(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124033
(43)【公開日】2022-08-25
(54)【発明の名称】燃料供給システム
(51)【国際特許分類】
F02M 37/00 20060101AFI20220818BHJP
F16K 17/10 20060101ALI20220818BHJP
【FI】
F02M37/00 R
F16K17/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021021562
(22)【出願日】2021-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永滝 文宏
(72)【発明者】
【氏名】本田 義彦
(72)【発明者】
【氏名】宮部 善和
【テーマコード(参考)】
3H059
【Fターム(参考)】
3H059AA05
3H059AA06
3H059BB22
3H059CA13
3H059CB12
3H059CB14
3H059CD05
3H059EE01
3H059FF13
(57)【要約】
【課題】圧力調整装置のために燃料供給通路に複雑な分岐通路や逆止弁を設ける必要のない、コンパクトでより搭載設計が容易となる燃料供給システムを提供する。
【解決手段】燃料供給システム1は、燃料タンク2内の燃料ポンプ4と燃料利用装置3とを接続する一つの燃料供給通路5の途中に、圧力調整装置6を備える。圧力調整装置6は、燃料ポンプ4側から燃料が流入する第1室22と、燃料利用装置3側へ燃料が流出する第2室23と、余剰燃料を還流する還流出口27と、第1室22と還流出口27の間を連通・遮断する第1弁体31と、第1室22と第2室23の間を連通・遮断する第2弁体32と、第1弁体31を閉弁方向に付勢する第1付勢部材33と、第2弁体32を開弁方向に付勢する第2付勢部材34とを備える。燃料ポンプ4の作動時は、第1弁体31と第2弁体32が一体となり開弁方向に移動し、第1室22と第2室23を通る燃料供給通路5が連通する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクから燃料利用装置に燃料を供給する燃料供給システムにおいて、
前記燃料タンク内の燃料を前記燃料利用装置に圧送する燃料ポンプと、
前記燃料ポンプと前記燃料利用装置とを接続する一つの燃料供給通路と、
前記燃料供給通路の途中に設けられた圧力調整装置が備えられており、
前記圧力調整装置は、
前記燃料ポンプ側から燃料が流入する第1室と、
前記燃料利用装置側へ燃料が流出する第2室と、
前記燃料タンクに余剰燃料を還流するための還流出口と、
貫通孔を有し、前記第1室と前記還流出口との間を連通・遮断する第1弁体と、
前記第1弁体が着座する第1弁座を有し、前記第1室と前記第2室の間を連通・遮断する第2弁体と、
前記第2弁体が着座する第2弁座と、
前記第1弁体を閉弁方向に付勢し、前記第1弁体と前記第2弁体が閉弁状態であるときに前記第1弁体を介して前記第2弁体を前記第2弁座に着座した状態に保持する第1付勢部材と、
前記第2弁体を開弁方向に付勢する第2付勢部材と、を備え、
前記燃料ポンプの作動時には、前記第1室内の燃料の圧力が高まることにより前記第1弁体と前記第2弁体が一体となって開弁方向に移動し、前記第2弁体が前記第2弁座から離れて開弁し、前記第1室と前記第2室とを通る前記燃料供給通路が連通し、燃料が前記燃料利用装置に供給される、燃料供給システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料供給システムであって、
前記圧力調整装置は、
前記第2弁体が前記第1弁体側への移動を規制する規制部材を備えており、
前記第1室内の燃料の圧力がさらに高まると、前記第1弁体がさらに開弁方向に移動する一方で前記第2弁体の移動が前記規制部材によって規制されることにより、前記第1弁体が前記第1弁座から離れて開弁し、余剰燃料が前記貫通孔と前記還流出口とを通して前記燃料タンクに還流する、燃料供給システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の燃料供給システムであって、
前記燃料ポンプが停止したときは前記第1弁体及び前記第2弁体が前記第1付勢部材の付勢によって閉弁し、前記燃料供給通路の前記第2室から前記燃料利用装置側における燃料の圧力が所定の範囲内で保持される、燃料供給システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の燃料供給システムであって、
前記第1弁体が前記第1室内の燃料から圧力を受ける受圧面積は、前記第2弁体が前記第1室内の燃料から圧力を受ける受圧面積よりも大きい、燃料供給システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の燃料供給システムであって、
前記燃料供給通路の前記圧力調整装置よりも前記燃料ポンプ側にリリーフ弁が設けられている、燃料供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、内燃機関に燃料を供給する燃料供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インジェクタに供給される燃料の圧力切換えが可能な圧力調整装置を備えた燃料供給システムが開示されている。燃料供給通路上には逆止弁が配置されている。逆止弁は、燃料ポンプユニットからインジェクタ側への燃料供給方向に開弁する一方で、逆方向には閉弁する。燃料供給通路からは分岐通路が分岐して圧力調整装置に向かい、圧力調整装置からは余剰燃料を燃料タンクに返すための燃料排出通路が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の燃料供給システムのように、燃料供給通路と分岐通路を設けて逆止弁と圧力調整装置を配置することにより、インジェクタへ供給される燃料の圧力を調整できるとともに、燃料ポンプが停止した状態でもインジェクタ側の燃料の圧力を保持できる。しかしながら、燃料の流路が複雑になると、燃料供給システムの搭載設計の難易度が上がる傾向にある。また、圧力調整装置内と逆止弁の2か所でシール部の油密を確保することが必要になる。
【0005】
本明細書に開示の技術が解決しようとする課題は、圧力調整装置のために燃料供給通路に複雑な分岐通路や逆止弁を設ける必要のない、コンパクトでより搭載設計が容易となる燃料供給システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本明細書が開示する技術は次の手段をとる。
【0007】
第1の手段は、燃料タンクから燃料利用装置に燃料を供給する燃料供給システムにおいて、前記燃料タンク内の燃料を前記燃料利用装置に圧送する燃料ポンプと、前記燃料ポンプと前記燃料利用装置とを接続する一つの燃料供給通路と、前記燃料供給通路の途中に設けられた圧力調整装置が備えられており、前記圧力調整装置は、前記燃料ポンプ側から燃料が流入する第1室と、前記燃料利用装置側へ燃料が流出する第2室と、前記燃料タンクに余剰燃料を還流するための還流出口と、貫通孔を有し、前記第1室と前記還流出口との間を連通・遮断する第1弁体と、前記第1弁体が着座する第1弁座を有し、前記第1室と前記第2室の間を連通・遮断する第2弁体と、前記第2弁体が着座する第2弁座と、前記第1弁体を閉弁方向に付勢し、前記第1弁体と前記第2弁体が閉弁状態であるときに前記第1弁体を介して前記第2弁体を前記第2弁座に着座した状態に保持する第1付勢部材と、前記第2弁体を開弁方向に付勢する第2付勢部材と、を備え、前記燃料ポンプの作動時には、前記第1室内の燃料の圧力が高まることにより前記第1弁体と前記第2弁体が一体となって開弁方向に移動し、前記第2弁体が前記第2弁座から離れて開弁し、前記第1室と前記第2室とを通る前記燃料供給通路が連通し、燃料が燃料利用装置に供給される、燃料供給システムである。
【0008】
第1の手段によると、燃料供給システムの燃料供給通路上に圧力調整装置が配置されている。圧力調整装置には第1弁体と第2弁体が備えられている。第1弁体は第1付勢部材によって閉弁方向に付勢され、第2弁体は第2付勢部材により開弁方向に付勢される。前記第1弁体と前記第2弁体が閉弁状態であるときは、第1付勢部材が前記第1弁体を介して前記第2弁体を前記第2弁座に着座した状態に保持する。この構成により、燃料ポンプが作動して燃料が第1室に流入し、第1室内の燃圧が所定の圧力より高くなると、第1室内の燃圧、第1付勢部材と第2付勢部材の付勢力の関係によって、第1弁体と第2弁体が一体となって第1弁体側に移動する。これにより、第2弁体は第2弁座から離れて開弁状態になり第1室と第2室が連通する。第1室から第2室に流入した燃料は燃料利用装置に供給される。このように圧力調整装置は燃料供給通路の一部として機能するとともに、従来必須であった逆止弁の機能をも内包する。そのため、燃料供給システムは燃料供給通路に複雑な分岐通路や逆止弁を必ずしも設ける必要がなく、コンパクトでより搭載設計が容易となる。
【0009】
第2の手段は、第1の手段の燃料供給システムであって、前記圧力調整装置は、前記第2弁体が前記第1弁体側への移動を規制する規制部材を備えており、前記第1室の燃料の圧力がさらに高まると、前記第1弁体がさらに開弁方向に移動する一方で前記第2弁体の移動が前記規制部材によって規制されることにより、前記第1弁体が前記第1弁座から離れて開弁し、余剰燃料が前記貫通孔と前記還流出口とを通して前記燃料タンクに還流する。
【0010】
第2の手段によると、圧力調整装置は、第2弁体の第1弁体側への移動が規制部材により規制される。そのため、第1室内の燃料の圧力が所定の圧力よりさらに高くなると、第1弁体は第2弁体の第1弁座から離れて還流出口側に移動する。これにより、第1弁体は開弁状態になり第1室と還流出口との間が連通する。よって、余剰燃料が第1弁体の貫通孔を通り還流出口から燃料タンクへ還流する。
【0011】
第3の手段は、第1の手段または第2の手段の燃料供給システムであって、前記燃料ポンプが停止したときは前記第1弁体及び前記第2弁体が前記第1付勢部材の付勢によって閉弁し、前記燃料供給通路の前記第2室から前記燃料利用装置側における燃料の圧力が所定の範囲内で保持される。
【0012】
第3の手段によると、燃料ポンプが停止することにより、第1室への燃料の流入が停止して第1室内の燃料の圧力が低下する。第1室内の燃料の圧力が所定の圧力より低くなると、第1弁体と第2弁体は第1付勢部材に押圧されて閉弁状態になる。これにより、圧力調整装置は逆止弁のように燃料利用装置側から燃料供給上流への流入を防止する。よって、燃料供給通路は第2室から燃料利用装置側において閉じられた状態となり、燃料利用装置内の燃圧を所定の圧力で保持できる。
【0013】
第4の手段は、第1の手段から第3の手段のいずれか一の燃料供給システムであって、前記第1弁体が前記第1室内の燃料から圧力を受ける受圧面積は、前記第2弁体が前記第1室内の燃料から圧力を受ける受圧面積よりも大きい。
【0014】
第4の手段によると、燃料ポンプの作動時においては、第1弁体と第2弁体は、第1室内に流入した燃料から圧力を受ける。第1弁体は第2弁体よりも第1室内の燃料から圧力を受ける受圧面積が大きいため、第1室内の燃料が第1弁体を押す力は、第1室内の燃料が第2弁体を押す力より常に大きくなる。その差は第1室内の燃料の圧力が大きくなるほど拡大するため、第2付勢部材の付勢力も手伝って、第1弁体と第2弁体は一体的に開弁方向に押される。よって、圧力調整装置内に流入する燃料の圧力に応じて第2弁体を開閉できる。
【0015】
第5の手段は、第1の手段から第4の手段のいずれか一の燃料供給システムであって、前記燃料供給通路の前記圧力調整装置よりも前記燃料ポンプ側にリリーフ弁が設けられている。
【0016】
第5の手段によると、燃料供給通路の圧力調整装置よりも燃料ポンプ側にリリーフ弁が設けられている。これにより、高い燃圧に上昇した場合にリリーフ弁が開弁し、圧力が解放される。よって、燃料の圧力を配管の耐圧性能から見て過剰圧力にならない範囲に制御できる。
【発明の効果】
【0017】
本明細書に開示の技術によると、圧力調整装置のために燃料供給通路に複雑な分岐通路や逆止弁を設ける必要のない、コンパクトでより搭載設計が容易となる燃料供給システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】燃料ポンプの始動直後における実施形態にかかる燃料供給システムの構成図である。圧力調整装置の2つの弁体の位置は後述の第1状態にある。
【
図2】燃料ポンプ作動時において燃料供給通路が連通したときにおける燃料供給システムの構成図である。圧力調整装置の2つの弁体の位置は後述の第2状態にある。
【
図3】燃料ポンプ作動時において圧力調整装置によって燃料の圧力が調整されているときにおける燃料供給システムの構成図である。圧力調整装置の2つの弁体の位置は後述の第3状態にある。
【
図4】燃料ポンプ停止時において圧力調整装置の閉弁によって下流側に残圧が保持されたときにおける燃料供給システムの構成図である。圧力調整装置は第1状態にある。
【
図5】燃料ポンプ停止時において圧力調整装置によって下流側に保持された残圧が調整されているときにおける燃料供給システムの構成図である。圧力調整装置は第2状態にある。
【
図6】燃料ポンプ再作動時の燃料供給システムの構成図である。圧力調整装置は第1状態にある。
【
図7】圧力調整装置内の燃料通過流量と配管圧力との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本明細書に開示の技術を実施するための実施形態について図面を用いて説明する。実施形態にかかる燃料供給システムは、自動車等の車両において、燃料タンク内の燃料を内燃機関であるエンジンに供給するものである。
【0020】
(燃料供給システムの概要)
図1は燃料供給システムの概要を示す構成図である。
図1に示すように、燃料供給システム1は、燃料タンク2内の燃料をエンジン3(燃料利用装置)に圧送する燃料ポンプ4と、燃料ポンプ4とエンジン3とを接続する一つの燃料供給通路5と、燃料供給通路5の途中に設けられた圧力調整装置6と、燃料供給通路5の圧力調整装置6よりも燃料ポンプ4側に設けられたリリーフ弁7とを備えている。
【0021】
燃料タンク2内には燃料ポンプ4が設置されている。燃料ポンプ4は、例えばモータ一体型の電動式の燃料ポンプである。燃料ポンプ4は、燃料タンク2内に貯留されている燃料を吸入して加圧しながら、燃料供給通路5を介してエンジン3に供給する。燃料ポンプ4によって送り出される燃料は、電子制御装置(ECU)で燃料ポンプ4の回転速度を制御することにより流量を変えることができる。燃料供給通路5のエンジン3付近には高圧ポンプ11が設置されている。高圧ポンプ11は、燃料供給通路5を流れる燃料の圧力を上昇させて、エンジン3側に排出する。エンジン3のデリバリパイプ12は、燃料供給通路5から供給された燃料を複数のインジェクタ13に分配する。各インジェクタ13は、エンジン3の吸気通路又は燃焼室に燃料を噴射する。
【0022】
燃料供給通路5の途中には、圧力調整装置6が接続されている。以下の説明では、燃料供給通路5の圧力調整装置6より燃料ポンプ4側を上流側部分5a、エンジン3側を下流側部分5bと呼ぶ。圧力調整装置6は、燃料ポンプ4の作動時において燃料供給通路5を流れる燃料をエンジン3へ供給すると共に、供給される燃料の圧力を所定の圧力に調整する。一方、燃料ポンプ4の停止時(非作動時)において、下流側部分5b内の燃料が上流側部分5aへ流れるのを阻止すると共に、下流側部分5b内の燃料の圧力を所定の圧力に調整する。
【0023】
燃料供給通路5の上流側部分5aからは、燃料タンク2内に連通する燃料排出通路5cが分岐されている。燃料排出通路5cにはリリーフ弁7が設けられている。リリーフ弁7は、通常時に閉弁しており、上流側部分5a内の燃料の圧力が所定の圧力よりも高くなると開弁し、上流側部分5aを流れる燃料の一部を燃料排出通路5cから燃料タンク2内に排出させる。
【0024】
(圧力調整装置)
図1に示すように、圧力調整装置6は、略円筒状の内部空間を形成するケーシング21を備えている。ケーシング21は、燃料ポンプ4側から燃料が流入する主調圧室22(第1室)と、エンジン3(燃料利用装置)側へ燃料が流出する副調圧室23(第2室)と、主調圧室22から余剰燃料が流出する背圧室24を備えている。主調圧室22には燃料供給通路5の上流側部分5aと接続される燃料入口25が設けられている。副調圧室23には下流側部分5bと接続される供給出口26が設けられている。背圧室24には余剰燃料を燃料タンク2へ還流させる還流出口27が設けられている。
【0025】
ケーシング21内には、主調圧室22と還流出口27との間を連通・遮断する第1弁体31と、主調圧室22と副調圧室23の間を連通・遮断する第2弁体32と、第1弁体31を閉弁方向に付勢する大スプリング33(第1付勢部材)と、第2弁体32を開弁方向に付勢する小スプリング34(第2付勢部材)と、第2弁体32の移動を規制する規制部材35が配置されている。
【0026】
ケーシング21は、主調圧室22と副調圧室23を形成する第1ケース部材36と、背圧室24を形成する第2ケース部材37と、を結合してなる。両ケース部材36,37の結合部には、径方向外方へ円環状に突出するフランジ部38が形成されている。ケーシング21は金属製である。
【0027】
第1ケース部材36と第2ケース部材37との間には、可撓性を有する円環板状のダイヤフラム39の外周部が挟持されている。ダイヤフラム39により、ケーシング21の内部空間が第1ケース部材36側の主調圧室22と第2ケース部材37側の背圧室24とに区画されている。
【0028】
第1ケース部材36は、フランジ部38から軸方向に沿って延出する大径筒部36aと、中径筒部36bと、小径筒部36cと、大径筒部36aと中径筒部36bとを接続する大径段付き部36dと、大径筒部36aと中径筒部36bとを接続する小径段付き部36eと、を有する段付円筒状に形成されている。大径筒部36aには主調圧室22が設けられている。大径段付き部36dには、燃料入口25が形成されている。燃料入口25は燃料供給通路5の上流側部分5aと接続される。小径筒部36cの端部には、供給出口26が形成されている。供給出口26は下流側部分5bと接続される。
【0029】
主調圧室22内にはホルダ40が設けられている。ホルダ40は、軸方向に延びる円筒状の柱状部40aと、柱状部40aの一端部(後述の第2弁体32側)から径方向外方へフランジ状に突出する弁座部40b(第2弁座)と、を有する。柱状部40aの他端部(弁座部40bと反対側)は、第1ケース部材36の中径筒部36bの内部に圧入されている。弁座部40bは、第1ケース部材36の大径筒部36aの内径よりも小さい外径を有する。ホルダ40の内部空間は副調圧室23に区画される。
【0030】
第2ケース部材37は、第1ケース部材36のフランジ部38側の開口部を閉鎖する略円筒状に形成されている。第2ケース部材37は、軸方向においてフランジ部38と対向する位置に還流出口27が形成されている。還流出口27は背圧室24に流出した余剰燃料を燃料タンク2に還流する。
【0031】
ダイヤフラム39の内周部には第1弁体31が設けられている。第1弁体31は、ダイヤフラム39の背圧室24側に配置された円環板状の挟持部材43と結合されている。第1弁体31と挟持部材43とによりダイヤフラム39が挟持されている。第1弁体31は軸方向に貫通する貫通孔31aを有する。貫通孔31aの中央は狭くなっており、背圧室24への燃料の流量を抑制する絞りとなっている。第1弁体31の主調圧室22側の開口端部には、後述する第2弁体32の弁座部32c(第1弁座)に対して着座及び離座可能な弁部31bが形成されている。第1弁体31は、主調圧室22と背圧室24及び還流出口27との間を連通・遮断する構成となっている。
【0032】
ホルダ40の弁座部40bと第1弁体31の間には第2弁体32が配置されている。第2弁体32は、円板状の弁板部32aと、弁板部32aの外周部にホルダ40側に延出して形成された円環状の弁部32bと、弁板部32aの中央部に形成された球状の弁座部32c(第1弁座)と、を有する。弁部32bは、ホルダ40の弁座部40b(第2弁座)に対して着座及び離座可能である。第2弁体32は、主調圧室22と副調圧室23の間を連通・遮断する構成となっている。
【0033】
弁座部40bには、第2弁体32を覆うキャップ状の規制部材35が装着されている。規制部材35の中央部には第1開口孔35aが形成されている。規制部材35の第1開口孔35aから第2弁体32の弁座部32cが露出されている。規制部材35と弁座部40bとにより第2弁体32の軸方向の移動量が所定量に規制される。規制部材35の第1開口孔35aの周囲には、複数個の第2開口孔35bが形成されている。
【0034】
背圧室24内には、コイルスプリングからなる大スプリング33(第1付勢部材)が配置されている。大スプリング33は、第2ケース部材37と挟持部材43との対向面間に介装されている。大スプリング33は、第1弁体31を閉弁方向に付勢する。大スプリング33は、第1弁体31を閉弁状態すなわち弁部31bが第2弁体32の弁座部32cに着座するとともに、第2弁体32の弁部32bがホルダ40の弁座部40bに着座する状態に保持する。
【0035】
第2弁体32は、弁座部32cが球面状に形成されることにより調心機能を有している。開弁時に第2弁体32の軸がホルダ40の弁座部40bに対してずれたとしても、第1弁体31の弁部31bの円錐面が第2弁体32の弁座部32cに着座することにより、軸のずれが修正される。
【0036】
第1ケース部材36の大径筒部36a内には、燃料入口25から主調圧室22に流入する燃料をろ過する主フィルタ41が配置されている。第1ケース部材36の中径筒部36b内には、供給出口26から副調圧室23に流入する燃料をろ過する副フィルタ42が配置されている。
【0037】
ホルダ40の副調圧室23内には、コイルスプリングからなる小スプリング34(第2付勢部材)が配置されている。小スプリング34は、副フィルタ42と第2弁体32の弁板部32aとの間に介在されている。小スプリング34は、第2弁体32を開弁方向に付勢しつつ副フィルタ42に押圧している。小スプリング34の付勢力W2は、大スプリング33の付勢力W1よりも小さい。
【0038】
第1弁体31と第2弁体32は、スプリングと燃料の圧力との力関係にに基づいて所望の開弁圧でもって後述の開閉動作を実現できるよう、適切な受圧面積が設定されている。なお、受圧面積とは、当業者であれば理解できるように、燃料の圧力によって各弁体を開弁方向または閉弁方向(軸方向)に移動させる力に寄与する面積である。ここでは第1弁体31が主調圧室22内の燃料から圧力を受ける受圧面積を「第1受圧面積A1」、第2弁体32が副調圧室23内の燃料から圧力を受ける受圧面積を「第2受圧面積A2」、第2弁体32が主調圧室22内の燃料から圧力を受ける受圧面積を「第3受圧面積A3」と呼ぶ。
【0039】
第1受圧面積A1は、第3受圧面積A3より大きい。すなわち第1受圧面積A1と第3受圧面積A3は、主調圧室22内の燃料が第1弁体31を押す力F1の方が第2弁体32を押す力F3よりも大きくなるように設定されている(
図1参照)。燃料ポンプ4の作動時には、第1弁体31と第2弁体32は、主調圧室22内に流入した燃料の圧力P1を受ける。このとき第2弁体32が開弁する条件は、小スプリング34の付勢力W2が、主調圧室22の燃料が第2弁体を押す力F3(=P1×A3)と第1弁体が第2弁体を押す力W1-P1×A1との合計を上回ることであり、W2>P1×A3+W1-P1×A1と表される。第1弁体31が開弁する条件は、主調圧室22内の燃料が第1弁体31を押す力F1(=P1×A1)が第1弁体31にかかる大スプリング33の付勢力W1を上回ることであり、P1×A1>W1と表される(
図2,3参照)。
【0040】
燃料ポンプ4の作動を停止すると、主調圧室22内の燃料の圧力P1が燃料ポンプ4を通して抜けるため、燃料タンク2のタンク内圧(P1=0)まで低下する。これに伴い第1弁体31を押す力F1が低下し、大スプリング33の付勢力W1を下回り、P1×A1<W1の力関係となる。第1弁体31と第2弁体32が閉弁状態であるとき、第2弁体32は副調圧室23内の燃料の圧力P2を受ける。このときは副調圧室23内の燃料が第2弁体32を押す力F2(=P2×A2)と小スプリング34の付勢力W2の合計が大スプリング33の付勢力W1を下回り、P2×A2+W2<W1の力関係となる(
図4参照)。
【0041】
燃料ポンプ4の停止後、エンジン3や高圧ポンプ11からの受熱による燃料の温度上昇により燃料供給通路5の下流側部分5b及び副調圧室23の燃料の圧力(残圧)P2が高くなる場合がある。この状態で第2弁体32が開弁する条件は、副調圧室23内の燃料が第2弁体32を押す力F2と小スプリング34の付勢力W2の合計が大スプリング33の付勢力W1を上回ることであり、P2×A2+W2>W1と表される(
図5参照)。
【0042】
圧力調整装置6の下流側に残圧P2が保持された状態で燃料ポンプ4を再び作動(エンジン3を高温で再始動)するときは、残圧が解放されている場合よりも燃料ポンプ4を高い回転速度で作動させる。これにより、開弁直後に圧力調整装置6内を通過する燃料の流量が多くなり、下流側に保持されていた高い残圧を維持したまま燃料を供給することができる。このように残圧P2が保持された状態で第2弁体が開弁する条件は、前述した燃料ポンプ4の作動時における条件式に、副調圧室23内の燃料が第2弁体32を押す力F2(=P2×A2)を加えた条件式であり、P1×A1+P2×A2+W2>W1+P1×A3と表される(
図6参照)。第2弁体が開弁すると副調圧室23内の燃料の圧力P2はすぐに主調圧室22内の燃料の圧力P1と同じになるため、第1弁体が開弁する条件は前述の通常のエンジン始動時と同じ式P1×A1>W1で表される。
【0043】
(燃料供給システム1及び圧力調整装置6の作用)
燃料供給システム1では、燃料供給通路5を通じてエンジン3に燃料が供給されるとともに、燃料供給通路5上の圧力調整装置6により燃料の圧力が調整される。圧力調整装置6は、通常時は、
図1に示すように、大スプリング33により、第1弁体31の弁部31bが第2弁体32の弁座部32cに着座すると共に、第2弁体32の弁部32bがホルダ40の弁座部40bに着座する状態に保持されている。この状態すなわち第1弁体31及び第2弁体32が共に閉弁した状態を「第1状態」という。
【0044】
(燃料ポンプ4の作動時)
圧力調整装置6の第1状態(
図1参照)において、燃料ポンプ4の作動により燃料供給通路5の上流側部分5aに送出された燃料は、圧力調整装置6の燃料入口25を通じて主調圧室22に流入する。
【0045】
主調圧室22の燃料の圧力P1が上昇して、主調圧室22内の燃料が第1弁体31を押す力F1が大スプリング33の付勢力W1を上回ると、第1弁体31が背圧室24側すなわち開弁方向に押圧される。これにともない、小スプリング34の付勢力W2によって第2弁体32が第1弁体31と共に背圧室24側すなわち開弁方向に移動する。これにより、第2弁体32の弁部32bがホルダ40の弁座部40bから離座し、弁板部32aが規制部材35に当接する(
図2参照)。この状態すなわち第1弁体31が閉弁したまま第2弁体32が開弁する状態を「第2状態」という。第2状態では、主調圧室22と副調圧室23とが規制部材35の第1開口孔35aと第2開口孔35bを介して連通する。主調圧室22内の燃料は副調圧室23に流入し、供給出口26、燃料供給通路5の下流側部分5bを通じてエンジン3に供給される。
【0046】
さらに、大スプリング33の付勢に抗して、第1弁体31が背圧室24側に向かって押圧されると第1弁体31の弁部31bが第2弁体32の弁座部32cから離座する(
図3参照)。この状態すなわち第1弁体31及び第2弁体32が共に開弁する状態を「第3状態」という。第3状態では、主調圧室22の燃料の一部が、余剰燃料として第1弁体31の貫通孔31aを通じて背圧室24に流出し、還流出口27から排出される。
【0047】
燃料ポンプ4が低圧運転の状態、すなわち圧力調整装置6内の燃料の通過流量Vが
図7に示すVaからVbの範囲であるときは、第1弁体31の貫通孔31aの絞りによって通過流量Vが抑制されることなく、圧力調整される。
【0048】
主調圧室22内の燃料の圧力P1が低下すると、主調圧室22内の燃料が第1弁体31を押す力F1が低下し、大スプリング33の付勢により第1弁体31は閉弁方向に移動する。圧力P1が大スプリング33の付勢力W1を下回ると、第1弁体31の弁部31bが第2弁体32の弁座部32cに着座し、第2状態となる(
図2参照)。
【0049】
(燃料ポンプ4の停止時)
燃料ポンプ4を停止すると、主調圧室22内の燃料の圧力P1が低下するため、第1弁体31は上述の通り大スプリング33の付勢により閉弁する。また副調圧室23内の燃料の圧力P1も低下するため、副調圧室23内の燃料が第2弁体32を押す力F2が低下し、大スプリング33の付勢により第2弁体32は閉弁方向に移動する。最終的には第2弁体32の弁部32bがホルダ40の弁座部40bに着座し、第1状態となる(
図4参照)。一方で、主調圧室22内の燃料の圧力は燃料ポンプ4を通して抜け、タンク内圧まで低下する。
【0050】
燃料ポンプ4の停止時には、上述のように圧力調整装置6の両弁体31,32が閉弁するだけでなく、各インジェクタ13も閉弁するため、燃料供給通路5の下流側部分5bにおいて燃料の残圧P2が保持される。この状態において、例えば、エンジン3や高圧ポンプ11が発する熱の影響によって、下流側部分5b内の燃料の圧力が再び高くなる場合がある。下流側部分5b内の燃料の圧力が高くなるにともない、副調圧室23の燃料の圧力P2も高くなる。
【0051】
副調圧室23の燃料の圧力P2が上昇し、副調圧室23の燃料が第2弁体32を押す力F2と小スプリング34の付勢力W2の合計が大スプリング33の付勢力W1を上回ると、大スプリング33の付勢に抗して、第2弁体32の弁部32bがホルダ40の弁座部40bから離座し、第2状態となる(
図5参照)。この状態では、副調圧室23の燃料が、余剰燃料として規制部材35の第2開口孔35bを介して主調圧室22に流出した後、燃料入口25から燃料供給通路5の上流側部分5aへ排出される。その燃料は、停止している燃料ポンプ4を逆流して燃料タンク2内へ排出される。
【0052】
副調圧室23の燃料の圧力P2が低下し、副調圧室23の燃料が第2弁体32を押す力F2と小スプリング34の付勢力W2の合計が大スプリング33の付勢力W1を下回ると、大スプリング33の付勢によって、第2弁体32の弁部32bがホルダ40の弁座部40bに着座し、第1状態となる(
図4参照)。
【0053】
(燃料ポンプ4の再作動時)
圧力調整装置6の下流側に残圧が保持された状態でエンジン3を再始動する場合、燃料ポンプ4を通常の始動よりも高い回転速度で作動させる(
図6参照)。これにより、開弁後に圧力調整装置6内を通過する燃料の流量が多くなり、圧力が高い状態で燃料を供給することができる。主調圧室22内の燃料が第1弁体31を押す力F1が大スプリング33の付勢力W1を上回ると、第1弁体31は大スプリング33の付勢に抗して背圧室24側すなわち開弁方向に向かって押圧される。第2弁体32は、副調圧室23内に保持された燃料の残圧P2を受けており、第1弁体31が開弁方向に押圧されるにともない、この残圧P2によるF2及び小スプリング34の付勢力W2によって、開弁方向に移動する。これにより、第1弁体31と第2弁体32は第2状態になり、主調圧室22と副調圧室23が連通する。さらに第1弁体31が開弁方向に向かって押圧されると、第3状態になる。
【0054】
燃料ポンプ4から圧力調整装置6へ送られる燃料の通過流量Vが多くなると、余剰燃料が第1弁体31の貫通孔31aを介して背圧室24に流出する(
図3参照)。通過流量Vが
図7に示すVbを超えて増加すると第1弁体31の貫通孔31aの絞りにより背圧室24への流量が抑制される。さらに通過流量Vが増加してVcに達し、背圧室24へ流出する燃料の圧力が所定の圧力まで上昇すると、リリーフ弁7が開弁する。燃料供給通路5の上流側部分5aの燃料は、燃料排出通路5cから燃料タンク2内へ排出される。これにより、燃料の圧力が過剰圧力にならないよう制御される。
【0055】
(実施形態による利点)
上記実施形態に係る燃料供給システム1は、一つの燃料供給通路5上に圧力調整装置6が配置されている。圧力調整装置6には第1弁体31と第2弁体32が備えられている。第1弁体31は大スプリング33(第1付勢部材)によって閉弁方向に付勢され、第2弁体32は小スプリング34(第2付勢部材)により開弁方向に付勢される。第1弁体31と第2弁体32が閉弁状態であるときは、大スプリング33が第1弁体31を介して第2弁体32をホルダ40の弁座部40b(第2弁座)に着座した状態に保持する。
【0056】
この構成により、燃料ポンプ4が作動して燃料が主調圧室22(第1室)に流入し、主調圧室22内の燃料の圧力が所定の圧力より高くなると、主調圧室22内の燃料の圧力、大スプリング33と小スプリング34の付勢力の関係によって、第1弁体31と第2弁体32が一体となって第1弁体31側に移動する。これにより、第2弁体32はホルダ40の弁座部40bから離れて開弁状態になり主調圧室22と副調圧室23(第2室)とを通る燃料供給通路5が連通する。主調圧室22から副調圧室23に流入した燃料は供給出口26からエンジン3(燃料利用装置)に供給される。このように圧力調整装置6は燃料供給通路5の一部として機能するとともに、従来必須であった逆止弁の機能をも内包する。そのため、燃料供給システム1は燃料供給通路5に複雑な分岐通路や逆止弁を必ずしも設ける必要がなく、コンパクトでより搭載設計が容易となる。
【0057】
圧力調整装置6は、第2弁体32の第1弁体31側への移動が規制部材35により規制される。そのため、主調圧室22内の燃圧が所定の圧力よりさらに高くなると、第1弁体31は第2弁体32の弁座部32c(第1弁座)から離れて還流出口27側に移動する。これにより、第1弁体31は開弁状態になり主調圧室22と還流出口27との間が連通する。主調圧室22内の余剰燃料は、第1弁体31の貫通孔31aを通り還流出口27から燃料タンクへ還流する。
【0058】
燃料ポンプ4が停止することにより、主調圧室22への燃料の流入が停止して主調圧室22内の燃料の圧力P1が低下する。主調圧室22内の燃料の圧力P1が所定の圧力より低くなると、第1弁体31と第2弁体32は大スプリング33に押圧されて閉弁状態になる。これにより、圧力調整装置6は逆止弁のようにエンジン3側から燃料供給通路5の上流側部分5aへの流入を防止する。よって、燃料供給通路5は副調圧室23からエンジン3側において閉じられた状態となり、エンジン3内の燃圧を所定の圧力で保持できる。
【0059】
燃料ポンプ4の作動時においては、第1弁体31と第2弁体32は、主調圧室22内に流入した燃料から圧力を受ける。第1弁体31が主調圧室22内の燃料から圧力を受ける第1受圧面積A1は、第2弁体32が主調圧室22内の燃料から圧力を受ける第3受圧面積A3よりも大きい。そのため、主調圧室22内の燃料が第1弁体31を押す力F1は、主調圧室22内の燃料が第2弁体32を押す力F3より常に大きくなる。その差F1-F3は主調圧室22内の燃料の圧力が大きくなるほど拡大するため、小スプリング34の付勢力W2も手伝って、第1弁体31と第2弁体32は一体的に開弁方向に押される。よって、圧力調整装置6内に流入する燃料の圧力に応じて第2弁体32を開閉できる。
【0060】
燃料供給通路5の圧力調整装置6よりも燃料ポンプ4側にリリーフ弁7が設けられている。これにより、高い燃圧に上昇した場合にリリーフ弁7が開弁し、圧力が解放される。よって、燃料の圧力を配管の耐圧性能から見て過剰圧力にならない範囲に制御できる。
【0061】
燃料供給システム1は、燃料タンク2内の燃料をエンジン3へ供給する燃料供給通路5の途中に圧力調整装置6が設けられている。圧力調整装置6は燃料ポンプ4の作動時に燃料供給通路として機能し、燃料ポンプ4の停止時に燃料ポンプ4側への逆流を防止する逆止弁として機能する。これにより、圧力調整装置6内でのみ燃料供給通路5の下流側部分5bの残圧を保持するための油密を確保すればよく、圧力調整装置とは別に逆止弁を設けた場合のように、圧力調整装置内と逆止弁の2箇所においてそれぞれ油密を確保する必要がない。そのため、油密特性の向上を図ることができる。
【0062】
燃料供給通路5のエンジン3付近には、高圧ポンプ11が設けられている。高圧ポンプ11により燃料供給通路5内の燃料の圧力の低下を抑制し、燃料の気化を防ぐことができる。
【0063】
第2弁体32は、弁座部32cが球面状に形成されることにより調心機能を有している。開弁時に第2弁体32の軸がホルダ40の弁座部40bに対してずれたとしても、第1弁体31の弁部31bの円錐面が第2弁体32の弁座部32cに着座することにより、軸のずれが修正される。第2弁体32が調心されることにより、第2弁体32とホルダ40の弁座部40bのシール性が向上する。
【0064】
[他の実施形態]
本明細書に開示の技術は、前記した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の形態で実施可能である。また、実施形態で説明した外観、構成に限定されず、要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 燃料供給システム
2 燃料タンク
3 エンジン(燃料利用装置)
4 燃料ポンプ
5 燃料供給通路
6 圧力調整装置
7 リリーフ弁
22 主調圧室(第1室)
23 副調圧室(第2室)
24 背圧室
25 燃料入口
26 供給出口
27 還流出口
31 第1弁体
31a 貫通孔
32 第2弁体
32c 弁座部(第1弁座)
33 大スプリング(第1付勢部材)
34 小スプリング(第2付勢部材)
35 規制部材
40 ホルダ
40b 弁座部(第2弁座)
A1 第1受圧面積(第1弁体が第1室内の燃料から圧力を受ける受圧面積)
A2 第2受圧面積(第2弁体が第2室内の燃料から圧力を受ける受圧面積)
A3 第3受圧面積(第2弁体が第1室内の燃料から圧力を受ける受圧面積)
P1 主調圧室(第1室)内の燃料の圧力
P2 副調圧室(第2室)内の燃料の圧力