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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124044
(43)【公開日】2022-08-25
(54)【発明の名称】グリッパ及びグリッパの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20220818BHJP
【FI】
B25J15/08 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021021575
(22)【出願日】2021-02-15
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2020年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期/フィジカル空間デジタルデータ処理基盤/サブテーマIIISociety5.0実現のための社会実装技術/CPS構築のためのセンサリッチ柔軟エンドエフェクタシステム開発と実用化、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】100154014
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100154520
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 祐子
(72)【発明者】
【氏名】平井 慎一
(72)【発明者】
【氏名】王 忠奎
(72)【発明者】
【氏名】鐘江 崚
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707BS09
3C707CY36
3C707DS01
3C707ES12
3C707EV12
3C707EV14
3C707MT01
3C707NS26
(57)【要約】      (修正有)
【課題】作業工程を簡素化することができると共に、個体差を低減させることができ、さらに、薄型化を実現できるグリッパを提供する。
【解決手段】剛性材料にて形成されるグリッパ本体2と、弾性を有する柔軟材料にて形成される把持部3と、を有し、グリッパ本体2には、圧縮空気を給排気可能な給排気口2eが設けられ、給排気口2eより圧縮空気が給排気された際、当該圧縮空気が、グリッパ本体2と把持部3との間を通過できるように、グリッパ本体2と把持部3とは、接着剤を用いて接着せずに接してなる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
剛性材料にて形成されるグリッパ本体と、
弾性を有する柔軟材料にて形成される把持部と、を有し、
前記グリッパ本体には、圧縮空気を給排気可能な給排気口が設けられ、
前記給排気口より前記圧縮空気が給排気された際、当該圧縮空気が、前記グリッパ本体と前記把持部との間を通過できるように、前記グリッパ本体と前記把持部とは、接着剤を用いて接着せずに接してなるグリッパ。
【請求項2】
前記グリッパ本体には、前記把持部と接する面の少なくとも一部の面に離型剤が塗布されてなる請求項1に記載のグリッパ。
【請求項3】
前記グリッパ本体には、前記把持部を引っ掛ける引っ掛け部が設けられてなる請求項1又は2に記載のグリッパ。
【請求項4】
剛性材料にて形成されているグリッパ本体に柔軟素材を直接流し込み固着させることで、弾性を有する柔軟材料にて形成される把持部を該グリッパ本体に接するように形成してなるグリッパの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気圧で駆動するグリッパ及びグリッパの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気圧で駆動するグリッパとして、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。この特許文献1に記載のグリッパを図5及び図6を参照して具体的に説明すると、図5に示すように、グリッパ100は、剛性材料にて形成される略L字形状からなるグリッパ本体101を有している。このグリッパ本体101は、図5に示すように、図示右側面側より突部101aが突出して設けられており、この突部101aには、図6(d)に示すようにボルト挿通孔101a1が設けられている。しかして、このボルト挿通孔101a1内にボルト(図示せず)が挿通されることにより、この突部101aにロボットアーム(図示せず)が取り付けられるようになっている。さらに、このグリッパ本体101には、図6(d)に示すエアーチューブTが取り付けられる給排気口101bが設けられている。これにより、エアーチューブTを介して供給される圧縮空気が給排気口101b内に供給され、又、給排気口101bより圧縮空気がエアーチューブTに排気されることとなる。
【0003】
一方、グリッパ本体101は、図5に示すように、凹部101cが設けられており、この凹部101cには、弾性を有する柔軟材料にて形成される把持部102が接着剤によって貼着されている。この把持部102は、図5に示すように断面視矩形状に形成されており、内部に、略T字状の空洞からなる空気室102aが設けられている。この空気室102aは、図5に示すように、給排気口101bと連通している。これにより、エアーチューブTを介して、給排気口101b内に圧縮空気が供給されると、空気室102a内に圧縮空気が供給されることとなり、もって、図5(b)に示すように、把持部102が外側に膨出することとなる。
【0004】
しかして、把持部102が外側に膨出するグリッパ100を、例えば、一対、対向配置させることにより、食品などを把持することが可能となる。なお、空気室102a内に供給された圧縮空気を給排気口101bよりエアーチューブTに排気させると、図5(b)に示すように、外側に膨出した把持部102は、図5(a)に示すように元の状態に戻ることとなる。
【0005】
ところで、上記のように構成されるグリッパ100は、図6に示すように製造される。すなわち、図5に示す把持部102を製造するにあたっては、まず、図6(a-1)に示すように、第1金型K10が用意される。この第1金型K10は、凸状の凹孔K10aが形成されており、この凸状の凹孔K10aの上部には、円形状の突起K10a1が設けられている。しかして、この凹孔K10a内に柔軟素材を流し込み固着させて成型することにより、図6(b-1)に示すような第1把持部102Aが製造されることとなる。
【0006】
次いで、図6(a-2)に示すように、第2金型K20が用意される。この第2金型K20は、凸状の凹孔K20aが形成されており、この凸状の凹孔K20a内には、凸状の突起K20a1が設けられている。しかして、この凹孔K20a内に柔軟素材を流し込み固着させて成型することにより、図6(b-2)に示すような空気室102aを有する第2把持部102Bが製造されることとなる。
【0007】
次いで、上記のように製造された第1把持部102A及び第2把持部102Bを、接着剤を用いて、図5(a)に示すように貼着することにより、図6(c-1)に示すような把持部102が製造されることとなる。
【0008】
かくして、このように製造された把持部102を、図6(c-2)に示す予め製造しておいたグリッパ本体101の凹部101c内に接着剤によって貼着することにより、グリッパ100が組み立てられることとなる。
【0009】
しかして、図6に示すように、成型⇒接着⇒組立の工程を経て、グリッパ100は製造されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実開平6-33689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記のようなグリッパ100は、成型、接着、組立の工程を経て製造されていることから、作業に非常に多くの手間と時間がかかるといった問題があった。
【0012】
さらには、第1把持部102Aと第2把持部102Bを接着する工程や、把持部102をグリッパ本体101の凹部101c内に接着する工程は、手作業であることから、接着剤が空気室102a内に入り込んでしまうグリッパ100が製造される可能性がある。しかして、このようなグリッパ100が製造されると、空気室102a内に同じ圧力の圧縮空気を供給したとしても、空気室102a内に接着剤が入り込んでいるグリッパ100と、空気室102a内に接着剤が入り込んでいないグリッパ100とで、把持部102が外側に膨出する膨出量が異なる可能性がある。それゆえ、接着工程が原因で、グリッパ100に個体差が生じてしまう可能性があるといった問題があった。
【0013】
またさらに、上記のようなグリッパ100は、圧縮空気を供給する空気室102aが必ず必要であることから、図5(a)に示す厚みHを薄型化することができないといった問題があった。
【0014】
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、作業工程を簡素化することができると共に、個体差を低減させることができ、さらに、薄型化を実現することができるグリッパ及びグリッパの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記本発明の目的は、以下の手段によって達成される。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0016】
請求項1に係るグリッパは、剛性材料にて形成されるグリッパ本体(2)と、
弾性を有する柔軟材料にて形成される把持部(3)と、を有し、
前記グリッパ本体(2)には、圧縮空気を給排気可能な給排気口(2e)が設けられ、
前記給排気口(2e)より前記圧縮空気が給排気された際、当該圧縮空気が、前記グリッパ本体(2)と前記把持部(3)との間を通過できるように、前記グリッパ本体(2)と前記把持部(3)とは、接着剤を用いて接着せずに接してなることを特徴としている。
【0017】
また、請求項2に係るグリッパは、上記請求項1に記載のグリッパ(1)において、 前記グリッパ本体(2)には、前記把持部(3)と接する面の少なくとも一部の面(凹孔2gの上面2ga)に離型剤(4)が塗布されてなることを特徴としている。
【0018】
さらに、請求項3に係るグリッパは、上記請求項1又は2に記載のグリッパ(1)において、前記グリッパ本体(2)には、前記把持部(3)を引っ掛ける引っ掛け部(左引っ掛け部2g1,右引っ掛け部2g2)が設けられてなることを特徴としている。
【0019】
一方、請求項4に係るグリッパの製造方法は、剛性材料にて形成されているグリッパ本体(2)に柔軟素材を直接流し込み固着させることで、弾性を有する柔軟材料にて形成される把持部(3)を該グリッパ本体(2)に接するように形成してなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
次に、本発明の効果について、図面の参照符号を付して説明する。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0021】
請求項1に係る発明によれば、給排気口(2e)より圧縮空気が給排気された際、当該圧縮空気が、グリッパ本体(2)と把持部(3)との間を通過できるように、グリッパ本体(2)と把持部とは、接着剤を用いて接着せずに接しているだけであるから、従来のような接着工程が不要となり、もって、作業工程を簡素化することができる。
【0022】
さらに、請求項1に係る発明によれば、接着工程が不要なため、従来のように接着工程が原因で、グリッパに個体差が生じてしまうという事態を低減させることができる。
【0023】
またさらに、請求項1に係る発明によれば、従来のような空気室102a(図5参照)が不要となるから、空気室102a(図5参照)が不要となった分、厚みを薄くすることができる。これにより、グリッパの薄型化が実現可能となる。
【0024】
しかして、本発明によれば、作業工程を簡素化することができると共に、個体差を低減させることができ、さらに、薄型化を実現することができる。
【0025】
また、請求項2に係る発明によれば、グリッパ本体(2)には、把持部(3)と接する面の少なくとも一部の面(凹孔2gの上面2ga)に離型剤(4)が塗布されているから、その面(凹孔2gの上面2ga)に接している把持部(3)の部分がグリッパ本体(2)より剥離し易くなる。これにより、給排気口(2e)より圧縮空気が供給された際、把持部(3)が外側に膨出し易くなる。
【0026】
さらに、請求項3に係る発明によれば、グリッパ本体(2)には、把持部(3)を引っ掛ける引っ掛け部(左引っ掛け部2g1,右引っ掛け部2g2)が設けられているから、把持部(3)がグリッパ本体(2)より離脱し難くなり、もって、グリッパの耐久性を向上させることができる。
【0027】
一方、請求項4に係る発明によれば、剛性材料にて形成されているグリッパ本体(2)に柔軟素材を直接流し込み固着させることで、弾性を有する柔軟材料にて形成される把持部(3)を該グリッパ本体(2)に接するように形成しているから、成型工程だけで良くなり、もって、作業工程を簡素化することができる。さらには、接着工程が不要なため、従来のように接着工程が原因で、グリッパに個体差が生じてしまうという事態を低減させることができる。またさらに、従来のような空気室102a(図5参照)が不要となるから、空気室102a(図5参照)が不要となった分、厚みを薄くすることができる。これにより、グリッパの薄型化が実現可能となる。
【0028】
しかして、本発明によれば、作業工程を簡素化することができると共に、個体差を低減させることができ、さらに、薄型化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施形態に係るグリッパの斜視図である。
図2】(a)は同実施形態に係るグリッパの縦断面図、(b)は(a)に示すグリッパの把持部が膨出した状態を示す縦断面図である。
図3】(a)は第2金型の平面図、(b)は同実施形態に係るグリッパ本体の平面図、(c)は第1金型の平面図である。
図4】グリッパ本体の下面に図3(c)に示す第1金型を載置し、グリッパ本体の上面に図3(a)に示す第2金型を載置した状態を示す側面図である。
図5】(a)は従来のグリッパの縦断面図、(b)は(a)に示すグリッパの把持部が膨出した状態を示す縦断面図である。
図6】(a-1)は従来の第1金型の平面図、(a-2)は従来の第2金型の平面図、(b-1)は従来の第1把持部の平面図、(b-2)は従来の第2把持部の平面図、(c-1)は従来の把持部の平面図、(c-2)は従来のグリッパ本体の平面図、(d)は従来のグリッパの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一実施形態に係るグリッパを、図面を参照して具体的に説明する。なお、以下の説明において、上下左右の方向を示す場合は、図示正面から見た場合の上下左右をいうものとする。
【0031】
図1に示す本実施形態に係るグリッパ1は、グリッパ本体2と、把持部3とで構成されている。このグリッパ本体2は、PLA樹脂、アルミニウム、SUS304の如きステンレス鋼等、剛性材料にて形成されてなるもので、図2に示すように略L字形状に形成されている。このグリッパ本体2は、図2に示すように、右側面2a側上面2bに略矩形状の突部2cが鉛直上向きに突出して設けられている。なお、この突部2cには、図1に示すようにボルト挿通孔2c1が設けられている。これにより、このボルト挿通孔2c1内にボルト(図示せず)が挿通されることにより、この突部2cにロボットアーム(図示せず)が取り付けられるようになっている。
【0032】
一方、図2に示すように、グリッパ本体2の右側面2a側下面2dには、図1に示すエアーチューブTが取り付けられる給排気口2eが設けられている。これにより、エアーチューブTを介して供給される圧縮空気が給排気口2e内に供給され、又、給排気口2eより圧縮空気がエアーチューブTに排気されることとなる。
【0033】
また一方、図2に示すように、グリッパ本体2には、左側面2f側から右側面2a側に亘って、上面2bから下面2d側に向かって貫通していない凹孔2gが形成されている。この凹孔2gは、図2に示すように、直線状に形成されている上面2gaと、上面2gaと段差を付けて平行に形成されている下面2gbと、下面2gbとグリッパ本体2の上面2bとを繋ぐように右斜め傾斜状に形成されている左側面2gcと、下面2gbとグリッパ本体2の上面2bとを繋ぐように左斜め傾斜状に形成されている右側面2gdと、左側面2gc側の下面2gbと上面2gaとを繋ぐように左斜め傾斜状に形成されている左内側面2geと、右側面2gd側の下面2gbと上面2gaとを繋ぐように右斜め傾斜状に形成されている右内側面2gfと、で形成されている。なお、この凹孔2gと、給排気口2eとは連通している。
【0034】
かくして、このように形成された凹孔2gの下面2gbと左内側面2geとによって、グリッパ本体2の内部側に食い込んだ三角形状の左引っ掛け部2g1が形成され、凹孔2gの下面2gbと右内側面2gfとによって、グリッパ本体2の内部側に食い込んだ三角形状の右引っ掛け部2g2が形成されることとなる。
【0035】
なお、図2に示すように、凹孔2gの上面2gaには、給排気口2eより左側に位置する部分に、離型剤4が塗布されている。この離型剤4は、例えば、ワックス類、フッ素、シリコン等によって形成されているものである。
【0036】
把持部3は、熱硬化性エラストマ、熱可塑性エラストマ等弾性を有する柔軟材料にて形成されてなるもので、図2に示すように、グリッパ本体2の凹孔2g内に、接着剤を用いて貼着されておらず、単に、載置されている。より詳しく説明すると、図2(a)に示すように把持部3の上面3aは、グリッパ本体2の上面2bと面一になるように形成されている。そしてさらに、図2(a)に示すように把持部3の周面3bは、凹孔2gの上面2ga、下面2gb、左側面2gc、右側面2gd、左内側面2ge、右内側面2gfに沿うように形成されている。この際、把持部3の周面3bと、凹孔2gの上面2ga、下面2gb、左側面2gc、右側面2gd、左内側面2ge、右内側面2gfとは、接着剤を用いて接着されておらず、単に接しているだけである。
【0037】
かくして、このように構成されたグリッパ1は、図1に示すエアーチューブTより給排気口2e内に圧縮空気が供給されると、把持部3の周面3bと、凹孔2gの上面2ga、下面2gb、左側面2gc、右側面2gd、左内側面2ge、右内側面2gfとは、単に接しているだけであるから、把持部3の周面3bと、凹孔2gの上面2ga、下面2gb、左側面2gc、右側面2gd、左内側面2ge、右内側面2gfとの間に、圧縮空気が流れ込むこととなる。この際、凹孔2gの上面2gaには、図2に示すように離型剤4が塗布されていることから、凹孔2gの上面2gaに接している把持部3の周面3bが凹孔2gの上面2gaより剥離し易くなり、もって、図2(b)に示すように、把持部3の上面3aが外側に膨出することとなる。
【0038】
かくして、このように把持部3が外側に膨出するグリッパ1を、例えば、一対、対向配置させることにより、従来のグリッパ100(図5図6参照)と同様、食品などを把持することが可能となる。
【0039】
ところで、本実施形態においては、把持部3が外側に膨出する際、把持部3がグリッパ本体2の凹孔2gより離脱しないように、グリッパ本体2には、図2に示すように左引っ掛け部2g1及び右引っ掛け部2g2が設けられている。すなわち、左引っ掛け部2g1及び右引っ掛け部2g2は、グリッパ本体2の内部側に食い込んでいるから、把持部3がグリッパ本体2の凹孔2gより離脱しようとしても、左引っ掛け部2g1及び右引っ掛け部2g2によって、離脱が阻害されることとなる。それゆえ、このような左引っ掛け部2g1及び右引っ掛け部2g2を凹孔2gに設けておくことにより、把持部3がグリッパ本体2の凹孔2gより離脱し難くなるから、グリッパ1の耐久性を向上させることができる。
【0040】
なお、圧縮空気を給排気口2eよりエアーチューブTに排気させると、図2(a)に示すように、外側に膨出した把持部3は、元の状態に戻ることとなる。
【0041】
しかして、以上説明した本実施形態によれば、把持部3とグリッパ本体2の凹孔2gとの間に、圧縮空気が通過できるように、把持部3は、接着剤を用いずに、グリッパ本体2の凹孔2g内に載置されているだけであるから、従来のような接着工程が不要となり、もって、作業工程を簡素化することができる。
【0042】
さらに、本実施形態によれば、接着工程が不要なため、従来のように接着工程が原因で、グリッパ1に個体差が生じてしまうという事態を低減させることができる。
【0043】
またさらに、本実施形態によれば、圧縮空気を供給する空気室102a(図5参照)が不要となるから、図2(a)に示す厚みH1は、空気室102a(図5参照)が不要となった分、図5(a)に示す厚みHより薄くすることができる。これにより、グリッパ1の薄型化が実現可能となる。かくして、このように、グリッパ1の薄型化が実現可能となると、食品などの物品をほぼ隙間なく箱詰めする作業や、隙間なくばら積みされた食品などの物品のピッキング作業など、隙間が狭い作業を容易に実施することが可能となる。
【0044】
しかして、以上説明した本実施形態によれば、作業工程を簡素化することができると共に、個体差を低減させることができ、さらに、薄型化を実現することができる
【0045】
ところで、本実施形態におけるグリッパ1は、以下のように製造することができる。すなわち、図3(b)に示すように、まず、グリッパ本体2を3DプリンタやCNCフライス等を用いて予め製造しておく。そして、図4に示すようにグリッパ本体2の下面2dに載置される図3(c)に示す第1金型K1を用意する。この第1金型K1は、図3(c)に示すように、グリッパ本体2が載置される平面視矩形状の載置台K1aを有しており、この載置台K1aの四隅には、グリッパ本体2を載置台K1aに載置した際、グリッパ本体2の移動を阻害するストッパK1bが設けられている。そしてさらに、この載置台K1aには、グリッパ本体2の給排気口2eを塞ぐ突起K1cが設けられている。
【0046】
次いで、図4に示すようにグリッパ本体2の上面2bに載置される図3(a)に示す第2金型K2を用意する。この第2金型K2は、グリッパ本体2の上面2bに載置される平面視凸状の第2金型本体K2aを有している。そして、この第2金型本体K2aの上下左右側面には、グリッパ本体2の上面2bに第2金型本体K2aを載置した際、第2金型本体K2aがグリッパ本体2から外れてしまわないように、第2金型本体K2aをグリッパ本体2の上面2bにしっかりと固定するストッパK2bが設けられている。
【0047】
かくして、このように形成される第1金型K1を、図4に示すように、グリッパ本体2の下面2dに載置した後、図3(b)に示すグリッパ本体2の凹孔2g内に、直接、熱硬化性エラストマ、熱可塑性エラストマ等の柔軟素材を流し込み、図4に示すように、第2金型K2を、グリッパ本体2の上面2bに載置するようにする。これにより、グリッパ本体2の凹孔2g内に直接流し込んだ柔軟素材が固着すると、図2(a)に示すように、グリッパ本体2の凹孔2g内に、把持部3が形成されることとなる。
【0048】
しかして、グリッパ1を上記のように製造するようにすれば、従来のような接着⇒組立工程が不要となり成型工程だけで良くなるから、作業工程を簡素化することができる。さらには、接着工程が不要なため、従来のように接着工程が原因で、グリッパ1に個体差が生じてしまうという事態を低減させることができる。またさらに、従来のような圧縮空気を供給する空気室102a(図5参照)が不要となるから、図2(a)に示す厚みH1は、空気室102a(図5参照)が不要となった分、図5(a)に示す厚みHより薄くすることができる。これにより、グリッパ1の薄型化が実現可能となる。
【0049】
しかして、上記のような製造方法によれば、作業工程を簡素化することができると共に、個体差を低減させることができ、さらに、薄型化を実現することができる
【0050】
ところで、図3(b)に示すグリッパ本体2の凹孔2g内に、柔軟素材を流し込んだ際、第1金型K1の突起K1cによって、グリッパ本体2の給排気口2eが塞がれているから、柔軟素材が給排気口2e内に流れ込むことはない。また、図3(b)に示すグリッパ本体2の凹孔2g内に柔軟素材を流し込んだ後、グリッパ本体2の上面2bに第2金型K2を載置することにより、図2(a)に示すように、把持部3の上面3aを、グリッパ本体2の上面2bと面一になるようにすることができる。
【0051】
なお、本実施形態において示した形状等はあくまで一例であり、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば、本実施形態において示したグリッパ本体2、把持部3の形状はあくまで一例であり、どのような形状でも良い。例えば、グリッパ本体2の凹孔2gを平坦ではなく湾曲させるようにしても良い。ただし、図1に示すエアーチューブTより給排気口2e内に圧縮空気が供給された際、把持部3が外側に膨出できる程度に湾曲させておくのが好ましい。
【0052】
また、本実施形態においては、グリッパ本体2の凹孔2gの上面2gaに、離型剤4を塗布する例を示したが、不要であれば、塗布しなくとも良い。しかしながら、塗布した方が好ましい。凹孔2gの上面2gaに接している把持部3の周面3bが凹孔2gの上面2gaより剥離し易くなり、もって、図2(b)に示すように、把持部3の上面3aが外側に膨出し易くなるためである。それゆえ、グリッパ本体2の凹孔2gの上面2gaに、離型剤4を塗布した方が好ましい。
【符号の説明】
【0053】
1 グリッパ
2 グリッパ本体
2e 給排気口
2g 凹孔
2g1 左引っ掛け部(引っ掛け部)
2g2 右引っ掛け部(引っ掛け部)
2ga 上面
3 把持部
4 離型剤

図1
図2
図3
図4
図5
図6