(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022123857
(43)【公開日】2022-08-24
(54)【発明の名称】アイススケートシューズ用のブレード、アイススケートシューズのブレード用のホルダー、およびアイススケートシューズ
(51)【国際特許分類】
A63C 1/30 20060101AFI20220817BHJP
A43B 5/16 20060101ALI20220817BHJP
A63C 1/02 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
A63C1/30
A43B5/16
A63C1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017515
(22)【出願日】2022-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2021021213
(32)【優先日】2021-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】316012566
【氏名又は名称】株式会社チャレンヂ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】高橋 良明
(72)【発明者】
【氏名】白井 義人
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050JA15
(57)【要約】
【課題】より軽量な、アイススケートシューズ用のブレード、アイススケートシューズのブレード用のホルダー、およびアイススケートシューズを実現する。
【解決手段】本発明の一実施形態のアイススケートシューズ(50)は、ブレード(30)を具備し、ブレード(30)が具備するホルダー(10)は、ランナー固定部(11)と、靴固定部(13)と、本体部(15)とを備え、CFRPによって一体的に構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
氷に接するランナーと、
前記ランナーを保持するためのホルダーと、
を備え、
前記ホルダーは、
前記ランナーが固定されているランナー固定部と、
靴を固定するための靴固定部と、
当該ランナー固定部と当該靴固定部との間に設けられている本体部と、
を備え、
前記ホルダーは、炭素繊維強化プラスチックを含み、
前記ランナー固定部、前記靴固定部および前記本体部は、一体構成となっている、
アイススケートシューズ用のブレード。
【請求項2】
前記ランナー固定部には、前記ランナーが接着固定されており、ボルトによる固定はされていない、
請求項1に記載のアイススケートシューズ用のブレード。
【請求項3】
前記ランナー固定部と前記ランナーとの固定には、接着剤のみが用いられている、
請求項1または2に記載のアイススケートシューズ用のブレード。
【請求項4】
前記ランナー固定部には、ボルトを挿通する穴が設けられていない、
請求項1から3の何れか1項に記載のアイススケートシューズ用のブレード。
【請求項5】
前記靴固定部は、
前記靴の踵側の領域に対向する第1面と、
前記靴のつま先側の領域に対向する第2面と、
前記第1面と前記第2面と同一面上にあり、前記第1面と前記第2面とを繋ぐ第3面であって、前記踵側の領域と前記つま先側の領域とに挟まれている中間領域に対向する第3面と、
を有する、
請求項1から4の何れか1項に記載のアイススケートシューズ用のブレード。
【請求項6】
前記ホルダーは、複数積層させたプリプレグの積層体の硬化物であり、
前記積層体の少なくとも表層には、織物プリプレグが用いられている、
請求項1から5の何れか1項に記載のアイススケートシューズ用のブレード。
【請求項7】
前記積層体の中間層には、ユニダイレクショナル材が用いられている、
請求項6に記載のアイススケートシューズ用のブレード。
【請求項8】
前記靴固定部は、
前記靴の踵側の領域に対向する第1面と、
前記靴のつま先側の領域に対向する第2面と、
を有し、
前記第1面および前記第2面とは、当該第1面および当該第2面と同一面内においては繋がっていない、
請求項1から4の何れか1項に記載のアイススケートシューズ用のブレード。
【請求項9】
前記本体部の厚さは、前記靴固定部の厚さ以上である、
請求項8に記載のアイススケートシューズ用のブレード。
【請求項10】
氷に接するランナーを固定するためのランナー固定部と、
靴を固定するための靴固定部と、
前記ランナー固定部と前記靴固定部との間に設けられた本体部と、
を備え、
前記ランナー固定部、前記靴固定部および前記本体部は、一体構成となっており、
炭素繊維強化プラスチックを含む、
アイススケートシューズのブレード用のホルダー。
【請求項11】
請求項1から9の何れか1項に記載のアイススケートシューズ用のブレードを備えるアイススケートシューズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイススケートシューズ用のブレード、アイススケートシューズのブレード用のホルダー、およびアイススケートシューズに関する。
【背景技術】
【0002】
アイススケートシューズは、靴の底部に装着されたブレードの下端に金属製のランナーを具備している。
【0003】
そのようなブレードとして、例えば特許文献1に開示されたアイススケート用ブレードがある。特許文献1には、プラスチック樹脂製のホルダーにランナーが埋め込まれたアイススケート用ブレードが開示されている。また、特許文献2には、ランナーと、金属あるいはプラスチックからなるホルダーとが接着剤が使用されて挟着固定されたアイススケートシューズ用ブレードが開示されている。また、特許文献3には、プラスチック製の支持体(ホルダー)にブレードが埋め込まれたアイススケート用ブレードが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭58-124176号公報
【特許文献2】特開平1-198575号公報
【特許文献3】特開昭54-100838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フィギュアスケート等においてジャンプして空中で回転する場面があるが、着氷時に先述のブレードには大きな負荷がかかる。そのため、ブレードにはその負荷に耐え得る強度が求められる。強度の面のみを考慮すれば、ブレードに具備されるホルダーを金属材料によって構成することが考えられるが、金属材料を使用した場合はホルダーの重量が問題となる。ジャンプ等を考慮すれば、ブレード(ホルダー)は軽量であることが求められる。
【0006】
本発明の一態様は、より軽量な、アイススケートシューズ用のブレード、アイススケートシューズのブレード用のホルダー、およびアイススケートシューズを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る、アイススケートシューズ用のブレードは、氷に接するランナーと、前記ランナーを保持するためのホルダーと、を備え、前記ホルダーは、前記ランナーが固定されているランナー固定部と、靴を固定するための靴固定部と、当該ランナー固定部と当該靴固定部との間に設けられている本体部と、を備え、前記ホルダーは、炭素繊維強化プラスチックを含み、前記ランナー固定部、前記靴固定部および前記本体部は、一体構成となっている。
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る、アイススケートシューズのブレード用のホルダーは、氷に接するランナーを固定するためのランナー固定部と、靴を固定するための靴固定部と、前記ランナー固定部と前記靴固定部との間に設けられた本体部と、を備え、前記ランナー固定部、前記靴固定部および前記本体部、一体構成となっており、炭素繊維強化プラスチックを含む。
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る、アイススケートシューズは、本発明の一態様に係るアイススケートシューズ用のブレードを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、より軽量な、アイススケートシューズ用のブレード、アイススケートシューズのブレード用のホルダー、およびアイススケートシューズを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態のブレードを具備するアイススケートシューズの側面図である。
【
図4】硬化する前のプリプレグの積層体の断面図であり、
図3に示す切断線A-A´においてホルダーを切断した位置に相当する矢視断面図である。
【
図5】本発明の別の実施形態のブレードの上面図である。
【
図6】本発明の更に別の実施形態のブレードの側面図である。
【
図7】本発明の更に別の実施形態のブレードの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、
図1から
図4を用いて説明する。本実施形態では、アイススケートシューズと、当該アイススケートシューズに具備されているブレードと、当該ブレード用のホルダーとについて説明する。
【0013】
(アイススケートシューズ)
図1は、本実施形態のブレード30を具備するアイススケートシューズ50の側面図である。
図1において、図面左側がつま先側、図面右側が踵側である。アイススケートシューズ50は、ブレード30と、靴40とを備える。
【0014】
靴40は、アイススケートシューズ50を装着するユーザーの足を入れる部分であり、例えばブーツがあるが、これに限らない。
【0015】
ブレード30は、靴40の底に固定される装具である。ブレード30は、氷に接するランナー20と、当該ランナー20を保持するホルダー10とを具備する。なお、以下の説明においてブレード30の各構成要素およびそれらの相対位置を説明する。その説明において、ブレード30における靴40を固定する側を「上(上側)」と表現し、ブレード30における氷側を「下(下側)」と表現することがある。
【0016】
(ランナー20)
ランナー20は、
図1に示すように、つま先側から踵側に細長く構成された金属部材である。ランナー20の下端にはエッジ21が設けられており、ユーザーは、エッジ21を氷に接触させることで氷上を滑走できる。ランナー20は、長手方向に沿って延びた上部において、ホルダー10のランナー固定部11に固定される。固定の態様については、後述する。
【0017】
ランナー20は、金属材料によって構成される。従来公知のランナーに適用可能な金属材料を採用でき、耐久性を考慮すれば、ランナー20はスチール製であることが好ましい。なお、例えば、形状等のランナー20のその他の構成については、従来公知のランナーの構成を採用することができる。
【0018】
(ホルダー10)
ホルダー10は、ランナー20が固定されているランナー固定部11と、靴40を固定するための靴固定部13と、当該ランナー固定部11と当該靴固定部13との間に設けられている本体部15とを備える。ホルダー10は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を含み、ランナー固定部11、靴固定部13および本体部15は、一体構成となっている。この構成により、より軽量なホルダー10を実現でき、結果的に、より軽量なブレード30を実現できる。また、CFRPは強度にも優れている。よって、本発明の一態様によれば、軽量であり、且つ、強度に優れるアイススケートシューズ用のブレード、当該ブレード用のホルダーを実現できる。なお、本実施形態ではホルダー10がCFRPのみから構成されている場合について説明するが本発明はこのような形態に限定されない。例えば、ホルダーの内部に別の材料で構成された部分を含んでもよく、また、表面に塗装層等を含んでもよい。
【0019】
ホルダー10は、つま先側または踵側から見ると略T字型を有している。具体的には、アイススケートシューズ50を装着したユーザーが氷上に直立した状態において、本体部15が、氷面付近にあるランナー固定部11から概ね鉛直方向に起立しており、本体部15の上端に、氷面と略平行に延びた靴固定部13が設けられている。
【0020】
(1)ランナー固定部11
ランナー固定部11には、ランナー20が固定されており、ランナー固定部11の下部と、ランナー20の上部とが固着している。これは、ホルダー10の下部に、ランナー20が固着していると換言することもできる。具体的には、ランナー固定部11と、ランナー20とは、接着固定されている。接着固定には、接着剤のみが用いられ、ボルトによる固定はされていない。この構成により、ボルト固定に比べ、ボルトが不要である分、軽量化を図ることができる。また、ランナー固定部11にボルト挿通用の穴を設ける必要がないため、強度をより向上させることができる。
【0021】
以下、ランナー固定部11とランナー20との接着固定の詳細を、
図2を用いて説明する。
【0022】
図2は、ホルダー10(ランナー固定部11)と、ランナー20とが分離した状態のブレード30の分解図となっている。なお、説明の便宜上、
図2以降は靴40の図示を省略する。
【0023】
ランナー固定部11の下部には、
図2に示すように、ホルダー側嵌合部17が設けられている。ホルダー側嵌合部17は、下に向いて開口し、本体部15に向かって凹である凹部であり、つま先側から踵側に延びたランナー固定部11の下端面に沿って延設された溝である。一方、ランナー20の上部には、ホルダー側嵌合部17に嵌合するランナー側嵌合部23が設けられている。ランナー側嵌合部23は、上方に向かって凸であり、つま先側から踵側に向かって延設されている。これらホルダー側嵌合部17とランナー側嵌合部23とが嵌合した状態において、両者の間には、接着剤が介在する間隙が設けられている。
【0024】
ホルダー10(ランナー固定部11)にランナー20を固定する際には、ホルダー側嵌合部17およびランナー側嵌合部23の少なくとも一方に接着剤を塗布する工程と、続いて、ホルダー側嵌合部17とランナー側嵌合部23とを嵌合させる工程を行う。接着剤としては、エポキシ接着剤、アクリル樹脂系接着剤等を用いることができる。中でもエポキシ接着剤がより好ましい。エポキシ接着剤は可使時間が長く、接着作業中に硬化してしまうことが無いため、ハンドリングがより良好である。また、エポキシ接着剤は接着強度がより高いこともあり、より好ましい。なお、エポキシ接着剤としては、例えば、アラルダイト(登録商標)等が挙げられ、アクリル樹脂系接着剤としては、ゴルフクラブ組立用接着剤、リシャフト用接着剤等の低臭気2液アクリル樹脂系接着剤等が挙げられる。
【0025】
このようにランナー固定部11と、ランナー20とは、接着剤によって固定されており、ボルトによる固定はされていないため、ランナー固定部11にはボルトを挿通する穴が設けられていない。そのため、ボルトによる固定に比べ、ボルトが不要である分、軽量化を図ることができる。また、ランナー固定部11にボルト挿通用の穴を設ける必要がないため、強度をより向上させることができる。
【0026】
(2)本体部15
本体部15は、ランナー固定部11と靴固定部13との間にある。
図1に示すように、本体部15は、ランナー固定部11側が、ランナー固定部11の長手方向の長さと同じ長さを有する一方で、靴固定部13側は、ランナー固定部11側に比べて短く構成されている。具体的には、本体部15は、ランナー固定部11側が、靴固定部13側に比べて、踵側に突出している。
【0027】
本体部15には、靴固定部13に近い端部に、つま先側から踵側にかけて、第1穴151および第2穴152が設けられている。第1穴151および第2穴152は、ユーザーが、キャッチフットと呼ばれるブレード30を握りながら行う技の際に、ブレード30に手(指)を入れる穴である。
図1のように第2穴152が第1穴151よりも長手方向に大きく、その長さは、特に制限はないが、例えば、指をストレスなく出し入れすることができる大きさとすることができる。例えば、第2穴152は、指5本がストレスなく出入りする長さを有している。なお、第1穴151および第2穴152の短手方向の大きさ(鉛直方向の長さ)も、指の出し入れを考慮して適宜設定すればよい。第1穴151および第2穴152は、後述するように積層体を形成した後に、手動または機械的に窄孔することによって形成することができる。
【0028】
なお、本体部15に設ける穴は、適宜個数を設定することができるほか、大きさも適宜設定することができる。
【0029】
(3)靴固定部13
靴固定部13は、靴40を固定するためのものである。固定により、ブレード30が靴40に装着された状態となる。ここで、靴40の底面は、踵側の領域と、つま先側の領域と、踵側の領域とつま先側の領域とに挟まれた中間領域とを有している。そして、靴固定部13は、そのそれぞれの領域に対向する面を有している。これについて、
図3を用いて説明する。
図3は、ホルダー10の上面図であり、靴固定部13の上面図である。
【0030】
靴固定部13は、
図3に示すように、前記踵側の領域に対向する第1面131と、前記つま先側の領域に対向する第2面132と、第1面131と第2面132と同一面上にあり、第1面131と第2面132とを繋ぐ、前記中間領域に対向する第3面133と、を有する。具体的には、第1面131と、第2面132と、第3面133とは、平坦な面内に構成される。
【0031】
靴固定部13と靴40(
図1)とは、踵側の第1面131およびつま先側の第2面132とにそれぞれ設けられた複数のビス穴19を通じてビス留め固定されている。
【0032】
靴固定部13は、このように、靴40の底面全体に対向する領域を有し、踵側からつま先まで連続した構造を有している。これにより、スタビライザー効果で、ブレード30の捻れを抑制することができる。そのため、アイススケートシューズ全体の剛性が向上し、より正確なインフォメーションをユーザーに与えることができる。また、CFRPによって構成されているため、より高い強度を有し、且つ軽量であるというメリットがある。
【0033】
本実施形態のブレード30(ホルダー10)は、以上のランナー固定部11と、靴固定部13と、本体部15とが、CFRPによって一体的に構成されている。具体的には、ホルダー10は、複数積層させたプリプレグの積層体の硬化物である。以下、
図4を用いて、プリプレグを硬化する前の積層体の構成について説明する。
【0034】
(ホルダー10の積層構成)
図4は、硬化する前のプリプレグの積層体の断面図であり、
図3に示す切断線A-A´においてホルダー10を切断した位置に相当する矢視断面図である。
図4には、先述した略T字型で、断面構成が示されており、各プリプレグシートを、一本の実線、または一本の点線で表現している。実線と点線とは、プリプレグシートに含まれる強化繊維の配向方向の違いにより区別している。詳細については後述する。
【0035】
図4の紙面上側には、複数のプリプレグシートが積層されている第1の積層部分401がある。第1の積層部分401は、実線で示す第1プリプレグシート501と、点線で示す第2プリプレグシート502と、が交互に積層されている。
【0036】
図4の第1の積層部分401の下側にある第2の積層部分402は、L字型の2つの積層体SL1、SL2を背合せにして、間に第2プリプレグシート502を挟んでなる部分である。各L字型の積層体SL1、SL2は、第1プリプレグシート501と、第2プリプレグシート502とが交互に積層されてなる。また、各L字型の積層体SL1、SL2は、1箇所において屈曲している。
【0037】
第2の積層部分402のうち、L字型の積層体SL1、SL2同士の背合せ部分402aは、L字型の積層体SL1に基づく複数のプリプレグシートと、L字型の積層体SL2に基づく複数のプリプレグシートと、それらの間の1枚の第2プリプレグシート502と、を合せた構成となっている。
【0038】
一方、第2の積層部分402のうち、L字型の積層体SL1、SL2が互いに離れる方向に延びた部分402bも、第1プリプレグシート501と、第2プリプレグシート502とが交互に積層されてなる。先の第1の積層部分401は、第2の積層部分402の部分402bの上に積層方向を合せて配されている。これにより、第1の積層部分401と第2の積層部分402の部分402bとを合せた部分の積層枚数は、部分402aの積層枚数と同一となっている。この第1の積層部分401と第2の積層部分402の部分402bとを合せた部分が、靴固定部13を構成している。
【0039】
一方、背合せ部分402aのうち、屈曲箇所を含まない部分が、本体部15およびランナー固定部11を構成している。
【0040】
以上のように第1プリプレグシート501と、第2プリプレグシート502とが交互に積層されてなる積層体の積層枚数は、硬化後の積層体において所望する厚さに応じて適宜設定すればよい。厚さは、所望の強度になるように適宜設定することができる。なお、
図4に示す本体部15の厚さT
15および靴固定部13の厚さT
13は、同一であるが、これに限らない。本体部15の厚さT
15と靴固定部13の厚さT
13とはいずれかが他方よりも厚く構成されていてもよいが、T
15≧T
13であることが好ましい。T
15≧T
13である態様は、靴固定部13における踵側の領域(第1面131)とつま先側の領域(第2面132)とが離れている場合に、ブレード30(ランナー固定部11および本体部15)の強度、剛性の観点から本体部15の厚さT
15を靴固定部13の厚さT
13以上の厚さにすることがより好ましい。靴固定部13における踵側の領域(第1面131)とつま先側の領域(第2面132)とが離れているブレード30は、例えば、
図7のように踵側の底部とつま先側の底部とが離れている靴40に固定される。
【0041】
(第1プリプレグシート501および第2プリプレグシート502)
第1プリプレグシート501および第2プリプレグシート502は、共に、炭素繊維束と、少なくとも一部が炭素繊維束に含浸しているマトリックス樹脂組成物と、を含む。炭素繊維束は、複数の炭素繊維の束である。炭素繊維束におけるフィラメント数は、適宜設定すればよい。
【0042】
また、炭素繊維の太さについても、適宜設定すればよい。
【0043】
炭素繊維の種類の例には、ピッチ系、ポリアクリロニトリル(PAN)系およびレーヨン系が含まれ、これらのいずれの種類の炭素繊維であってもよい。なお、炭素繊維には黒鉛繊維も含まれる。
【0044】
マトリックス樹脂組成物は、マトリックス樹脂を含有する。マトリックス樹脂としては、特に制限はなく、熱硬化性樹脂を用いることができる。
【0045】
第1プリプレグシート501および第2プリプレグシート502には、炭素繊維束およびマトリックス樹脂組成物以外の他の材料をさらに含んでいてもよい。このような他の材料の例には、離型剤、脱法剤、紫外線吸収剤および充填剤が含まれる。
【0046】
なお、第1プリプレグシート501および第2プリプレグシート502は、何れも、複数並んで配置されているプリプレグテープによって構成されていてもよい。
【0047】
第1プリプレグシート501および第2プリプレグシート502は、共に、各プリプレグシート内において、炭素繊維の配向方向が互いに直交する2つの配向方向の炭素繊維を含む。例えば、第1プリプレグシート501においては、0°に配向する炭素繊維と、90°に配向する炭素繊維とが含まれている。一方、この例の場合において、第2プリプレグシート502は、45°に配向する炭素繊維と、-45°に配向する炭素繊維とが含まれている。
【0048】
図4に示した断面構成では、第1プリプレグシート501と第2プリプレグシート502とが交互に積層されることにより、0°/90°/45°/-45°の配向方向を有する積層体を実現できる。
【0049】
第1プリプレグシート501および第2プリプレグシート502の製造方法は、従来公知の製造方法を採用でき、また、
図4に示すようにプリプレグを積層させる方法も、従来公知の方法を採用できる。なお、第1プリプレグシート501と第2プリプレグシート502は、シート状のプリプレグが、炭素繊維の配向方向に沿って細長く切断されてなるテープ状の中間基材を、複数並べて配置することによって製造することもできる。また、プリプレグの積層体を硬化する方法も、従来公知の方法を採用できる。例えば、積層体を加熱して硬化させる場合、減圧雰囲気中において加熱する方法、オーブンでの加熱を行う方法等を採用することができる。
【0050】
以上のように、本実施形態のブレード30は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)によって、ランナー固定部11と、靴固定部13と、本体部15とが一体的に構成されているホルダー10をする。これにより、軽量なブレード30を実現することができる。
【0051】
軽量に関して、ホルダーの材料のみが本実施形態のブレード30と相違する比較構成(ホルダーがスチール製)との対比において、本実施形態のブレード30は、比較構成のブレードに比べ、40%程度軽量化を実現することができる。
【0052】
なお、強度に関しても、本実施形態のブレード30を装着したアイススケートシューズをユーザーが着用して想定されるブレード30にかかる最大負荷を十分超える強度を有する。
【0053】
なお、ランナーを保持していない状態のホルダーも本発明の範疇である。すなわち、本発明の一態様に係るアイスシューズのブレード用のホルダーは、氷に接するランナーを固定するためのランナー固定部と、靴を固定するための靴固定部と、ランナー固定部と靴固定部との間に設けられた本体部が、CFRPによって一体的に構成されている。また、ブレードを備えるアイススケートシューズも本発明の範疇である。
【0054】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、
図5を用いて説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0055】
本実施形態は、靴固定部13の上面形状が、実施形態1の靴固定部13の上面形状と異なっている点において相違する。
図5は、本実施形態は、靴固定部13の上面図である。
【0056】
本実施形態の靴固定部13は、第1面131と第2面132との間に位置する第3面133´の横幅が、第1面131および第2面132の横幅に比べて極端に狭くなっている。これにより、第3面133´では、靴の底面の前記中間領域の一部のみに対向している。このため、例えば、滑走時に生じるブレード30の振動が、靴の底面の一部に伝わらない構成を実現できる。そのため、このような例の場合では、靴の底面全体に靴固定部13の上面が対向して、且つ、接触している実施形態1に比べ、滑走時にユーザーに伝わるブレード30の振動が小さくなるというメリットがある。
【0057】
〔変形例〕
靴固定部13の他の態様として、前記踵側の領域に対向する第1面131と、前記つま先側の領域に対向する第2面132とを有し、先述の第3面133を有さない態様であってもよい。すなわち、
図6に示すように、靴固定部13が、踵側(第1面131)と、つま先側(第2面132)との間が離間していて、両者が繋がっていない態様であってもよい。
【0058】
〔実施形態3〕
上述の実施形態1では、炭素繊維が直交配向したいわゆる織物プリプレグ(第1プリプレグシート501および第2プリプレグシート502)のみを積層させている。しかしながら、本発明の一態様はこれに限定されない。
【0059】
例えば、
図4に示した断面構成において、複数積層させたプリプレグの積層体の中間層に、ユニダイレクショナル(UD)材が用いられてもよい。ここで、中間層とは、
図4に示した断面構成の表層に位置する1枚の第2プリプレグシート502を除くプリプレグシートのうちの少なくとも1枚である。ユニダイレクショナル(UD)材からなるプリプレグシートは、多数の長尺の炭素繊維を一方向に引き揃えた一方向性シートである。
【0060】
また、本実施形態のように中間層をUD材により構成した場合は、積層体の表層には、織物プリプレグが用いられるようにすることがより好ましい。すなわち、
図4に示した断面構成の表層に位置する1枚の第1プリプレグシート501には、先述のように直交配向している織物プリプレグを採用する。織物プリプレグは、炭素繊維を製織して織物としたクロス材である。これにより、そのような積層体を硬化して得られるホルダー10は、クロス材が表面にあるため、外観性に優れる。
【0061】
(その他)
以上、本発明の一実施形態について図面を参照しながら詳述したが、本実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明の一形態は本実施形態によって限定されるものではなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0062】
(まとめ)
本発明の態様1に係るブレードは、氷に接するランナーと、前記ランナーを保持するためのホルダーと、を備え、前記ホルダーは、前記ランナーが固定されているランナー固定部と、靴を固定するための靴固定部と、当該ランナー固定部と当該靴固定部との間に設けられている本体部と、を備え、前記ホルダーは、炭素繊維強化プラスチックを含み、前記ランナー固定部、前記靴固定部および前記本体部は、一体構成となっている。
【0063】
前記の構成によれば、軽量なブレードを実現することができる。具体的には、前記ホルダーがCFRPによって一体的に構成されているため、金属からなるブレードに比べて軽量である。
【0064】
本発明の態様2に係るブレードは、前記態様1において、前記ランナー固定部には、前記ランナーが接着固定されており、ボルトによる固定はされていないことが好ましい。
【0065】
前記の構成によれば、ランナー固定部とランナーとをボルト留めしないため、ブレードをより軽量化することができる。
【0066】
本発明の態様3に係るブレードは、前記態様1または態様2において、前記ランナー固定部と前記ランナーとの固定には、接着剤のみが用いられていることが好ましい。
【0067】
前記の構成によれば、ランナー固定部とランナーとをボルト留めしないため、ブレードをより軽量化することができる。
【0068】
本発明の態様4に係るブレードは、前記態様1から態様3において、前記ランナー固定部には、ボルトを挿通する穴が設けられていないことが好ましい。
【0069】
前記の構成によれば、当該穴がないため強度がより高いランナー固定部を実現することができ、結果的に、強度がより高いホルダーを具備したブレードを提供することができる。
【0070】
本発明の態様5に係るブレードは、前記態様1から態様4において、前記靴固定部は、前記靴の踵側の領域に対向する第1面と、前記靴のつま先側の領域に対向する第2面と、前記第1面と前記第2面と同一面上にあり、前記第1面と前記第2面とを繋ぐ第3面であって、前記踵側の領域と前記つま先側の領域とに挟まれている中間領域に対向する第3面と、を有することが好ましい。
【0071】
前記の構成によれば、靴固定部が踵側からつま先側に向けて連続した構造となっているため、より高い強度を有するホルダーを具備したブレードを提供することができる。
【0072】
本発明の態様6に係るブレードは、前記態様1から態様5において、前記ホルダーは、複数積層させたプリプレグの積層体の硬化物であり、前記積層体の少なくとも表層には、織物プリプレグが用いられていることが好ましい。
【0073】
前記の構成によれば、平面方向における炭素繊維束の実質的な隙間が形成されない。そのため、外観に優れたホルダーを具備するブレードを提供することができる。
【0074】
本発明の態様7に係るブレードは、前記態様6において、前記積層体の中間層には、ユニダイレクショナル材が用いられていてもよい。
【0075】
前記の構成によれば、ユニダイレクショナル材を前記積層体の中間層に具備することにより、積層体を織物プリプレグのみで構成するブレードを比べ、安価に実現することができる。
【0076】
本発明の態様8に係るブレードは、前記態様1から態様4において、前記靴固定部は、前記靴の踵側の領域に対向する第1面と、前記靴のつま先側の領域に対向する第2面と、を有し、前記第1面および前記第2面とは、当該第1面および当該第2面と同一面内においては繋がっていなくてもよい。
【0077】
前記の構成によれば、例えばヒールがあるような踵側の底部とつま先側の底部とが離れている靴に好適に装着することができる。
【0078】
本発明の態様9に係るブレードは、前記態様8において、前記本体部の厚さは、前記靴固定部の厚さ以上であることが好ましい。
【0079】
前記の構成によれば、靴固定部において、靴の踵側の領域に対向する第1面と、靴のつま先側の領域に対向する第2面とが同一面内においては繋がっていなくても、ブレードの強度、剛性を担保することができる。
【0080】
本発明の態様10に係るアイススケートシューズのブレード用のホルダーは、氷に接するランナーを固定するためのランナー固定部と、靴を固定するための靴固定部と、前記ランナー固定部と前記靴固定部との間に設けられた本体部と、を備え、前記ランナー固定部、前記靴固定部および前記本体部、一体構成となっており、炭素繊維強化プラスチックを含む。
【0081】
前記の構成によれば、より軽量なホルダーを実現することができる。具体的には、前記ホルダーがCFRPによって一体的に構成されているため、金属からなるホルダーに比べて軽量である。
【0082】
本発明の態様11に係るアイススケートシューズは、前記ブレードを備える。
【0083】
前記の構成によれば、より軽量なブレードを備えるため、より軽量なアイススケートシューズを提供できる。
【符号の説明】
【0084】
10 ホルダー
11 ランナー固定部
13 靴固定部
15 本体部
17 ホルダー側嵌合部
19 ビス穴
20 ランナー
21 エッジ
23 ランナー側嵌合部
30 ブレード
40 靴
50 アイススケートシューズ
131 第1面
132 第2面
133 第3面
151 第1穴
152 第2穴
401 第1の積層部分
402 第2の積層部分
501 第1プリプレグシート
502 第2プリプレグシート