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特開2022-124056船舶用冷却システム、船舶推進機及び船舶
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124056
(43)【公開日】2022-08-25
(54)【発明の名称】船舶用冷却システム、船舶推進機及び船舶
(51)【国際特許分類】
   B63H 21/38 20060101AFI20220818BHJP
   B63J 2/12 20060101ALI20220818BHJP
   B63H 20/28 20060101ALI20220818BHJP
   F01P 7/16 20060101ALI20220818BHJP
【FI】
B63H21/38 A
B63J2/12 A
B63H20/28 100
F01P7/16 508Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021021600
(22)【出願日】2021-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(74)【代理人】
【識別番号】100118278
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 聡
(72)【発明者】
【氏名】増田 知晴
(72)【発明者】
【氏名】中津川 統三
(57)【要約】      (修正有)
【課題】被冷却体の温度調整を適切に行うことができる船舶用冷却システムを提供する。
【解決手段】船外機においてエンジンを冷却する船舶用冷却システムは、ボディシリンダ26へ冷却水を給水する給水流路17と、ボディシリンダ26から冷却水を排水して冷却水をボディシリンダ26から排水する水抜き流路22と、水抜き流路22を遮断するチェックバルブ30と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶における被冷却体を冷却する船舶用冷却システムであって、
前記被冷却体へ冷却水を給水する給水流路と、
前記被冷却体から前記冷却水を排水して前記冷却水を前記被冷却体から削減する水抜き流路と、
前記水抜き流路を遮断する流路制御器と、を備える船舶用冷却システム。
【請求項2】
前記船舶の航走時には、前記流路制御器へ前記被冷却体とは反対側から前記冷却水が供給される、請求項1に記載の船舶用冷却システム。
【請求項3】
前記冷却水を前記被冷却体へ供給するポンプをさらに備え、
前記ポンプは、前記流路制御器へ前記被冷却体とは反対側から前記冷却水を供給する、請求項1又は2に記載の船舶用冷却システム。
【請求項4】
前記船舶の航走時に、前記冷却水が前記船舶の外部から取り入れられ、前記取り入れられた冷却水が前記流路制御器へ前記被冷却体とは反対側から供給される、請求項1又は2に記載の船舶用冷却システム。
【請求項5】
前記流路制御器は弁体を備え、
前記流路制御器へ前記被冷却体とは反対側から前記冷却水が供給されるとき、前記弁体は前記水抜き流路を遮断し、
前記流路制御器へ前記被冷却体とは反対側から前記冷却水が供給されないとき、前記弁体は前記水抜き流路を開放する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の船舶用冷却システム。
【請求項6】
前記流路制御器は前記弁体を収容する弁体収容室を有し、
前記弁体は、前記被冷却体とは反対側から前記冷却水が供給されるか否かに応じて前記弁体収容室の内部を移動する、請求項5に記載の船舶用冷却システム。
【請求項7】
前記弁体を構成する材料の密度は、前記冷却水の密度よりも小さい、請求項6に記載の船舶用冷却システム。
【請求項8】
前記弁体収容室には、前記被冷却体と連通する第1の開口と、前記船舶の外部と連通する第2の開口とが設けられ、
前記流路制御器へ前記被冷却体とは反対側から前記冷却水が供給されるとき、前記弁体が前記第1の開口を塞ぎ、
前記弁体収容室には前記第2の開口と離れた位置に係止部が設けられ、前記流路制御器へ前記被冷却体とは反対側から前記冷却水が供給されないとき、前記弁体が前記係止部に係止される、請求項6又は7に記載の船舶用冷却システム。
【請求項9】
前記弁体は球体であり、前記第1の開口にはテーパ部が形成され、
前記流路制御器へ前記被冷却体とは反対側から前記冷却水が供給されるとき、前記球体が前記テーパ部へ当接する、請求項8に記載の船舶用冷却システム。
【請求項10】
前記弁体は少なくとも一部が錐体で構成され、前記弁体は前記弁体収容室において前記錐体の先端が前記第1の開口を指向するように配置され、前記第1の開口にはテーパ部が形成され、
前記流路制御器へ前記被冷却体とは反対側から前記冷却水が供給されるとき、前記錐体の側面が前記テーパ部へ当接する、請求項8に記載の船舶用冷却システム。
【請求項11】
前記弁体はフランジ部を有し、前記弁体は前記弁体収容室において前記フランジ部が前記第2の開口と対向するように配置される、請求項10に記載の船舶用冷却システム。
【請求項12】
前記被冷却体は内燃機のボディシリンダである、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の船舶用冷却システム。
【請求項13】
前記被冷却体は電装品である、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の船舶用冷却システム。
【請求項14】
前記被冷却体はオイルクーラーである、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の船舶用冷却システム。
【請求項15】
被冷却体を冷却する船舶用冷却システムを備える船舶であって、
前記船舶用冷却システムは、
前記被冷却体へ冷却水を給水する給水流路と、
前記被冷却体から前記冷却水を排水して前記冷却水を前記被冷却体から削減する水抜き流路と、
前記水抜き流路を遮断する流路制御器と、を備える船舶。
【請求項16】
被冷却体を冷却する船舶推進機用冷却システムを備える船舶推進機であって、
前記船舶推進機用冷却システムは、
前記被冷却体へ冷却水を給水する給水流路と、
前記被冷却体から前記冷却水を排水して前記冷却水を前記被冷却体から削減する水抜き流路と、
前記水抜き流路を遮断する流路制御器と、を備える船舶推進機。
【請求項17】
船舶における被冷却体を冷却する船舶用冷却システムであって、
前記被冷却体から冷却水を排水して前記冷却水を前記被冷却体から削減する水抜き流路と、
前記水抜き流路を遮断する流路制御器と、を備える船舶用冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却流路を備える船舶用冷却システム、船舶推進機及び船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶推進機としての船外機は内燃機を冷却するための冷却システムを備えるが、このような冷却システムでは船外機の外部から取り入れられた冷却水としての海水を冷却流路へ流すことにより、内燃機のシリンダヘッドやボディシリンダを冷却する。
【0003】
ところで、船舶の保管時には、腐食や凍結による損傷を避けるために内燃機の各部から海水を排除する必要があり、例えば、ボディシリンダには内部のウォータージャケットと連通する水抜き穴が設けられる。そして、船舶の保管時には水抜き穴を介してボディシリンダのウォータージャケットから海水が排水される。
【0004】
一方、内燃機の稼働時に水抜き穴から冷却水が多量に排水されるのを避けるため、水抜き穴にはウォータージャケットと反対側からウォーターポンプによって冷却水が供給され、ウォータージャケットの冷却水とウォーターポンプによって供給される冷却水が衝突する。これにより、内燃機の稼働時にウォータージャケットから水抜き穴を介して冷却水が多量に排水されるのを抑制する(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-96290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、内燃機の低負荷運転時等において、ボディシリンダのウォータージャケットへ他の冷却流路を経由して供給される冷却水が少なくなることがある。この場合、ウォータージャケットから水抜き穴を介して流れ出る冷却水の流量よりもウォーターポンプによって供給される冷却水の流量が上回り、結果として、ウォーターポンプによって供給される冷却水が水抜き穴を逆流してウォータージャケットへ侵入し、水抜き穴の近傍に配置されたシリンダを直撃してシリンダを過冷却することがある。したがって、船外機に冷却システムには、内燃機の温度調整の観点から、依然として改善の余地があると言える。
【0007】
本発明は、内燃機等の被冷却体の温度調整を適切に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の一態様による船舶用冷却システムは、船舶における被冷却体を冷却する船舶用冷却システムであって、前記被冷却体へ冷却水を給水する給水流路と、前記被冷却体から前記冷却水を排水して前記冷却水を前記被冷却体から削減する水抜き流路と、前記水抜き流路を遮断する流路制御器と、を備える。
【0009】
この構成によれば、冷却水を被冷却体から削減する水抜き流路が流路制御器によって遮断されるため、冷却水が水抜き流路を逆流して被冷却体へ流れ込むのを防止することができる。その結果、被冷却体が過冷却されることがなく、被冷却体の温度調整を適切に行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、被冷却体の温度調整を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】従来の船舶用冷却システムが適用される船舶推進機としての船外機を説明するための図である。
図2】従来の船舶用冷却システムにおける冷却水の流れを説明するための図である。
図3】従来の他の船舶用冷却システムにおける冷却水の流れを説明するための図である。
図4】従来のさらに他の船舶用冷却システムにおける冷却水の流れを説明するための図である。
図5】本発明の第1の実施の形態に係る船舶用冷却システムにおける冷却水の流れを説明するための図である。
図6】本発明の第1の実施の形態におけるチェックバルブの構造を概略的に示す断面図である。
図7】本発明の第2の実施の形態におけるチェックバルブの構造を概略的に示す断面図である。
図8】本発明の第3の実施の形態におけるチェックバルブの構造を概略的に示す断面図である。
図9】本発明の船舶用冷却システムの第1の変形例における冷却水の流れを説明するための図である。
図10】本発明の船舶用冷却システムの第2の変形例における冷却水の流れを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
図1は、従来の船舶用冷却システムが適用される船舶推進機としての船外機を説明するための図であり、図1(A)は当該船外機を備える船舶の側面図であり、図1(B)は当該船外機の内部構成を概略的に示す模式側面図である。
【0014】
図1(A)における船舶10は、例えば、滑走艇であり、船体11と2つの船外機12を備える。各船外機12は船体11の船尾に取り付けられている。船外機12は、駆動源としてのエンジン(内燃機)13と、推進器としてのプロペラ14と、エンジン13の駆動力をプロペラ14へ伝達するドライブシャフト15とを有する。船外機12は、エンジン13の駆動力によって回転されるプロペラ14によって推進力を得る。なお、船外機12が適用される船舶は、滑走艇に限られず、例えば、排水量型の船舶であってもよい。
【0015】
船外機12は、船外機12の外部から冷却水としての海水,湖水や河川水を取り入れる吸水口16と、吸水口16から取り入れた冷却水をエンジン13へ給水する給水流路17と、給水流路17に配されて冷却水をエンジン13へ向けて圧送するウォーターポンプ18とを有する。
【0016】
給水流路17はエンジン13のシリンダヘッド25に接続されるが、エンジン13のボディシリンダ26にはサーモスタット19を介して排水流路20が接続される。排水流路20は船外機12において外部へ向けて開口する排水口21に接続される。エンジン13のボディシリンダ26には、排水流路20とは別に水抜き流路22が接続され、水抜き流路22は給水流路17へ接続される。さらに、給水流路17と排水流路20はバイパス流路23によって直接接続される。
【0017】
船外機12では、吸水口16、給水流路17、ウォーターポンプ18、サーモスタット19、排水流路20、排水口21、水抜き流路22及びバイパス流路23は、従来の船舶用冷却システムを構成する。また、給水流路17、排水流路20、水抜き流路22やバイパス流路23は金属または樹脂で形成された水路、配管やホースで構成される。
【0018】
図2は、従来の船舶用冷却システムにおける冷却水の流れを説明するための図であり、図中の矢印は冷却水の流れ方向を示す。なお、図2において、エンジン13はシリンダヘッド25とボディシリンダ26に分けて図示される。ボディシリンダ26はピストン(図示しない)が上下するシリンダ27が複数形成され、シリンダヘッド25には各シリンダ27に対応して燃焼室28が形成される。
【0019】
図2において、まず、吸水口16によって船外機12の外部から取り入れられた冷却水はウォーターポンプ18へ到達し、ウォーターポンプ18によってシリンダヘッド25へ圧送される。シリンダヘッド25へ圧送された冷却水はシリンダヘッド25のウォータージャケットを流れることにより、シリンダヘッド25を冷却する。そして、シリンダヘッド25のウォータージャケットを流れた冷却水は、ボディシリンダ26へ流入する。
【0020】
ボディシリンダ26へ流入した冷却水はボディシリンダ26のウォータージャケットを流れることにより、ボディシリンダ26を冷却する。ボディシリンダ26のウォータージャケットを流れた冷却水は、サーモスタット19を介して排水流路20へ流入し、排水流路20は流入した冷却水を排水口21から船外機12の外部へ排出する。なお、冷却水の水温が低い場合、サーモスタット19が開弁しないため、冷却水はボディシリンダ26のウォータージャケットに留まって各シリンダを大きく冷却せず、各シリンダの温度が燃焼に適した温度になるのを助長する。
【0021】
なお、図3に示すように、給水流路17がシリンダヘッド25ではなくボディシリンダ26に接続されてもよい。この場合、冷却水はウォーターポンプ18によってボディシリンダ26へ圧送される。ボディシリンダ26へ圧送された冷却水は、ボディシリンダ26の各シリンダと接しない部分24を流れた後、シリンダヘッド25へ向けて流れる。その後、冷却水は、図2に示す冷却水と同じ経路をたどって流れる。
【0022】
ところで、船舶の保管時にはシリンダヘッド25やボディシリンダ26から冷却水を排除する必要があるが、船舶の保管時に船外機12がチルトアップされると、ボディシリンダ26がシリンダヘッド25よりも下方に位置するため、ボディシリンダ26から冷却水が排除されにくくなる。
【0023】
そこで、ボディシリンダ26において、船外機12のチルトアップ時に下方となる位置へ水抜き流路22を接続し、ボディシリンダ26のウォータージャケットから冷却水を排除する。具体的には、船舶の保管時等、エンジン13が停止してウォーターポンプ18が作動していないとき、ボディシリンダ26のウォータージャケットの冷却水は、水抜き流路22から給水流路17とバイパス流路23を経由して排水流路20へ流入し、排水口21から排出される。
【0024】
また、図2図3に示す船舶用冷却システムでは、水抜き流路22が給水流路17へ接続されるため、船舶10の航走時等、エンジン13が稼働してウォーターポンプ18が作動する場合、給水流路17から水抜き流路22へも冷却水が流入し、水抜き流路22において、ボディシリンダ26のウォータージャケットから排水される冷却水と水抜き流路22へウォーターポンプ18によって流入した冷却水とが衝突し、ボディシリンダ26のウォータージャケットから多量の冷却水が排出されるのを抑制する。
【0025】
一方、エンジン13の低負荷運転時等、ウォーターポンプ18が圧送する冷却水の流量が少なくなる場合、シリンダヘッド25を経由してボディシリンダ26のウォータージャケットへ流入する冷却水も少なくなる。このとき、ボディシリンダ26のウォータージャケットから排水される冷却水の流量よりも水抜き流路22へウォーターポンプ18によって流入する冷却水の流量が上回ることがあり、結果として、ウォーターポンプ18によって流入する冷却水が水抜き流路22を逆流してボディシリンダ26のウォータージャケットへ侵入し、水抜き流路22の開口部の近傍に配置されたシリンダを直撃する。ここで、ウォーターポンプ18によって流入する冷却水はシリンダヘッド25を経由していないために水温が低いままであり、直撃によってシリンダを過冷却することがある。シリンダが過冷却されると、シリンダの内壁面の温度が下がり、シリンダ内へ噴射された燃料が内壁面において液化して潤滑オイルに混じる可能性があるため、潤滑オイルの希釈化を防止する観点では、従来の船舶用冷却システムには改善の余地がある。
【0026】
また、図4は、従来のさらに他の船舶用冷却システムにおける冷却水の流れを説明するための図であり、図中の矢印は冷却水の流れ方向を示すが、この船舶用冷却システムでは、水抜き流路22が給水流路17へ接続されず、他の排水口29へ接続される。したがって、この船舶用冷却システムでは、図2に示す船舶用冷却システムのように、冷却水がウォーターポンプ18によって水抜き流路22へ流入することは無いが、ボディシリンダ26のウォータージャケットの冷却水が水抜き流路22を介して冷却水が常時他の排水口29から排出される。その結果、冷却水の水温が低くサーモスタット19が開弁していない場合であっても、冷却水は水抜き流路22へ向けてボディシリンダ26のウォータージャケットを流れるため、やはり、シリンダが過冷却されることがある。
【0027】
さらに、この船舶用冷却システムでは、給水流路17からシリンダヘッド25とボディシリンダ26を経て排水流路20へ流入する冷却水の流量を確保するために、水抜き流路22から常時排出される冷却水の流量を考慮に入れた上でウォーターポンプ18の容量を設定する必要があり、その結果、ウォーターポンプ18が大型化する。したがって、船外機12の小型軽量化の観点においても、従来の船舶用冷却システムには改善の余地がある。
【0028】
本発明の第1の実施の形態では、これに対応して、ボディシリンダ26のシリンダが過冷却されるのを抑制することができる船舶用冷却システムを提供する。
【0029】
図5は、本発明の第1の実施の形態に係る船舶用冷却システムにおける冷却水の流れを説明するための図であり、図中の矢印は冷却水の流れ方向を示す。本発明の実施の形態に係る船舶用冷却システムは、図2に示す従来の船舶用冷却システムを前提とし、水抜き流路22に後述するチェックバルブ30が配置される点で従来の船舶用冷却システムと異なる。なお、図5において、図2と同じ構成要素には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0030】
図5において、本実施の形態に係る船舶用冷却システムでは、水抜き流路22にチェックバルブ30(流路制御器)を配置する。チェックバルブ30は、図6(A)に示すように、球状のチェックボール31(弁体)と、チェックバルブボール31を収容する略筒状のチェックボール収容室32(弁体収容室)とを有する。チェックボール収容室32の両端はそれぞれ径が絞られて水抜き流路22を構成するホース(以下、「水抜きホース」という。)へ挿入可能な上部縮径部32aと下部縮径部32bとして形成される。チェックボール31は、冷却水の密度よりも小さい密度の材料、例えば、樹脂によって構成される。
【0031】
チェックバルブ30は、船外機12において、船舶10の航走時や船外機12がチルトアップされた際、上部縮径部32aよりも下部縮径部32bが下方となるように配置される。上部縮径部32aは端部において開口する上方開口部32c(第1の開口)を有し、上部縮径部32aへボディシリンダ26側の水抜きホースが接続された際、当該水抜きホース及び上方開口部32cを介してチェックボール収容室32の内部とボディシリンダ26のウォータージャケットが連通する。下部縮径部32bは端部において開口する下方開口部32d(第2の開口)を有し、下部縮径部32bへ給水流路17側の水抜きホースが接続された際、下方開口部32d、当該水抜きホース、給水流路17、バイパス流路23や排水流路20を介してチェックボール収容室32の内部と船外機12の外部が連通する。
【0032】
また、チェックボール収容室32の上方開口部32c側には上方開口部32cへ向けて徐々に縮径するテーパ部32eが設けられ、チェックボール収容室32の下方開口部32d側には下方開口部32dから離れた位置に形成された複数のリブからなる係止部32fが設けられる。
【0033】
チェックバルブ30では、上方開口部32cを介してチェックボール収容室32の内部とボディシリンダ26のウォータージャケットが連通するため、ウォーターポンプ18が作動するか否かに関わらず、上方開口部32cからチェックボール収容室32の内部へ冷却水が流入する。一方、下方開口部32dを介してチェックボール収容室32の内部と給水流路17が連通するため、船舶10の航走時等、エンジン13が稼働してウォーターポンプ18が作動するときには、下方開口部32dからチェックボール収容室32の内部へ冷却水が流入するが、ウォーターポンプ18が作動していないときには、下方開口部32dからチェックボール収容室32の内部へ冷却水が流入することがない。
【0034】
また、チェックバルブ30は、上部縮径部32aよりも下部縮径部32bが下方となるように配置されるため、ウォーターポンプ18が作動せず、下方開口部32dからチェックボール収容室32の内部へ冷却水が流入しない場合、図6(B)に示すように、チェックボール31は重力によって下部縮径部32b側へ落下し、係止部32fによって受け止められる。ここで、係止部32fは下方開口部32dから離れた位置に形成されるため、チェックボール31は下方開口部32dを塞ぐことが無い。したがって、上方開口部32cからチェックボール収容室32の内部へ流入した冷却水は、チェックボール31の脇を通過して下方開口部32dへ向けて流れることができる(図6(B)中の破線矢印参照)。すなわち、エンジン13が稼働せず、ウォーターポンプ18が作動していないときには、チェックボール31が水抜き流路22を開放するため、チェックバルブ30を介してボディシリンダ26のウォータージャケットの冷却水を排水して削減することができる。
【0035】
一方、図6(C)に示すように、ウォーターポンプ18が作動して下方開口部32dからチェックボール収容室32の内部へ冷却水が流入する場合、チェックボール31は浮力によって上方開口部32c側へ移動し、チェックボール収容室32の内部が下方開口部32dから流入した冷却水で満たされると、チェックボール31はチェックボール収容室32のテーパ部32eへ当接し、上方開口部32cを塞ぐ。その結果、下方開口部32dからチェックボール収容室32の内部へ流入した冷却水(図6(C)中の実線矢印参照)は、上方開口部32cへ到達できない。すなわち、ウォーターポンプ18が作動しているときには、チェックボール31が水抜き流路22を遮断するため、水抜き流路22へウォーターポンプ18によって流入する冷却水が、水抜き流路22を逆流してボディシリンダ26のウォータージャケットへ侵入することがない。
【0036】
本実施の形態に係る船舶用冷却システムによれば、ウォーターポンプ18が作動する場合、水抜き流路22がチェックバルブ30のチェックボール31によって遮断されるため、ウォーターポンプ18によって流入した冷却水が水抜き流路22を逆流してボディシリンダ26のウォータージャケットへ流れ込むのを防止することができる。その結果、ボディシリンダ26のシリンダが過冷却されることがなく、シリンダの温度調整を適切に行うことができる。
【0037】
なお、ボディシリンダ26のシリンダが過冷却されることが無いため、シリンダの過冷却を抑制するためにサーモスタット19の開弁温度を高く設定してボディシリンダ26のウォータージャケットにおいて冷却水が流れにくくする必要を無くすことができる。すなわち、サーモスタット19の開弁温度を低く設定することができるため、シリンダヘッド25の冷却能力を向上させることができる。その結果、ノッキングを抑制しながら点火時期を早めることができ、エンジン13の出力を向上させることができる。また、サーモスタット19の開弁温度を低く設定することにより、船舶用冷却システムを流れる冷却水の温度を全体的に低下させることができるため、冷却水が海水の場合、腐食の進行を抑制することができる。その結果、船舶用冷却システムの耐久性を向上することができるとともに、犠牲防蝕を減らすことができ、船外機12のコストを低減することができる。
【0038】
また、本実施の形態に係る船舶用冷却システムでは、ウォーターポンプ18が作動する場合、水抜き流路22がチェックバルブ30のチェックボール31によって遮断されるため、ボディシリンダ26のウォータージャケットからの冷却水を止水することができる。これにより、水抜き流路22において、ボディシリンダ26のウォータージャケットから排水される冷却水と水抜き流路22へウォーターポンプ18によって流入した冷却水とを衝突させる必要を無くすことができ、衝突に必要な水圧をウォーターポンプ18によって稼ぐ必要を無くすことができる。また、水抜き流路22は他の排水口29へ接続されず、水抜き流路22から船外機12の外部へ冷却水が常時排出されることもない。したがって、ウォーターポンプ18の容量を小さくすることができ、船外機12をさらに小型軽量にすることができる。
【0039】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る船舶用冷却システムについて説明する。第2の実施の形態は、その構成、作用が上述した第1の実施の形態と基本的に同じであり、チェックバルブの構造が第1の実施の形態と異なるのみである。したがって、重複した構成、作用については説明を省略し、以下に異なる構成、作用についての説明を行う。
【0040】
図7は、本発明の第2の実施の形態に係る船舶用冷却システムで用いられるチェックバルブの構造を概略的に示す断面図である。
【0041】
本発明の第2の実施の形態におけるチェックバルブ33(流路制御器)は、図7(A)に示すように、チェックボール31(弁体)と、チェックボール31を収容する略筒状のチェックボール収容室34(弁体収容室)とを有する。チェックボール収容室34の一端は径が絞られて水抜きホースへ挿入可能な上部縮径部34aとして形成される。また、チェックボール収容室34の他端は径が絞られず、開放されて下方開口部34b(第2の開口)として形成される。チェックボール収容室34の外部にはフランジ34dが形成され、チェックボール収容室34がフランジ34dを介して水抜き流路22の一部を構成する筐体部材35等に取り付けられる。
【0042】
また、チェックバルブ33は、篭状の係止部材36を有する。係止部材36は一部が下方開口部34bからチェックボール収容室34の内部へ入り込むが、チェックボール収容室34の内部にはチェックボール31が移動可能な空間が確保される。チェックボール収容室34が筐体部材35に取り付けられる際、係止部材36の殆どは筐体部材35の内部に位置するが、チェックボール31の筐体部材35の内部への落下を防止するとともに、係止部材36に形成された隙間36aを介してチェックボール収容室34の内部と筐体部材35の内部を連通させる。
【0043】
チェックバルブ33は、船外機12において、船舶10の航走時や船外機12がチルトアップされた際、上部縮径部34aよりも下方開口部34bが下方となるように配置される。上部縮径部34aは端部において開口する上方開口部34c(第1の開口)を有し、上部縮径部34aへボディシリンダ26側の水抜きホースが接続された際、当該水抜きホース及び上方開口部34cを介してチェックボール収容室34の内部とボディシリンダ26のウォータージャケットが連通する。また、チェックボール収容室34が筐体部材35に取り付けられた際、下方開口部34b、隙間36a、水抜き流路22、給水流路17、バイパス流路23や排水流路20を介してチェックボール収容室34の内部と船外機12の外部が連通する。また、チェックボール収容室34の上方開口部34c側には上方開口部34cへ向けて徐々に縮径するテーパ部34eが設けられる。
【0044】
チェックバルブ33では、上方開口部34cを介してチェックボール収容室34の内部とボディシリンダ26のウォータージャケットが連通するため、ウォーターポンプ18が作動するか否かに関わらず、上方開口部34cからチェックボール収容室34の内部へ冷却水が流入する。一方、下方開口部34bや隙間36aを介してチェックボール収容室34の内部と給水流路17が連通するため、エンジン13が稼働してウォーターポンプ18が作動するときには、下方開口部34bや隙間36aからチェックボール収容室34の内部へ冷却水が流入するが、ウォーターポンプ18が作動していないときには、下方開口部34bや隙間36aからチェックボール収容室34の内部へ冷却水が流入することがない。
【0045】
また、チェックバルブ33は、上部縮径部34aよりも下方開口部34bが下方となるように配置されるため、ウォーターポンプ18が作動せず、下方開口部34bや隙間36aからチェックボール収容室34の内部へ冷却水が流入しない場合、図7(B)に示すように、チェックボール31は重力によって下方開口部34b側へ落下して係止部材36によって受け止められる。このとき、係止部材36は一部が下方開口部34bからチェックボール収容室34の内部へ入り込むため、チェックボール31は下方開口部34bから離れた位置に留められ、下方開口部34bを塞ぐことが無い。したがって、上方開口部34cからチェックボール収容室34の内部へ流入した冷却水は、チェックボール31の脇を通過して下方開口部34bや隙間36aへ向けて流れることができる(図7(B)中の破線矢印参照)。すなわち、ウォーターポンプ18が作動していないときには、チェックボール31が水抜き流路22を開放するため、チェックバルブ33を介してボディシリンダ26のウォータージャケットの冷却水を排水して削減することができる。
【0046】
一方、図7(C)に示すように、ウォーターポンプ18が作動してチェックボール収容室34の内部が下方開口部34bや隙間36aから流入した冷却水で満たされると、チェックボール31は浮力によって上方開口部32c側へ移動してチェックボール収容室34のテーパ部34eへ当接し、上方開口部34cを塞ぐ。その結果、下方開口部34bや隙間36aからチェックボール収容室34の内部へ流入した冷却水(図7(C)中の実線矢印参照)は、上方開口部34cへ到達できない。すなわち、ウォーターポンプ18が作動しているときには、チェックボール31が水抜き流路22を遮断するため、水抜き流路22へウォーターポンプ18によって流入する冷却水が、水抜き流路22を逆流してボディシリンダ26のウォータージャケットへ侵入することがない。
【0047】
以上より、チェックバルブ33も第1の実施の形態におけるチェックボール31と同等の効果をもたらすことができる。
【0048】
次に、本発明の第3の実施の形態に係る船舶用冷却システムについて説明する。第3の実施の形態も、その構成、作用が上述した第1の実施の形態と基本的に同じであり、チェックバルブの構造が第1の実施の形態と異なるのみである。したがって、重複した構成、作用については説明を省略し、以下に異なる構成、作用についての説明を行う。
【0049】
本発明の第3の実施の形態におけるチェックバルブ37(流路制御器)は、図8(A)に示すように、バルブ本体38(弁体)と、バルブ本体38を収容する略筒状の本体収容室39(弁体収容室)とを有する。本体収容室39の一端は径が絞られて水抜きホースへ挿入可能な上部縮径部39aとして形成される。また、本体収容室39の他端は篭状に形成されて係止部39bを構成する。係止部39bは本体収容室39においてバルブ本体38が移動可能な空間が確保されるように形成される。本体収容室39の外部にはフランジ39cが形成され、本体収容室39がフランジ39cを介して水抜き流路22の一部を構成する筐体部材35等に取り付けられる。バルブ本体38は、冷却水の密度よりも小さい密度の材料、例えば、樹脂によって構成される。
【0050】
バルブ本体38は略錐状を呈し、底部側が半球状に形成されて球状接触部38aを構成する。また、バルブ本体38は、球状接触部38aの底面から外径方向に延出するフランジ部38bを有する。本体収容室39が筐体部材35に取り付けられる際、係止部39bの殆どは筐体部材35の内部に位置するが、係止部39bは、バルブ本体38の筐体部材35の内部への落下を防止するとともに、係止部39bに形成された隙間39d(第2の開口)を介して本体収容室39の内部と筐体部材35の内部を連通させる。
【0051】
チェックバルブ37は、船外機12において、船舶10の航走時や船外機12がチルトアップされた際、上部縮径部39aよりも係止部39bが下方となるように配置される。上部縮径部39aは端部において開口する上方開口部39e(第1の開口)を有し、上部縮径部39aへボディシリンダ26側の水抜きホースが接続された際、当該水抜きホース及び上方開口部39eを介して本体収容室39の内部とボディシリンダ26のウォータージャケットが連通する。また、本体収容室39が筐体部材35に取り付けられた際、係止部39bの隙間39d、水抜き流路22、給水流路17、バイパス流路23や排水流路20を介して本体収容室39の内部と船外機12の外部が連通する。
【0052】
本体収容室39の上方開口部39e側には上方開口部39eへ向けて徐々に縮径するテーパ部39fが設けられる。また、本体収容室39の内部において、バルブ本体38は、先端が上方開口部39eを指向し、且つフランジ部38bが係止部39bの隙間39dと対向するように配置される。
【0053】
チェックバルブ37では、上方開口部39eを介して本体収容室39の内部とボディシリンダ26のウォータージャケットが連通するため、ウォーターポンプ18が作動するか否かに関わらず、上方開口部39eから本体収容室39の内部へ冷却水が流入する。一方、係止部39bの隙間39dを介して本体収容室39の内部と給水流路17が連通するため、エンジン13が稼働してウォーターポンプ18が作動するときには、係止部39bの隙間39dから本体収容室39の内部へ冷却水が流入するが、ウォーターポンプ18が作動していないときには、隙間39dから本体収容室39の内部へ冷却水が流入することがない。
【0054】
また、チェックバルブ37は、上部縮径部39aよりも係止部39bが下方となるように配置されるため、ウォーターポンプ18が作動せず、係止部39bの隙間39dから本体収容室39の内部へ冷却水が流入しない場合、図8(B)に示すように、バルブ本体38は重力によって係止部39b側へ落下して係止部39bによって受け止められる。ここで、チェックバルブ37では、バルブ本体38のフランジ部38bは全ての隙間39dを塞がないように形成される。したがって、上方開口部39eから本体収容室39の内部へ流入した冷却水は、バルブ本体38の脇を通過し、係止部39bの隙間39dから流出することができる(図8(B)中の破線矢印参照)。すなわち、ウォーターポンプ18が作動していないときには、バルブ本体38が水抜き流路22を開放するため、チェックバルブ37を介してボディシリンダ26のウォータージャケットの冷却水を排水して削減することができる。
【0055】
一方、図8(C)に示すように、ウォーターポンプ18が作動して本体収容室39の内部が係止部39bの隙間39dから流入した冷却水で満たされると、バルブ本体38は浮力、さらには、フランジ部38bによって受け止められる流入した冷却水の圧力によって上方開口部32c側へ移動して球状接触部38aの側面が本体収容室39のテーパ部39fへ当接し、上方開口部39eを塞ぐ。その結果、係止部39bの隙間39dから本体収容室39の内部へ流入した冷却水(図8(C)中の実線矢印参照)は、上方開口部39eへ到達できない。すなわち、ウォーターポンプ18が作動しているときには、バルブ本体38が水抜き流路22を遮断するため、水抜き流路22へウォーターポンプ18によって流入する冷却水が、水抜き流路22を逆流してボディシリンダ26のウォータージャケットへ侵入することがない。
【0056】
以上より、チェックバルブ37も第1の実施の形態におけるバルブ本体38と同等の効果をもたらすことができる。また、チェックボール31は回転する可能性があり、どの箇所でテーパ部32eに当接するかが不明であるため、チェックボール31の全表面の精度を向上させてテーパ部32eと当接した際、間に微少な隙間が生じないようにする必要がある。これに対し、バルブ本体38では、先端が上方開口部39eを指向するため、先端が上部縮径部39aに入り込んでバルブ本体38が倒れることがなく、必ず、球状接触部38aの側面がテーパ部39fへ当接する。したがって、バルブ本体38では球状接触部38aの側面のみの精度を向上させればよく、これにより、チェックボール31に比べて加工コストを低減することができる。
【0057】
さらに、チェックボール31と異なり、バルブ本体38は浮力だけでなくフランジ部38bによって受け止められる流入した冷却水の圧力によっても移動するため、バルブ本体38の球状接触部38aの側面を本体収容室39のテーパ部39fへ強く当接させることができる。また、フランジ部38bによって受け止められる流入した冷却水の圧力によってバルブ本体38の微少な動きを押さえることができるため、バルブ本体38が微少に動いて球状接触部38aの側面とテーパ部39fの間に微少な隙間が生じるのも防ぐことができる。その結果、冷却水の水抜き流路22への逆流を、チェックボール31よりも確実に防ぐことができる。なお、上述したように、バルブ本体38はフランジ部38bによって受け止められる流入した冷却水の圧力によっても本体収容室39のテーパ部39fへ当接させられるため、バルブ本体38に浮力が作用することは必須ではなく、例えば、バルブ本体38を、冷却水の密度以上の密度の材料、例えば、アルミニウムで構成してもよい。
【0058】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は上述した実施の形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0059】
例えば、船外機12におけるチェックバルブ30(33,37)の配置場所について特に制約は無いが、ボディシリンダ26のウォータージャケットからの冷却水を確実に排除する観点からは、チェックボール収容室32(34)や本体収容室39の内部へ冷却水が流入するのを避けるのが好ましいため、チェックバルブ30(33,37)は船外機12において水面下とならない位置に配置するのが好ましい。
【0060】
また、上述した船舶用冷却システムはウォーターポンプ18を備えるが、例えば、図9に示すように、船外機12において、船舶10の航走方向の前方に吸水口16を配置し、吸水口16から取り入れられる冷却水に船舶10の航走による圧力が作用するようにして冷却水をボディシリンダ26と反対側からチェックバルブ30(33,37)へ流入させてもよい(図中の破線矢印参照)。この場合、ウォーターポンプ18によって冷却水をチェックバルブ30(33,37)へ流入させる必要が無いため、ウォーターポンプ18の容量をさらに小さくすることができ、船外機12をより小型軽量にすることができる。
【0061】
また、上述した各実施の形態では、チェックバルブ30(33,37)をボディシリンダ26の各シリンダの過冷却防止のために用いたが、船外機12において、船舶の保管時に水抜きが必要な他の構成要素の過冷却防止のために用いてもよい。例えば、図10に示すように、船外機12のオイルクーラー40の過冷却防止のために用いてもよい。この船舶用冷却システムでは、冷却水がウォーターポンプ18によって給水流路41を経由してオイルクーラー40へ圧送され、オイルクーラー40へ圧送された冷却水はオイルクーラー40のコア部を流れることにより、オイルクーラー40を冷却し、オイルクーラー40のコア部を流れた冷却水は、ボディシリンダ26へ流入する。
【0062】
オイルクーラー40にも、冷却水による腐食や冷却水の凍結による損傷を避けるために、排水流路20とは別に水抜き流路42が接続され、水抜き流路42は給水流路41へ接続される。なお、給水流路41はバイパス流路43を介して排水流路20へ接続される。船舶10の保管時には、オイルクーラー40のコア部の冷却水が水抜き流路42、給水流路41、バイパス流路43や排水流路20を経由して排水口21から排出される。
【0063】
そして、水抜き流路42には、水抜き流路22と同様に、チェックバルブ30が配置される。これにより、ウォーターポンプ18が作動しても、チェックバルブ30が、ウォーターポンプ18から水抜き流路42を逆流する冷却水がオイルクーラー40へ流入するのを阻止するため、オイルクーラー40が必要以上に冷却されるのを防止することができる。その結果、エンジン13の潤滑に用いるオイルの粘度を適切に保つことができ、エンジン13の耐久性や燃費を向上させることができる。また、図10の船舶用冷却システムを、オイルクーラー40以外の構成要素の冷却に用いてもよく、例えば、電装品であるレギュレータ/レクチファイア44の過冷却防止と水抜きを両立するために図10の船舶用冷却システムを用いてもよい。
【0064】
また、船外機12がエンジン13だけでなく原動機としての電気モータを搭載する場合、当該電気モータの冷却に上述した各実施の形態に係る船舶用冷却システムを用いてもよい。さらに、上述した各実施の形態では、本発明の船舶用冷却システムを船外機12に適用した場合について説明したが、本発明の船舶用冷却システムを船内外機や船内機に用いてもよい。
【符号の説明】
【0065】
10 船舶、12 船外機、13 エンジン、17,41 給水流路、18 ウォーターポンプ、22,42 水抜き流路、26 ボディシリンダ、30,33,37 チェックバルブ、31 チェックボール、32,34 チェックボール収容室、32c,34c,39e 上方開口部、32d,34b 下方開口部、32e,34e テーパ部、32f,39b 係止部、36 係止部材、38 バルブ本体、38a 球状接触部、38b フランジ部、39 本体収容室、39d 隙間、40 オイルクーラー、44 レギュレータ/レクチファイア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2021-12-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
図1】従来の船舶用冷却システムが適用される船舶推進機としての船外機を説明するための図である。
図2】従来の船舶用冷却システムにおける冷却水の流れを説明するための図である。
図3】従来の他の船舶用冷却システムにおける冷却水の流れを説明するための図である。
図4】従来のさらに他の船舶用冷却システムにおける冷却水の流れを説明するための図である。
図5】本発明の第1の実施の形態に係る船舶用冷却システムにおける冷却水の流れを説明するための図である。
図6】本発明の第1の実施の形態におけるチェックバルブの構造を概略的に示す断面図である。
図7】本発明の第2の実施の形態におけるチェックバルブの構造を概略的に示す断面図である。
図8】本発明の船舶用冷却システムの第1の変形例における冷却水の流れを説明するための図である。
図9】本発明の船舶用冷却システムの第2の変形例における冷却水の流れを説明するための図である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0048
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0049
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0050
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0051
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0052
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0053
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0054
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0055
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0056
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0057
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0059
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0059】
例えば、船外機12におけるチェックバルブ30(33)の配置場所について特に制約は無いが、ボディシリンダ26のウォータージャケットからの冷却水を確実に排除する観点からは、チェックボール収容室32(34)や本体収容室39の内部へ冷却水が流入するのを避けるのが好ましいため、チェックバルブ30(33)は船外機12において水面下とならない位置に配置するのが好ましい。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0060
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0060】
また、上述した船舶用冷却システムはウォーターポンプ18を備えるが、例えば、図に示すように、船外機12において、船舶10の航走方向の前方に吸水口16を配置し、吸水口16から取り入れられる冷却水に船舶10の航走による圧力が作用するようにして冷却水をボディシリンダ26と反対側からチェックバルブ30(33)へ流入させてもよい(図中の破線矢印参照)。この場合、ウォーターポンプ18によって冷却水をチェックバルブ30(33)へ流入させる必要が無いため、ウォーターポンプ18の容量をさらに小さくすることができ、船外機12をより小型軽量にすることができる。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0061
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0061】
また、上述した各実施の形態では、チェックバルブ30(33)をボディシリンダ26の各シリンダの過冷却防止のために用いたが、船外機12において、船舶の保管時に水抜きが必要な他の構成要素の過冷却防止のために用いてもよい。例えば、図に示すように、船外機12のオイルクーラー40の過冷却防止のために用いてもよい。この船舶用冷却システムでは、冷却水がウォーターポンプ18によって給水流路41を経由してオイルクーラー40へ圧送され、オイルクーラー40へ圧送された冷却水はオイルクーラー40のコア部を流れることにより、オイルクーラー40を冷却し、オイルクーラー40のコア部を流れた冷却水は、ボディシリンダ26へ流入する。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0063
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0063】
そして、水抜き流路42には、水抜き流路22と同様に、チェックバルブ30が配置される。これにより、ウォーターポンプ18が作動しても、チェックバルブ30が、ウォーターポンプ18から水抜き流路42を逆流する冷却水がオイルクーラー40へ流入するのを阻止するため、オイルクーラー40が必要以上に冷却されるのを防止することができる。その結果、エンジン13の潤滑に用いるオイルの粘度を適切に保つことができ、エンジン13の耐久性や燃費を向上させることができる。また、図の船舶用冷却システムを、オイルクーラー40以外の構成要素の冷却に用いてもよく、例えば、電装品であるレギュレータ/レクチファイア44の過冷却防止と水抜きを両立するために図の船舶用冷却システムを用いてもよい。
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0065
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0065】
10 船舶、12 船外機、13 エンジン、17,41 給水流路、18 ウォーターポンプ、22,42 水抜き流路、26 ボディシリンダ、30,33 チェックバルブ、31 チェックボール、32,34 チェックボール収容室、32c,34c 上方開口部、32d,34b 下方開口部、32e,34e テーパ部、32f 係止部、36 係止部材、40 オイルクーラー、44 レギュレータ/レクチファイア
【手続補正17】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶における被冷却体を冷却する船舶用冷却システムであって、
前記被冷却体へ冷却水を給水する給水流路と、
前記被冷却体から前記冷却水を排水して前記冷却水を前記被冷却体から削減する水抜き流路と、
前記水抜き流路を遮断する流路制御器と、を備える船舶用冷却システム。
【請求項2】
前記船舶の航走時には、前記流路制御器へ前記被冷却体とは反対側から前記冷却水が供給される、請求項1に記載の船舶用冷却システム。
【請求項3】
前記冷却水を前記被冷却体へ供給するポンプをさらに備え、
前記ポンプは、前記流路制御器へ前記被冷却体とは反対側から前記冷却水を供給する、請求項1又は2に記載の船舶用冷却システム。
【請求項4】
前記船舶の航走時に、前記冷却水が前記船舶の外部から取り入れられ、前記取り入れられた冷却水が前記流路制御器へ前記被冷却体とは反対側から供給される、請求項1又は2に記載の船舶用冷却システム。
【請求項5】
前記流路制御器は弁体を備え、
前記流路制御器へ前記被冷却体とは反対側から前記冷却水が供給されるとき、前記弁体は前記水抜き流路を遮断し、
前記流路制御器へ前記被冷却体とは反対側から前記冷却水が供給されないとき、前記弁体は前記水抜き流路を開放する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の船舶用冷却システム。
【請求項6】
前記流路制御器は前記弁体を収容する弁体収容室を有し、
前記弁体は、前記被冷却体とは反対側から前記冷却水が供給されるか否かに応じて前記弁体収容室の内部を移動する、請求項5に記載の船舶用冷却システム。
【請求項7】
前記弁体を構成する材料の密度は、前記冷却水の密度よりも小さい、請求項6に記載の船舶用冷却システム。
【請求項8】
前記弁体収容室には、前記被冷却体と連通する第1の開口と、前記船舶の外部と連通する第2の開口とが設けられ、
前記流路制御器へ前記被冷却体とは反対側から前記冷却水が供給されるとき、前記弁体が前記第1の開口を塞ぎ、
前記弁体収容室には前記第2の開口と離れた位置に係止部が設けられ、前記流路制御器へ前記被冷却体とは反対側から前記冷却水が供給されないとき、前記弁体が前記係止部に係止される、請求項6又は7に記載の船舶用冷却システム。
【請求項9】
前記弁体は球体であり、前記第1の開口にはテーパ部が形成され、
前記流路制御器へ前記被冷却体とは反対側から前記冷却水が供給されるとき、前記球体が前記テーパ部へ当接する、請求項8に記載の船舶用冷却システム。
【請求項10】
前記被冷却体は内燃機のボディシリンダである、請求項1乃至のいずれか1項に記載の船舶用冷却システム。
【請求項11】
前記被冷却体は電装品である、請求項1乃至のいずれか1項に記載の船舶用冷却システム。
【請求項12】
前記被冷却体はオイルクーラーである、請求項1乃至のいずれか1項に記載の船舶用冷却システム。
【請求項13】
被冷却体を冷却する船舶用冷却システムを備える船舶であって、
前記船舶用冷却システムは、
前記被冷却体へ冷却水を給水する給水流路と、
前記被冷却体から前記冷却水を排水して前記冷却水を前記被冷却体から削減する水抜き流路と、
前記水抜き流路を遮断する流路制御器と、を備える船舶。
【請求項14】
被冷却体を冷却する船舶推進機用冷却システムを備える船舶推進機であって、
前記船舶推進機用冷却システムは、
前記被冷却体へ冷却水を給水する給水流路と、
前記被冷却体から前記冷却水を排水して前記冷却水を前記被冷却体から削減する水抜き流路と、
前記水抜き流路を遮断する流路制御器と、を備える船舶推進機。
【請求項15】
船舶における被冷却体を冷却する船舶用冷却システムであって、
前記被冷却体から冷却水を排水して前記冷却水を前記被冷却体から削減する水抜き流路と、
前記水抜き流路を遮断する流路制御器と、を備える船舶用冷却システム。
【手続補正18】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図8
【補正方法】変更
【補正の内容】
図8
【手続補正19】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図9
【補正方法】変更
【補正の内容】
図9
【手続補正20】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図10
【補正方法】削除
【補正の内容】