(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022123892
(43)【公開日】2022-08-24
(54)【発明の名称】乳酸菌検出プライマーセットおよびそのプライマーセットを用いた検出方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/689 20180101AFI20220817BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20220817BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20220817BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
C12Q1/689 Z
C12N15/09 Z ZNA
C12N15/11 Z
C12N1/20 A
C12N1/20 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097282
(22)【出願日】2022-06-16
(62)【分割の表示】P 2021021102の分割
【原出願日】2021-02-12
(71)【出願人】
【識別番号】597155376
【氏名又は名称】日本ベルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 明彦
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 正弘
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B063QA18
4B063QQ05
4B063QQ42
4B063QR32
4B063QR75
4B063QS25
4B065AA01X
4B065AC20
4B065CA46
(57)【要約】
【課題】 乳酸菌EF-2001株を特異的に識別できるプライマーセットおよび該プライマーセットを用いた検出方法を提供すること。
【解決手段】 配列番号1および配列番号2、配列番号4および5、配列番号7および8、配列番号10および11、配列番号13および14、配列番号16および17、配列番号19および20、配列番号22および23、配列番号25および26、及び/または配列番号28および29の各組み合わせからなるオリゴヌクレオチド、または配列番号1および配列番号3、配列番号4および6、配列番号7および9、配列番号10および12、配列番号13および15、配列番号16および18、配列番号19および21、配列番号22および24、配列番号25および27、及び/または配列番号28および30の各組み合わせからなるオリゴヌクレオチドを含む、乳酸菌EF-2001株検出用プライマーセット。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳酸菌組成物であって、
配列番号1の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号2の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号4の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号5の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号7の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号8の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号10の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号11の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号13の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号14の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号16の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号17の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号19の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号20の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号22の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号23の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号25の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号26の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、及び/または
配列番号28の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号29の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対
からなる群より選択される1または複数のプライマーセットによって増幅されず、かつ、
配列番号1の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号3の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号4の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号6の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号7の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号9の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号10の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号12の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号13の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号15の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号16の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号18の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号19の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号21の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号22の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号24の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号25の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号27の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、及び/または
配列番号28の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号30の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対
からなる群から選択される1または複数のプライマーセットによって増幅される核酸断片を含む、乳酸菌組成物。
【請求項2】
配列番号16の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号17の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのプライマーセットによって増幅されず、かつ配列番号16の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号18の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのプライマーセットによって増幅される核酸断片を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
乳酸菌エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)EF-2001株を少なくとも約70℃にて加熱処理した乳酸菌加熱処理物を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
乳酸菌エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)EF-2001株を少なくとも約90℃にて加熱処理した乳酸菌加熱処理物を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
乳酸菌エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)EF-2001株検出用プライマーセットで増幅されることを特徴とするポリヌクレオチドであって、
配列番号1の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号2の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される、配列番号31で表されるポリヌクレオチド、
配列番号1の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号3の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される、配列番号32で表されるポリヌクレオチド、
配列番号4の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号5の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される、配列番号33で表されるポリヌクレオチド、
配列番号4の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号6の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される、配列番号34で表されるポリヌクレオチド、
配列番号7の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号8の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される、配列番号35で表されるポリヌクレオチド、
配列番号7の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号9の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される、配列番号36で表されるポリヌクレオチド、
配列番号10の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号11の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される、配列番号37で表されるポリヌクレオチド、
配列番号10の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号12の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される、配列番号38で表されるポリヌクレオチド、
配列番号13の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号14の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される、配列番号39で表されるポリヌクレオチド、
配列番号13の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号15の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される、配列番号40で表されるポリヌクレオチド、
配列番号16の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号17の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される、配列番号41で表されるポリヌクレオチド、
配列番号16の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号18の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される、配列番号42で表されるポリヌクレオチド、
配列番号19の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号20の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される、配列番号43で表されるポリヌクレオチド、
配列番号19の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号21の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される、配列番号44で表されるポリヌクレオチド、
配列番号22の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号23の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される、配列番号45で表されるポリヌクレオチド、
配列番号22の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号24の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される、配列番号46で表されるポリヌクレオチド、
配列番号25の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号26の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される、配列番号47で表されるポリヌクレオチド、
配列番号25の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号27の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される、配列番号48で表されるポリヌクレオチド、
配列番号28の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号29の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される、配列番号49で表されるポリヌクレオチド、または
配列番号28の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号30の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される、配列番号50で表されるポリヌクレオチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の乳酸菌の検出方法に関する。具体的には、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)EF-2001株の検出用プライマーセットおよび該プライマーセットを用いた検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乳酸菌は、様々な作用を有することが知られており、近年はプロバイオティクスとして消化管内の細菌叢の改善による整腸効果、免疫力向上効果、抗腫瘍効果などの種々の健康保持効果を有することから、人類にとって健康に深く関わる有用な微生物資源として利用されている。
【0003】
一方で乳酸菌の一種であるエンテロコッカス・フェカリスの中には日和見感染を引き起こすことが知られている菌体も存在し、日和見病原体として、尿路感染症をはじめ、細菌血症、心内膜炎、髄膜炎などの生命を脅かす感染症まで、さまざまな病気を引き起こす可能性がある。そのため、プロバイオティクスとして利用できる菌体と病原性の菌体とを区別することは極めて重要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
エンテロコッカス・フェカリスの1つであるEF-2001株は抗炎症および免疫調節を含むさまざまな生物調節活性を有することが報告されており、サプリメントや機能性食品のプロバイオティクスとして広く利用されている。本発明は、乳酸菌エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)EF-2001株を特異的に迅速かつ簡便に識別できるプライマーセットおよび該プライマーセットを用いた検出方法を提供する。
【0005】
したがって、本開示は以下を提供する。
(項目1)
乳酸菌エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)EF-2001株に由来する核酸を特異的に検出するためのプライマーセットであって、
配列番号1の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号2または3の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号4の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号5または6の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号7の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号8または9の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号10の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号11または12の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号13の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号14または15の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号16の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号17または18の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号19の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号20または21の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号22の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号23または24の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号25の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号26または27の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、または
配列番号28の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号29または30の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
を含む、プライマーセット。
(項目2)
乳酸菌エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)EF-2001株に由来する核酸を特異的に検出するためのプライマーセットであって、
(a)配列番号51の塩基配列の一部を増幅するためのプライマーセット(1):
フォワードプライマーCGAAAAGGATGTAGTCAGCGG(配列番号1)
リバースプライマーCCGAAGGCGAAACAGAGGAT(配列番号2)
(b)配列番号51の塩基配列の一部を増幅するためのプライマーセット(2):
フォワードプライマーCGAAAAGGATGTAGTCAGCGG(配列番号1)
リバースプライマーCCCAGACATAATCGCATGGC(配列番号3)
(c)配列番号52の塩基配列の一部を増幅するためのプライマーセット(3):
フォワードプライマーGCGGCTGCACAATTTATTGC(配列番号4)
リバースプライマーAGAATACTTGGGCGGTCGTG(配列番号5)
(d)配列番号52の塩基配列の一部を増幅するためのプライマーセット(4):
フォワードプライマーGCGGCTGCACAATTTATTGC(配列番号4)
リバースプライマーAATTCAGCTTCGCTAGATAAGGC(配列番号6)
(e)配列番号53の塩基配列の一部を増幅するためのプライマーセット(5):
フォワードプライマーCGCGTATGACTTGCAATCGA(配列番号7)
リバースプライマーAGGATTGTTTGACGGTGCAA(配列番号8)
(f)配列番号53の塩基配列の一部を増幅するためのプライマーセット(6):
フォワードプライマーCGCGTATGACTTGCAATCGA(配列番号7)
リバースプライマーACATGAGATAGTTGGGGTAGACA(配列番号9)
(g)配列番号54の塩基配列の一部を増幅するためのプライマーセット(7):
フォワードプライマーCTTCAGAGAGCTGGGCGAAG(配列番号10)
リバースプライマーTACTTTTTAGCTGCCCGCCC(配列番号11)
(h)配列番号54の塩基配列の一部を増幅するためのプライマーセット(8):
フォワードプライマーCTTCAGAGAGCTGGGCGAAG(配列番号10)
リバースプライマーGGGTTGTAGCCCTACCCGAT(配列番号12)
(i)配列番号55の塩基配列の一部を増幅するためのプライマーセット(9):
フォワードプライマーCGTAACGTGACATTGCGGAC(配列番号13)
リバースプライマーATGCCAGTACGTCGCGTTAA(配列番号14)
(j)配列番号55の塩基配列の一部を増幅するためのプライマーセット(10):
フォワードプライマーCGTAACGTGACATTGCGGAC(配列番号13)
リバースプライマーCGATTGTCAACTAATTGTGCCGA(配列番号15)
(k)配列番号56の塩基配列の一部を増幅するためのプライマーセット(11):
フォワードプライマーCATGGCTTGCCGTTTCACAA(配列番号16)
リバースプライマーACCGCAACAACTACATACTACCA(配列番号17)
(l)配列番号56の塩基配列の一部を増幅するためのプライマーセット(12):
フォワードプライマーCATGGCTTGCCGTTTCACAA(配列番号16)
リバースプライマーACCAAAAGGAACGCTACCAGT(配列番号18)
(m)配列番号57の塩基配列の一部を増幅するためのプライマーセット(13):
フォワードプライマーTCAGCATAATCCCCAGACGT(配列番号19)
リバースプライマーAATGAACGCCCTTCAGCAGA(配列番号20)
(n)配列番号57の塩基配列の一部を増幅するためのプライマーセット(14):
フォワードプライマーTCAGCATAATCCCCAGACGT(配列番号19)
リバースプライマーGGCTCCTCTACCTGAACAAACT(配列番号21)
(o)配列番号58の塩基配列の一部を増幅するためのプライマーセット(15):
フォワードプライマーGCGTTCAAACTGTTCTGGTGT(配列番号22)
リバースプライマーTACAAGGCTTGCGAGGTAGC(配列番号23)
(p)配列番号58の塩基配列の一部を増幅するためのプライマーセット(16):
フォワードプライマーGCGTTCAAACTGTTCTGGTGT(配列番号22)
リバースプライマーGCTGCAATGGAAAGCAAATCG(配列番号24)
(q)配列番号59の塩基配列の一部を増幅するためのプライマーセット(17):
フォワードプライマーAGGCATATGGGTCATCTGCT(配列番号25)
リバースプライマーGAGCATCACAGAGCCTCGAA(配列番号26)
(r)配列番号59の塩基配列の一部を増幅するためのプライマーセット(18):
フォワードプライマーAGGCATATGGGTCATCTGCT(配列番号25)
リバースプライマーAGAGATTTTTCAGTATTGCTGGGT(配列番号27)
(s)配列番号60の塩基配列の一部を増幅するためのプライマーセット(19):
フォワードプライマーCGTTGGGTGTGCAGAAATGG(配列番号28)
リバースプライマーTGTACCGTCAACCTCGTTCG(配列番号29)または
(t)配列番号60の塩基配列の一部を増幅するためのプライマーセット(20):
フォワードプライマーCGTTGGGTGTGCAGAAATGG(配列番号28)
リバースプライマーAACGGGTTGCGACTCTTTTT(配列番号30)
からなる群から選択される、プライマーセット。
(項目3)
項目1または2に記載のプライマーセットを含むことを特徴とする、乳酸菌エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)EF-2001株検出用キット。
(項目4)
乳酸菌エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)EF-2001株に由来する核酸を特異的に検出する方法であって、
項目1または2に記載のプライマーセットを用いて核酸断片を増幅する工程と
増幅する工程で得られた核酸断片を検出する工程と
を含む、方法。
(項目5)
乳酸菌組成物であって、
配列番号1の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号2の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号4の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号5の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号7の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号8の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号10の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号11の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号13の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号14の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号16の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号17の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号19の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号20の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号22の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号23の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号25の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号26の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、及び/または
配列番号28の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号29の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対
からなる群より選択される1または複数のプライマーセットによって増幅されず、かつ、
配列番号1の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号3の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号4の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号6の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号7の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号9の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号10の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号12の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号13の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号15の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号16の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号18の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号19の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号21の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号22の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号24の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号25の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号27の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、及び/または
配列番号28の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号30の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対
からなる群から選択される1または複数のプライマーセットによって増幅される核酸断片を含む、乳酸菌組成物。
(項目6)
配列番号16の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号17の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのプライマーセットによって増幅されず、かつ配列番号16の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号18の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのプライマーセットによって増幅される核酸断片を含む、項目5に記載の組成物。
(項目7)
乳酸菌エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)EF-2001株を少なくとも約70℃にて加熱処理した乳酸菌加熱処理物を含む、項目5または6に記載の組成物。
(項目8)
乳酸菌エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)EF-2001株を少なくとも約90℃にて加熱処理した乳酸菌加熱処理物を含む、項目5~7のいずれか一項に記載の組成物。
(項目9)
乳酸菌組成物を製造する方法であって、
乳酸菌エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)EF-2001株を加熱して、複数の乳酸菌加熱処理物のロットを得る工程と、
前記乳酸菌加熱処理物のロットの1つにおいて核酸断片を抽出する工程と、
項目1または2に記載のプライマーセットのうちの少なくとも1つを用いて前記核酸断片を増幅する工程と、
増幅する工程で得られた核酸断片を検出する工程と、
前記核酸断片が検出された乳酸菌加熱処理物のロットを選択する工程と
を含む、方法。
(項目10)
前記加熱が少なくとも約70℃での加熱である、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記加熱が少なくとも約90℃での加熱である、項目9または10に記載の方法。
(項目12)
前記核酸断片が、
配列番号1の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号3の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号4の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号6の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号7の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号9の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号10の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号12の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号13の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号15の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号16の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号18の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号19の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号21の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号22の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号24の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号25の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号27の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、及び/または
配列番号28の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号30の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対
からなる群から選択される1または複数のプライマーセットによって増幅され、かつ
配列番号1の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号2の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号4の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号5の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号7の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号8の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号10の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号11の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号13の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号14の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号16の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号17の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号19の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号20の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号22の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号23の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号25の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号26の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、及び/または
配列番号28の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号29の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対
からなる群より選択される1または複数のプライマーセットによって増幅されない、項目9~11のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
乳酸菌エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)EF-2001株検出用プライマーセットで増幅されることを特徴とするポリヌクレオチドであって、
配列番号1の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号2の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される、配列番号31で表されるポリヌクレオチド、
配列番号1の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号3の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される、配列番号32で表されるポリヌクレオチド、
配列番号4の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号5の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される、配列番号33で表されるポリヌクレオチド、
配列番号4の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号6の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される、配列番号34で表されるポリヌクレオチド、
配列番号7の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号8の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される、配列番号35で表されるポリヌクレオチド、
配列番号7の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号9の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される、配列番号36で表されるポリヌクレオチド、
配列番号10の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号11の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される、配列番号37で表されるポリヌクレオチド、
配列番号10の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号12の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される、配列番号38で表されるポリヌクレオチド、
配列番号13の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号14の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される、配列番号39で表されるポリヌクレオチド、
配列番号13の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号15の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される、配列番号40で表されるポリヌクレオチド、
配列番号16の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号17の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される、配列番号41で表されるポリヌクレオチド、
配列番号16の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号18の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される、配列番号42で表されるポリヌクレオチド、
配列番号19の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号20の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される、配列番号43で表されるポリヌクレオチド、
配列番号19の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号21の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される、配列番号44で表されるポリヌクレオチド、
配列番号22の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号23の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される、配列番号45で表されるポリヌクレオチド、
配列番号22の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号24の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される、配列番号46で表されるポリヌクレオチド、
配列番号25の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号26の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される、配列番号47で表されるポリヌクレオチド、
配列番号25の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号27の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される、配列番号48で表されるポリヌクレオチド、
配列番号28の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号29の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される、配列番号49で表されるポリヌクレオチド、または
配列番号28の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号30の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される、配列番号50で表されるポリヌクレオチド。
【0006】
本開示において、上記の1つまたは複数の特徴は、明示された組み合わせに加え、さらに組み合わせて提供され得ることが意図される。なお、本開示のさらなる実施形態および利点は、必要に応じて以下の詳細な説明を読んで理解すれば、当業者に認識される。
【0007】
なお、上記した以外の本開示の特徴及び顕著な作用・効果は、以下の発明の実施形態の項及び図面を参照することで、当業者にとって明確となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、乳酸菌エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)EF-2001株を簡便かつ迅速に、かつ乳酸菌エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)EF-2001株に近縁の菌株を認識することなく、検出することが可能となり、非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るプライマーセットを用いて乳酸菌EF-2001株と、種々のEnterococcus faecalis亜種のDNAを鋳型に核酸を検出した結果を示す電気泳動の結果である。(A)乳酸菌EF-2001株と、Enterococcus faecalis亜種である(B)E.faecalis NBRC3971、(C)E.faecalis NBRC3989、(D)E. faecalis NBRC12970、(E)E.faecalis NBRC100480、(F)E.faecalis NBRC100482、(G)E. faecalis NBRC100483、(H)E.faecalis NBRC100484。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係るプライマーセットを用いて乳酸菌EF-2001株、種々の他の乳酸菌のDNAを鋳型に核酸を検出した結果を示す電気泳動の結果である。(B)E.faecium Aus0004、(C)E. gallinarum LMG13129、(D)Lactobacillus rhamnosus NBRC3425、(E)L.plantarum NBRC15891、(F)L.paracasei NBRC15906、(G)L. lactis NBRC102622。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係るプライマーセット(ロングおよびショート)を用いて乳酸菌EF-2001株の製造工程液のDNAを鋳型に生菌と死菌を検出した結果を示す電気泳動の結果である。(A)培養液(生菌)、(B)加熱処理後液(死菌)、(C)製品原末(死菌)。
【
図4】
図4は、乳酸菌EF-2001株を用いて、加熱処理による本発明のプライマーセットのバンドの消失について確認した電気泳動の結果である。
【
図5】
図5は、加熱処理による乳酸菌EF-2001株のTNF-α産生量の変化を確認したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示を最良の形態を示しながら説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本開示の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0011】
以下に本明細書において特に使用される用語の定義および/または基本的技術内容を適宜説明する。
【0012】
本明細書において、「約」とは、後に続く数値の±10%を意味する。
【0013】
(好ましい実施形態)
以下に本開示の好ましい実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本開示のよりよい理解のために提供されるものであり、本開示の範囲は以下の記載に限定されるべきでない。したがって、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本開示の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。また、本開示の以下の実施形態は単独でも使用されあるいはそれらを組み合わせて使用することができる。
【0014】
本発明のプライマーセットは、乳酸菌エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)EF-2001株に特異的な塩基配列を有する染色体DNA領域をPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)により増幅することができ、乳酸菌エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)EF-2001株に近縁の菌株を認識することなく、乳酸菌エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)EF-2001株を特異的に認識して検出することが可能である。
【0015】
本発明のプライマーセットは、以下の方法で設計した。
まず、乳酸菌EF-2001株の完全長ゲノムの配列を、ThermoFisher IonPGMからのShort ReadとOxfordNanopore MinIONからのLong Readを使用したハイブリッドアセンブリアプローチを用いて決定した。このShort Readから得られたDraft Genome配列を決定する際に、以下の表1の42株と比較してマッチングしなかった1kbp以上の遺伝子断片をEF-2001に特異的な遺伝子配列であるとして絞り込んだ。
【表1】
これらのそれぞれの配列から、約100~約250bpの長さのPCR産物が得られるPCRプライマーと、フォワードプライマーを共通として、約500~約600bpの長さのPCR産物が得られるPCRプライマーを作製した。EF-2001株、および比較菌株から調製したゲノムDNAを鋳型に用いて、当該プライマーによるPCRを行ない、EF-2001株のみにおいて目的のPCR産物が得られ、他の菌株のDNAを鋳型に用いてもPCR産物は得られないプライマーセットを選抜した。
【0016】
<本発明のプライマーセットについて>
本発明の一つの局面において、本発明のプライマーセットは以下のものを含むことができる。
配列番号1の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号2または3の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号4の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号5または6の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号7の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号8または9の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号10の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号11または12の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号13の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号14または15の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号16の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号17または18の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号19の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号20または21の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号22の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号23または24の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号25の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号26または27の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対、
配列番号28の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号29または30の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対
【0017】
また本発明の他の局面において、本発明のプライマーセットは以下のものを含むことができる。
(a)配列番号51の塩基配列(contig1)の一部を増幅するためのプライマーセット(1)(contig1ロング):
フォワードプライマーCGAAAAGGATGTAGTCAGCGG(配列番号1)
リバースプライマーCCGAAGGCGAAACAGAGGAT(配列番号2)
(b)配列番号51の塩基配列(contig1)の一部を増幅するためのプライマーセット(2)(contig1ショート):
フォワードプライマーCGAAAAGGATGTAGTCAGCGG(配列番号1)
リバースプライマーCCCAGACATAATCGCATGGC(配列番号3)
(c)配列番号52の塩基配列(contig4)の一部を増幅するためのプライマーセット(3)(contig4ロング):
フォワードプライマーGCGGCTGCACAATTTATTGC(配列番号4)
リバースプライマーAGAATACTTGGGCGGTCGTG(配列番号5)
(d)配列番号52の塩基配列(contig4)の一部を増幅するためのプライマーセット(4)(contig4ショート):
フォワードプライマーGCGGCTGCACAATTTATTGC(配列番号4)
リバースプライマーAATTCAGCTTCGCTAGATAAGGC(配列番号6)
(e)配列番号53の塩基配列(contig7)の一部を増幅するためのプライマーセット(5)(contig7ロング):
フォワードプライマーCGCGTATGACTTGCAATCGA(配列番号7)
リバースプライマーAGGATTGTTTGACGGTGCAA(配列番号8)
(f)配列番号53の塩基配列(contig7)の一部を増幅するためのプライマーセット(6)(contig7ショート):
フォワードプライマーCGCGTATGACTTGCAATCGA(配列番号7)
リバースプライマーACATGAGATAGTTGGGGTAGACA(配列番号9)
(g)配列番号54の塩基配列(contig11)の一部を増幅するためのプライマーセット(7)(contig11ロング):
フォワードプライマーCTTCAGAGAGCTGGGCGAAG(配列番号10)
リバースプライマーTACTTTTTAGCTGCCCGCCC(配列番号11)
(h)配列番号54の塩基配列(contig11)の一部を増幅するためのプライマーセット(8)(contig11ショート):
フォワードプライマーCTTCAGAGAGCTGGGCGAAG(配列番号10)
リバースプライマーGGGTTGTAGCCCTACCCGAT(配列番号12)
(i)配列番号55の塩基配列(contig13)の一部を増幅するためのプライマーセット(9)(contig13ロング):
フォワードプライマーCGTAACGTGACATTGCGGAC(配列番号13)
リバースプライマーATGCCAGTACGTCGCGTTAA(配列番号14)
(j)配列番号55の塩基配列(contig13)の一部を増幅するためのプライマーセット(10)(contig13ショート):
フォワードプライマーCGTAACGTGACATTGCGGAC(配列番号13)
リバースプライマーCGATTGTCAACTAATTGTGCCGA(配列番号15)
(k)配列番号56の塩基配列(contig16)の一部を増幅するためのプライマーセット(11)(contig16ロング):
フォワードプライマーCATGGCTTGCCGTTTCACAA(配列番号16)
リバースプライマーACCGCAACAACTACATACTACCA(配列番号17)
(l)配列番号56の塩基配列(contig16)の一部を増幅するためのプライマーセット(12)(contig16ショート):
フォワードプライマーCATGGCTTGCCGTTTCACAA(配列番号16)
リバースプライマーACCAAAAGGAACGCTACCAGT(配列番号18)
(m)配列番号57の塩基配列(contig22)の一部を増幅するためのプライマーセット(13)(contig22ロング):
フォワードプライマーTCAGCATAATCCCCAGACGT(配列番号19)
リバースプライマーAATGAACGCCCTTCAGCAGA(配列番号20)
(n)配列番号57の塩基配列(contig22)の一部を増幅するためのプライマーセット(14)(contig22ショート):
フォワードプライマーTCAGCATAATCCCCAGACGT(配列番号19)
リバースプライマーGGCTCCTCTACCTGAACAAACT(配列番号21)
(o)配列番号58の塩基配列(contig25)の一部を増幅するためのプライマーセット(15)(contig25ロング):
フォワードプライマーGCGTTCAAACTGTTCTGGTGT(配列番号22)
リバースプライマーTACAAGGCTTGCGAGGTAGC(配列番号23)
(p)配列番号58の塩基配列(contig25)の一部を増幅するためのプライマーセット(16)(contig25ショート):
フォワードプライマーGCGTTCAAACTGTTCTGGTGT(配列番号22)
リバースプライマーGCTGCAATGGAAAGCAAATCG(配列番号24)
(q)配列番号59の塩基配列(contig31)の一部を増幅するためのプライマーセット(17)(contig31ロング):
フォワードプライマーAGGCATATGGGTCATCTGCT(配列番号25)
リバースプライマーGAGCATCACAGAGCCTCGAA(配列番号26)
(r)配列番号59の塩基配列(contig31)の一部を増幅するためのプライマーセット(18)(contig31ショート):
フォワードプライマーAGGCATATGGGTCATCTGCT(配列番号25)
リバースプライマーAGAGATTTTTCAGTATTGCTGGGT(配列番号27)
(s)配列番号60の塩基配列(contig43)の一部を増幅するためのプライマーセット(19)(contig43ロング):
フォワードプライマーCGTTGGGTGTGCAGAAATGG(配列番号28)
リバースプライマーTGTACCGTCAACCTCGTTCG(配列番号29)
(t)配列番号60の塩基配列(contig43)の一部を増幅するためのプライマーセット(20)(contig43ショート):
フォワードプライマーCGTTGGGTGTGCAGAAATGG(配列番号28)
リバースプライマーAACGGGTTGCGACTCTTTTT(配列番号30)
【0018】
また、本発明の検出方法において使用できるプライマーセットは、塩基長やPCR条件等に依存して、配列番号1~30の塩基配列と実質的に相同な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドからなるプライマーセットも含まれる。ここで、実質的に相同とは、PCR用プライマー等として機能し得る程度の断片長と相同性を有することを意味し、好ましくは約90%以上の配列同一性を有する。
【0019】
例えば、本発明のプライマーセットは、使用目的や条件によっては、必ずしも配列番号1~30の塩基配列と100%の相同性を有している必要はなく、目的とする領域のプライマーの5’末端付近で数塩基が異なっていてもよい。そのようなプライマーを使用しても、アニーリング温度等を検討することによって目的DNA断片を適宜増幅させることは可能である。
【0020】
例えば、乳酸菌EF-2001株の検出に際し、高い特異性が要求される場合には、完全に相同な配列部位(配列番号1~30の塩基配列)を使用し、かつ、そのような配列でしかアニーリングしないPCR条件を選択すればよい。その反面、比較的特異性の低い条件が許容される場合には、配列番号1~30の塩基配列とは数塩基異なる配列(例えば約90%以上の配列同一性を有する配列)を使用し、かつ、それでもアニーリングするようなPCR条件を選択することができる。
【0021】
本発明のプライマーセットは、当業者によく知られた通常のDNAの合成法により、例えば、DNA合成機を用いて合成することができる。また、DNA合成業者に合成を委託することによっても、本発明のプライマーを得ることができる。
【0022】
本発明のプライマーセットを用いて、試料に含まれる被検菌の染色体DNAを鋳型とするPCRを行い、増幅産物の有無を決定することにより、試料中の乳酸菌EF-2001株を検出することができる。すなわち、プライマーの配列に特異的なPCRの反応が起こると、乳酸菌EF-2001株の染色体DNA内の、対となる各プライマーの配列に相当する配列に挟まれた領域(標的領域)が増幅される。
【0023】
したがって、本発明のプライマーセットを用いて増幅産物が得られれば、被検菌は乳酸菌EF-2001株であると同定されるか、または少なくとも被検菌に乳酸菌EF-2001株が含まれていると判定される。
【0024】
また、増幅産物が得られる場合は、増幅産物の有無の決定には、増幅産物の長さの決定が含まれてもよい。例えば、配列番号1および配列番号2、配列番号4および5、配列番号7および8、配列番号10および11、配列番号13および14、配列番号16および17、配列番号19および20、配列番号22および23、配列番号25および26、または配列番号28および29の各組み合わせからなるオリゴヌクレオチドを含む乳酸菌EF-2001株検出用プライマーセットを用いた場合、被検菌に乳酸菌EF-2001株が含まれていれば、通常は各々約500~約600bpの増幅産物が得られる。また配列番号1および配列番号3、配列番号4および6、配列番号7および9、配列番号10および12、配列番号13および15、配列番号16および18、配列番号19および21、配列番号22および24、配列番号25および27、または配列番号28および30の各組み合わせからなるオリゴヌクレオチドを含む乳酸菌EF-2001株検出用プライマーセットを用いた場合、被検菌に乳酸菌EF-2001株が含まれていれば、通常は各々約100~約250bpの増幅産物が得られる。
【0025】
本発明のオリゴヌクレオチドを含む乳酸菌EF-2001株検出用プライマーセットを用いた場合に得られる増幅産物は以下のとおりである。
配列番号31:配列番号1の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号2の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される増幅産物
配列番号32:配列番号1の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号3の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される増幅産物
配列番号33:配列番号4の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号5の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される増幅産物
配列番号34:配列番号4の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号6の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される増幅産物
配列番号35:配列番号7の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号8の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される増幅産物
配列番号36:配列番号7の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号9の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される増幅産物
配列番号37:配列番号10の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号11の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される増幅産物
配列番号38:配列番号10の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号12の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される増幅産物
配列番号39:配列番号13の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号14の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される増幅産物
配列番号40:配列番号13の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号15の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される増幅産物
配列番号41:配列番号16の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号17の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される増幅産物
配列番号42:配列番号16の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号18の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される増幅産物
配列番号43:配列番号19の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号20の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される増幅産物
配列番号44:配列番号19の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号21の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される増幅産物
配列番号45:配列番号22の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号23の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される増幅産物
配列番号46:配列番号22の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号24の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される増幅産物
配列番号47:配列番号25の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号26の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される増幅産物
配列番号48:配列番号25の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号27の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される増幅産物
配列番号49:配列番号28の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号29の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される増幅産物
配列番号50:配列番号28の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドと、配列番号30の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットで増幅される増幅産物
【0026】
また配列番号31~50の塩基配列のそれぞれは配列番号51~60のいずれかの塩基配列の一部である。
【0027】
配列番号1~30の各プライマー配列、並びに配列番号31~50の塩基配列および配列番号51~60の塩基配列は、乳酸菌EF-2001株に特異的な配列であることから、これらの一部の配列をDNAプローブとしたFISH法やサザンハイブリダイゼーション、ドットハイブリダイゼーションなどを実施することも可能である。
【0028】
本発明において、乳酸菌EF-2001株の検出とは、試料中に乳酸菌EF-2001株が存在するか否かを検出すること、および被検菌が単一種である場合には、同被検菌が乳酸菌EF-2001株であるか否かを同定することを含む。
【0029】
本発明の一実施形態において、乳酸菌EF-2001株の検出に用いる試料としては、乳酸菌EF-2001株が存在する、または存在する可能性のある試料であればどのようなものであってもよく、例えば、乳酸菌の混合培養物、味噌、醤油、ワインなどの酒類、漬物、ヨーグルト、チーズなどの微生物を含む発酵食品、マウスやラットなどの実験動物やヒトの糞便、土壌等の環境中に存在する細菌等を挙げることができる。被検菌は、分離された単一種であってもよく、複数の菌種を含む混合物であってもよい。
【0030】
本発明の一実施形態において、被検菌として死菌を用いる場合には、試料からそのままDNAを調製してPCRに用いてもよく、また生菌を用いる場合には、試料からコロニー分離等により被検菌体を分離して、被検菌体からDNAを調製してからPCRに供してもよい。これらの試料から核酸を抽出する方法は、例えば、Kaneka Easy DNA Extraction Kit version 2などの動物細胞、植物細胞、微生物などの培養細胞から核酸の抽出が可能な汎用性の高いキットや、または一般的に乳酸菌のゲノムDNA調製に用いるような、細胞壁をLysozymeなどの酵素で分解またはビーズなどで物理的に破壊したのちに、市販の抽出キット(DNeasy Blood&Tissue kit(QIAGEN社製)、Isogenなど)を使用することも可能であり、特に限定されるものではない。
【0031】
<本発明の検出方法について>
本発明の一局面において、本発明の乳酸菌EF-2001株の検出方法は、(1)本発明のプライマーセットを用いて核酸断片を増幅する工程と、(2)工程(1)で得られた核酸断片を検出する工程を含むことができる。
【0032】
本発明の検出方法として、具体的には、例えば、PCR法、FISH法、サザンハイブリダイゼーションやドットハイブリダイゼーション等を挙げることができる。中でも、PCR法が好ましい。このうち、PCR法による乳酸菌EF-2001株の検出方法では、本発明のプライマーセットを用いる以外は、通常用いられるDNAポリメラーゼ等のPCR試薬および機器を使用することも可能であり、特に限定されるものではない。
【0033】
一実施形態において、PCRに用いるDNAポリメラーゼとしては、特に限定はされないが、例えば、KOD FX Neo(東洋紡社製)、ExTaq(タカラバイオ社製)
、KOD DNAポリメラーゼ(東洋紡社製)、KOD-plus-ポリメラーゼ(東洋紡社製)等が好ましい。
【0034】
一実施形態において、PCR反応条件については、用いるDNAポリメラーゼの最適温度、合成するDNAの長さや種類等により適宜設定することができるが、サイクル条件であれば「90~98℃で5~30秒(熱変性・解離)→55~60℃で5~30秒(アニーリング)→65~80℃で30~60秒(合成・伸長)」を1サイクルとして合計20~40サイクル行う条件とすることができ、例えば「98℃で10秒→60℃で30秒→68℃で30秒」で25サイクル行うこともできる。この場合、アニーリング温度はプライマーの設計に使用した温度を用いることができるが、例えばポリメラーゼとしてKOD
FX Neoを用いる場合にはプライマーサイズに応じて(例えば20mer以上)、アニーリング温度を省いた2ステップ反応とすることもできる。また、鋳型DNAとプライマーの量比は、例えば生菌の場合は鋳型DNA200ngに対して各プライマーを0.3μM使用することができ、死菌の場合は熱処理の状況に応じて鋳型DNAを増やすことで電気泳動の際のバンドをより明確にすることもできる。
【0035】
PCRにより得られる増幅産物の有無またはその大きさは、通常の核酸の検出法によって、決定することができる。例えば、アガロース電気泳動によって電気泳動した後、エチジウムブロマイドやSYBRGreenIで染色することによって、増幅産物を検出することができる。また、蛍光強度によって増幅産物の量を、分子量マーカーとの比較によって分子量を決定することができる。PCR産物をサイクルシーケンスした後、DNAシーケンサーを用いて塩基配列と長さを測定することによっても、増幅産物の有無を確認することができる。また、リアルタイムPCR法によれば、経時的に増幅反応を検出することができる。
【0036】
本発明の一局面において、本発明のプライマーセットは、他の要素と併せて、乳酸菌EF-2001株検出用キットとすることができる。他の要素としては、例えば、核酸の抽出、PCR、および増幅産物の検出に必要な試薬類の任意の1種または2種以上が挙げられる。また、この乳酸菌EF-2001株検出用キットは、陽性コントロールとして、乳酸菌EF-2001株の染色体DNAの配列の一部を有し、本発明のプライマーセットにより増幅され得るDNA断片、および/または、陰性コントロールとして、本発明のプライマーセットに対応するが、1塩基または数塩基のミスマッチを有する塩基配列を有するDNA断片を含んでいてもよい。
【0037】
本発明のプライマーセットは、上記のとおり、乳酸菌EF-2001株の検出に用いることができる。また、本発明のプライマーセットを用いることにより、乳酸菌EF-2001株菌体または同菌体を含む飲食品等を工業的に製造するに際し、菌数の測定や発酵状態の管理を容易に行うことができる。
【0038】
<本発明の乳酸菌組成物について>
本発明の一局面において、本発明の乳酸菌組成物は、乳酸菌エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)EF-2001株の生菌を加熱して得ることができる乳酸菌加熱処理物を含むことができる。一実施形態において、本発明の乳酸菌組成物は、好ましくは配列番号1および配列番号2、配列番号4および5、配列番号7および8、配列番号10および11、配列番号13および14、配列番号16および17、配列番号19および20、配列番号22および23、配列番号25および26、及び/または配列番号28および29の各組み合わせからなるオリゴヌクレオチドを含む乳酸菌EF-2001株検出用プライマーセットのうちのいずれか1つまたは複数を用いた場合に増幅されずに、かつ配列番号1および配列番号3、配列番号4および6、配列番号7および9、配列番号10および12、配列番号13および15、配列番号16および18、配列番号19および21、配列番号22および24、配列番号25および27、または配列番号28および30の各組み合わせからなるオリゴヌクレオチドを含む乳酸菌EF-2001株検出用プライマーセットのうちのいずれか1つまたは複数を用いた場合に増幅される核酸断片を含むものである。
【0039】
本明細書において、「核酸断片が増幅されない」または「バンドが消失する」とは、本発明の乳酸菌EF-2001株検出用プライマーセットを用いて乳酸菌EF-2001株の核酸断片を増幅させた場合に、未処理(例えば加熱処理なし)の乳酸菌EF-2001株由来の核酸断片の増幅効率または増幅量と比べて、約30%未満となることをいう。一実施形態において、「核酸断片が増幅されない」または「バンドが消失する」とは、本発明の乳酸菌EF-2001株検出用プライマーセットを用いて乳酸菌EF-2001株の核酸断片を増幅させた場合に、未処理(例えば加熱処理なし)の乳酸菌EF-2001株由来の核酸断片の増幅効率または増幅量と比べて、約20%未満、好ましくは約10%未満、またはさらに好ましくは約5%未満となることをいう。
【0040】
一実施形態において、本発明の乳酸菌組成物は加熱して死菌体とし、凍結乾燥、噴霧乾燥、またはドラムドライヤで乾燥した粉末状の乾燥菌体とすることができる。これにより安全性や保存性を高めることができ、あらゆる食品に利用することができる。乳酸菌EF-2001株の加熱は死菌体を得ることができる任意の時間および温度で行うことができ、例えば約50℃以上、約60℃以上、約70℃以上、約80℃以上、約90℃以上、約100℃以上、約110℃以上、または約120℃以上などの温度で、例えば約5分以上、約10分以上、約15分以上、約20分以上、約25分以上、約30分以上、約45分以上、または約60分以上にわたって加熱することができ、加熱によって滅菌ないし死菌体を得ることができるものであればどのような温度と時間の組み合わせであってもよい。
【0041】
本発明の一実施形態において、本発明の乳酸菌組成物を得る場合には、乳酸菌エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)EF-2001株を上記のような温度および時間で加熱して、複数の乳酸菌加熱処理物のロットを得て、この乳酸菌加熱処理物から核酸断片を抽出する。その後、本明細書の他の箇所で説明した本発明のプライマーセットのうちの少なくとも1つを用いてこの核酸断片を増幅する。そして、増幅された核酸断片が検出された乳酸菌加熱処理物のロットを選択し、このロットに含まれる乳酸菌加熱処理物を本発明の乳酸菌組成物とすることができる。加熱や核酸増幅は本分野に通常用いられる機器や手法を採用することができ、例えば本明細書の他の箇所に記載された検出方法において用いることができる機器や手法を採用することができる。菌体を加熱する際には、一般的には攪拌機が装備された第一種圧力容器を用いることができ、温度によっては第二種圧力容器を用いることもできる。また液量が少なければ小型圧力容器なども用いることができる。他の実施形態において、熱伝導体としてプレートやチューブを利用した連続殺菌機を用いることもできる。
【0042】
本発明の一実施形態において、本発明の乳酸菌組成物は、加熱して安定化させることにより、TNF-α産生量が増加したものとすることができる。好ましくは本発明の乳酸菌組成物は、配列番号1および配列番号2、配列番号4および5、配列番号7および8、配列番号10および11、配列番号13および14、配列番号16および17、配列番号19および20、配列番号22および23、配列番号25および26、及び/または配列番号28および29の各組み合わせからなるオリゴヌクレオチドを含む乳酸菌EF-2001株検出用プライマーセットのうちのいずれか1つまたは複数を用いた場合に増幅されずに、かつ配列番号1および配列番号3、配列番号4および6、配列番号7および9、配列番号10および12、配列番号13および15、配列番号16および18、配列番号19および21、配列番号22および24、配列番号25および27、及び/または配列番号28および30の各組み合わせからなるオリゴヌクレオチドを含む乳酸菌EF-2001株検出用プライマーセットのうちのいずれか1つまたは複数を用いた場合に増幅される核酸断片を含むものである。
【0043】
一実施形態において、本発明の乳酸菌組成物のTNF-α産生量が増加したかどうかは、ロングを検出するプライマーセットのバンドが消失し、かつショートを検出するプライマーセットのバンドが残ることを指標として確認することができる。例えば、contig16の塩基配列の一部を増幅する配列番号16および17のプライマーセット(ロング)によっては核酸断片が増幅されず、配列番号16および18のプライマーセット(ショート)によって核酸断片が増幅されることを指標として、そのような増幅結果を示す加熱処理がされた本発明の乳酸菌組成物を、TNF-α産生量が増加しているものとすることができる。
【0044】
本発明の一実施形態において、本発明の乳酸菌組成物は、個々の菌体を隔離した状態に置き、それにより各菌体が食品等に添加されて吸水したときに凝集しないようにするための任意の希釈剤を混合することができる。希釈剤は菌体との均一混合を容易にするため、微粉末状であるだけでなく、なるべく流動性のよいものであることが好ましい。希釈剤としては、食品に添加した場合の安全性や食品の風味や性状に対する影響等を考慮すると、多糖類やタンパク質とすることが好ましく、例えば多糖類としては乳糖、ポリデキストロース、シクロデキストリン、コーンスターチ、微結晶セルロース、でんぷん、ガラクトマンナンなどの天然多糖類や、それらの酵素処理加水分解物などを挙げることができ、またタンパク質としては大豆タンパク質、カゼイン、小麦グルテイン、卵白アルブミンなどを挙げることができ、これらの任意の2種以上を併用することもできる。
【0045】
本明細書において「または」は、文章中に列挙されている事項の「少なくとも1つ以上」を採用できるときに使用される。「もしくは」も同様である。本明細書において「2つの値」の「範囲内」と明記した場合、その範囲には2つの値自体も含む。
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
【0046】
以上、本開示を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本開示を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本開示を限定する目的で提供したのではない。従って、本開示の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例0047】
(実施例1:乳酸菌EF-2001株の検出1(Enterococcus faecalis亜種との比較))
(1)試験菌株
試験菌株として、(A)乳酸菌EF-2001株と、Enterococcus faecalis亜種である(B)E. faecalis NBRC3971、(C)E.faecalis NBRC3989、(D)E.faecalis NBRC12970、(E)E. faecalis NBRC100480、(F)E.faecalis NBRC100482、(G)E.faecalis NBRC100483、(H)E. faecalis NBRC100484を使用した。
【0048】
(2)乳酸菌DNAの調製
各菌体の培養液から回収した上記菌体にリゾチームなどの酵素を含む緩衝液を加え、細胞膜を分解した。プロテイナーゼおよびRNaseで処理した後、酢酸ナトリウムを加えてエタノールで沈殿させた沈殿物をエタノールでリンスした後、乾燥させた。これにTEなどの緩衝液を加えて溶解した溶液をPCR用のDNA溶液として用いた。また、DNA溶液は市販のDNA抽出キットを用いて調整することもできる。
【0049】
(3)PCR反応
上記(2)において得た試験菌株のDNA溶液を鋳型とし、配列番号1および配列番号2(contig1)、配列番号4および5(contig4)、配列番号7および8(contig7)、配列番号10および11(contig11)、配列番号13および14(contig13)、配列番号16および17(contig16)、配列番号19および20(contig22)、配列番号22および23(contig25)、配列番号25および26(contig31)、並びに配列番号28および29(contig43)の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットと、配列番号1および配列番号3(contig1)、配列番号4および6(contig4)、配列番号7および9(contig7)、配列番号10および12(contig11)、配列番号13および15(contig13)、配列番号16および18(contig16)、配列番号19および21(contig22)、配列番号22および24(contig25)、配列番号25および27(contig31)、並びに配列番号28および30(contig43)の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの対からなるプライマーセットとを用い、PCR反応試薬キットであるKOD FX Neo(東洋紡)の方法にしたがってPCR反応を行った。PCR反応液の総量を50μLとすると、キット付属の2×PCR緩衝液25.0μL、2mM dNTPs 10.0μL、DNAポリメラーゼ1.0U、プライマー混合液0.2μL、及び鋳型DNA10~200ng(生菌の場合)、または10~400ng(死菌の場合)を含む反応液を、Thermal cycler GenAtlas(ASTEC)を用いて、94℃で10秒の予備加熱後、変性を98℃で10秒、アニーリングを60℃で30秒、伸長を68℃で30秒のサイクルを25サイクル行った。
【0050】
なお、ポジティブコントロールとしては、乳酸菌EF-2001株の16S rDNAを鋳型として増幅産物が200~300bpとなるように設計したプライマー(F:配列番号61、R:配列番号62)を用いた。
【0051】
(4)アガロース電気泳動
PCR反応によって得られたPCR産物を、GelRed Nucleic Acid
Gel Stain(FUJIFILN Co.,Ltd.)を含む1.4%アガロースゲルで100V、30分電気泳動した。次に、WSE-5400-UP Printgraph Classic(ATTO Co.,Ltd.)でPCR産物の増幅を示すバンドを観察した。結果を
図1に示した。
【0052】
図1に示すとおり、ここで使用したEnterococcus faecalisのすべての亜種に約284bpのポジティブコントロールのバンドが観察されたが、EF-2001株のDNAを使用した場合にのみ約100~約250bpのバンドおよび約500~約600bpのバンドが観察され(
図1(A))、本発明のプライマーセットにより、Enterococcus faecalis亜種の中から乳酸菌EF-2001株だけを特異的に検出できることが確認された。
【0053】
<実施例2:乳酸菌EF-2001株の検出2(他の乳酸菌との比較)>
試験菌株として、(A)乳酸菌EF-2001株と、他の乳酸菌である(B)E. faecium Aus0004、(C)E. gallinarum LMG13129、(D)Lactobacillus rhamnosus NBRC3425、(E)L.plantarum NBRC15891、(F)L.paracasei NBRC15906、(G)L. lactis NBRC102622を用いたこと以外は、すべて実施例1と同様に行った。結果を
図2に示した。
【0054】
図2に示すとおり、乳酸菌EF-2001株のDNAを使用した場合にのみ、約284bpのポジティブコントロールのバンド、約100~約250bpのバンド、および約500~約600bpのバンドが観察され(
図2(A))、乳酸菌EF-2001株以外の乳酸菌では、いずれのバンドも観察されなかった。これにより、本発明のプライマーセットにより、他の乳酸菌の中から乳酸菌EF-2001株だけを特異的に検出できることが確認された。
【0055】
<実施例3:乳酸菌EF-2001株の検出3(生菌と加熱菌)>
(1)試験菌株
試験菌株として乳酸菌EF-2001株を用い、生菌(
図3(A)培養液)、死菌(
図3(B)加熱処理後液)、死菌(
図3(C)製品原末)の3種類の菌体から抽出したDNAを鋳型として核酸を検出した。
(2)DNAの調製、PCR条件、およびPCRプライマーは実施例1及び2と同様にして行った。実施例1及び2と同様の条件でアガロース電気泳動を行った結果を
図3に示した。
【0056】
図3に示すとおり、乳酸菌EF-2001株の生菌および死菌のいずれの場合でも約100~約250bpのバンドが観察され、本発明のプライマーセットは、乳酸菌EF-2001株の生菌のみならず加熱処理菌(死菌)に対しても、特異的な検出能を発揮することが明らかとなった。これは、乳酸菌EF-2001株の生菌を利用した製品等はもとより、加熱処理した乳酸菌EF-2001株を利用した製品等においても、乳酸菌EF-2001株を検出できることを意味する結果であり、非常に有用である。
【0057】
<実施例4:加熱によるバンド消失>
試験菌株として乳酸菌EF-2001株を用い、加熱処理による本発明のプライマーセットのバンドの消失について確認した。未処理のもの(生菌)に加え、70℃、90℃、110℃で加熱処理した乳酸菌EF-2001株を用いた。
【0058】
一例として、contig16の塩基配列の一部を増幅する配列番号16および17、並びに配列番号16および18のプライマーを用い、PCR条件などは実施例1と同様にして、核酸断片の増幅能を調べた。結果を
図4に示す。
【0059】
図4に示したとおり、配列番号16および17のプライマーセット(ロング)は加熱温度を上昇させるにつれてバンドが消失することがわかった。加熱処理した乳酸菌EF-2001株を利用した製品においては、一定の熱履歴を必要とするため、このロングを検出するプライマーのバンドが消失することは、一定の熱履歴を与えていることを意味する結果であり、非常に有用である。一方で、配列番号16および18のプライマーセット(ショート)は110℃で加熱した場合でも、電気泳動をした際のバンドを確認することができた。
【0060】
<実施例5:TNF-α産生量の測定>
試験菌株として乳酸菌EF-2001株を用い、加熱処理による乳酸菌EF-2001株のTNF-α産生量の変化を確認した。未処理のもの(生菌)と110℃で加熱処理した乳酸菌EF-2001株を用いた。
【0061】
まず、RAW264.7細胞を使ってTNF-αを誘導させた。1.0×106細胞/mLに調整したRAW264.7細胞溶液を1wellあたり100μLずつ96wellに分注し、37℃の5%CO2恒温槽で24時間培養した。培養上清を取り除き、FBSを含まないRPMI-1640培地で洗浄した後、サンプル溶液100μLを加えて、37℃の5%CO2恒温槽で6時間反応させた。サンプルは、1mg/mLのEF-2001溶液を、FBSを含まないRPMI-1640Mediumwith L-glutamine and sodium bicarbonale, liquid, sterile-filterd,suitable forcell culture (R8758-500ML;SIGMA)で作成し、適宜希釈して調整した。
【0062】
6時間後、上清を回収し、TNF-α測定時まで-80℃で保管し、サンプルを適宜希釈した後、「Mouse TNF-α Quantikine ELlSA Kit」のプロトコルに従って誘導生産されたTNF-α濃度を測定した。その結果を
図5に示した。
【0063】
図5に示すとおり、乳酸菌EF-2001株に加熱処理(110℃)を加えることによって、TNF-α産生量が増大したことが確認できた。これは加熱処理した乳酸菌EF-2001株を利用した製品においては、TNF-α産生量が増大していることを意味する。一定の熱履歴を与えることにより、ロングを検出するプライマーのバンドが消失し、かつショートを検出するプライマーのバンドが残るという実施例4で示された結果と組み合わせることで、ロングを検出するプライマーのバンドが消失し、かつショートを検出するプライマーのバンドが残ることを確認することにより、TNF-α産生量が増大した乳酸菌EF-2001株が得られたかどうかの指標となり得る可能性が示された。
【0064】
(注記)
以上のように、本開示の好ましい実施形態を用いて本開示を例示してきたが、本開示は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願及び他の文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
本発明の方法によって、乳酸菌エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)EF-2001株を簡便かつ迅速に、かつ特異的に検出することが可能になるため、EF-2001株の多様な活性に関与する遺伝子の推測や、その遺伝子を用いた機能性食品やサプリメントの開発など幅広い応用が期待できる。