(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124003
(43)【公開日】2022-08-25
(54)【発明の名称】ナビゲーション装置および経路探索方法
(51)【国際特許分類】
G01C 21/34 20060101AFI20220818BHJP
G08G 1/0969 20060101ALI20220818BHJP
G09B 29/10 20060101ALI20220818BHJP
G09B 29/00 20060101ALI20220818BHJP
【FI】
G01C21/34
G08G1/0969
G09B29/10 A
G09B29/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021021515
(22)【出願日】2021-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(72)【発明者】
【氏名】大槻 幸平
【テーマコード(参考)】
2C032
2F129
5H181
【Fターム(参考)】
2C032HC08
2C032HD07
2C032HD16
2C032HD21
2F129AA03
2F129BB03
2F129CC15
2F129CC16
2F129DD03
2F129DD27
2F129DD30
2F129DD62
2F129EE02
2F129EE52
2F129HH12
5H181AA01
5H181CC12
5H181FF04
5H181FF05
5H181FF14
5H181FF22
5H181FF27
5H181FF32
(57)【要約】
【課題】特別な設定がない地図データを用いて、状況に応じて本線に対する支線を経由するか否かを決定して最適な経路を探索することができる「ナビゲーション装置および経路探索方法」を提供する。
【解決手段】本線から支線に移る経路および支線から同じ本線に移る経路が探索枝の中に含まれるか否かを判定する探索枝判定部22と、含まれると判定された場合に、例えば本線から支線に移る経路に対してコストを付加するコスト調整部23とを備え、コストの調整が行われた場合に、例えば本線から支線に移る経路上のノードから探索枝の延伸を再実行することにより、本線からいったん支線に移ってすぐに本線に戻るような迂回経路が探索されることを回避するとともに、本線から支線を経由して別の道路に出ていくような経路あるいは別の道路から支線を経由して本線に入るような経路が選択され得るようにする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の道路が交わる点をノード、隣接するノード間を結ぶ道路部分を道路リンクとして、現在地から目的地に至る様々な経路上に設定されたコストを用いた計算値に基づいて誘導経路を探索するようになされたナビゲーション装置であって、
上記現在地から上記目的地まで順にコストを加算し、枝狩りをしながら複数の経路に沿って探索枝を伸ばしていく探索枝伸長部と、
上記探索枝伸長部が上記現在地から上記目的地に向かって上記コストを加算しながら探索枝を伸ばしていく際に、本線から支線に移る経路および上記支線から上記本線と同じ本線に移る経路が探索枝の中に含まれるか否かを判定する探索枝判定部と、
上記本線から上記支線に移る経路および上記支線から上記同じ本線に移る経路の両方が上記探索枝の中に含まれると上記探索枝判定部により判定された場合、上記本線から上記支線に移る経路および上記支線から上記同じ本線に移る経路の少なくとも一方に対して重みのコストを付加するコスト調整部とを備え、
上記探索枝伸長部は、上記コスト調整部によりコストの調整が行われた場合、調整後のコストに基づいて、上記本線から上記支線に移る経路上のノードまたはそれより前のノードから探索枝の延伸を再実行する
ことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
上記探索枝判定部は、上記探索枝伸長部が上記現在地から上記目的地に向かって上記コストを加算しながら探索枝を伸ばしていく際に、支線から本線に対して探索枝を伸ばしたことを検知した場合、それまでに選択した選択済み探索枝を遡って、上記支線から探索枝が伸ばされた本線と同じ本線が上記選択済み探索枝の中に含まれるか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
上記探索枝判定部は、上記探索枝伸長部が上記現在地から上記目的地に向かって上記コストを加算しながら探索枝を伸ばしていく際に、支線から本線に対して探索枝を伸ばしたことを検知した場合、上記本線の道路リンクを遡って、上記支線へ分岐する本線の道路リンクが存在するか否かを判定するとともに、それまでに選択した選択済み探索枝を遡って、その選択済み探索枝の中に、上記支線へ分岐する本線の道路リンクと同じ道路リンクが存在するか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
上記支線は、上記本線に対する側道であることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
上記支線は、高速道路の本線とスマートインターチェンジを有するサービスエリアまたはパーキングエリアとの間を繋ぐ分流路であることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
複数の道路が交わる点をノード、隣接するノード間を結ぶ道路部分を道路リンクとして、現在地から目的地に至る様々な経路上に設定されたコストの計算値に基づいて誘導経路を探索する方法であって、
上記ナビゲーション装置の探索枝伸長部が、上記現在地から上記目的地まで順にコストを加算し、枝狩りをしながら複数の経路に沿って探索枝を伸ばしていく第1のステップと、
上記探索枝伸長部が上記現在地から上記目的地に向かって上記コストを加算しながら探索枝を伸ばしていく際に、上記ナビゲーション装置の探索枝判定部が、本線から支線に移る経路および上記支線から上記本線と同じ本線に移る経路が探索枝の中に含まれるか否かを判定する第2のステップと、
上記本線から上記支線に移る経路および上記支線から上記同じ本線に移る経路の両方が上記探索枝の中に含まれると上記探索枝判定部により判定された場合、上記ナビゲーション装置のコスト調整部が、上記本線から上記支線に移る経路および上記支線から上記同じ本線に移る経路の少なくとも一方に対して重みのコストを付加する第3のステップと、
上記コスト調整部によりコストの調整が行われた場合、上記探索枝伸長部が、調整後のコストに基づいて、上記本線から上記支線に移る経路上のノードまたはそれより前のノードから探索枝の延伸を再実行する第4のステップとを有する
ことを特徴とする経路探索方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置および経路探索方法に関し、特に、支線を有する道路区間の経路を探索する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ナビゲーション装置の経路探索機能では、地図データを用いて現在地から目的地までを結ぶ様々な経路のうち、最もコストが小さな経路を探索し、その探索した経路を誘導経路として地図画面上で他の道路とは色を変えて太く描画するようになっている。コストとは、距離をもとに、道路幅員、道路種別、右折および左折、交通規制、渋滞などに応じて所定の重みを乗じた値であり、誘導経路として適正の程度を数値化したものである。
【0003】
ここで、本線と側道とが存在する道路区間において、本線に渋滞が生じている一方で側道には渋滞が生じていない場合、本線の道路リンクに対するコストに大きな重みが付加されるため、本線からいったん側道に移り、すぐに本線に戻るような迂回経路が探索されてしまうことがある。このように側道をバイパスするような迂回経路が探索されることを避けるために、本線の渋滞時に側道に大きなコストをかけ、側道が探索されにくくなるようにした技術が提供されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
しかしながら、側道の道路リンクのコストを一律に重み付けすると、本来なら側道を経由して目的地に向かった方が良いケースにおいても、側道を通らずに迂回した経路が探索されてしまうことがある。これに対して、側道を経由して目的地に向かう経路が適宜探索され得るようにした技術も知られている(例えば、特許文献3,4参照)。
【0005】
特許文献3に記載のナビゲーション装置では、1つのノードに対する進入リンクと脱出リンクとの接続関係に応じて通行規制情報を定義し、進入リンクおよび脱出リンクの両方ともランプ道というリンク間接続関係に対して「通行可であるが推奨しない」という通行規制情報を定義する。これにより、ランプ道に対して一意的にリンクコストが重み付けされるのではなく、本線からランプ道に入り再び本線に戻るルートについてのみリンクコストが重み付けされるようにする一方、本線からランプ道を通過して他の道路に入るルートや、他の道路からランプ道を通過して本線に入るルートに関しては、リンクコストに対する重み付けが行われないようにして、ランプ道に無駄に降りずに本線を通るルートやランプ道を通るルートを目的地に応じて適切に設定できるようにしている。
【0006】
また、特許文献4に記載のナビゲーション装置では、所定ノードに進入する進入リンクと、当該所定ノードから退出する退出リンクとの組み合わせに応じて、進入リンクおよび退出リンクを含む経路の通過コストを変化させることにより、選択するリンクの組み合わせに応じてリンクまたはノードの通過コストを変化させながら最適経路を選択することができるようにしている。具体例として、スマートインターチェンジを有するサービスエリアまたはパーキングエリアを通過コスト可変ノードとして設定し、高速道路本線から逸脱し通過コスト可変ノードを経由して高速道路本線に合流する場合における通過コストが、高速道路本線を逸脱することなく進行する場合における通過コストより高くなるようにする一方で、高速道路本線から逸脱し通過コスト可変ノードを経由してスマートインターチェンジを通過する場合あるいはスマートインターチェンジを通過し通過コスト可変ノードを経由して高速道路本線に合流する場合における通過コストが、高速道路本線から逸脱し通過コスト可変ノードを経由して高速道路本線に合流する場合における通過コストより低くなるようにすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000-292188号公報
【特許文献2】特開2009-288136号公報
【特許文献3】特開2006-250662号公報
【特許文献4】特開2008-164562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献3に記載の技術では、ランプ道のノードに対して特別な通行規制情報を定義する必要がある。また、特許文献4に記載の技術では、スマートインターチェンジを有するサービスエリアまたはパーキングエリアを通過コスト可変ノードとして設定する必要がある。そのため、地図データ上に存在する全ての該当ノードに対して特別な通行規制情報や通過コスト可変ノードの設定を行う必要があり、これらの設定がない一般的な地図データは使えないという問題があった。
【0009】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、特別な設定がない地図データを用いて、状況に応じて本線に対する支線を経由するか否かを決定して最適な経路を探索することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決するために、本発明では、現在地から目的地に向かってコストを加算しながら探索枝を伸ばしていく際に、本線から支線に移る経路および支線から同じ本線に移る経路が探索枝の中に含まれるか否かを判定し、含まれると判定された場合に、本線から支線に移る経路および支線から同じ本線に移る経路の少なくとも一方に対してコストを付加し、本線から支線に移る経路上のノードまたはそれより前のノードから探索枝の延伸を再実行するようにしている。
【発明の効果】
【0011】
上記のように構成した本発明によれば、現在地から目的地に向かってコストを加算しながら探索枝を伸ばしていく際に、本線から支線を経由して同じ本線に戻るような経路として探索枝が選択されると、本線から支線に移る経路および支線から同じ本線に移る経路の少なくとも一方に対してコストが付加された上で探索枝の延伸が再実行されるので、本線からいったん支線に移ってすぐに本線に戻るような迂回経路が探索されることが回避される。一方、本線から支線を経由して別の道路に出ていくような経路あるいは別の道路から支線を経由して本線に入るような経路として探索枝が選択されている場合は、その探索枝の経路に対して重みのコストが付加されないので、選択済みの探索枝による経路がそのまま採用されることとなる。これにより、本発明によれば、特別な設定がない地図データを用いて、状況に応じて本線に対する支線を経由するか否かを決定して最適な経路を探索することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態によるナビゲーション装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態による経路探索部の具体的な機能構成例を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態による経路探索部の処理内容の一例を説明するための図である。
【
図4】本実施形態による経路探索部の処理内容を別の観点から説明するための図である。
【
図5】本実施形態による経路探索部の処理内容を更に別の観点から説明するための図である。
【
図6】本実施形態による経路探索の他の適用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態によるナビゲーション装置100の機能構成例を示すブロック図である。本実施形態のナビゲーション装置100は、車両に搭載されるものであってもよいし、ナビゲーション用アプリケーションがインストールされたスマートフォンまたはタブレット等のモバイル端末であってもよい。
【0014】
図1に示すように、本実施形態によるナビゲーション装置100には、地図データ記憶部10、GPS受信機20およびディスプレイ30が接続されている。なお、地図データ記憶部10は、車両に搭載されるものであってもよいし、インターネットを介してサーバ上に存在するものであってもよい。また、地図データ記憶部10をナビゲーション装置100が内蔵するようにしてもよい。
【0015】
図1に示すように、本実施形態によるナビゲーション装置100は、機能構成として、地図データ取得部11、GPS情報取得部12、自車位置特定部13、地図表示部14、経路探索部15および走行案内部16を備えている。また、本実施形態によるナビゲーション装置100は、記憶媒体として、地図データメモリ101および誘導経路メモリ102を備えている。
【0016】
上記各機能ブロック11~16は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック11~16は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記憶媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
【0017】
地図データ記憶部10は、地図表示や経路探索などに必要な地図データを記憶するものであり、例えばハードディスクにより構成される。なお、地図データ記憶部10を構成する記憶媒体としては、ハードディスクの他に、DVD、CD-ROM、半導体メモリなどを用いても良い。地図データには、地図表示に必要な各種の描画データと、マップマッチングや経路探索、経路案内等の各種の処理に必要な道路データおよび施設データとが含まれている。
【0018】
道路データは、交差点や分岐など、複数の道路が交わる点に対応するノードに関する情報と、道路上のあるノードとこれに隣接する他のノードとの間を接続する、道路や車線等に対応する道路リンクに関する情報とを含んでいる。具体的には、道路データには、全ノードの詳細データを納めた接続ノードテーブルと、全道路リンクの詳細データを納めたリンクテーブルとが含まれている。
【0019】
接続ノードテーブルには、存在するノードのそれぞれ毎に、ノード番号、接続リンク番号、ノードの正規化経度・緯度、属性フラグ、交通規制などの情報が含まれている。接続リンク番号は、そのノードが一方端となっている各道路リンクのリンク番号を、リンク本数分だけ示す。正規化経度・緯度は、区画を基準とした経度方向・緯度方向の相対位置を示す。属性フラグは、そのノードが交差点や分岐点のノードであるか否かを示す交差点フラグを含んでいる。交通規制は、そのノードに接続されている道路リンクについて右折禁止やUターン禁止等の交通規制の内容を示す。
【0020】
リンクテーブルには、存在する道路リンクのそれぞれ毎に、リンク番号、接続ノード番号、道路リンクの距離、道路属性フラグ、道路種別フラグ、路線番号、道路リンクのコスト等の情報が含まれている。接続ノード番号は、道路リンクの両端に位置する2つのノードを特定する番号を示す。道路リンクの距離は、当該道路リンクに対応した実際の道路の実距離を示す。道路属性フラグは、その道路リンクに関する各種の属性を示す。道路種別フラグは、その道路リンクに対応した実際の道路の種別を示す。道路の種別には、高速道路、国道、主要地方道、都道府県道、農道、細街路、幹線、側道、分流路などがある。路線番号は、その道路リンクに対応した実際の道路に付された番号を示す。
【0021】
道路リンクのコストは、例えば道路リンクの距離をもとに、道路幅、道路種別、右折および左折などに応じて所定の定数を乗じた値であり、誘導経路として適正の程度を数値化したものである。道路リンクのコストは、その道路リンクに対応した道路上に発生している渋滞や交通規制、経路探索条件(時間優先、距離優先、有料道路優先、一般道路優先、燃費優先など)、その他種々の要因に応じて、重みが適宜付加された値として設定される。ナビゲーション装置100は、現在地から目的地に至る様々な経路上の道路リンクに設定されたコストを用いた計算値に基づいて、誘導経路を探索するように構成されている。
【0022】
地図データ取得部11は、地図データ記憶部10から地図データを取得して地図データメモリ101に一時的に記憶させる。車両の現在位置周辺の地図をディスプレイ30に表示する場合、地図データ取得部11は、GPS情報取得部12から車両の現在位置情報を入力し、その車両現在位置を含む所定範囲の地図データを地図データ記憶部10から読み出して地図データメモリ101に格納する。また、誘導経路を探索する場合、地図データ取得部11は、現在地から目的地までを含む所定範囲の地図データを地図データ記憶部10から読み出して地図データメモリ101に格納する。
【0023】
GPS情報取得部12は、GPS受信機20で検出されるGPS情報を所定のサンプリング間隔毎に取得する。GPS情報は、緯度経度の位置情報と方位情報と時刻情報とを含む。GPS受信機20は、複数のGPS衛星から送られてくる電波をGPSアンテナで受信して、3次元測位処理あるいは2次元測位処理を行って車両の絶対位置および方位を計算する(車両方位は、現時点における自車位置と1サンプリング時間前の自車位置とに基づいて計算する)。
【0024】
なお、ここでは位置検出手段としてGPS受信機20を用いる例について説明したが、GPS受信機20に代えてまたは加えて、自立航法センサおよび位置計算用CPUを用いるようにしてもよい。自立航法センサは、所定走行距離毎に1個のパルスを出力して車両の移動距離を検出する車速センサ(距離センサ)と、車両の回転角度(移動方位)を検出する振動ジャイロ等の角速度センサ(相対方位センサ)とを含む。自立航法センサは、これらの車速センサおよび角速度センサによって車両の相対位置および方位を検出する。位置計算用CPUは、自立航法センサから出力される自車の相対的な位置および方位のデータに基づいて、絶対的な自車位置および車両方位を計算する。
【0025】
自車位置特定部13は、GPS情報取得部12によりサンプリング間隔毎にGPS受信機20から取得されるGPS情報に含まれる位置情報と、地図データメモリ101に記憶された地図データとに基づいて、地図上での自車位置をサンプリング間隔毎に特定する。ここで、自車位置特定部13は、必要に応じてマップマッチングを行う。マップマッチングとは、GPS情報取得部12により取得されたGPS情報(GPS受信機20により検出された位置情報および方位情報)と、地図データメモリ101に記憶された地図データとを用いて、自車の走行位置を地図データの道路上に位置修正する処理をいう。
【0026】
地図表示部14は、地図データメモリ101に記憶された地図データに基づいて、自車位置周辺の地図画像データを生成し、当該地図画像データに基づいて地図画像をディスプレイ30に表示させる。このとき地図表示部14は、指定された縮尺によって地図画像をディスプレイ30に表示させる。
【0027】
経路探索部15は、地図データメモリ101に記憶された地図データを用いて、自車位置特定部13により特定された車両の現在位置から、ユーザにより設定された目的地までを結ぶ誘導経路を探索する処理を行う。例えば、経路探索部15は、現在地から目的地に至る様々な経路のうち、その経路上の道路リンクに設定されたコストの合計値が最も小さくなる経路を探索する。誘導経路メモリ102は、経路探索部15により探索された誘導経路のデータを一時的に記憶する。
【0028】
経路探索部15は、例えばダイクストラ法に基づいて経路の探索を行う。ダイクストラ法では、現在地ノードから目的地ノードまで順に道路リンクのコストを加算しながら、複数の経路に沿って探索枝を伸ばしていく。探索枝を伸ばしていく過程で、途中同じノードに対して異なる経路で到着する場合は、そこまでの累積コストが低い方の経路を採用し、累積コストが高い方の経路はそれ以降の探索を中止する。それ以上探索をしても、現在地ノードから目的地ノードまでの最適経路にはなり得ないと考えられるからである。最適経路にはなり得ないと途中で判断された経路の探索を終了させることを「枝狩り」という。ダイクストラ法では、現在地ノードから目的地ノードまで枝狩りをしながら探索を進めていくため、2地点間の最適経路を効率的に求めることが可能である。
【0029】
走行案内部16は、地図データメモリ101に記憶された地図データと、誘導経路メモリ102に記憶された誘導経路データと、自車位置特定部13により特定された自車位置とを用いて、車両の走行案内を行う。例えば、走行案内部16は、自車位置特定部13により特定された自車位置を示す自車位置マークを地図上に重ねて表示することにより、車両が現在どこを走行しているのかを一目で分かるようにする。また、走行案内部16は、誘導経路メモリ102に記憶された誘導経路データを用いて、誘導経路を他の道路とは色を変えて太く描画する。また、走行案内部16は、車両が誘導経路上の案内交差点の所定距離手前に近づいたときに、ディスプレイ30に交差点拡大画像を表示して進行方向の交差点案内を行う。
【0030】
図2は、経路探索部15の具体的な機能構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、本実施形態の経路探索部15は、機能構成として、探索枝伸長部21、探索枝判定部22およびコスト調整部23を備えている。
【0031】
探索枝伸長部21は、現在地ノードから目的地ノードまで順に道路リンクのコストを加算し、枝狩りをしながら複数の経路に沿って探索枝を伸ばしていく処理を実行する。探索枝判定部22は、探索枝伸長部21が現在地ノードから目的地ノードに向かってコストを加算しながら探索枝を伸ばしていく際に、本線から支線に移る経路および支線から当該本線と同じ本線に移る経路が探索枝の中に含まれるか否かを判定する。本線から支線に移る経路および支線から同じ本線に移る経路の両方が探索枝の中に含まれる場合、その両方の経路は、本線からいったん支線に移った後、支線から本線に戻るような迂回経路に相当する。
【0032】
コスト調整部23は、本線から支線に移る経路および支線から同じ本線に移る経路の両方が探索枝の中に含まれると探索枝判定部22により判定された場合、本線から支線に移る経路および支線から同じ本線に移る経路の少なくとも一方に対して重みのコストを付加する。探索枝伸長部21は、コスト調整部23により以上のようなコストの調整が行われた場合、調整後のコストに基づいて、本線から支線に移る経路上のノードまたはそれより前のノードから探索枝の延伸を再実行する。
【0033】
図3は、
図2に示した経路探索部15の処理内容の一例を説明するための図である。以下、この
図3を用いて経路探索部15の処理内容の一例を説明する。
図3は、本線と側道(支線の一例)とが並行して存在する道路区間を示している。矢印の1つ1つは道路リンクLK1~LK10である。このうち、道路リンクLK1~LK6は本線に関するものであり、道路リンクLK7~LK10は側道に関するものである。○印は本線と側道との分岐点および合流点に関するノードND1,ND2である。なお、他のノードは図示を省略している。ここでは、本線において渋滞が発生しており、本線の道路リンクLK1~LK6に対して通常より大きなコストが付加されているものとする。
【0034】
図3(a)の例において、探索枝伸長部21は、本線の経路に沿ってLK1→LK2→LK3→LK4→LK5→LK6の順に道路リンクの探索枝を伸ばしていくとともに、本線から側道に移った後に本線に戻る経路に沿ってLK1→LK2→LK7→LK8→LK9→LK10→LK6の順に道路リンクの探索枝を伸ばしていく。このように探索枝を伸ばしていくと、途中の合流ノードND2に対して本線および側道の異なる経路で探索枝が到着するため、そこまでの累積コストに基づいて枝狩りが行われる。ここで、本線の道路リンクLK1~LK6には渋滞による重みのコストが付加されているため、
図3(b)に点線矢印で示すように、本線の経路が枝狩りされる。
【0035】
探索枝判定部22は、探索枝伸長部21がコストを加算しながら探索枝を伸ばしていく際に、
図3(c)のように側道の道路リンクLK10から本線の道路リンクLK6に対して探索枝を伸ばしたことを検知した場合、
図3(d)のようにそれまでに選択した側道の選択済み探索枝を遡って、道路リンクLK6の本線と同じ本線が選択済み探索枝の中に含まれるか否かを判定する。ここで、道路リンクLK6の本線と同じ本線が選択済み探索枝の中に含まれるか否かを判定する処理として、探索枝判定部22は、具体的に以下のような処理を行う。
【0036】
すなわち、探索枝判定部22は、
図3(c)のように側道の道路リンクLK10から本線の道路リンクLK6に対して探索枝が伸ばされたことを検知した場合、
図3(d)のように、本線の道路リンクLK1~LK6を遡って、側道へ分岐する本線の道路リンクが存在するか否かを判定するとともに、それまでに選択した側道がわの選択済み探索枝を遡って、その選択済み探索枝の中に、側道へ分岐する本線の道路リンクと同じ道路リンクが存在するか否かを判定する。
【0037】
図3(d)では、探索枝判定部22は、道路リンクLK6から本線を遡った先に、側道へ分岐する本線の道路リンクLK2が存在することを検知する。また、探索枝判定部22は、道路リンクLK6から側道がわの選択済み探索枝を遡った先にも、側道へ分岐する本線の道路リンクLK2が存在することを検知する。すなわち、道路リンクLK6から本線を遡った先にも側道を遡った先にも同じ本線の道路リンクLK2が存在する。よって、この場合に探索枝判定部22は、側道から探索枝が伸ばされた本線と同じ本線が選択済み探索枝の中に含まれると判定する。
【0038】
なお、道路リンクLK6の本線と同じ本線が選択済み探索枝の中に含まれるか否かを判定する処理は、
図3(d)に示した例に限定されない。例えば、本線の道路リンクLK1~LK6は遡らず、側道がわの選択済み探索枝だけ遡って判定を行うようにしてもよい。例えば、探索枝判定部22は、
図3(c)のように側道の道路リンクLK10から本線の道路リンクLK6に対して探索枝が伸ばされたことを検知した場合、道路リンクLK6の路線番号を特定した上で、それまでに選択した側道がわの選択済み探索枝を遡り、その選択済み探索枝の中に、側道へ分岐する本線の道路リンクであって、道路リンクLK6の路線番号と同じ路線番号の道路リンクが存在するか否かを判定するようにしてもよい。
【0039】
図3(d)では、探索枝判定部22は、道路リンクLK6から側道がわの選択済み探索枝を遡った先に、側道へ分岐する本線の道路リンクLK2が存在することを検知する。そして、探索枝判定部22は、この道路リンクLK2の路線番号が道路リンクLK6の路線番号と同じであることを検知する。よって、この場合に探索枝判定部22は、側道から探索枝が伸ばされた本線と同じ本線が選択済み探索枝の中に含まれると判定する。
【0040】
コスト調整部23は、以上のようにして、側道から探索枝が伸ばされた本線と同じ本線が選択済み探索枝の中に含まれると判定された場合、すなわち、本線から側道に移る経路(本線の道路リンクLK2から側道の道路リンクLK7に移る経路)および側道から同じ本線に移る経路(側道の道路リンクLK10から本線の道路リンクLK6に移る経路)の両方が選択済み探索枝の中に含まれると判定された場合、例えば
図3(c)に示した道路リンクLK10→LK6の経路に対して重みのコストを付加する。ここで付加する重みのコストは、渋滞に基づき付加する重みのコストよりも十分に大きな値とする。なお、道路リンクLK10→LK6の経路に代えてまたは加えて、道路リンクLK2→LK7の経路に対して重みのコストを付加するようにしてもよい。
【0041】
探索枝伸長部21は、以上のようにしてコスト調整部23によりコストの調整が行われた場合、調整後のコストに基づいて、本線から支線に移る経路上の分岐ノードND1またはそれより前のノードから探索枝の延伸を再実行する。この場合、探索枝伸長部21は、本線の経路に沿ってLK1→LK2→LK3→LK4→LK5→LK6の順に道路リンクの探索枝を伸ばしていくとともに、本線から側道に移った後に本線に戻る経路に沿ってLK1→LK2→LK7→LK8→LK9→LK10→LK6の順に道路リンクの探索枝を伸ばしていく。そして、探索枝が合流ノードND2に達した時点で枝狩りを行う。ここでは、渋滞のコストよりも大きなコストが道路リンクLK10→LK6の経路に付加されているため、
図3(e)に点線矢印で示すように、側道の経路が枝狩りされる。
【0042】
図4は、
図2に示した経路探索部15の処理内容を別の観点から説明するための図である。
図4は、本線と側道とが並行して存在し、かつ、側道の中に他の道路の道路リンクLK11と接続するノードND3が存在する道路区間を示している。ここでは、本線において渋滞は発生していないものとする。また、道路リンクLK11の先の方向に目的地が設定されているものとする。
【0043】
図4の例において、探索枝伸長部21は、本線の経路に沿ったLK1→LK2→LK3→LK4→LK5→LK6→・・・の順、本線から側道に移ってすぐに本線に戻る経路に沿ったLK1→LK2→LK7→LK8→LK9→LK10→LK6→・・・の順、および、本線から側道を経由して別の道路に移る経路に沿ったLK1→LK2→LK7→LK8→LK11→・・・の順に、それぞれ道路リンクの探索枝を伸ばしていく。この場合、本線から側道に移ってすぐに本線に戻る経路については、
図3と同様の処理が行われる結果、枝狩りされる。
【0044】
また、LK1→LK2→LK7→LK8→LK11→・・・の順に探索枝が伸ばされた経路について算出される累積コストが、LK1→LK2→LK3→LK4→LK5→LK6→・・・の順に探索枝が伸ばされた経路について算出される累積コストより小さければ、本線から側道を経由して目的地に向かう経路が選択され、側道を通らずに本線を走行し続ける経路は何れどこかのノードで枝狩りされる。
【0045】
図5は、
図2に示した経路探索部15の処理内容を更に別の観点から説明するための図である。
図5は、本線と側道とが並行して存在し、かつ、側道の中に他の道路の道路リンクLK11と接続するノードND3が存在する道路区間を示している。ここでは、本線において渋滞は発生していないものとする。また、道路リンクLK11の手前方向に現在値があり、道路リンクLK6の先の方向に目的地が設定されているものとする。
【0046】
図5の例において、探索枝伸長部21は、他の道路から側道に入って本線に移る経路に沿ってLK11→LK9→LK10→LK6→・・・の順に道路リンクの探索枝を伸ばしていく。この場合、
図5(a)のように、探索枝判定部22は、側道の道路リンクLK10から本線の道路リンクLK6に対して探索枝が伸ばされたことを検知する。
【0047】
この場合、探索枝判定部22は、
図5(b)に示すように、道路リンクLK6から本線の道路リンクを遡って、側道へ分岐する本線の道路リンクが存在するか否かを判定するとともに、それまでに選択した選択済み探索枝を道路リンクLK6から遡って、その選択済み探索枝の中に、側道へ分岐する本線の道路リンクと同じ道路リンクが存在するか否かを判定する。
【0048】
図5(b)では、探索枝判定部22は、道路リンクLK6から本線の道路リンクLK1~LK5を遡った先に、側道へ分岐する本線の道路リンクLK2が存在することを検知する。一方、探索枝判定部22は、道路リンクLK6から側道の選択済み探索枝を遡った先に、側道へ分岐する本線の道路リンクLK2が存在することを検知しない。よって、この場合に探索枝判定部22は、側道から探索枝が伸ばされた本線と同じ本線が選択済み探索枝の中に含まれていないと判定する。
【0049】
従って、コスト調整部23によって道路リンクLK10→LK6の経路に対して重みのコストが付加されることはない。コスト調整部23によるコストの調整が行われないので、探索枝伸長部21による探索枝の延伸処理も再実行されない。このため、
図5(c)に示すように、LK11→LK9→LK10→LK6→・・・の順に探索枝が伸ばされた経路について算出された累積コストが、他の経路について算出された累積コストより小さければ、側道から本線に入って目的地に向かう経路が枝狩りされることなく選択される。
【0050】
以上詳しく説明したように、本実施形態では、現在地から目的地に向かってコストを加算しながら探索枝を伸ばしていく際に、本線から支線に移る経路および支線から同じ本線に移る経路が探索枝の中に含まれるか否かを判定し、含まれると判定された場合に、本線から支線に移る経路および支線から同じ本線に移る経路の少なくとも一方に対してコストを付加し、本線から支線に移る経路上のノードまたはそれより前のノードから探索枝の延伸を再実行するようにしている。
【0051】
このように構成した本実施形態によれば、現在地から目的地に向かってコストを加算しながら探索枝を伸ばしていく際に、本線から側道を経由して同じ本線に戻るような経路(
図3参照)として探索枝が選択されると、本線から側道に移る経路および側道から同じ本線に移る経路の少なくとも一方に対してコストが付加された上で探索枝の延伸が再実行されるので、本線からいったん側道に移ってすぐに本線に戻るような迂回経路が探索されることが回避される。
【0052】
一方、本線から側道を経由して別の道路に出ていくような経路(
図4参照)あるいは別の道路から側道を経由して本線に入るような経路(
図5参照)として探索枝が選択されている場合は、その経路に対して重みのコストが付加されないので、選択済みの探索枝による経路がそのまま採用されることとなる。
【0053】
これにより、本実施形態によれば、特別な設定がない地図データを用いて、側道上に分岐や合流のノードがあるか否か、目的地や現在地などの状況に応じて、本線に対する側道を経由するか否かを決定して最適な誘導経路を探索することができる。
【0054】
なお、上記実施形態では、支線の一例として側道がある道路区間を挙げて説明したが、適用可能な支線は側道に限定されない。例えば、
図6に示すように、高速道路の本線と、スマートインターチェンジを有するサービスエリアまたはパーキングエリアとの間を繋ぐ分流路がある道路区間に適用することも可能である。すなわち、
図6(a)の高速道路本線に渋滞が生じていても、高速道路本線から分流路に移ってSA/PAを経由した後に高速道路本線に戻る経路(LK1→LK2→LK7→LK8→LK9→LK10→LK6)が選択されることはなく、高速道路本線を走行し続ける経路(LK1→LK2→LK3→LK4→LK5→LK6)が選択される。また、
図6(b)のようにスマートICの先の方向に目的地がある場合や、
図6(c)のようにスマートICの手前の方向に現在地がある場合は、分流路を経由する経路が選択され得る。
【0055】
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0056】
15 経路探索部
21 探索枝伸長部
22 探索枝判定部
23 コスト調整部