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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022123917
(43)【公開日】2022-08-25
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/155 20060101AFI20220818BHJP
   B23Q 17/09 20060101ALI20220818BHJP
【FI】
B23Q3/155 E
B23Q17/09 C
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021021381
(22)【出願日】2021-02-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002273
【氏名又は名称】特許業務法人インターブレイン
(72)【発明者】
【氏名】山田 智明
(72)【発明者】
【氏名】窪田 純一
(72)【発明者】
【氏名】重兼 晃人
【テーマコード(参考)】
3C002
3C029
【Fターム(参考)】
3C002AA03
3C002AA04
3C002BB03
3C002FF03
3C002HH08
3C002KK01
3C002LL01
3C002LL12
3C029DD04
3C029DD20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】撮像部を大きくしなくても、工具長によらず工具の形状検出を十分な精度で行えるようにする。
【解決手段】工作機械は、複数の工具が収容される収容室10と、工具による機械加工が実行される加工室と、収容室10と加工室との隔壁に設けられた開口28を開閉するシャッタ30と、収容室10において交換対象の工具Txを待機状態で支持する工具支持部22と、収容室10に配置され、工具支持部22に支持された工具Txを照らす照明部52と、シャッタ30に固定された撮像部50と、シャッタ30を工具の長手方向に移動させて開口を開閉する開閉機構32と、を備える。工作機械は、シャッタ30と一体に撮像部50を移動させ、工具Txを撮像する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の工具が収容される収容室と、
工具による機械加工が実行される加工室と、
前記収容室と前記加工室との隔壁に設けられた開口を開閉するシャッタと、
前記収容室において交換対象の工具を待機状態で支持する工具支持部と、
前記収容室に配置され、前記工具支持部に支持された工具を照らす照明部と、
前記シャッタに固定された撮像部と、
前記シャッタを前記工具の長手方向に移動させて前記開口を開閉する開閉機構と、
を備え、
前記シャッタと一体に前記撮像部を移動させ、前記工具を撮像する、工作機械。
【請求項2】
前記撮像部は、前記シャッタが移動されるとき、その移動前後および移動過程の少なくとも一方において前記工具の画像を複数回撮像する、請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
撮像された画像を記憶するデータ格納部と、
撮像された画像に基づいて所定の処理を実行する撮像処理部と、
を備え、
前記撮像処理部は、前記複数回撮像して得られた複数の画像を合成して前記工具の全体画像を生成する、請求項2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記撮像部は、交換直前の使用前工具の画像を前記シャッタが開方向に移動するときに撮像し、
前記撮像部は、1回目の撮像をした後、前記シャッタの移動距離が前記工具の刃部の長さの半分以上移動した後に2回目の撮像を行う、請求項2又は3に記載の工作機械。
【請求項5】
前記撮像部は、前記シャッタが移動を開始して所定距離移動した後に前記1回目の撮像を行う、請求項4に記載の工作機械。
【請求項6】
前記撮像部は、交換直後の使用済工具の画像を前記シャッタが閉方向に移動するときに複数回撮像する、請求項2~5のいずれかに記載の工作機械。
【請求項7】
撮像された画像に基づいて所定の判定処理を実行する判定処理部をさらに備え、
前記判定処理部は、前記使用済工具の画像と、前記使用済工具と同一の工具について予め取得した参照画像とに基づいて前記使用済工具の状態を判定する、請求項6に記載の工作機械。
【請求項8】
撮像された画像に基づいて所定の判定処理を実行する判定処理部をさらに備え、
前記撮像部は、交換直前の使用前工具の画像を前記シャッタが開方向に移動するときに複数回撮像する一方、交換直後の使用済工具の画像を前記シャッタが閉方向に移動するときに複数回撮像し、
前記判定処理部は、前記使用済工具の画像と、前記使用済工具と同一の工具について撮像された使用前工具の画像とに基づいて前記使用済工具の状態を判定する、請求項2又は3に記載の工作機械。
【請求項9】
複数の工具が収容される収容室と、
工具による機械加工が実行される加工室と、
前記収容室と前記加工室との隔壁に設けられた開口を開閉するシャッタと、
前記収容室において交換対象の工具を待機状態で支持する工具支持部と、
前記収容室に配置され、前記工具支持部に支持された工具を照らす照明部と、
前記シャッタに固定された撮像部と、
前記シャッタを前記工具の長手方向に移動させて前記開口を開閉する開閉機構と、
を備える、工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械における工具の検査技術に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械には、回転するワークに対して工具を移動させるターニングセンタ、回転する工具をワークに対して移動させるマシニングセンタ、およびこれらの機能を複合的に備える複合加工機などがある。工作機械には、ATC(Automatic Tool Changer)と呼ばれる工具交換装置が備えられ、機械加工の過程で複数種の工具を交換しながらワークが所望の形状に加工される。ATCは、工具収容部(マガジン等)と工具保持部(主軸等)との間で工具交換を実行する。
【0003】
このような工作機械では、使用後の工具に欠損や折損あるいは切屑の巻き付きなどの異常があった場合、その工具(以下「不良工具」ともいう)をそのまま次回の加工に使用することはできない。このため、工具の使用前後に刃形状をカメラにより撮像し、その使用前後の撮像画像に基づいて不良工具であるか否かを判定する技術が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-131357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、工具の撮像対象部(例えば刃元から刃先まで)を一画面に収めるためには、カメラと工具との距離(ワーキングディスタンス:以下「WD」と表記する)をある程度大きくとる必要がある。しかし、WDを大きくすると、1画素あたりの撮像長さが大きくなり、細かな形状検出が困難となる。この点、WDが大きくても画素数の大きいカメラを採用することで画像の品質を確保できるが、コストが嵩む。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は工作機械である。この工作機械は、複数の工具が収容される収容室と、工具による機械加工が実行される加工室と、収容室と加工室との隔壁に設けられた開口を開閉するシャッタと、収容室において交換対象の工具を待機状態で支持する工具支持部と、収容室に配置され、工具支持部に支持された工具を照らす照明部と、シャッタに固定された撮像部と、シャッタを工具の長手方向に移動させて開口を開閉する開閉機構と、を備える。工作機械は、シャッタと一体に撮像部を移動させ、工具を撮像する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、撮像部を大きくしなくても、工具長によらず工具の形状検出を十分な精度で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る工作機械の外観を表す斜視図である。
図2】工具収容装置の内部構成を表す側面図である。
図3】収容室内の構成を模式的に表す斜視図である。
図4】収容室と加工室との境界部周辺を模式的に表す正面図である。
図5】工作機械および画像処理装置のハードウェア構成図である。
図6】画像処理装置の機能ブロック図である。
図7】撮像時における対象工具の照明方法を表す図である。
図8】画像処理方法を表す図である。
図9】使用前工具形状データ取得処理の処理過程を表すフローチャートである。
図10】工具検査処理の処理過程を表すフローチャートである。
図11】変形例にかかる照明および撮像方法を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。本実施形態の工作機械は、工具を適宜交換しながらワークを所望の形状に加工するマシニングセンタとして構成されている。
【0010】
図1は、実施形態に係る工作機械の外観を表す斜視図である。工作機械1を正面からみて前後方向,左右方向,上下方向を、それぞれZ軸方向,X軸方向,Y軸方向とする。
工作機械1は、加工装置2および工具収容装置4を備える。これらの装置を覆うようにカバー6(装置筐体)が設けられる。カバー6の内方には、正面から向かって右側に加工室8が設けられ、左側に収容室10が設けられる。加工室8において加工装置2による機械加工が行われる。収容室10においては、工具収容装置4により複数の工具が収容され、また、図示しないATCによる工具交換が行われる(詳細後述)。
【0011】
カバー6の右側面には操作盤12が設けられている。加工室8には画像処理装置14が接続される。ユーザは、画像処理装置14により工作機械1の作業状況を遠隔監視できる。画像処理装置14は、一般的なラップトップPC(Personal Computer)あるいはタブレット・コンピュータであってもよい。変形例においては、画像処理装置を加工室8の内部装置として構成してもよい。
【0012】
図2は、工具収容装置4の内部構成を表す側面図である。本図は工作機械1の左側面図に対応するが、説明の便宜上、カバー6の左側面を取り除いた状態を示す。また、マガジン(後述)の一部が部分的に切り欠かれて表示されている。
【0013】
工具収容装置4は、円盤式のマガジン20を有する。マガジン20の外周面に沿って複数のポット22が配設され、それぞれ工具Tを収納可能に構成されている。各ポット22が工具Tを同軸状に支持し、複数の工具がマガジン20の回転軸24を中心に放射状に支持されている。変形例においては、チェーン式その他のマガジンを採用してもよい。
【0014】
マガジン20は、回転軸24を中心に回転し、交換対象となる工具Tをその前端位置(図2における右端位置)において水平に支持する。すなわち、マガジン20のポット22は、収容室10において交換対象となる工具T(「対象工具Tx」ともいう)を待機状態で支持する「工具支持部」として機能する。
【0015】
収容室10と加工室8とを仕切る隔壁26には開口28が設けられ、開口28を開閉するためのシャッタ30が配設されている。また、シャッタ30を対象工具Txの長手方向に移動させて開口28を開閉する開閉機構32が設けられている。収容室10にはATC34が設けられる。ATC34は、収容室10にて待機状態で保持される工具T(「使用前工具Tp」ともいう)と、加工室8にて工具主軸(図示せず)に保持される工具T(「使用済工具Tu」ともいう)とを交換する。工具交換は、シャッタ30が開放された状態で行われる。
【0016】
対象工具Txは、収容室10において交換対象として水平に支持される。対象工具Txには、工具交換直前の使用前工具Tpと、工具交換直後の使用済工具Tuが含まれる。本実施形態では、同一の工具について使用前工具Tpの画像と使用済工具Tuの画像を撮像する。それら使用前工具Tpの画像と使用済工具Tuの画像との対比に基づいて、使用済工具Tuの状態(不良工具であるか否か等)を判定する。その詳細については後述する。
【0017】
図3は、収容室10内の構成を模式的に表す斜視図である。図4は、収容室10と加工室8との境界部周辺を模式的に表す正面図である。
図3に示すように、対象工具Txは、収容室10において水平に支持される。シャッタ30は、開閉機構32により対象工具Txの長手方向に駆動され、開口28を開閉する。なお、対象工具Txの「長手方向」は、収容室10にて対象工具Txを支持するポット22の軸線に沿った方向であり「Z軸方向」に対応する。対象工具Txの「短手方向」は、長手方向と直角をなす方向であり「X軸方向」や「Y軸方向」を含む。開閉機構32は、ねじ送り機構33およびこれを駆動するサーボモータ35を含む。
【0018】
図4にも示すように、対象工具Txとシャッタ30との間の空間にATC34が配設されている。ATC34は、モータを内蔵する本体36と、モータの回転軸に取り付けられたアーム38を備える。アーム38は、回転軸に対して対称な形状を有し、その両端にそれぞれ把持部40を有する。把持部40は、固定爪42と可動爪44を含む。可動爪44を駆動することにより把持部40による把持動作を実現できる。
【0019】
ATC34には、アーム38を軸線方向へ移動させる並進機構と、アーム38を軸線周りに回転させる回転機構が設けられる。モータには、並進機構を駆動する第1モータと、回転機構を駆動する第2モータとが含まれる。このような機構そのものは公知であるため、その詳細な説明については省略する。
【0020】
ATC34の非作動時には、図4に示すように、アーム38の長手方向を上下に向けた状態となる。それにより、シャッタ30が閉じた状態でATC34が収容室10に収まるようにしている。ATC34の作動時には、アーム38の軸線を挟んで一方の側(収容室10側)で使用前工具Tpが待機し、他方の側(加工室8側)で使用済工具Tuが待機する。このとき、シャッタ30が開放される。
【0021】
ATC34が作動すると、アーム38が回転することで一対の把持部40がそれぞれ使用前工具Tp、使用済工具Tuを把持する。このとき、アーム38は、一時的に開口28を跨ぐことになる。さらに並進機構および回転機構が駆動されることで、ポット22および工具主軸37に対して工具の離脱および装着がなされ、工具交換が実現される。このようなATCの作動そのものは公知であるため、その詳細な説明については省略する。
【0022】
対象工具Txの保持位置の上方に照明装置52が配置され、下方にカメラ50が配置される。カメラ50は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)、CCD(Charge-Coupled Device)などのイメージセンサ(撮像素子)を備える。本実施形態におけるカメラ50は約工具情報格納部100万画素(1224×1024)の解像度を有する。また、カメラ50は1秒間に最大入力部80枚の撮像画像を取得可能である。
【0023】
照明装置52は「照明部」として機能し、対象工具Txを斜め上方から照らす。カメラ50は「撮像部」として機能し、斜め下方から対象工具Txを撮像する。カメラ50と照明装置52とが対象工具Txに対して反対側に配置される。照明装置52による透過照明により、カメラ50は、工具Tの輪郭位置を把握しやすい、コントラストの高い撮像画像を取得できる。
【0024】
図3に戻り、カメラ50は、シャッタ30の下部に固定されている。対象工具Txが長く、カメラ50の画角に収まらない場合であっても、カメラ50がシャッタ30とともに移動しながら対象工具Txの撮像対象部を複数回に分けて撮像できる。なお、「撮像対象部」は、対象工具Txが不良工具となっているか否かを判定するために検査が必要な部分(「検査対象部」ともいう)を意味し、予め設定される。本実施形態では、対象工具Txにおいてポット22に支持される基端から刃先までを撮像対象部としている。変形例においては、刃元から刃先までを撮像対象部としてもよい。
【0025】
図4にも示すように、工具主軸37の回転軸Lt、ATC34の回転軸Lx、シャッタ30の移動方向、および工具交換の待機位置における対象工具Txの長手方向は、互いに平行(いずれもZ軸に対して平行)に設計されている。
【0026】
なお、図3および図4においては図示を省略するが、ATC34の本体36、開閉機構32、照明装置52等の各構造体が、収容室10内の壁面や梁など構造体に安定に固定されていることは言うまでもない。
【0027】
図5は、工作機械1および画像処理装置14のハードウェア構成図である。
工作機械1は、上述の加工装置2、工具収容装置4、ATC34のほか、加工制御装置60および操作制御装置62を含む。加工制御装置60は、数値制御装置として機能し、加工プログラムにしたがって加工装置2に制御信号を出力する。加工装置2は、加工制御装置60からの指示にしたがって工具主軸(図示せず)を駆動してワークを加工する。
【0028】
操作制御装置62は、操作盤12を含み、加工制御装置60を制御する。ATC34は、加工制御装置60からの交換指示にしたがって工具収容装置4から工具を取り出し、工具主軸に保持される使用済工具Tuと、工具収容装置4から取り出した使用前工具Tpとを交換する。
【0029】
画像処理装置14は、主として、工具形状認識等の画像処理を行う。上述のように、画像処理装置14は操作制御装置62の一部として構成されてもよい。あるいは、画像処理装置14を含めた全体を「工作機械1」と称してもよい。
【0030】
図6は、画像処理装置14の機能ブロック図である。
画像処理装置14の各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)および各種補助プロセッサなどの演算器、メモリやストレージといった記憶装置、それらを連結する有線または無線の通信線を含むハードウェアと、記憶装置に格納され、演算器に処理命令を供給するソフトウェアによって実現される。コンピュータプログラムは、デバイスドライバ、オペレーティングシステム、それらの上位層に位置する各種アプリケーションプログラム、また、これらのプログラムに共通機能を提供するライブラリによって構成されてもよい。以下に説明する各ブロックは、ハードウェア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。
【0031】
なお、操作制御装置62および加工制御装置60も、プロセッサなどの演算器、メモリやストレージといった記憶装置、それらを連結する有線または無線の通信線を含むハードウェアと、記憶装置に格納され演算器に処理命令を供給するソフトウェアやプログラムを画像処理装置14とは別個のオペレーティングシステム上で実現される形態でもよい。
【0032】
画像処理装置14は、ユーザインタフェース処理部70、データ処理部72、データ格納部74および通信部76を含む。
ユーザインタフェース処理部70は、ユーザからの操作を受け付けるほか、画像表示や音声出力など、ユーザインタフェースに関する処理を担当する。通信部76は、操作制御装置62との通信を担当する。データ処理部72は、ユーザインタフェース処理部70により取得されたデータおよびデータ格納部74に格納されているデータに基づいて各種処理を実行する。データ処理部72は、ユーザインタフェース処理部70、データ格納部74および通信部76のインタフェースとしても機能する。データ格納部74は、各種プログラムと設定データを格納する。
【0033】
ユーザインタフェース処理部70は、入力部80および出力部82を含む。
入力部80は、タッチパネルあるいはハンドル等のハードデバイスを介してユーザからの入力を受け付ける。出力部82は、画像表示あるいは音声出力を介して、ユーザに各種情報を提供する。出力部82は、報知部84を含む。報知部84は、交換対象となる工具の異常(不良工具が検出されたこと)など、所定の異常条件が成立したときにユーザに各種事象の発生を報知する(詳細後述)。
【0034】
通信部76は、操作制御装置62からデータを受信する受信部110と、操作制御装置62にデータおよびコマンドを送信する送信部112を含む。
【0035】
データ処理部72は、移動制御部90、撮像処理部92、形状再現部94、工具管理部96および判定処理部98を含む。
移動制御部90は、開閉機構32を駆動制御してシャッタ30の開閉(つまり照明装置52の移動)を制御する。撮像処理部92は、カメラ50を制御して対象工具Txを撮像させる。形状再現部94は、撮像画像に基づいて対象工具Txの形状を示すデータである「工具形状データ」を生成する。工具管理部96は、対象工具Txごとに工具IDと工具形状データとを対応づけてデータ格納部74に登録する。
【0036】
判定処理部98は、対象工具Txの撮像画像に基づき、あるいは、工具形状データに基づいて、対象工具Txに欠損や折損あるいは切屑の巻き付きなどの異常が生じていないか(不良工具であるか否か)を判定する。判定処理部98が対象工具Txの異常が判定されたとき、報知部84がユーザにその旨を報知する。判定処理部98は、操作制御装置62にその旨を操作盤12に表示させるよう指示してもよい。使用済工具Tuが不良工具であると判定された場合、工具管理部96は、その不良工具であるとの情報を工具IDに対応づけ、工具情報としてデータ格納部74に登録する。
【0037】
データ格納部74は、工具情報格納部100および形状データ格納部102を含む。工具情報格納部100は、マガジン20に収納される各工具Tの情報(工具情報)を工具IDに対応づけて格納する。工具情報には、例えば工具の種類や形状、大きさ、長さなどの情報が含まれる。さらに、累計使用時間や累計使用回数などの情報を含めてもよい。データ格納部74はまた、撮像画像を一時記憶する。
【0038】
工具情報格納部100は、工具交換がなされるごとに工具情報を更新する。上述のように対象工具Txが不良工具であると判定された場合には、工具情報としてその旨を追加する。工具管理部96は、その判定以降、不良工具にかかる工具Tの使用、つまりATC34により使用前工具Tpとして工具交換することを禁止する。
【0039】
形状データ格納部102は、形状再現部94が生成した工具形状データを工具IDに対応づけて格納する。本実施形態では、工具交換前後に工具形状データが作成される。このため、各対象工具Txについて、使用前工具Tpの工具形状データ(以下「使用前工具形状データ」ともいう)と、使用済工具Tuの工具形状データ(以下「使用済工具形状データ」ともいう)とが、工具IDに対応づけて記憶される。判定処理部98は、同一の工具について使用前工具形状データと使用済工具形状データとを比較することで、使用済工具Tuが不良工具であるか否かを判定できる。
【0040】
次に、工具の撮像方法について説明する。
図7は、撮像時における対象工具Txの照明方法を表す図である。図7(A)~(C)は撮像過程を示す。各図の上段は側面視を示し、下段は平面視の撮像画像を示す。図中の一点鎖線は照明により撮像画像のコントラストが良好となる領域を示す。図中の二点鎖線はカメラ50の画角に入る領域(「撮像領域S」ともいう)を示す。
【0041】
本実施形態では、所定のWDを有する比較的小さなカメラ50を使用する。一方、上述のように、対象工具Txにおいてポット22に支持される基端から刃先までを撮像対象部Taとしている。このため、図7(A)に示すように、対象工具Txがある程度大きくなると、撮像対象部Taを撮像領域Sに収めることができず、所望の画像が得られない。そこで、カメラ50により大きなレンズや広角レンズを用いることも考えられるが、既に述べたようにコスト上昇や細かな形状検出が困難といった懸念がある。
【0042】
そこで本実施形態では、開閉機構32によりシャッタ30を開閉駆動するとともにカメラ50を移動させ、対象工具Txを複数回撮像し、複数の撮像画像に基づいて撮像対象部Ta全体の形状を認識する方式を採用している。以下、カメラ50により対象工具Txの一部を撮像した撮像画像のことを「部分画像」とよぶ。撮像処理部92は、カメラ50が移動されるとき、その移動前後および移動過程の少なくとも一方において対象工具Txの画像を複数回撮像し、複数枚の撮像画像を取得する。
【0043】
具体的には、カメラ50は、シャッタ30が開方向に駆動されるとき(つまり開閉機構32の開作動によりシャッタ30が開方向に移動するとき)使用前工具Tpの画像を複数回撮像する。また、カメラ50は、シャッタ30が閉方向に駆動されるとき(つまり開閉機構32の閉作動によりシャッタ30が閉方向に移動するとき)使用済工具Tuの画像を複数回撮像する。使用前工具Tpの撮像はATC34による工具交換直前に実行され、使用済工具Tuの撮像はATC34による工具交換直後に実行される。
【0044】
すなわち、使用前工具Tpの撮像に関し、開閉機構32の開作動起点で撮像し(図7(A))、さらに開閉機構32の開作動中間点および開作動終点にて撮像する(図7(B),(C))。なお、ここでいう「開作動起点」はシャッタ30の閉状態に対応し、「開作動中間点」はシャッタ30の中間開放状態に対応し、「開作動終点」はシャッタ30の全開状態に対応する。「開作動中間点」はカメラ50の一時停止点であってもよいし、移動通過点であってもよい。照明の変化によるノイズの少ない画像を取得するためには一時停止点とするのが好ましい。「開作動終点」はカメラ50の閉移動起点でもある。なお、カメラ50の露光時間を絞ることで、開作動中間点にて一時停止することなく撮像してもよい。
【0045】
図7の例では、開閉機構32の開作動起点で1回撮像し(図7(A))、開閉機構32の開作動中間点でもう1回撮像し(図7(B))、開閉機構32の開作動終点でさらにもう1回撮像している(図7(C))。シャッタ30の開制御時に取得されるこれら3つの撮像画像うち1つ目の画像が第1使用前画像P1、2つ目の画像が第2使用前画像P2、3つ目の画像が第3使用前画像P3である。前後の撮像間でのカメラ50の移動量が撮像領域Sの長さよりも小さいため、前後の使用前画像は部分的にオーバラップする。
【0046】
図8は、画像処理方法を表す図である。図8(A)は画像抽出方法を示し、図8(B)は画像合成方法を示す。
撮像処理部92は、使用前画像P1~P3について、前後のオーバラップ部についてはコントラストが相対的に高いほうを採用する。すなわち、撮像処理部92は、使用前画像P1~P3から部分画像Pb1~Pb3をそれぞれ抽出し(図8(A))、それらを合成することで、対象工具Txの全体画像Paを生成する(図8(B))。これにより、全体画像Paとしてコントラストが高い良質の画像を得ることができる。撮像処理部92は、この全体画像Paに基づいて使用前工具Tp(撮像対象部Ta)の輪郭を特定する。
【0047】
具体的には、撮像対象部Taの全体画像Paとして、照明装置52により映し出された対象工具Txのシルエットが表示される。撮像処理部92は、X軸方向に走査線を設定し、暗領域(対象工具Txが存在するシルエット領域)から明領域(対象工具Txが存在しない領域)の境界に位置する点をエッジ点として検出する。撮像処理部92は、走査線を一定のピッチにてずらしながら複数のエッジ点を検出し、これらのエッジ点をつなぐことで対象工具Txの輪郭を特定する。形状再現部94は、特定された輪郭に基づいて工具形状データ(使用前工具形状データ)を生成する。
【0048】
一方、使用済工具Tuの画像処理についても、撮像時におけるシャッタ30の駆動方向(つまりカメラ50の移動方向)が異なる点を除いては、使用前工具Tpの場合と同様である。使用済工具Tuの撮像処理は、使用前工具Tpとの工具交換処理に続けて実行される。
【0049】
すなわち、使用済工具Tuの撮像に関し、開閉機構32の閉作動起点で撮像し(図7(C))、さらに開閉機構32の閉作動中間点および閉作動終点にて撮像する(図7(B),(A))。なお、ここでいう「閉作動起点」はシャッタ30の全開状態に対応し、「閉作動中間点」はシャッタ30の中間閉鎖状態に対応し、「閉作動終点」はシャッタ30の閉状態に対応する。「閉作動中間点」はカメラ50の一時停止点であってもよいし、移動通過点であってもよい。照明の変化によるノイズの少ない画像を取得するためには一時停止点とするのが好ましい。「閉作動終点」はカメラ50の開移動起点でもある。
【0050】
開閉機構32の閉作動起点で1回撮像し(図7(C))、開閉機構32の閉作動中間点でもう1回撮像し(図7(B))、開閉機構32の閉作動終点でさらにもう1回撮像する(図7(A))。シャッタ30の閉制御時に取得されるこれら3つの撮像画像うち1つ目の画像が第1使用済画像、2つ目の画像が第2使用済画像、3つ目の画像が第3使用済画像である。
【0051】
なお、使用済工具Tuの画像処理方法(画像抽出方法、画像合成方法)は、使用前工具Tpの場合と同様である。各使用済画像において部分画像を抽出し、それらの部分画像を合成して全体画像を得る。その詳細な説明については省略する。撮像処理部92は、その全体画像に基づいて使用済工具Tu(撮像対象部Ta)の輪郭を特定する。形状再現部94は、特定された輪郭に基づいて工具形状データ(使用済工具形状データ)を生成する。
【0052】
判定処理部98は、同一の工具について使用前工具形状データと使用済工具形状データとを比較する。判定処理部98は、使用前工具形状と使用済工具形状の類似度、特に、輪郭の類似度が所定値以下となっているとき、対象工具Txに欠損等が発生している、つまり対象工具Txが不良工具になっていると判定する。このとき、報知部84は、ユーザに不良工具が検出されたことを示すアラート画面を表示させる。あるいは、ブザー音などの音声を発生させてもよい。
【0053】
図9は、使用前工具形状データ取得処理の処理過程を表すフローチャートである。
本処理は、工具交換に先立ち、使用前工具Tpが収容室10において待機状態で水平に保持されたことを契機に実行される。このとき、シャッタ30は閉状態であり、カメラ50は開移動起点にある。
【0054】
撮像処理部92は、本処理に先立って予め定める工具交換禁止フラグをオンにする(S10)。使用前工具Tpの撮像中にATC34による工具交換がなされることを禁止するものである。続いて、カメラ50により使用前工具Tpを撮像する(S11)。このとき取得された画像は、第1使用前画像P1として記憶される。続いて、移動制御部90が開閉機構32を作動させてシャッタ30を開方向へ移動させる(S12)。それによりカメラ50が次の撮像位置に到達すると(S14のY)、シャッタ30を一時停止させる(S16)。撮像処理部92は、カメラ50により使用前工具Tpを撮像する(S18)。このとき取得された画像は、第2使用前画像P2として記憶される。
【0055】
設定回数の撮像が完了するまでは(S20のN)、S12~S18の処理が繰り返される。本実施形態では、設定回数が3回とされており、第3使用前画像P3が取得されれば撮像完了となるが、工具の長さによってその設定回数を変更してもよい。設定回数の撮像が完了すると(S20のY)、工具交換禁止フラグをオフにする(S22)。この撮像完了をもって、ATC34による工具交換を許可するものである。言い換えれば、工具交換禁止フラグがオンにされている間に使用前工具Tpに対する撮像処理が実行される。
【0056】
撮像処理部92は、上述した複数の使用前画像P1~P3のそれぞれから部分画像Pb1~Pb3を抽出し、これらを合成することで全体画像Paを生成する(S24)。形状再現部94は、全体画像Paに基づいて使用前工具形状データを生成する(S26)。工具管理部96は、この使用前工具形状データを工具IDに対応づけて形状データ格納部102に格納させる(S28)。この使用前工具形状データは、後述する工具検査のために使用される。
【0057】
図10は、工具検査処理の処理過程を表すフローチャートである。
本処理は、工具交換後の工具収納に先立ち、収容室10において使用済工具Tuが待機状態で水平に保持されたことを契機に実行される。このとき、シャッタ30は全開状態であり、カメラ50は閉移動起点にある。
【0058】
撮像処理部92は、カメラ50により使用済工具Tuを撮像する(S40)。このとき取得された画像は、第1使用済画像として記憶される。続いて、移動制御部90が開閉機構32を作動させてシャッタ30を閉方向へ移動させる(S42)。それによりカメラ50が次の撮像位置に到達すると(S44のY)、シャッタ30を一時停止させる(S46)。撮像処理部92は、カメラ50により使用済工具Tuを撮像する(S48)。このとき取得された画像は、第2使用済画像として記憶される。
【0059】
設定回数の撮像が完了するまでは(S50のN)、S42~S48の処理が繰り返される。本実施形態では、設定回数が3回とされており、第3使用済画像が取得されれば撮像完了となるが、工具の長さによってその設定回数を変更してもよい。設定回数の撮像が完了すると(S50のY)、撮像処理部92は、上述した複数の使用済画像のそれぞれから部分画像を抽出し、これらを合成することで全体画像を生成する(S52)。形状再現部94は、その全体画像に基づいて使用済工具形状データを生成する(S54)。工具管理部96は、この使用済工具形状データを形状データ格納部102に一時記憶する(S56)。
【0060】
判定処理部98は、この使用済工具形状データと工具IDが同じ使用前工具形状データを読み出し(S58)、それらの工具形状データを比較する(S60)。すなわち、同一の工具について使用前工具形状と使用済工具形状とを比較する。このとき、使用済工具形状と使用前工具形状との類似度が所定値以下の不良工具であれば(S62のY)、報知部84にその旨を報知させる(S64)。すなわち、報知部84がアラート画面を表示させる。不良工具でなければ(S62のN)、S64の処理をスキップする。
【0061】
本実施形態では、工具交換後に不良工具と判定された使用済工具Tuについてもマガジン20に収納するが、所定のメンテナンスが行われるまでその工具を使用禁止とする。その工具が使用禁止であるとの情報は工具IDに対応づけて記憶される。
【0062】
工具には一般に、その品質を確保するために使用回数や使用時間(「品質保証パラメータ」ともいう)の上限値が決められている。その品質保証パラメータが上限値を超えた工具は使用禁止とされ、別途用意されマガジン20に収納された同種の工具(サブ工具)が使用される。それにより、加工装置2による量産プロセスを阻害しないようにする。本実施形態では、品質保証パラメータが上限値を超えなくとも、不良工具が検出された場合には、該当する工具を使用禁止として管理しつつサブ工具を使用する。
【0063】
以上、実施形態に基づいて工作機械1について説明した。
本実施形態では、シャッタ30にカメラ50を固定し、シャッタ30の開閉作動とともにカメラ50を対象工具Txの長手方向に移動させて複数回撮像を行うようにした。カメラ50として広角レンズを備えたものや、画素数の大きいものを採用しなくとも、長い工具の形状検出が可能となる。すなわち、本実施形態によれば、コストを抑えつつ、工具長によらず工具の形状検出を十分な精度をもって行うことができる。
【0064】
撮像素子(CMOS)の受光領域を大きくし、レンズなどの光学系で広角にせずに、撮像することも可能であるが、工具の長さと同じ長さの撮像素子が必要になり、結果としてカメラなどの撮像部が大きくなる。撮像素子を大きくするため、撮像部が高価になる。この点、本実施形態によれば、撮像部を大きくしなくても、工具長によらず工具の形状検出を十分な精度で行うことができる。
【0065】
工具検査処理はシャッタ30が閉じた状態で行われるので、その間、加工装置2において新たな機械加工を実行できる。すなわち、加工処理中に画像処理ができるため、各処理がお互いに邪魔にならないといった利点もある。
【0066】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【0067】
上記実施形態では、対象工具Txにおける撮像対象部Taを3回撮像して合成することにより、全体画像を取得する構成を例示した。つまり、対象工具Txの長さにかかわらずカメラ50を移動させ、カメラ50による撮像回数を複数回とした。このため、対象工具Txが短い場合には、撮像が空振りとなる可能性がある。
【0068】
変形例においては、撮像対象部Taが撮像領域Sに収まる程度に短い場合、カメラ50による撮像回数を1回としてもよい。すなわち、使用前工具Tpについてはカメラ50の開移動起点にて1回の撮像に留めてもよい。使用済工具Tuについてはカメラ50の閉移動終点にて1回の撮像に留めてもよい。
【0069】
工具の長さ情報は、工具IDに対応づけて工具情報格納部100に格納されている。移動制御部90は、対象工具Txに対応する工具情報を読み出し、その工具長さが第1基準値以下である場合に撮像回数を1回に留めてもよい。「第1基準値」は、撮像領域Sの長さとしてもよいし、それ以下としてもよい(図7参照)。
【0070】
また、2回の撮像で撮像対象部Taの各部が撮像領域Sに収まる場合、撮像回数を2回としてもよい。その場合、使用前工具Tpについては、カメラ50の開移動起点と開移動終点で撮像を行えばよい。また、使用済工具Tuについては、カメラ50の閉移動起点と閉移動終点で撮像を行えばよい。
【0071】
逆に、3回の撮像では一部が撮像領域Sに収まらない程度に撮像対象部Taが長い場合、撮像回数を3回以上としてもよい。移動制御部90は、対象工具Txの長さ(撮像対象部Taの長さ)に応じてシャッタ30の停止回数を設定してもよい。撮像処理部92は、カメラ50の移動が停止するごとに対象工具Txを撮像してもよい。
【0072】
上記実施形態では、複数の使用前画像について前後にオーバラップ部がある構成を例示した。また、複数の使用済画像についても前後にオーバラップ部がある構成を例示した。変形例においては、複数の使用前画像についてオーバラップ部がないようにカメラ50の移動量を調整してもよい。そして、複数の使用前画像のそれぞれを「部分画像」として合成してもよい。同様に、複数の使用済画像についてもオーバラップ部がないようにカメラ50の移動量を調整してもよい。そして、複数の使用済画像のそれぞれを「部分画像」として合成してもよい。
【0073】
上記実施形態では、カメラ50の移動中間点でシャッタ30を一時停止し、カメラ50を停止させた状態で対象工具Txを撮像する構成を例示した。変形例においては、カメラ50の移動中間点でシャッタ30の開閉速度(つまりカメラ50の移動速度)を低下させて対象工具Txを撮像してもよい。つまり、カメラ50を低速で移動させながら撮像を行ってもよい。
【0074】
その場合、シャッタ速度に基づいて複数回(多数回)撮像してもよい。複数の撮像画像(画像1~n)について、それぞれ複数の領域(領域1~m)を同じように設定し、各領域を部分画像として取得してもよい。そして、複数の画像1~nにそれぞれ含まれる部分画像の中から各領域1~mについて最もコントラストが高い部分画像を抽出し、抽出された部分画像を合成して全体画像としてもよい。
【0075】
図11は、変形例にかかる照明および撮像方法を表す図である。図11(A)および(B)は撮像過程を示す。図中の二点鎖線はカメラ50による撮像領域Sを示し、一点鎖線は照明装置52による良好な照明領域Ssを示す。
【0076】
上記実施形態では述べなかったが、図11(A)に示すように、対象工具Txは、ポット22に支持されるホルダThと、ホルダThに同軸状に取り付けられる刃Tbを含む。ホルダThからの刃Tbの突出長さをオーバーハングloという。照明装置52は、撮像において良好なコントラストが得られるよう対象工具Txの全体を照らすことができる。
【0077】
本変形例では、使用前工具について、シャッタ30が開方向に移動を開始してから所定距離x1移動した後にカメラ50が1回目の撮像を行う(図11(A))。その後、シャッタ30の移動距離が所定距離x2移動した後にカメラ50が2回目の撮像を行う。距離x1は、撮像領域Sに少なくともホルダThの先端位置(つまり刃Tbが突出する基端位置)が含まれるように設定される。距離x2は、対象工具Txの刃部の長さ(より詳細にはオーバーハングlo)の半分以上の大きさが設定される。
【0078】
そして、上記実施形態と同様に、これら2回の撮像で得られた使用前画像のそれぞれから部分画像を抽出し、これらを合成することで刃部およびその周辺の画像を生成する。本変形例によれば、対象工具Txの刃部(刃Tbの露出部)に重点をおいて良質の画像を得ることができる。
【0079】
なお、本変形例では、使用前工具について例示したが、使用済工具についても同様に良質の画像を得ることができる。その場合、カメラ50は、交換直後の使用済工具の画像をシャッタ30が閉方向に移動するときに撮像する。シャッタ20が閉方向に移動を開始する前、又は閉方向に所定距離移動した後に1回目の撮像を行う。このとき、撮像領域Sに少なくとも刃Tbの先端位置が含まれるようにする。カメラ50は、1回目の撮像をした後、シャッタ30の移動距離が工具の刃部の長さの半分以上(つまりオーバーハング以上)移動した後に2回目の撮像を行う。
【0080】
そして、これら2回の撮像で得られた使用済画像のそれぞれから部分画像を抽出し、これらを合成することで刃部およびその周辺の画像を生成することができる。
【0081】
他の変形例においては、同一の工具に関し、シャッタ30が開く前(動く前)にその使用前工具について第1の撮像(使用前撮像)をし、その使用済工具についての交換後、シャッタ30が閉まった後に第2の撮像(使用後撮像)をしてもよい。ここで、使用前撮像による画像を「使用前撮像画像」、使用後撮像による画像を「使用後撮像画像」ともいう。この場合、使用後撮像画像に使用前撮像画像と同様に工具が含まれるか否かにより対象工具Txの折損有無を検知してもよい。すなわち、同様に工具が含まれない場合に折損検知としてもよい。シャッタ30とともにカメラ50が移動することで、加工室8からのミストなどのカメラ50への付着を低減できる。
【0082】
上記実施形態では照明装置52を固定し、カメラ50を移動させて対象工具Txを複数回撮像する構成を例示した。変形例においては、カメラ50および照明装置52の双方を移動させて対象工具Txを複数回撮像してもよい。カメラ50と照明装置52とを対象工具Txに対して常にちょうど反対側に配置することで、よりコントラストの高い高品質な画像を取得できる。その場合、照明装置52を対象工具Txの長手方向に移動させるための移動機構を設ける。
【0083】
上記実施形態では、判定処理部98が対象工具Txの不良を判定する構成を例示した。変形例においては、使用前工具Tpおよび使用済工具Tuについて形状再現部94が生成した工具形状データを、出力部82により対比可能に描画表示させてもよい。ユーザがそれら使用前後の工具形状を目視により比較することで対象工具Txが不良工具であるか否かを判定してもよい。
【0084】
上記実施形態では、各対象工具Txについて工具交換前後(つまり機械加工の前後)において撮像を行い、工具形状データを生成した。そして、それぞれの工具について使用前工具形状データと使用済工具形状データとを比較することで、欠損等の異常がないかどうかを判定した。変形例においては、工具形状データ(工具輪郭データ)を生成することなく、工具画像そのものを使用して不良工具の判定処理を行ってもよい。すなわち、各対象工具Txについて使用前工具画像と使用済工具画像とを比較することで、使用済工具Tuが不良工具であるか否かを判定してもよい。
【0085】
上記実施形態では、各対象工具Txを機械加工の直前および直後で撮像し、それらの画像に基づいて使用済工具Tuの状態(不良工具であるか否か)を判定した。つまり、使用直前の撮像画像を「参照画像」として判定の基準に用いる例を示した。変形例においては、工具の初回使用開始前の工具登録時に基本データとして参照画像を格納してもよい。ただし、照明の状態などの撮像環境を同等にしてより正確な形状検出(形状比較)を行うためには、機械加工の直前の画像と直後の画像とを比較するのが好ましい。
【0086】
上記実施形態では、撮像部(カメラ50)を対象工具Txの下方に配置し、照明部(照明装置52)を対象工具Txの上方に配置する例を示した。変形例においては逆に、撮像部を対象工具Txの上方に配置し、照明部を対象工具Txの下方に配置してもよい。カメラのレンズの汚染防止の観点からは、上記実施形態の配置が好ましい。カメラを対象工具の下方に配置すると、例えばその対象工具が使用済工具であった場合、その使用済工具からクーラントが滴り、カメラのレンズを汚染する可能性があるためである。本変形例によればこのような懸念がない。
【0087】
上記実施形態では、マガジン20のポット22を「工具支持部」とし、収容室10において対象工具Txを待機状態で支持する構成を例示した。変形例においては、ATC34(より詳細にはアーム38)を「工具支持部」として機能させてもよい。すなわち、ATCにより工具交換前又は工具交換後の対象工具を支持した状態で、シャッタによる照明部の移動および撮像部による撮像処理を行ってもよい。
【0088】
上記実施形態では、「工具搬送部」としてATC34を例示したが、工具交換機能を有することなく、加工室と収容室との間で工具を搬送する工具搬送機構を設けてもよい。
【0089】
上記実施形態では、工作機械1としてマシニングセンタを例示したが、上記工具の検査技術をターニングセンタや複合加工機にも適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0090】
1 工作機械、2 加工装置、4 工具収容装置、6 カバー、8 加工室、10 収容室、12 操作盤、14 画像処理装置、20 マガジン、22 ポット、26 隔壁、28 開口、30 シャッタ、32 開閉機構、33 ねじ送り機構、34 ATC、35 サーボモータ、38 アーム、40 把持部、50 カメラ、52 照明装置、60 加工制御装置、62 操作制御装置、70 ユーザインタフェース処理部、72 データ処理部、74 データ格納部、76 通信部、80 入力部、82 出力部、84 報知部、90 移動制御部、92 撮像処理部、94 形状再現部、96 工具管理部、98 判定処理部、100 工具情報格納部、102 形状データ格納部、Pa 全体画像、Pb1 部分画像、Pb2 部分画像、Pb3 部分画像、S 撮像推奨領域、T 工具、Ta 撮像対象部、Tp 使用前工具、Tu 使用済工具、Tx 対象工具。
図1
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図11