IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シーメンス ガメサ リニューアブル エナジー エー/エスの特許一覧

特開2022-123867風力タービン用の軸受、軸受を備える風力タービンおよび軸受リングを製造するための方法
<>
  • 特開-風力タービン用の軸受、軸受を備える風力タービンおよび軸受リングを製造するための方法 図1
  • 特開-風力タービン用の軸受、軸受を備える風力タービンおよび軸受リングを製造するための方法 図2
  • 特開-風力タービン用の軸受、軸受を備える風力タービンおよび軸受リングを製造するための方法 図3
  • 特開-風力タービン用の軸受、軸受を備える風力タービンおよび軸受リングを製造するための方法 図4
  • 特開-風力タービン用の軸受、軸受を備える風力タービンおよび軸受リングを製造するための方法 図5
  • 特開-風力タービン用の軸受、軸受を備える風力タービンおよび軸受リングを製造するための方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022123867
(43)【公開日】2022-08-24
(54)【発明の名称】風力タービン用の軸受、軸受を備える風力タービンおよび軸受リングを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   F03D 80/70 20160101AFI20220817BHJP
【FI】
F03D80/70
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022019343
(22)【出願日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】21156866
(32)【優先日】2021-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】519081710
【氏名又は名称】シーメンス ガメサ リニューアブル エナジー エー/エス
【氏名又は名称原語表記】Siemens Gamesa Renewable Energy A/S
【住所又は居所原語表記】Borupvej 16, 7330 Brande, Denmark
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ニルス カール フリューゼンデール
(72)【発明者】
【氏名】キム トムセン
(72)【発明者】
【氏名】モーテン トアハウゲ
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA16
3H178AA40
3H178BB35
3H178BB71
3H178BB73
3H178BB75
3H178BB77
3H178CC16
3H178DD08X
3H178DD67X
(57)【要約】      (修正有)
【課題】風力タービン用の軸受、軸受を備える風力タービンおよび軸受リングを製造するための方法を提供する。
【解決手段】風力タービン用の軸受であって、互いに半径方向に配置された第1のリング(9)および第2のリングを備え、一方のリングは、回転軸線を中心として他方のリング(9)に対して相対的に回転し、第1のリング(9)は、円筒状のリング区分(21)と、リング区分(21)から半径方向に延在しているカラーとを有し、カラーは、軸線方向の軸受要素を支持する軸線方向の支持領域を有する、軸受において、リング区分(21)からカラーが延在している区分で第1のリング(9)に、圧縮応力を生じさせる複数の予荷重要素(25)が固定されていることを特徴とする、軸受。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力タービン用の軸受であって、互いに半径方向に配置された第1および第2のリング(9,10)を備え、一方のリング(10)は、回転軸線を中心として他方のリング(9)に対して相対的に回転し、前記第1のリング(9)は、円筒状のリング区分(21)と、該リング区分(21)から半径方向に延在しているカラー(22)とを有し、該カラー(22)は、軸線方向の軸受要素(15)を支持する軸線方向の支持領域(23)を有する、軸受において、
前記リング区分(21)から前記カラー(22)が延在している区分で前記第1のリング(9)に、圧縮応力を生じさせる複数の予荷重要素(25)が固定されていることを特徴とする、軸受。
【請求項2】
各々の予荷重要素(25)は、前記リング区分(21)内に延在している少なくとも部分的にねじ山を有する孔(26)に挿入された少なくとも部分的にねじ山を有するボルト(29)であり、該ボルト(29)は、前記リング(9)に対して支持面(34)に直接または間接的に支持されていることを特徴とする、請求項1記載の軸受。
【請求項3】
前記孔(26)は、前記第1のリング(9)の軸線方向面(27)に設けられていて、前記リング区分(21)内に延在していることを特徴とする、請求項2記載の軸受。
【請求項4】
前記孔(26)および前記ボルト(29)は、前記回転軸線を中心として等間隔にあることを特徴とする、請求項3記載の軸受。
【請求項5】
各々の孔(26)は、前記回転軸線に対して平行に延在しているか、または各々の孔(21)は、前記回転軸線に対して角度(α)を成して前記リング区分(21)内に延在していることを特徴とする、請求項2から4までのいずれか1項記載の軸受。
【請求項6】
前記角度(α)は、3°~30°であることを特徴とする、請求項5記載の軸受。
【請求項7】
各々のボルト(29)は、ねじ山付き端部で前記孔(26)を越えて延在しており、ねじ山(31)に、前記支持面(34)に支持されたナット(32)が螺合されていることを特徴とする、請求項2から6までのいずれか1項記載の軸受。
【請求項8】
各々のボルト(29)は、工具用の取付け区分を備えるボルト頭部(35)を有し、該ボルト頭部(35)は、前記支持面(34)に支持されていることを特徴とする、請求項2から6までのいずれか1項記載の軸受。
【請求項9】
前記回転軸線に向かって傾斜して配置された前記ナット(32)または各々のボルト(29)の前記ボルト頭部(35)は、前記孔の長手方向軸線に対して垂直に配向された支持面(34)に支持されていることを特徴とする、請求項7または8記載の軸受。
【請求項10】
前記支持面(34)は、前記第1のリング(9)と一体であるか、または前記支持面(34)を備えるワッシャ(36)が設けられていることを特徴とする、請求項9記載の軸受。
【請求項11】
前記軸受要素(15)は、傾倒可能な流体膜軸受パッドであることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の軸受。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項記載の少なくとも1つの軸受(1)を備える風力タービン。
【請求項13】
前記軸受(1)は、前記風力タービン(1)の主軸受であることを特徴とする、請求項12記載の風力タービン。
【請求項14】
前記第1のリング(9)は内側のリングであり、位置不変の主軸(7)に連結されており、これに対して、前記第2のリング(10)は外側のリングであり、発電機(12)のロータ(11)に連結されていることを特徴とする、請求項12または13記載の風力タービン。
【請求項15】
請求項1から10までのいずれか1項記載の軸受の第1のリングを製造するための方法において、
まず、前記予荷重要素(25)を前記リング(9)に固定し、前記圧縮応力を発生させるために、前記予荷重要素(25)に荷重を加え、その後、前記カラー(22)の前記支持領域(23)を加工することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力タービン用の軸受であって、互いに半径方向に配置された第1および第2のリングを備え、一方のリングは、回転軸線を中心として他方のリングに対して相対的に回転し、第1のリングは、円筒状のリング区分と、リング区分から半径方向に延在しているカラーとを有し、カラーは、軸線方向の軸受要素を支持する軸線方向の支持領域を有する、軸受に関する。
【0002】
風力タービンは、一般的に知られているように、タワーと、タワーの上部に固定されたナセルとを備えている。ナセルにはハブが配置されており、ハブには複数のロータブレードが取り付けられている。一般的に知られているように、タービンブレードが、吹く風と相互作用すると、ハブが回転し、電力を発生させるための発電機を駆動する。そのような風力タービンは、複数の回転要素を備えており、これらの回転要素は各々の軸受に配置されている。一例は、直接駆動式の風力タービンにおける発電機の主軸受であるが、タービンは、たとえば遊星歯車システムまたは液圧式の歯車システムのうちの1つまたは複数の歯車を備えていてもよい。
【0003】
軸受は、通常、2つのリング、すなわち第1のリングおよび第2のリングを備えており、両者は、通常、互いに半径方向に配置されている。一方のリングは位置不変であり、他方のリングは、第1のリングに対して相対的に回転する。半径方向内側のリングが位置不変であり、風力タービンの位置不変の主軸に連結されており、これに対して、外側のリングが内側のリングの周りで回転し、発電機のロータに連結されていることが可能である。逆に、外側のリングが位置不変であり、内側のリングが回転することも可能である。軸受の構成に関わらず、各々の回転リングは、回転させる必要がある各々の構成要素にハブの回転が伝達されるように、ハブおよびこの構成要素に連結されている。
【0004】
軸受は、円錐ころであってよい複数のころを備えた転がり軸受であることが知られているが、軸受を滑り軸受または平面軸受として構想することも知られている。位置不変のリングには、通常、滑りパッドの形態の各々の軸受要素が設けられており、この軸受要素に対して回転リングが滑動し、極めて薄い流体膜によって支持されている。とりわけ、傾倒可能であってよく、ひいては、軸受に作用する力から生じるリング間の幾何学的な誤差を補償することができる軸受パッドは、特定のリング設計あるいはリング形状を有する位置不変のリングに配置されている。このリングは、ハウジングまたは軸受ハウジングと呼ばれることもあり、円筒状のリング区分を含み、この円筒状のリング区分に他方のリングが各々の半径方向の軸受要素によって半径方向で支持されている。軸線方向の支持のために、リングには軸線方向の軸受要素が設けられており、これらの軸線方向の軸受要素は、このリングで実現される特定の軸線方向の支持領域に支持されている。この支持領域を実現するために、リングはカラーを備えており、このカラーが、円筒状のリング区分から半径方向に延在している。このカラーの軸線方向のリング表面が、軸線方向の支持領域であり、この軸線方向の支持領域に滑り軸受要素が支持されている。
【0005】
運転時、吹く風がロータブレードと相互作用すると、高負荷が軸受にかかり、この負荷は、ロータブレードを介して軸受の回転リングに伝えられる。この回転リングは、すでに述べたように、位置不変のリングに配置された軸線方向の軸受要素によって軸線方向で支持されている。このような負荷は運転中に変動することもある。それにも拘わらず、円筒状のリング区分と半径方向に延在したカラーとを備えた位置不変のリングの形状に起因して、カラーと円筒状のリング区分とが交わる領域に高い応力集中が発生し、カラーおよびリング区分がほぼ方形の設計を呈するこの領域で軸受リングに高い引張応力を発生させていることが判った。この問題に対処するかあるいはこのような高い引張応力または負荷に対抗するためには、より高い強度または剛性を有する材料を使用することが考えられる。このことには、延性が低く、他の機械特性を呈する特定の材料を使用する必要があるので、より高いコストがかかることになる。代替的には、材料が付加されるかあるいはより厚いリング区分を有するリングおよびカラーが使用されることがある。このことは、いっそう重い軸受あるいは構造に繋がる。このことは、より高いコストを再び生じさせ、やはり受け入れられるものではない。
【0006】
したがって、本発明の目的は、改善された軸受を提供することである。
【0007】
この目的に取り組むために、上述した軸受は、リング区分からカラーが延在している区分で第1のリングに、圧縮応力を生じさせる複数の予荷重要素が固定されていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、円筒状のリング区分とカラーとを備える第1のリングに複数の予荷重要素が設けられている。この複数の予荷重要素は、第1のリングに、あるいは軸線方向の軸受要素あるいは滑りパッドの軸線方向の支持部から高い引張応力が生じる区分に、内部圧縮応力を生じさせるために使用される。もたらされたこの高い圧縮応力は、生じる引張応力になんらかの形で対抗するか、あるいは許容可能な引張応力の限界に到達するまで、より高い引張応力が生じることを許容する。したがって、これらの予荷重要素によって、特に高い引張応力が生じる区分、すなわち、カラーがリング区分から延在しているかあるいはリング区分に接合している区分において、第1のリングを「強化」することが可能となる。
【0009】
この領域に圧縮応力を発生させるために、カラーがリング区分から延在しているこの特定の区分または領域で第1のリングに予荷重要素が配置され、それにより、まさに必要とされている場所、すなわち、タービンの運転に基づく引張応力が第1のリングに生じる場所に、対抗する圧縮応力が発生させられる。
【0010】
予荷重要素を配置することは、廉価であるものの、各々の負荷から生じる高い引張応力に対して第1のリングの機械的な特性を向上させて、リングの耐性をより高めるために極めて効果的な方法である。第1のリングあるいは軸受ハウジングの材料では、通常、疲労を考慮した耐荷量および圧縮荷重を考慮した極限強度の方が、引張荷重を考慮した耐荷量および極限強度よりも高い。したがって、予荷重要素により、第1のリングの強度を大幅に改善することができる。
【0011】
好ましい実施形態では、各々の予荷重要素は、リング区分内に延在している少なくとも部分的にねじ山を有する孔に挿入された少なくとも部分的にねじ山を有するボルトであり、ボルトは、リングに対して支持面に直接または間接的に支持されている。これらのボルトはその各々のねじ山付き区分で各々のねじ山付き孔に螺合されていて、リングに対して支持面に支持されているが、これらのボルトにより、各々の圧縮応力をリング材料内に生じさせることが可能になる。ボルトは、一端において、ねじ山付き孔にねじ込まれた区分できつく固定されていて、他端において、リングに対する支持部できつく固定されており、それにより、ボルトに荷重を加える荷重に応じて、各々の圧縮応力を発生させ、調整することができる。以下に説明するように、これらのボルト要素およびその固定に関する様々な実施形態が可能である。それは、ナットがボルトに螺合され、このナットが各々の支持面に支持されている、ボルトとナットとの組合せであってよく、各々の支持面は、リングにじかに設けられていてもよいし、ワッシャなどによって設けられていてもよい。他方、六角頭部を有するボルトが使用されてもよく、この六角頭部は、リングの支持面に直接支持されるかまたは各々の中間ワッシャなどで支持される。
【0012】
そのようなボルト予荷重要素は、その設計の点で簡単であり、リングに孔を設けることが簡単であることから好ましいが、他の予荷重要素が使用されてもよく、たとえば、リングに固定される、ねじ・クランプのようなアセンブリといったクランプが使用されてもよい。
【0013】
ボルトが挿入されるかあるいは螺合される孔は、好ましくは、第1のリングの軸線方向面に設けられていて、リング区分内に延在している。この実施形態によれば、孔は、第1のリングの軸線方向外側のリング表面に設けられていて、円筒状のリング区分内へと延びている。孔は、このリング区分内のかなり奥深くまで、好ましくは軸線方向の厚さの少なくとも3分の1あるいは好ましくは軸線方向の厚さの約半分にわたって延在している必要があるので、軸線方向で見て、孔の長さはカラーの厚さに左右される。
【0014】
孔およびボルトは、軸受の回転軸線を中心として、好ましくは等間隔に分配されて配置されている。軸線方向のリング表面の周方向に、対応する個数のボルトおよび孔が設けられており、リングの直径に応じて、たとえば10個~30個のうちの任意の個数の孔あるいはボルトが設けられている。好ましくは、この個数は15個~25個であり、最も好ましくは18個~22個である。
【0015】
孔ひいてはボルトの配向に関して、2つの代替形態が可能である。第1の代替形態では、各々の孔および当然ながら各々のボルトも、軸受の回転軸線に対して平行に延在している。代替形態では、各々の孔および各々のボルトが、回転軸線に対して角度を成してリング区分内に延在している。この配向は、カラーの配向に左右される。カラーが円筒状のリング区分から半径方向外向きに延在している場合には、孔およびボルトは回転軸線に向かって配向される。カラーが内向きに延在している場合には、孔およびボルトの長手方向軸線は回転軸線から離れる方向に延びる。
【0016】
孔およびボルトが傾斜している場合、その角度は、好ましくは3°~30°、最も好ましくは5°~20°である。選択された角度は、当然ながら、第1のリングのこの領域の最終的な幾何学形状に左右される。
【0017】
各々のボルトを孔にきつく固定するために、すでに述べたように、ボルトは、少なくとも一端に少なくとも部分的にねじ山を有しており、この端部がねじ山付き孔に挿入され、このねじ山付き孔はその全長にわたってねじ山を有していてもよいし、その内側の端領域だけにねじ山を有していてもよい。当然ながら、ボルトも全長にわたってねじ山を有していることが可能である。
【0018】
第1の実施形態によれば、各々のボルトは、ねじ山付き端部で孔を越えて延在しており、ねじ山に、支持面に支持されたナットが螺合されていてよい。この実施形態では、ボルトは、単純なねじ山付きスタッドであり、このスタッドはその全長にわたってねじ山を有していてもよいし、各々の端領域にだけねじ山を有していてもよく、一方の端領域が孔のねじ山に螺合される。他端は孔を越えて延在している。この端部にはナットが螺合されており、このナットは、各々の支持面に対してきつく螺合され、それにより、ボルトあるいはスタッドに荷重を加え、ひいては、第1のリングに荷重を加える。この荷重は、ナットに加えられるトルクによって適切に調整されてよい。
【0019】
第2の代替形態では、各々のボルトは、工具用の取付け区分を備えるボルト頭部を有し、ボルト頭部は、支持面に支持されている。ここで、ボルトには、たとえば六角頭部が設けられていてよい。ボルトはその反対側の端区分またはその全長にわたってねじ山を有しており、ボルト頭部が支持面に支持されるまで、孔のねじ山にねじ込まれる。この場合にも、ボルト頭部に加えられるトルクに応じて、ボルトの荷重ひいては加えられる圧縮応力が適切に調整されてよい。
【0020】
すでに述べたように、孔およびボルトあるいは両者の長手方向軸線が、回転軸線に向かって傾斜していることが可能である。支持面に対するナットあるいはボルト頭部の局所的な荷重の均等な分配を実現するために、本発明の更なる実施形態では、回転軸線に向かって傾斜して配置されたナットまたは各々のボルトのボルト頭部は、孔の長手方向軸線に対して垂直に配向された支持面に支持されていることが特定されている。この実施形態により、ナットあるいはボルト頭部によって支持面に加えられる荷重を完全に均等または対称的に荷重分配することができる。ナットもボルト頭部も平坦な接触面を有している。この平坦な接触面が各々の支持面に完全に支持されていることを確保するために、また、ボルトの長手方向軸線が回転軸線に向かって傾斜していることから、この角度は、支持面を各々の傾斜位置に配置することによっても補償される。本発明のこの実施形態によれば、支持面は、孔の長手方向軸線に対して垂直に配向されており、したがって、ナットあるいはボルト頭部の各々の接触面に対して平行である。これにより、ナットまたはボルト頭部の接触面が各々の支持面に完全に支持され、それにより、この接触面にわたって荷重が均等に分配されることが確保される。
【0021】
各々の支持面は、第1のリングと一体であってよい。傾斜した支持面を有する各々の環状の領域を形成するために、このリングは、ナットまたはボルト頭部が支持されることになる軸線方向の前面で加工される。まさにこの領域に孔も設けられるので、支持面に優れた配向を付けることができる。
【0022】
代替形態では、支持面を備える各々のワッシャが設けられていることも可能である。この代替形態では、軸線方向のリング表面は平坦である。ワッシャは、このリング表面に取り付けられ、このワッシャを通ってボルトが孔に挿入される。ワッシャ自体は、傾斜した各々の支持面を備えている。この代替形態では、ワッシャの各々の支持面にナットまたはボルト頭部の接触面を平らに全面にわたって接触させるために、孔の軸線を中心としたワッシャの配向を調整する必要がある。それにも拘わらず、この実施形態でも、優れた荷重分配が可能である。
【0023】
第1のリングに支持されるかあるいは第1のリングでカラーに取り付けられる軸受要素は、好ましくは傾倒可能な流体膜軸受パッド(tiltable fluid film bearing pad)である。この流体膜軸受パッドには、たとえば方形の断面を有する第2のリングが軸線方向で支持されている。したがって、軸受自体は流体膜軸受あるいは滑り軸受である。
【0024】
本発明は、さらに、前述した少なくとも1つの軸受を備える風力タービンに関する。軸受は、好ましくはタービンの主軸受である。
【0025】
好ましくは、第1のリングは内側のリングであり、位置不変の軸に連結されており、これに対して、第2のリングは外側のリングであり、発電機のロータに連結されている。
【0026】
最後に、本発明は、前述した軸受の第1のリングを製造するための方法にも関する。この方法は、まず、予荷重要素がリングに固定され、圧縮応力を発生させるために、予荷重要素に荷重がかけられ、その後、カラーの支持領域が加工されることを特徴とする。本発明のこの方法は、傾倒する各々の滑りパッドを使用する流体膜軸受では、各々の第1のリングあるいは軸受ハウジングに、極めて精密に加工された表面を有し、この表面に個々の滑りパッドを支持することが重要であるという事実に対処する。これは、複数の滑りパッド間で最も均等な荷重分配を確保するために、カラーの支持面が完璧に加工される必要があることを意味している。予荷重要素あるいはボルトに荷重が加えられると、第1のリングあるいは軸受ハウジングは僅かに変形して、僅かに凹凸のある支持面がカラーに生じる。これにより、隣接する個々の傾倒するパッド間での荷重の分散分配が不十分になってしまう。この問題に対処するために、本発明の方法は、まず、全ての予荷重要素を固定し、これらの予荷重要素に荷重を加え、明確に定義された要求された圧縮応力を発生させることを提案する。この固定により、すでに述べた支持面の僅かな変形がもたらされる。全ての予荷重要素に荷重が加えられた後、全ての滑りパッドを完璧に支持するために、各々のカラー支持面が完全に平坦であることを確保するように、この支持面が加工される。
【0027】
本発明の他の目的および特徴は、添付図面と併せて検討される以下の詳細な説明から明らかである。しかし、図面は、単に図解を目的としてデザインされた原理的な略図に過ぎず、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】風力タービンを示す原理的な斜視図である。
図2】本発明の各々の軸受を備えたハブ、主軸および発電機の部分断面図である。
図3】生じる引張応力について説明するための、予荷重要素が設けられていない領域における本発明の軸受の断面図である。
図4】回転軸線に対して傾斜した予荷重要素が設けられた領域における本発明の軸受の斜視的な断面図である。
図5】予荷重要素が配置された、側面から見た本発明の軸受の斜視図である。
図6】予荷重要素が回転軸線に対して平行に配置されている原理的な断面図である。
【0029】
図1は、ロータ2と、ナセル3と、ナセル3が上部に配置されているタワー4とを備える風力タービン1の原理図を示している。ロータ2は、ハブ6に取り付けられた3つのロータブレード5を備えている。このような風力タービンの原理的な構成は既知である。
【0030】
図2によるより詳細な断面図において、風力タービン1は、主軸受8に接続された位置不変の主軸7を備えている。主軸受8は、内側のまたは第1のリング9を備えており、この内側のまたは第1のリング9は位置不変であり、位置不変の主軸7に接続されている。軸受8は、半径方向外側のまたは第2のリング10をさらに備えており、この半径方向外側のまたは第2のリング10は、軸受の回転軸線を中心として、位置不変の第1のリング9に対して相対的に回転する。この第2のリング10には、ハブ6が接続されており、それにより、ハブ6の回転が、第2のリング10を回転させる。この第2のリング10には、発電機12のロータ11がさらに接続されており、それにより、ハブ6が回転すると、ロータ11が回転する。発電機12は、ステータ13をさらに備えており、このステータ13は、位置不変の軸7に位置不変に接続されている。また、直接駆動式の風力タービン1のこの構成は、一般的に既知である。
【0031】
本発明の焦点は、軸受8の構成にある。図3は、軸受8の断面図を示している。図3は、内側の第1のリング9と外側の第2のリング10とを示している。軸受8自体は、流体膜滑り軸受である。この流体膜滑り軸受では、滑りパッドの形態および第2のリング10あるいはその滑り面と各々の滑りパッドとの間に設けられた流体膜の形態の半径方向および軸線方向の各々の軸受要素によって、回転可能な外側の第2のリング10が、位置不変の内側の第2のリング9に半径方向および軸線方向で案内されている。図3による断面では、主軸7に向かって配向された軸受内側の軸線方向の滑りパッド14および軸受8の外側の滑りパッド15だけが示されている。滑りパッド15の形態の軸受要素は、滑りパッド15のところに示された傾倒可能な要素である。各々の滑りパッドを第1のリング9に取り付けるかあるいは支持する取付けベース16が設けられており、この取付けベース16には、各々のリングを案内する滑りパッド15が、ボールジョイント17によって取り付けられており、滑りパッド15は取付けベース16に対して僅かに傾倒することができる。示してあるように、滑りパッド15は、平坦な滑り面18を有しており、これに対して、第2のリング10は、軸線方向の平坦な滑り面19を有しており、この滑り面19が、中間の流体膜20により滑り面18に対して滑動する。滑りパッド14についても同じことが云える。
【0032】
図3に示してあるように、第1のリング9は、特定のL字形状の断面設計を有している。第1のリング9は、円筒状のリング区分21を備えており、この円筒状のリング区分21に、図示していない複数の半径方向滑り軸受パッドが取り付けられており、この半径方向滑り軸受パッドに第2のリング10が半径方向で案内されている。ここでも、各々の流体膜滑り軸受接触が実現されている。図3に示してあるように、この円筒状のリング区分21からは、リング9の外側に向かって半径方向にカラー22が延在している。リング9の軸線方向の端部に設けられたこのカラーには、平坦なリング支持面である軸線方向の支持領域23が設けられており、この軸線方向の支持領域23において、取付けベース16の平坦な各々の接触面24が支持され、この軸線方向の支持領域23に固定される。したがって、明らかに、円筒状のリング区分21およびカラー22は、L字形状の断面を形成している。
【0033】
矢印P1によって示してあるように、軸線方向の滑りパッド15は、支持領域23ひいてはカラー22に軸線方向の力を加える。これにより、リング区分21からカラー22が延在している領域、すなわち、両者が繋がっている領域に高い引張応力が生じる。双方向矢印P2は、この高い引張応力が与えられる材料あるいは第1のリング9の領域における引張応力を示すベクトルである。この高い引張応力は、疲労および極限負荷を考慮すると、第1のリング9あるいは流体膜軸受8全体の構造的な完全性に関して問題を含んでいる。
【0034】
この高い引張応力あるいはその悪影響に対抗するために、第1のリング9に複数の予荷重要素25が固定されている。図4に示してあるように、第1のリング9には複数の孔26が設けられており、これらの孔26は、リング9あるいはリング区分21の外側の軸線方向の前面27からリング区分21内に延在している。孔26には、少なくともその内側端部にまたはその全長にわたって、ねじ山28が設けられている。このねじ山付き孔26には、ボルト29がねじ込まれている。ボルト29はその内側の端部に、孔26のねじ山28に螺合する少なくとも1つのねじ山30を備えている。ボルト29の反対側の端部は、孔26を越えて延在しており、この反対の端部にもねじ山31が設けられている。このねじ山31には、ナット32が螺合されており、このナット32は、その平坦な接触面33で各々の支持面34に支持されている。図5に示してあるように、この平坦な支持面34は、リング9あるいは軸線方向の前面27に一体形に設けられている。
【0035】
図4に示してあるように、孔26の長手方向軸線ひいてはボルト29の長手方向軸線も軸受の回転軸線に対して傾斜している。角度αが図4に示してある。ボルト29に荷重を加えるためにナット32に加えられる荷重が、支持面34に対するナット32の接触面33にわたって均等に分配されることを確保するために、支持面34もそれぞれ傾斜している。支持面34は、孔26あるいはボルト29の傾斜した各々の配置に対応して、孔26あるいはボルト29の長手方向軸線に対して垂直である。これにより、極めて均等な荷重分配が可能になる。
【0036】
各々のねじ山付きボルト29がねじ山付き孔26にねじ込まれ、その最終位置に到達すると、ナット32がボルト29に螺合され、明確に規定されたトルクで締め付けられる。ボルト29が孔26に固定されるとき、第1のリング9が圧縮され、その結果、双方向矢印P3によって示されているように、主にボルト軸線に沿った向きの圧縮力が発生する。矢印P3は、予荷重要素25によって生じる圧縮応力の各々のベクトルを示している。生じたこの圧縮応力は、生じる引張応力に対抗するか、または引張応力を補償するか、あるいはより高い引張応力を受けることを許容し、それにより、運転時に軸受要素15によって生じる引張応力が、軸受あるいはリング材料に悪影響を及ぼすことはない。
【0037】
最後に、図6は、円筒状のリング区分21およびカラー22を備えた第1のリング9の別の実施形態を示している。この場合にも、図3について説明したのと同様に、図示していない軸線方向の軸受要素15あるいは滑りパッドが、カラー22に軸線方向で支持されている。
【0038】
この実施形態でも、予荷重要素26が第1のリング9に設けられている。第1のリング9には、対応する個数のねじ山付き孔26が設けられている。各々の孔26には、ボルト29がねじ込まれている。ボルト29は、この実施形態では六角頭部の形態の一体形のボルト頭部35を備えており、このボルト頭部35に工具を係合させることが可能である。ボルト頭部35と軸線方向の前面27との間にワッシャ36が配置されており、このワッシャ36は、ボルト頭部35の各々の接触面38を支持する各々の支持面37を提供している。この実施形態では、孔26ひいてはボルト29の長手方向軸線が回転軸線に対して平行である。
【0039】
すでに述べたように、複数の予荷重要素25は、図5に示してあるように、第1のリング9の周方向に均等にあるいは等間隔に分配されて設けられている。予荷重要素25の個数は、予想される引張応力あるいは補償する必要がある負荷に応じて選択される。
【0040】
各々の第1のリング9を製造するかあるいは軸受8を組み立てるためには、各々のステップの特定の時系列が適している。ねじ山28を有する各々の孔26が設けられた後、予荷重要素25あるいはボルト29が挿入され、材料内で要求される必要な圧縮応力を提供するための各々のトルクで、ナット32がきつく締め付けられるかまたはボルト29がボルト頭部35を介してきつく締め付けられる。生じたこの圧縮応力により、カラー22および支持領域23の領域に、極めて僅かであるものの、一定の変形が生じるので、全てのボルト29が固定されたときに、この支持領域23が最終的に加工される。ボルト29の固定を結果的に招く変形は除去され、最終的な支持領域23は可能な限り平坦になり、各々の軸受要素15あるいはその取付けベース16を支持するための理想的な表面が提供される。これにより、リング9の全周にわたって複数の軸受要素15間で適切な荷重分散が確保される。
【0041】
本発明を好ましい実施形態に関して詳細に説明してきたが、本発明は開示された例に限定されるものではなく、当業者は、この開示された例から、本発明の範囲から逸脱することなしに、他の変形形態を導き出すことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【外国語明細書】