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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022123866
(43)【公開日】2022-08-24
(54)【発明の名称】印刷方法、紙コップ及び印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41M 1/40 20060101AFI20220817BHJP
   B41F 17/28 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
B41M1/40 Z
B41F17/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019292
(22)【出願日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2021020653
(32)【優先日】2021-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】596151906
【氏名又は名称】東名化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】田邊 寛之
(72)【発明者】
【氏名】藤田 信一
【テーマコード(参考)】
2H113
【Fターム(参考)】
2H113AA01
2H113AA06
2H113BA01
2H113BA17
2H113BB02
2H113BB23
2H113CA25
2H113FA24
2H113FA32
2H113FA43
(57)【要約】      (修正有)
【課題】インク抜け等の印刷不良が発生することを抑制可能な印刷方法を提供する。
【解決手段】本発明は、紙コップを該紙コップの軸と略同軸の第1軸周りに回転させ、センサで紙コップの継ぎ目の段差を検出する工程と、該検出する工程で段差を検出したタイミング又は該タイミングより後のタイミングで紙コップの第1軸周りの回転を停止させて段差の第1軸周りの位置を設定する工程と、該設定する工程で第1軸周りの位置が設定された紙コップの外周面をインク画像担持体に接触させつつ紙コップを回転させて紙コップ外周面にインク画像を転写する工程と、を含む、印刷方法を提供する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙コップを該紙コップの軸と略同軸の所定軸周りに回転させ、センサで前記紙コップの継ぎ目の段差を検出する工程と、
前記検出する工程での検出結果に基づいて、前記紙コップの外周面にインク画像を形成する工程と、
を含む、印刷方法。
【請求項2】
前記形成する工程は、
前記検出する工程で前記段差を検出したタイミング又は該タイミングより後のタイミングで前記紙コップの前記所定軸周りの回転を停止させて前記段差の前記所定軸周りの位置を設定する工程と、
前記設定する工程で前記所定軸周りの位置が設定された前記紙コップの外周面に前記インク画像を形成するためのインクを付着させる工程と、
を含む、請求項1に記載の印刷方法。
【請求項3】
前記設定する工程では、前記付着させる工程において前記外周面に前記インク画像の少なくとも一部が形成される間に、前記外周面に前記インクが付着されるインク付着位置に前記段差が差し掛からないように前記段差の前記所定軸周りの位置を設定する、請求項2に記載の印刷方法。
【請求項4】
前記インク画像は、情報伝達表示を含み、
前記設定する工程では、少なくとも前記情報伝達表示を形成するためのインクが前記インク付着位置で前記外周面に付着される間に前記インク付着位置に前記段差が差し掛からないように前記段差の前記所定軸周りの位置を設定する、請求項3に記載の印刷方法。
【請求項5】
前記付着させる工程では、前記設定する工程で前記所定軸周りの位置が設定された前記紙コップの外周面をインク画像担持体に接触させつつ前記紙コップを回転させて該外周面にインク画像を転写する、請求項2~4のいずれか1項に記載の印刷方法。
【請求項6】
前記インク画像は、前記紙コップの外周面に重ね合わせて複数転写され、
前記設定する工程では、前記紙コップの外周面に既に転写された前記インク画像に新たな前記インク画像を重ね合わせて転写する際に、該インク画像が所定の重ね合わせ位置に転写されるように前記段差の前記所定軸周りの位置を設定する、請求項5に記載の印刷方法。
【請求項7】
前記設定する工程では、前記紙コップの外周面の、前記段差を基準とした周方向の所定位置に前記インク画像が形成されるように前記段差の前記所定軸周りの位置を設定する、請求項2~6のいずれか1項に記載の印刷方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の印刷方法により、前記インク画像が外周面に印刷された紙コップ。
【請求項9】
紙コップの内周面を着脱可能に保持する保持部材と、
前記紙コップを保持した前記保持部材を前記紙コップの軸と略同軸の第1軸周りに回転可能に支持し、第2軸周りに回転可能な第1回転支持部材と、
前記保持部材を前記第1軸周りに回転させる駆動部と、
インク画像担持体を前記保持部材に保持され前記第2軸周りの第1位置に位置する前記紙コップの外周面と接触可能に支持し、第3軸周りに回転可能な第2回転支持部材と、
前記駆動部を制御する制御部と、
前記制御部に接続され、前記第2軸周りの第2位置に位置する前記紙コップを保持した前記保持部材が前記第1軸周りに回転されたときに前記紙コップの継ぎ目の段差を検出するセンサと、
を備え、
前記制御部は、前記駆動部を制御して前記第2位置に位置する前記紙コップを保持した前記保持部材を前記第1軸周りに回転させ、前記センサでの検出結果に基づいて、前記紙コップの外周面にインク画像を形成する、印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷方法、紙コップ及び印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば紙コップの外周面にインク画像を印刷する印刷方法が知られている(例えば特許文献1参照)。通常、紙コップには継ぎ目があり、紙コップの外周面には該継ぎ目の段差がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2-277638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の印刷方法においては、紙コップの外周面の上記段差を含む領域にインク画像が印刷されるとインク抜け等の印刷不良が発生するおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、インク抜け等の印刷不良が発生することを抑制可能な印刷方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、紙コップを該紙コップの軸と略同軸の所定軸周りに回転させ、センサで前記紙コップの継ぎ目の段差を検出する工程と、
前記検出する工程での検出結果に基づいて、前記紙コップの外周面にインク画像を形成する工程と、
を含む、印刷方法を提供する。
前記形成する工程は、前記検出する工程で前記段差を検出したタイミング又は該タイミングより後のタイミングで前記紙コップの前記所定軸周りの回転を停止させて前記段差の前記所定軸周りの位置を設定する工程と、前記設定する工程で前記所定軸周りの位置が設定された前記紙コップの外周面に前記インク画像を形成するためのインクを付着させる工程と、を含んでいてもよい。
前記設定する工程では、前記付着させる工程において前記外周面に前記インク画像の少なくとも一部が形成される間に、前記外周面に前記インクが付着されるインク付着位置に前記段差が差し掛からないように前記段差の前記所定軸周りの位置を設定してもよい。
前記インク画像は、情報伝達表示を含み、前記設定する工程では、少なくとも前記情報伝達表示を形成するためのインクが前記インク付着位置で前記外周面に付着される間に前記インク付着位置に前記段差が差し掛からないように前記段差の前記所定軸周りの位置を設定してもよい。
前記付着させる工程では、前記設定する工程で前記所定軸周りの位置が設定された前記紙コップの外周面をインク画像担持体に接触させつつ前記紙コップを回転させて該外周面にインク画像を転写してもよい。
前記インク画像は、前記紙コップの外周面に重ね合わせて複数転写され、前記設定する工程では、前記紙コップの外周面に既に転写された前記インク画像に新たな前記インク画像を重ね合わせて転写する際に、該インク画像が所定の重ね合わせ位置に転写されるように前記段差の前記所定軸周りの位置を設定してもよい。
前記設定する工程では、前記紙コップの外周面の、前記段差を基準とした周方向の所定位置に前記インク画像が形成されるように前記段差の前記所定軸周りの位置を設定してもよい。
本発明は、前記印刷方法により、前記インク画像が外周面に印刷された紙コップも提供する。
本発明は、紙コップの内周面を着脱可能に保持する保持部材と、
前記紙コップを保持した前記保持部材を前記紙コップの軸と略同軸の第1軸周りに回転可能に支持し、第2軸周りに回転可能な第1回転支持部材と、
前記保持部材を前記第1軸周りに回転させる駆動部と、
インク画像担持体を前記保持部材に保持され前記第2軸周りの第1位置に位置する前記紙コップの外周面と接触可能に支持し、第3軸周りに回転可能な第2回転支持部材と、
前記駆動部を制御する制御部と、
前記制御部に接続され、前記第2軸周りの第2位置に位置する前記紙コップを保持した前記保持部材が前記第1軸周りに回転されたときに前記紙コップの継ぎ目の段差を検出するセンサと、
を備え、
前記制御部は、前記駆動部を制御して前記第2位置に位置する前記紙コップを保持した前記保持部材を前記第1軸周りに回転させ、前記センサでの検出結果に基づいて、前記紙コップの外周面にインク画像を形成する、印刷装置も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の第1実施形態に係る印刷装置の構成を概略的に示す平面図である。
図2図1の印刷装置の機能を概略的に示すブロック図である。
図3図1の印刷装置の印刷部の構成を概略的に示す断面図である。
図4図4A及び図4Bは、センサを用いる段差の検出例1を説明するための図である。
図5図5A及び図5Bは、センサを用いる段差の検出例2を説明するための図である。
図6図6A図6Cは、センサを用いる段差の検出例3を説明するための図である。
図7図7A図7Cは、センサを用いる段差の検出例4を説明するための図である。
図8図1の印刷装置の動作を説明するためのフローチャートである。
図9図9A図9Cは、インク画像の転写動作の一例を説明するための図である。
図10図10A図10Cは、インク画像の転写動作の他の例を説明するための図である。
図11】本発明の第2実施形態に係る印刷装置の構成を概略的に示す側面図である。
図12図11の印刷装置の機能を概略的に示すブロック図である。
図13図11の印刷装置の動作を説明するためのフローチャートである。
図14図11の印刷装置の動作を説明するための図である。
図15】変形例1のセンサについて説明するための図である。
図16】変形例2のセンサについて説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。本明細書において、本発明に係る印刷方法、紙コップ及び印刷装置が複数の効果を奏することが記載される場合でも、本発明に係る印刷方法、紙コップ及び印刷装置は、少なくとも1つの効果を奏すればよい。本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また他の効果があってもよい。
【0009】
また、以下の順序で説明を行う。
1.導入
2.本発明の第1実施形態に係る印刷装置の構成
3.本発明の第1実施形態に係る印刷装置の動作
4.本発明の第1実施形態に係る印刷装置、該印刷装置を用いた印刷方法及び該印刷方法によりインク画像が印刷された紙コップの効果
5.本発明の第2実施形態に係る印刷装置の構成
6.本発明の第2実施形態に係る印刷装置の動作
7.本発明の第2実施形態に係る印刷装置、該印刷装置を用いた印刷方法及び該印刷方法によりインク画像が印刷された紙コップの効果
8.本発明の変形例
【0010】
<1.導入>
近年、環境に優しい紙コップの需要が高まりつつある。紙コップには、無地のままで流通するもの(前者)と、例えば文字、色、模様等を表すインク画像が印刷されて流通するもの(後者)がある。
例えば平紙を紙コップに成形し、必要に応じて該紙コップの外周面にインク画像を印刷(曲面印刷)する方法(方法1)を用いれば、紙コップの用途として前者及び後者を適宜選択可能なので、紙コップを大量に成形しても在庫を抱えるリスクが低い。
一方、例えば紙コップ成形用の平紙にインク画像を印刷(平面印刷)し、該平紙を紙コップ状に成形する方法(方法2)では、紙コップの用途が後者に限定されるため、紙コップを大量に成形すると在庫を抱えるリスクが高い。
よって、方法2よりも方法1の方が、大量生産を前提とする紙コップにより適しているといえる。
【0011】
ところで、従来、例えば紙コップの外周面にインク画像を印刷する印刷方法(曲面印刷方法)及び印刷装置(曲面印刷装置)においては、紙コップの外周面の段差を含む領域にインク画像が印刷されることがあり、インク抜け等の印刷不良が発生していた。
そこで、発明者は、鋭意検討の末、予め紙カップの外周面の段差の位置をコントロールできれば、インク画像を段差にのらないように印刷できるということを見出した。
具体的な手法としては、先ず、紙コップをその軸周りに回転させて外周面の段差の位置を該外周面の周方向の一部をターゲットとするセンサで検出する。次いで、センサの検出タイミング又は該検出タイミングより後のタイミングで紙コップの回転を停止させ、紙カップの段差の周方向の位置を決める。すなわち、センサの検出タイミングから紙コップの回転停止タイミングまでの紙コップの回転角度(0°も含む)によって、紙コップPCの段差の周方向の位置を自在にコントロールできる。
発明者は、以上のような着想から、インク抜け等の印刷不良が発生することを抑制できる印刷方法及び印刷装置として、本発明に係る印刷方法及び印刷装置を開発した。
【0012】
以下に、本発明に係る印刷装置の第1実施形態について、詳細に説明する。
<2.本発明の第1実施形態に係る印刷容器の構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係る印刷装置1の構成を概略的に示す平面図である。図2は、印刷装置1の機能の一例を示すブロック図である。図3は、印刷装置1の印刷部の構成を概略的に示す断面図である。
【0013】
印刷装置1は、紙コップPCの外周面にインク画像を印刷する印刷装置であって「曲面印刷装置」とも呼ばれる。より詳細には、印刷装置1は、図3に示すように、インク画像Iiを担持するインク画像担持体41に紙コップPCの外周面を接触させつつ回転させて該外周面にインク画像Iiを転写する印刷装置である。
【0014】
印刷装置1は、一例として、図1及び図2を総合すると分かるように、複数(例えば20個)の保持部材10、第1回転支持部材20、第1駆動部30、第2回転支持部材40、第2駆動部50、制御部60、センサ70等を備える。
【0015】
(保持部材)
各保持部材10は、紙コップPCの内周面を着脱可能に保持する。
【0016】
紙コップPCは、一例として、図1及び図3を総合すると分かるように、周方向の所定位置に継ぎ目Jのある中空円錐台形状の紙製のコップである。紙コップPCの外周面の周方向の所定箇所には、継ぎ目Jの段差Sがある。
【0017】
保持部材10は、一例として、図1に示すように、真空吸引(真空チャック)により紙コップPCの内周面を吸着保持(密着保持)する。保持部材10は、例えば紙コップPCと同形状(例えば円錐台形状)の、紙コップPCと同大又は紙コップPCより僅かに小さい金属製の部材である。各保持部材10は「マンドレル」とも呼ばれる。各保持部材10は、実質的に同一である。
保持部材10は、紙コップPCの内周面を保持した状態で軸が紙コップPCの軸と略同軸となる。
保持部材10の軸は、例えば略水平方向に延びている。
【0018】
(第1回転支持部材)
第1回転支持部材20は、紙コップPCを保持した保持部材10を紙コップPCの軸と略同軸の第1軸AX1(保持部材10の軸)周りに回転可能に支持する。第1回転支持部材20は「ターレット」とも呼ばれる。
【0019】
第1回転支持部材20は、例えば第1軸AX1に直交する第2軸AX2周りに回転可能である。詳述すると、第1回転支持部材20は、第2軸AX2(例えば略鉛直方向に延びる軸)周りに回転可能に支持架台に支持されている。第1回転支持部材20は、当該支持架台に設けられた、例えばギア、プーリ、モータ等を含む駆動機構80(図2参照)により第2軸AX2周りに回転駆動される。
【0020】
第1回転支持部材20は、一例として、複数の保持部材10を、全体として第2軸AX2から略同一距離の位置に放射状の配置となるように、且つ、各保持部材10が該保持部材の第1軸AX1周りに回転可能となるように支持している。
【0021】
(第1駆動部)
第1駆動部30(図2参照)は、保持部材10を第1軸AX1周りに回転させる。第1駆動部30は、一例としてモータ(好ましくはサーボモータ)を含んで構成される。第1駆動部30は、制御部60により制御される。
【0022】
印刷装置1は、一例として、CMYK(C:シアン、M:マゼンタ、Y:イエロー、K:ブラック)プロセスカラーを用いる多色画像印刷装置であり、紙カップPCを保持部材10に装着する装着ユニット、紙カップPCの表面処理を行う表面処理ユニット、複数(例えば7つ)の印刷・乾燥ユニット(例えば第1~第7印刷・乾燥ユニット)、画像検査ユニット、最終乾燥ユニット、良品取り出しユニット及び不良品排出ユニットが第2軸AX2を中心とする同一円周(保持部材10に保持された紙カップPCが対向し得る円周)上にこの順に配置されている。
【0023】
各印刷・乾燥ユニットは、紙コップPCにインク画像Iiを印刷する印刷部と、紙コップPCに印刷されたインク画像Iiを乾燥させる乾燥部とを含む。複数(例えば7つ)の印刷・乾燥ユニットの印刷部は、互いに異なる色のインク画像を紙コップPCに印刷する。各印刷・乾燥ユニットの乾燥部は、対応する印刷部により紙コップPCに印刷されたインク画像Iiを乾燥する。ここでは、インク画像Iiは、例えばUV(紫外線)硬化性のインクIにより形成される。各乾燥部及び最終乾燥ユニットは、例えば紫外線を照射するUVランプを有している。
各印刷・乾燥ユニットにおいて、第1回転支持部材20の回転方向の上流側に印刷部が配置され、下流側に乾燥部が配置されている。すなわち、上記円周上には、印刷部と乾燥部とが交互に配置されている。 以下、第1~第7印刷・乾燥ユニットの印刷部をそれぞれ第1~第7印刷部と呼び、第1~第7印刷・乾燥ユニットの乾燥部をそれぞれ第1~第7乾燥部と呼ぶ。各印刷部の構成は、印刷するインク画像Iiの色を除いて、実質的に同一である。各乾燥部の構成は、実質的に同一である。
各印刷・乾燥ユニットの印刷部及び乾燥部は、制御部60により制御される。
【0024】
(制御部)
制御部60は、第1駆動部30、第2駆動部50及び駆動機構80を制御する。制御部60は、センサ70及びメモリ90(図2参照)に接続されている。制御部60は、例えばCPU、チップセット等により実現される。
【0025】
制御部60は、図1に示すように、駆動機構80を制御することにより第1回転支持部材20を回転させて、紙コップPCを保持する各保持部材10を、装着ユニットに対向する紙コップ装着位置MP、表面処表面ユニットに対向する表面処理位置STP(第2位置P2)、第1印刷部に対向する第1印刷位置PP1(第1位置P1)、第1乾燥部に対向する第1乾燥位置DP1、第2印刷部に対向する第2印刷位置PP2(第1位置P1)、第2乾燥部に対向する第2乾燥位置DP2、第3印刷部に対向する第3印刷位置PP3(第1位置P1)、第3乾燥部に対向する第3乾燥位置DP3、第4印刷部に対向する第4印刷位置PP4(第1位置P1)、第4乾燥部に対向する第4乾燥位置DP4、第5印刷部に対向する第5印刷位置PP5(第1位置P1)、第5乾燥部に対向する第5乾燥位置DP5、第6印刷部に対向する第6印刷位置PP6(第1位置P1)、第6乾燥部に対向する第6乾燥位置DP6、第7印刷部に対向する第7印刷位置PP7(第1位置P1)、第7乾燥部に対向する第7乾燥位置DP7、画像検査ユニットに対向する画像検査位置IIP、最終乾燥ユニットに対向する最終乾燥位置FDP、良品取り出しユニットに対向する良品取り出し位置GTP、不良品排出ユニットに対向する不良品排出位置DDPに順次位置させることができる。
【0026】
すなわち、印刷装置1は、第1回転支持部材20を回転させることにより、保持部材1
0に保持された複数(例えば最大20個)の紙コップPCの各々を各種処理を行う異なる位置に同時に位置させることができ、複数の紙コップPCに対して各種処理を並行して行うことができる。このため、印刷装置1は、極めて生産性に優れる。
【0027】
なお、印刷装置1において、第1回転支持部材20が支持する保持部材10の数は増減可能であり、保持部材10の数、印刷に用いるインクの色数等に応じて各処理を行うユニットの数も増減可能である。
【0028】
(第2回転支持部材)
第2回転支持部材40は、図3に示すように、インク画像Iiを担持するインク画像担持体41を、保持部材10に保持され第2軸AX2周りの第1位置P1(印刷位置、転写位置、図3参照)に位置する紙コップPCの外周面と接触可能に支持する。なお、印刷位置及び転写位置は、インクが付着される位置であることから「インク付着位置」と呼ぶこともできる。
第2回転支持部材40は、例えば第2軸AX2に略直交する第3軸AX3周りに回転可能に上記支持架台に支持されている。
第3軸AX3は、一例として、第1位置P1に位置する紙コップPCを保持する保持部材10の軸である第1軸AX1と略平行である。
【0029】
(第2駆動部)
第2駆動部50(図2参照)は、第2回転支持部材40を第3軸AX3周りに回転させる。第2駆動部50は、一例としてモータ(好ましくはサーボモータ)を含んで構成される。
【0030】
インク画像担持体41は、第2回転支持部材40の外周面に設けられている。インク画像担持体41は「ブランケット」とも呼ばれる。第2回転支持部材40は、例えば円筒形状又は楕円筒形状の部材から成り、「ブランケットスリーブ又はブランケットシリンダ」とも呼ばれる。
【0031】
インク画像担持体41は、第3軸AX3と略平行な軸周りに回転可能な版スリーブ42の外周面に貼り付けられたフレキソ版43と接触しつつ第3軸AX3周りに回転可能となっている。版スリーブ42は、例えばモータ(好ましくはサーボモータ)により回転駆動される。該モータは、制御部60により制御される。フレキソ版43は、感光性樹脂版(フォトポリマープレート)から成る。フレキソ版43は、専用の貼り付け器具を用いて版スリーブ42に貼り付けることができる。
【0032】
版スリーブ42の外周面に貼り付けられたフレキソ版43は、第3軸AX3と略平行な軸周りに回転可能なアニロックスローラ44の外周面に接触しつつ回転可能となっている。アニロックスローラ44は、インクトレー45に供給されたインクIを掻き出す。インクトレー45にはアニロックスローラ44の外周面に接触するドクターブレードが設けられ、このドクターブレードによってアニロックスローラ44の外周面から余分なインクIが掻き落され、適正量のインクIがフレキソ版43に供給されるようになっている。インクIが供給されたフレキソ版43は、露光装置により露光された後、現像装置により現像されることにより、インク画像Iiが形成(顕在化)される。アニロックスローラ44は、例えばモータ(好ましくはサーボモータ)により回転駆動される。該モータは、制御部60により制御される。
【0033】
以上説明したインク画像担持体41、版スリーブ42、フレキソ版43、アニロックスローラ44及びインクトレー45及びドクターブレードを含んで「印刷部」が構成されている。
【0034】
ここで、各印刷部による印刷動作を簡単に説明する。
先ず、インク供給部からインクトレー45にインクIが供給される。次いで、インクトレー45内のインクIがアニロックスローラ44により掻き出され、ドクターブレードにより適正量に調整されたインクIがフレキソ版43に供給される。次いで、インクIが供給されたフレキソ版43が露光、現像されることにより、フレキソ版43にインク画像Iiが形成される。次いで、フレキソ版43に形成されたインク画像Iiがインク画像担持体41に転写され、インク画像担持体41に転写されたインク画像Iiが紙コップPCに転写される。
【0035】
(センサ)
センサ70は、第2軸AX2周りの第2位置P2に位置する紙コップPCを保持した保持部材10が第1軸AX1周りに回転されたときに紙コップPCの継ぎ目Jの段差Sを検出する。第2位置P2は、印刷位置である第1位置P1と異なる第2軸AX2周りの位置であり、例えば表面処理位置STPである。センサ70は、第2位置P2に位置する紙コップPCの外周面の周方向の一部をターゲット(検出位置)とする。
【0036】
センサ70は、一例として、第2位置P2に位置する紙コップPCの外周面に対向する位置に配置されたレーザセンサである。センサ70は、レーザ光源(例えば半導体レーザ)と受光素子(例えばフォトダイオード)とを有している。紙コップPCの外周面の、センサ70からレーザ光(照射光IL)が照射される位置がセンサ70の検出位置(ターゲット)である。
【0037】
センサ70は、図4A及び図4Bに示す配置例1のように、第2位置P2に位置する紙コップPCの継ぎ目Jの段差Sに対向しうる位置(例えば照射光ILの照射方向が紙コップPCの接線方向と略平行となる位置)に配置されてもよい。この場合に、制御部60は、第1駆動部30を制御して紙コップPCを保持した保持部材10を第1軸AX1周りに等角速度ωで回転させながら、紙コップPCの外周面にレーザ光源からレーザ光(照射光IL)を照射し、その反射光RLを受光素子で受光し、受光素子から出力される信号(受光信号)をモニタする。図4Aに示すように、照射光ILが紙コップPCの外周面の段差S以外の位置に照射されているときは、紙コップPCの外周面で反射された光はセンサ70にはほとんど戻ってこないので、受光信号の信号レベルはローレベル(例えば略0)となる。一方、図4Bに示すように、照射光ILが段差Sに照射されたときに照射光ILの多くがセンサ70に戻ってくるので、受光信号の信号レベルがハイレベルとなる。そこで、-制御部60は、この受光信号の信号レベルがローレベルとハイレベルとの間で切り替
わったタイミングを段差Sが検出されたタイミング(段差検出タイミング)とする。この場合には、センサ70の検出位置(ターゲット)によって段差検出タイミングでの段差Sの位置が決まる。この配置例1は、紙コップPCの段差Sの向きが図4A及び図4Bに示す向きの場合に有効である。
【0038】
例えば、紙コップPCの段差Sの向きが図4A及び図4Bに示す向きと逆の向きの場合には、図5A及び図5Bに示す配置例2のようにセンサ70を配置することが有効である。
【0039】
制御部60は、紙コップPCの継ぎ目Jの段差Sの第1軸AX1周りの位置に基づいて、紙コップPCを保持した保持部材10の第1軸AX1周りの位置及び/又は第2回転支持部材40の第3軸AX3周りの位置を調整することが可能である。
【0040】
センサ70は、図6A図6Cに示す配置例3のように、照射光ILの照射方向が紙コップPCの接線方向に略直交する位置に配置されてもよい。
この場合に、制御部60は、第1駆動部30を制御して紙コップPCを第1軸AX1周りに回転させながら、センサ70の出力信号(受光信号)をモニタして、出力信号の波形が乱れたタイミングを段差検出タイミングとしてもよい。この場合にも、センサ70の検出位置(ターゲット)によって段差検出タイミングでの段差Sの位置が決まる。
【0041】
また、配置例3において、制御部60は、第1駆動部30を制御して紙コップPCを第1軸AX1周りに回転させながら、レーザ光源の発光タイミングと受光素子の受光タイミングとの時間差をリアルタイムに算出し、該時間差が大きく変化したタイミングを段差検出タイミングとしてもよい。
例えば、図6A及び図6Bに示すように、センサ70から紙コップPCの外周面の段差S以外の位置に照射光ILが照射されているときは、センサ70から外周面までの距離が略一定(d)であるので、上記時間差も略一定である。
例えば、図6Cに示すように、センサ70から紙コップPCの外周面の段差S上に照射光ILが照射されたときは、センサ70から外周面まで距離が略d-t(tは紙コップPCの側壁の厚み)となるので、上記時間差が小さくなる。そこで、制御部60は、上記時間差が略一定のときと、小さくなるときとが切り替わるタイミングを段差検出タイミングとしてもよい。この場合にも、センサ70の検出位置(ターゲット)によって段差検出タイミングでの段差Sの位置が決まる。
【0042】
センサ70が配置例3のように配置される場合には、例えば図7A及び図7Bに示すように、紙コップPCの段差Sの向きが図6A及び図6Bに示す向きと逆向きの場合でも有効である。
この場合、例えば、図7Cに示すように、センサ70から紙コップPCの外周面の段差S上に照射光ILが照射されたときは、センサ70から外周面まで距離が略d+t(tは紙コップPCの側壁の厚み)となるので、上記時間差が大きくなる。そこで、制御部60は、上記時間差が略一定のときと、大きくなるときとが切り替わるタイミングを段差検出タイミングと判定してもよい。この場合にも、センサ70の検出位置(ターゲット)によって段差検出タイミングでの段差Sの位置が決まる。
【0043】
<3.本発明の第1実施形態に係る印刷装置の動作>
本発明の第1実施形態に係る印刷装置1の動作について、図1図8図10を参照して説明する。図8のフローチャートに示される印刷装置1の動作は、本発明の印刷方法の一例である。
【0044】
印刷装置1の印刷条件の設定、印刷装置1の各可動部の動作設定等は、オペレータによるパソコン操作により可能となっている。
ここでは、紙コップPCの外周面の周方向の一部(例えば5°~355°、10°~350°等の角度範囲内)にインク画像Iiの印刷が行われるものとする。予め、紙コップPCに印刷されるインク画像Iiに対応するフレキソ版43が版スリーブ42に貼り付けられている。印刷部のインクタンク45には、インクIとして、例えばUV硬化性のインクが供給されるものとする。
【0045】
制御部60は、オペレータによるパソコン等を介した印刷開始要求を受信すると、印刷装置1による印刷(本摺り)に先立って、印刷装置1による摺り出しを行う。この摺り出しは、本摺り前の見当合わせ、色合わせ等の調整を行うための準備印刷であり、インクIの安定性を向上することを目的とする。摺り出し時には、各印刷部において、保持部材10に保持された紙カップPCに対して試し印刷が行われ、各種調整がなされる。
【0046】
最初のステップS1では、制御部60が、保持部材10に紙コップPCを保持させる。具体的には、紙コップ装着位置MPに位置した保持部材10に対して装着ユニットにより紙コップPCを装着し、真空吸引により保持部材10の外周面に紙コップPCの内周面を吸着保持させる。
【0047】
次のステップS2では、制御部60が、紙コップPCを表面処理位置STP(第2位置P2)に位置させる。具体的には、制御部60は、駆動機構80を制御して紙コップPCを保持した保持部材10を紙コップ装着位置MPから表面処理位置STPへ移動させる。
【0048】
次のステップS3では、制御部60が、第1駆動部30を制御して紙コップPCを第1軸AX1周りに例えば等角速度ωで回転させて表面処理を行う。当該表面処理は、例えば紙コップPCの外周面に撥水処理等の表面処理である。
【0049】
次のステップS4では、制御部60が、センサ70が紙コップPCの段差Sを検出したか否かを判断する。ここでの判断が肯定されるとステップS5に移行し、否定されると同じ判断を再び行う。すなわち、待ちの状態となる。
【0050】
ステップS5では、制御部60が、紙コップPCの回転を停止させる。具体的には、制御部60は、センサ70が紙コップPCの段差検出タイミング又は該段差検出タイミングより後のタイミングで該回転を停止させて段差Sの第1軸AX1周りの位置を設定する。この場合に、センサ70の検出位置(紙コップPCに対するレーザ光の照射位置)によって段差検出タイミングでの段差Sの第1軸AX1周りの位置(以下「初期角度位置」と呼ぶ)が決まる。段差検出タイミングから所定時間ΔT経過時に該回転を停止させたときの段差Sの第1軸AX1周りの位置(角度位置)は、初期角度位置+ω×ΔTとなる。制御部60は、内蔵するタイマーを用いて(段差検出タイミングをトリガーとして)、この角度位置を算出することが可能である。
すなわち、制御部60は、段差Sの第1軸AX1周りの位置を、段差Sの検出タイミングから紙コップPCの回転停止タイミングまでの時間(0も含む)により設定することができる。
【0051】
この際、制御部60は、第1位置P1に位置する紙コップPCに対してインク画像Iiが紙コップPCの外周面の、段差Sから外れた位置に形成されるように段差Sの第1軸AX1周りの位置を設定する。
具体的には、制御部60は、第2位置P2(転写位置)に位置する紙コップPCの外周面にインク画像Iiが転写される間、インク画像Iiと紙コップPCの外周面との接触位置CPに段差Sが差し掛からないように段差Sの第1軸AX1周りの位置を設定する。
【0052】
ここで、制御部60は、一例として、図9A及び図10Aに示すように、予め第2駆動部50を制御することにより、インク画像担持体41において、第1位置P1に位置する紙コップPCに最初に接触する位置がインク画像Iiの先頭位置となるようにインク画像担持体41の第3軸AX3周りの位置を調整している。このとき、図9A及び図10Aに示すように、第2位置P2から第1位置P1に移動された紙コップPCの段差Sが紙コップPCとインク画像担持体41との接触位置CPを通過した位置(例えば接触位置を通過した直後の位置)にあれば、紙コップPCが略1回転するまでは、該接触位置CPに段差Sが到達しない。すなわち、段差Sが接触位置CPを通過した後、再び接触位置CPに到達するまでの間に印刷を行えば、インク画像Iiを段差Sから外れた位置に形成することができる(図9B図9C図10B図10C参照)。
【0053】
そこで、制御部60は、このような条件を満たすように段差Sの第1軸AX1周りの位置を設定する。例えば図9A及び図10Aの場合には、制御部60は、紙コップPCに転写されるインク画像Iiの、紙コップPCの周方向の角度範囲をΔφとしたときに、段差Sの第1軸周りの位置を接触位置CPに対応する位置から第1軸周りに例えば+5°~(360°-Δφ-5°)だけ回転した位置に設定してもよい。この角度範囲内に段差Sがあれば、インク画像Iiを紙コップPCの外周面の周方向の段差S以外の領域(略全域も可)に形成することもできる。なお、上記角度範囲において図9及び図10における紙コップPCの回転方向(矢印方向)を「+」とし、図9及び図10における紙コップPCの回転方向方向(矢印方向)とは反対方向を「-」としている。
【0054】
制御部60は、段差Sの第1軸AX1周りの位置の設定結果(設定位置)をメモリ90に保存する。
【0055】
次のステップS6では、制御部60が、kに1をセットする。
【0056】
次のステップS7では、制御部60が、紙コップPCを第k印刷位置PPk(例えばk=1~7)へ移動させる。具体的には、制御部60は、駆動機構80を制御して、保持部材10に保持された紙コップPCを第k印刷部に対向する位置である第k印刷位置PPkへ移動させる。
【0057】
次のステップS8では、制御部60が、紙コップPCに第kインク画像Iikを転写する。具体的には、制御部60は、第1駆動部30及び第k印刷部を制御して、保持部材10に保持された紙コップPCの外周面に第kインク画像Iikを転写する(例えば図9A図9C図10A図10C参照)。この後、制御部60は、第1駆動部30を制御して紙コップPCを第1軸周りに回転させながら露光装置による露光、現像装置による現像を行う。この結果、紙コップPCの外周面の、段差Sから外れた位置に第kインク画像Iikが形成される。
【0058】
次のステップS9では、制御部60が、紙コップPCを第k乾燥位置DPkへ移動させる。具体的には、制御部60は、駆動機構80を制御して保持部材10に保持された紙コップPCを第k乾燥部に対向する位置である第k乾燥位置DPkへ移動させる。
【0059】
次のステップS10では、制御部60が、紙コップPCに転写された第kインク画像Iikを乾燥する。具体的には、制御部60は、第1駆動部30及び第k乾燥部を制御して、保持部材10に保持された紙コップPCを第1軸周りに回転させながら紙コップPCの外周面に転写された第kインク画像Iikを乾燥させる。制御部60は、第kインク画像Iikの乾燥が終了した後、段差Sが上記設定位置に位置するタイミングで紙コップPCの第1軸AX1周りの回転を停止させる。
【0060】
次のステップS11では、制御部60が、k<K(例えば7)であるか否かを判断する。ここでの判断か肯定されるとステップS12に移行し、否定されるとステップS13に移行する。
【0061】
ステップS12では、制御部60が、kをインクリメントする。ステップS12が実行されると、ステップS7に戻る。すなわち、紙コップPCに対して別の色のインク画像Iiの転写及び乾燥が行われる。
【0062】
ステップS13では、制御部60が、紙コップPCに形成されたK色インク画像(第1~第Kインク画像が重ねて形成されたインク画像)を画像検査ユニットに検査させる。具体的には、先ず、制御部60が、駆動機構80を制御して紙コップPCを画像検査位置IIPに移動させる。次いで、画像検査ユニットがK色インク画像の例えば印刷の欠け、カスレ、滲み等の印刷不良の有無を検査し、その検査結果を制御部60に出力する。より詳細には、画像検査ユニットは、検査対象のK色インク画像と、事前に取り込んでおいた良品画像とを比較してパターンマッチングを行い、該K色インク画像における印刷の欠け、カスレ、滲み等の印刷不良の有無を検査する。
【0063】
ステップS14では、制御部60が、紙コップPCが検査に合格したか否かを判断する。具体的には、制御部60は、画像検査ユニットからの検査結果が「印刷不良無し」の場合は検査合格と判断し、「印刷不良あり」の場合は検査不合格と判断する。ステップS14での判断が肯定されるとステップS15に移行し、否定されるとステップS17に移行する。
【0064】
ステップS15では、制御部60が、最終乾燥ユニットに紙コップPCを最終乾燥させる。具体的には、先ず、制御部60が駆動機構80を制御して紙コップPCを最終乾燥位置FDPに移動させる。次いで、制御部60が第1駆動部30及び最終乾燥ユニットを制御して紙コップPCを第1軸AX1周りに回転させながら紙コップPCの外周面に形成されたK色インク画像を最終乾燥させる。ステップS15が実行されると、ステップS16へ移行する。
【0065】
ステップS16では、制御部60が、良品取り出しユニットに紙コップPCを良品として取り出させる。具体的には、先ず、制御部60が、駆動機構80を制御して、紙コップPCを良品取り出し位置GTPに移動させる。次いで、制御部60が、保持部材10による紙コップPCの保持(真空吸引)を解除させる。次いで、良品取り出しユニットのロボットアームが、保持部材10から紙コップPCを抜き取り、次工程(例えば選別工程、梱包工程、出荷工程等)のラインに送る。ステップS16が実行されると、フローは終了する。
【0066】
ステップS17では、制御部60が、不良品排出ユニットに紙コップPCを不良品として排出させる。具体的には、先ず、制御部60が、駆動機構80を制御して紙コップPCを不良品排出位置DDPに移動させる。次に、制御部60が、保持部材10による紙カップPCの保持(真空吸引)を解除させる。次いで、不良品排出ユニットのロボットアームが、保持部材10から紙コップPCを抜き取り、廃棄ラインに送る。ステップS17が実行されると、フローは終了する。
【0067】
<4.本発明の第1実施形態に係る印刷装置、該印刷装置を用いた印刷方法及び該印刷方法によりインク画像が印刷された紙コップの効果>
本発明の第1実施形態に係る印刷装置1は、紙コップPCの内周面を着脱可能に保持する保持部材10と、紙コップPCを保持した保持部材10を紙コップPCの軸と略同軸の第1軸AX1周りに回転可能に支持し、第2軸周りに回転可能な第1回転支持部材20と、保持部材10を第1軸AX1周りに回転させる第1駆動部30(駆動部)と、インク画像担持体41を保持部材10に保持され第2軸周AX2周りの第1位置P1に位置する紙コップPCの外周面と接触可能に支持し、第3軸AX3周りに回転可能な第2回転支持部材40と、第1駆動部30を制御する制御部60と、該制御部60に接続され、第2軸AX2周りの第2位置P2に位置する紙コップPCを保持した保持部材10が第1軸AX1周りに回転されたときに紙コップPCの継ぎ目Jの段差Sを検出するセンサ70と、を備える。制御部60は、第1駆動部30を制御して第2位置P2に位置する紙コップPCを保持した保持部材10を第1軸AX1周りに回転させ、センサ70が段差Sを検出したタイミング又は該タイミングより後のタイミングで該回転を停止させて段差Sの第1軸AX1周りの位置を設定し、紙コップPCを第1位置P1に移動させて紙コップPCの外周面をインク画像担持体41に接触させつつ紙コップPCを回転させて紙コップPCの外周面にインク画像Iiを転写する。
これにより、段差Sの第1軸AX1周りの位置を所望の位置(例えばインク画像Iiが形成されない位置)に設定することができる。
結果として、第1実施形態に係る印刷装置1によれば、インク抜け等の印刷不良が発生することを抑制可能な印刷装置を提供することができる。
【0068】
インク画像Iiは、紙コップPCの外周面の周方向の一部に転写され、制御部60は、第1位置P1に位置する紙コップPCの外周面にインク画像Iiが転写される間、インク画像Iiと紙コップPCの外周面との接触位置CPに段差Sが差し掛からないように段差Sの第1軸AX1周りの位置を設定することが好ましい。これにより、インク画像Iiを紙コップPCの外周面の、段差Sから外れた位置に形成することができる。
【0069】
印刷装置1を用いてインク画像Iiが外周面に印刷された紙コップPCによれば、紙コップPCの外周面の、段差Sから外れた位置にインク画像Iiが印刷された紙コップPCを提供できる。
【0070】
印刷装置1を用いてインク画像Iiが外周面に印刷された紙コップPCによれば、紙コップPCの外周面の、段差Sの第1軸AX1周りの設定位置に応じた位置(例えば所望の位置)にインク画像Iiが印刷された紙コップPCを提供できる。
【0071】
本発明の第1実施形態に係る印刷装置1を用いる印刷方法は、紙コップPCを該紙コップPCの軸と略同軸の第1軸AX1(所定軸)周りに回転させ、センサ70で紙コップPCの継ぎ目Jの段差Sを検出する工程と、検出する工程で段差Sを検出したタイミング又は該タイミングより後のタイミングで紙コップPCの第1軸AX1周りの回転を停止させて段差Sの第1軸AX1周りの位置を設定する工程と、該設定する工程で第1軸AX1周りの位置が設定された紙コップPCの外周面をインク画像担持体41に接触させつつ紙コップPCを回転させて紙コップPCの外周面にインク画像Iiを転写する工程と、を含む。
これにより、段差Sの第1軸AX1周りの位置を所望の位置(例えばインク画像Iiが形成されない位置)に設定することができる。結果として、当該印刷方法によれば、インク抜け等の印刷不良が発生することを抑制可能である。
【0072】
インク画像Iiは、紙コップPCの外周面の周方向の一部に転写され、上記設定する工程では、上記転写する工程において紙コップPCの外周面にインク画像Iiが転写される間に、インク画像担持体41と紙コップPCの外周面とが接触する接触位置CPに段差が差し掛からないように段差Sの第1軸AX1周りの位置を設定することが好ましい。これにより、インク画像Iiを紙コップPCの外周面の、段差Sから外れた位置に形成することができる。
【0073】
上記印刷方法によりインク画像Iiが外周面に印刷された紙コップPCによれば、紙コップPCの外周面の、段差Sから外れた位置にインク画像Iiが印刷された紙コップPCを提供できる。
【0074】
上記印刷方法によりインク画像Iiが外周面に印刷された紙コップPCによれば、紙コップPCの外周面の、段差Sの第1軸AX1周りの設定位置に応じた位置(例えば所望の位置)にインク画像Iiが印刷された紙コップPCを提供できる。
【0075】
<5.本発明の第2実施形態に係る印刷装置の構成>
以下、本発明の第2実施形態に係る印刷装置2(曲面印刷装置)の構成について、図11及び図12を参照して説明する。
図11は、印刷装置2の構成を概略的に示す側面図である。図12は、印刷装置2の機能を概略的に示すブロック図である。
【0076】
印刷装置2では、図11に示すように、第1回転支持部材200(例えばターレット)が、略水平な第2軸AX2周りに回転可能に架台210に支持されている。
第1回転支持部材200には、複数(例えば8つ)の保持部材10(例えばマンドレル)が第1回転支持部材200の周方向に等角度間隔(例えば45°間隔)で並ぶように、且つ、複数の保持部材10の各々が第1軸AX1周りに回転可能となるように支持されている。
第1回転支持部材200に支持された各保持部材10は、第1回転支持部材200が駆動機構80(図12参照)により図11における反時計周り(矢印U方向)に所定角度(例えば45°)ずつ回転されることにより、紙コップ装着位置MP、待機位置SP、印刷位置PP、排出前位置及び排出位置DPに順次移動することができる。ここでは、一例として、紙コップ装着位置MPは12時の位置であり、待機位置SPは12時の位置と10時の位置の中間の位置であり、印刷位置PPは9時の位置であり、排出前位置は9時の位置と6時の位置の中間の位置であり、排出位置DPは6時の位置である。
【0077】
紙コップ装着位置MP付近には、紙コップ装着位置MPに位置する保持部材10に保持された紙コップPCの段差Sを検出する第1センサ70-1が配置されている。第1センサ70-1は、前述したセンサ70と同様の構成を有している。第1センサ70-1は、制御部60に接続されている(図12参照)。
さらに、紙コップ装着位置MP付近には、保持部材10に対して紙コップPCを装着するための装着ユニットが配備されている。該装着ユニットは、制御部60により制御される。
【0078】
待機位置SP付近には、待機位置SPに位置する保持部材10に保持された紙コップPCの段差Sを検出する第2センサ70-2が配置されている。第2センサ70-2は、前述したセンサ70と同様の構成を有している。第2センサ70-2は、制御部60に接続されている(図12参照)。なお、第2センサ70-2は、必須ではない。第2センサ70-2が設けられない場合には、例えば第1センサ70-1が、待機位置SPに位置する保持部材10に保持された紙コップPCの段差Sを検出するセンサとして、待機位置SP付近に配置されてもよい。
【0079】
排出位置DP付近には、保持部材10に保持された紙コップPCを排出するための排出ユニットが配備されている。該排出ユニットは、制御部60により制御される。
【0080】
印刷装置2の印刷部400は、複数(例えば8つ(8色分))のインクユニット410(例えば第1~第8インクユニット)を含むインクユニット群415と、インク画像担持体41(例えばブランケット)が外周面の周方向の所定領域に設けられた第2回転支持部材420とを備える。上記8色は、例えばC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の3色と、K(ブラック)及びW(ホワイト)を各々が含む5つの特色とで構成されてもよい。上記8色は、例えばK(ブラック)及びW(ホワイト)を各々が含む8つの特色で構成されてもよい。
【0081】
第2回転支持部材420は、印刷位置PPに位置する保持部材10に保持された紙コップPCの外周面にインク画像担持体41が接触するように、第2軸AX2に略平行な第3軸AX3周りに回転可能に架台430に支持されている。
【0082】
複数のインクユニット410は、第2回転支持部材420の周方向に沿って配置されている。
各インクユニット410は、ケース413と、該ケース413内に配置された転写ローラ411、アニロックスローラ412及びインクタンク413とを含む。
なお、各インクユニット410は、転写ローラ411とアニロックスローラ412との間に少なくとも1つの中間転写ローラを有していてもよい。
【0083】
ケース413は、架台430の、第2回転支持部材420と略同軸の円板部430aの側面に固定部材414を介して固定されている。
【0084】
転写ローラ411は、第2回転支持部材420の外周面に設けられたインク画像担持体41に外周面(より詳細には後述する版)が接触するように位置決めされている。転写ローラ411の外周面には、該転写ローラ411に対応する色のインク画像を形成するためのパターンが彫り込まれた(刻み込まれた)版が貼り付けられている。
【0085】
アニロックスローラ412は、外周面が転写ローラ411の外周面及びインクタンク413のインク供給部に接触するように位置決めされている。アニロックスローラ412は、インクタンク413のインク供給部からインクIを掻き出して転写ローラ411の外周面上の版に転写するローラである。
【0086】
印刷装置2は、各インクユニット410の転写ローラ411及びアニロックスローラ412を駆動する第3駆動部55(図12参照)を有している。第3駆動部55は、制御部60により制御される。
【0087】
以下に、印刷部400の動作について説明する。
先ず、制御部60は、第3駆動部55を制御して各インクユニット410のアニロックスローラ412を矢印P方向に回転させるとともに転写ローラ411を矢印Q方向に回転させてインクタンク413内のインクIをアニロックスローラ412、転写ローラ411の外周面上の版に順次転写する。これにより、当該版に当該インクユニット410が受け持つ色のインク画像が形成される。
次いで、制御部60は、第2駆動部50及び第3駆動部55を制御して第2回転支持部材420を矢印R方向に回転させるとともに複数のインクユニット410の転写ローラ411を矢印Q方向に順次駆動して、インク画像Iiを構成することとなる各色のインク画像(該色に対応する版に形成されたインク画像)を第2回転支持部材420と共に回転するインク画像担持体41に順次転写する。
すなわち、矢印R方向(第2回転支持部材420の回転方向)に回転するインク画像担持体41に対して、第2回転支持部材420の回転方向のより上流側に位置するインクユニット410からより下流側のインクユニット410の順にインク画像の転写が行われる。
全てのインクユニット410からインク画像担持体41に対してインク画像が転写されたときに、インク画像担持体41にインク画像Ii(例えばフルカラーのインク画像)が形成される。
【0088】
<6.本発明の第2実施形態に係る印刷装置の動作>
本発明の第2実施形態に係る印刷装置2の動作について、図11図13及び図14を参照して説明する。図13のフローチャートに示される印刷装置2の動作は、本発明の印刷方法の一例である。
【0089】
印刷装置2の印刷条件の設定、印刷装置2の各可動部の動作設定等は、オペレータによるパソコン操作により可能となっている。
ここでは、紙コップPCの外周面の周方向の一部(例えば5°~355°、10°~350°等の角度範囲内)にインク画像Iiの印刷が行われるものとする。予め、紙コップPCに印刷されるインク画像Iiを構成することとなる各色のインク画像に対応する版が該色に対応する転写ローラ411の外周面に貼り付けられている。各インクユニット410のインクタンク413には、該インクユニット410に対応する色のインクIとして、例えばUV硬化性のインクが供給されるものとする。
【0090】
制御部60は、予め第2駆動部50を制御して第2回転支持部材420を駆動してインク画像担持体41に転写されたインク画像Iiの先端位置を接触位置CP(印刷位置PPに位置する保持部材10に保持された紙コップPCの外周面とインク画像担持体41との接触位置)に一致させておく(図11参照)。
制御部60は、予め駆動機構80を制御して8つの保持部材10のうちいずれか1つの保持部材10を紙コップPC装着位置MPに位置させておく。
【0091】
最初のステップS21では、制御部60が、保持部材10に紙コップPCを保持させる。具体的には、制御部60は、紙コップ装着位置MPに位置する保持部材10に対して装着ユニットにより紙コップPCを装着し、真空吸引により保持部材10の外周面に紙コップPCの内周面を吸着保持させる。
【0092】
次のステップS22では、制御部60が、第1駆動部30を制御して紙コップPCを第1軸AX1周りに例えば等角速度ω(等速)で回転させる。
【0093】
次のステップS23では、制御部60が、第1センサ70-1が紙コップPCの段差Sを検出したか否かを判断する。ここでの判断が肯定されるとステップS24に移行し、否定されると同じ判断を再び行う。すなわち、待ちの状態となる。
【0094】
ステップS24では、制御部60が、紙コップPCの回転を停止させる。具体的には、制御部60は、第1センサ70-1が紙コップPCの段差検出タイミング又は該段差検出タイミングより後のタイミングで該回転を停止させて段差Sの第1軸AX1周りの位置を設定する。この場合に、第1センサ70-1の検出位置(紙コップPCに対するレーザ光の照射位置)によって段差検出タイミングでの段差Sの第1軸AX1周りの位置(以下「初期角度位置」と呼ぶ)が決まる。段差検出タイミングから所定時間ΔT経過時に該回転を停止させたときの段差Sの第1軸AX1周りの位置(角度位置)は、初期角度位置+ω×ΔTとなる。制御部60は、内蔵するタイマーを用いて(段差検出タイミングをトリガーとして)、この角度位置を算出することが可能である。
すなわち、制御部60は、段差Sの第1軸AX1周りの位置を、段差Sの検出タイミングから紙コップPCの回転停止タイミングまでの時間(0も含む)により設定することができる。
制御部60は、段差Sの第1軸AX1周りの位置の設定結果(設定位置)をメモリ90に保存する。
【0095】
次のステップS25では、制御部60が、紙コップPCを保持した保持部材10を待機位置SPへ移動させる。具体的には、制御部60は、駆動機構80を制御して第1回転支持部材200を矢印U方向(図11参照)に例えば45°回転させて紙コップPCを保持した保持部材10を待機位置SPへ移動させる。
【0096】
次のステップS26では、制御部60が、段差Sの位置を確認する。具体的には、制御部60は、第2センサ70-2の検出結果に基づく段差Sの第1軸AX1周りの位置が、ステップS24で設定された第1軸AX1周りの位置(メモリ90に保存された設定結果)と一致しているかどうかを確認する。制御部60は、一致していると判断した場合には次のステップS27に移行させ、一致していないと判断した場合には、例えば操作パネル等にエラー情報を出力し、印刷装置2の動作を中断させる。
【0097】
ステップS27では、制御部60が、紙コップPCを保持した保持部材10を印刷位置PPへ移動させる。具体的には、制御部60は、駆動機構80を制御して第1回転支持部材200を矢印U方向(図11参照)に例えば45°回転させて紙コップPCを保持した保持部材10を印刷位置PPへ移動させる。このとき、紙コップPCの段差Sは、インク画像担持体41に転写された(担持された)インク画像Iiには接触しない位置にある(図11参照)。
【0098】
次のステップS28では、制御部60が、紙コップPCにインク画像Iiを転写する。具体的には、制御部60は、第1駆動部30及び第2駆動部50を制御して、紙コップPCを保持した保持部材10を矢印V方向に回転させるともに第2回転支持部材420を矢印R方向に回転させて、インク画像Iiを紙コップPCの外周面に転写する。ここで、インク画像Iiの転写前には、段差Sは接触位置CPよりも保持部材10の回転方向(矢印V方向)の下流側に位置している(図11参照)。インク画像Iiの転写は段差Sが接触位置CPに達する前に終了するため、インク画像Iiの転写後には段差Sは接触位置CPよりも保持部材10の回転方向の上流側に位置している(図14参照)。すなわち、インク画像Iiの転写中、段差Sは、紙コップPCの周方向に沿って接触位置Pから外れた範囲を移動するので、インク画像Iiは紙コップPCの段差Sから外れた位置に転写される。
【0099】
次のステップS29では、制御部60が、紙コップPCを保持した保持部材10を排出位置DPへ移動させる。具体的には、先ず、制御部60は、駆動機構80を制御して第1回転支持部材200を矢印U方向(図11参照)に例えば45°回転させて、該紙コップPC(第1紙コップとする)を保持した保持部材10を排出位置DPの手前の排出前位置に位置させるとともに次の紙コップPC(第2紙コップとする)を保持した保持部材10を印刷位置PPに位置させる。次いで、制御部60は、第2紙コップに対しても第1紙コップと同様にインク画像Iiの印刷を行う。制御部60は、第2紙コップに対するインク画像Iiの印刷が終了したときに、駆動機構80を制御して第1回転支持部材200を矢印U方向に例えば45°回転させて第1紙コップPCを排出位置DPに移動させる。
【0100】
最後のステップS30では、制御部60が、紙コップPCを排出させる。具体的には、制御部60は、排出ユニットを制御して、保持部材10による紙コップPCの吸着保持(真空吸引)を解除し、紙コップPCを例えば逆さ状態で排出レーンへ排出する。排出レーンに排出された紙コップPCは、例えば逆さ状態のまま乾燥レーン及び検査レーンに順次送られ、良品のみが出荷レーンに送られる。
【0101】
<7.本発明の第2実施形態に係る印刷装置、該印刷装置を用いた印刷方法及び該印刷方法によりインク画像が外周面に印刷された紙コップの効果>
以上説明した第2実施形態に係る印刷装置2も第1実施形態に係る印刷装置1と同様の効果を奏する。
以上説明した第2実施形態に係る印刷装置2を用いた印刷方法も第1実施形態に係る印刷装置1を用いた印刷方法と同様の効果を奏する。
以上説明した第2実施形態に係る印刷装置2を用いた印刷方法によりインク画像Iiが印刷された紙コップPCも、第1実施形態に係る印刷装置1を用いた印刷方法によりインク画像liが印刷された紙コップPCと同様の効果を奏する。
【0102】
<8.本発明の変形例>
本発明に係る印刷装置は、上記第1及び第2実施形態に係る印刷装置1、2の構成に限定されず、適宜変更可能である。
【0103】
例えば、制御部60は、紙コップPCの外周面の、段差Sを基準とした周方向の所定位置にインク画像Iiが形成されるように段差Sの第1軸AX1周りの位置を設定してもよい。すなわち、上記印刷方法における設定する工程では、紙コップPCの外周面の、段差Sを基準とした周方向の所定位置にインク画像Iiが転写されるように段差Sの第1軸周AX1周りの位置を設定してもよい。
これにより、紙コップPCの外周面における段差Sとインク画像Iiとの周方向の位置関係を所望の位置関係(例えばインク画像Iiの周方向の中央位置が段差Sの周方向の位置から周方向に略180°ずれた位置となる位置関係等)に設定することができる。
【0104】
例えば、上記第1実施形態に係る印刷装置1のようにインク画像Iiが紙コップPCの外周面に重ね合わせて複数形成される場合において、制御部60は、紙コップPCの外周面に既に形成されたインク画像Iiに新たなインク画像Iiを重ね合わせて形成する際に、該インク画像Iiが所定の重ね合わせ位置に形成されるように段差Sの第1軸AX1周りの位置を設定してもよい。すなわち、上記印刷方法における設定する工程では、紙コップPCの外周面に既に形成されたインク画像Iiに新たなインク画像Iiを重ね合わせて転写する際に、該インク画像Iiが所定の重ね合わせ位置に転写されるように段差Sの第1軸AX1周りの位置を設定してもよい。例えば、先のインク画像Iiが段差Sを基準とした所定位置に形成されていれば、該インク画像Iiに重ね合わせられる後のインク画像Iiも段差Sを基準とした所定位置に形成することにより、重ね合わせ精度(位置決め精度)を向上することができる。
これにより、インク画像Iiの重ね合わせ精度(位置決め精度)の向上を図ることができ、高品質の多色インク画像を形成することができる。
なお、印刷装置1では、例えば4色(C、M、Y、K)の網点を掛け合わせてすべての色を表現できるが、この場合、色間(インク画像間)の位置決め精度が非常に重要となる。
【0105】
上記第1及び第2実施形態の印刷装置1、2では、センサ70、70-1、70-2としてレーザセンサを用いているが、これに限らず、要は、紙コップPCの外周面の周方向の一部をターゲット(検出位置)とするセンサであれば、如何なるセンサであってもよい。
例えば、図15に示されるように、画角θを有する撮像部(例えばカメラ)及び画像解析部(例えCPU)を含むセンサ70Aを用いてもよい。センサ70Aは、紙コップPCが第1軸AX1周りに回転されている間、撮像部で撮影した画像を画像解析部でモニタ、解析し、撮影画像に線状の像が現れたときに、該像を段差Sとして検出し、検出信号を制御部60に出力する。
【0106】
例えば、図16に示されるように、第1軸AX1に平行な軸周りに回動可能なブレード
Bの先端に形成された折り曲げ部Baを紙コップPCの外周に沿わせておき、紙コップPCを第1軸AX1周りに回動させて、該折り曲げ部Baが段差Sに当たったときにブレードBが回動してリレースイッチをオンにし、制御部60に検出信号が出力される構成としてもよい。折り曲げ部Baが段差Sに当たっていないときは、ブレードBは引っ張りスプリングSPに付勢されてリレースイッチがオフ状態となる。
【0107】
上記第1実施形態の印刷装置1では、紙コップPCを保持した複数の保持部材10が第2軸AX2周りを循環して印刷、乾燥を行う構成を有しているが、紙コップPCを保持した単一の保持部材10が所定箇所で印刷、乾燥を行う構成を有していてもよい。この場合、印刷部及び乾燥部の各々も、単一でもよい。
【0108】
上記第2実施形態の印刷装置2では、紙コップPCを保持した複数の保持部材10が第2軸AX2周りを循環して印刷を行う構成を有しているが、紙コップPCを保持した単一の保持部材10が所定箇所で印刷を行う構成を有していてもよい。
【0109】
上記第1及び第2実施位形態の印刷装置1、2では、段差Sを検出するときに保持部材10を等角速度ωで第1軸AX1周りに回転させているが、等角速度ωで回転させなくてもよい。例えば、段差Sが検出されたタイミングから保持部材10が第1軸AX1周りに回転した回転角を検出するセンサ(例えばジャイロセンサ等)を用いることにより段差Sの第1軸AX1周りの位置を計測することができる。
【0110】
上記第1実施形態の印刷装置1では、紙コップPCの段差Sを検出する位置(第2位置P2)を表面処理位置STPとしているが、これに代えて、例えば紙コップ装着位置MP、乾燥位置DPkとしてもよいし、他の処理を行わず段差Sの検出のみを行う位置(例えば待機位置)を別途設定してもよい。段差Sを検出する位置(第2位置P2)には、段差Sを検出するためのセンサを少なくとも1つ設置することが好ましい。また、表面処理位置STPにおいて、表面処理動作とは別に段差検出動作を行ってもよい。乾燥位置DPkにおいて、乾燥処理とは別に段差検出動作を行ってもよい。
【0111】
上記第1実施形態の印刷装置1では、紙コップPCに1色印刷する毎に乾燥を行う構成を採用しているが、これに代えて、紙コップPCに複数色印刷(例えば全色印刷)した後に乾燥を行う構成を採用してもよい。
【0112】
上記第1及び第2実施形態の印刷装置1、2は、多色印刷装置であるが、モノクロ印刷装置であってもよい。
【0113】
本発明は、センサでの検出結果に基づいて紙コップPCの外周面にインク画像を形成できればよく、その印刷方法及び該印刷方法の実施に用いられる印刷装置は、上述した第1及び第2実施形態で説明したものに限定されない。
【0114】
例えば、本発明は、インクジェット方式の印刷方法及び該印刷方法に用いられるインクジェット印刷装置にも適用可能である。該インクジェット印刷装置は、一例として、インク吐出ヘッドと、該インク吐出ヘッドにインクを供給するインク供給系とを備える。該インク供給系は、複数色に対応する複数のインクタンク又は単一色に対応する単一のインクタンクを含む。インク吐出ヘッドは、制御部によりインク画像の画像データに応じて制御される。インクジェット印刷装置においては、例えば、保持部材10に保持された紙コップPCの外周面に対向する位置(インク付着位置付近の位置)に配置されたインク吐出ヘッドから、段差の第1軸AX1周りの位置が設定された紙コップPCの外周面に対してインクを吐出してインク画像を形成(印刷)することができる。この際、必要に応じて印刷中又は印刷の合間に保持部材10を第1軸AX1周りに回転させてインク吐出ヘッドに対して紙コップPCの外周面を周方向にずらすことが好ましい。これにより、紙コップPCの外周面の周方向の所望の位置及び範囲にインク画像を形成することができる。
【0115】
上記第1及び第2実施形態では、紙コップPCを1周回転させる間(段差がインク付着位置に差し掛かってから1周して戻ってくるまでの間)に該紙コップPCの外周面にインク画像を形成しているが、紙コップPCを複数周回転させながら該紙コップPCの外周面にインク画像を形成してもよい。この場合に、紙コップPCの外周面の周方向の一部又は全域にインク画像を形成してもよい。
【0116】
本発明に係る印刷方法及び印刷装置において、紙コップPCの外周面にインク画像を形成する際、インク画像に文字、数字、記号、図形等からなる情報伝達表示(例えば品質表示、商品名、注意書き、但し書き、消費期限、賞味期限等)が含まれる場合に、少なくとも該情報伝達表示を形成するためのインクが該紙コップPCの外周面の段差以外の部分に付着されるように該段差の第1軸AX1周りの位置を設定してもよい。これにより、該情報伝達表示の視認性が悪化するのを抑制できる。この場合に、インク画像の情報伝達表示以外の部分が段差上に形成されるように該段差の第1軸AX周りの位置を設定してもよい。
【符号の説明】
【0117】
1、2:印刷装置、10:保持部材、20、200:第1回転支持部材、30:第1駆動部(駆動部)、40、420:第2回転支持部材、50:第2駆動部、60:制御部、70、70-1、70-2、70A、70B:センサ、PC:紙コップ、P1:転写位置(第1位置)、P2:転写位置とは異なる位置(第2位置)、AX1:第1軸(所定軸)、AX2:第2軸、AX3:第3軸。
図1
図2
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図5
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図10
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