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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124028
(43)【公開日】2022-08-25
(54)【発明の名称】フロントフォーク
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/32 20060101AFI20220818BHJP
   F16F 9/19 20060101ALI20220818BHJP
   F16F 9/46 20060101ALI20220818BHJP
   F16B 37/00 20060101ALI20220818BHJP
   F16B 7/18 20060101ALI20220818BHJP
   B62K 25/08 20060101ALI20220818BHJP
【FI】
F16F9/32 N
F16F9/19
F16F9/32 K
F16F9/46
F16F9/32 C
F16B37/00 Z
F16B7/18 A
B62K25/08 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021021556
(22)【出願日】2021-02-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】514241869
【氏名又は名称】KYBモーターサイクルサスペンション株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】菅原 英利
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】林口 拓未
(72)【発明者】
【氏名】前田 啓勝
【テーマコード(参考)】
3D014
3J039
3J069
【Fターム(参考)】
3D014DD02
3D014DD08
3D014DE02
3D014DE15
3J039AA03
3J039BB01
3J039GA01
3J039GA06
3J069AA46
3J069CC03
3J069CC11
3J069CC15
3J069DD47
3J069EE03
3J069EE63
(57)【要約】
【課題】内部の電気機器へ電力供給する電線の捩れを防止できるフロントフォークを提供する。
【課題を解決するための手段】
本発明のフロントフォーク1は、車体側チューブ3と車軸側チューブ4とを有するフォーク本体2と、車体側チューブ3に装着されるキャップ本体5と、車軸側チューブ4内に設けられるシリンダ6と、シリンダ6内に軸方向へ移動自在に挿入される筒状のロッド7と、シリンダ6内に収容される電気機器8と、ロッド7内に挿通されてキャップCを貫通してフォーク本体2の外方へ引き出されるとともに電気機器8に接続される電線9とを備え、キャップCにおける接続筒13bとロッド7とを接続筒13b或いはロッド7の一方の外周に他方側への軸方向への移動が規制されるとともに回転自在に装着され、他方に螺着される連結ナット27で連結した。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側チューブと車軸側チューブとを有して伸縮可能なテレスコピック型のフォーク本体と、
前記車体側チューブの車体側端に装着されるキャップと、
前記車軸側チューブ内に設けられるシリンダと、
前記シリンダ内に軸方向へ移動自在に挿入されるとともに、一端が前記キャップに連結される筒状のロッドと、
前記シリンダ内に収容される電気機器と、
前記電気機器に接続されるとともに前記ロッド内に挿通されて前記キャップを貫通して前記フォーク本体から外方へ引き出される電線とを備え、
前記キャップは、前記ロッドに連結される接続筒を有し、
前記接続筒と前記ロッドの一方の外周の所定位置にて他方側への軸方向への移動が規制されるとともに回転自在に装着され、前記接続筒と前記ロッドの他方の外周に螺着される環状の連結ナットによって前記接続筒と前記ロッドとが連結される
ことを特徴とするフロントフォーク。
【請求項2】
前記接続筒が前記ロッドのキャップ側端の内周或いは外周に嵌合され、
前記接続筒と前記ロッドのキャップ側端のうち内周側に配置される一方は、他方の端部に当接するフランジを有し、
前記接続筒と前記ロッドのキャップ側端のうち外周側に配置される他方は、外周に螺子部を有し、
前記連結ナットは、前記螺子部に螺着されて前記フランジを前記接続筒と前記ロッドのキャップ側端のうち外周側に配置される他方とで挟持して前記キャップと前記ロッドとを連結する
ことを特徴とする請求項1に記載のフロントフォーク。
【請求項3】
前記連結ナットは、
前記螺子部に螺着される環状のナット部と、
前記ナット部の軸方向の一端に連なって、前記接続筒と前記ロッドのキャップ側端のうち内周側に配置される一方の外周に軸方向へ移動可能に装着される環状の延長部とを有し、
前記延長部の少なくとも一部の外周形状は、工具による把持を可能とする形状とされている
ことを特徴とする請求項1または2に記載のフロントフォーク。
【請求項4】
前記ロッドは、
前記シリンダ内に出入りする筒状の小径ロッドと、
一端が前記小径ロッドの反シリンダ側端に連結されるとともに前記小径ロッドよりも内径が大径な大径ロッドとを有し、
前記電線は、
前記小径ロッド内に収容される内方ケーブルと、
前記大径ロッド内に収容されるとともに前記キャップを貫通して前記フォーク本体から外方へ引き出される外方ケーブルと、
前記大径ロッド内に収容されて前記内方ケーブルと前記外方ケーブルとを接続するコネクタとを有し、
前記大径ロッドの他端が前記連結ナットによって前記キャップに連結される
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のフロントフォーク。
【請求項5】
前記ロッドのキャップ側端が前記接続筒の内周に嵌合されている
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のフロントフォーク。
【請求項6】
前記ロッドの外周に配置されて前記フォーク本体内に収容されるとともに前記フォーク本体を伸長方向へ付勢する懸架ばねと、
前記ロッドの外周であって前記フランジよりもシリンダ側に離間した位置に設けられて前記連結ナットの前記延長部のシリンダ側への移動を規制するストッパを備え、
前記ストッパは、前記懸架ばねの上端を支持可能な工具の取り付けを可能とする取付部を有する
ことを特徴とする請求項2に従属する請求項5に記載のフロントフォーク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントフォークに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鞍乗車両の前側の操向輪を支持するフロントフォークとしては、たとえば、車体側チューブと車体側チューブ内に移動自在に挿入される車軸側チューブとを備えたフォーク本体と、フォーク本体内に収容されてフォーク本体の伸縮に伴って伸縮するダンパとを備えたテレスコピック型のフロントフォークが知られている。
【0003】
ダンパは、シリンダと、シリンダ内を作動液体が充填される伸側室と圧側室とに区画するピストンと、シリンダ内に軸方向へ移動自在に挿入されるとともにピストンに連結されるピストンロッドとを備えている。そして、ダンパは、たとえば、ピストンロッドが車体側チューブの上端を閉塞するキャップに連結され、シリンダが車軸側チューブの下端に固定されてフォーク本体内に収容される。
【0004】
このようなフロントフォークでは、鞍乗車両の乗心地向上のためにダンパが発生する減衰力をフロントフォーク外に設置されるコントローラによって調節できるものがある。減衰力の自動調節が可能なフロントフォークは、たとえば、電気粘性流体或いは電磁粘性流体をダンパの作動液体としてピストン内に収容されるコイルへ供給する電流量の調節によって作動液体の粘度を変化させて減衰力を変化させる。また、減衰力の自動調節が可能な他のフロントフォークとしては、ピストン内にソレノイドバルブを収容していてソレノイドバルブへの通電量を調節してダンパの減衰力を調節するものもある(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-190405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように減衰力の自動調節が可能なフロントフォークでは、ダンパ内に減衰力を調節するためのコイルやソレノイドバルブといった電気機器を備えており、外部電源やコントローラから電気機器へ電力供給する必要がある。そこで、従来のフロントフォークでは、ピストンロッドを筒状とするとともにキャップに配線を通す通し孔を設け、電気機器に接続された配線をシールしつつピストンロッド内とキャップの通し孔を通してフォーク本体外へ引き出して外部電源等に接続している。
【0007】
ところが、従来のフロントフォークにあっては、キャップの下方側に延びた筒部の内周に設けた螺子部にピストンロッドの上端に設けた螺子部を螺子締結して、電線を保持しているキャップにピストンロッドを連結している。そのため、キャップとピストンロッドとの螺子締結時には、どうしてもキャップをピストンロッドに対して回転させる必要があり、電線が捩れてしまうという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、内部の電気機器へ電力供給する電線の捩れを防止できるフロントフォークの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するため、本発明の課題解決手段におけるフロントフォークは、車体側チューブと車軸側チューブとを有して伸縮可能なテレスコピック型のフォーク本体と、車体側チューブの車体側端に装着されるキャップと、車軸側チューブ内に設けられるシリンダと、シリンダ内に軸方向へ移動自在に挿入されるとともに一端がキャップ本体に連結される筒状のロッドと、シリンダ内に収容される電気機器と、電気機器に接続されるとともにロッド内に挿通されてキャップを貫通してフォーク本体から外方へ引き出される電線とを備え、キャップは、ロッドに連結される接続筒を有し、接続筒とロッドの一方の外周に他方側への軸方向への移動が規制されるとともに回転自在に装着され、接続筒とロッドの他方の外周に螺着される環状の連結ナットによって接続筒とロッドとが連結される。
【0010】
このように構成されたフロントフォークでは、連結ナットが接続筒とロッドの一方の外周に他方への移動が規制されるものの周方向へ回転自在に装着されているので、連結ナットを接続筒とロッドのうち他方の外周への螺合が進むと、連結ナットによって接続筒とロッドとが回転せずに引き寄せられて連結される。よって、前述のフロントフォークでは、キャップをロッドに着脱する場合、キャップとロッドとを周方向に回転させずに連結ナットのみを回転させればよい。
【0011】
そして、接続筒がロッドのキャップ側端の外周或いは内周に嵌合され、接続筒とロッドのキャップ側端のうち内周側に配置される一方は、他方の端部に当接するフランジを有し、接続筒とロッドのキャップ側端のうち外周側に配置される他方は、外周に螺子部を有し、連結ナットは、螺子部に螺着されてフランジを接続筒とロッドのキャップ側端のうち外周側に配置される他方とで挟持してキャップとロッドとを連結してもよい。このように構成されたフロントフォークによれば、接続筒がロッドの外周或いは内周に嵌合されるので、連結ナットにおける接続部分において曲げモーメントにも十分に耐え得る強度を得ることができ、フロントフォークの実用性を向上させ得る。
【0012】
また、フロントフォークにおける連結ナットは、螺子部に螺着される環状のナット部と、ナット部の軸方向の一端に連なって接続筒とロッドのキャップ側端うち内周側に配置される一方の外周に軸方向へ移動可能に装着される環状の延長部とを備え、延長部の少なくとも一部の外周形状が工具による把持を可能とする形状とされてもよい。このように構成されたフロントフォークによれば、連結ナットの外形を小型化でき、フロントフォークの外径の小型化が可能となる。
【0013】
さらに、フロントフォークにおけるロッドは、シリンダ内に出入りする筒状の小径ロッドと、一端が小径ロッドの反シリンダ側端に連結されるとともに小径ロッドよりも内径が大径な大径ロッドとを有し、電線は、小径ロッド内に収容される内方ケーブルと、大径ロッド内に収容されるとともにキャップを貫通してフォーク本体から外方へ引き出される外方ケーブルと、大径ロッド内に収容されて内方ケーブルと外方ケーブルとを接続するコネクタとを有し、大径ロッドの他端が連結ナットによってキャップに連結されてもよい。このように構成されたフロントフォークによれば、電線がコネクタによって内方ケーブルと外方ケーブルとに分離できるので、キャップと外方ケーブルとを完全にフォーク本体から取り外すことができ、メンテナンス作業が容易となる。また、嵩張るコネクタをシリンダ外の大径ロッド内に収容しつつシリンダ内には外径が小径の小径ロッドのみを挿入しているので、シリンダを大径化することなくピストンの受圧面積を確保でき、フロントフォークの大型化を回避しつつも伸側減衰力を十分に発揮できる。
【0014】
また、フロントフォークは、ロッドのキャップ側端が接続筒の内周に嵌合される構造を採用する場合、フロントフォークの外径の小型化が可能となる。
【0015】
さらに、フロントフォークは、ロッドの外周に配置されてフォーク本体内に収容されるとともにフォーク本体を伸長方向へ付勢する懸架ばねと、ロッドの外周であってフランジよりもシリンダ側に離間した位置に設けられて連結ナットの延長部のシリンダ側への移動を規制するストッパを備え、ストッパが懸架ばねの上端を支持可能な工具の取り付けを可能とする環状溝(取付部)を有してもよい。このように構成されたフロントフォークによれば、ストッパに取り付けられた工具に懸架ばねの上端を支持させて連結ナットの回転操作の際に懸架ばねに邪魔されずに済むため、キャップのロッドに対する着脱作業を容易に行える。
【発明の効果】
【0016】
よって、本発明のフロントフォークによれば、内部の電気機器へ電力供給する電線の捩れを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施の形態におけるフロントフォークの縦断面図である。
図2】本発明の一実施の形態におけるフロントフォークの上端部分の拡大縦断面図である。
図3】本発明の一実施の形態のフロントフォークを軸方向から見た拡大平面図である。
図4】本発明の一実施の形態のフロントフォークにおけるアジャスタ部分の拡大断面図である。
図5】本発明の一実施の形態のフロントフォークを分化する手順を説明する図である。
図6】本発明の一実施の形態の変形例のフロントフォークにおける接続筒とロッドとの接続部分の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。一実施の形態におけるフロントフォーク1は、図1および図2に示すように、車体側チューブ3と車軸側チューブ4とを有して伸縮可能なテレスコピック型のフォーク本体2と、車体側チューブ3の車体側端に装着されるキャップCと、車軸側チューブ4内に設けられるシリンダ6と、シリンダ6内に軸方向へ移動自在に挿入されるとともに一端がキャップCに連結される筒状のロッドとしてのピストンロッド7と、シリンダ6内に収容される電気機器としてのソレノイド8と、ソレノイド8に接続されるとともにピストンロッド7内に挿通されてキャップCを貫通してフォーク本体2から外方へ引き出される電線9と、キャップCとピストンロッド7とを連結する連結ナット27とを備えて構成されている。フロントフォーク1は、車体側チューブ3が図示しない鞍乗車両における車体に連結されるとともに車軸側チューブ4が図示しない鞍乗車両の前輪に連結されて鞍乗車両に利用され、鞍乗車両の走行中の振動で車体側チューブ3と車軸側チューブ4とがフォーク本体2の軸心線Aに沿って相対変位して伸縮する。
【0019】
以下、一実施の形態のフロントフォーク1の各部について詳細に説明する。図1および図2に示すように、フロントフォーク1は、車体側チューブ3と、車体側チューブ3内に摺動自在に挿入される車軸側チューブ4とを有して構成されるテレスコピック型のフォーク本体2を備えている。フォーク本体2は、振動が作用すると、車軸側チューブ4が車体側チューブ3に出入りしてフォーク本体2が伸縮する。なお、本実施の形態では、フォーク本体2は、車体側チューブ3内に車軸側チューブ4が挿入される倒立型になっているが、車体側チューブ3が車軸側チューブ4内に挿入される正立型とされてもよい。
【0020】
つづいて、フォーク本体2の車体側端となる車体側チューブ3の図2中上端には、キャップCが装着されていて、当該キャップCによって車体側チューブ3の上端の開口部が閉塞されている。また、フォーク本体2の下端となる車軸側チューブ4の図1中下端は、車軸側のブラケット30で塞がれている。さらに、車体側チューブ3と車軸側チューブ4の重複部の間にできる筒状の隙間は、車体側チューブ3の下端に装着されて車軸側チューブ4の外周に摺接する環状のシール部材20で塞がれている。
【0021】
このようにしてフォーク本体2内は密閉空間とされており、そのフォーク本体2内にダンパDが収容されている。このダンパDは、車軸側チューブ4内に収容されるシリンダ6と、シリンダ6内に摺動自在に挿入されるピストン21と、下端がピストン21に連結されるとともに上端がシリンダ6外へと突出してキャップCを介して連結されるピストンロッド7とを備えている。
【0022】
前述したように、ピストンロッド7はキャップCを介して車体側チューブ3に連結されており、シリンダ6は、車軸側チューブ4に連結されている。このように、ダンパDは、車体側チューブ3と車軸側チューブ4との間に介装されており、フォーク本体2の伸縮に伴ってシリンダ6に対してピストンロッド7が軸方向に相対移動して伸縮する。
【0023】
また、ピストンロッド7は、本実施の形態では、ピストン21に連結される小径ロッドとしての筒状のピストン保持ロッド7aと、ピストン保持ロッド7aの上端に螺子締結される大径ロッドとしての筒状のコネクタ収容ロッド7bとを備えており、キャップCの下端に連結ナット27によって連結されている。
【0024】
ピストン保持ロッド7aは、図1中上端外周に設けられた螺子部7a1と、螺子部7a1の至近の外周に装着されたシールリング7a2とを備えており、図1中の下端がピストン21に連結されている。
【0025】
また、コネクタ収容ロッド7bは、ピストン保持ロッド7aより大径であって、図1中下端内周に螺子部7b1を備えている。そして、ピストン保持ロッド7aの上端の螺子部7a1とコネクタ収容ロッド7bの図1中下端内周の螺子部7b1に螺合させることで、ピストン保持ロッド7aとコネクタ収容ロッド7bとが螺子締結によって連結される。このように連結されたピストン保持ロッド7aとコネクタ収容ロッド7bとの間は、前述のシールリング7a2によってシールされる。なお、ピストン保持ロッド7aとコネクタ収容ロッド7bとは、一体の一部品で構成されてもよい。
【0026】
さらに、コネクタ収容ロッド7bは、図1中上端外周にフランジ7b2を備えている。また、コネクタ収容ロッド7bの外周であってフランジ7b2よりシリンダ6側の外周に軸方向に間隔をあけた位置に環状のストッパ28が取り付けられている。
【0027】
連結ナット27は、環状であって内周に螺子溝を備えたナット部27aと、ナット部27aの軸方向のシリンダ側端に連なる環状の延長部27bとを備えている。ナット部27aの内径は、フランジ7b2の外径よりも大径となっているが、延長部27bの内径は、フランジ7b2の外径よりも小径であってコネクタ収容ロッド7bの外径よりも少し大径に設定されている。
【0028】
よって、連結ナット27は、途中で図1中上方側の内径が拡径していてコネクタ収容ロッド7bのフランジ7b2の図1中下面に対向する段部27cを備えている。そして、ナット部27a側を上にした状態の連結ナット27の内周にフランジ7b2側を上にしたコネクタ収容ロッド7bを連結ナット27の上方から挿入すると、連結ナット27がコネクタ収容ロッド7bの外周に軸方向へ移動可能に嵌合される。その後に、コネクタ収容ロッド7bの外周にフランジ7b2から延長部27bの軸方向長さ以上離間させた位置にストッパ28が装着されて固定される。
【0029】
連結ナット27の延長部27bは、コネクタ収容ロッド7bの外周に遊嵌された状態で、フランジ7b2に対して軸方向で段部27bを対向させ、ストッパ28に対して軸方向でシリンダ側端を対向させている。そのため、延長部27bは、段部27cがフランジ7b2に当接すると反シリンダ側への移動が規制され、図1中下端がストッパ28に当接するとシリンダ側への移動が規制される。よって、連結ナット27は、フランジ7b2とストッパ28との間の範囲で軸方向へ移動可能とされるが、コネクタ収容ロッド7bからは脱落することがない。また、延長部27bの外周の断面形状は、本実施の形態では、六角形とされている。よって、ユーザは、図示しないレンチ等の工具で延長部27bを把持して連結ナット27を容易に回転操作できる。なお、ストッパ28の外周には、たとえば、C型の図示しない工具の取り付けを可能とする取付部としての環状溝28aが形成されている。
【0030】
つづいて、シリンダ6は、筒状であって、図1中上端が環状のロッドガイド22が装着されている。そして、ロッドガイド22の内側には、ピストンロッド7におけるピストン保持ロッド7aが軸方向へ移動自在に挿通されている。ロッドガイド22は、ピストンロッド7を摺動自在に支えており、ピストンロッド7の図1中上下方向への移動を案内している。
【0031】
シリンダ6内には、作動油等の液体が充填された液室Lが形成されており、この液室Lがピストン21で伸側室R1と圧側室R2とに区画されている。ここでいう伸側室R1とは、ピストンで区画された二室のうち、ダンパDの伸長時にピストン21で圧縮される方の部屋のことである。その一方、圧側室R2とは、ピストン21で区画された二室のうち、ダンパDの収縮時にピストン21で圧縮される方の部屋のことである。また、ピストン21は、ピストンロッド7におけるピストン保持ロッド7aの下端に連結されている。
【0032】
このように、本実施の形態のフロントフォーク1におけるダンパDは片ロッド型で、ピストンロッド7がピストン21の片側からシリンダ6外へ延びている。しかし、ダンパDが両ロッド型になっていて、ピストンロッドがピストンの両側からシリンダ外へ延びていてもよい。
【0033】
また、シリンダ6外、より詳しくは、ダンパDとフォーク本体2との間の空間は液溜室Rとされている。この液溜室Rには、シリンダ6内の液体と同じ液体が貯留されるとともに、その液面上側にエア等の気体の封入されたガス室Gが形成されている。このように、フォーク本体2は、シリンダ6内の液体とは別に、液体を貯留するタンクの外殻として機能する。
【0034】
なお、図示はしないが、液溜室Rは圧側室R2と連通されており、圧側室R2から液溜室Rへ向かう液体の流れに抵抗を与える減衰バルブと、液溜室Rから圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容する逆止弁とが設けられている。
【0035】
また、ピストン21には、伸側室R1と圧側室R2とを連通する減衰通路21aと、減衰通路21aを通過する液体の流れに抵抗を与えるソレノイドバルブSVとが設けられている。ソレノイドバルブSVは、電気機器としてのソレノイド8と、ソレノイド8によって駆動される弁体25とを備えている。
【0036】
本実施の形態におけるフロントフォーク1では、ソレノイド8は、詳しくは図示しないが、たとえば、巻線と、固定鉄心と、巻線内に軸方向へ移動可能に挿入される可動鉄心と、可動鉄心を付勢するばねとを備えており、巻線への通電によって可動鉄心を固定鉄心側へ吸引して、可動鉄心に推力を与える。そして、ソレノイド8は、可動鉄心に与える推力を弁体25へ伝達しており、巻線に流れる電流の調節によって弁体25へ与える推力を調整できる。よって、ソレノイドバルブSVは、減衰通路21aを通過する液体の流れに与える抵抗をソレノイド8への通電量によって調整できるようになっている。ソレノイドバルブSVは、開弁圧の調節が可能な可変リリーフ弁であってもよいし、減衰通路21aの開度を調節可能なスプール弁とされてもよい。なお、減衰通路21aには、ソレノイドバルブSVに対して直列或いは並列にオリフィスや減衰バルブを設けてもよい。
【0037】
そして、ソレノイドバルブSVにおける電気機器としてのソレノイド8は、ピストンロッド7内に収容される電線9を通じて図外の外部電源から電力供給を受けるようになっている。電線9は、ソレノイド8の図外の巻線に接続されるとともにピストンロッド7内に挿通される内方ケーブル9aと、内方ケーブル9aにコネクタ9cを介して接続されるとともにキャップCに保持されてフォーク本体2の外方へと引き出される外方ケーブル9bとを備えている。
【0038】
外方ケーブル9bは、一端がコネクタ9cを介して内方ケーブル9aに接続され、他端に図外の外部電源に接続された電線への接続を可能とするカプラ9b1を備えている。よって、カプラ9b1を外部電源側の図外の電線に接続すると、電線9を通じてソレノイド8の巻線への通電が可能となる。
【0039】
コネクタ9cは、内部に外方ケーブル9bに電気的に接続される図示しないピンを備えたプラグ9c1と、内部に内方ケーブル9aを介してソレノイド8の巻線に電気的に接続される図示しないコンタクトを備えたレセプタクル9c2とを備えている。そして、コネクタ9cは、レセプタクル9c2にプラグ9c1を差し込むと前記ピンが前記コンタクトに挿入された状態に維持して、内方ケーブル9aと外方ケーブル9bとを電気的に接続させる。レセプタクル9c2からプラグ9c1を取り外すと前記ピンと前記コンタクトの接触が断たれて内方ケーブル9aと外方ケーブル9bとを電気的に切り離す。なお、外方ケーブル9bをレセプタクル9c2に接続し、内方ケーブル9aをプラグ9c1に接続してもよい。
【0040】
コネクタ9cの最大幅は、ピストンロッド7におけるコネクタ収容ロッド7bの内径よりも小さく、コネクタ9cをコネクタ収容ロッド7b内に収容可能であってコネクタ収容ロッド7bの上方からコネクタ収容ロッド7b内へ出し入れ可能となっている。また、内方ケーブル9aは、コネクタ9cをコネクタ収容ロッド7bの上端から外方へ取り出しできるように余長を有しており、コネクタ9cがコネクタ収容ロッド7b内にある場合にコネクタ収容ロッド7b内に弛んだ状態で収容される。
【0041】
戻って、フォーク本体2が伸長してダンパDが伸長すると、シリンダ6に対してピストン21が図1中上方へ移動して、伸側室R1が縮小されて圧側室R2が拡大され、圧縮される伸側室R1の液体は、ピストン21の減衰通路21aを通過して拡大される圧側室R2へ移動する。この液体の流れに対してソレノイドバルブSVが抵抗を与えるので伸側室R1内の圧力が上昇し、ダンパDは、フォーク本体2の伸長を妨げる減衰力を発生する。なお、ダンパDの伸長時には、ピストンロッド7がシリンダ6内から退出し、ピストンロッド7の退出分の液体がシリンダ6内で不足するので、液溜室Rから前記逆止弁を通じて不足分の液体がシリンダ6内に供給される。
【0042】
逆に、フォーク本体2が収縮してダンパDが収縮すると、シリンダ6に対してピストン21が図1中下方へ移動して、圧側室R2が縮小されて伸側室R1が拡大され、圧縮される圧側室R2の液体は、ピストン21の減衰通路21aを通過して拡大される伸側室R1へ移動する。また、ダンパDの収縮時には、ピストンロッド7がシリンダ6内へ侵入し、ピストンロッド7の侵入分の液体がシリンダ6内で過剰となるので、圧側室R2から前記減衰バルブを通じて過剰分の液体が液溜室Rへ排出される。伸側室R1へ向かう液体の流れに対してソレノイドバルブSVが抵抗を与え、液溜室Rへ向かう液体の流れに対して減衰バルブが抵抗を与えるので圧側室R2内の圧力が上昇し、ダンパDは、フォーク本体2の収縮を妨げる減衰力を発生する。
【0043】
ここで、ソレノイドバルブSVにおけるソレノイド8へ供給する電流を調節してソレノイドバルブSVが液体の流れに与える抵抗を調節できるので、本実施の形態のフロントフォーク1では、伸長時と収縮時の両側でダンパDが発生する減衰力を調節できる。
【0044】
つづいて、キャップCは、本実施の形態のフロントフォークでは、車体側チューブ3に螺着されて車体側チューブ3の開口部を閉塞するキャップ本体5と、キャップ本体5に連結されるとともにピストンロッド7に連結されるロッドアダプタ13とを備えて構成されている。
【0045】
キャップ本体5は、円盤状であって車体側チューブ3の図2中上端開口部を閉塞する蓋部5aと、蓋部5aの図2中下端となるフォーク側端からフォーク本体内側へ向けて突出するとともに中心が軸心線Aに一致した円筒部5bと、蓋部5aの図2中上端となる反フォーク本体側端から円筒部5b内に通じるとともに蓋部5aの反フォーク側端の開口の中心が軸心線Aから偏心している電線用孔5cと、蓋部5aにおける軸心線Aから偏心した位置であって電線用孔5cから離間した位置に設けられて蓋部5aを軸方向となる上下方向に沿って貫通するアジャスタ用孔5dと、蓋部5aのフォーク側端の外周側からフォーク本体側へ向けて立ち上がる環状のソケット5eとを備えている。
【0046】
また、キャップ本体5は、外周に螺子部5e1を備えたソケット5eを車体側チューブ3の上端内周に設けた螺子部2aに螺合することで車体側チューブ3に螺子締結される。キャップ本体5の蓋部5aは、キャップ本体5を車体側チューブ3の上端内周に螺着されると車体側チューブ3の上端開口部を閉塞する。なお、ソケット5eの外周であって螺子部5e1よりも蓋部5a側にはシールリング26が装着されており、シールリング26によってキャップ本体5と車体側チューブ3との間がシールされている。なお、図3に示すように、キャップ本体5の車体側チューブ3へのねじ締結の際にキャップ本体5を図外の工具で把持できるように、蓋部5aの外周の6箇所に周方向で等間隔に切欠5a1が設けられている。また、ソケット5eの内周にも螺子部5e2が設けられている。
【0047】
円筒部5bは、蓋部5aのフォーク本体2の軸心線Aに一致する中央を中心とする円筒であって、蓋部5aの図2中下端となるフォーク本体側端からフォーク本体側へ向けて突出するように設けられている。
【0048】
また、電線用孔5cは、図2および図3に示すように、蓋部5aを軸方向となる図2中上下方向に沿って貫通して円筒部5b内に通じている。具体的には、電線用孔5cは、蓋部5aに対して反フォーク本体側の端部から開口する断面円形状の大径孔部5c1と、大径孔部5c1の底部から開口して円筒部5b内に通じるとともに大径孔部5c1よりも小径な断面円形状の小径孔部5c2とで形成されている。
【0049】
大径孔部5c1は、図2および図3に示すように、断面円形状に形成されており、その開口の中心が蓋部5aの図2中上端となる反フォーク側端において軸心線Aからずれて偏心した位置となるように蓋部5aに対して軸方向に沿って形成されている。また、小径孔部5c2は、大径孔部5c1よりも小径な断面円形状の孔とされて蓋部5aに対して大径孔部5c1に連なるように蓋部5aの軸方向に沿って形成されている。小径孔部5c2は、中心を蓋部5aの軸心線Aからずれて偏心している。本実施の形態のフロントフォーク1では、キャップ本体5を軸方向から見ると、大径孔部5c1の内周面に一致する円で囲まれる範囲内に、小径孔部5c2の内周面に一致する円(図3中一点鎖線で示した円)M2および円筒部5bの内周面に一致する円(図3中破線で示した円)M1が収まるように電線用孔5cが蓋部5aに形成されている。なお、電線用孔5cは、蓋部5aの反フォーク本体側端における開口の中心が軸心線Aから偏心した位置に配置されるように設けられればよいので、軸心線Aに対して傾斜する方向に沿って円筒部5b内に連通される態様で設けられてもよい。
【0050】
よって、電線用孔5cの蓋部5aの反フォーク本体側端における開口の中心が軸心線Aに対して偏心していれば、電線用孔5cが前記開口の内側に軸心線Aが配置される態様で蓋部5aに設置されてもよいし、電線用孔5cが前記開口の外側に軸心線Aが配置される位置関係で蓋部5aに設置されてもよい。また、小径孔部5c2を省略してもよいが、小径孔部5c2を設けることで電線用孔5cの途中に反フォーク本体側を向く段部5c3を設けることができる。なお、小径孔部5c2は、大径孔部5c1を円筒部5b内に連通させればよいので、キャップ本体5を軸方から見て大径孔部5c1に対して小径孔部5c2の一部のみが重なるように配置されてもよい。さらに、大径孔部5c1と小径孔部5c2は、断面が円形以外とされてもよく、大径孔部5c1の前記開口の断面形状の幾何学的中心が軸心線Aに対して偏心した位置にあればよい。
【0051】
電線用孔5cの大径孔部5c1内には、環状のガイド14が嵌合されている。ガイド14は、内周に周方向に沿って設けられた環状溝内に収容される内周シールリング14aと、外周に周方向に沿って設けられた環状溝内に収容される外周シールリング14bと、内周であって内周シールリング14aよりも図2中下方側となるフォーク本体側にフォーク本体側へ向けて拡径するテーパ部14cとを備えている。
【0052】
ガイド14は、中心が軸心線Aから偏心している電線用孔5cに嵌合されているので、やはり中心が蓋部5aに対して軸心線Aから偏心した位置に配置される。
【0053】
このように大径孔部5c1内であってガイド14の反フォーク本体側となる図2中で上方側には、環状のシールホルダ15が圧入される。シールホルダ15は、内周側に挿入される環状のパッキン16の外周をガイド14とともに把持できるように、ガイド側の内径が拡径されている。
【0054】
このようにキャップ本体5の電線用孔5c内に固定されるガイド14およびパッキン16の内周側には、電線9における外方ケーブル9bが挿通される。電線9の外周は、ガイド14の内周の内周シールリング14aおよびシールホルダ15により保持されるパッキン16によってシールされる。また、ガイド14とキャップ本体5との間は、ガイド14の外周の外周シールリング14bによってシールされる。
【0055】
ガイド14は、電線9の保持、内周シールリング14aと外周シールリング14bの保持および電線9のキャップ本体5に対する位置決めだけでなく、シールホルダ15の圧入による軸方向の荷重を受けるという役割を担っており、多数の機能を発揮している。
【0056】
また、外方ケーブル9bは、小径孔部5c2および円筒部5b内を通して図2中下方へと延びている。電線9における外方ケーブル9bは、中心を軸心線Aに一致した円筒部5b内の上端から出て、中心が軸心線Aから偏心された電線用孔5cを通して外方へと引き出されている。よって、電線9は、キャップ本体5に対してフォーク本体2の軸心線Aから偏心した位置から外方へ引き出されている。
【0057】
そして、電線9における外方ケーブル9bは、円筒部5bの上端から出た辺りで屈曲されてガイド14内に挿入されているため、外方ケーブル9bにフォーク本体外へ抜く方向に力が作用しても外方ケーブル9bが屈曲された部位(屈曲部)9b2が抵抗となって電線9が容易には引き出されない。
【0058】
さらに、外方ケーブル9bの外周であって円筒部5bの下端から出た辺りには円筒部5bの図2中下端となるフォーク本体側端に対向する環状のストッパリング9dが設けられている。よって、外方ケーブル9bにフォーク本体外へ抜く方向に大きな力が作用してもストッパリング9dが円筒部5bの図2中下端に当接して外方ケーブル9bのそれ以上の引き抜き方向への変位が規制されるため、電線9のフォーク本体外への引き抜きが防止される。なお、ストッパリング9dは、外方ケーブル9bの外周に装着されると円筒部5bを通り抜けできないものであればよく、外方ケーブル9bをキャップ本体5に装着した後に取り付けできると外方ケーブル9bのキャップ本体5への取り付けが容易となるので、たとえば、結束バンド等とされるとよい。
【0059】
また、ガイド14の内周がフォーク本体側へ向かうほど拡径するテーパ部14cを備えているので、外方ケーブル9bがテーパ部14cの面に倣って屈曲するので、外方ケーブル9bの屈曲部9b2に過大な負荷がかかりにくく、また、電線9に引出方向の力が加わった際にテーパ部14cの周面で屈曲部9b2を支えることができ屈曲部9b2を保護できる。
【0060】
蓋部5aに設けられるアジャスタ用孔5dは、軸心線Aから偏心した位置であって電線用孔5cから離間した位置に設けられて蓋部5aを軸方向となる上下方向に沿って貫通している。アジャスタ用孔5dは、断面円形状の孔であって、図2中上端となる反フォーク本体側の内径が図2中下方より小径となっている。
【0061】
キャップ本体5とともにキャップCを構成して、ピストンロッド7に連結されるロッドアダプタ13は、キャップ本体5のソケット5eの内周に螺合される外筒13aと、ピストンロッド7の図2中上端に連結される接続筒13bと、外筒13aと接続筒13bとを連結するとともに周方向で180度位相差をもって設けられる一対の腕部13c,13cと備えている。
【0062】
外筒13aは、図2中上端の外周にソケット5eの内周の螺子部5e2に螺合する螺子部13a1を備えている。また、接続筒13bは、図2中下端の外周にピストンロッド7における連結ナット27が螺着される螺子部13b1を備えている。接続筒13bの下端の内方には、ピストンロッド7におけるコネクタ収容ロッド7bの図2中上端が挿入され、コネクタ収容ロッド7bの外周に嵌合された連結ナット27が接続筒13bの螺子部13b1に螺着される。すると、接続筒13bに連結ナット27を螺合して締めこんでいくと、連結ナット27の内周の段部27cと接続筒13bの図2中下端との間でコネクタ収容ロッド7bの外周に設けられたフランジ7b2が強く挟持されて、ピストンロッド7とロッドアダプタ13とが連結される。
【0063】
また、外筒13aと接続筒13bとは、全周に亘って連結されておらず、周方向にて間隔をあけて設けられる腕部13c,13cによって連結されているので、外筒13aと接続筒13bとの間に2つの円弧状の通し孔13d,13dが形成されている。
【0064】
そして、このように構成されたロッドアダプタ13の外筒13aをキャップ本体5のソケット5e内に挿入しつつ螺子部13a1と螺子部5e2とを螺合すると、キャップ本体5にロッドアダプタ13が連結されるとともに、キャップ本体5の円筒部5bの先端が接続筒13bの図2中上端側の内周に挿入されて嵌合される。
【0065】
なお、図1に示すように、ロッドアダプタ13の接続筒13bにおける内周に装着されたシールリング31によって円筒部5bと接続筒13bとの間がシールされ、ピストン保持ロッド7aとコネクタ収容ロッド7bとの間がシールリング7a2によってシールされている。また、電線9の外周は、パッキン16、内周シールリング14aによってシールされるとともに、ガイド14とキャップ本体5との間が外周シールリング14bによってシールされている。したがって、ピストンロッド7内、キャップ本体5における円筒部5b内および電線用孔5c内で形成される空間が外部から隔絶されていて、当該空間への液溜室R内からの液体の侵入およびフロントフォーク外からの水や塵等の侵入が阻止され、当該空間に収容される電線9が保護される。
【0066】
つづいて、アジャスタ11は、キャップ本体5のアジャスタ用孔5d内に挿入される操作部17と、操作部17の操作によって上下方向へ移動するプレート18と、プレート18に積層されるとともにばね受12に嵌合される可動子19とを備えている。アジャスタ11は、操作部17の操作によって可動子19をばね受12とともにキャップ本体5に対してフォーク本体2の軸心線Aに沿って変位させることができる。
【0067】
ばね受12は、キャップ本体5に対して図1中上下方向へ移動可能であって、ロッドガイド22との間に介装されるコイルばねからなる懸架ばね10の図1中上端を支持している。懸架ばね10は、車体側チューブ3と車軸側チューブ4を離間させる弾発力を発揮してフォーク本体2を伸長方向に付勢している。よって、フロントフォーク1は、前述の図外の鞍乗車両の前輪と車体との間に介装されると車体を弾性支持する。
【0068】
また、ばね受12は、キャップ本体5に対して図1中で上下方向となるフォーク本体2の軸心線Aに沿う方向へ移動可能であってアジャスタ11の操作によって懸架ばね10の図1中の上端の支持位置が変更される。よって、フロントフォーク1では、アジャスタ11の操作によりばね受12を上下方向へ変位させて、懸架ばね10の上端の支持位置を変更でき、前記鞍乗車両の車高を調整できる。
【0069】
以下、アジャスタ11について詳細に説明する。操作部17は、図2に示すように、螺子軸17aと、螺子軸17aの図2中上端に設けたフランジ17bと、フランジ17bの軸心から立ち上がる軸部17cと、軸部17cの外周に装着される環状の操作つまみ17dとを備えており、蓋部5aのアジャスタ用孔5d内に軸部17cおよび操作つまみ17dを除いて周方向に回転可能に収容されている。
【0070】
フランジ17bの外周には、シールリング17eが装着されていて、操作部17と蓋部5aとの間がシールされており、液溜室R内からフォーク本体2外への液体の漏洩が防止されている。
【0071】
螺子軸17a、フランジ17bおよび軸部17cは、一部品で構成されており、軸部17cの外周形状と操作つまみ17dの内周形状は、二面幅形状や六角形状等の円形以上外の形状であってともに符合する形状とされている。よって、軸部17cの外周に操作つまみ17dが嵌合されると軸部17cと操作つまみ17dとの周方向の相対回転が阻止される。
【0072】
また、操作つまみ17dの外周には、図3に示すように、レンチで把持しやすいように周囲の六箇所に等間隔に設けた切欠17d1が設けられており、操作つまみ17dの外形はアジャスタ用孔5dよりも大きくアジャスタ用孔5d内に侵入できない。なお、操作つまみ17dは、軸部17cの外周に装着される符示しないCピンによって軸部17cからの脱落が防止されている。フランジ17bは、アジャスタ用孔5d内に収容されており、外径がアジャスタ用孔5dにおける最小径の反フォーク本体側の内径よりも大径となっており、操作つまみ17dと協働して蓋部5aの肉を挟持している。したがって、操作部17は、操作つまみ17dとフランジ17bとによって軸方向となる図2中上下方向への移動が規制されている。以上より、操作つまみ17dを回転操作すると、操作部17の全体が周方向へ回転する。
【0073】
また、操作部17における螺子軸17aには、円盤状のプレート18が螺着されている。プレート18は、図4に示すように、中央にキャップ本体5の円筒部5bが挿通される透孔18aと、螺子軸17aの外周に螺合する螺子孔18bとを備えており、ロッドアダプタ13の外筒13aの内周に軸方向へ移動可能に嵌合されている。
【0074】
よって、プレート18がロッドアダプタ13の外筒13aによって回り止めされるため、操作部17が回転操作されると、プレート18はロッドアダプタ13の外筒13a内で図2中上下方向となるフォーク本体2の軸心線Aに沿う方向へ変位する。なお、プレート18の外形は、円形となっているが、ロッドアダプタ13によって回り止めされる態様となっていれば、円形以外の形状とされてもよい。
【0075】
また、可動子19は、プレート18に当接する筒部19aと、筒部19aの図2中下端となるフォーク本体側端から立ち上がる一対の突出片19b,19bとを備えている。突出片19b,19bは、断面円弧状とされており筒部19aから軸方向へ沿って図2中下方へと延びておりロッドアダプタ13における腕部13c,13c間を通り抜けて通し孔13d,13dを通してロッドアダプタ13の外方へ突出している。
【0076】
ばね受12は、環状であって上方側の径が下方側より大径となっていて軸方向の途中に段部12aが形成されている。そして、ばね受12は、段部12aで懸架ばね10の図2中上端を支承し、大径側の内周を可動子19の突出片19b,19bの先端の外側面に嵌合させて可動子19に連結されている。
【0077】
このように構成されたアジャスタ11では、操作部17の回転操作によってプレート18を上下動させると可動子19と可動子19に連結されたばね受12もプレート18とともに上下方向へ変位する。よって、操作部17の回転操作によってばね受12の懸架ばね10の支持位置を図1中上下方向へ調整でき、フロントフォーク1が適用された鞍乗車両の車高と調整できる。なお、前述の車高調整の調整範囲内でプレート18を上下動させる際に、蓋部5aとロッドアダプタ13に対してプレート18が干渉しないように、キャップ本体5の蓋部5aとロッドアダプタ13の接続筒13bとの間にプレート18の移動を許容する十分な隙間が設けられている。
【0078】
フロントフォーク1は、以上のように構成されており、メンテナンス作業を行う場合、キャップ本体5を車体側チューブ3から取り外して、車体側チューブ3を車軸側チューブ4側へ向けてスライドさせて懸架ばね10を外方へ露出させる。つづいて、図5に示すように、懸架ばね10の上端をストッパ28よりも下方に位置するまで懸架ばね10を押し縮めた後、C型の工具Wをストッパ28の環状溝28aに嵌合させる。工具Wは、ストッパ28の環状溝28aに嵌合して取り付け可能とされており、懸架ばね10の外径より大きな外径を備えているので、ばね受12に替わりに懸架ばね10の上端を支持して懸架ばね10を縮めた状態に維持する。なお、図示した工具Wは、一例であって、ストッパ28に着脱可能であって懸架ばね10の上端を支持できるものであればよいので、工具Wの形状および構造については適宜設計変更できる。
【0079】
このように工具Wによって懸架ばね10の上端が支持されると、連結ナット27が懸架ばね10の上端より上方に位置して、連結ナット27を懸架ばね10の干渉を受けずに外方から操作可能な状態となる。そして、レンチ等の工具で延長部27bの外周を把持して連結ナット27を回転操作すると、連結ナット27を螺子部7b2から簡単に取り外して、キャップCをピストンロッド7から取り外すことができる。
【0080】
つづいて、コネクタ9cをコネクタ収容ロッド7b内から引き出して、コネクタ9cのプラグ9c1をレセプタクル9c2から取り外して、内方ケーブル9aと外方ケーブル9bとを切り離して外方ケーブル9bをキャップCとともにフォーク本体2から完全に取り去る。そうすると、キャップCを車体側チューブ3から電線9の干渉を受けずに完全に取り外すことが可能となる。キャップCを車体側チューブ3から取り外すと分解作業が終了して車体側チューブ3の上端開口部が完全に開放され、フォーク本体2内の懸架ばね10やシールの交換、ダンパDおよび液溜室R内の作動油の交換或いは注油といったメンテナンス作業を行える状態となる。
【0081】
メンテナンス終了後にキャップCと外方ケーブル9bをフォーク本体2に取り付ける場合は、プラグ9c1とレセプタクル9c2とを接続して内方ケーブル9aと外方ケーブル9bとを接続する。つづいて、ピストンロッド7のコネクタ収容ロッド7bの上端をキャップ5における接続筒13b内に挿入したのち、連結ナット27を接続筒13bの外周に設けた螺子部13b1に螺子締結する。すると、コネクタ収容ロッド7bのフランジ7b2が連結ナット27と接続筒13bの下端とで挟持されて、ピストンロッド7とキャップCとが連結される。このピストンロッド7とキャップCとを連結する作業中は、工具Wをストッパ28に装着して懸架ばね10の上端を工具Wで支持した状態にしておく。
【0082】
その後、工具Wを取り除き、懸架ばね10の上端をばね受12に支持させて状態としてから、車体側チューブ3を回転させてキャップ本体5の外周の螺子部5e1に車体側チューブ3を螺子締結すると、キャップ5が車体側チューブ3に連結されてフロントフォーク1の組立が完了する。
【0083】
以上、説明した通り、キャップCのピストンロッド7への着脱の際に、キャップCおよびピストンロッド7は回転せず、連結ナット27のみを回転させればよい。よって、キャップCに取り付けられるとともにピストンロッド7内に挿入されている電線9は、キャップCのピストンロッド7への着脱の際に回転しないため、全く捩れない。
【0084】
以上、本実施の形態のフロントフォーク1は、車体側チューブ3と車軸側チューブ4とを有して伸縮可能なテレスコピック型のフォーク本体2と、車体側チューブ3の車体側端に装着されるキャップCと、車軸側チューブ4内に設けられるシリンダ6と、シリンダ6内に軸方向へ移動自在に挿入されるとともに一端がキャップ本体5に連結される筒状のピストンロッド(ロッド)7と、シリンダ6内に収容されるソレノイド(電気機器)8と、ソレノイド(電気機器)8に接続されるとともにピストンロッド(ロッド)7内に挿通されてキャップCを貫通してフォーク本体2から外方へ引き出される電線9とを備え、キャップCは、ピストンロッド(ロッド)7に連結される接続筒13bを有し、接続筒13bとピストンロッド(ロッド)7の一方の外周の所定位置にて他方側への軸方向への移動が規制されるとともに回転自在に装着され、接続筒13bとピストンロッド(ロッド)7の他方の外周に螺着される環状の連結ナット27によって接続筒13bとピストンロッド(ロッド)7とが連結される。
【0085】
このように構成されたフロントフォーク1では、連結ナット27が接続筒13bとピストンロッド(ロッド)7の一方の外周に他方への移動が規制されるものの周方向へ回転自在に装着されているので、連結ナット27を接続筒13bとピストンロッド(ロッド)7のうち他方の外周への螺合が進むと、連結ナット27によって接続筒13bとピストンロッド(ロッド)7とが回転せずに引き寄せられて連結される。
【0086】
よって、このように構成されたフロントフォーク1では、キャップCをピストンロッド(ロッド)7に着脱する場合、キャップCとピストンロッド(ロッド)7とを周方向に回転させずに連結ナット27のみを回転させればよい。したがって、実施の形態のフロントフォーク1によれば、キャップCをピストンロッド(ロッド)7に着脱する場合、キャップCとピストンロッド(ロッド)7との内部に挿入されて内部のソレノイド(電気機器)8へ電力供給する電線9の捩れを防止できる。
【0087】
なお、本実施の形態のフロントフォーク1では、連結ナット27がピストンロッド(ロッド)7の外周にフランジ13b1によって接続筒13b側への移動が規制されるとともに回転自在に装着されており、接続筒13bの外周の螺子部13b1に螺合されているが、接続筒13bの外周にピストンロッド(ロッド)7側への移動が規制された状態で回転自在に装着されるとともにピストンロッド(ロッド)7の外周に螺合されてもよい。なお、連結ナット27が接続筒13bとピストンロッド(ロッド)7の一方の外周において、接続筒13bとピストンロッド(ロッド)7の他方側への移動が規制される所定位置とは、連結ナット27が接続筒13bとピストンロッド(ロッド)7の他方の外周に螺着可能な位置に設定される。このようにすれば、連結ナット27は、接続筒13bとピストンロッド(ロッド)7の一方の外周によって接続筒13bとピストンロッド(ロッド)7の他方側への移動が規制されつつも、接続筒13bとピストンロッド(ロッド)7の他方の外周に螺合できるので、接続筒13bとピストンロッド(ロッド)7とを引き寄せて両者を連結できる。本実施の形態のフロントフォーク1の場合、コネクタ収容ロッド7bの外周にはフランジ7b2が設けられており、連結ナット27の段部27cがフランジ7b2に当接すると、接続筒13b側への移動が規制されるようになっており、所定位置はフランジ7b2の設置位置によって設定されている。また、連結ナット27は、所定位置にて接続筒13bとピストンロッド(ロッド)7の一方に対して接続筒13bとピストンロッド(ロッド)7の他方側への移動が規制されていればよいので、接続筒13bとピストンロッド(ロッド)7とを連結しない状態においては、接続筒13b或いはピストンロッド(ロッド)7の他方から離間する方向への移動が許容されてもよいし、所定位置にて接続筒13bとピストンロッド(ロッド)7の一方の所定位置に対して軸方向へ不動な状態で周方向へ回転自在に装着されていてもよい。
【0088】
また、本実施の形態のフロントフォーク1では、ピストンロッド(ロッド)7が筒状であって、電線9がピストンロッド(ロッド)7内を通してシリンダ6外へ引き出されている。よって、本実施の形態のフロントフォーク1によれば、シリンダ6に対するピストンロッド(ロッド)7の相対変位に対して電線9が邪魔となることがなく、フォーク本体2が円滑に伸縮できる。
【0089】
そして、本実施の形態のフロントフォーク1では、接続筒13bがピストンロッド(ロッド)7のキャップ側端の外周に嵌合され、ピストンロッド(ロッド)7が接続筒13bの端部に当接するフランジ7b2を有し、接続筒13bが外周に螺子部13b1を有し、連結ナット27は、螺子部13b1に螺着されてフランジ7b2を接続筒13bとで挟持してキャップCとピストンロッド(ロッド)7とを連結している。このように構成されたフロントフォーク1によれば、接続筒13b1内にピストンロッド(ロッド)7が嵌合されるので、連結ナット27における接続部分において曲げモーメントにも十分に耐え得る強度を得ることができ、フロントフォーク1の実用性を向上させ得る。
【0090】
なお、前述した実施の形態では、接続筒13bの内周にピストンロッド(ロッド)7の上端を挿入しているが、図6に示すように、接続筒13bをピストロッド(ロッド)7の上端の内周に挿入する場合、接続筒13bの外周にフランジ13b2を設けて連結ナット27を接続筒13bの外周に装着するとともに、コネクタ収容ロッド7bの外周に連結ナット27が螺着される螺子部7b3を設けるようにしてもよい。つまり、キャップCにおける接続筒13bを、ピストンロッド(ロッド)のキャップ側端の内周或いは外周に嵌合し、接続筒13bとピストンロッド(ロッド)のキャップ側端のうち内周側に配置される一方に他方の端部に当接するフランジを設け、接続筒13bとピストンロッド(ロッド)のキャップ側端のうち外周側に配置される他方の外周に螺子部を設けて、連結ナット27を螺子部に螺着してフランジを連結ナット27と、接続筒13bとピストンロッド(ロッド)7の他方とで挟持すればよい。
【0091】
ただし、接続筒13bをピストロッド(ロッド)7の上端の内周に挿入する場合、コネクタ収容ロッド7bの外径が大径となって、懸架ばね10、車体側チューブ3および車軸側チューブ4の外径が大型化する。換言すれば、図1および図2に示したフロントフォーク1のように、接続筒13bの内周にコネクタ収容ロッド7bを挿入する構成を採用すると、フロントフォーク1の外径の小型化が可能となる。
【0092】
また、本実施の形態のフロントフォーク1では、連結ナット27は、螺子部13b1に螺着される環状のナット部27aと、ナット部27aの軸方向の一端に連なってピストンロッド(ロッド)7のキャップ側端の外周に軸方向へ移動可能に装着される環状の延長部27bとを備え、延長部27bの少なくとも一部の外周形状が工具による把持を可能とする形状とされている。このように構成されたフロントフォーク1によれば、連結ナット27の外形を小型化でき、懸架ばね10、車体側チューブ3および車軸側チューブ4の外径も小型化できるのでフロントフォーク1の外径の小型化が可能となる。なお、連結ナット27は、ナット部27aの外周形状が工具の端を可能とする形状とされる場合、ナット部27aとフランジ7b2に対向する段部27cとを備えていれば、延長部27bを備えていなくともよい。このように、ナット部27aの外周形状が工具の端を可能とする形状とされる場合、接続筒13bとピストンロッド(ロッド)7のうち外周に配置される部材の外周に連結ナット27が螺着される関係上、ナット部27aの肉厚を確保する必要性からナット部27aの外形が大型化し、結果的に、フロントフォーク1の外形が大型化するので、小型化の点では工具で把持可能な延長部27bを備えたフロントフォーク1の構造を採用する方が有利である。なお、連結ナット27の延長部27bの外周形状が軸方向の全長に亘って工具の把持を可能とする形状とされてもよいし、一部の外周形状のみが工具の把持を可能とする形状となっていてもよい。また、延長部27bの外周形状は、連結ナット27の回転操作に使用する工具に適合する形状とされればよく、六角形状に限定されるものではない。
【0093】
また、本実施の形態のフロントフォーク1では、ピストンロッド(ロッド)7は、シリンダ6内に出入りする筒状のピストン保持ロッド(小径ロッド)7aと、一端がピストン保持ロッド(小径ロッド)7aの反シリンダ側端に連結されるとともにピストン保持ロッド(小径ロッド)7aよりも内径が大径なコネクタ収容ロッド(大径ロッド)7bとを有し、電線9は、ピストン保持ロッド(小径ロッド)7a内に収容される内方ケーブル9aと、コネクタ収容ロッド(大径ロッド)7b内に収容されるとともにキャップCを貫通してフォーク本体2から外方へ引き出される外方ケーブル9bと、コネクタ収容ロッド(大径ロッド)7b内に収容されて内方ケーブル9aと外方ケーブル9bとを接続するコネクタ9cとを有し、コネクタ収容ロッド(大径ロッド)7bの他端が連結ナット27によってキャップCに連結される。
【0094】
このように構成されたフロントフォーク1によれば、電線9がコネクタ9cによって内方ケーブル9aと外方ケーブル9bとに分離できるので、キャップCと外方ケーブル9bとを完全にフォーク本体2から取り外すことができ、メンテナンス作業が容易となるとともに、嵩張るコネクタ9cをシリンダ6外のコネクタ収容ロッド7b内に収容しつつシリンダ6内には外径が小径のピストン保持ロッド7aのみを挿入しているので、シリンダ6を大径化することなくピストン21の受圧面積を確保でき、フロントフォーク1の大型化を回避しつつも伸側減衰力を十分に発揮できる。なお、本実施の形態のフロントフォーク1では、電線9が内方ケーブル9aと外方ケーブル9bとをコネクタ9cで接続した構成となっているのでフロントフォーク1のメンテナンスが容易となるが、電線9が途中で分割されずに一端がソレノイド(電気機器)8に接続されて他端がキャップ本体5の電線用孔5cから引き出される構成となっていてもよい。
【0095】
さらに、本実施の形態のフロントフォーク1は、ピストンロッド(ロッド)7の外周に配置されてフォーク本体2内に収容されるとともにフォーク本体2を伸長方向へ付勢する懸架ばね10と、ピストンロッド(ロッド)7の外周であってフランジ7b2よりもシリンダ6側に離間した位置に設けられて連結ナット27の延長部27bのシリンダ6側への移動を規制するストッパ28を備え、ストッパ28が懸架ばね10の上端を支持可能な工具Wの取り付けを可能とする環状溝(取付部)28aを有している。このように構成されたフロントフォーク1によれば、ストッパ28に取り付けられた工具Wに懸架ばね10の上端を支持させて連結ナット27の回転操作の際に懸架ばね10に邪魔されずに済むため、キャップCのピストンロッド(ロッド)7に対する着脱作業を容易に行える。工具Wは、ストッパ28に取付できるとともに懸架ばね10の上端を支持して懸架ばね10を縮んだ状態に維持できるものであればよい。よって、本実施の形態のフロントフォーク1では、工具WがC形状の円板であるためストッパ28における取付部は、工具Wの差し込みと保持とを可能とするように環状溝28aとされているが、工具Wの形状および構造に応じて適宜設計可能である。
【0096】
なお、本実施の形態のフロントフォーク1は、フォーク本体2内に収容されるとともにフォーク本体2を伸長方向へ付勢する懸架ばね10と、懸架ばね10を支持するばね受12の支持位置を調節可能なアジャスタ11とを備え、電線9がキャップ本体5におけるフォーク本体2の軸心線Aから偏心した位置からフォーク本体2外へ引き出され、アジャスタ11の操作部17がキャップ本体5におけるフォーク本体2の軸心線Aから偏心した位置であって電線9から離間した位置に設けられている。このように構成されたフロントフォーク1では、アジャスタ11の操作部17と電線9とがキャップ本体5に対してフォーク本体2の軸心線Aから偏心した位置に配置されており、操作部17が電線9の外周回りに配置されていないので電線9の径とは無関係に小型化でき、ユーザが操作部17を操作する際に電線9に干渉せずに済むとともに、電線9と操作部17とをキャップ本体5に比較的自由に配置できる。よって、本実施の形態のフロントフォーク1によれば、内部にソレノイド(電気機器)8を備えていてもアジャスタ11の操作部17を小型化でき、操作部17の操作に電線9が邪魔とならず、設計自由度を向上できる。
【0097】
さらに、本実施の形態のフロントフォーク1では、キャップ本体5は、円盤状の蓋部5aと、蓋部5aのフォーク側端からフォーク本体内側へ向けて突出するとともに中心が軸心線Aに一致した円筒部5bと、蓋部5aの反フォーク本体側端から円筒部5b内に通じるとともに蓋部5aの反フォーク側端の開口の中心が軸心線Aから偏心している電線用孔5cとを備え、環状であって電線用孔5c内に収容されるとともに内周に電線9が挿通されるガイド14を備え、電線9は、円筒部5b内およびガイド14内に挿通されて屈曲されている。このように構成されたフロントフォーク1によれば、電線9より大きな開口を持つ電線用孔5cにガイド14を利用して電線9をキャップ本体5に対して位置決めするため、電線9の電線用孔5c内への挿入が容易となるとともに、ガイド14と円筒部5bとで電線9を屈曲させているので電線9にキャップ本体5から引き抜く力が加わっても電線9の屈曲部9b2が抵抗となって電線9のキャップ本体5からの引き抜きを抑制できる。また、ガイド14を利用することで、電線9のキャップ本体5の反フォーク本体側端における配置を軸心線Aから偏心した位置に簡単に位置決めできるとともに電線9を屈曲させ得る。さらに、円筒部5bが中心を軸心線Aに一致させているので、ピストンロッド(ロッド)7内を介して電線9をシリンダ6外へ引き出す場合、電線9を円筒部5bに挿入し易くなって、フロントフォーク1の組立作業が容易となる。
【0098】
なお、キャップ本体5に対して電線用孔5cの反フォーク本体側の開口が軸心線Aから偏心していれば、ガイド14を廃止することもできる。また、本実施の形態のフロントフォーク1では、電線用孔5cが円筒部5b内に軸方向に連続している。つまり、キャップ本体5を軸方向から見て、大径孔部5c1の内周面に一致する円で囲まれる範囲内に、小径孔部5c2の内周面に一致する円および円筒部5bの内周面に一致する円が収まるように電線用孔5cが蓋部5aに形成されている。このように電線用孔5cが円筒部5b内に軸方向に連続していると、キャップ本体5の電線用孔5cと円筒部5b内に電線9を挿通させる際に電線9を屈曲させる必要がないので、電線9のキャップ本体5への取り付け作業が容易となる。
【0099】
また、本実施の形態のフロントフォーク1では、ガイド14の外周とキャップ本体5との間をシールする外周シールリング14bと、ガイド14に積層されてガイド14と電線9との間をシールする環状のパッキン16とを備えている。このように、電線9をキャップ本体5の電線用孔5cから外方へ引き出しても電線9とキャップ本体5との間がシールされてフォーク本体2の内部への水や埃等の侵入を防止できる。なお、キャップ本体5の電線用孔5cの内壁に環状溝を設けて、外周シールリング14bを当該環状溝内に装着してキャップ本体5に保持させてもよい。
【0100】
さらに、本実施の形態のフロントフォーク1では、ガイド14の内周と電線9の外周をシールする内周シールリング14aを備えている。このように構成されたフロントフォーク1によれば、電線9の外周がパッキン16だけでなく内周シールリング14aによってもシールされるため、フォーク本体2の内部を厳重に密閉でき、フロントフォーク1を搭載した鞍乗車両を高圧洗浄機で洗浄してもフォーク本体2の内部への水の侵入を効果的に防止できる。
【0101】
また、本実施の形態のフロントフォーク1では、ガイド14がフォーク本体側の内周にフォーク本体側へ向けて拡径するテーパ部14cを備えている。このように構成されたフロントフォーク1によれば、電線9がテーパ部14cの面に倣って屈曲するので、電線9の屈曲部9b2に過大な負荷がかかりにくく、また、電線9に引出方向の力が加わった際にテーパ部14cの周面で屈曲部9b2を支えることができ電線9を保護できる。また、本実施の形態のフロントフォーク1において、ガイド14は、内周シールリング14aと外周シールリング14bとを備える関係上、どうしても軸方向長さ(図2中上下方向長さ)が長くなるため、内周にテーパ部14cを備えない場合、電線9の屈曲部9b2の軸心線A方向に対する角度が大きくなる。換言すれば、ガイド14に内周シールリング14aと外周シールリング14bを保持させてガイド14の軸方向長さが長くなっても、ガイド14の内周にテーパ部14cを設けることで電線9の屈曲部9b2の角度を緩やかにして屈曲部9b2における負担を軽減できる。なお、ガイド14におけるテーパ部14cを省略することができる。屈曲部9b2の角度を緩やかにする必要がある場合にはテーパ部14cの代わりにガイド14のフォーク本体側の内周の径を大径にしてガイド14における電線9の支持位置をなるべく図2中で上方にするとよい。
【0102】
そして、本実施の形態のフロントフォーク1では、電線9の外周に円筒部5bのフォーク本体側端に対向するストッパリング9dを設けている。このように構成されたフロントフォーク1によれば、電線9にフォーク本体2外へ抜く方向に大きな力が作用してもストッパリング9dが円筒部5bに当接して電線9のそれ以上の引き抜き方向への変位を規制でき、電線9のフォーク本体2外への引き抜きを阻止できる。
【0103】
本実施の形態のフロントフォーク1におけるアジャスタ11は、前述したように、操作部17と、操作部17における螺子軸17aに螺合されるプレート18と、プレート18に当接するとともにばね受12に嵌合する可動子19とを備えている。このようにアジャスタ11が構成されると、操作部17をキャップ本体5に対してフォーク本体2の軸心線Aから偏心した位置であって電線9に干渉しない位置に無理なく配置できる。なお、アジャスタ11は、操作部を備えて懸架ばね10の上端を支持するばね受12の支持位置を変更可能であればよいので、これ以外の構成を採用することも可能である。たとえば、アジャスタ11は、操作部17がキャップ本体5に対して螺子締結されて回転操作によって上下動する場合、プレート18を廃止して操作部17の下端を可動子19の上端に直接当接させる構造を採用してもよいし、プレート18を廃止して操作部17の螺子軸17aの外周に回り止めされた筒状のナットを螺合させて、当該ナットの下端を可動子19に当接させる構造を採用することもできる。このように、アジャスタ11は、電線9と干渉しない構造を採用すれば、アジャスタ11を適宜設計変更することができる。
【0104】
また、アジャスタ11を設けない場合、キャップCは、キャップ本体5とロッドアダプタ13との複数の部品で構成されなくともよく、図示はしないが、車体側チューブ3の開口端に装着可能な蓋と、蓋からロッド側に延びる筒状の接続筒とを備えた1部品で構成されてもよい。よって、キャップCは、アジャスタの有無によらず、1部品で構成できる場合には1部品で構成されてもよいし、3以上の複数の部品で構成されてもよい。
【0105】
なお、本実施の形態のフロントフォーク1では、電気機器をソレノイド8としているが、電気機器はソレノイド8のみに限られず、ダンパDが電気粘性流体や磁気粘性流体を利用したダンパであって粘度を変化させるのにコイルを利用する場合には電気機器をコイルとしてもよい。また、電気機器は、フロントフォーク1内のダンパDの減衰力を調節するために用いられるもの以外にも、ダンパD内の圧力の検知やフォーク本体2の伸縮変位の検知を行うためのセンサ類であってもよいし、減衰力調整用の機器とセンサ類の複数の機器とで構成されていてもよい。つまり、本発明は、シリンダ6内に電気機器が収容されるフロントフォーク1に適用できる。なお、電気機器がシリンダ6に対して変位しても電気機器の少なくとも一部がシリンダ6内に挿入される状態であれば、シリンダ6内に電気機器が収容されるとの定義に合致する。また、ロッドは、ピストンを保持するピストンロッド7のみに限られず、単にシリンダ内に出入りするものであってもよい。
【0106】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
【符号の説明】
【0107】
1・・・フロントフォーク、2・・・フォーク本体、3・・・車体側チューブ、4・・・車軸側チューブ、5・・・キャップ本体、5a・・・蓋部、5b・・・円筒部、5c・・・電線用孔、6・・・シリンダ、7・・・ピストンロッド(ロッド)、7a・・・小径ロッド、7b・・・大径ロッド、7b2,13b2・・・フランジ、7b3,13b1・・・フランジ、8・・・ソレノイド(電気機器)、9・・・電線、9a・・・内方ケーブル、9b・・・外方ケーブル、9c・・・コネクタ、9d・・・ストッパリング、10・・・懸架ばね、13b・・・接続筒、27・・・連結ナット、27a・・・ナット部、27b・・・延長部、28・・・ストッパ、28a・・・環状溝(取付部)、C・・・キャップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2022-06-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側チューブと車軸側チューブとを有して伸縮可能なテレスコピック型のフォーク本体と、
前記車体側チューブの車体側端に装着されるキャップと、
前記車軸側チューブ内に設けられるシリンダと、
前記シリンダ内に軸方向へ移動自在に挿入されるとともに、一端が前記キャップに連結される筒状のロッドと、
前記シリンダ内に収容される電気機器と、
前記電気機器に接続されるとともに前記ロッド内に挿通されて前記キャップを貫通して前記フォーク本体から外方へ引き出される電線とを備え、
前記キャップは、前記ロッドに連結される接続筒を有し、
前記接続筒と前記ロッドの一方の外周の所定位置にて他方側への軸方向への移動が規制されるとともに回転自在に装着され、前記接続筒と前記ロッドの他方の外周に螺着される環状の連結ナットによって前記接続筒と前記ロッドとが連結される
ことを特徴とするフロントフォーク。
【請求項2】
前記接続筒が前記ロッドのキャップ側端の内周或いは外周に嵌合され、
前記接続筒と前記ロッドのキャップ側端のうち内周側に配置される一方は、他方の端部に当接するフランジを有し、
前記接続筒と前記ロッドのキャップ側端のうち外周側に配置される他方は、外周に螺子部を有し、
前記連結ナットは、前記螺子部に螺着されて前記フランジを前記接続筒と前記ロッドのキャップ側端のうち外周側に配置される他方とで挟持して前記キャップと前記ロッドとを連結する
ことを特徴とする請求項1に記載のフロントフォーク。
【請求項3】
前記連結ナットは、
前記螺子部に螺着される環状のナット部と、
前記ナット部の軸方向の一端に連なって、前記接続筒と前記ロッドのキャップ側端のうち内周側に配置される一方の外周に軸方向へ移動可能に装着される環状の延長部とを有し、
前記延長部の少なくとも一部の外周形状は、工具による把持を可能とする形状とされている
ことを特徴とする請求項2に記載のフロントフォーク。
【請求項4】
前記ロッドは、
前記シリンダ内に出入りする筒状の小径ロッドと、
一端が前記小径ロッドの反シリンダ側端に連結されるとともに前記小径ロッドよりも内径が大径な大径ロッドとを有し、
前記電線は、
前記小径ロッド内に収容される内方ケーブルと、
前記大径ロッド内に収容されるとともに前記キャップを貫通して前記フォーク本体から外方へ引き出される外方ケーブルと、
前記大径ロッド内に収容されて前記内方ケーブルと前記外方ケーブルとを接続するコネクタとを有し、
前記大径ロッドの他端が前記連結ナットによって前記キャップに連結される
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のフロントフォーク。
【請求項5】
前記ロッドのキャップ側端が前記接続筒の内周に嵌合されている
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のフロントフォーク。
【請求項6】
前記ロッドの外周に配置されて前記フォーク本体内に収容されるとともに前記フォーク本体を伸長方向へ付勢する懸架ばねと、
前記ロッドの外周であって前記フランジよりもシリンダ側に離間した位置に設けられて前記連結ナットのシリンダ側への移動を規制するストッパを備え、
前記ストッパは、前記懸架ばねの上端を支持可能な工具の取り付けを可能とする取付部を有する
ことを特徴とする請求項2に従属する請求項5に記載のフロントフォーク。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
さらに、フロントフォークは、ロッドの外周に配置されてフォーク本体内に収容されるとともにフォーク本体を伸長方向へ付勢する懸架ばねと、ロッドの外周であってフランジよりもシリンダ側に離間した位置に設けられて連結ナットのシリンダ側への移動を規制するストッパを備え、ストッパが懸架ばねの上端を支持可能な工具の取り付けを可能とする環状溝(取付部)を有してもよい。このように構成されたフロントフォークによれば、ストッパに取り付けられた工具に懸架ばねの上端を支持させて連結ナットの回転操作の際に懸架ばねに邪魔されずに済むため、キャップのロッドに対する着脱作業を容易に行える。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0029
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0029】
連結ナット27の延長部27bは、コネクタ収容ロッド7bの外周に遊嵌された状態で、フランジ7b2に対して軸方向で段部27cを対向させ、ストッパ28に対して軸方向でシリンダ側端を対向させている。そのため、延長部27bは、段部27cがフランジ7b2に当接すると反シリンダ側への移動が規制され、図1中下端がストッパ28に当接するとシリンダ側への移動が規制される。よって、連結ナット27は、フランジ7b2とストッパ28との間の範囲で軸方向へ移動可能とされるが、コネクタ収容ロッド7bからは脱落することがない。また、延長部27bの外周の断面形状は、本実施の形態では、六角形とされている。よって、ユーザは、図示しないレンチ等の工具で延長部27bを把持して連結ナット27を容易に回転操作できる。なお、ストッパ28の外周には、たとえば、C型の図示しない工具の取り付けを可能とする取付部としての環状溝28aが形成されている。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0046
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0046】
また、キャップ本体5は、外周に螺子部5e1を備えたソケット5eを車体側チューブ3の上端内周に設けた螺子部3aに螺合することで車体側チューブ3に螺子締結される。キャップ本体5の蓋部5aは、キャップ本体5を車体側チューブ3の上端内周に螺着されると車体側チューブ3の上端開口部を閉塞する。なお、ソケット5eの外周であって螺子部5e1よりも蓋部5a側にはシールリング26が装着されており、シールリング26によってキャップ本体5と車体側チューブ3との間がシールされている。なお、図3に示すように、キャップ本体5の車体側チューブ3へのねじ締結の際にキャップ本体5を図外の工具で把持できるように、蓋部5aの外周の6箇所に周方向で等間隔に切欠5a1が設けられている。また、ソケット5eの内周にも螺子部5e2が設けられている。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0049
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0049】
大径孔部5c1は、図2および図3に示すように、断面円形状に形成されており、その開口の中心が蓋部5aの図2中上端となる反フォーク側端において軸心線Aからずれて偏心した位置となるように蓋部5aに対して軸方向に沿って形成されている。また、小径孔部5c2は、大径孔部5c1よりも小径な断面円形状の孔とされて蓋部5aに対して大径孔部5c1に連なるように蓋部5aの軸方向に沿って形成されている。小径孔部5c2は、中心蓋部5aの軸心線Aからずれて偏心している。本実施の形態のフロントフォーク1では、キャップ本体5を軸方向から見ると、大径孔部5c1の内周面に一致する円で囲まれる範囲内に、小径孔部5c2の内周面に一致する円(図3中一点鎖線で示した円)M2および円筒部5bの内周面に一致する円(図3中破線で示した円)M1が収まるように電線用孔5cが蓋部5aに形成されている。なお、電線用孔5cは、蓋部5aの反フォーク本体側端における開口の中心が軸心線Aから偏心した位置に配置されるように設けられればよいので、軸心線Aに対して傾斜する方向に沿って円筒部5b内に連通される態様で設けられてもよい。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0078
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0078】
フロントフォーク1は、以上のように構成されており、メンテナンス作業を行う場合、キャップ本体5を車体側チューブ3から取り外して、車体側チューブ3を車軸側チューブ4側へ向けてスライドさせて懸架ばね10を外方へ露出させる。つづいて、図5に示すように、懸架ばね10の上端をストッパ28よりも下方に位置するまで懸架ばね10を押し縮めた後、C型の工具Wをストッパ28の環状溝28aに嵌合させる。工具Wは、ストッパ28の環状溝28aに嵌合して取り付け可能とされており、懸架ばね10の外径より大きな外径を備えているので、ばね受12に代わり懸架ばね10の上端を支持して懸架ばね10を縮めた状態に維持する。なお、図示した工具Wは、一例であって、ストッパ28に着脱可能であって懸架ばね10の上端を支持できるものであればよいので、工具Wの形状および構造については適宜設計変更できる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0079
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0079】
このように工具Wによって懸架ばね10の上端が支持されると、連結ナット27が懸架ばね10の上端より上方に位置して、連結ナット27を懸架ばね10の干渉を受けずに外方から操作可能な状態となる。そして、レンチ等の工具で延長部27bの外周を把持して連結ナット27を回転操作すると、連結ナット27を螺子部13b1から簡単に取り外して、キャップCをピストンロッド7から取り外すことができる。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0081
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0081】
メンテナンス終了後にキャップCと外方ケーブル9bをフォーク本体2に取り付ける場合は、プラグ9c1とレセプタクル9c2とを接続して内方ケーブル9aと外方ケーブル9bとを接続する。つづいて、ピストンロッド7のコネクタ収容ロッド7bの上端をキャップにおける接続筒13b内に挿入したのち、連結ナット27を接続筒13bの外周に設けた螺子部13b1に螺子締結する。すると、コネクタ収容ロッド7bのフランジ7b2が連結ナット27と接続筒13bの下端とで挟持されて、ピストンロッド7とキャップCとが連結される。このピストンロッド7とキャップCとを連結する作業中は、工具Wをストッパ28に装着して懸架ばね10の上端を工具Wで支持した状態にしておく。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0082
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0082】
その後、工具Wを取り除き、懸架ばね10の上端をばね受12に支持させて状態としてから、車体側チューブ3を回転させてキャップ本体5の外周の螺子部5e1に車体側チューブ3を螺子締結すると、キャップが車体側チューブ3に連結されてフロントフォーク1の組立が完了する。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0087
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0087】
なお、本実施の形態のフロントフォーク1では、連結ナット27がピストンロッド(ロッド)7の外周にフランジ13b2によって接続筒13b側への移動が規制されるとともに回転自在に装着されており、接続筒13bの外周の螺子部13b1に螺合されているが、接続筒13bの外周にピストンロッド(ロッド)7側への移動が規制された状態で回転自在に装着されるとともにピストンロッド(ロッド)7の外周に螺合されてもよい。なお、連結ナット27が接続筒13bとピストンロッド(ロッド)7の一方の外周において、接続筒13bとピストンロッド(ロッド)7の他方側への移動が規制される所定位置とは、連結ナット27が接続筒13bとピストンロッド(ロッド)7の他方の外周に螺着可能な位置に設定される。このようにすれば、連結ナット27は、接続筒13bとピストンロッド(ロッド)7の一方の外周によって接続筒13bとピストンロッド(ロッド)7の他方側への移動が規制されつつも、接続筒13bとピストンロッド(ロッド)7の他方の外周に螺合できるので、接続筒13bとピストンロッド(ロッド)7とを引き寄せて両者を連結できる。本実施の形態のフロントフォーク1の場合、コネクタ収容ロッド7bの外周にはフランジ7b2が設けられており、連結ナット27の段部27cがフランジ7b2に当接すると、接続筒13b側への移動が規制されるようになっており、所定位置はフランジ7b2の設置位置によって設定されている。また、連結ナット27は、所定位置にて接続筒13bとピストンロッド(ロッド)7の一方に対して接続筒13bとピストンロッド(ロッド)7の他方側への移動が規制されていればよいので、接続筒13bとピストンロッド(ロッド)7とを連結しない状態においては、接続筒13b或いはピストンロッド(ロッド)7の他方から離間する方向への移動が許容されてもよいし、所定位置にて接続筒13bとピストンロッド(ロッド)7の一方の所定位置に対して軸方向へ不動な状態で周方向へ回転自在に装着されていてもよい。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0089
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0089】
そして、本実施の形態のフロントフォーク1では、接続筒13bがピストンロッド(ロッド)7のキャップ側端の外周に嵌合され、ピストンロッド(ロッド)7が接続筒13bの端部に当接するフランジ7b2を有し、接続筒13bが外周に螺子部13b1を有し、連結ナット27は、螺子部13b1に螺着されてフランジ7b2を接続筒13bとで挟持してキャップCとピストンロッド(ロッド)7とを連結している。このように構成されたフロントフォーク1によれば、接続筒13b内にピストンロッド(ロッド)7が嵌合されるので、連結ナット27における接続部分において曲げモーメントにも十分に耐え得る強度を得ることができ、フロントフォーク1の実用性を向上させ得る。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0092
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0092】
また、本実施の形態のフロントフォーク1では、連結ナット27は、螺子部13b1に螺着される環状のナット部27aと、ナット部27aの軸方向の一端に連なってピストンロッド(ロッド)7のキャップ側端の外周に軸方向へ移動可能に装着される環状の延長部27bとを備え、延長部27bの少なくとも一部の外周形状が工具による把持を可能とする形状とされている。このように構成されたフロントフォーク1によれば、連結ナット27の外形を小型化でき、懸架ばね10、車体側チューブ3および車軸側チューブ4の外径も小型化できるのでフロントフォーク1の外径の小型化が可能となる。なお、連結ナット27は、ナット部27aの外周形状が工具の把持を可能とする形状とされる場合、ナット部27aとフランジ7b2に対向する段部27cとを備えていれば、延長部27bを備えていなくともよい。このように、ナット部27aの外周形状が工具の把持を可能とする形状とされる場合、接続筒13bとピストンロッド(ロッド)7のうち外周に配置される部材の外周に連結ナット27が螺着される関係上、ナット部27aの肉厚を確保する必要性からナット部27aの外形が大型化し、結果的に、フロントフォーク1の外形が大型化するので、小型化の点では工具で把持可能な延長部27bを備えたフロントフォーク1の構造を採用する方が有利である。なお、連結ナット27の延長部27bの外周形状が軸方向の全長に亘って工具の把持を可能とする形状とされてもよいし、一部の外周形状のみが工具の把持を可能とする形状となっていてもよい。また、延長部27bの外周形状は、連結ナット27の回転操作に使用する工具に適合する形状とされればよく、六角形状に限定されるものではない。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0096
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0096】
なお、本実施の形態のフロントフォーク1は、フォーク本体2内に収容されるとともにフォーク本体2を伸長方向へ付勢する懸架ばね10と、懸架ばね10を支持するばね受12の支持位置を調節可能なアジャスタ11とを備え、電線9がキャップ本体5におけるフォーク本体2の軸心線Aから偏心した位置からフォーク本体2外へ引き出され、アジャスタ11の操作部17がキャップ本体5におけるフォーク本体2の軸心線Aから偏心した位置であって電線9から離間した位置に設けられている。このように構成されたフロントフォーク1では、アジャスタ11の操作部17と電線9とがキャップ本体5に対してフォーク本体2の軸心線Aから偏心した位置に配置されており、操作部17が電線9の外周回りに配置されていないので電線9の径とは無関係に操作部17を小型化でき、ユーザが操作部17を操作する際に電線9に干渉せずに済むとともに、電線9と操作部17とをキャップ本体5に比較的自由に配置できる。よって、本実施の形態のフロントフォーク1によれば、内部にソレノイド(電気機器)8を備えていてもアジャスタ11の操作部17を小型化でき、操作部17の操作に電線9が邪魔とならず、設計自由度を向上できる。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0107
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0107】
1・・・フロントフォーク、2・・・フォーク本体、3・・・車体側チューブ、4・・・車軸側チューブ、5・・・キャップ本体、5a・・・蓋部、5b・・・円筒部、5c・・・電線用孔、6・・・シリンダ、7・・・ピストンロッド(ロッド)、7a・・・小径ロッド、7b・・・大径ロッド、7b2,13b2・・・フランジ、7b3,13b1・・・螺子部、8・・・ソレノイド(電気機器)、9・・・電線、9a・・・内方ケーブル、9b・・・外方ケーブル、9c・・・コネクタ、9d・・・ストッパリング、10・・・懸架ばね、13b・・・接続筒、27・・・連結ナット、27a・・・ナット部、27b・・・延長部、28・・・ストッパ、28a・・・環状溝(取付部)、C・・・キャップ
【手続補正15】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正の内容】
図2