(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022123823
(43)【公開日】2022-08-24
(54)【発明の名称】車両用ドアハンドル装置
(51)【国際特許分類】
E05B 85/16 20140101AFI20220817BHJP
E05B 81/78 20140101ALI20220817BHJP
E05B 77/34 20140101ALI20220817BHJP
【FI】
E05B85/16 C
E05B81/78
E05B77/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021178614
(22)【出願日】2021-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2021020660
(32)【優先日】2021-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 将之
(72)【発明者】
【氏名】森 和良
(72)【発明者】
【氏名】澤田 顕義
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250BB08
2E250FF27
2E250FF36
2E250HH01
2E250JJ03
2E250LL01
2E250PP12
2E250SS09
(57)【要約】
【課題】車両のドアに搭載された電子制御式装置を操作するためのスイッチ装置及びその操作部を備えた車両用ドアハンドル装置であって、前記操作部の動作不良の発生を抑制した車両用ドアハンドル装置を提供する。
【解決手段】 車両用ドアハンドル装置1は、ドアを開く際に車室外側から把持される中空状の筐体10であって、開口部Oが設けられている筐体10と、筐体10の内部に固定されたスイッチ装置241であって、その可動接点部CPが、筐体10の開口部Oへ向けられるように配置されたスイッチ装置241と、開口部Oに嵌め込まれ、筐体10の内側から外側へ向かう第1方向及びその反対方向である第2方向へ移動可能に支持された操作部材と、スイッチ装置241に被せられた本体部、及び開口部Oの内周部と前記操作部材の外周部との隙間に挿入されて、前記隙間を塞ぐ第1シール部を有し、前記操作部材に押圧されて、スイッチ装置241の可動接点部CPを押圧するプロテクター243と、前記操作部材と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアのドアパネルの車室外側面に組付けられ、前記ドアを開く際に車室外側から把持される中空状の筐体であって、開口部が設けられている筐体と、
前記筐体の内部に固定されたスイッチ装置であって、その可動接点部が、前記筐体の開口部へ向けられるように配置されたスイッチ装置と、
前記開口部に嵌め込まれ、前記筐体の内側から外側へ向かう第1方向及びその反対方向である第2方向へ移動可能に支持された操作部材と、
前記スイッチ装置に被せられた本体部、及び前記開口部の内周部と前記操作部材の外周部との隙間に挿入されて、前記隙間を塞ぐ第1シール部を有し、前記操作部材に押圧されて、前記スイッチ装置の可動接点部を押圧するプロテクターと、
を備えた車両用ドアハンドル装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用ドアハンドル装置において、
前記スイッチ装置を支持するホルダを備え、
前記プロテクターは、前記本体部の表面から前記第2方向へ前記突出し、且つ前記第1シール部の外周側にて前記第1シール部を囲むように延びる第2シール部を有し、
前記第2シール部は、前記ホルダと前記筐体の内側面との間に挟み込まれて、前記内側面に密着している、
車両用ドアハンドル装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用ドアハンドル装置において、
前記筐体のうち、下方へ向けられた部位に、貫通孔が設けられている、
車両用ドアハンドル装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のうちのいずれか1つに記載の車両用ドアハンドル装置において、
前記プロテクターはゴム製であり、
前記第1シール部は、前記操作部の外周面及び前記開口部の内周面に平行に延びる溝部を有する、
車両用ドアハンドル装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のうちのいずれか1つに記載の車両用ドアハンドル装置において、
前記操作部材は樹脂製であり、
前記操作部材と前記プロテクターとの間に配置された静電容量センサーを有する、
車両用ドアハンドル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアを施解錠する電子制御式ドアロック装置、車両のドアを閉じた状態に保持する電子制御式ドアラッチ装置などを操作するためのスイッチ装置を備えた車両用ドアハンドル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車両用ドアの電子制御式装置を操作するための(操作信号を発信するためのトリガーとしての)スイッチ装置を備えた車両用ドアハンドル装置が記載されている。この車両用ドアハンドル装置は、車両前後方向に延びる筐体(把持部)を備える。筐体の内部に、スイッチ装置が収容されている。このスイッチ装置は、押しボタン式の常開スイッチである。
【0003】
筐体のうち、車室内側へ向けられる面(ドアパネルに対面する部位)に、開口部が設けられている。スイッチ装置の可動接点部が前記開口部へ向けられるように、スイッチ装置が筐体内に固定されている。前記開口部にスイッチ操作部(キートップ)が嵌め込まれている。スイッチ操作部が筐体の外側から内側へ向けて押圧されると、スイッチ操作部が筐体内へ少し入り込む。このスイッチ操作部によりスイッチ装置の可動接点部が押圧されて固定接点部に接触する。これにより、スイッチ装置がオフ状態からオン状態に変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
スイッチ操作部の外周面と開口部の内周面との隙間から水滴が筐体内に侵入した後に凍結すると、操作部が筐体に対して固着する虞がある。また、同隙間から筐体内に埃が侵入した場合に、当該埃とスイッチ操作部とが干渉して、スイッチ操作部を筐体内へ押し込みにくくなる虞がある。上記の場合、電子制御式装置(電子制御式ドアロック装置、電子制御式ドアラッチ装置など)を意図通りに操作できなくなる可能性が高い。
【0006】
本発明は上記課題に対処するためになされたもので、その目的は、車両のドアに搭載された電子制御式装置を操作するためのスイッチ装置及びその操作部を備えた車両用ドアハンドル装置であって、前記操作部の動作不良の発生を抑制した車両用ドアハンドル装置を提供することにある。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の各構成要件は、実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の車両用ドアハンドル装置(1)は、
車両のドア(VD)のドアパネル(DP)の車室外側面に組付けられ、前記ドアを開く際に車室外側から把持される中空状の筐体(10)であって、開口部(O)が設けられている筐体と、
前記筐体の内部に固定されたスイッチ装置(241)であって、その可動接点部(CP)が、前記筐体の開口部へ向けられるように配置されたスイッチ装置と、
前記開口部に嵌め込まれ、前記筐体の内側から外側へ向かう第1方向及びその反対方向である第2方向へ移動可能に支持された操作部材(242)と、
前記スイッチ装置に被せられた本体部、及び前記開口部の内周部と前記操作部の外周部との隙間(D)に挿入されて、前記隙間を塞ぐ第1シール部(P1)を有し、前記操作部材に押圧されて、前記スイッチ装置の可動接点部を押圧するプロテクター(243)と、
を備える。
【0008】
上記のように構成された車両用ドアハンドル装置において、開口部の内周部と操作部材の外周部との隙間にプロテクターの第1シール部が嵌め込まれて塞がれている。よって、当該隙間から水滴、埃などが筐体の内部に侵入し難い。よって、本発明によれば、水滴が凍結することによる操作部材の動作不良、埃に起因する操作部材の動作不良などが生じ難い。
【0009】
本発明の一態様に係る車両用ドアハンドル装置において、
前記スイッチ装置を支持するホルダ(21)を備え、
前記プロテクターは、前記本体部の表面から前記第2方向へ前記突出し、且つ前記第1シール部の外周側にて前記第1シール部を囲むように延びる第2シール部(P2)を有し、
前記第2シール部は、前記ホルダと前記筐体の内側面との間に挟み込まれて、前記内側面に密着している。
【0010】
これによれば、第1シール部に加え、第2シール部によって、筐体内への水滴、埃などの侵入が抑制される。すなわち、第1シール部と開口部の内周部との間に僅かな隙間が生じ、当該隙間から少量の水滴、埃などが侵入したとしても、第2シール部により、これらの水滴又は埃が筐体内へさらに侵入することが抑制される。
【0011】
また、本発明の他の態様に係る車両用ドアハンドル装置において、
前記筐体のうち、下方へ向けられた部位に、貫通孔(TH11a)が設けられている。
【0012】
これによれば、仮に、操作部材と開口部との隙間から水滴、埃などが筐体内に少し進入したとしても、これらが、貫通孔から筐体の外側へ排出される。
【0013】
また、本発明の他の態様に係る車両用ドアハンドル装置において、
前記プロテクターはゴム製であり、
前記第1シール部は、前記操作部の外周面及び前記開口部の内周面に平行に延びる溝部を有する。
【0014】
これによれば、操作部材が第1方向又は第2方向に移動した際、第1シール部が中実状である場合に比べて、その動作に追従して第1シール部が変形し易い。言い換えれば、操作部材の操作感が軽く、良好である。
【0015】
また、本発明の他の態様に係る車両用ドアハンドル装置において、
前記操作部材は樹脂製であり、
前記操作部材と前記プロテクターとの間に配置された静電容量センサー(251)を有する。
【0016】
これによれば、、操作部材が樹脂製であることから、操作部材がゴム製である場合に比べて、操作部材自体が変形し難い。よって、静電容量センサーに、操作部材の変形に起因する荷重が印加されることを抑制でき、静電容量センサーを破損させてしまうことを抑制できる。また、操作部材が樹脂製であるので、操作部材を手で押したとき、操作部材のうち手が触れている部分が変形し難い。よって、操作部材がゴム製である場合に比べて、良好な操作感が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両用ドアハンドル装置が適用された車両用ドアの概略図である。
【
図2】
図1の車両用ドアハンドル装置の斜視図であって、左面、下面及び前面を示す図(車室内側且つ斜め前方から見た図)である。
【
図3】
図1の車両用ドアハンドル装置の左側面図である。
【
図4A】
図1の車両用ドアハンドル装置の分解斜視図であって、右面、上面及び前面を示す図(車室外側且つ斜め前方から見た図)である。
【
図4B】
図1の車両用ドアハンドル装置の分解斜視図であって、右面、下面及び後面を示す図(車室外側且つ斜め後方から見た図)である。
【
図4C】
図1の車両用ドアハンドル装置の分解斜視図であって、左面、下面及び前面を示す図(車室内側且つ斜め前方から見た図)である。
【
図4D】
図1の車両用ドアハンドル装置の分解斜視図であって、左面、上面及び後面を示す図(車室内側且つ斜め後方から見た図)である。
【
図5A】
図4Cの電気回路装置を車室内側且つ斜め前方から見た分解斜視図である。
【
図5B】
図4Cの電気回路装置を車室外側且つ斜め前方から見た分解斜視図である。
【
図8】本発明の変形例に係る車両用ドアハンドル装置のカバー部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係る車両用ドアハンドル装置1について説明する。まず、車両用ドアハンドル装置1が適用された車両用ドアVD(
図1参照)の概略構成について説明しておく。なお、本実施形態は、本発明を、車両の右側の車両用ドアVDに取り付けられる車両用ドアハンドル装置1に適用した例であるが、本発明は、他の車両用ドアに取り付けられる車両用ドアハンドル装置にも適用可能である。
【0019】
車両用ドアVDは、車両本体の乗降口に組み付けられる。車両用ドアVDの前側の縁部が、上下方向に延びる回動軸を有するヒンジを介して、車両本体の乗降口の前側の縁部に取り付けられる。車両用ドアVDは、ドアパネルDPを備える。ドアパネルDPは、車室内側に配置されたインナーパネルIPと、車室外側に配置されたアウターパネルOPを備える。インナーパネルIPの縁部とアウターパネルOPの縁部が接合されている。両パネルが接合された状態で、両者の間に空間が形成されるように、インナーパネルIP及びアウターパネルOPが、予めプレス成形されている。
【0020】
ドアパネルDPの内部には、車両本体の乗降口(開口部)の内周縁部に設けられたストライカSTに係合して車両用ドアVDが閉じられた状態に保持するドアラッチ装置L1が取り付けられている。ドアラッチ装置L1は、ストライカSTに係合可能なラッチ本体L1a、及びラッチ本体L1aを駆動する(回動させる)電子制御式アクチュエーターL1bを備える。この電子制御式アクチュエーターL1bは、詳しくは後述するように、所定の操作子が操作されたとき(後述する押しボタン式のスイッチ装置241がオフ状態からオン状態に遷移したとき)、ラッチ本体L1aとストライカSTとの係合を解除させる。
【0021】
さらに、ドアパネルDPの内部には、車両用ドアVDの開放(ラッチ本体L1aの回動)を禁止した状態と、同ドアの開放を許容した状態とを切り替えるドアロック装置L2が取り付けられている。ドアロック装置L2は、所定の操作子(本実施形態では、タッチセンサー及び携帯型端末(キー))の操作状態に応じて、電子制御式アクチュエーターL1bの駆動力がラッチ本体L1aに伝達される状態と、同駆動力がラッチ本体L1aに伝達されない状態とを切り替えるための機構L2a、及び当該機構L2aを駆動する電子制御式アクチュエーターL2bを備えている。
【0022】
車両用ドアハンドル装置1は、車両用ドアVDのアウターパネルOPの外側面に配置される。車両用ドアハンドル装置1は、
図2及び
図3に示すように、車両前後方向に延設されている。以下の説明において、車両前後方向を、単に前後方向と呼ぶ。また、車両高さ方向を上下方向と呼び、車両幅方向を左右方向と呼ぶ。また、各図における矢印X1が前方を示し、矢印X2が後方を示す。また、矢印Y1が上方を示し、矢印Y2が下方を示す。また、矢印Z1が左方(車両用ドアハンドル装置1から見て車室内側)を示し、矢印Z2が右方(車両用ドアハンドル装置1から見て車室外側)を示す。
【0023】
車両用ドアハンドル装置1は、ドアパネルDP内に設けられた図示しないドアハンドルフレームに支持(固定)されている。
【0024】
車両用ドアハンドル装置1は、
図4A乃至
図4Dに示すように、筐体10及び電子回路装置20を備える。電子回路装置20は、筐体10内に収容されている。
【0025】
筐体10は、ベース部11及びカバー部12を備える。
【0026】
ベース部11は、前後方向に延設されている。ベース部11は、合成樹脂製であり、一体的に形成されている。ベース部11は、右方(車室外方)へ開放された略直方体状の箱状部材である。ベース部11の前後方向における中間部11aの深さ(左右方向の寸法)に比べて、前端部11bの深さが少し大きく、その前端部11bの深さに比べて、後端部11cの深さがさらに大きい。中間部11aの底壁部11a1は、その長手方向(前後方向)における中央部よりも前端部及び後端部が少し左方(車室内方)に位置するように湾曲している(
図4C、
図4D参照)。底壁部11a1には、前後方向に延びる略長方形の開口部Oが形成されている。また、前端部11bの左面から左方へ延びる脚部11dが設けられている。後端部11c及び脚部11dが、アウターパネルOPに設けられた図示しない開口部からドアパネルDP内に挿入され、ドアパネルDP内に設けられた図示しないドアハンドルフレームに取り付けられる。後端部11c及び脚部11dがドアハンドルフレームに取り付けられた状態において、中間部11aの底壁部11a1とアウターパネルOPとの間に空間が形成されるように、アウターパネルOPにおいて中間部11aに対向する部位に凹部が形成されている。ユーザーは、車外から、当該空間に手を挿入して筐体10を把持することができる。
【0027】
さらに、中間部11aにおける下方へ向けられた面に、比較的小さな貫通孔TH
11aが設けられている(
図4A、
図4B参照)。
【0028】
カバー部12は、前後方向に延設されている。カバー部12は、合成樹脂製であり、一体的に形成されている。カバー部12は、内部に空間を有するように、ドーム状に形成されている。カバー部12は、後述する電子回路装置20がベース部11に収容された状態で、ベース部11の右側からベース部11に被せられ、ベース部11に係止される。
【0029】
電子回路装置20は、ホルダ21、アンテナ22、ロック操作子23、アンラッチ操作子24及びアンロック操作子25及びコネクタ26を備える。
【0030】
ホルダ21は、前後方向に延設され、以下に説明するロック操作子23、アンラッチ操作子24及びアンロック操作子25を及びコネクタ26をそれぞれ支持する支持部を備えている。
【0031】
アンテナ22は、前後方向に延設されている。アンテナ22は、ユーザーが携行している携帯型端末(キー)へ各種情報を表す信号(電波)を発信する。また、アンテナ22は、前記携帯型端末(キー)から各種情報を表す信号(電波)を受信する。アンテナ22は、ホルダ21の右面における前半部に取り付けられている。
【0032】
ロック操作子23は、静電容量センサー部231(タッチセンサー)及び端子部232を有する。静電容量センサー部231は、前後方向に延び、且つ左右方向に垂直な金属板である。ロック操作子23は、静電容量センサー部231の静電容量の変化に応じた電気信号を端子部232から出力する。ロック操作子23は、ホルダ21の右面における前端部(アンテナ22の前方)に取り付けられている。
【0033】
アンラッチ操作子24は、
図5A及び
図5Bに示すように、スイッチ装置241、操作レバー242及びプロテクター243を備える。
【0034】
スイッチ装置241は、押しボタン式の常開スイッチ241a、スイッチケース241b、出力端子(ワイヤーハーネス)241cなどから構成されている。スイッチ装置241は、ホルダ21の後端部の右面に取り付けられる。ホルダ21の後端部に貫通孔TH21が設けられている。この貫通孔TH21内に、スイッチ装置241の可動接点部CPが配置されて、開口部Oの後部へ向けられている。
【0035】
操作レバー242は、前後方向に延びる略板状に形成されている。操作レバー242は、比較的硬質(少なくとも、後述するプロテクター243よりも硬質)の合成樹脂製であり、一体的に形成されている。操作レバー242は、本体部242a、ヒンジ部242b、爪部242c及びフック部242dを備える。本体部242aの形状は、開口部Oの形状と略同一である。ヒンジ部242bは、本体部242aの前端から少し前方へ突出している。本体部242aは、開口部Oに嵌め込まれている。本体部242aの外周面と開口部Oの内周面との間に、比較的小さい空隙Dが形成されるように、本体部242a及び開口部Oの寸法が設定されている(
図6及び
図7参照)。ヒンジ部242bの左面には、上下方向に延びる凸部P
242bが設けられている。
【0036】
ヒンジ部242bは、ベース部11の底壁部11a1の右面(筐体10の内側面)であって、開口部Oの前側の辺よりも少し前方に位置する部分と、ホルダ21との間に挟み込まれている(
図7参照)。凸部P
242bが、ベース部11の底壁部の右面(筐体10の内側面)に当接している。ベース部11の底壁部11a1の右面のうち、凸部P
242bとベース部11の底壁部11a1との当接部より少し後方に位置する部分に、上下方向に延びる凸部P
11aが形成されている。凸部P
11aは、凸部P
242bに当接し、操作レバー242が後方へ移動して筐体10から抜け落ちることを規制している。
【0037】
爪部242cは、本体部242aの後端部から後方への延設されている。爪部242cは、ホルダ21とベース部11との間に設けられた空間S内に位置している。
【0038】
フック部242dは、本体部242aの右面から右方へ突出していて、その先端部が前方へ屈折して少し延びている。
【0039】
プロテクター243は、前後方向に延びる略板状に形成されている。プロテクター243は、ホルダ21と操作レバー242との間に配置されている。プロテクター243は、本体部243a、第1凸部P1、第2凸部P2及び第3凸部P3を備える。プロテクター243は、操作レバー242よりも軟質の合成ゴム製であり、一体的に形成されている。本体部243aは、略長方形の板状部である。本体部243aの右面がホルダ21の左面に当接している。本体部242aは、ホルダ21の左面におけるスイッチ装置241が取り付けられた部分(貫通孔TH21)を覆っている。
【0040】
第1凸部P1は、本体部243aの左面に形成されている。第1凸部P1は、空隙Dに沿うように延設され、空隙Dに嵌め込まれて、空隙Dを塞いでいる(
図6参照)。第1凸部P1は中空状である。すなわち、第1凸部P1の延設方向に垂直な断面は、略U字形の溝部Gを有する。言い換えれば、第1凸部P1は、操作レバー242の本体部242aの外周面に沿う第1側壁部W1と、開口部Oの内周面に沿う第2側壁部W2と、前記第1側壁部W1及び第2側壁部W2の左端部同士を接続する円弧状の底壁部W3とを有する。なお、第1凸部P1は、本発明の第1シール部に相当する。
【0041】
第2凸部P2は、本体部243aの左面にて、その外縁部(上側の辺、下側の辺及び後側の辺)に沿って延設されている。すなわち、第2凸部P2は、第1凸部P1を取り囲んでいる。第2凸部P2は、ベース部11の底壁部11a1の左面(筐体10の内側面)に当接して少し変形している。すなわち、第2凸部P2が底壁部11a1に密着している。なお、第2凸部P2は、本発明の第2シール部に相当する。
【0042】
第3凸部P3は、左右方向に延びる円柱状を呈する。その右半部が、本体部253aの右面から右方へ突出し、その左半部が、本体部243aの左面から左方へ突出している。第3凸部P3の右半部の頂面が、スイッチ装置241の可動接点部CPに対向している。
【0043】
さらに、プロテクター243には、貫通孔TH243が設けられている。操作レバー242のフック部242dが、貫通孔TH243に挿入されていて、通常状態(操作レバー242が操作されていない状態)で、貫通孔TH243の周辺部に係止されている。
【0044】
アンロック操作子25は、静電容量センサー部251及び端子部252を有する。静電容量センサー部251は、前後方向に延び、且つ左右方向に垂直な金属板である。静電容量センサー部251は、操作レバー242の右面に係止されている。アンロック操作子25は、静電容量センサー部251の静電容量の変化に応じた電気信号を端子部252から出力する。
【0045】
コネクタ26は、ホルダ21の前端部に取り付けられている。コネクタ26は、ハウジング261及び複数のコンタクトピン262を備える。ハウジング261は、ホルダ21の前端から左方へ延びる筒状に形成されている。複数のコンタクトピン262は、ハウジング261内に収容されて所定の順に整列されている。
【0046】
アンテナ22、ロック操作子23、アンラッチ操作子24及びアンロック操作子25の端子が、ワイヤーハーネス、バスバーなどを介して、各コンタクトピン262に接続されている。車両本体に設けられた図示しない制御装置と、電子回路装置20とを接続する通信ケーブルのプラグがハウジング261に嵌合される。このようにして、アンテナ22、ロック操作子23、アンラッチ操作子24及びアンロック操作子25が車両の制御装置に接続され、各操作子の操作態様を表す電気信号が制御装置に供給されるように構成されている。
【0047】
通常状態では、操作レバー242は、プロテクター243の弾性力により、操作レバー242の本体部242aが筐体10の外側へ向かうように付勢され、爪部242cがベース部11に当接した状態で静止している。
【0048】
車両用ドアVDが閉じられて施錠された状態で、携帯型端末(キー)を所持したユーザーが自車両の周囲の所定の領域に存在しない場合には、制御装置は、ドアロック装置L2が車両用ドアVDを施錠状態から解錠状態に遷移させることを禁止している。すなわち、この状態では、車両用ドアVDが施錠されたままであり、他人が、車外から車両用ドアVDを開けることはできない。
【0049】
携帯型端末(キー)を所持したユーザーが自車両に接近して上記の所定の領域に進入すると、当該携帯型端末から発信された信号(電波)がアンテナ22によって受信され、当該信号が車両の制御装置に供給される。そして、制御装置と携帯型端末との間で認証処理が実行される。当該携帯型端末が自車両に対応した端末であれば、制御装置は、当該携帯型端末を、正規の端末として認証する。
【0050】
この状態において、ユーザーが操作レバー242の本体部242aの表面に触れると、アンロック操作子25の静電容量センサー部251の静電容量が変化する。制御装置は、静電容量センサー部251の静電容量が変化したことに基づいて、ユーザーが解錠を要求していることを認識する。そして、制御装置は、ドアロック装置L2を制御して、車両用ドアVDを施錠状態から解錠状態に遷移させる。すなわち、制御装置は、ドアラッチ装置L1のラッチ本体L1aの回動を許容する。
【0051】
この状態で、ユーザーが操作レバー242の本体部242aを筐体10内へ向かって押し込むと、操作レバー242のヒンジ部242bが撓んで、本体部242aが筐体10内へ移動し、プロテクター243を押圧する。すると、プロテクター243が弾性変形する。そして、操作レバー242の爪部242cがホルダ21に当接して静止する。その際、第3凸部P3によりスイッチ装置の可動接点部CPが押圧されて、スイッチ装置241がオフ状態からオン状態に遷移する。制御装置は、スイッチ装置241がオフ状態からオン状態に遷移したことを検知すると、ドアラッチ装置L1を制御して(電子制御式アクチュエーターL1bを駆動して)、ラッチ本体L1aとストライカSTとの係合を解除させる。そして、ユーザーが車両用ドアハンドル装置1の筐体10を把持して手前に引くことにより、車両用ドアVDが開く。
【0052】
ユーザーが車両用ドアVDを閉じ、筐体10のカバー部12の前端部(ロック操作子23)に触れると、ロック操作子23の静電容量センサー部251の静電容量が変化する。制御装置は、この静電容量センサー部251の静電容量が変化したことに基づいて、ユーザーが施錠を要求していることを認識する。そして、制御装置は、ドアロック装置L2を制御して、車両用ドアVDを解錠状態から施錠状態に遷移させる。
【0053】
上記のように構成された車両用ドアハンドル装置1において、操作レバー242の外周面と開口部Oの内周面との間の空隙Dにプロテクター243の第1凸部P1が嵌め込まれて塞がれている。よって、当該空隙Dから水滴、埃などが筐体10の内部に侵入し難い。さらに、第1凸部P1の外側に配置された第2凸部P2によって、筐体10への水滴、埃などの侵入が抑制される。すなわち、第1凸部P1と開口部Pの内周面との間に僅かな隙間が生じ、当該隙間から少量の水滴、埃などが侵入したとしても、第2凸部P2により、これらの水滴又は埃が筐体10内へさらに侵入することが抑制される。仮に、水滴、埃などが筐体10内に少し侵入したとしても、これらが、貫通孔TH11aから筐体10の外側へ排出される。よって、本実施形態によれば、水滴が凍結することによる操作レバー242の動作不良、埃に起因する操作レバー242の動作不良などが生じ難い。また、第1凸部P1は、その断面がU字型を呈するように構成されている。すなわち、第1凸部P1が中空状に形成されている。よって、第1凸部P1が中実状である場合に比べて、操作レバー242が筐体10内へ押し込まれた際、その動作に追従して第1凸部P1が変形し易い。言い換えれば、操作レバー242の操作感が軽く、良好である。
【0054】
また、合成樹脂製の操作レバー242の本体部242aの右面(裏面)に静電容量センサー部251が配置されている。よって、操作レバー242の本体部242aが押されたとき、操作レバー242が合成ゴム製である場合に比べて、本体部242aが変形し難い。よって、静電容量センサー部251に、本体部242aの変形に起因する荷重はほとんど印加されず、静電容量センサー部251を破損させてしまうことを抑制できる。また、操作レバー242が合成樹脂製であるので、本体部242aを手で押したとき、本体部242aのうち手が触れている部分はほとんど変形しない。よって、操作レバー242が合成ゴム製である場合に比べて、良好な操作感が得られる。
【0055】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0056】
例えば、上記実施形態では、スイッチ装置241は、ドアラッチ装置L1を駆動するための操作子として機能するが、スイッチ装置241は、他の装置を操作するための操作子として機能するように構成されてもよい。また、上記実施形態では、押しボタン式のスイッチ装置241を採用しているが、可動接点部を有する他のスイッチ装置を採用してもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、筐体10のうち、ドアパネルDP側へ向けられた面に開口部Oが設けられている。これに代えて、例えば、
図8に示したように、筐体10のうち、ドアパネルDPとは反対側へ向けられた面(カバー部12)に開口部Oが設けられてもよい。この場合、アンラッチ操作し24及びアンロック操作子25は、それらの車幅方向の向きが上記実施形態とは反対向きになるように、筐体10内に取り付けられる。
【符号の説明】
【0058】
1…車両用ドアハンドル装置、10…筐体、11…ベース部、12…カバー部、20…電子回路装置、21…ホルダ、22…アンテナ、23…ロック操作子、24…アンラッチ操作子、25…アンロック操作子、26…コネクタ、241…スイッチ装置、242…操作レバー、243…プロテクター、L1…ドアラッチ装置、L2…ドアロック装置、O…開口部、P1…第1凸部、P2…第2凸部、P3…第3凸部、ST…ストライカ、VD…車両用ドア