(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124060
(43)【公開日】2022-08-25
(54)【発明の名称】防水板装置
(51)【国際特許分類】
E06B 5/00 20060101AFI20220818BHJP
E02B 7/22 20060101ALI20220818BHJP
E04H 9/14 20060101ALI20220818BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
E02B7/22
E04H9/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021021606
(22)【出願日】2021-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000252034
【氏名又は名称】株式会社鈴木シャッター
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】大場 広敦
【テーマコード(参考)】
2D019
2E139
2E239
【Fターム(参考)】
2D019AA71
2E139AA10
2E139AC19
2E239AC04
(57)【要約】
【課題】開口部Eを遮水する防水板4と支持レール3とのあいだから浸入した水を確実に集水し、排水するようにする。
【解決手段】防水板4が配設される部位の開口部内側部位に、防水板4により防ぐことができずに開口部内側に浸入した水を集水するための集水溝8を、左右方向一端側が低くなるよう傾斜した下り勾配にして形成し、該集水溝8の傾斜下端部に、深底状の集水淵部10が形成され、該集水淵部10に排水ポンプ11を設ける。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出入り口等の開口部の左右に設けられる支持レールに支持されて開口部外側からの水の浸入防止をするための防水板を備えて構成される防水板装置において、前記開口部の防水板配設部位の開口部内側部位に、防水板部位から開口部内に浸入した水を集水する集水溝を形成すると共に、該集水溝に、集水した水を排水するための排水ポンプを設けたことを特徴とする防水板装置。
【請求項2】
集水溝は、左右方向一端側が低くなるよう傾斜した下り勾配になっており、排水ポンプは集水溝の一端縁部に配されることを特徴とする請求項1記載の防水板装置。
【請求項3】
集水溝には深底状の集水淵部が形成され、該集水淵部に排水ポンプが配されることを特徴とする請求項2記載の防水板装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビル、住宅等の建物の出入り口等の開口部に建て付けられる防水板装置の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、大雨や洪水時等に発生する溢水時において出入り口等の開口部の外に溢れ出た水が、該開口部を通してビルや住宅、駐車場等の建物内に浸入してしまうことを防止するために開口部を防水板により防水(止水)するようにした防水板装置が知られている。
このような防水板装置として、防水板を開口部の左右に設けたガイドレール間に架け渡すようにして設けることで水の浸入防止を図るように構成したものがある。このような防水板を開口部に設けたとして、該防水板により完全な防水(遮水)をすることは事実上難しく、例えば高い水圧を受けることで染み出たり、シール材の変形や劣化、夾雑物の挟み込み等により生じる僅かな隙間を通して水が開口部内に浸入することがある。
このようにして浸入する水を排水するため、防水板を隙間の有る内外二重板構造とし、外側の防水板から浸入した水を、内外防水板間の隙間にため、これを排水ポンプにより排水するようにして、内部側への水の浸入を防止するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら前記従来のものは、防水板を二重板構造にする必要があるため部品点数も多く、構造が複雑になるという問題があるだけでなく、内側の防水板からさらに内部に浸入する水に対処するため、二重板構造の防水板を複数組み設ける構成にして内部側への水の浸入を回避するようにしているが、この様にした場合、二重板構造の防水板が複数組み必要となって部品点数の増大化、構造の複雑化に拍車をかけることになる等の問題があり、これらに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、出入り口等の開口部の左右に設けられる支持レールに支持されて開口部外側からの水の浸入防止をするための防水板を備えて構成される防水板装置において、前記開口部の防水板配設部位の開口部内側部位に、防水板部位から開口部内に浸入した水を集水する集水溝を形成すると共に、該集水溝に、集水した水を排水するための排水ポンプを設けたことを特徴とする防水板装置である。
請求項2の発明は、集水溝は、左右方向一端側が低くなるよう傾斜した下り勾配になっており、排水ポンプは集水溝の一端縁部に配されることを特徴とする請求項1記載の防水板装置である。
請求項3の発明は、集水溝には深底状の集水淵部が形成され、該集水淵部に排水ポンプが配されることを特徴とする請求項1または2記載の防水板装置である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、防水板部位から開口部内に水が浸入した場合に、該浸入した水を、開口部内側に設けた集水溝に集水するようにし、そして集水溝に浸入した水は排水ポンプにより排水されることになる結果、防水板部位から開口部内に浸入した水が開口部奥側にまで流れ込むのを効果的に回避できることになる。
請求項2の発明とすることにより、集水溝に集水された水は、低くなった一側側に流れたものが排水ポンプによって排水されることとなって、効率の良い水の排水ができることになる。
請求項3の発明とすることにより、集水溝に集水された水は、深底状の集水淵部に集水されたものが排水ポンプによって排水されることとなって、効率の良い水の排水ができることになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図5】(A)(B)は防水板装置の要部縦断面図、要部平面図である。
【
図6】(A)(B)(C)は集水溝の正面図、集水溝を閉鎖した状態の側面図、開口した状態の側面図である。
【
図7】第二の実施の形態を示す集水溝の正面図である。
【
図8】第三の実施の形態を示す防水板装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図面において、1は塀や建物の壁等の水の浸入を防止するよう設けられた防水体Xによって左右が挟まれた出入り口等の開口部Eに設置される防水板装置であって、該防水板装置1は、開口部Eの左右に配した門柱部2に設けられる支持レール3間に亘る状態で防水板4が組み込まれることで開口部Eを塞いで開口部外側から内側への水の浸入を防止するものであって、該防水板4は、洪水の惧れのない平常時には倉庫等の収納室に収納されていたものを、洪水の惧れがある等の非常状態が予測される場合に持ち出して支持レール3に組み込む着脱式のものであり、以下、本発明の実施の形態について詳述する。
【0009】
前記支持レール3は、防水板4の左右両端縁部および下端縁部を遊嵌できるよう凹溝状になったものであって、門柱部2に設けられる左右の縦レール部3aと、開口部Eの路面(地面、床面)F部位において、該路面Fに対して埋設状に設けられる下レール部3bとを備えることで正面視で凵字形をしている。そして支持レール3は、防水板4の板厚よりも幅広でかつ左右幅よりも溝深になった支持溝3cが設けられたものとなっている。そして防水板4を、左右方向一端側の端縁部を該一端側の縦レール部3aに溝深状に嵌入した後、他端側の端縁部を該他端側の縦レール部3aに嵌入する所謂「行って来い」の組み込み作業をすると共に、下端縁部を下レール部3bに嵌入することで防水板4の支持レール3への組み込みができるようになっている。
因みに支持レール3の下レール部3bは、防水板4を組み込むことがない平常時には図示しないグレーチング材によって覆蓋されていて人や荷物、車両等の通過物の通過に支障がないように配慮されている。
【0010】
そしてこのように支持レール3に組み込まれた防水板4は、左右両端縁部の開口部内側面に設けたシール材5が縦レール部3aの開口部内側溝側面3cに当接し、下端縁部の開口部内側面に設けたシール材5aが下レール部3bの開口部内側溝側面3dに当接することで水密機能を発揮するよう配慮されている。この場合に、前記両シール材5、5aは、防水板4の開口部外側面に設けた押圧具6による開口部内側への押圧により各レール部3a、3bの開口部内側溝側面3c、3dに押圧状に当接することで弾圧状に圧縮されることになって高い水密機能を発揮できるように構成されている。
因みに押圧具6は、杆状のものの中間部が防水板4の開口部外側面に支軸6aを介して揺動自在に軸支され、そして押圧具6の一端側を把持して揺動操作することで、他端部が各レール部3a、3bの開口部外側溝側面部3e、3fに無理嵌め状に当接することで前記シール材5、5aの弾圧状の圧縮ができるように構成されたものであって、グレモン錠が代表される。
尚、防水板4は、該防水板4の持ち運びや支持レール3への脱着を補助するため把手7が設けられたものになっている。
【0011】
前記開口部Eの内側の路面F部位には、下レール部3bの開口部内側面3dに対向する状態で集水溝8が埋設状態で形成されるが、該集水溝8の開口部は、平常時は集水溝8の開口部内側溝側面部8aに蝶番9aを介して揺動自在に設けたグレーチング材(蓋材)9によって覆蓋されている。
集水溝8の開口部外側溝側面部8bの上端縁8cは、路面Fより僅かに高い状態の下レール部3bの開口部内側溝側面3dの上端縁部に続く縁面部3gと略同高さとなるよう設定されており、そして防水板4により浸入を防ぐことができず、開口部Eの外側から内側に浸入した水が集水しやすいよう上端縁8cから傾斜面8dを存する状態で開口部外側溝側片部8bに続くように構成されている。
そして本実施の形態の集水溝8は、左右方向一端側が緩傾斜状態で低くなる下げ勾配になっており、その一端縁部は、深溝状となっていて集水溝8に集水された水が流れ込んで溜まる集水淵部10となっているが、該集水淵部10には排水ポンプ11が設けられており、集水淵部10に集水された水を排水できる構成になっている。尚、排水ポンプ11は、吸水口11aが集水淵部10の溝底側に横向き状に配され、上向きになった排出口10bには排水パイプ12が連結されたものとなっており、集水淵部10に集水された水を吸水して開口部外側に排出するようになっている。
尚、排水ポンプ11は、手動スイッチのON―OFF切換えによって駆動して排水する手動式のものとしてもよいが、集水溝8または集水淵部10に、例えば集水された水量によって浮沈するフロート(浮き)を用いた水検知センサにより自動的に水検知をして駆動する自動駆動式のものとすることができる。
【0012】
叙述の如く構成された本実施の形態において、出入り口等の開口部Eを防水板4により塞いで開口部内側に水が浸入するのを防止することになるが、高い水圧を受けることで防水板4のあいだから染み出たり、シール材5、5aの変形や劣化、夾雑物の挟み込み等により生じる僅かな隙間を通して開口部Eの外側から内側に浸入した水は、防水板4の開口部内側に設けた集水溝8に流れ込むことになり、そして該集水溝8に流れ込んだ水は排水ポンプ11の駆動を受けて排水されることになり、この結果、防水板4を通して開口部内側に浸入した水がそのまま開口部内にまで流れ込むのを回避できることになる。
【0013】
しかもこの集水溝8は、左右方向一端側が低くなるよう傾斜した下り勾配になっているため、集水した水は低い一端側に流れて深底状の集水淵部10に集水され、そして該集水淵部10に排水ポンプ11により排水されることとなって、効率の良い浸入した水の排水ができることになる。
【0014】
尚、本発明は前記実施の形態に物に限定されないことは勿論であって、集水溝8としては、
図7に示す第二の実施の形態のように、溝底部が水平状で、集水淵部がないものであっても実施することができる。
【0015】
さらに前記第一、第二の実施の形態のものは、防水板4を支持する支持レール3として、路面Fを埋設した凹溝状の下レール部3bを有するものとして説明したが、このような下レール部3bのないものであってもよく、例えば
図8以降の図面に示す第三の実施の形態のようにしたものであってもよい。
そしてこの場合に、防水板4は、下端縁部4aがシール材5bを介して路面Fに弾圧状に当接する構成になっている。さらにこのものでは、前記第一の実施の形態のもののように押圧具6を下レール部3bの開口部外側溝側面3fに当接する構成にできないため、開口部Eの外側の路面Fに押圧具13用の基材13aを埋設状に組み込んだものとし、そして防水板4の取り付けに併せて押圧具13をナット13bを介して基材13a締結するようにしたものとし、これによって防水効果の向上を図るようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明は、ビル、住宅等の建物の出入り口等の開口部に設けられる防水板装置して利用することができる。
【符号の説明】
【0017】
1 防水板装置
3 支持レール
4 防水板
8 集水溝
8a 開口部内側溝側面部
8b 開口部外側溝側面部
9 グレーチング材
10 集水淵部
11 排水ポンプ
E 開口部