IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社半田機工の特許一覧

特開2022-123804鉄筋用定着板及び定着板の接合装置並びにこれを用いた接合方法
<>
  • 特開-鉄筋用定着板及び定着板の接合装置並びにこれを用いた接合方法 図1
  • 特開-鉄筋用定着板及び定着板の接合装置並びにこれを用いた接合方法 図2
  • 特開-鉄筋用定着板及び定着板の接合装置並びにこれを用いた接合方法 図3
  • 特開-鉄筋用定着板及び定着板の接合装置並びにこれを用いた接合方法 図4
  • 特開-鉄筋用定着板及び定着板の接合装置並びにこれを用いた接合方法 図5
  • 特開-鉄筋用定着板及び定着板の接合装置並びにこれを用いた接合方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022123804
(43)【公開日】2022-08-24
(54)【発明の名称】鉄筋用定着板及び定着板の接合装置並びにこれを用いた接合方法
(51)【国際特許分類】
   E04C 5/03 20060101AFI20220817BHJP
【FI】
E04C5/03
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021063802
(22)【出願日】2021-02-12
(71)【出願人】
【識別番号】512166326
【氏名又は名称】株式会社半田機工
(72)【発明者】
【氏名】半田 功
【テーマコード(参考)】
2E164
【Fターム(参考)】
2E164BA12
2E164BA42
(57)【要約】
【課題】鉄筋コンクリート構造物において、鉄筋とコンクリートとの定着力を増大させるための定着板、該定着板を鉄筋に接合するための接合装置及びこの接合装置を用いて定着板を鉄筋に接合する方法を提供する。
【解決手段】円板状のフランジ部(2)と円柱状の凸部(3)からなる定着板(1)であり、該凸部(3)の外径を鉄筋(13)の呼び径とを同径とし、該定着板(1)と該鉄筋(13)とを接合するための接合装置を用いて、該定着板(1)を該鉄筋(13)に接合することで、鉄筋とコンクリートとの定着が確実に行え、定着力も強固にすることができる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート構造物で、鉄筋とコンクリートが一体となって確実に鉄筋を定着させるための定着板(1)において、該定着板(1)は円板状のフランジ部(2)と円柱状の凸部(3)からなり、該凸部(3)の外径と接合する鉄筋(12)の呼び径とを略同径とし、該フランジ部(2)の外径を鉄筋の呼び径の2.0倍~3.5倍、該フランジ部(2)の厚みを鉄筋(13)の呼び径の0.5倍~1.0倍としたことを特徴とする鉄筋用定着板。
【請求項2】
前記定着板(1)を切削加工により、該フランジ部(2)と該凸部(3)とを一体で成型したことを特徴とする請求項1に記載の鉄筋用定着板。
【請求項3】
請求項1の鉄筋用定着板(1)を鉄筋(13)の端部に接合するために、該鉄筋用定着板(1)を保持固定するための保持具(5)と、該保持具(5)及び接合すべき鉄筋(13)とを支持する支持台(9)で構成したことを特徴とする定着板の接合装置。
【請求項4】
前記保持具(5)は一端面が凹部(6)形状をし、他端面には接合する鉄筋(13)の呼び径と同径の保持金具(7)を固着しており、前記鉄筋用定着板(1)のフランジ部(2)をこの凹部(6)に遊嵌し、セットボルト(8)で固定することを特徴とする請求項3に記載の定着板の接合装置。
【請求項5】
請求項3の保持具(5)に鉄筋用定着板(1)をセットし、支持台(9)の一端に保持金具(7)を、他端には接合する鉄筋(13)を横設支持し、該鉄筋用定着板(1)の凸部(3)と該鉄筋(13)の端部とを所定の隙間を開けて対向させて固定し、該隙間の下部に裏当て材(14)を固着し、該裏当て材(14)とともに該隙間を溶接して、該鉄筋用定着板(1)と該鉄筋(13)とを接合することを特徴とする定着板の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋とコンクリートを確実に定着させるための定着板、この定着板を鉄筋の端部に接合するための接合装置、およびこの接合装置を用いて定着板を鉄筋に接合する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、コンクリート構造物を構築する際、耐震性や高層化による強度UPが要求されている。このため、コンクリートや鉄筋の材質を改善したり、鉄筋の本数を増やしたり、鉄筋径を太くすること等の対応を行っている。特に重要なことはコンクリートと鉄筋との定着性を向上させ、これら両者を一体化することで、鉄筋への引抜力に対する定着力を増大させることである。
【0003】
鉄筋の定着力を増大するために、鉄筋の先端部をL字状又はU字状に折曲したり、あるいは、その先端部に定着板を取り付けて、定着力を増大する方法等が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-307677
【特許文献2】特開2006-194069
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の鉄筋の先端部をL字状又はU字状に折曲する方法においては、コンクリート構造物で鉄筋を集中して配筋する場合、鉄筋を折曲して配設するスペースが取れないケースがある。このため、最近では、鉄筋の先端に定着板を固定して、鉄筋への引抜力に対する定着力を増大させる方法が採用されている。
【0006】
特許文献1の発明では、雌ネジを刻設したカプラを鉄筋の先端に溶接し、略リング状の定着板を該カプラにボルトで固着して定着力を増大させる方法が開示されている。また、特許文献2の発明では、鉄筋の先端部に定着板を取り付けるための定着部材を固着し、該定着部材に略リング状の定着板を鍔状に装着し、鉄筋の先端部を定着板が抜けないように膨出させている。あるいは、鉄筋の先端部を加熱し、定着板を装着後、先端部を加圧変形させて定着板を挟むように密着部と膨出部を設け定着板を挟持して、定着力を増大させる方法が開示されている。
【0007】
しかしながら、上記の特許文献1の技術は、鉄筋の先端部に定着板を装着するために、雌ネジ加工をした定着部材を事前に溶接しておく必要があり、引抜力をボルトだけで受けるため、鉄筋自身の破断強度よりも劣るという課題がある。また、特許文献2の技術は、鉄筋の先端部に定着板を装着するための取付部材を事前に溶接しておき、この取付部材に定着板を装着後、この取付部材の端部を叩く等の外圧を加え、定着板が抜けないように膨出させる。あるいは、鉄筋の端部を加熱し、定着板を加熱部に装着後、加熱部を鉄筋の垂直方向に叩く等の外圧を加え、定着板の前後に膨らみ部を設けて、定着板を固定するため、打圧装置や加熱装置が必要となる。従って、特許文献1及び特許文献2の技術は、全て現場で施工することは難しく、工場で事前に加工しておく必要があり、また、鉄筋自身の破断強度よりも強い強度を保持することは難しいという課題がある。
【0008】
本発明は、鉄筋の端部に取り付ける定着板だけを事前に準備しておけば、工事現場では溶接加工を行うのみで、定着板を鉄筋に固着でき、しかも、溶接接合部の引張強度は鉄筋自身の破断強度よりも強くできる定着板及び該定着板を取り付けるための接合装置、ならびに該接合装置を用いた定着板の接合方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る定着板は、鉄筋コンクリート構造物で、鉄筋とコンクリートが一体となって確実に鉄筋を定着させるための定着板において、該定着板は円板状のフランジ部と円柱状の凸部からなり、該凸部の外径と接合する鉄筋の呼び径とを略同径とし、該フランジ部の外径を鉄筋の呼び径の2.0倍~3.5倍、該フランジ部の厚みを鉄筋の呼び径の0.5倍~1.0倍とした定着板である。また、前記定着板を切削加工により、該フランジ部と該凸部とを一体で成型したものである。
【0010】
また、本発明に係る定着板を鉄筋の端部に取り付けるため請求項1の鉄筋用定着板を鉄筋の端部に接合するために、該鉄筋用定着板を保持固定するための保持具と、該保持具及び接合すべき鉄筋とを支持する支持台で構成した。そして、前記保持具は一端面が凹部形状をし、他端面には接合する鉄筋の呼び径と同径の保持金具を固着しており、前記鉄筋用定着板のフランジ部をこの凹部に遊嵌し、セットボルトで固定するようにした定着板の接合装置である。
【0011】
また、本発明に係る定着板を鉄筋の端部に取り付けるため、請求項3の保持具に鉄筋用定着板をセットし、支持台の一端に保持金具を、他端には接合する鉄筋を横設支持し、該鉄筋用定着板の凸部と該鉄筋の端部とを所定の隙間を開けて対向させて固定し、該隙間の下部に裏当て材を固着し、該裏当て材とともに該隙間を溶接して、該鉄筋用定着板と該鉄筋とを接合する定着板の接合方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、鉄筋コンクリート構造物で、鉄筋とコンクリートが一体となって確実に鉄筋を定着させるための定着板を事前に製作しておくことで、工事現場では該定着板と鉄筋とを溶接接合するだけで、定着板の固着が行える。そのため、工事現場での作業が容易であり、作業自体もスピーディに施工できる。しかも、定着板と鉄筋の溶接部は鉄筋径よりも太く接合するので、該溶接部の引張強度が鉄筋自身の引張破断強度よりも強くできるものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る溶接用定着板の側面図である。
図2】本発明に係る溶接用定着板の正面図である。
図3】本発明に係る定着板保持金具の側面図である。
図4】本発明に係る定着板保持金具の正面図である。
図5】本発明に係る定着板接合装置の支持台の斜視図である。
図6】本発明に係る定着板接合装置の使用状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る鉄筋用定着板及び定着板の接合装置並びに、これを用いた接合方法について図面に基いて詳述する。図1は鉄筋用の定着板1の側面図であり、図2は該定着板1の正面図である。該定着板1は鉄材を切削加工によって、一体で成型している。該定着板1は円板状のフランジ部2と円柱状の凸部3で構成され、該フランジ部2の同芯上に該凸部3を垂直に配設しており、その直交部にR部4を設けている。該R部4の半径は3~10mm程度が適切である。該R部4を設けることにより、切削時間の短縮を図るとともに、該定着板1の強度を増している。
【0015】
該フランジ部2の外径Aは、接合する鉄筋13の呼び径の2.0~3.5倍とし、該フランジ部2の厚みBは該鉄筋13の呼び径の0.5~1.0倍にしている。また、該凸部3の外径Cは該鉄筋13の呼び径と略同径とし、該凸部3の高さDは、後述する図6に示す裏当て材14がセットできる程度の最小高さにしている。該高さDは略6~20mm程度が適切であるが、これに限定するものではない。
【0016】
図3は該定着板1と該鉄筋13とを溶接する際に使用する保持具5の側面図であり、図4は該保持具5の正面図である。該保持具5は前記定着板1と鉄筋13とを溶接接合する際、該定着板1を固定するために使用する。該保持具5は円板の一端面が凹部6形状をしており、円板の他端面には円柱状の保持金具7を該凹部6の同芯上に垂直に固着している。該保持金具7は該鉄筋13を固着してもよい。また、該保持具5は鉄材を切削加工により、一体で成形してもよい。
【0017】
該凹部6に前記定着板1のフランジ部2を差し込み、セットボルト8で該定着板1を固定する。該凹部6の内径は該フランジ部2の外径よりも0.5~1.0mm程度大きく製作しており、該凹部6の深さは、該フランジ部2の厚みBと略同寸法としている。また、該保持金具7の外径は該鉄筋13の呼び径と同径としている。
【0018】
図5は該定着板1と該鉄筋13とを溶接接合するための接合装置の支持台9の斜視図である。該支持台9は円管状のフレーム10の中心線上の側面部2か所に受部12を固着し、該受部12の上部には固定ボルト11を配設している。該受部12の載置部は略V字状をしている。本実施形態では、該支持台9は円管状のフレーム10を用いているが、特に、これに限定するものではなく、例えば、角パイプ等を使用しても良いことは勿論である。
【0019】
図6は、前記保持具5及び前記支持台9で構成した接合装置を用いて、該定着板1と該鉄筋13とを溶接接合を行った状態を示す平面図である。本図を用いて該定着板1と該鉄筋13との接合方法について説明する。まず、該保持具5に該定着板1をセットし、該保持具5の保持金具7を該支持台9の一方の受部12に載置し、固定ボルト11で該保持金具7を固定する。
【0020】
次に、他方の受部12に鉄筋13を載置し、該定着板1の凸部3の端面と対向させ、該凸部3の端面との間に所定の間隔を設けて、該鉄筋13を固定ボルト11で固定する。この際、該凸部3の端面と該鉄筋13との間隔は、ルート間隔ゲージ(図示せず)等を用いて、該鉄筋13の呼び径に合った間隔に調整する。なお、2つの受部12は同一形状をしているため、該凸部3の中心と該鉄筋13の中心とは合致するようになっている。
【0021】
次に、該凸部3と該鉄筋13との隙間部の下方に略U字状をした裏当て材14をセットし、裏当て材14が脱落しないように組立溶接を行う。続いて、該鉄筋13の呼び径に合った溶接条件に調整し、該定着板1と該鉄筋13とを溶接接合を行う。溶接終了後、溶接部15の状態を確認し、該溶接部15の色が該鉄筋13と同じ色になれば、該定着板1を固定しているセットボルト8と、該鉄筋13を固定している固定ボルト11を緩め、これらを支持台9から取り外して、該定着板1と該鉄筋13との溶接接合は完了である。
【符号の説明】
【0022】
1 定着板
2 フランジ部
3 凸部
4 R部
5 保持具
6 凹部
7 保持金具
8 セットボルト
9 支持台
10 フレーム
11 固定ボルト
12 受部
13 鉄筋
14 裏当て材
15 溶接部
A フランジ部の外径
B フランジ部の厚み
C 凸部の外径
D 凸部の高さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6