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特開2022-123953図書館の所蔵本返却補助台車および追従台車
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022123953
(43)【公開日】2022-08-25
(54)【発明の名称】図書館の所蔵本返却補助台車および追従台車
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/137 20060101AFI20220818BHJP
【FI】
B65G1/137 G
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021021433
(22)【出願日】2021-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000191353
【氏名又は名称】新明工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074273
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173222
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100151149
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 幸城
(72)【発明者】
【氏名】濱嶋 竜也
(72)【発明者】
【氏名】落合 浩之
【テーマコード(参考)】
3F522
【Fターム(参考)】
3F522AA05
3F522BB13
3F522BB35
3F522CC05
3F522DD03
3F522DD04
3F522DD05
3F522DD23
3F522DD32
3F522EE15
3F522GG02
3F522GG07
3F522GG09
3F522HH18
3F522JJ02
3F522LL42
(57)【要約】
【課題】 図書館の利用者の邪魔になることなく職員による書籍の運搬を補助することができる簡素で実用的な図書館の所蔵本返却補助台車および追従台車を提供する。
【解決手段】
職員8の手元の位置にて書籍4を載置可能な書籍載置棚11と、この書籍載置棚11に載置される各書籍4に添付されたIDタグ10から書籍コードを読み取る書籍コード読み取り手段12と、読み取った書籍コードを用いてサーバ6に接続して各書籍の収容場所を検索し取得する収容場所検索手段13と、各収容場所L1,L2…を巡回する走行ルートRに沿って移動する共に収容場所L1,L2…で一旦停止できる自立走行装置14と、書籍載置棚11に載置された書籍の収容場所L1,L2…に移動させるための移動開始入力手段15とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保管されている各書籍をそれぞれ所定の収容場所に収容すると共に間に通路を形成するように配置された複数の本棚を備えてなる図書館において、図書館内の通路を自走可能な図書館の所蔵本返却補助台車であって、
職員の手元の位置にて書籍を載置可能な書籍載置棚と、
この書籍載置棚に載置される各書籍に添付されたIDタグから書籍コードを読み取る書籍コード読み取り手段と、
読み取った書籍コードを用いてサーバに接続して各書籍の収容場所を検索し取得する収容場所検索手段と、
各収容場所を巡回する走行ルートに沿って移動する共に収容場所で一旦停止する自立走行装置と、
書籍載置棚に載置された書籍の収容場所に移動させるための移動開始入力手段とを備えることを特徴とする図書館の所蔵本返却補助台車。
【請求項2】
前記自立走行装置は、
任意の方向に移動し停止する駆動力を供給する駆動部と、
図書館内の現在位置を取得する現在位置取得部と、
各書籍の収容場所と現在位置の関係および図書館内の通路マップを用いて書籍載置棚にある各書籍の収容場所を巡回するように走行する走行ルートを検索するルート検索手段と、
周囲の障害物を検知する距離センサと、
走行ルートに沿って走行すると共に障害物を避ける回避行動を制御し、各書籍の収容場所において停止させる走行制御部とを備える請求項1に記載の図書館の所蔵本返却補助台車。
【請求項3】
初期動作として前記自立走行装置を用いて未知の図書館内の通路を移動させながら、前記現在位置取得部によって取得した現在位置および前記距離センサによって計測した現在位置における通路幅の計測値を用いて図書館内の通路マップを作成する通路マッピング手段を有し、前記自立走行装置は通路マップにおいて確認出来る通路の端を衝突回避の為の必要最小限の間隔をあけて走行するものである請求項2に記載の図書館の所蔵本返却補助台車。
【請求項4】
少なくとも前記書籍コード読み取り手段は前記通信部によって接続される端末に搭載されたカメラ、および、端末の演算処理部によって実行可能であって前記カメラによって撮像された画像から書籍コードを読み出すエンコードプログラムであり、前記移動開始入力手段は端末の演算処理部により実行可能なプログラムによって端末の画面に表示されるボタンである請求項1~請求項3のいずれかに記載の図書館の所蔵本返却補助台車。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れかに記載の図書館の所蔵本返却補助台車に追従する追従台車であって、
職員の手元の位置にて書籍を載置可能な書籍載置棚と、
前方の所蔵本返却補助台車の通信部と通信することによりその走行ルートを取得する通信部と、
この走行ルートに沿って走行すると共に所蔵本返却補助台車に対して所定の距離を開けて走行または停止する追従走行装置とを備え、
この追従走行装置は、少なくとも
任意の方向に移動し停止する駆動力を供給する駆動部と、
図書館内の現在位置を取得する現在位置取得部と、
周囲の障害物を検知する距離センサと、
前記自立走行装置の走行ルートに沿って走行すると共に障害物を避ける回避行動を制御し、各書籍の収容場所において停止させる走行制御部とを備えることを特徴とする追従台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、図書館の所蔵本返却補助台車および追従台車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、図書館では、利用者が図書館内で書籍(本)を閲覧可能であり、閲覧後の書籍は本棚に返却される。加えて、図書館は貸出期間を決めて書籍を貸し出すこともある。貸し出された書籍は、返却期間(貸出期限)が来るまでに返却され、図書館の職員は返却された書籍を所定の本棚の所定の位置まで運んでいき、所定の収容場所に収容していたが、返却される書籍が多いときには、その全てを持って図書館内の所定の本棚に収容するためには重い書籍を運搬する必要があり、それだけ職員の労力を要するという問題があった。
【0003】
そこで、職員は返却された書籍を手押し台車などに載せて返却する場所まで運んでいき、収容していた。ところが、一般的な台車の荷台の高さはフロアから数十~百数十mm程度なので、職員は重い書籍を台車に載置する場合にも、台車から拾い上げるときにも腰をかがめて行う動作を必要としており、それだけ、職員の作業負担が大きいという問題があった。また、台車を何かにぶつかることなく押して移動させるためにも職員の労力を消費していた。
【0004】
加えて、図書館の職員は返却された全ての書籍を収容するための本棚を把握しきれていないことがあり、本の返却ができないという問題があった。そこで、近年では、書籍にIDタグを添付することが行なわれている。すなわち、IDタグ内に書籍の収容場所を書き込むことにより、パソコンや移動端末(タブレット端末)などを用いてこの書籍の収容場所を検索できるようにすることも考えられている。
【0005】
そこで、例えば特許文献1のように、図書館における各本棚に対する書籍の出納業務を大幅に機械化するロボットが発明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-233405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、引用文献1の発明のようなロボットは本棚に対する書籍の出納を行なう為の機構は大がかりにならざるを得ず、ロボットの大型化が避けられなかった。このため、ロボット稼働の為の広いスペースを必要としており、図書館にある本棚から自分の目で選び、自分の手にとって館内で閲覧し、その後元の収納位置に返却する利用者にとって大がかりなロボットの存在は邪魔であった。
【0008】
加えて,本棚に対する書籍の出納を行う機構は立体的な移動距離の長い搬送を行うだけでなく、傷みやすい書籍を傷つけることなく把持したり、本棚の収容位置の様子を確認したりしながら他の書籍も傷つけることなく収容する繊細な動作を必須とするものであるから、それだけアーム部の構造の複雑化と高度な制御を必要としており、必然的に機構が大型化することに加えて製造コストが跳ね上がるという問題もあった。
【0009】
本発明は上述の事柄を考慮に入れてなされたものであり、図書館の利用者の邪魔になることなく職員による書籍の運搬を補助することができる簡素で実用的な図書館の所蔵本返却補助台車および追従台車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、第1発明は、保管されている各書籍をそれぞれ所定の収容場所に収容すると共に間に通路を形成するように配置された複数の本棚を備えてなる図書館において、図書館内の通路を自走可能な図書館の所蔵本返却補助台車であって、
職員の手元の位置にて書籍を載置可能な書籍載置棚と、
この書籍載置棚に載置される各書籍に添付されたIDタグから書籍コードを読み取る書籍コード読み取り手段と、
読み取った書籍コードを用いてサーバに接続して各書籍の収容場所を検索し取得する収容場所検索手段と、
各収容場所を巡回する走行ルートに沿って移動する共に収容場所で一旦停止する自立走行装置と、
書籍載置棚に載置された書籍の収容場所に移動させるための移動開始入力手段とを備えることを特徴とする図書館の所蔵本返却補助台車を提供する(請求項1)。
【0011】
前記構成の図書館の所蔵本返却補助台車は、利用者から返却された書籍を職員の手元の位置に形成された書籍載置棚に載置することができるので、職員は重い書籍であっても楽な姿勢で無理することなく書籍載置棚に載置することができる。なお、職員の手元の位置とは高さにおいて一般的な職員が腰をかがめたり,背伸びをしたり、大きく体幹を変形させたりせずに、肩から先の手を動かすだけで、載置したり拾い上げたりできる高さの棚であることを示し、具体的には床からの高さが600mm~1300mm程度の高さであり、より好ましくは800mm~1000mm程度の高さであるときに、作業負担を小さくすることができて有用である。
【0012】
所蔵本返却補助台車は、停止時には、前記書籍載置棚を職員の手元の高さに調整された位置に持ち上げ、走行時には書籍載置棚を下限の高さまで降ろす、昇降装置を備える場合には、停止時における作業性の向上と走行時の安定性の向上を両立させることも可能となる。
【0013】
書籍コード読み取り手段は書籍載置棚に載置する書籍に添付されたIDタグを読み取るものであり、例えばバーコードまたは二次元コードのリーダであり、走査させながらレーザ光を照射するレーザ光照射部とバーコードまたは二次元コードからの反射光を受信する受信部と受信した反射光を解析して書籍コードに変換するデコーダとを備えるものであることが考えられる。なお、IDタグとして二次元コードを採用した場合、書籍コード読み取り手段は二次元コードを撮像する撮像手段と、撮像した画像を解析して書籍コードを得るデコーダとを備えるものであってもよい。さらに、IDタグとしてRFID(Radio Frequency IDentifier)による近距離無線通信を採用した場合のように、電磁波を介して書籍コードを得るIDタグを備えるものであってもよい。
【0014】
書籍コード読み取り手段は書籍載置棚に据え付けることにより、これに書籍を載置する動作を行うときに同時に書籍コードを読み取ることができる。また、IDタグとしてRFIDタグを採用するときには書籍載置棚上の書籍のRFIDタグとの通信が確立できた時点で書籍コードを自動的に読み取ることも可能である。他にも、書籍コード読み取り手段は無線通信を用いた通信部によって接続された情報端末のプログラムによって実現されたものであってもよい。
【0015】
何れの方法であっても読み取った書籍の書籍コードは、書籍載置棚に搭載された書籍の書籍リストとして保存されることはいうまでもない。
【0016】
収容場所検索手段は図書館の収容場所データベースを有するサーバに接続可能な通信プロトコルによる無線通信を行うものであり、図書館内の無線LANを構築している場合には、この無線LANに接続される無線アダプタと、この無線LANを介してサーバにアクセスして収容場所データベースを参照することにより書籍コードに紐付けされた書籍の収容本棚を含む収容場所(棚位置)の情報を引出す収容場所検索プログラムとからなる。
【0017】
また、無線LANに接続可能な情報端末を用いる場合には、無線LANを介して所蔵本返却補助台車に接続可能な情報端末を用いて必要な情報処理を行うことにより、情報端末を所蔵本返却補助台車の一部として用い、所蔵本返却補助台車本体の構成を簡略化することも可能であることはいうまでもない。
【0018】
なお、収容場所データベース(本棚を特定する本棚情報と収容場所の水平方向の位置を含む情報のデータベース)は各所蔵本返却補助台車に記憶させることが好ましく、この場合の通信部は所蔵本返却補助台車内の演算処理部から収容場所データベースを収容したメモリへの通信部である。
【0019】
また、書籍載置棚に搭載されたすべての書籍の収容場所は、これらの書籍を対応する本棚に収容させるための巡回ルートを形成するために、収容場所(棚位置)リストとして保存されることが好ましい。
【0020】
移動開始入力手段は例えば職員によって操作される移動開始ボタンであり、書籍コードの読み取りが完了し、書籍載置棚への書籍の載置が終わった後で押されることにより、書籍の収納場所までの移動を開始する動作を開始するためのものである。なお、職員は一つの書籍を書籍載置棚に載置したらすぐに移動を開始させてもよいが、複数の書籍の書籍コードを読み取って、複数の書籍を載置してから移動を開始させる場合、特定の書籍を選択して収納する順番を職員からの指示で指定してもよい。また、書籍載置棚にある書籍の収容場所に到着したら停止させることにより、職員に該当する書籍の本棚への収容を促すことができる。
【0021】
職員は書籍の収容場所に到着した所蔵本返却補助台車から該当する書籍を本棚に戻した後、移動開始入力手段を用いて再び移動開始の指示を入力することにより、所蔵本返却補助台車はこの収容位置に収容される書籍について書籍載置棚に搭載された書籍リストおよび収容場所リストから削除して、残った書籍リストのおよび収容場所リストの中から現在位置に近い書籍の収容場所への移動を再開する。なお、残った収容場所リストの中に記録されている書籍の収容場所のうち同じ本棚のものがあれば先にその収容場所に移動することが好ましい。
【0022】
前記自立走行装置は、任意の方向に移動し停止する駆動力を供給する駆動部と、図書館内の現在位置を取得する現在位置取得部と、各書籍の収容場所と現在位置の関係および図書館内の通路マップを用いて書籍載置棚にある各書籍の収容場所を巡回するように走行する走行ルートを検索するルート検索手段と、周囲の障害物を検知する距離センサと、走行ルートに沿って走行すると共に障害物を避ける回避行動を制御し、各書籍の収容場所において停止させる走行制御部とを備える場合(請求項2)には、走行ルートに沿った走行を行うと共に、多数の障害物が存在する環境においても安全に移動することができる。
【0023】
駆動部には種々の形態が考えられるが、例えば互いに90°異なる方向に配置されて回転方向に動力を伝達し、回転方向に対して直角方向には平行移動するように外周に多数のローラが形成された4つの車輪と、これらの車輪のそれぞれを回転させる駆動モータを備えるものであることが好ましい。
【0024】
現在位置取得部は、例えば車輪の回転数と移動方向を用いて現在位置を算出する、いわゆるオドメトリによる自己位置推定を用いることができる。なお、オドメトリによる自己位置推定に加えて、ジャイロセンサを用いた自己位置推定、台車の前後に設けた距離センサの計測距離による自己位置推定を用いて互いに補完しあうことにより、さらに正確な現在位置を取得できるようにすることが好ましい。
【0025】
ルート検索手段は現在位置と各書籍の収容場所の比較を行い、通路マップを用いて最も近い位置の収容場所まで移動する走行ルートを生成するものである。とりわけ、同じ並びの本棚に収容する書籍は連続して収容できるようにすることが好ましい。また、生成された走行ルートも所蔵本返却補助台車内に保存されることが好ましい。
【0026】
距離センサは所蔵本返却補助台車の周囲にある障害物との距離の分布を広い角度で計測する距離計であることが好ましく、例えば人体に害の無い程度の強度のレーザ光を走査線状に照射して障害物に跳ね返ってきた光の到達時間で距離を測るものであることにより、正確かつ迅速に距離を計測して衝突を確実に防止することができる。また、距離センサは所蔵本返却補助台車の前後両端に設けて、全方位の障害物との距離を計測可能とするものであることが好ましい。
【0027】
なお、距離計はレーザ光やマイクロ波を用いるものが簡素でありながら正確な測定が行えるために有用であるが、距離計として超音波を用いるもの、複数のカメラで撮像した映像を解析して距離を求めるものなど種々の変形のものを用いてもよいことはいうまでもない。
【0028】
走行制御部は前記走行ルートに沿って走行するように前記駆動部を制御するものであるが、走行ルート上に障害物がある場合には障害物を避ける回避行動をとるように制御するものであることにより安全な移動を可能としている。
【0029】
初期動作として前記自立走行装置を用いて未知の図書館内の通路を移動させながら、前記現在位置取得部によって取得した現在位置および前記距離センサによって計測した現在位置における通路幅の計測値を用いて図書館内の通路マップを作成する通路マッピング手段を有し、前記自立走行装置は通路マップにおいて確認出来る通路の端を衝突回避の為の必要最小限の間隔をあけて走行するものである場合(請求項3)には、実際の図書館の通路の状況に合わせて移動することが可能であると共に、可能な限り他の利用者の通行の妨げになることなく移動できる。
【0030】
なお、通路マッピング手段は通常の運用時にも作動してもよく、この場合には通路マップは時々刻々と変化する状況に合わせて変更されることにより、周囲の状況に柔軟に対応することが可能となる。
【0031】
少なくとも前記書籍コード読み取り手段は前記通信部によって接続される端末に搭載されたカメラ、および、端末の演算処理部によって実行可能であって前記カメラによって撮像された画像から書籍コードを読み出すエンコードプログラムであり、前記移動開始入力手段は端末の演算処理部により実行可能なプログラムによって端末の画面に表示されるボタンである場合(請求項4)には、使用者の手元で操作可能な端末を用いて入力操作が可能であり、それだけ操作が容易となる。
【0032】
また、書籍コードを読み取るための画像を撮像するカメラ、および撮像した画像から書籍コードを読み取るための高度な演算処理を行なうエンコードプログラムは、一般的な情報端末に備わる機能を用いて代用でき、それだけ所蔵本返却補助台車の構造を軽量かつ簡素にすることができ、図書館の所蔵本返却補助台車の製造コストの削減を図ることができる。
【0033】
第2発明は、図書館の所蔵本返却補助台車に追従する追従台車であって、職員の手元の位置にて書籍を載置可能な書籍載置棚と、前方の所蔵本返却補助台車の通信部と通信することによりその走行ルートを取得する通信部と、この走行ルートに沿って走行すると共に所蔵本返却補助台車に対して所定の距離を開けて走行または停止する追従走行装置とを備え、この追従走行装置は、少なくとも任意の方向に移動し停止する駆動力を供給する駆動部と、図書館内の現在位置を取得する現在位置取得部と、周囲の障害物を検知する距離センサと、前記自立走行装置の走行ルートに沿って走行すると共に障害物を避ける回避行動を制御し、各書籍の収容場所において停止させる走行制御部とを備えることを特徴とする追従台車を提供する(請求項5)。
【0034】
前記追従台車を用いることにより、図書館の所蔵本返却補助台車の書籍載置棚に載置しきれなかった書籍を追従台車の書籍載置棚に載置して運搬することが可能となる。なお、追従台車の書籍載置棚は図書館の所蔵本返却補助台車の書籍載置棚と同様に、職員の手元の位置に形成された高さの棚であり、職員による書籍の収受を容易としている。また、追従台車の書籍載置棚に載置した書籍も図書館の所蔵本返却補助台車によって管理されるものであり、その収容場所は前記ルート検索手段による走行ルートの検索に用いられる。
【0035】
前記通信部は前方の所蔵本返却補助台車の通信部と通信することにより、所蔵本返却補助台車の走行ルートを取得することができる。したがって、追従台車は先行する台車の走行ルートに沿って走行することにより、目的とする収容場所まで追従するように移動可能であり、図書館内を縦に行儀よく並んで移動することにより、他の利用者の移動の妨げとなりにくくなるだけでなく、動作に愛嬌があるため利用者を和ませることができる。
【0036】
追従走行装置の構成は基本的に図書館の所蔵本返却補助台車の自立走行装置の構成とほぼ同じであり、その駆動部は、例えば互いに90°異なる方向に配置され、外周に多数のローラが形成された4つの車輪と、これらの車輪のそれぞれを回転させる駆動モータを備えるものであることが好ましい。
【0037】
現在位置取得部は、例えば車輪の回転数と移動方向を用いて現在位置を算出する、いわゆるオドメトリによる自己位置推定、ジャイロセンサを用いた自己位置推定、台車の前後に設けた距離センサの計測距離による自己位置推定を用いて互いに補完しあうことにより、さらに正確な現在位置を取得できるようにすることが好ましい。
【0038】
距離センサは所蔵本返却補助台車の周囲にある障害物との距離の分布を広い角度で計測する距離計であることが好ましく、例えば走査線状にレーザ光を照射して障害物との距離を測るものであることが好ましい。
【0039】
走行制御部は前記走行ルートに沿って走行するように前記駆動部を制御するものであるが、走行ルート上に障害物がある場合には障害物を避ける回避行動をとるように制御するものであることが好ましい。また、前方の台車との間には所定の距離を置いて走行し、停止する。
【0040】
したがって、職員は所蔵本返却補助台車の書籍載置棚に書籍が載せきれない場合に、追従台車を用いてその書籍載置棚に書籍を載置することができるので、一度の巡回で多数の書籍を本棚に返却することができる。また、複数の追従台車を用いることも考えられるが、その場合は先行する追従台車に後続する追従台車が追従することにより、同じ、走行ルートに沿って移動することができる。
【0041】
上述したように、第1発明の図書館の所蔵本返却補助台車によれば、職員は重い書籍を持ち歩くことなく書籍載置棚に載置することにより、所蔵本返却補助台車がこの書籍の収容場所まで移動して、書籍を本棚に収容することができる。自立走行装置は距離センサによって衝突回避を行なうものであるから安全に移動できる。また、収容場所に到着した所蔵本返却補助台車から該当する書籍を本棚に戻した後、移動開始入力手段を用いて再び移動開始の指示を入力することにより、次の書籍の収容場所まで移動させることができる。これを、書籍載置棚上の書籍の数だけ繰り返すことにより、全ての書籍を本棚に収容することができる。
【0042】
第2発明の追従台車によれば、図書館の所蔵本返却補助台車と同じ走行ルート上を追従するように移動させることができるので、この追従車両の書籍載置棚にも書籍を載置可能であるから、より多くの書籍を一度に運ぶことができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本発明の実施形態に係る図書館の所蔵本返却補助台車を用いる図書館の構成を示す平面図である。
図2】前記所蔵本返却補助台車の稼働環境を説明する図である。
図3】図書館の通信環境と所蔵本返却補助台車の構造および動作を説明するブロック図である。
図4】前記所蔵本返却補助台車の構成を示す透視側面図である。
図5】前記所蔵本返却補助台車の構成を示す透視斜視図である。
図6】所蔵本返却補助台車の動作を概略的に説明する図である。
図7】第2実施形態の所蔵本返却補助台車の追従台車の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、図1図6を用いて、本発明の第1実施形態にかかる図書館の所蔵本返却補助台車1の構成および動作を説明する。
【0045】
図1に示すように、本実施形態の所蔵本返却補助台車1は、複数の本棚2(2A~2T)を配置する図書館3に配置されて、利用者から返却された書籍4を規定の本棚2に返却するための補助を行うものである。
【0046】
前記本棚2は間隔を開けて配置されることにより、間に通路5を形成するものであり、この図書館3には、各本棚2A,2B…に関する情報として、少なくとも各書籍4(4A,4B…)の収容場所L1、L2…を記録した収容場所データベースDa(図3参照)、貸出状況および返却期限を示す貸出状況データベースDb(図3参照)などの各書籍4に関する情報を書籍コードに紐づけさせて記録してなるデータベースDを有するサーバ6および、このサーバ6を設置すると共に図書館3の入口3Aから見える位置において、職員8の作業空間を確保するテーブル状のカウンタ7(7A,7B,7C)を設けている。
【0047】
本例に示す図書館3において、本棚2A~2Hは互いに背中合わせに連結されて表裏両側から書籍を収容可能とする本棚2A1,2A2を組み合わせたものであり、本棚2I~2Tは壁面に背面を付けるように並べて配置されたものであり、各本棚2の間には利用者が通路5を通行するのに十分なように二人の利用者が横方向に並んで履行可能な程度の通路幅を形成している。
【0048】
9は職員8が所持する業務用のタブレット型情報端末(以下、端末9という)であり、図書館3内に設けられた無線ルータ6R(図3参照)などの通信部によって構築された無線LANを介することにより、サーバ6および所蔵本返却補助台車1の本体1Aに対して双方向の通信を行うことができるように接続されている。なお、端末9の記録部には前記データベースD(とりわけ収容場所データベースDb)をコピーして、毎回無線ルータ6Rを介することなく、書籍4の収容場所L1,L2…を検索できるようにすることが好ましい。
【0049】
各書籍4にはこれを特定するための書籍コードがバーコードによって記載されたIDタグ10を貼り付けており、このIDタグ10が示す書籍コードを用いてサーバ6のデータベースDを検索することにより、書籍4の収容位置L1,L2…などの情報を得ることができるように構成されている。本例のようにIDタグ10としてバーコードを採用することにより、各書籍4に取り付けるIDタグ10を極めて安価にて作成でき、それだけシステム全体のコストを削減することができる。しかしながら、本発明はこの点に限定されるものではなく、IDタグ10として二次元コードを印刷したものや、RFIDタグなどを採用してもよい。
【0050】
図2に示すように、カウンタ7内には利用者が借りた書籍4の返却窓口が設けられており、職員8が返却された書籍4を受け取って、前記端末9のカメラ9Cを用いて書籍4のIDタグ10を読み取ることにより、サーバ6(図1図3参照)と通信して書籍4(4A,4B…)の返却処理を行うと共に、返却処理を行った後にこれらの書籍4を所蔵本返却補助台車1に載せて運搬することにより職員8の負担を軽減する。
【0051】
次に、図3を用いて、図書館3の通信環境と所蔵本返却補助台車1の構造および動作を説明する。所蔵本返却補助台車1はその本体1Aが無線LANを介して前記端末9と無線接続されることにより、端末9を所蔵本返却補助台車1の一部として用い、端末9の演算処理装置によって実行可能な各種ソフトウェアを用いて所蔵本返却補助台車1に必要な動作を実現している。しかしながら、端末9と所蔵本返却補助台車1の本体1Aとの間の接続は無線LANを介するもののみならず、Bluetooth(Bluetooth SIG, Inc.の登録商標)などの近距離無線通信規格に準拠する通信によって接続されていてもよい。
【0052】
さらに、本発明は端末9を通信部によって所蔵本返却補助台車1の本体1Aに接続する構成に限定されるものではなく、端末9を所蔵本返却補助台車1の本体1A内に一体的に形成してもよく、また、所蔵本返却補助台車1の本体1A内に設けた演算処理装置によって実行可能なソフトウェアを用いて各手段を実現してもよいことはいうまでもない。
【0053】
本実施形態の所蔵本返却補助台車1は、職員8の手元の位置にて書籍4を載置可能な書籍載置棚11と、この書籍載置棚11に載置される各書籍4A,4B…に添付されたIDタグ10から書籍コードを読み取る書籍コード読み取り手段12と、読み取った書籍コードを用いてサーバ6に接続して各書籍4の収容場所L1、L2…を検索し取得する収容場所検索手段13と、各収容場所L1,L2…を巡回する走行ルートRに沿って移動する共に収容場所l1、L2…で一旦停止できる自立走行装置14と、書籍載置棚11に載置された書籍4の収容場所L1,L2…に移動させるための移動開始入力手段15とを備える。なお、Bは書籍コード読み取り手段12によって書籍コードを読み取り、書籍載置棚11に載置している書籍4の書籍リストである。
【0054】
また、前記自立走行装置14は、任意の方向に移動し停止する駆動力を供給する駆動部16と、図書館3内の現在位置を取得する現在位置取得部17と、各書籍4A,4B…の収容場所と現在位置の関係および図書館3内の通路マップMを用いて書籍載置棚11に載置された書籍リストBにある各書籍4の収容場所L1,L2…を巡回するように走行する走行ルートRを検索するルート検索手段18と、周囲の障害物を検知する距離センサ19と、走行ルートに沿って走行すると共に障害物を避ける回避行動を制御し、各書籍4A,4B…の収容場所において停止させる走行制御部20とを備える。
【0055】
前記所蔵本返却補助台車1の本体1Aは好ましくは前記通路5の通路幅の半分以下の横幅に形成された樽のような円柱形状であり、前記無線LANに接続可能とする無線の通信部21と、前記通路5のマッピングを行なう通路マッピング手段22と、この通路マッピング手段22を用いて生成された通路マップMおよび収納位置Lの記録部23とを備える。
【0056】
なお、24は前記各手段17,18,22を構成するソフトウェアを実行可能であると共に前記記録部23を有する演算処理部および駆動部16の一部として4つのサーボモータ16Aにそれぞれ電力を供給する駆動回路16Bを備えた台車制御部であり、25は各サーボモータ16Aに連結されて互いに90°異なる方向に回転力を伝達する車輪、26はサーボモータ16Aの回転を確認する4つのロータリーエンコーダ、27は前記書籍載置棚11の昇降装置である。
【0057】
また、前記現在位置取得部17は4つの車輪25の回転状況を示すロータリーエンコーダ26の出力を用いて計算される車輪25の回転数と移動方向を用いて現在位置を算出する、いわゆるオドメトリによる自己位置推定と、台車本体1Aの前後両端に設けた距離センサ19(19A,19B)による距離の測定値と、図示していないジャイロセンサによる測定値とを用いた補正を施すことにより、より正確な現在位置を取得するものである。
【0058】
前記書籍載置棚11の高さは前記昇降装置27によって職員8にとって手元となる高さに調整されていることが好ましく、この職員8の手元とは高さにおいて職員8が腰をかがめたり、背伸びをしたり、大きく体幹を変形させたりせずに、肩から先の手を動かすだけで、載置したり拾い上げたりできる高さを職員8にあわせて設定可能であることを示し、具体的には一般的な職員8にとって手元となる、床からの高さが600mm~1300mm程度であり、より好ましくは800mm~1000mm程度の高さである。
【0059】
本実施形態の書籍コード読み取り手段12は端末9の演算処理装置によって実行可能な書籍コード読み取りプログラムによって実現され、端末9のカメラ9Cを用いて撮像した画像に含まれるIDタグ10のバーコードを解析することにより、当該書籍4の書籍コードを取得するものである。同様に、収容場所検索手段13も端末9の演算処理装置によって実行可能な収容場所検索プログラムによって実現され、前記書籍コードを用いて無線LANによってつながったサーバ6にアクセスすることにより、当該書籍の収容場所を得るものである。
【0060】
また、本実施形態の前記移動開始入力手段15は所蔵本返却補助台車1の本体1Aの側面に設けたハードウェアボタン15Aと、端末9の画面上に表示させたソフトウェアボタン15Bとを備え、どちらのボタン15を押した場合も同じように所蔵本返却補助台車1の移動を開始させることができるように構成している。
【0061】
本実施形態のように一般的なタブレット型の端末9に通常備わっている機能を活用して各手段12,13およびボタン15Bを形成することにより、所蔵本返却補助台車1の本体1Aの構成を簡素にすることが可能であるから、それだけ所蔵本返却補助台車1の製造コストを削減することが可能である。しかしながら、端末9の機能を所蔵本返却補助台車1の本体1Aに内蔵させることも容易に考えられることはいうまでもない。
【0062】
図4図5は前記所蔵本返却補助台車1の本体1Aの構成をさらに詳細に示す図であり、前記駆動部16のより具体的な構成を示す。すなわち、本実施形態における車輪25はそれぞれが90°異なる方向に回転可能に取り付けられた略円盤状の車輪本体25Aと、この車輪本体25Aの外周に形成されて、車輪25の回転方向に対して直角方向に回動自在であると共に、外周がほぼ円形になるように配置された複数のローラ25Bからなる、特殊な形状の車輪である。
【0063】
これら4つの車輪25のそれぞれにサーボモータ16Aが連結されて、任意の速度で任意の回転方向に回転させることができるように構成している。つまり、駆動部16には車輪25、サーボモータ16A、およびこのサーボモータ16Aを任意の速度と方向に回転させるための電力を供給する駆動回路16Bが含まれており、このような駆動部16によれば所蔵本返却補助台車1を任意の方向に、任意の速度で移動させ、その向かう方向を回転させることも自在に制御することができるように構成している。
【0064】
前記各サーボモータ16Aの回転方向や回転角を含む回転速度はロータリーエンコーダ16Aによって検出されるので、これらが台車制御部24内の演算処理部に入力されて前記現在位置取得部17を実現する現在位置取得プログラムが実行されることにより、所蔵本返却補助台車1の本体1Aの正確な位置を演算によって求めることができる。加えて、図示していないジャイロセンサや、本体1Aの前後両側に設けた前記距離センサ19A,19Bによって計測される距離を用いて補正することにより、より精度の高い現在位置を演算によって求められるように構成している。なお、図書館3内は通常上下方向に移動のない平坦な床面であるから、平坦な床面nを水平方向に移動する所蔵本返却補助台車1は必要最小限の電力消費で図書館3内を移動することが可能である。
【0065】
前記ルート検索手段18は台車制御部24内の演算処理部によって実行されるルート検索プログラムによって実現されるものであり、前記収容場所検索手段13によって検索した書籍載置棚11上の書籍4の収容場所を現在位置から近い順に巡回するように通路5を走行するルートを求めるものである。なお、書籍載置棚11上の書籍4A,4B…の書籍コード、および、収容場所L1,L2…は収容場所リストLとして演算処理装置の記録部に記録してあることが好ましく、この収容場所L1,L2…のリストLに従って、走行ルートR(R1,R2…)を検査して演算処理装置の記録部に記録する。
【0066】
距離センサ19A、19Bは所蔵本返却補助台車1の前後両側において周囲に障害物がないことを確認するために例えば水平方向に360°、上下方向に少なくとも本体1Aの高さ以上の視野角を走査しながらレーザ光を照射し、障害物からの反射波の到達時間を用いて障害物との距離および方向を正確に測定するLiDAR(Light Detection and Ranging)技術を用いたレーザ測位センサである。
【0067】
従って、走行制御部20は走行ルートRに沿って移動しているときにも距離センサ19A,19Bによって計測された障害物のイメージを確認することにより本棚2などの固定物のみならず、他の利用者などの障害物が所蔵本返却補助台車1に近づいているときに、走行ルートRを外れた回避行動をとらせたり、停止させたりすることにより、所蔵本返却補助台車1が障害物に衝突することを確実に回避することができるように構成されている。
【0068】
前記昇降装置27は書籍載置棚11の下部に連接される昇降ガイド27Aと、この昇降ガイド27Aを上下方向に移動させる昇降駆動部27Bとを備え、書籍載置棚11の高さを、走行時の安定性を高める下端部から、職員8の手元の高さまで昇降移動可能に構成している。
【0069】
図6は上記構成の所蔵本返却補助台車1の動作を概略的に説明する図である。
本発明の図書館の所蔵本返却補助台車1は、起動時に通路マップの作成を実行する。つまり、前記距離センサ19A、19Bを用いて本棚や周囲の障害物の配置を確認しながら図書館3内を移動することにより、図書館3内の本棚2、カウンタ7等の設置物の配置および通路5の幅を確認して生成された通路マップMを、通路マップ記録部23に保存する。(ステップS1)なお、このステップS1は図書館3に初めて設置するときに実行し、通路マップMを保存した後はスキップしてもよく、さらには、通路マップMを既存データとして入力する実施変形も容易に考えられることはいうまでもない。
【0070】
通路マップMが作成されると、前記移動開始入力手段15を用いて職員によって移動開始が入力されたかどうかを判断する。(ステップS2)
【0071】
ここで、移動開始が入力された場合、次にステップS9を実行し、移動開始の入力が無い場合には、次にステップS3を実行する。なお、移動開始入力は書籍載置棚11に書籍4が存在する場合、つまり、書籍リストが書籍載置棚11内の書籍の存在を示す場合にのみ実行することが好ましい。
【0072】
次いで、書籍コード読み取り手段12を用いて職員による書籍4の書籍コードの読み取りを開始したかどうかを確認する(ステップS3)。この書籍コードの読み取りが行われた場合には、次のステップS4を実行し、そうでない場合にはステップS2に戻ることにより、職員による操作入力を待ち受けする。
【0073】
ステップS3において書籍コードの読み取り開始が入力されたと判断された場合、書籍4のIDタグ10から書籍4の書籍コードの読み取りが行われる。(ステップS4)
【0074】
本実施形態の場合、書籍コードの読み取りは端末9内の書籍コード読み取り手段12である端末9のカメラ9Cによって撮像された画像を書籍コード読み取りプログラム(アプリケーション)の実行によって解析することによって行われる。なお、IDタグ10がRFIDである場合、ステップS3の読み取り開始およびステップS4の読み取りは、書籍載置棚11への書籍4の載置によってRFIDとの通信が可能になると自動的に行われることが好ましい。あるいは、書籍コードの読み取りにバーコードリーダを用いる変形も容易に考えられる。
【0075】
書籍コードの読み取りが行われると読み取った書籍コードの書籍4が図書館3に返却されたことをサーバ6内の貸出状況データベースDbに記録すると共に、書籍載置棚11に載置した書籍をリスト化した書籍リストBに追加する。(ステップS5)
【0076】
次に、書籍リストBに記録された各書籍コードに対応する書籍4の収容場所L1,L2…をサーバ6内または端末9内にコピーした収容場所データベースDaから検査する。(ステップS6)
【0077】
前記収容場所の検索は収容場所検索手段13として、端末9内の演算処理装置によって実行可能な収容場所検索プログラム(アプリケーション)の実行によって行われ、収容場所が検索されると、書籍載置棚11内の全ての書籍4についてその書籍コードの書籍リストB内に紐付けされた収容場所L1,L2の収容場所リストLを作成する。
【0078】
次に、書籍リストBに含まれる全ての書籍4…について、その収容場所リストL(L1,L2…)を、現在位置から近い順に並べ替えることにより書籍リストBを更新する。(ステップS7)
【0079】
なお、書籍リストBの並べ替えは後に行うルート検索において移動に無駄のないように行うことが好ましく、また、この段階で職員が書籍リストBの順番を任意に入替えられるようにすることが好ましい。次いで、並べ替えられた書籍リストBと収容場所(棚位置)L1、L2…のリストLは所蔵本返却補助台車1の本体1Aの演算処理装置の記憶部にコピーする。
【0080】
次に、各書籍4の収容場所を巡回するルートR(R1~R5)を検索する。(ステップS8)その後、前記ステップS2に戻る。
【0081】
ルートRの検索はルート検索手段18として所蔵本返却補助台車1の本体1Aに設けた演算処理装置によって実行可能なルート検索プログラムによって実現され、ステップS1によって作成した通路マップMを用いて検索する。ここで、検索されたルートR1,R2…は収容場所L1、L2…に順次移動するためのルートであり、ルートR5は最後の収容場所L4から現在位置まで戻ってくるルートである。また、各ルートR1,R2…は通路5の真ん中ではなく、通路5の端を走行するように設定することにより、図書館3の利用者の邪魔にならないように走行することができる。
【0082】
前記ステップS2において職員による移動の開始が入力されたと判断された場合には、ルートR(R1,R2…)に沿った移動を開始する。(ステップS9)
【0083】
本実施形態において所蔵本返却補助台車1は書籍載置棚11を昇降駆動する昇降装置27を備えるので、移動を開始する前に、まず昇降装置27を用いて書籍載置棚11を最下端に移動させて、可能な限り重心を低くすることにより、移動時における安定性を向上させる。
【0084】
次いで、前記駆動部16の駆動回路16Bを用いて4つのサーボモータ16Aに4つの車輪25を回転させるための電力を供給することにより、任意の方向に旋回させ、任意の方向に移動させる。また、ロータリーエンコーダ26によって各車輪25の回転角を計測することにより、これをオドメトリによる現在位置取得に用いる。他方、現在位置取得手段17はオドメトリによる現在位置の取得に加えて、前記距離センサ19による測定値およびジャイロセンサを用いて補正することにより、正確な現在位置を取得する。
【0085】
移動時には前記距離センサ19を用いて所蔵本返却補助台車1の周囲にある障害物を確認し、衝突が予想される障害物があるかどうかを判断する。(ステップS10)ここで障害物ありと判断した場合はステップS11を実行し、障害物がないと判断した場合はステップS12にジャンプする。
【0086】
ステップS10において障害物がありと判断された場合は、この障害物の回避行動をとる。(ステップS11)
【0087】
これにより、図書館3の利用者などの障害物が存在する環境においても所蔵本返却補助台車1から衝突することはなく、安全な移動を可能としている。なお、回避方法としては障害物を回避するようにルートRを一部変更する回避行動を試行し、ルート変更による回避が不能であるときには障害物がなくなるまで一旦停止することにより衝突を回避することが考えられる。
【0088】
なお、所蔵本返却補助台車1の近くには職員がいるため、所蔵本返却補助台車1の走行の妨げとなる障害物を職員が移動させることも、図書館3の利用者に声をかけて安全確保を行なうことも可能であるから、この障害物の回避は簡易的なもので十分である。
【0089】
次に、現在位置取得手段17が取得した現在位置と、目的地としている収容場所L1、L2…の情報を比較し、これらが一致する、つまり、収容場所L1、L2…に到着したかどうかを判断する。(ステップS12)
【0090】
収容場所L1、L2…に到着したと判断できた場合は次にステップS13を実行し、到着していないと判断したときはステップS9に戻って繰り返し処理を実行する。
【0091】
収容場所Lに到着すると、この収容場所Lにて所蔵本返却補助台車1の移動を停止させる。(ステップS13)
【0092】
また、本実施形態の所蔵本返却補助台車1は書籍載置棚11に昇降装置27を備えるので、所蔵本返却補助台車1の移動を停止させた後に、書籍載置棚11を元の高さにリフトすることにより、職員は手元の位置から書籍4を書籍載置棚11から取り上げて、定められた本棚2の定められた収容位置に収容する。このとき、端末9には書籍4の名称および収容場所を表示することにより、職員は書籍4を間違いなく本棚2の所定の収容場所Lに収容することができる。
【0093】
従って、ステップS13において所蔵本返却補助台車1の移動を停止させたときに、対象となる書籍4を、書籍載置棚11に載置した書籍リストBから削除し、これに対応する収容場所リストLおよびルートRの削除も行なう。これによって、書籍4の収容が完了する。次に、ステップS2に戻って、書籍載置棚11が空になるまで処理を繰り返す。
【0094】
最後の書籍4を本棚2に収納した後は、カウンタ内の所定位置まで所蔵本返却補助台車1を戻すための移動を行なう。
【0095】
図7は本発明の第2実施形態にかかる追従台車30の構成を示すものであり、これは第1実施形態の所蔵本返却補助台車1に追従する追従台車30であって、職員8の手元の位置にて書籍4を載置可能な書籍載置棚11と、前方の所蔵本返却補助台車1の通信部21と通信することによりその走行ルートRを取得する通信部31と、この走行ルートRに沿って走行すると共に所蔵本返却補助台車1に対して衝突を避けられる所定の距離を開けて走行または停止する追従走行装置32とを備え、この追従走行装置32は、少なくとも任意の方向に移動し停止する駆動力を供給する駆動部16と、図書館3内の現在位置を取得する現在位置取得部17と、周囲の障害物を検知する距離センサ19(19A,19B)と、前記自立走行装置14の走行ルートRに沿って走行すると共に障害物を避ける回避行動を制御し、各書籍4の収容場所L1,L2において停止させる走行制御部20とを備えることを特徴としている。
【0096】
なお、本実施形態において、図1~6と同じ符号を付した部材は同一または同等の部材であるから、その詳細な説明を省略することにより、重複説明を避ける。
【0097】
本実施形態における追従台車30は、常時カウンタ内に収容されており、前記所蔵本返却補助台車1の書籍載置棚11に書籍4が載せきれなかった場合に用いられるものである。通信部31は前記無線LANに接続することにより、無線LANを介して前記所蔵本返却補助台車1から走行ルートRを取得できるようにするものである。
【0098】
前記追従走行装置32が前記走行ルートRに沿って追従台車30を移動させることにより、追従台車30は所蔵本返却補助台車1の後をついていくような動作をする。また、追従台車30にも周囲の障害物を検知する距離センサ19を備えるので、追従台車30の走行中に他の利用者などの障害物に衝突する可能性が生じると、走行ルートRを一時的に変更、または停止させることにより障害物の回避を行なうことができる。
【0099】
従って、上記追従台車30を所蔵本返却補助台車1に合わせて用いることにより、より多くの書籍4を一度に搬送することができるので、それだけ、本棚2への書籍4の収納を効率よく行うことができる。なお、追従台車30の書籍載置棚11は所蔵本返却補助台車1の書籍載置棚11の拡張であるから、前記書籍リストBには所蔵本返却補助台車1のみならず、追従台車30に搭載したものも含められることが好ましい。
【0100】
上述の第1実施形態および第2実施形態のいずれにおいても、書籍載置棚11に搭載された書籍4に対して除菌のための紫外線を照射するための紫外線発光部を備えることが好ましい。
【0101】
また、前記所蔵本返却補助台車1および追従台車30は、図書館3の利用者に対して案内や広告宣伝を表示するための表示部を備えてもよい。
【0102】
さらに、所蔵本返却補助台車1および追従台車30を用いて図書館3の利用者に対いておしぼり、ティッシュ、除菌グッズなどの小物を供給するサービス提供部を設けてもよい。
【符号の説明】
【0103】
1 所蔵本返却補助台車
2 本棚
3 図書館
4 書籍
5 通路
6 サーバ
8 職員
9 端末
10 IDタグ
11 書籍載置棚
12 書籍コード読み取り手段
13 収容場所検索手段
14 自立走行装置
15 移動開始入力手段
17 現在位置取得部
18 ルート検索手段
19 距離センサ
20 走行制御部
21,31 通信部
22 通路マッピング手段
30 追従台車
32 追従走行装置
L1,L2… 収容場所
M 通路マップ
R1、R2… 走行ルート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7