濃度は、5vol%以下、4vol%以下、3vol%以下、2vol%以下、又は1vol%以下であってよく、また0vol%又は0vol%超であってよい。
【実施例0054】
実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0055】
《ポリメチルメタクリレート粒子の作製》
〈実施例1〉
2リットルのフラスコに、撹拌機、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管、モノマー投入用1000ml分液漏斗を取り付け、温水槽にセットした。このフラスコに、蒸留水640.7質量部、界面活性剤としてのジアルキルスルホコハク酸ナトリウム10質量部及び開始剤としての過硫酸アンモニウム(APS)0.3質量部を仕込んで、水相を作製した。この水相に、窒素ガスを導入しながら、内温を50℃まで昇温した。
【0056】
一方、メタクリル酸メチル(MMA)309質量部に、架橋剤としての1,4-ブタンジオールジアクリレート(ビスコート#195、大阪有機化学工業社)40質量部を混合した油相を調製した。
【0057】
この油相を、上記分液漏斗から温度50℃付近に保った上記水相内に撹拌下で3時間にわたって添加し、乳化重合を行った。更に5時間熟成して重合を終了し、粒子の分散液1000質量部を得た。
【0058】
DelsaMax CORE(ベックマン・コールター社)を用い、得られた粒子の平均粒子径を動的光散乱法により測定した。
【0059】
また、動的光散乱法により測定した散乱強度分布から導かれる粒度分布に基づき、得られた粒子の粒子径の変動係数を算出した。
【0060】
〈実施例2~3及び比較例1~2〉
製造条件を、表1に示すように変更したことを除き、実施例1と同様にして、実施例2~3及び比較例1~2の粒子を作製した。
【0061】
表1に示す架橋剤は、以下のとおりである:
アクリルA:ビスコート#195(1,4-ブタンジオールジアクリレート)
アクリルB:ビスコート#295(トリメチロールプロパントリアクリレート)
TAIC:(トリアリルイソシアヌレート)
【0062】
《ポリメチルメタクリレート粒子としての評価》
〈5%減量温度〉
熱重量分析装置 Thermo plus EVO DSC8230(リガク社)により、施例1の粒子20mgを窒素中で昇温速度20℃/minで昇温させ、質量が5%減量したときの温度を測定した。比較例1~2の粒子についても、同様に測定した。
【0063】
〈分散性〉
作製した粒子0.5gを、N-メチルピロリドン1.0g中に添加して攪拌し、目視により外観を観察した。評価基準は以下のとおりである:
A:分散体がゲル状とならず、粒子が良好に分散していた。
B:分散体がゲル状となった。
【0064】
《セパレータの作製》
N,N-ジメチルアセトアミド13.3g中に、ポリアミック酸7.0gを溶解させ、ここに、調製したポリメチルメタクリレート粒子3.0gを混合して、スラリーを調製した。スラリー中の固形分濃度は43.0質量%であった。このスラリーを、ガラス基板上に塗工し、2vol%の酸素を含む窒素雰囲気中、350℃で熱処理して、連通孔を有する多孔質セパレータを得た。
【0065】
《セパレータとしての評価》
電子顕微鏡S-3400N(日立ハイテクノロジーズ社)により、作製したセパレータの外観を観察した。評価基準は以下のとおりである:
A:連通孔を有していた。
B:連通孔を有していなかった。
【0066】
なお、実施例2のセパレータの写真を、図1に示している。
【0067】
実施例及び比較例の各構成及び評価結果を表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
表1から、5%減量温度が300℃以上である実施例の粒子は、良好な分散性を有していること、及びこれらの粒子を用いて得たセパレータの外観が良好であったことが理解できよう。
図1