(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022123878
(43)【公開日】2022-08-24
(54)【発明の名称】抗菌活性を有するプレウロムチリン馬尿酸エステルおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 233/83 20060101AFI20220817BHJP
C07C 231/12 20060101ALI20220817BHJP
C07C 231/24 20060101ALI20220817BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220817BHJP
【FI】
C07C233/83 CSP
C07C231/12
C07C231/24
C07B61/00 300
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022019843
(22)【出願日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】17/175,575
(32)【優先日】2021-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】522056404
【氏名又は名称】シーアン・タイコメッド・ファーマシューティカル・テクノロジー・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】XI’AN TAIKOMED PHARMACEUTICAL TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】6TH FLOOR, BLOCK B, NO. 69 JINYE ROAD, XI’AN HIGH‐TECH ZONE, XI’AN, SHAANXI 710077, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ヨンホン・タン
(72)【発明者】
【氏名】フアフェン・チー
(72)【発明者】
【氏名】ペイユー・チョウ
(72)【発明者】
【氏名】チュアンメイ・ユアン
(72)【発明者】
【氏名】ダン・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ジンイ・リ
(72)【発明者】
【氏名】リァン・シン
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA02
4H006AC48
4H006AD16
4H006AD17
4H006BA14
4H006BA30
4H006BA33
4H006BA51
4H006BB11
4H006BB12
4H006BB20
4H006BB24
4H006BC10
4H006BC19
4H006BC31
4H006BN20
4H006BR70
4H006BT12
4H006BT14
4H006BV72
4H039CA66
4H039CL25
(57)【要約】 (修正有)
【課題】優れた抗菌活性および抗薬剤耐性菌活性を有する化合物及び該化合物の調製方法を提供する。
【解決手段】下記式(I)を有する抗薬剤耐性菌活性を有する化合物を開示する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
【請求項2】
式(II)の化合物を式(III)の化合物と反応させて式(I)の化合物を得ることを含む、請求項1に記載の式(I)の化合物の調製方法であって、
【化2】
ここで、前記式(II)の化合物と前記式(III)の化合物との反応は、以下の工程、
前記式(II)の化合物および前記式(III)の化合物を、1:1~1:1.3のモル比で反応器に入れる工程、
窒素雰囲気下で、有機溶媒および触媒量の4-ジメチルアミノピリジン(4-DMAP)を添加して反応混合物を得る工程、
前記反応混合物を0℃で5分間撹拌した後、前記反応混合物にN,N´-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を添加する工程、
前記反応混合物を25~70℃で3~7時間反応させる工程、
前記反応混合物を濃縮し、酢酸エチルで抽出して粗生成物を得る工程、および、
1:1~4:1の比を有する石油エーテルと酢酸エチルを溶離剤として用いたシリカゲルフレッシュクロマトグラフィーカラムにより前記粗生成物を精製し、前記式(I)の化合物を得る工程、を含む、若しくは、
ここで、前記式(II)の化合物と前記式(III)の化合物の反応は、以下の工程、
前記式(II)の化合物、触媒、および、イオン性液体を窒素雰囲気下の反応器に入れる工程であって、前記触媒は12-モリブドケイ酸水和物(H
6Mo
12O
41Si)である工程、
前記式(III)の化合物を前記反応器に添加して反応混合物を形成する工程、
前記反応混合物を20~60℃で4~8時間加熱する工程、
前記反応混合物を分液漏斗に入れて粗生成物を分離する工程、
メタノール中で再結晶して前記粗生成物を精製し、前記式(I)の化合物を得る工程、および、前記イオン性液体を再循環する工程、を含む、方法。
【請求項3】
前記有機溶媒はトルエン、1,2-ジクロロエタン、または、ジメチルホルムアミド(DMF)であり、前記有機溶媒は1,2-ジクロロエタンであり、前記式(II)の化合物と前記式(III)の化合物のモル比は1 : 1.1であり、前記反応混合物を60℃で加熱し、前記反応混合物を5時間反応させ、前記溶離剤は石油エーテル:酢酸エチル=3:1である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記イオン性液体は1-オクチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェートであり、前記式(II)の化合物と前記式(III)の化合物は1:1~1:1.3のモル比を有し、前記式(II)の化合物と前記式(III)の化合物のモル比は1 : 1.1であり、前記反応混合物を30℃で加熱し、前記反応混合物を6時間加熱する、請求項2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬化学の分野に関し、特に、抗菌活性を有するプレウロムチリン馬尿酸エステルおよびその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、さまざまなタイプの薬剤耐性菌が急速に出現し、薬剤耐性率や感染問題がより深刻になっている。細菌耐性は世界が直面する深刻な公衆衛生上の課題となっており、抗菌薬の広範な使用が多数の耐性菌の主な理由である。多剤耐性菌(MDRO)の感染率と患者の死亡率は年々増加している。細菌の薬剤耐性はますます深刻になってきている。優れた抗菌活性、ユニークな抗菌メカニズムおよび新しい構造を有する化合物を見出すことが特に重要である。
【0003】
馬尿酸(化合物式III)は草食動物(ウマなど)の尿中に天然に存在し、ヒトの尿中にも少量存在する。馬尿酸は安息香酸とグリシンに容易に加水分解される。馬尿酸は、一定の範囲内で尿のpH値を低下させ、細菌の生息環境を変化させ、相乗的な殺菌効果を果たすことができる。
【0004】
プレウロムチリン(式IIの化合物)は、ニオイヒラウラベニタケ(Clitopilus pinsitus)の深部発酵によって産生される三環式ジテルペノイド獣医用抗生物質である。グラム陽性菌およびマイコプラズマに対して抗菌活性を有する。その抗菌効果に関する主な構造は化合物中の三環式骨格であり、これは、細菌リボソームの50Sサブユニットのペプチドアシルトランスフェラーゼ活性中心(PTC)と誘導適合効果を形成することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明では、プレウロムチリンを馬尿酸と組み合わせて、プレウロムチリン馬尿酸エステルを得る。予備的なin vitro抗菌活性実験は、化合物が優れた抗菌活性および抗薬剤耐性菌活性を有することを示す。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態において、本発明は、以下の式(I)を有する化合物(プレウロムチリン馬尿酸エステル)を提供する。
【化1】
【0007】
別の実施形態において、式(I)の化合物を調製する方法は、式(II)の化合物を式(III)の化合物と反応させて、式(I)の化合物を得ることを含む。
【化2】
【0008】
別の実施形態において、前記式(II)の化合物と前記式(III)の化合物との反応は、以下の工程、
前記式(II)の化合物および前記式(III)の化合物を、1:1~1:1.3のモル比で反応器に入れる工程、窒素雰囲気下で、有機溶媒および触媒量の4-ジメチルアミノピリジン(4-DMAP)を添加して反応混合物を得る工程、反応混合物を0℃で5分間撹拌した後、前記反応混合物にN,N´-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を添加する工程、前記反応混合物を25~70℃で3~7時間反応させる工程、前記反応混合物を濃縮し、酢酸エチルで抽出して粗生成物を得る工程、および、1:1~4:1の比を有する石油エーテルと酢酸エチル溶離剤として用いたシリカゲルフレッシュクロマトグラフィーカラムにより前記粗生成物を精製し、前記式(I)の化合物を得る工程、とを含む。
【0009】
別の実施形態において、前記有機溶媒は、トルエン、1,2-ジクロロエタン、またはジメチルホルムアミド(DMF)である。
【0010】
別の実施形態において、前記有機溶媒は、1,2-ジクロロエタンである。
【0011】
別の実施形態において、前記式(II)の化合物と前記式(III)の化合物とのモル比は、1 : 1.1である。
【0012】
別の実施形態において、前記反応混合物を60℃に加熱する。
【0013】
別の実施形態において、前記反応混合物を5時間反応させる。
【0014】
別の実施形態において、前記溶離剤は、石油エーテル:酢酸エチル=3:1である。
【0015】
別の実施形態において、前記式(II)の化合物と前記式(III)の化合物との反応は、以下の工程、
前記式(II)の化合物、触媒、および、イオン性液体を窒素雰囲気下の反応器中に入れる工程であって、前記触媒は12-モリブドケイ酸水和物(H6Mo12O41Si)である工程、前記式(III)の化合物を前記反応器に添加して反応混合物を形成する工程と、前記反応混合物を20~60℃で4~8時間加熱する工程、前記反応混合物を分液漏斗に入れて粗生成物を分離する工程、メタノール中で再結晶して前記粗生成物を精製し、前記式(I)の化合物を得る工程、前記イオン性液体を再循環する(recycle)工程、とを含む。
【0016】
別の実施形態において、前記イオン性液体は、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート(C12H23F6N2P)、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートまたは1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートである。
【0017】
別の実施形態において、前記イオン性液体は、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェートである。
【0018】
別の実施形態において、前記式(II)の化合物および前記式(III)の化合物は、1:1~1:1.3のモル比を有する。
【0019】
別の実施形態において、前記式(II)の前記化合物と式(III)の化合物とのモル比は、1 : 1.1である。
【0020】
別の実施形態において、前記反応混合物を30℃に加熱する。
【0021】
別の実施形態において、前記反応混合物を6時間加熱する。
【0022】
前述した一般的な説明と、以下の詳細な説明とは、どちらも例示的および説明的であり、特許請求される本発明のさらなる説明を提供するように意図されていることを理解されたい。
【0023】
本発明のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付の図面は本発明の実施形態を示し、説明と共に本発明の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1に薬剤耐性菌MRSA 171に対するプレウロムチリン馬尿酸エステルのin vitro抗菌活性を示す。
【
図2】
図2に薬剤耐性菌MRSA 575に対するプレウロムチリン馬尿酸エステルのin vitro抗菌活性を示す。
【
図3】
図3に薬剤耐性菌MRSA 596に対するプレウロムチリン馬尿酸エステルのin vitro抗菌活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明の実施形態を詳細に参照し、その例を添付の図面に示す。以下の実施例は本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0026】
実施例1
式(I)の化合物(3aS,4R,5S,6S,8R,9R,9aR,12R)-5-ヒドロキシ-4,6,9,12-テトラメチル-1-オキソ-6-ビニルデカヒドロ-3a,9-プロパノシクロペンタ[8]アニュレン-8-イル2-(2-ベンズアミドアセトキシ)アセテートの調製
100mLの三つ口フラスコ中で、378.5mg(1.00mmol)のプレウロムチリンおよび3.7mg(0.03mmol)の4-DMAPを、窒素雰囲気下で20mLの1,2-ジクロロエタンに溶解した。197.1mg(1.10mmol)の馬尿酸を15mLの1,2-ジクロロエタンに溶解し、分液漏斗によって反応混合物に滴下した。滴下終了後、反応混合物を0℃で5分間撹拌し、206.3mg(1.00mmol)のカップリング剤DCCを添加した。氷浴を除去し、反応物を60℃で5時間加熱した。薄層クロマトグラフィーを用いて反応を完了まで追跡した。反応混合物を濃縮し、水で洗浄し、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチルを乾燥し、濃縮して、粗生成物を得た。石油エーテル:酢酸エチル=3:1を溶離剤として用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより粗生成物を精製し、溶離剤を減圧濃縮し、乾燥して標記化合物391.4mg(収率72.53%)を得た。
【0027】
1H-NMR(400MHz、クロロホルム-d)δ(ppm):7.86(2H、d)、7.58(1H、d)、7.50(2H、d)、6.73(1H、s)、6.52(1H、m)、5.85(1H、d)、5.41(1H、d)、5.28(1H、d)、4.73(2H、m)、4.42(2H、d)、3.52(1H、s)、3.41(1H、d)、2.38(1H、s)、2.25(4H、m)、1.80-1.36(11H、m)、1.22(3H、s)、0.94(3H、d)、0.81(3H、d);13C-NMR(400MHz、クロロホルム-d)δ(ppm):216.7、169.5、167.4、166.1、138.7、131.9、128.6、127.1、117.4、74.6、70.1、58.0、50.8、45.4、44.6、44.0、41.8、36.6、36.1、34.4、30.4、26.8、26.4、24.8、16.5、14.7、11.4。
【0028】
実施例2
式(I)の化合物の調製
100mLの三つ口フラスコ中で、378.5mg(1.00mmol)のプレウロムチリンおよび3.7mg(0.03mmol)の4-DMAPを、窒素雰囲気下で20mLの1,2-ジクロロエタンに溶解した。197.1mg(1.10mmol)の馬尿酸を15mLの1,2-ジクロロエタンに溶解し、分液漏斗によって反応混合物に滴下した。滴下終了後、反応混合物を0℃で5分間撹拌し、206.3mg(1.00mmol)のカップリング剤DCCを添加した。氷浴を除去し、反応物を40℃で3時間加熱した。薄層クロマトグラフィーを用いて反応を完了まで追跡した。反応混合物を濃縮し、水で洗浄し、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチルを乾燥し、濃縮して、粗生成物を得た。石油エーテル:酢酸エチル=3:1を溶離剤として用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより粗生成物を精製し、溶離剤を減圧濃縮し、乾燥して標記化合物380.4mg(収率70.49%)を得た。
【0029】
実施例3
式(I)の化合物の調製
100mLの三つ口フラスコ中で、378.5mg(1.00mmol)のプレウロムチリンおよび3.7mg(0.03mmol)の4-DMAPを、窒素雰囲気下で20mLの1,2-ジクロロエタンに溶解した。215.0mg(1.20mmol)の馬尿酸を15mLの1,2-ジクロロエタンに溶解し、分液漏斗によって反応混合物に滴下した。滴下終了後、反応混合物を0℃で5分間撹拌し、206.3mg(1.00mmol)のカップリング剤DCCを添加した。氷浴を除去し、反応物を50℃で5時間加熱した。薄層クロマトグラフィーを用いて反応を完了まで追跡した。反応混合物を濃縮し、水で洗浄し、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチルを乾燥し、濃縮して、粗生成物を得た。石油エーテル:酢酸エチル=3:1を溶離剤として用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより粗生成物を精製し、溶離剤を減圧濃縮し、乾燥して標記化合物369.5mg(収率68.47%)を得た。
【0030】
実施例4
式(I)の化合物の調製
100mLの三つ口フラスコ中で、378.5mg(1.00mmol)のプレウロムチリンおよび3.7mg(0.03mmol)の4-DMAPを、窒素雰囲気下で20mLのDMFに溶解した。232.9mg(1.30mmol)の馬尿酸を15mLのDMFに溶解し、分液漏斗によって反応混合物に滴下した。滴下終了後、反応混合物を0℃で5分間撹拌し、206.3mg(1.00mmol)のカップリング剤DCCを添加した。氷浴を除去し、反応物を30℃で5時間加熱した。薄層クロマトグラフィーを用いて反応を完了まで追跡した。反応混合物を濃縮し、水で洗浄し、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチルを乾燥し、濃縮して、粗生成物を得た。石油エーテル:酢酸エチル=2:1を溶離剤として用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより粗生成物を精製し、溶離剤を減圧濃縮し、乾燥して標記化合物321.7mg(収率59.61%)を得た。
【0031】
実施例5
式(I)の化合物の調製
100mLの三つ口フラスコ中で、378.5mg(1.00mmol)のプレウロムチリンおよび3.7mg(0.03mmol)の4-DMAPを、窒素雰囲気下で20mLのDMFに溶解した。232.9mg(1.30mmol)の馬尿酸を15mLのDMFに溶解し、分液漏斗によって反応混合物に滴下した。滴下終了後、反応混合物を0℃で5分間撹拌し、206.3mg(1.00mmol)のカップリング剤DCCを添加した。氷浴を除去し、反応物を25℃で5時間加熱した。薄層クロマトグラフィーを用いて反応を完了まで追跡した。反応混合物を濃縮し、水で洗浄し、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチルを乾燥し、濃縮して、粗生成物を得た。石油エーテル:酢酸エチル=3:1を溶離剤として用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより粗生成物を精製し、溶離剤を減圧濃縮し、乾燥して標記化合物313.6mg(収率58.11%)を得た。
【0032】
実施例6
式(I)の化合物の調製
100mLの三つ口フラスコ中で、378.5mg(1.00mmol)のプレウロムチリンおよび3.7mg(0.03mmol)の4-DMAPを、窒素雰囲気下で20mLのトルエンに溶解した。馬尿酸232.9mg(1.30mmol)をトルエン15mLに溶解し、分液漏斗で反応混合物に滴下した。滴下終了後、反応混合物を0℃で5分間撹拌し、206.3mg(1.00mmol)のカップリング剤DCCを添加した。氷浴を除去し、反応物を60℃で3時間加熱した。薄層クロマトグラフィーを用いて反応を完了まで追跡した。反応混合物を濃縮し、水で洗浄し、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチルを乾燥し、濃縮して、粗生成物を得た。石油エーテル:酢酸エチル=3:1を溶離剤として用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより粗生成物を精製し、溶離剤を減圧濃縮し、乾燥して標記化合物338.5mg(収率62.73%)を得た。
【0033】
実施例7
式(I)の化合物の調製
100mLの三つ口フラスコ中で、378.5mg(1.00mmol)のプレウロムチリンおよび3.7mg(0.03mmol)の4-DMAPを、窒素雰囲気下で20mLのトルエンに溶解した。馬尿酸220.4mg(1.10mmol)をトルエン15mLに溶解し、分液漏斗で反応混合物に滴下した。滴下終了後、反応混合物を0℃で5分間撹拌し、206.3mg(1.00mmol)のカップリング剤DCCを添加した。氷浴を除去し、反応物を70℃で6時間加熱した。薄層クロマトグラフィーを用いて反応を完了まで追跡した。反応混合物を濃縮し、水で洗浄し、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチルを乾燥し、濃縮して、粗生成物を得た。石油エーテル:酢酸エチル=4:1を溶離剤として用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより粗生成物を精製し、溶離剤を減圧濃縮し、乾燥して標記化合物369.3mg(収率67.32%)を得た。
【0034】
実施例8
式(I)の化合物の調製
100mLの三つ口フラスコ中で、378.5mg(1.00mmol)のプレウロムチリンおよび3.7mg(0.03mmol)の4-DMAPを、窒素雰囲気下で20mLのトルエンに溶解した。215.0mg(1.20mmol)の馬尿酸を15mLのトルエンに溶解し、分液漏斗によって反応混合物に滴下した。滴下終了後、反応混合物を0℃で5分間撹拌し、206.3mg(1.00mmol)のカップリング剤DCCを添加した。氷浴を除去し、反応物を50℃で4時間加熱した。薄層クロマトグラフィーを用いて反応を完了まで追跡した。反応混合物を濃縮し、水で洗浄し、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチルを乾燥し、濃縮して、粗生成物を得た。石油エーテル:酢酸エチル=2:1を溶離剤として用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより粗生成物を精製し、溶離剤を減圧濃縮し、乾燥して標記化合物329.8mg(収率61.11%)を得た。
【0035】
実施例9
式(I)の化合物の調製
100mLの三つ口フラスコ中で、378.5mg(1.00mmol)のプレウロムチリンおよび3.7mg(0.03mmol)の4-DMAPを、窒素雰囲気下で20mLのDMFに溶解した。馬尿酸179.17mg(1.00mmol)をDMF15mLに溶解し、分液漏斗で反応混合物に滴下した。滴下終了後、反応混合物を0℃で5分間撹拌し、206.3mg(1.00mmol)のカップリング剤DCCを添加した。氷浴を除去し、反応物を70℃で7時間加熱した。薄層クロマトグラフィーを用いて反応を完了まで追跡した。反応混合物を濃縮し、水で洗浄し、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチルを乾燥し、濃縮して、粗生成物を得た。石油エーテル:酢酸エチル=3:1を溶離剤として用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより粗生成物を精製し、溶離剤を減圧濃縮し、乾燥して標記化合物359.3mg(収率66.58%)を得た。
【0036】
実施例10
式(I)の化合物の調製
100mLの三つ口フラスコ中で、378.5mg(1.00mmol)のプレウロムチリンおよび3.7mg(0.03mmol)の4-DMAPを、窒素雰囲気下で20mLのDMFに溶解した。232.9mg(1.30mmol)の馬尿酸を15mLのDMFに溶解し、分液漏斗によって反応混合物に滴下した。滴下終了後、反応混合物を0℃で5分間撹拌し、206.3mg(1.00mmol)のカップリング剤DCCを添加した。氷浴を除去し、反応物を60℃で3時間加熱した。薄層クロマトグラフィーを用いて反応を完了まで追跡した。反応混合物を濃縮し、水で洗浄し、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチルを乾燥し、濃縮して、粗生成物を得た。石油エーテル:酢酸エチル=4:1を溶離剤として用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより粗生成物を精製し、溶離剤を減圧濃縮し、乾燥して標記化合物351.2mg(収率65.08%)を得た。
【0037】
実施例11
式(I)の化合物の調製
100mLの三つ口フラスコ中で、378.5mg(1.00mmol)のプレウロムチリンおよび3.7mg(0.03mmol)の4-DMAPを、窒素雰囲気下で20mLの1,2-ジクロロエタンに溶解した。197.1mg(1.10mmol)の馬尿酸を15mLの1,2-ジクロロエタンに溶解し、分液漏斗によって反応混合物に滴下した。滴下終了後、反応混合物を0℃で5分間撹拌し、206.3mg(1.00mmol)のカップリング剤DCCを添加した。氷浴を除去し、反応物を30℃で5時間加熱した。薄層クロマトグラフィーを用いて反応を完了まで追跡した。反応混合物を濃縮し、水で洗浄し、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチルを乾燥し、濃縮して、粗生成物を得た。石油エーテル:酢酸エチル=1:1を溶離剤として用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより粗生成物を精製し、溶離剤を減圧濃縮し、乾燥して標記化合物335.0mg(収率62.07%)を得た。
【0038】
実施例12
式(I)の化合物の調製
250mLの三つ口フラスコ中で、378.5mg(1.00mmol)のプレウロムチリン、197.1mg(1.10mmol)の馬尿酸および20.3mg(0.011mmol)のケイモリブデン酸(silicomolybdic acid)を、窒素雰囲気下で100mLの1-オクチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェートに溶解した。完全に溶解した後、反応混合物を30℃で6時間加熱した。薄層クロマトグラフィーを用いて反応を完了まで追跡し、加熱を停止し、保護装置を取り外した。反応混合物系を層に分離させて、粗生成物を得た。粗生成物を50mLのメタノールで再結晶して標記化合物461.0mg(収率85.43%)を得た。1-オクチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェートを回収した。
【0039】
実施例13
式(I)の化合物の調製
250mLの三つ口フラスコ中で、378.5mg(1.00mmol)のプレウロムチリン、197.1mg(1.10mmol)の馬尿酸および20.3mg(0.011mmol)のケイモリブデン酸を、窒素雰囲気下で100mLの1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートに溶解した。完全に溶解した後、反応混合物を40℃で5時間加熱した。薄層クロマトグラフィーを用いて反応を完了まで追跡し、加熱を停止し、保護装置を取り外した。反応混合物系を層に分離させて、粗生成物を得た。粗生成物を50mLのメタノールで再結晶して標記化合物445.6mg(収率82.57%)を得た。1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートを回収した。
【0040】
実施例14
式(I)の化合物の調製
250mLの三つ口フラスコ中で、378.5mg(1.00mmol)のプレウロムチリン、197.1mg(1.10mmol)の馬尿酸および20.3mg(0.011mmol)のケイモリブデン酸を、窒素雰囲気下で100mLの1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートに溶解した。完全に溶解した後、反応混合物を60℃で4時間加熱した。薄層クロマトグラフィーを用いて反応を完了まで追跡し、加熱を停止し、保護装置を取り外した。反応混合物系を層に分離させて、粗生成物を得た。粗生成物を50mLのメタノールで再結晶して標記化合物451.6mg(収率83.68%)を得た。1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートを回収した。
【0041】
実施例15
式(I)の化合物の調製
250mLの三つ口フラスコ中で、378.5mg(1.00mmol)のプレウロムチリン、197.1mg(1.10mmol)の馬尿酸および20.3mg(0.011mmol)のケイモリブデン酸を、窒素雰囲気下で100mLの1-オクチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェートに溶解した。完全に溶解した後、反応混合物を35℃で4時間加熱した。薄層クロマトグラフィーを用いて反応を完了まで追跡し、加熱を停止し、保護装置を取り外した。反応混合物系を層に分離させて、粗生成物を得た。粗生成物を50mLのメタノールで再結晶して標記化合物441.1mg(収率81.73%)を得た。1-オクチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェートを回収した。
【0042】
実施例16
本発明の化合物の抗菌活性試験
抗菌効果はペーパー拡散法による薬剤感受性試験により測定した。
【0043】
実験菌株:
多剤耐性スタフィロコッカス・アウレウス171(Staphylococcus aureus 171)、多剤耐性スタフィロコッカス・アウレウス575(Staphylococcus aureus 575)、多剤耐性スタフィロコッカス・アウレウス596(Staphylococcus aureus 596)。実験菌株は、華山病院(Huashan Hospital)、復旦大学(Fudan University)(復旦大学抗生物質研究所:Institute of Antibiotic of Fudan University)により同定された。
【0044】
薬剤感受性ペーパー:
薬剤感受性ペーパーは、直径6.35mm、吸水量0.02mLの特殊薬剤感受性ペーパーであった。対照薬はバンコマイシン(30μg/錠)であり、試験薬はプレウロムチリン(30μg/錠)、馬尿酸(30μg/錠)およびプレウロムチリン馬尿酸エステル(30μg/錠)であった。
【0045】
試薬:
LB寒天培地、LAブロス培地、0.5%のDMSO溶液。
【0046】
装置:
ウルトラクリーン ワークベンチ、高圧滅菌ポット、ガス浴恒温振盪インキュベーター。
【0047】
細菌懸濁液の調製:
実験菌株を非選択培地に接種し、37℃の空気中に24時間置いた。良好に増殖し、ブロス培地に接種したシングルコロニーを35℃±2℃で6時間培養し、LAブロス培地を用いて細菌溶液の濃度を0.5ミー(Mie)比濁管(1.5×108CFU/mL)にキャリブレーションした。細菌懸濁液を得た。
【0048】
ペーパー拡散法薬剤感受性試験:
LB乾燥粉末を秤量し、103.4Kpa、121.3℃の高圧蒸気で15分間滅菌した後、40~50℃の水浴に入れた。無菌の空のプレート(内径9cm)をウルトラクリーンなテーブルウォーターテーブルの表面に置き、LB乾燥粉末をプレートに注いだ。各プレートの厚さは3mm~4mmであった。このプレートを室温で冷却した後、2℃~8℃の冷蔵庫に保管した。滅菌綿棒を使用して、細菌溶液を浸漬し、LBプレートの表面を均一に3回被覆した。細菌懸濁液の接種後、LBプレートを室温で3分間~5分間乾燥させた。滅菌鉗子を使用して、抗菌薬剤ペーパーをディッシュに密着させた。ディッシュを逆さまにし、37℃のインキュベーターに24時間置いた。その結果は、直径を測定することによって観察された。陰性対照として0.5%DMSO溶液を取り、抗菌活性は阻止域の直径によって表される。阻止域≧17mmを感受性、阻止域15mm~16mmを中間、阻止域≦14mmを薬剤耐性とした。
【0049】
図1~3において、プレウロムチリン馬尿酸エステルは文字Aで表され、
図1は、MRSA-171に対するプレウロムチリン馬尿酸エステルの抗菌効果を示す。
図2は、サルモネラに対するプレウロムチリン馬尿酸エステルの抗菌効果を示す。
図3は、大腸菌に対するプレウロムチリン馬尿酸エステルの抗菌作用を示す。その結果を表1に示す。
【0050】
【0051】
図1~3および表1の結果は、プレウロムチリンおよび馬尿酸が薬剤耐性菌に対して阻害効果を持たないことを示す。プレウロムチリン馬尿酸エステルは多剤耐性スタフィロコッカス・アウレウス171、575、596に対して強い阻害作用を有し、多剤耐性スタフィロコッカス・アウレウス596に対する静菌帯の直径は最大25mmであった。要約すると、本発明のプレウロムチリン馬尿酸エステルは多剤耐性スタフィロコッカス・アウレウス(黄色ブドウ球菌)の抗菌薬剤候補として使用することができ、さらなる前臨床試験が行われる。
【手続補正書】
【提出日】2022-06-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
【請求項2】
式(II)の化合物を式(III)の化合物と反応させて式(I)の化合物を得ることを含む、請求項1に記載の式(I)の化合物の調製方法であって、
【化2】
ここで、前記式(II)の化合物と前記式(III)の化合物との反応は、以下の工程、
前記式(II)の化合物および前記式(III)の化合物を、1:1~1:1.3のモル比で反応器に入れる工程、
窒素雰囲気下で、有機溶媒および触媒量の4-ジメチルアミノピリジン(4-DMAP)を添加して反応混合物を得る工程、
前記反応混合物を0℃で5分間撹拌した後、前記反応混合物にN,N´-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を添加する工程、
前記反応混合物を25~70℃で3~7時間反応させる工程、
前記反応混合物を濃縮し、酢酸エチルで抽出して粗生成物を得る工程、および、
1:1~4:1の比を有する石油エーテルと酢酸エチルを溶離剤として用いたシリカゲルフレッシュクロマトグラフィーカラムにより前記粗生成物を精製し、前記式(I)の化合物を得る工程、を含む、若しくは、
ここで、前記式(II)の化合物と前記式(III)の化合物の反応は、以下の工程、
前記式(II)の化合物、触媒、および、イオン性液体を窒素雰囲気下の反応器に入れる工程であって、前記触媒は12-モリブドケイ酸水和物(H
6Mo
12O
41Si)である工程、
前記式(III)の化合物を前記反応器に添加して反応混合物を形成する工程、
前記反応混合物を20~60℃で4~8時間加熱する工程、
前記反応混合物を分液漏斗に入れて粗生成物を分離する工程、
メタノール中で再結晶して前記粗生成物を精製し、前記式(I)の化合物を得る工程、および、前記イオン性液体を再循環する工程、を含む、方法。
【請求項3】
前記有機溶媒はトルエン、1,2-ジクロロエタン、または、ジメチルホルムアミド(DMF)であり、前記式(II)の化合物と前記式(III)の化合物のモル比は1 : 1.1であり、前記反応混合物を60℃で加熱し、前記反応混合物を5時間反応させ、前記溶離剤は石油エーテル:酢酸エチル=3:1である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記イオン性液体は1-オクチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェートであり、前記式(II)の化合物と前記式(III)の化合物は1:1~1:1.3のモル比を有し、前記反応混合物を30℃で加熱し、前記反応混合物を6時間加熱する、請求項2に記載の方法。
【外国語明細書】