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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022123924
(43)【公開日】2022-08-25
(54)【発明の名称】消臭・抗菌剤、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/00 20060101AFI20220818BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20220818BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20220818BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20220818BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20220818BHJP
   A01N 59/20 20060101ALI20220818BHJP
   A01N 59/16 20060101ALI20220818BHJP
   A01N 25/08 20060101ALI20220818BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20220818BHJP
   A01N 59/00 20060101ALI20220818BHJP
【FI】
A61L9/00 C
B01J35/02 J
B01J37/04 102
B01J37/08
A61L9/01 B
A01N59/20 Z
A01N59/16 Z
A01N25/08
A01P3/00
A01N59/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021021389
(22)【出願日】2021-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】510099121
【氏名又は名称】A.Cast.Partner’s株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166051
【弁理士】
【氏名又は名称】駒津 啓佑
(72)【発明者】
【氏名】出合 堅市
【テーマコード(参考)】
4C180
4G169
4H011
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180AA07
4C180CC03
4C180EA05X
4C180EA34Y
4C180EA39X
4C180MM10
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169BA04A
4G169BA48A
4G169BB04A
4G169BB20A
4G169BC31A
4G169BC50A
4G169BC75A
4G169BD02A
4G169CA02
4G169CA03
4G169CA17
4G169DA06
4G169FA01
4G169FA02
4G169FB04
4G169FB29
4G169FC02
4G169FC07
4G169FC08
4G169HA02
4G169HA04
4G169HB01
4G169HC02
4G169HC29
4G169HE07
4H011AA02
4H011AA04
4H011BA06
4H011BB18
4H011BC18
4H011DA02
4H011DA13
4H011DC05
4H011DD05
4H011DG03
(57)【要約】
【課題】可視光下、特に長波長域の可視光下でも消臭・抗菌効果が発現され、安定性があることによって耐久性に優れ、かつ製造が容易なので製造コストに優れる消臭・抗菌剤、およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】ペルオキソ酸化チタンと、白金を担持した酸化チタンとの混合液に対して、抗菌作用を有する金属の化合物を混合した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定時間補修せずに用いる消臭・抗菌剤において、
ペルオキソ酸化チタンと、白金を担持した酸化チタンとの混合液に対して、
抗菌作用を有する金属の化合物を混合したことを特徴とする消臭・抗菌剤。
【請求項2】
前記抗菌作用を有する金属の化合物が、銅の化合物であることを特徴とする請求項1記載の消臭・抗菌剤。
【請求項3】
前記ペルオキソ酸化チタンが、前記白金を担持した酸化チタンに対して1~2質量%であることを特徴とする請求項1記載の消臭・抗菌剤。
【請求項4】
液中の酸化銅の濃度が、酸化チタンとのモル比(ti/Cu)で100~10000molであることを特徴とする請求項2記載の消臭・抗菌剤。
【請求項5】
銅を加えた前記ペルオキソチタンに対して、常圧下90~110℃で加熱し、銅担持型の酸化チタンを得ることを特徴とする請求項2記載の消臭・抗菌剤。
【請求項6】
前記ペルオキソ酸化チタンの濃度が、0.8~1.0重量%であることを特徴とする請求項1記載の消臭・抗菌剤。
【請求項7】
前記ペルオキソ酸化チタン7~9割に対して、前記白金を担持した酸化チタンを3~1割で混合することを特徴とする請求項1記載の消臭・抗菌剤。
【請求項8】
より望ましくは、前記ペルオキソ酸化チタン8割に対して、前記白金を担持した酸化チタンを2割で混合することを特徴とする請求項7記載の消臭・抗菌剤。
【請求項9】
一定時間補修せずに用いる消臭・抗菌剤の製造方法において、
ペルオキソ酸化チタンと、白金を担持した酸化チタンとを混合し、
抗菌作用を有する金属の化合物を混合することを特徴とする消臭・抗菌剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消臭・抗菌剤、およびその製造方法に関し、特に一定時間補修せずに用いる消臭・抗菌剤、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、抗菌・消臭剤として、金属系抗菌剤(銀など)、アルコール消毒剤(エタノールなど)、次亜塩素酸水消毒剤、第4級アルキルアンモニウム系消臭剤など様々なものが存在している。
【0003】
これらの抗菌・消臭剤は、それぞれの特性から一定の範囲においては抗菌・消臭効果を奏する。たとえば、金属系抗菌剤の場合には、金属が微生物の栄養源である酵素を酸化分解し、不活化を促進させることによって抗菌・消臭効果を奏し、アルコール消毒剤の場合には、微生物がたんぱく質の塊でできていることから構造を変形させ不活化させることによって抗菌・消臭効果を奏し、次亜塩素酸水消毒剤の場合には、微生物の膜、核を分解することによって抗菌・消臭効果を奏し、第4級アルキルアンモニウム系消臭剤の場合には、ニオイの元を新たなニオイでつつみこむ事で消臭効果を示す。
【0004】
しかし、これらの抗菌・消臭剤は、金属系抗菌剤の場合には、使用後残存するが水に溶けだすなどして定着性に欠ける欠点があり、アルコール消毒剤や、次亜塩素酸水消毒剤の場合には、そもそも持続性がなく繰り返し使用する必要がある欠点があり、第4級アルキルアンモニウム系消臭剤の場合には、人体へ害のあるものとして取り扱いに規制がかかりつつあるという欠点がある。つまり、これらの抗菌・消臭剤は、長時間効果を奏する必要がある場所への対応が難しいという問題があった。
【0005】
そこで、注目されるのが、有機物分解という特性を応用し、消臭・防臭、抗菌・抗ウイルス性機能を用いてあらゆる建材に取り入られている光触媒型消臭・抗菌剤である。たとえば、酸化チタン乃至酸化タングステンなどの結晶性を制御し反応準位を操作することでチタン酸化物を用いた消臭・抗菌剤などである。
【0006】
光触媒型消臭・抗菌剤においては、長時間効果を奏する必要がある場所への対応が可能であるが、光触媒という特性上、光がない環境もしくは著しく光が弱い環境においては、反応が起こりえない、働いたとしても微々たる効果では対策になりえないという問題があった。
【0007】
そこで、光触媒型消臭・抗菌剤に対して、銀や銅に代表される、金属系抗菌剤を添加することによる当問題点を解決しようとする企業が増加した。たとえば、ペルオキソチタン酸溶液とペルオキソ基を含むアナターゼゾルとの混合液と、アンモニア水で銅を錯体化させた銅錯体溶液とを含有する分散液であって、アンモニア水で銅を錯体化させた銅錯体溶液とペルオキソ基を含むアナターゼゾルとを混合し、その後、ペルオキソチタン酸溶液を混合した分散液から構成される抗菌剤が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0008】
また、結晶上に酸素欠陥部分を作る、もしくは初期では窒素、硫黄原子ドーピングまたは金属元素、金属酸化物、金属元素を主とした化学種を酸化チタン上に担持させることもされてきた。
【0009】
これらにより、暗所下でも効果を発現することができ、理論上光触媒、抗菌剤での抑制と継続して効果をはたらかせることができるようになったように思われ、現行、銀や銅の化学種を添加材としてコーティング溶液に加える企業は多々存在することとなった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004-168864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、チタン酸化物を用いた消臭・抗菌剤単体では、可視光での反応性が鈍く、可視光下での効果が薄く、また、そのチタン酸化物に対して窒素原子ドーピング処理などを行うことにより、可視光吸収波長域を拡範することは可能であったが光触媒反応時に電荷分離効率を落としてしまうという問題があった。
【0012】
さらに、同様に金属化学種を加えた状態のものも安定性に乏しく表面に担持させたものが酸化など外的阻害因子により効果が徐々に衰減してしまうという問題があった。
【0013】
これらは一般的に先に記載したようにドーピング、金属元素の担持、結晶構造の変化などを用いて対処している。だが、それらの手法で得られるものは、光吸収反応域の拡大を可能にしたものの、反応効率を低下させてしまい、十分な効果を発揮することができないものが多く存在する。
【0014】
加えて、金属系化学種の担持による光触媒の性能向上は数十年前より採用されている手法である。一般的に銅、鉄、スズ、白金などを酸化チタン上に担持させることで電荷分離効率を向上させる事を狙っている。その際担持させる為に用いられている手法として液中にそれら化学種を添加し、高温高圧の処理を行う事で酸化チタン上粒子状に固溶させる、または単にそれら化学種の水溶液、水和物を添加し、製膜時に光照射の反応とともに酸化チタン粒子状に担持させるといった手法をとられている。これらの方法を用いれば担持させることは可能であるが、前者の場合コストを要し、後者の場合酸化チタン上に定着させることが難しく、実環境上では光、熱、空気などの外的要因で担持させた化合物乃至化学種が脱離するなどの可能性を有している。導入初期と時間が経過したのちでは効果に差が生まれているのが一般的であるという問題もあった。
【0015】
また、室内光に反応する可視光応答型光触媒がいくつか開発されたが、長波長域の光を吸収し反応することが難しいという問題もあった。実用上蛍光灯には紫外線と可視光線(450nm付近)が混在しているが、近年さらに波長の長いLED(Light Emitting Diode)(500~520nm)が主流になりつつある。その場合、光触媒反応が薄くなり、効果が十分でないという問題もあった。
【0016】
さらに、接着剤・バインダーを混合することが従来光触媒材料においては必須であり、その成分が有機物で構成させており製膜後自己分解を誘発させ、膜耐久性には十分に課題が残る状態であるという問題もあった。また、コーティングした後に、製膜定着させるには高温処理をして密着性を高めるなどコストと時間を要する処理が必要であるという問題もあった。金属化合物を担持させることで、可視光域の波長吸収を上げることができるが、その処理には高圧下での製造を行うなどのコストを要するという問題もあった。
【0017】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、可視光下、特に長波長域の可視光下でも消臭・抗菌効果が発現され、安定性があることによって耐久性に優れ、かつ製造が容易なので製造コストに優れる消臭・抗菌剤、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明では上記問題を解決するために、一定時間補修せずに用いる消臭・抗菌剤において、ペルオキソ酸化チタンと、白金を担持した酸化チタンとの混合液に対して、抗菌作用を有する金属の化合物を混合したことを特徴とする消臭・抗菌剤、およびその製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の消臭・抗菌剤によれば、ペルオキソ酸化チタンに、金属を担持させた酸化チタン化合物を混和させたので、電荷分離効率を向上させることができるとともに、反応可能な波長域を拡大できるので、可視光下での消臭・抗菌効果が発現され、かつ安定性を確保することができる。
【0020】
より具体的には、常温硬化型で施工性に優れ、また可視光応答性(520nm付近の可視光線)に富み、暗所でも効果を有する。また、金属化合物を担持させるために、特殊な処理(高温高圧化、液剤の調製など)を必要とせず、より容易な製法で製造することができる。
【0021】
また、接着剤・バインダーは含まれていないため、耐候性耐久性に優れている。サイズの異なる酸化チタン粒子を用いて構成されており、製膜時相互に隙間を埋めるように配位
するため、膜の硬度も高いものとなっている。常温で乾燥・効果をするため特殊な処理を必要としない。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
チタン化合物を塩酸に溶かし込んだ溶液(もしくはアルコキシド系)に塩基の材料(アンモニア系、水酸化物系など)と反応させ中和反応を行う。生成する物質は水酸化化合物であり、ゾルまたはコロイド状の物体である。この状態のチタン化合物に過酸化化合物を添加し、酸素を過剰にチタンに付与する。ペルオキソ(酸素過剰の状態)に編成させ新たな溶液を得る。水酸化チタンの状態から過酸化チタンの状態へと状態を変える。こうして得られた溶液を一定条件下で加熱させる。加熱は、常圧下90~110℃で行う。
【0023】
過剰に結合した酸素原子は脱離し、結晶構造に変化を与えて無定形のアモルファス状態からアナターゼの結晶性を有する酸化チタンを得る。得られた酸化チタンは液中から生成させた結晶をとり、粒子形状を変異な扁平上の鑓型の構造をとる。このときサイズはy(nm)(5≦y≦30)をとり、液状も非常に高い透明性を有する。サイズが小さいため電荷分離効率も高く反応性が非常に高いものである。膜状にした際、50nm以上のものであれば剥離が起こりやすいといわれているが当技術では剥離が起こる可能性も低く、耐久性に富む膜の緻密性の高い分散液となっている。
【0024】
また分散性に関して補足すれば、原料合成時に使用した溶液がアンモニア化学種であれば、液中に残留しており、それらがペルオキソチタン及び得られる酸化チタンの結晶へ配位することで、静電反発をとり化学的な安定性を有するようになる。また粒径が非常に細かい場合液に自然分散するといわれていることから、当該粒子も自然分散していることが推定される。
【0025】
初期の紫外光のみへの反応も酸化チタン、チタン種の結晶固形物から粉砕を繰り返し液中分散という処理をとることにより効果が容易に出たため広く波及した点がある。粉砕技術分散技術が向上し、液中分散させる酸化チタンの粒形も細かく制御できるようになった。このことから結晶構造に改良が見られ反応可能波長域を少しずつ拡大することができた点がある。
【0026】
液中での光触媒化学種の粒形粒子サイズも大きく影響を及ぼす。粉体からの液調製では最終粒径に限界があること、粉砕した粒子を液中に分散させる必要があること、密着性に劣るため種々バインダーを要するなどの問題を孕む。当技術においては次の技術を応用したものでもあり、液中から酸化チタン粒子を結晶化分散させようとするものである。
【0027】
酸に溶かし込んだチタン化合物と塩基性化合物との反応を用いて生成するペルオキソチタンを主とした酸化チタン化合物がそれらの課題を克服する。平均粒形y(nm)(5≦y≦30)で扁平状の鑓型構造の酸化チタン分散液は、透明性が高いだけでなく電荷分離効率も高く可視光波長域の光を吸収し反応性を示す。また粒子が細かいこと、成分は酸化チタンと水、および添加する金属化合物平均粒形x(nm)(5≦x≦30)で構成されているため、製膜時に緻密で純粋な酸化チタンの層を形成することで光触媒活性の高いものを可能とした。つまり、粒子径の異なる酸化チタンが、粒子径サイズが大きい白金化合物処理酸化チタンに、粒子径サイズが小さいペルオキソアナターゼ酸化チタンが隙間を埋めるように基材上に製膜する。これにより、いずれか単体のみでの膜ではそれぞれの未十分である、可視光での応答性、密着性、耐久性が向上することとなる。
【0028】
加えてこうして生成した酸化チタン(ペルオキソ酸化チタンと呼ぶことにする)と別の酸化チタン化合物を混和させる事により反応可能な波長域を拡大する。後者の酸化チタンは白金を担持しており、こちらも同様に可視光での反応を見せる。
【0029】
当酸化チタンの平均粒形はz(nm)(50≦z≦100)である。前者と後者の酸化チタンを6:4~9:1の範囲で混合させることでそれぞれの特質を生かした効果を発現することができる。望ましくは8:2の割合で混和させた状態で透明性を保持しつつ高い光触媒活性を発現し得る。
【0030】
ペルオキソ系酸化チタン(粒径小)と白金担持型酸化チタン(粒径大)
前者が6、後者が4の場合:後者の割合が多い場合溶液にした際沈殿がおこり、分散性に欠ける
前者が7、後者が3の場合:効果は十分発揮できるが、分散性に少し劣り、安定性に欠ける
前者が8、後者が2の場合:分散性及び十分な効果が望める
前者が9、後者が1の場合:後者の割合が少ない場合、十分な可視光応答性が望めない
【0031】
また白金担持型酸化チタンの粒子形状は前者のそれと異なり多面体型の構造をとる。鑓型の酸化チタンと多面体型の酸化チタンを混ぜ合わせた材料を用いて製膜させると粒子の大きい酸化チタンと粒子の小さい酸化チタンとが隙間埋めるように配位する。ペルオキソ型酸化チタンと白金担持型の酸化チタンの混合方により反応順位を向上させまた電荷分離効率の改善とともに反応可能な波長域を拡大することができる。また上記2種の酸化チタンは別工程でそれぞれ生成されており、混和させる際は単に両者を反応層で攪拌しながら混和させるだけでよくコストを抑えて生成することが可能である。さらに当技術を可能とするために、後者の酸化チタンは市販のそれを用いてもよく、白金の化学種もこれを限定しない。なお、ペルオキソ酸化チタンが、白金を担持した酸化チタンに対して1~2質量%であることが望ましい。また、ペルオキソ酸化チタンの濃度は、0.8~1.0重量%であることが望ましい。効果の確保と、使用時の施工性(意匠性)を確保するためである。
【0032】
まず暗所下、微弱光下での抗菌抗ウイルス性、防臭性を図るために金属系化学種を混和させる方法を同様にとる。しかしその添加の方法、最終的には酸化チタン上へ担持させることを狙う方法として以下方法を採用し当技術を可能なものにする。使用する抗菌系金属の化学種は単体、イオン状態、錯体化合物、酸化物、ハロゲン化合物など、望ましくは溶液として存在し、電離し混合する酸化チタン分散液中で遊離するもの。単体及び他化合物系状態では抗菌効果を弱まることながら、光触媒反応を阻害する危険性のある状態のためイオン状態、錯体状態のものがなおよい。使用する金属種としては、銀、銅、金、白金、鉄などの中から1種乃至2種選択し使用する。抗菌スペクトルの高い銀及び比較的安価に求められる銅を組み合わせることがよい。
【0033】
前述ペルオキソ化合物を調整時に金属系化学種を混和させ無定形のチタン間に金属系化学種を分散乃至酸化チタン上へ配位させる。調製した溶液を一定強度乃至照度の光を当てることで分散しているチタン上に担持させる。さらに生成したコーティング剤を基材に塗布し製膜後に光照射することでチタン上に凝固に担持させる。
【0034】
製造工程は以下の通りである。
四塩化チタン水溶液とアンモニア水溶液との合成
1.水酸化チタンの洗浄精錬する
2.過酸化水素水及び銅系化合物の添加し、養生期間を経てペルオキソチタン酸溶液を生成する
3.光を照射して銅系化合物のチタン上に担持する
4.熱改質工程を経て、銅系化合物担持型酸化チタンを生成する
【0035】
ペルオキソチタン、上記酸化チタンの混合物の生成
1.ペルオキソチタン型酸化チタンと白金担持型酸化チタンとを混合する
2.銀イオン溶液の添加によって銅系化合物担持型ペルオキソチタン型酸化チタン及び白金担持型酸化チタンとの混合物からなる光触媒コーティング材を生成する
製造工程の各工程を詳説すると、水酸化チタンを精成し、過酸化水素を加える際に、過酸化水素溶液に銅系化合物との混合液を作る。
【0036】
過酸化水素の添加量は合成時に使用した四塩化チタンとの体積比添加する。この際過酸化水素と銅系化合物が反応し酸化銅の生成を促進する。この際生じる酸化銅には酸化銅(I)、酸化銅(II)、酸素が過剰に配位したペルオキソ銅の状態をとる。添加後過酸化水素と水酸化チタンの反応によりペルオキソチタンが生成するがこのペルオキソチタンは結晶性をもたないアモルファスの化合物である。そのため添加された銅はペルオキソチタン間に分散され表面上に担持されやすい状態で点在することができ、養生期間を経るとともに安定性を確保していく。なお、酸化銅の濃度が、酸化チタンとのモル比(ti/Cu)で100~10000molであることが望ましい。少ないと効果が薄く、多すぎると沈殿を引き起こしてしまうからである。
【0037】
さらにペルオキソチタンを熱改質させることで酸化チタンの結晶へと転移するが、熱改質後の酸化チタンまたペルオキソチタンと熱改質後の混合液に一定量の光を照射させ、それぞれの酸化チタン上へ金属化学種を担持させることができる。上記の方法で溶液調整後、製膜後一定照度の光を照射させることにより膜上で酸化チタン粒子により強固に銅系化合物を担持させることができる。この時の照源は蛍光灯もしくはLEDを用いたほうがよい。可視光線を用いることで実環境での施工時のコーティング膜乾燥時間で自然と酸化チタン上へ固溶していくことを望める。また紫外光を用いて照射してもよいが、実環境で意図的に紫外光照射させるにはコストが大きすぎるため可視光を用いるほうがよい。使用する照度500~6000(lux)で照射時間は12時間以上光照射させること。これ以上の照射で、担持状態になった金属化学種は酸化チタンのコーティング膜の光触媒反応を起こすため、時間を限定する必要もない。また最後に銀系抗菌剤を添加することで通常光下、暗所下での抗菌性を高めることが可能である。なお、添加した銅を成膜後の光照射で酸化チタンを担持させる。また、粒径の異なる酸化チタンを使用すること、担持させた銅を使用することで、電荷分離効率を向上させることができる(細かい粒径のチタンは活性が高い)。
【0038】
こうして生成した酸化チタン皮膜は抗菌性効果を有する金属化合物が光が当たらない環境下でも抗菌性を有し、光があたる環境下では光触媒効果により抗菌性を有する。
【0039】
当技術を用いて生成させた光触媒材料を用いてコーティング材として用いる場合、また各部材・建材に加工を施すことで利用することができる。
【0040】
いずれにしても基材表面に膜を作り、効果を発現させる膜機能性材料ということになる。加工を行ない乾燥させれば膜が生成し効果を発揮するようになるがその乾燥方法は以下の通りとなる。
【0041】
水系の材料で構成されており、基本成分としては酸化チタン・銀・銅・白金、溶媒として水である。溶媒の水を除けば液中の構成比率も計1~3%程度であり大部分が溶媒で構成される。そのため揮発性成分のあるものが含まれている訳ではないが、製膜後酸化チタンが製膜し、水分が蒸発することで乾燥が起こる。その際にチタン同士が密になりより緻密な膜を形成するようになる。平均粒形が非常に細かいことから生成する膜も表面積の高い非常に緻密で強度の高いものとなる。
【0042】
一般的な酸化チタン系光触媒コーティング剤では、粒径の大きいものを採用しており、おおよそ100nm以上の粒形のものが膜状に現れればその部分が局所的にクラックし膜剥離の状態を引き起こす可能性がある。しかし当技術による分散液は、液中で分散する酸化チタンは溶け込んでいるアンモニウムイオンがチタンに配位し、その静電反発による粒子間で適正な距離を保っている。この原理により液中で二次凝集三次凝集がおこりにくく製膜後もより小さな粒子が膜を作り剥離等起こりにくい設計になっている。
【0043】
部材及び建材に加工することで膜を作り光触媒効果により、抗菌抗ウイルス効果また、防臭ニオイ分解効果を期待できる。望ましくは、効果及び意匠性を考慮し、0.08μm~0.20μmの膜を作ることが出来れば十分な効果を期待できる。
【0044】
なお、ペルオキソ系酸化チタンの可視光応答性を補強するために別の溶剤を混合することにしたが、その際候補として下記数種の酸化チタンや、酸化タングステンを挙げた。
1.白金担持型酸化チタン
2.鉄担持型酸化チタン
3.典型元素ドープ型酸化チタン
4.酸化タングステン
【0045】
順にペルオキソ系酸化チタンとの相性を説明する。
白金担持型酸化チタンは、上記4種の可視光応答型光触媒のなかで一番安定性に優れ、なおかつ可視光下での反応性が補強できる材料である。
【0046】
鉄担持型酸化チタンは、鉄がペルオキソ系酸化チタンとの相性が悪く混合した際、鉄が反応し沈殿物を容易に生成した。ペルオキソ系酸化チタンの分散性を保つアンモニウムイオンを反応し、別の化学種を生成することで構造安定性を損ねていることが推定される。また沈殿を生成すれば、分散性が劣ることに加え、酸化チタン同士が凝集し、使用上剥離を容易に引き起こすようになるため実用上使用は難しいと考えられる。
【0047】
典型元素ドープ型酸化チタンは、それ単体で見ても可視光域での吸収は非常に高い。だがしかし吸収性は改善されているものの、反応性はそれほど向上していない。典型元素が光吸収端になり、光触媒反応に上手く転移できていないためと考えられる。ペルオキソ系酸化チタンとの相性は沈殿が起こる等の事象は発生しにくいが、分散剤または接着剤が有機系のそれであり沈殿を起こす可能性は十分にある。
【0048】
酸化タングステンは、可視光下での反応性は十分に確保されているので使用に問題はない。しかしそれ自体が非常に高価なものであり、実用上コスト面での折り合いがつけば適用が可能である。現時点においては、実用上ペルオキソ系酸化チタンとの相性を考慮すれば、より安価で安定性に富み、可視光下での効果が確保できる酸化チタンが選ばれる。
【0049】
また、金属単体での使用は総合的に見て消臭・抗菌効果の増大を見込めない。様々な金属化合物があるが、取り扱いやすい塩化物との金属化合物を取り上げる。
【0050】
ペルオキソ系酸化チタンを使用しているのは、分解活性が高く常温硬化型で汎用性が高い光触媒コーティング剤であるからであり、光が弱い、暗所での効果を求められているところ抗菌剤の銀・銅を使用した。
【0051】
ペルオキソ系酸化チタンのみでも可視光域450nmまでの反応性を示していたが可視光を利用した室内での需要が高まってきた状況において、蛍光灯がもつ470~490nm前後の光に反応できるように対応する必要があった。そこで白金担持型の酸化チタンを混合することで効果を臨んだ。蛍光灯の中には紫外線も含まれている。ペルオキソ系酸化チタンは紫外光で抜群の分解性能を示すため、2種の酸化チタンがそれぞれ蛍光灯で光触媒効果をだすことを狙った。
【0052】
蛍光灯からLEDへの移り変わりに伴い光触媒材料において反応波長の拡範が求められた。LEDは一般的に使用されるもので480~510nm付近の波長の光を有するが、この付近の波長の光に対してペルオキソ系酸化チタンと白金担持型の酸化チタンの混合だけではカバーしきれなくなった。そこで銅系化合物を添加乃至酸化チタン上へ担持させることでより高波長の光への反応を臨んだ。
【0053】
銅は青色の吸光を示し波長として500~550nm付近の光を吸収する性質を持つ。酸化チタン上に存在する銅が当波長付近の光を吸収することで、高波長域での光触媒反応を補助する役割を有する。白金担持型の酸化チタンを使用する意味や、銅担持のみでの処理にしない意味は、以前はより高波長域への光触媒反応を臨んでいたが、分解能としてニオイ・ガスにたける性質を持つ。ペルオキソ系酸化チタンは菌・ウイルスなどの細菌類への効果が高いため。お互いを補正する目的を持ち混合して使用している。加えて、粒径の異なる酸化チタンを使用することで隙間なく積層・製膜でき高い光触媒効果を臨める。