(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022123962
(43)【公開日】2022-08-25
(54)【発明の名称】DC/DCコンバータの制御装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/32 20060101AFI20220818BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20220818BHJP
H02J 3/46 20060101ALI20220818BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220818BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20220818BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/38 150
H02J3/46
H02J7/00 302C
H02M3/155 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021021446
(22)【出願日】2021-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】小原 達也
【テーマコード(参考)】
5G066
5G503
5H730
【Fターム(参考)】
5G066HA15
5G066HB03
5G066HB06
5G066HB09
5G066JB03
5G503AA01
5G503AA06
5G503BA04
5G503BB01
5G503CA10
5G503GB03
5G503GB06
5H730AA04
5H730AA16
5H730AS04
5H730AS05
5H730AS08
5H730AS17
5H730BB13
5H730BB14
5H730BB57
5H730BB82
5H730BB88
5H730DD03
5H730DD12
5H730FD01
5H730FD11
5H730FD31
5H730FD41
5H730FD61
5H730FG05
(57)【要約】
【課題】分担電力指令値の急変によるDCリンク電圧の変動発生を防止する。
【解決手段】太陽光パワーコンディショナーの直流リンクに複数台接続される蓄電池用のDC/DCコンバータの制御装置であって、直流リンク電圧が直流電圧指令値に追従するようにDCAVR63でPI制御して複数の蓄電池全体の蓄電池電力指令値Pdc_refを生成し、自系蓄電池容量と複数の蓄電池容量の総和の比と前記Pdc_refを乗算器66-1,66-2で乗算して1系、2系の分担蓄電池電力指令値Pdc_ref1、Pdc_ref2を生成し、各蓄電池の出力電流Ichp1_det,Ichp2_detが、前記Pdc_ref1、Pdc_ref2から求めた電流指令値Ichp1_ref,Ichp2_refに各々追従するようにACR69-1,69-2でPI制御して各DC/DCコンバータの電圧指令を各々生成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光発電装置および太陽光パワーコンディショナーの共通接続点と複数系の蓄電池の間に各々接続された複数のDC/DCコンバータを制御する制御装置であって、
太陽光発電装置および太陽光パワーコンディショナーの共通接続点のDCリンク電圧が直流電圧指令値に追従するように、PI制御により自動電圧調整を実施して複数の蓄電池全体の蓄電池電力指令値を生成する蓄電池電力指令値生成部と、
自系蓄電池容量と複数の蓄電池容量の総和の比と、前記蓄電池電力指令値生成部で生成された蓄電池電力指令値に基づいて、前記複数の蓄電池の各容量に応じて蓄電池の出力電力を分担する分担電力指令値を各々生成する複数の分担電力指令値生成部と、
前記各蓄電池の出力電流が前記生成された分担電力指令値から求めた電流指令値に各々追従するように、PI制御により自動電流調整を実施して各蓄電池に接続されたDC/DCコンバータの電圧指令値を生成する複数の電圧指令値生成部と、を備え、前記生成された電圧指令値によって各DC/DCコンバータを駆動制御する制御装置において、
前記自系蓄電池の容量を検出した蓄電池容量を、前記自動電圧調整実施時のPI制御および自動電流調整実施時のPI制御の各時定数よりも大きく設定した時定数で各々変化させる複数のクッション処理部を備え、
前記各分担電力指令値生成部は、前記蓄電池電力指令値に、前記各クッション処理部により処理された自系蓄電池容量と複数の蓄電池容量の総和の比を乗算することで分担電力指令値を各々生成することを特徴とするDC/DCコンバータの制御装置。
【請求項2】
太陽光発電装置および太陽光パワーコンディショナーの共通接続点と複数系の蓄電池の間に各々接続された複数のDC/DCコンバータを制御する制御方法であって、
蓄電池電力指令値生成部が、太陽光発電装置および太陽光パワーコンディショナーの共通接続点のDCリンク電圧が直流電圧指令値に追従するように、PI制御により自動電圧調整を実施して複数の蓄電池全体の蓄電池電力指令値を生成する蓄電池電力指令値生成ステップと、
複数の分担電力指令値生成部が、自系蓄電池容量と複数の蓄電池容量の総和の比と、前記蓄電池電力指令値生成部で生成された蓄電池電力指令値に基づいて、前記複数の蓄電池の各容量に応じて蓄電池の出力電力を分担する分担電力指令値を各々生成する分担電力指令値生成ステップと、
複数の電圧指令値生成部が、前記各蓄電池の出力電流が前記生成された分担電力指令値から求めた電流指令値に各々追従するように、PI制御により自動電流調整を実施して各蓄電池に接続されたDC/DCコンバータの電圧指令値を生成する電圧指令値生成ステップと、を備え、前記生成された電圧指令値によって各DC/DCコンバータを駆動制御する制御方法において、
複数のクッション処理部が、前記自系蓄電池の容量を検出した蓄電池容量を、前記自動電圧調整実施時のPI制御および自動電流調整実施時のPI制御の各時定数よりも大きく設定した時定数で各々変化させるクッション処理ステップを備え、
前記各分担電力指令値生成ステップは、前記蓄電池電力指令値に、前記各クッション処理部により処理された自系蓄電池容量と複数の蓄電池容量の総和の比を乗算することで分担電力指令値を各々生成することを特徴とするDC/DCコンバータの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池用電力変換装置として用いられるDC/DCコンバータの制御装置、制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光パワーコンディショナー(以下、太陽光PCSと称することもある)の直流リンクに、太陽光発電装置と並列に接続する複数の蓄電池用電力変換装置、例えばDC/DCコンバータを備えた装置の構成を
図4に示す。
【0003】
図4において、太陽光パネルを有した太陽光発電装置11の出力側は太陽光PCS12の直流側に接続され、太陽光PCS12の交流側は電力系統13に接続されている。
【0004】
14-1は、複数(例えば本例では2個)設けられた蓄電池のうちの1系の蓄電池であり、14-2は2系の蓄電池である。太陽光発電装置11および太陽光PCS12の共通接続点と蓄電池14-1,14-2の間には1系のDC/DCコンバータ15-1および2系のDC/DCコンバータ15-2が各々接続されている。
【0005】
20は、太陽光発電装置11、太陽光PCS12およびDC/DCコンバータ15-1,15-2の共通接続点の電圧であるDCリンク電圧Vdcと、蓄電池14-1,14-2の各電圧を検出した電池電圧Vbatt1、Vbatt2と、蓄電池14-1,14-2およびDC/DCコンバータ15-1,15-2間に流れる電流を検出した電流Ichp1,Ichp2とに基づいて、DC/DCコンバータ15-1,15-2を制御する制御部である。
【0006】
前記DC/DCコンバータ15-1,15-2は例えば
図5のように、蓄電池側の正極端PCにリアクトル51の一端を接続し、DCリンク側の正極端PPと、蓄電池側の負極端NCおよびDCリンク側の負極端NPの間に半導体スイッチング素子52,53を直列に接続し、半導体スイッチング素子52,53の共通接続点にリアクトル51の他端を接続して構成されている。
【0007】
前記半導体スイッチング素子52,53は例えばIGBTなどで構成され、
図4の制御部20で生成されたゲート信号によってオン、オフ制御されて蓄電池側(PC-NC間)とDCリンク側(PP-NP間)との間で直流電力の変換を行う。
【0008】
図4の制御部20は例えば
図6のように構成されている。
図6において、61は、
図4に示すDCリンク電圧Vdcの指令値Vdc_ref(直流電圧指令値)を徐々に変化させるクッション処理部である。
【0009】
62は、クッション処理部61の出力とDCリンク電圧を検出したDCリンク電圧検出値Vdc_detとの偏差をとる減算器である。
【0010】
63は、DCリンク電圧検出値Vdc_detがクッションン処理後の直流電圧指令値(Vdc_ref)に追従するように、PI制御により自動電圧調整を実施して複数の蓄電池全体の蓄電池電力指令値Pdc_refを生成するDCAVR(自動電圧調整器)である。
【0011】
64-1は、自系蓄電池容量を検出した蓄電池容量BattCap1と他系蓄電池容量を検出した蓄電池容量BattCap2を合算して全系の蓄電池容量の合計を計算する合算器である。65-1は、自系蓄電池容量BattCap1(A)から、合算器64-1で計算された全系合計の蓄電池容量(B)を除算して自系蓄電池容量と複数の蓄電池容量の総和の比を求める割算器である。
【0012】
64-2は、自系蓄電池容量を検出した蓄電池容量BattCap2と他系蓄電池容量を検出した蓄電池容量BattCap1を合算して全系の蓄電池容量の合計を計算する合算器である。65-2は、自系蓄電池容量BattCap2(A)から、合算器64-2で計算された全系合計の蓄電池容量(B)を除算して自系蓄電池容量と複数の蓄電池容量の総和の比を求める割算器である。
【0013】
66-1は、DCAVR63で生成された複数の蓄電池全体の蓄電池電力指令値Pdc_refに、割算器65-1で求められた、自系蓄電池と複数の蓄電池容量の総和の比を乗算して1系の分担蓄電池電力指令値Pdc_ref1を求める乗算器である。
【0014】
66-2は、DCAVR63で生成された複数の蓄電池全体の蓄電池電力指令値Pdc_refに、割算器65-2で求められた、自系蓄電池と複数の蓄電池容量の総和の比を乗算して2系の分担蓄電池電力指令値Pdc_ref2を求める乗算器である。
【0015】
67-1は、前記乗算器66-1で求められた1系の分担蓄電池電力指令値Pdc_ref1(A)から、1系の蓄電池14-1の電圧Vbatt1(B)を除算して1系の電流指令値Ichp1_refを求める割算器である。
【0016】
67-2は、前記乗算器66-2で求められた2系の分担蓄電池電力指令値Pdc_ref2(A)から、2系の蓄電池14-2の電圧Vbatt2(B)を除算して2系の電流指令値Ichp2_refを求める割算器である。
【0017】
68-1は、1系の電流指令値Ichp1_refと1系の蓄電池の電流検出値Ichp1_detの偏差をとる減算器である。
【0018】
68-2は、2系の電流指令値Ichp2_refと2系の蓄電池の電流検出値Ichp2_detの偏差をとる減算器である。
【0019】
69-1は、1系の蓄電池の電流検出値Ichp1_detが1系の電流指令値Ichp1_refに追従するように、PI制御により自動電流調整を実施して1系のDC/DCコンバータ15-1の電圧指令値を生成する1系のACR(自動電流調整器)である。
【0020】
69-2は、2系の蓄電池の電流検出値Ichp2_detが2系の電流指令値Ichp2_refに追従するように、PI制御により自動電流調整を実施して2系のDC/DCコンバータ15-2の電圧指令値を生成する2系のACR(自動電流調整器)である。
【0021】
尚、1系、2系のACR69-1,69-2は、各ACRに入力される指令値が過剰となった場合に、指令値を装置の過電流レベル以下に制限するリミッタ(Limiter)機能を備えている。
【0022】
70-1,70-2は、ACR69-1,69-2で生成された1系、2系のDC/DCコンバータ15-1,15-2の各電圧指令と例えば三角波信号との比較によりPWM信号を各々発生するPWM発生器である。
【0023】
PWM発生器70-1,70-2で発生されたPWM信号は、各DC/DCコンバータ15-1,15-2の半導体スイッチング素子(52,53)にゲート信号(gate1,gate2)として送信される。
【0024】
尚、従来、特許文献1には、二次電池を具備する電力貯蔵システムにおける蓄電池の正確なSOC推定および、運転効率向上のための蓄電池の減数運転についての技術が記載されている。
【0025】
また特許文献2には、容量の異なるチョッパおよび/又はインバータを組み合わせることによって、日射量が少なくPCS(パワーコンディショナ)の負荷率の小さい場合や発電停止・減少する状況下においても、PCSを比較的効率良く運転継続させる技術が記載されている。
【0026】
また特許文献3には、複数のユニットを並列接続した無停電電源装置にてユニットの並列台数を切り替えた時に蓄電池の充放電を抑制させる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】特許第5638436号公報
【特許文献2】特許第5302096号公報
【特許文献3】特許第5556258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
図4~
図6に示す電力変換装置において、
乗算器66-1から出力される1系の分担蓄電池電力指令値Pdc_ref1は、
Pdc_ref1=(1系の蓄電池容量/蓄電池容量総和)×Pdc_ref
で表され、
乗算器66-2から出力される2系の分担蓄電池電力指令値Pdc_ref2は、
Pdc_ref2=(2系の蓄電池容量/蓄電池容量総和)×Pdc_ref
で表される。
【0029】
図4~
図6の装置では、DC/DCコンバータの運転中に、例えば
図7に示すように任意のDC/DCコンバータが停止から運転に遷移するとき、全体の装置容量が変わるため、分配する電力指令値(分担蓄電池指令値)に急変が生じることで、DCリンク電圧に変動が発生する問題がある。
【0030】
図7の、(a)は1系の蓄電池14-1の電力Pbatt1、(b)は2系の蓄電池14-2の電力Pbatt2、(c)は蓄電池全体の電力Pbatt、(d)はDCリンク電圧Vdcを各々示している。
【0031】
時刻t1以前では1系のDC/DCコンバータ15-1を運転し、2系のDC/DCコンバータ15-2は停止とし、時刻t1以降では1系、2系のDC/DCコンバータをともに運転している。
【0032】
図7(a)に示すように蓄電池の容量で出力電力を分担している。時刻t1で2系のDC/DCコンバータ15-2が停止から運転に切り換わると、全体の装置容量が変わり、全体の出力電力が
図7(c)のように急変する。
【0033】
この出力電力の急変によりDCリンク電圧が
図7(d)のように変動する。また片側のDC/DCコンバータが運転から停止に遷移する場合についても同様である。
【0034】
また、特許文献1~3には、複数のDC/DCコンバータの運転台数が変動した際にDCリンク電圧の急変を抑える技術は記載されていない。
【0035】
本発明は、上記課題を解決するものであり、その目的は、複数のDC/DCコンバータのうちいずれかの運転/停止が変更されて全体の装置容量が変わっても、分担電力指令値の急変によるDCリンク電圧の変動発生を防止することができるDC/DCコンバータの制御装置、制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0036】
上記課題を解決するための請求項1に記載のDC/DCコンバータの制御装置は、
太陽光発電装置および太陽光パワーコンディショナーの共通接続点と複数系の蓄電池の間に各々接続された複数のDC/DCコンバータを制御する制御装置であって、
太陽光発電装置および太陽光パワーコンディショナーの共通接続点のDCリンク電圧が直流電圧指令値に追従するように、PI制御により自動電圧調整を実施して複数の蓄電池全体の蓄電池電力指令値を生成する蓄電池電力指令値生成部と、
自系蓄電池容量と複数の蓄電池容量の総和の比と、前記蓄電池電力指令値生成部で生成された蓄電池電力指令値に基づいて、前記複数の蓄電池の各容量に応じて蓄電池の出力電力を分担する分担電力指令値を各々生成する複数の分担電力指令値生成部と、
前記各蓄電池の出力電流が前記生成された分担電力指令値から求めた電流指令値に各々追従するように、PI制御により自動電流調整を実施して各蓄電池に接続されたDC/DCコンバータの電圧指令値を生成する複数の電圧指令値生成部と、を備え、前記生成された電圧指令値によって各DC/DCコンバータを駆動制御する制御装置において、
前記自系蓄電池の容量を検出した蓄電池容量を、前記自動電圧調整実施時のPI制御および自動電流調整実施時のPI制御の各時定数よりも大きく設定した時定数で各々変化させる複数のクッション処理部を備え、
前記各分担電力指令値生成部は、前記蓄電池電力指令値に、前記各クッション処理部により処理された自系蓄電池容量と複数の蓄電池容量の総和の比を乗算することで分担電力指令値を各々生成することを特徴としている。
【0037】
請求項2に記載のDC/DCコンバータの制御方法は、
太陽光発電装置および太陽光パワーコンディショナーの共通接続点と複数系の蓄電池の間に各々接続された複数のDC/DCコンバータを制御する制御方法であって、
蓄電池電力指令値生成部が、太陽光発電装置および太陽光パワーコンディショナーの共通接続点のDCリンク電圧が直流電圧指令値に追従するように、PI制御により自動電圧調整を実施して複数の蓄電池全体の蓄電池電力指令値を生成する蓄電池電力指令値生成ステップと、
複数の分担電力指令値生成部が、自系蓄電池容量と複数の蓄電池容量の総和の比と、前記蓄電池電力指令値生成部で生成された蓄電池電力指令値に基づいて、前記複数の蓄電池の各容量に応じて蓄電池の出力電力を分担する分担電力指令値を各々生成する分担電力指令値生成ステップと、
複数の電圧指令値生成部が、前記各蓄電池の出力電流が前記生成された分担電力指令値から求めた電流指令値に各々追従するように、PI制御により自動電流調整を実施して各蓄電池に接続されたDC/DCコンバータの電圧指令値を生成する電圧指令値生成ステップと、を備え、前記生成された電圧指令値によって各DC/DCコンバータを駆動制御する制御方法において、
複数のクッション処理部が、前記自系蓄電池の容量を検出した蓄電池容量を、前記自動電圧調整実施時のPI制御および自動電流調整実施時のPI制御の各時定数よりも大きく設定した時定数で各々変化させるクッション処理ステップを備え、
前記各分担電力指令値生成ステップは、前記蓄電池電力指令値に、前記各クッション処理部により処理された自系蓄電池容量と複数の蓄電池容量の総和の比を乗算することで分担電力指令値を各々生成することを特徴としている。
【発明の効果】
【0038】
請求項1、2に記載の発明によれば、蓄電池の運転、停止の切り換え時の蓄電池容量は、クッション処理部の時定数によって変化されるので、前記複数のDC/DCコンバータのうち、何台かのDC/DCコンバータの運転/停止が変更されて全体の装置容量が変わっても、前記分担電力指令値が急変することはない。
【0039】
このため、分担電力指令値の急変によるDCリンク電圧の変動発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明の実施形態例によるDC/DCコンバータの制御装置の構成図。
【
図2】本発明の実施形態例における動作を説明するタイムチャート。
【
図3】本発明の実施形態例におけるクッション処理の入出力波形図。
【
図4】本発明が適用される電力変換装置の一例を示す構成図。
【
図5】DC/DCコンバータの構成例を示す回路図。
【
図6】従来のDC/DCコンバータの制御装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明するが、本発明は下記の実施形態例に限定されるものではない。本発明を
図4の電力変換装置に適用した実施形態例による制御装置を
図1に示す。
【0042】
図1において
図6と同一部分は同一符号をもって示している。
図1において
図6と異なる点は、1系側の自系蓄電池容量を検出した蓄電池容量BattCap1に対して、設定した時定数でクッション処理を施すクッション処理部80-1を設け、クッション処理部80-1から出力される自系蓄電池容量BattCap1_csnを合算器64-1および割算器65-1に出力し、2系側の自系蓄電池容量を検出した蓄電池容量BattCap2に対して、設定した時定数でクッション処理を施すクッション処理部80-2を設け、クッション処理部80-2から出力される自系蓄電池容量BattCap2_csnを合算器64-2および割算器65-2に出力した点にあり、その他の部分は
図6と同一に構成されている。
【0043】
尚、クッション処理部61、減算器62、DCAVR63によって本発明の蓄電池電力指令値生成部を構成している。
【0044】
また、合算器64-1、割算器65-1、乗算器66-1、合算器64-2、割算器65-2、乗算器66-2によって、本発明の複数の分担電力指令値生成部を構成している。
【0045】
また、割算器67-1、減算器68-1、ACR69-1、割算器67-2、減算器68-2、ACR69-2によって、本発明の複数の電圧指令値生成部を構成している。
【0046】
図1の装置において、1系の分担蓄電池電力指令値Pdc_ref1(乗算器66-1の出力)は、
Pdc_ref1={BattCap1_csn/(BattCap1_csn+BattCap2)}×Pdc_refで表され、
2系の分担蓄電池電力指令値Pdc_ref2(乗算器66-2の出力)は、
Pdc_ref2={BattCap2_csn/(BattCap1+BattCap2_csn)}×Pdc_refで表される。
【0047】
次に、上記のように構成された装置の動作を
図2、
図3とともに説明する。
図2は、時刻t1以前において1系のDC/DCコンバータ15-1を運転し、2系のDC/DCコンバータ15-2を停止し、時刻t1以降において1系、2系のDC/DCコンバータをともに運転させた場合のタイムチャートを示し、
図3は
図2の場合の2系のクッション処理部80-2の入出力波形を示している。
【0048】
図2の、(a)は1系の蓄電池14-1の電力Pbatt1、(b)は2系の蓄電池14-2の電力Pbatt2、(c)は蓄電池全体の電力Pbatt、(d)はDCリンク電圧Vdcを各々示している。
【0049】
2系のDC/DCコンバータ15-2が停止から運転に切り換わる時刻t1において、
図3の点線に示すように2系側の自系蓄電池容量BattCap2_csnを、クッション処理部80-2に設定された時定数で0からBattCap2へ徐々に変化させる。同様に1系側の自系蓄電池容量BattCap1_csnを、クッション処理部80-1に設定された時定数で自系蓄電池容量BattCap1から徐々に減少させる。
【0050】
この動作により、上式の1系の分担蓄電池電力指令値Pdc_ref1と2系の分担蓄電池電力指令値Pdc_ref2は緩やかに変化するようになるため、
図2(a)~(c)のように、DC/DCコンバータがすでに運転中の状態から、緩やかに各系の負担容量を持ち替えながら並列運転へ移行する。
【0051】
よって、DC/DCコンバータの出力電力に急変が発生しないため、
図2(d)のようにDCリンク電圧Vdcの変動を抑制できる。
【0052】
自系のDC/DCコンバータを停止させるときは、前述の運転時とは逆に、自系の蓄電池容量(BattCap1_csn又はBattCap2_csn)をクッション処理により自系の蓄電池容量(BattCap1又はBattCap2)から0へ徐々に変化させる。
【0053】
クッション処理部80-1,80-2におけるクッション時間は、DCAVR63およびACR69-1,69-2におけるPI制御の各時定数Tiよりも大きい時定数にする必要がある(クッション時間≫Ti)。
【0054】
以上のように本実施形態例によれば、各系の蓄電池電力指令値を演算する処理において、自系の蓄電池容量をクッション処理により変化させることで、電力の急変なく各系で指令値を分担することが可能となり、これによって直流電圧の急変を抑制することができる。
【0055】
尚、本発明は、蓄電池およびDC/DCコンバータが3以上設けられる電力変換装置に適用しても、前記実施形態例と同様の作用、効果を奏する。
【符号の説明】
【0056】
11…太陽光発電装置
12…太陽光PCS
13…電力系統
14-1,14-2…蓄電池
15-1,15-2…DC/DCコンバータ
20…制御部
61,80-1,80-2…クッション処理部
62,68-1,68-2…減算器
63…DCAVR
64-1,64-2…合算器
65-1,65-2,67-1,67-2…割算器
66-1,66-2…乗算器
69-1,69-2…ACR
70-1,70-2…PWM発生器