(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022123981
(43)【公開日】2022-08-25
(54)【発明の名称】水中発電および給電浮力体
(51)【国際特許分類】
F03B 13/10 20060101AFI20220818BHJP
F03B 17/02 20060101ALI20220818BHJP
【FI】
F03B13/10
F03B17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021021479
(22)【出願日】2021-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】721001258
【氏名又は名称】瀧本 朋樹
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 朋樹
【テーマコード(参考)】
3H074
【Fターム(参考)】
3H074AA06
3H074AA08
3H074AA10
3H074AA12
3H074BB19
3H074CC02
3H074CC03
3H074CC16
(57)【要約】
【課題】水力タービンを有した浮力制御可能な浮力体が沈降および浮上を繰り返すことで発電と外部へ電力供給が可能とする。
【解決手段】浮力体は、浮力制御可能な浮力体10の筐体11が作動流体を用いてバルーン17の体積を変化させ沈降および浮上を行い、筐体11に対して発生する相対的な水流を用いて筐体に装備したタービンローター13とタービンブレード12の回転にて発電を行い、その電力を筐体内部の蓄電池51に貯蓄を行い、筐体に装備された電力の供給手段52を用いて外部へ電力供給する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体を軸の中心として回転するように動作可能なタービンローターを装備した浮力体であり、かつタービンローターはタービンブレード端に永久磁石を装備しており、かつ筐体から支持されタービンブレード端を円周上に覆うシュラウドを有しており、かつシュラウド内または筐体内に励磁コイルを有しておりタービンブレードが回転するにつれて発電するように配置される発電システムへ連通可能式に結合される、回転可能なタービンブレードセットと、
前記浮力体へ正浮力及び負浮力を制御可能式に与えるように配置され、かつ作動流体により駆動する浮力制御システムと、
1つまたは複数の浮力制御システムを浮力体の上昇速度に依存して選択的に作動させるための制御システムとを備え、
前記浮力体は、潜水に適し、かつ前記タービンブレードセットは、前記浮力体による水中での移動に伴って回転するように配置される、浮力体。
【請求項2】
前記浮力制御システムは、1つまたは複数の流体動力学的に成形された収縮可能なバルーンを備える、請求項1に記載の浮力体。
【請求項3】
前記浮力制御システムは、収縮可能なバルーン、かつ作動流体を移動させるポンプ、かつ作動流体を加圧して貯蓄可能な蓄圧器を閉鎖式に接続した流体回路を備える、請求項1に記載の浮力体。
【請求項4】
前記1つまたは複数の第1の流体回路は、水面から離れて方向づけられる1つまたは複数の第1の回路を備え、前記1つまたは複数の第1の蓄圧器から放出される作動流体は、前記浮力体の上昇速度を高める、請求項1~3のいずれか一項に記載の浮力体。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の浮力体が備える、位置エネルギーかつ圧力エネルギーを貯蔵するためのシステムであって、
前記浮力体は、移動の下限において負浮力であり、かつ浮力制御システムは、液体を用いてバルーンを膨張及び収縮するように蓄圧器および液体ポンプが配置され、
これにより、前記浮力体へ正浮力が与えられ、かつ前記システム内に位置エネルギーかつ圧力エネルギーが貯蔵されるように動作可能である、システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のタービンブレードセットかつ蓄電池を有する浮力体が備える、電気エネルギーを生成および貯蔵するためのシステムであって、
前期浮力体は、外部への電気エネルギー供給を可能とする接触式または非接触式の給電手段が配置され、
これにより、外部から電気エネルギーが要求されると、前記給電手段から解放されるように動作可能である、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リム式水力タービン発電システムと電力供給システムを装備した制御可能な浮力体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術のいくつかのUUVは、水深約2000メートル以下の水深を時速2ノット未満の速さで移動している。水深約2000メートル以下を低速で移動するUUVは深海環境では電力エネルギーが不足する。
【0003】
海水の密度は、空気の832倍であり、これは、5ノットの流れが350km/時の風より多い運動エネルギーを有することを意味する。水中タービンを潮流の強い沿岸地域に置くスキームは、英国ブリストルのMarine Current Turbines社によって北アイルランドのストラングフォード湖で実行されているスキーム等が知られている。ここでは、15~20メートル幅のタービンブレードが、潮流作用によって毎分10~20回転で回転させられる。北アイルランドのストラングフォード海峡では、あるプロトタイプが稼働していて、直径16メートルのツインロータを用いて、流速2.4m/秒で定格1.2MWを発電している。この場合、このタービンシステム全体で、水の運動エネルギーを電気に変える実行効率は、43%になる。
【0004】
しかしながら、このようなプロジェクトの配備は、適切な潮流を生み出す現地沿岸の状態に依存し、かつ例えば、沖合の深海では不適である。したがって、水力駆動タービンを用いて発電するための、1 ) 自然による強力な流れなしでも水中に配備することができ、かつ、2 ) 利用される海洋空間1 立方メートルにつき高いパワー出力を有する、海中ソリューションが必要とされている。
【0005】
かつ、燃料補給するために、UUVを水上艦船との衝突もしくは進路中断の潜在的リスクに置くために頻繁に浮上しなければならないため、浮上することなく電力エネルギーを補給できる、海中ソリューションが必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-112191号公報
【特許文献2】国際公開第2009/026610号パンフレット
【特許文献3】英国特許第2456798号明細書
【特許文献4】米国特許第2006/017292号明細書
【特許文献5】英国特許第507093号明細書
【特許文献6】米国特許第2005188691号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一態様は、電気を貯蔵しかつ発電するための水力タービンを有した可変浮力体の提供によって上述の課題に対処する。この浮力体は、浮力により水中から水面へ動作し得るように、また重力により下方へ動作し得るように、水深を有する水域において動作可能である。浮力体は、その沈降を促進するために負浮力であるが、必要に応じて浮力体に正浮力を与えることができるように、調節可能な浮力手段が浮力体にさらに装備されている。正浮力が与えられると、浮力体は、浮力によって上へと浮かせる。負浮力が与えられると重力によって下へと沈降する。移動する際に、浮力体と水の相対動作によって有効な人工流が生成されてタービンローターを回し、タービンブレード端に設けた永久磁石がシュラウドまたは筐体に設けた励磁コイルを通じて電気を生成する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
制御可能な浮力を提供するために、実施形態によっては、浮力体に設けられる、かつ設定水深に達すると油やガスといった比重が1.0未満の作動流体を適切な圧力で供給する蓄圧器が装備される。浮力体は、浮力体へ全体的な正浮力を与えるために油またはガスといった比重が1.0未満の作動流体を貯蓄することができるバルーン等の類似の浮力調節手段を装備している。
かつ浮力体に全体的な負浮力を与えるためにバルーン等の類似の浮力調節手段から作動流体を蓄圧器に移送することができるポンプを装備している。
【0009】
蓄圧器が正浮力を与えるに足る作動流体を加圧するために要するエネルギーかつ負浮力を与えるに足る油またはガスといった作動流体をポンプで圧縮するために要するエネルギーは、浮力体において発生されるエネルギーより少なく、よって装置は、発電に関してエネルギーポジティブになることが前提であることから、ポンプの実行に要するエネルギーは重要である。
【0010】
ある典型的な構成では、タービンブレードの直径は、0.5メートルから15メートルの範囲内であってもよく、かつ浮力体および付属の発電機器およびバルーンの重量は、約0.1トンから15トンであることが想定されている。下降と浮上の距離が、100メートル単位から1000メートル単位までの範囲であることが想定されている。例えば、水深2000メートルの水域上の10トンタービンは、196MJのポテンシャルエネルギーを有する。これが、2.4m/秒で沈降するとすれば、効率100%を想定すると、最大471kWのポテンシャル電力が入手可能となる。このような効率は不可能であるが、効率を僅か30%であると控えめに見込んだとしても、140kWを超える電力出力が生成される。従来技術によるタービンと同じ効率(43%)であれば、832秒(浮力体が2000メートル下降する所要時間)で200kWを超える電力が生成される。
【0011】
2000mにおける水圧は、約2900psi(20MPa)であるが、日本アキュムレーター社から入手可能なもの等の蓄圧器は、約3000psi(21MPa)の吐出し圧力を生成し、例えば、このような圧力において蓄圧器から毎分1100リットルの比重1.0未満の作動流体を供給することができる(具体的には、例示として、型式番号HN-N21MP-L29-AAA参照)。海底から5トンの質量を上昇させるためには、10m3を超える水を押しのけて正浮力を生成する必要があるが、このような蓄圧器を用いれば、この作動流体容量を、適切な圧力で、浮力体が沈降する所要時間に満たない時間で正浮力を供給することができる。浮力体は、上昇途中でも発電することから、システムは、エネルギーポジティブである。
【0012】
前記蓄圧器の吐出圧力は、約2900psi(20MPa)であるが、不二越社から入手可能なもの等の高圧ポンプは、4500psi(30MPa)の吐出し圧力を生成し、例えば、このような圧力において45kWのポンプ出力から毎時111正規立方メートルを蓄圧器に作動流体を貯蓄することができる(具体的には、例示として、型式番号IPH-4B-32-20参照)。このようなポンプを用いれば、この作動流体容量を、適切な圧力で、浮力体が浮上する所要時間に満たない時間で負浮力を供給することができる。浮力体は、沈降途中でも発電することから、システムは、エネルギーポジティブであって、生成される電力の一部は、ポンプの作動に必要とされるものの、これは、タービンによりその昇降時に生成される電力量より遙かに少ない。
【0013】
上記に鑑みて、ある態様によれば、本発明は、タービンブレードの回転に伴って発電するように配置される発電システムへ連通可能式に結合される回転可能な一連のタービンローターを備える浮力体を提供し、前記浮力体は、さらに、浮力体へ正浮力と負浮力を制御可能式に与えるように配置される浮力制御システムを装備し、前記浮力体は、さらに、内部蓄電池より浮力体外部へ電力解放を行うための手段を装備し、前記浮力体は、水中に沈めるためのものであり、前記浮力体は、浮力体の水中での移動に伴うように配置される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態における浮力体を示す略側面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態における典型的な配備シナリオを示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態の動作方法を示すフロー図である。
【
図5】
図5は、本発明の別の実施形態による浮力体を示す略側面図である。
【
図6】
図6は、ロータピッチ調節機構を示す略側面図である。
【
図7】
図7は、バルーンの制御に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のさらなる特徴および優位点は、単なる例示として提示されるその実施形態のさらなる説明から、かつ添付の図面の参照により、さらに明らかとなるであろう。諸図を通じて、類似の参照数字は、類似のパーツを指す。
【0016】
図1および
図2は、本発明の一実施形態を形成する浮力体の一例を示す。浮力体10は、発電機器かつ蓄電池かつ蓄圧器かつポンプを含む筐体11を軸受けとされるタービンブレード12を装備するタービンローター13を装備している。
【0017】
ある実施形態では、筐体14は、励磁用コイル16を内装したシュラウド14をフレーム15で支持されかつタービンブレード12端に励磁用コイル16を励磁する永久磁石17を含んでもよい。タービンブレード12は、浮力体10による水中での上下移動に伴って筐体11を中心にタービンローター13に従って回転するように配置してもよい。
【0018】
浮力体10は、筐体11に外殻16を装備し、本実施形態において、これは、浮力体10へ正浮力を与えることが所望される場合に蓄圧器またはポンプにて加圧された作動油または空気または他のガスを受け入れるように配置されるバルーン17を含む。ある実施形態において、バルーン17は、海難救助作業において使用され得るもの等の拡張可能なリフティングバッグである。しかしながら、好ましくは、バッグが一旦浮力体を浅深度まで持ち揚げると、ポンプがバルーンから作動流体を蓄圧器に移送を行い、よって浮力体が重力によって再び沈むことができるように、バルーンには、作動流体の供給バルブと排出バルブが装備される。
【0019】
さらに、タービンローター13と装備されたタービンブレード12は、各々がフレーム15によって中央の浮力体本体へ付着され励磁コイル16を備えるシュラウド14を装備している。タービンブレード12の移動速度より高速で案内するためのベンチュリとして作用するように湾曲している。これにより、タービンを介する水流速度は増し、取得される電力は、増加され得る。
【0020】
浮力体は、バルーン17がポンプにて作動流体が排出されかつ収縮することで外殻16が海水で満たされると海水面に対して僅かに負浮力であるように重み付けされる。これは、浮力体が設定水深または設定条件において浮力体の浮力が増大されると最低量の作動流体で浮力体に正浮力を作り出すことができ、これにより、エネルギーの効率が最大化することを保証する。
【実施例0021】
ある実施形態では、浮力体10がエネルギー貯蔵ユニットとして使用される。電気エネルギーは、水中に機械的に保持される正浮力または負浮力または浮力体の何れにおいても、ポテンシャルエネルギーとして貯蔵される。位置エネルギーが保持される間、浮力体のタービンにはエネルギーが入力されず、またタービンがエネルギーを出力することもない。しかしながら、浮力体が保持位置から解放されると、その浮力が、電気エネルギーを発生するための上向きまたは下向きの力の何れかを生成する。
【0022】
上向きの力は、浮力体10が正浮力である場合に生成される。浮力体は、その最下点(即ち、海底や設定水深)で保持されてもよく、かつバルーンは、作動流体で満たされて、浮力体を正浮力にしてもよい。正浮力により生成される上向きの力は、周囲の水を介する浮力体の上方移動を生成し、かつ周囲の水を介して進むタービンブレード12の動作によって浮力体が有するタービンローター13に対する回転力が提供される。浮力体は、移動の上限に達するまで電気エネルギー出力を提供する。この上限において、浮力体は、水中で正浮力のままであり、よって、水中で浮力体による動作はなく、発電もされない。
【0023】
この位置では、浮力体10によって、重力による位置エネルギーが貯蔵され、これは、作動流体を満たされたバルーンからポンプにて排出することでバルーンが収縮し、外殻との間の空間を水で満たして浮力体を負浮力にすることにより電気エネルギーを発生すべく解放されることが可能である。負浮力の浮力体は、周囲の水を介して沈降し、かつタービンブレード12は、筐体が進行することで発生する相対的な水流を電気エネルギーに変換するためタービンローター13に回転動作を提供する。浮力体10は、周囲の水を介して下降しながら発電を続け、下側の動作領域に達した時点で発電が止む。
浮力体10Cおよび浮力体10Dは、共にその個々のデューティサイクルの上昇段階にあるが、浮力体10Dの方が浮力体10Cより時間的に先行している。本例において、浮力体10Cおよび浮力体10Dは共に、正浮力を有するために外殻16内部に設けられたバルーン18を膨張させていることに留意されたい。他の実施形態では、圧力調整バルブを有するバルーンが使用されてもよい。さらに他の実施形態では、外殻とバルーンとの組合せが使用されてもよい。バルーンおよび/または外殻により提供される正浮力に依存して、浮力体10Eは、所定の速度で水中を移動または浮上し、よって、この動作によるタービンブレードとタービンローターの回転に伴って電気を生成する。ある実施形態において、浮力体の上昇速度は、沈降速度と略一致され、よって、異なる浮力体の個々のデューティサイクルの容易な管理が達成される。しかしながら、これは必須ではなく、よって、上昇段階の持続時間が下降段階とは異なること、例えば下降段階より長いことも可能である。
浮力体10Cは、その下降段階を終了していて、静止している。筐体14内には、蓄圧器およびポンプをバルーン17Cへ作動流体を提供するために装備されている。図示されているように、浮力体10Dのバルーン17Dは、部分的に作動流体が充填されているだけであって、蓄圧器およびポンプによる充填の過程にある。浮力体10Eのバルーン17Eは浮上するに足る正浮力を得る量にまで作動流体が蓄圧器よりバルーンが充填されると、浮力体は、海面へと浮上することができ、その上昇に伴って電気が生成される。
浮力体10Fは、その上昇段階を終了していて、静止している。図示されているように、浮力体10Fのバルーン17Fは、部分的に作動流体が充填されているだけであって、ポンプによるバルーン17Fから作動流体がポンプにより蓄圧器に移送されバルーン17Fが収縮する過程にある。沈降するに足る負浮力を得る量にまでバルーンが収縮されると、浮力体10Fは、浮力体10Aとして水中へ沈降することができ、その下降に伴って電気が生成される。