(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022123800
(43)【公開日】2022-08-24
(54)【発明の名称】ツールホルダの非接触給電装置
(51)【国際特許分類】
H02J 50/40 20160101AFI20220817BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20220817BHJP
H01F 38/14 20060101ALI20220817BHJP
B23B 29/12 20060101ALI20220817BHJP
B23Q 5/04 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
H02J50/40
H02J50/10
H01F38/14
B23B29/12 Z
B23Q5/04 520Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021063192
(22)【出願日】2021-02-11
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ブルートゥース
2.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】000102865
【氏名又は名称】エヌティーエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤原 吏志
【テーマコード(参考)】
3C046
【Fターム(参考)】
3C046MM07
3C046PP01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】非接触で効率的にエネルギを供給するとともに、小型化を容易に図ることを可能にするツールホルダの非接触給電装置を提供する。
【解決手段】マシニングセンタ12において、非接触給電装置10は、主軸ハウジング20に取り付けられる送電コイルユニット56と、ツールホルダ26の外周面に配設される受電コイルユニット58と、を備え、ツールホルダを構成する本体部32に内装されたアクチュエータ36に、非接触でエネルギを供給している。受電コイルユニットは、2以上に分割され、複数の2次コイル76a、76bを設けている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピンドルに連結されて回転するとともに、アクチュエータが内装された交換自在なツールホルダと、前記スピンドルを回転自在に支持する固定部と、を備える工作機において、前記アクチュエータに非接触でエネルギを供給する非接触給電装置であって、
前記固定部に取り付けられる送電コイルユニットと、
前記ツールホルダの外周面に配設されて前記ツールホルダと一体に回転する受電コイルユニットと、
を備え、
前記送電コイルユニットは、円弧状を有し、前記ツールホルダの前記外周面に対向して配置される1次コイルを設け、
前記受電コイルユニットは、2以上に分割され、全体として前記ツールホルダの前記外周面を周回するとともに、前記1次コイルと同心円上に配置される複数の2次コイルを設け、
前記1次コイルの内周面側と前記2次コイルの外周面側とは、前記スピンドルの回転軸線と平行し且つ互いに対向して非接触給電が行われていることを特徴とするツールホルダの非接触給電装置。
【請求項2】
請求項1記載の非接触給電装置において、前記2次コイルは、180度ずつ2つに分割されていることを特徴とするツールホルダの非接触給電装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の非接触給電装置において、前記1次コイルは、中心角が90度の円弧形状に設定されていることを特徴とするツールホルダの非接触給電装置。
【請求項4】
請求項1記載の非接触給電装置において、前記送電コイルユニットは、円弧状の第1磁性体コアを備え、前記1次コイルは、該第1磁性体コアの内周面及び外周面に沿って周回するとともに、第1ハウジングに収容され、
前記受電コイルユニットは、円弧状の第2磁性体コアを備え、前記2次コイルは、該第2磁性体コアの内周面及び外周面に沿って周回するとともに、第2ハウジングに収容されていることを特徴とするツールホルダの非接触給電装置。
【請求項5】
請求項4記載の非接触給電装置において、前記第1磁性体コア及び前記第2磁性体コアは、それぞれ複数枚のフェライト平板を備え、
前記フェライト平板は、それぞれの平面が前記円弧状に沿って配列されていることを特徴とするツールホルダの非接触給電装置。
【請求項6】
請求項1記載の非接触給電装置において、前記1次コイル及び前記2次コイルには、それぞれコンデンサが接続されて共振回路を構成していることを特徴とするツールホルダの非接触給電装置。
【請求項7】
請求項1記載の非接触給電装置において、前記1次コイル及び前記2次コイルは、それぞれリッツ線で構成されていることを特徴とするツールホルダの非接触給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピンドルに連結されて回転する交換自在なツールホルダに内装されたアクチュエータに、非接触でエネルギを供給するための非接触給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ツールホルダに取り付けられた道具、例えば、加工工具を介してワークに加工処理を施す種々の工作機が使用されている。その際、工作機は、通常、前記工作機の動作に連動して作業する機能及び機構を備えた作業機械に組み込まれている。
【0003】
通常、マシニングセンタでは、ATC(自動工具交換装置)により交換されるツールホルダを備えるとともに、前記ツールホルダには、モータ及び電子回路等のアクチュエータが内装されている場合がある。例えば、ボーリング加工では、ボーリング工具の刃先摩耗の進行に伴って、前記ボーリング工具の刃先の位置を径方向にミクロン単位で補正できるアクチュエータが採用されている。
【0004】
この場合、アクチュエータに動力エネルギ(電気エネルギ)を供給するために、ツールホルダ内にバッテリを搭載する構成が知られている。しかしながら、バッテリの容量に限度があり、使用後の前記バッテリの交換作業又は充電作業が必要となるため、加工作業全体の効率化が遂行されないという問題がある。
【0005】
そこで、アクチュエータに対して非接触で電力を供給するために、電磁誘導方式が用いられている。この電磁誘導方式では、スピンドル側の固定部に送電コイル(給電コイル)が固定される一方、ツールホルダ側に受電コイルが設けられている。そして、ツールホルダ及び受電コイルが回転している際に、送電コイルから前記受電コイルに電力が非接触で供給されている。この種の技術としては、例えば、特許文献1に記載されている。
【0006】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の特許文献1では、サーボモータの動力と制御信号の伝送方式として、スピンドルの先端付近に第1伝送部が設けられるとともに、ボーリング加工装置の把持部に第2伝送部32が設けられている。しかしながら、第1伝送部及び第2伝送部は、非接触形の短絡器で構成することができる、と記載されているだけであり、具体的な構成が不明である。
【0009】
しかも、マシニングセンタでは、ツールホルダをATCにより交換する際、特にスピンドル側の送電コイル(第1伝送部)がATCアームと干渉するおそれがある。しかしながら、上記の特許文献1では、ATCアームとの干渉を回避することができず、実用的ではないという問題がある。
【0010】
本発明は、この種の問題を解決するものであり、特にマシニングセンタ等において、非接触で効率的にエネルギを供給するとともに、小型化を容易に図ることが可能なツールホルダの非接触給電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るツールホルダの非接触給電装置は、スピンドルに連結されて回転するとともに、アクチュエータが内装された交換自在なツールホルダと、前記スピンドルを回転自在に支持する固定部と、を備える工作機において、前記アクチュエータに非接触でエネルギを供給している。非接触給電装置は、固定部に取り付けられる送電コイルユニットと、ツールホルダの外周面に配設されて前記ツールホルダと一体に回転する受電コイルユニットと、を備えている。
【0012】
送電コイルユニットは、円弧状を有し、ツールホルダの外周面に対向して配置される1次コイルを設けている。受電コイルユニットは、2以上に分割され、全体としてツールホルダの外周面を周回するとともに、1次コイルと同心円上に配置される複数の2次コイルを設けている。1次コイルの内周面側と、2次コイルの外周面側とは、スピンドルの回転軸線と平行し且つ互いに対向して非接触給電が行われている。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る非接触給電装置では、1次コイルが円弧状を有しており、例えば、前記1次コイルがATCによるツールホルダの交換作業に干渉することを阻止することができる。しかも、円弧状の1次コイルに対向する2次コイルは、2以上に分割され、全体としてツールホルダの外周面を周回している。
【0014】
ここで、例えば、円周形状を有する単一の2次コイルが使用される場合、前記2次コイルでは、1次コイルと結合(対向)しない非結合部位全体を流れる電流により電力ロスが発生してしまう。従って、非結合部位全体で電力の放電作用が生じ、電力伝送効率が低下するおそれがある。これに対して、本願発明では、2次コイルが2以上に分割されており、電流が流れる非結合部位が有効に削減され、効率的にエネルギを供給することが可能になる。
【0015】
さらに、本願発明では、1次コイルの内周面側と2次コイルの外周面側とが、スピンドルの回転軸線と平行し且つ互いに対向している。これにより、ツールホルダの径方向に構成要素が拡大することがなく、前記ツールホルダ全体の小型化を容易に図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】 本発明の実施形態に係る非接触給電装置が適用される縦型マシニングセンタの概略斜視説明図である。
【
図2】 前記マシニングセンタを構成するツールホルダの要部断面説明図である。
【
図3】 前記非接触給電装置を構成する送電コイルユニットの要部斜視図である。
【
図4】 ATCアームによる作業域の説明図である。
【
図5】 前記送電コイルユニット及び受電コイルユニットの構成説明図である。
【
図6】 前記送電コイルユニットの内部構成を示す斜視説明図である。
【
図7】 比較説明用の非接触給電装置の概略構成図である。
【
図8】 2分割された2次コイルが使用された際の効率の説明図である。
【
図9】 3分割された2次コイルが使用された際の効率の説明図である。
【
図10】 4分割された2次コイルが使用された際の効率の説明図である。
【
図11】 比較例である縦型マシニングセンタの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る非接触給電装置10は、縦型マシニングセンタ(工作機)12に適用される。なお、本願発明に係る非接触給電装置10は、縦型マシニングセンタ12の他、トランスファーマシン等の種々の工作機に採用することができるとともに、これらの工作機が図示しない作業機械に組み込まれる。
【0018】
縦型マシニングセンタ12は、加工用ワーク(図示せず)が載置される加工テーブル14を備え、前記加工テーブル14は、X軸方向及びY軸方向に移動可能である。縦型マシニングセンタ12を構成するコラム16には、主軸スライド18がZ軸方向に進退(昇降)自在に設けられ、前記主軸スライド18に主軸ハウジング(固定部)20が配設される。
【0019】
図2に示すように、主軸ハウジング20内には、図示しない駆動源に連結されたスピンドル22が、前後二組のベアリング24を介して回転可能に取り付けられる。スピンドル22の前端部(下端部)には、ツールホルダ26が図示しないATCを介して離脱可能に装着される。
【0020】
ツールホルダ26は、スピンドル22の前端部に嵌着されるシャンク部28を備え、前記シャンク部28の前端部側には、円筒部30及び本体部32が同軸的に設けられる。円筒部30内には、円形状の電子基板34が装着され、前記電子基板34の中央にクーラントチューブ35が嵌合する。電子基板34は、後述する非接触給電装置10から電力(電気エネルギ)を安定して取り出す整流回路、電圧安定化回路及び安全機構を備えるとともに、アクチュエータ36への電力パワーを司る制御回路を有する。
【0021】
アクチュエータ36は、本体部32に内装されており、モータ38を備える。モータ38の回転軸38aには、プーリ40が軸着され、前記プーリ40とプーリ42とに、タイミングベルト44が一体にかけ渡される。プーリ42は、ボールねじ46の一端に軸着されるとともに、前記ボールねじ46は、本体部32内で回転自在に支持される。
【0022】
ボールねじ46は、スライドテーブル48の端部に螺合し、前記スライドテーブル48は、前記ボールねじ46の回転作用下に、スピンドル22の回転軸方向(矢印L方向)に交差する加工径方向(矢印S方向)に位置補正可能である。スライドテーブル48の前端部には、ボーリングバー50が固定されるとともに、前記ボーリングバー50の前端には、刃先52が設けられる。
【0023】
本体部32の外周には、アンテナ54が装着される。アンテナ54は、ツールホルダ26内に設けられたブルートゥース(Bluetooth)やWi-Fi等の機器(図示せず)による無線通信を行うために使用され、通信制御回路と連結して外部からの無線によりアクチュエータ36を制御する。また、アンテナ54は、モータ38等の動作により制御が完了したことを外部に伝達するために使用することができる。
【0024】
非接触給電装置10は、
図1及び
図2に示すように、主軸ハウジング20に取り付けられる送電コイルユニット56と、ツールホルダ26の外周面に配設されて前記ツールホルダ26と一体に回転する受電コイルユニット58とを備える。
図2及び
図3に示すように、送電コイルユニット56は、主軸ハウジング20の前端面に取り付けられる円弧状の取り付け板60を設ける。取り付け板60には、アーム部材62の一端(上端)が固定されるとともに、前記アーム部材62の他端(下端)には、円弧状の1次ハウジング64が固定される。
【0025】
図1に示すように、スピンドル22の前端側には、ATCアーム66が配置されており、自動工具交換作業の際に、前記ATCアーム66が上下動作及び旋回動作を行う。
図4に示すように、ATCアーム66による作業に干渉しない非干渉領域は、130度以内であり、本実施形態では、1次ハウジング64を中心角が90度の円弧形状に設定する。
【0026】
図2、
図5及び
図6に示すように、1次ハウジング64内には、円弧状の1次コイル68が配設される。1次コイル68は、円弧状の第1磁性体コア70を該第1磁性体コア70の内周面及び外周面に沿って単数列又は複数列単層巻きで周回することにより、前記1次コイル68は、中心角が90度の円弧形状に設定される。1次コイル68は、極細形状を有する多数の銅線が撚り集められた電線、すなわち、リッツ線で構成される。使用される周波数が高い場合に、コイルの抵抗成分が増加することを防止するためである。
【0027】
第1磁性体コア70は、複数枚のフェライト平板70fを備える。
図6に示すように、フェライト平板70fは、長方形(又は正方形)等の矩形状を有し、前記フェライト平板70fの平面が円弧状に沿って配列される。各フェライト平板70fは、厚さ方向の面である側面同士を対向し且つ互いに重なり合うことなく配置される。各フェライト平板70fは、例えば、短辺側が円周方向に配置されるとともに、長辺側が径方向に配置される。
図5に示すように、1次コイル68には、コンデンサ72が接続されて共振回路が構成されるとともに、前記1次コイル68は、図示しない交流電源(高周波発生電源)に接続される。
【0028】
図2及び
図5に示すように、受電コイルユニット58は、ツールホルダ26を構成する円筒部30の外周面に取り付けられる分割された、例えば、2分割された第2ハウジング74a、74bを備える。第2ハウジング74a、74bは、それぞれ180度の中心角を有する半円形状を有し、全体としてリング形状に配置される。なお、3分割又は4分割された第2ハウジングを用いてもよい。
【0029】
図5に示すように、第2ハウジング74a内には、円弧状の2次コイル76aが配設され、第2ハウジング74b内には、円弧状の2次コイル76bが配設される。2次コイル76a、76bは、全体としてツールホルダ26の外周面を周回するとともに、リング形状を、例えば、2分割される。なお、後述するように、2分割される2次コイル76a、76bの他、3分割又は4分割される2次コイルを用いてもよい。
【0030】
2次コイル76aは、円弧状の第2磁性体コア78aを該第2磁性体コア78aの内周面及び外周面に沿って単数列又は複数列単層巻きで周回することにより、前記2次コイル76aは、中心角が180度の円弧形状に設定される。2次コイル76bは、円弧状の第2磁性体コア78bを該第2磁性体コア78bの内周面及び外周面に沿って単数列又は複数列単層巻きで周回することにより、前記2次コイル76bは、中心角が180度の円弧形状に設定される。2次コイル76a、76bは、極細形状を有する多数の銅線が撚り集められた電線、すなわち、リッツ線で構成される。使用される周波数が高い場合に、コイルの抵抗成分が増加することを防止するためである。
【0031】
第2磁性体コア78a、78bは、それぞれ複数枚のフェライト平板78fを備える。フェライト平板78fは、長方形又は正方形等の矩形状を有し、前記フェライト平板78fの平面が円弧状に沿って配列されるとともに、例えば、短辺側が円周方向に配置されるとともに、長辺側が径方向に配置される。各フェライト平板78fは、厚さ方向である短尺側の側面同士を対向して配置される。2次コイル76a、76bには、それぞれコンデンサ72が接続されて共振回路が構成される。2次コイル76a、76bでは、それぞれの複数のコイル巻き線が電子基板34に接続される。
【0032】
図5に示すように、送電コイルユニット56と受電コイルユニット58とのエアギャップ(1次ハウジング64の端面と第2ハウジング74aの端面との空間距離)は、最低1mmに設定される。 内周側の1次コイル68の内周面位置と1次ハウジング64の端面との距離は、最低1mmに設定されるとともに、外周側の2次コイル76a(76b)の外周面位置と2次ハウジング74aの端面との距離は、最低1mmに設定される。
図2及び
図5に示すように、1次コイル68の内周面側と2次コイル76a(76b)の外周面側とは、スピンドル22の回転軸線(矢印L方向)と平行し且つ互いに対向して配置される。
【0033】
このように構成されるマシニングセンタ12の動作について、以下に説明する。
【0034】
図1及び
図2に示すように、スピンドル22の回転作用下に、ツールホルダ26が回転されながら、主軸スライド18がZ軸方向下方に移動する。主軸スライド18の下方には、加工用ワーク(図示せず)が配置されており、刃先52により前記加工用ワークの加工を行う。加工が終了すると、主軸スライド18がZ軸方向上方に移動し、ツールホルダ26が加工用ワークら離脱する。
【0035】
次いで、ツールホルダ26が回転している状態で、又は停止している状態で、刃先52を加工径方向(矢印S方向)に位置補正する際、非接触給電装置10を介してアクチュエータ36に電力が供給される。具体的には、非接触給電装置10を構成する送電コイルユニット56では、図示しない交流電源から1次コイル68に高周波が印可される。このため、1次コイル68に対向する2次コイル76a(76b)に、誘導起電力が発生し、前記2次コイル76a(76b)に電気的に接続された電子基板34に電力が取り出される。
【0036】
さらに、
図2に示すように、アクチュエータ36を構成するモータ38に電力が供給され、前記モータ38が回転駆動される。モータ38の回転軸38aには、プーリ40、タイミングベルト44及びプーリ42を介してボールねじ46が連結されており、前記ボールねじ46が所定の方向に回転される。従って、ボールねじ46が螺合するスライドテーブル48は、加工径方向(矢印S方向)外方(又は内方)に移動し、刃先52の位置補正が行われる。上記のアクチュエータ36の制御は、外部からアンテナ54を介してブルートゥース(Bluetooth)やWi-Fi等により無線通信で行うことができる。
【0037】
この場合、本実施形態では、
図5に示すように、送電コイルユニット56を構成する1次ハウジング64(1次コイル68)は、中心角が90度の円弧形状に設定されている。このため、ツールホルダ26がATCアーム66により自動交換される際、1次ハウジング64が前記ATCアーム66による作業に干渉することがない(
図4参照)。しかも、1次コイル68と2次コイル76a、76bとの結合面積を確保することができ、所望の送電能力を保持することが可能になる。
【0038】
さらに、
図5に示すように、受電コイルユニット58を構成する第2ハウジング74a、74b(2次コイル76a、76b)は、それぞれ180度の中心角を有する半円形状を有し、全体としてリング形状に配置されている。ここで、
図7には、比較説明用の非接触給電装置1の概略構成が示されている。非接触給電装置1は、送電コイルユニット56と受電コイルユニット2とを備え、前記受電コイルユニット2は、非分割(リング状)の2次コイル3及び第2磁性体コア4を用いている。
【0039】
しかしながら、受電コイルユニット2では、2次コイル3をリング状の第2磁性体コア4の内周面に沿って巻くことができず、発生する磁力が半減して送電力が低下するという問題がある。しかも、2次コイル3は、円弧形状の1次コイル68に対向する範囲(90度)だけが電磁結合部位となる、従って、残余の270度の範囲に亘る非電磁結合部位を流れる電流による電力ロスが発生し、電力が放電されて効率低下が惹起される。
【0040】
これに対し、本実施形態では、
図5に示すように、2次コイル76a、76bが半円形状を有し、全体としてリング形状に配置されている。このため、1次コイル68と2次コイル76aとが対向し、前記2次コイル76aに送電が行われている際、他の2次コイル76bに送電されることがなく、電力ロスの発生を良好に抑制することが可能になる。
【0041】
さらに、分割された2次コイル76a、76bは、互いに電気的に並列結合されているため、1次コイル68との相対面が変更されても、送電状態を維持することができる。
図8に示すように、ツールホルダ26が1回転する際、1次コイル68が2次コイル76a、76b間を跨ぐ角度域(90度及び270度)で若干の効率低下が表れるものの、他の角度域では、前記1次コイル68が前記2次コイル76a、76bに確実に対向して最大効率を維持することが可能になる。
【0042】
図9には、2次コイルが3分割された構造(図示せず)での効率が示されている。各2次コイルは、中心角が120度の円弧形状に設定される。3分割では、若干の効率低下が3回だけ表れるものの、全体として所望の効率を維持することができる。また、
図10には、2次コイルが4分割された構造(図示せず)での効率が示されている。各2次コイルは、中心角が90度の円弧形状に設定される。4割では、若干の効率低下が4回だけ表れるものの、全体として効率を維持することが可能になる。
【0043】
さらにまた、本実施形態では、
図5に示すように、送電コイルユニット56と受電コイルユニット58とのエアギャップが、1mmに設定されている。従って、加工中の切削金属屑や粉が、1次ハウジング64と2次ハウジング74a、74bとの間に挟まることを阻止する一方、エアギャップが大きくなって電磁結合の効率低下が惹起することがない。
【0044】
また、内周側の1次コイル68の内周面位置と1次ハウジング64の端面との距離は、1mmに設定されるとともに、外周側の2次コイル76a(76b)の外周面位置と2次ハウジング74aの端面との距離は、1mmに設定されている。これにより、高電圧が印加されている1次コイル68及び2次コイル76a、76bを、マシニングセンタ12内のクーラントや切削金属屑等から保護することができる。
【0045】
しかも、本実施形態では、
図2に示すように、1次コイル68の内周面側と2次コイル76a(76b)の外周面側とは、スピンドル22の回転軸線(矢印L方向)と平行し且つ互いに対向して配置されている。このため、1次コイル68と2次コイル76a、76bとの結合部位の対向面積を広げようとする際、又は第1磁性体コア70及び第2磁性体コア78a、78bの面積を十分に確保しようとする際、ツールホルダ26の軸方向にのみ寸法が拡大する。従って、ツールホルダ26の外周部に対し、受電コイルユニット58の外径が大きくなることがなく、前記ツールホルダ26全体の小型化が容易に遂行されるという効果が得られる。
【0046】
例えば、
図11に示すように、比較例である縦型マシニングセンタ5に適用される非接触給電装置6は、主軸ハウジング5aに取り付けられる送電コイルユニット7と、ツールホルダ9の外周面に配設される受電コイルユニット8とを備えている。送電コイルユニット7を構成する1次コイル7aの送電面と受電コイルユニット8を構成する2次コイル8aの受電面とは、主軸回転軸線(矢印L方向)に交差する加工径方向(矢印S方向)と平行し且つ互いに対向して配置されている。
【0047】
このような構成において、電磁結合のコイル対向面積(送電面と受電面との対向面積)を広げようとする際、又は磁性体の面積を十分に確保しようとする際、ツールホルダ9の外周面に配設された受電コイルユニット8の外径Dが相当に大径化してしまう。これにより、送電コイルユニット7も大径化し、ATC動作範囲に支障があり、ツールホルダ9のマガジン部への収納スペースに不具合が発生し、実用的ではないという問題がある。しかも、クーラントに伴って飛散する微細な切削粉が、2次コイル8aの受電面に付着し易くなり、送電コイルユニット7及び受電コイルユニット8に損傷が生じるという問題がある。
【0048】
さらにまた、本実施形態では、
図5に示すように、第1磁性体コア70が複数枚のフェライト平板70fを備えている。このため、第1磁性体コア70は、各フェライト平板70fを互いに隙間なく並べるとともに、ツールホルダ26の外径寸法及び形状(R形状)に沿って容易且つ正確に湾曲状に構成することができる。一方、第2磁性体コア78a、78bは、同様にそれぞれ複数枚のフェライト平板78fを備えている。従って、第2磁性体コア78a、78bは、ツールホルダ26を構成する円筒部30の外周面に沿って容易且つ正確に湾曲構成することが可能になる。
【符号の説明】
【0049】
10…非接触給電装置 12…マシニングセンタ
18…主軸スライド 22…スピンドル
26…ツールホルダ 32…本体部
34…電子基板 36…アクチュエータ
38…モータ 46…ボールねじ
48…スライドテーブル 50…ボーリングバー
52…刃先 54…アンテナ
56…送電コイルユニット 58…受電コイルユニット
64…1次ハウジング 66…ATCアーム
68…1次コイル 70…第1磁性体コア
70f、78f…フェライト平板 72…コンデンサ
74a、74b…第2ハウジング 76a、76b…2次コイル
78a、78b…第2磁性体コア