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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124072
(43)【公開日】2022-08-25
(54)【発明の名称】ガスレーザ発振器
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/034 20060101AFI20220818BHJP
【FI】
H01S3/034
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021021623
(22)【出願日】2021-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【弁理士】
【氏名又は名称】来山 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】遠入 尚亮
【テーマコード(参考)】
5F071
【Fターム(参考)】
5F071AA05
5F071DD06
5F071DD07
5F071EE04
5F071JJ08
5F071JJ09
(57)【要約】
【課題】共振器ミラーやウィンドウの汚れが生じにくいガスレーザ発振器を提供する。
【解決手段】レーザ媒質ガスを収用するチェンバの中に、一対の放電電極及び一対の共振器ミラーが配置されている。共振器ミラーによって構成される光共振器から取り出されたレーザビームが、ウィンドウを通ってチェンバの外部まで導出される。送風機が、チェンバの中で、放電空間を通過するレーザ媒質ガスの流れを形成する。送風機によって形成されたレーザ媒質ガスの流れの一部を、追加流路が、共振器ミラー及びウィンドウのうち少なくとも一つの表面まで導き、レーザ媒質ガスを共振器ミラーまたはウィンドウの表面に向けて噴きつける。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ媒質ガスを収用するチェンバと、
前記チェンバの中に、間隔を隔てて対向配置された一対の放電電極と、
前記放電電極の間の放電空間を通過する光軸を持つ光共振器を構成し、前記チェンバの中に配置された一対の共振器ミラーと、
前記光共振器から取り出されたレーザビームを前記チェンバの外部まで導出するウィンドウと、
前記チェンバの中で、前記放電空間を通過するレーザ媒質ガスの流れを形成する送風機と、
前記送風機によって形成されたレーザ媒質ガスの流れの一部を、前記共振器ミラー及び前記ウィンドウのうち少なくとも一つの表面まで導き、レーザ媒質ガスを前記共振器ミラーまたは前記ウィンドウの表面に向けて噴きつける追加流路と
を備えたガスレーザ発振器。
【請求項2】
前記チェンバの内部を、前記光共振器が配置された第1室と、前記送風機が配置された第2室とに区分する仕切り板を、さらに備えており、
前記仕切り板には、前記第2室から前記第1室の前記放電空間に流入するレーザ媒質ガスの流れ、及び前記第1室の前記放電空間から流出して前記第2室に流入するレーザ媒質ガスの流れを形成するガス流通部が設けられている請求項1に記載のガスレーザ発振器。
【請求項3】
前記ガス流通部は、前記光共振器の光軸方向に関して、前記放電電極が配置されている範囲を包含し、前記放電電極が配置されている範囲の外側まで延びており、
前記追加流路のガス流入側の端部は、前記第1室に配置されており、前記光共振器の光軸方向に関して、前記放電電極が配置されている範囲の外側に位置している請求項2に記載のガスレーザ発振器。
【請求項4】
前記追加流路のガス流入側の端部は、前記第2室に配置されており、前記追加流路を流れるレーザ媒質ガスは、前記第2室から前記仕切り板と交差して前記第1室に導入される請求項2に記載のガスレーザ発振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスレーザ発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸ガスレーザ発振器等のガスレーザ発振器は、チェンバ内に光共振器及び一対の放電電極を備えている。一対の放電電極の間の放電空間を含むガスの循環路にレーザ媒質ガスを流しながら、放電空間に放電を生じさせることにより、レーザ発振を生じさせる。ガスレーザ発振器を長時間動作させると、種々の要因で光共振器のミラーに汚れが発生する。例えば、チェンバ内に残留していた埃がレーザ媒質ガスの流れによって巻き上げられ、光共振器ミラーの表面に付着したり、放電電極の表面の劣化によって発生した異物が共振器ミラーの表面に付着したりする(例えば、特許文献1参照)。また、チェンバの外部にレーザビームを導出させるウィンドウにも汚れが発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-94750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
共振器ミラーやウィンドウの汚れは、レーザビームの強度の低下、拡がり角の増大等のレ―ザビームの品質の低下の要因になる。レーザビームの品質が許容範囲を越えて低下すると、共振器ミラーやウィンドウのクリーニングまたは交換を行わなければならない。
【0005】
本発明の目的は、共振器ミラーやウィンドウの汚れが生じにくいガスレーザ発振器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によると、
レーザ媒質ガスを収用するチェンバと、
前記チェンバの中に、間隔を隔てて対向配置された一対の放電電極と、
前記放電電極の間の放電空間を通過する光軸を持つ光共振器を構成し、前記チェンバの中に配置された一対の共振器ミラーと、
前記光共振器から取り出されたレーザビームを前記チェンバの外部まで導出するウィンドウと、
前記チェンバの中で、前記放電空間を通過するレーザ媒質ガスの流れを形成する送風機と、
前記送風機によって形成されたレーザ媒質ガスの流れの一部を、前記共振器ミラー及び前記ウィンドウのうち少なくとも一つの表面まで導き、レーザ媒質ガスを前記共振器ミラーまたは前記ウィンドウの表面に向けて噴きつける追加流路と
を備えたガスレーザ発振器が提供される。
【発明の効果】
【0007】
共振器ミラーまたはウィンドウに噴きつけられたレーザ媒質ガスによって、共振器ミラーまたはウィンドウの表面に付着している埃等が除去される。これにより、共振器ミラーまたはウィンドウの汚れが生じにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施例によるガスレーザ発振器の光軸に平行な縦断面図である。
図2図2は、一実施例によるガスレーザ発振器の光軸に対して垂直な断面図である。
図3図3は、一実施例によるガスレーザ発振器の平断面図である。
図4図4は、他の実施例におるレーザ発振器の光軸に平行な縦断面図である。
図5図5は、さらに他の実施例によるレーザ発振器に用いられている追加流路の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1図3を参照して、本願発明の一実施例によるガスレーザ発振器について説明する。
図1は、一実施例によるガスレーザ発振器の光軸に平行な縦断面図であり、図2は、光軸に対して垂直な断面図であり、図3は、平断面図である。なお、図1図3は、レーザ発振器の特定の断面構造を厳密に表したものではなく、各構成要素の機能を説明するために各構成要素を概略的に表したものである。
【0010】
外形がほぼ直方体状のチェンバ10内に、仕切り板11が取りつけられている。チェンバ10内の空間が、仕切り板11によって上側の第1室12Aと下側の第2室12Bとに区分されている。図3において、仕切り板11に右下がりのハッチングを付している。チェンバ10内にレーザ媒質ガスが充填されている。レーザ媒質ガスとして、例えば二酸化炭素と窒素との混合ガスが用いられる。チェンバ10の内側の表面と仕切り板11の縁との間に設けられた開口によって2つのガス流通部11Aが構成される。
【0011】
一方のガス流通部11A(図2)を通ってレーザ媒質ガスが第2室12Bから第1室12Aに流入し、他方のガス流通部11A(図2)を通ってレーザ媒質ガスが第1室12Aから第2室12Bに戻る。このように、第1室12Aと第2室12Bとの間で、レーザ媒質ガスが循環する。図1図3において、レーザ媒質ガスの流れの主たる方向を複数の矢印で示している。
【0012】
第1室12A内に一対の放電電極15、光共振器16、ダクト18が配置されている。放電電極15の各々は一方向に長い形状を有し、一対の放電電極15が上下に間隔を隔てて平行に配置されている。放電電極15に高周波電力を供給すると、放電電極15の間に放電が生じる。放電が生じる空間を、放電空間17ということとする。
【0013】
光共振器16は、一対の共振器ミラー16F、16Rを含む。一対の共振器ミラー16F、16Rは、光共振器16の光軸19が放電電極15の長手方向と平行になり、放電空間17を通過するように位置決めされている。光共振器16のフロント側の共振器ミラー16Fとリア側の共振器ミラー16Rとの間でレーザ発振が生じる。光共振器16に閉じ込められたレーザビームの一部が、フロント側の共振器ミラー16Fを透過し、チェンバ10の壁面に取り付けられたウィンドウ25を透過してチェンバ10の外部に導出される。ウィンドウ25は、レーザビームの波長域の光を透過させる光学材料で形成される。
【0014】
ダクト18(図2)は、一方のガス流通部11Aを通って第1室12Aに流入したレーザ媒質ガスを、放電空間17まで導き、放電空間17を通過したレーザ媒質ガスを、他方のガス流通部11Aまで導く。放電空間17を流れるレーザ媒質ガスの流れの方向、光軸19の方向、及び放電電極15が相互に隔てられた方向は、相互に直交する。
【0015】
第2室12Bに、送風機30及び熱交換器35が配置されている。送風機30は、光共振器16の光軸方向に複数個、例えば3個並んで配置されている。送風機30の各々は、回転翼31と整流板32とを含み、上方を向くガス噴出し口からレーザ媒質ガスを噴き出す。チェンバ10の側壁に取り付けられたモータ33が回転翼31を回転させる。送風機30が、上方に向かうガスの流れを形成することにより、第2室12B内のレーザ媒質ガスが、一方のガス流通部11Aを通って第1室12Aに流入する。
【0016】
仕切り板11に設けられたガス流通部11Aは、光共振器16の光軸方向に関して、放電電極15が配置されている範囲を包含し、放電電極15が配置されている範囲の外側まで延びている。ここで、放電電極15とは、実際に高周波電力が供給されて放電を生じさせる導体部分を意味する。複数の送風機30によって、光共振器16の光軸方向に関して放電電極15が配置された範囲内でほぼ均一なガスの流れが形成される。熱交換器35は、放電空間17を通過して加熱されたレーザ媒質ガスを冷却する。
【0017】
第1室12A内に、2つの追加流路20が配置されている。追加流路20は、送風機30によって形成されたレーザ媒質ガスの流れの一部を、共振器ミラー16F、16R、及びウィンドウ25の表面まで導き、レーザ媒質ガスを共振器ミラー16F、16R、及びウィンドウ25の表面に向けて噴き出す。以下、追加流路20の構成について具体的に説明する。
【0018】
ガス流通部11Aを通過したレーザ媒質ガスが、2つの追加流路20の各々のガス流入端から追加流路20に流入する。追加流路20のガス流入端は、光共振器16の光軸方向に関して、ガス流通部11Aの範囲内であって、かつ放電電極15が配置されている範囲の外側に位置している。一方の追加流路20は、3つのガス流出端を備えており、ガス流出端のそれぞれが、フロント側の共振器ミラー16Fの両側の表面、及びウィンドウ25の内側の表面に対向している。これらのガス流出端から流出したレーザ媒質ガスが、フロント側の共振器ミラー16Fの両側の表面、及びウィンドウ25の内側の表面に噴きつけられる。他方の追加流路20は1つのガス流出端を備えており、ガス流出端が、リア側の共振器ミラー16Rの内側の表面に対向する。ガス流出端から流出したレーザ媒質ガスが、リア側の共振器ミラー16Rの内側の表面に噴きつけられる。
【0019】
次に、本実施例の優れた効果について説明する。
本実施例では、共振器ミラー16F、16R、及びウィンドウ25の表面にレーザ媒質ガスが噴きつけられることにより、表面に付着した埃等が取り除かれる。これにより、共振器ミラー16F、16R、及びウィンドウ25の汚れを抑制することができる。汚れが抑制されるため、共振器ミラー16F、16R等のクリーニングを行ってから、次のクリーニングを行うまでの期間が長くなり、レーザ発振器の稼働率を高めることができる。
【0020】
上記実施例では、共振器ミラー16F、16R、及びウィンドウ25に噴きつけられるガスとして、レーザ媒質ガスが用いられる。このため、噴きつけられたガスを、チェンバ10内を循環するレーザ媒質ガスから分離して回収する必要はない。噴きつけられたガスは、放電空間17を一部に含むレーザ媒質ガスの循環経路に戻せばよい。従って、ガスの回収機構を別途設ける必要がない。
【0021】
さらに、上記実施例では、レーザ媒質ガスを循環させる送風機30によって形成されたレーザ媒質ガスの流れから一部を分岐させ、分岐されたレーザ媒質ガスを共振器ミラー16F、16R、及びウィンドウ25に噴きつけている。このため、ガスを噴きつけるための新たな送風機をチェンバ10内に配置する必要がない。
【0022】
上記実施例では、光共振器16の光軸方向に関して、放電電極15が配置されている範囲の外側に、追加流路20のガス流入端が位置している。このため、放電空間17に流入するレーザ媒質ガスの流れが、追加流路20によって乱されることはない。すなわち、追加流路20がレーザ発振に与える影響を低減させることができる。
【0023】
次に、図4を参照して他の実施例によるレーザ発振器について説明する。以下、図1図3に示したレーザ発振器と共通の構成については説明を省略する。
【0024】
図4は、本実施例におるレーザ発振器の光軸に平行な縦断面図である。図1図3に示した実施例では、追加流路20(図1)のガス流入端が第1室12A内に位置している。これに対して図4に示した実施例では、追加流路20が、ガス流通部11Aを光軸方向に延長した延長線上において仕切り板11を厚さ方向に貫通し、第1室12Aから第2室12Bまで達している。すなわち、追加流路20のガス流入端が第2室12Bに位置している。さらに、追加流路20のガス流入端を、送風機30のガス噴き出し口を通って送風機30の内部まで進入させてもよい。
【0025】
次に、図4に示した実施例の優れた効果について説明する。
本実施例においても、図1図3に示した実施例と同様に、共振器ミラー16F、16R、及びウィンドウ25の汚れを抑制することができる。さらに、本実施例では、ガス流通部11Aを通過したレーザ媒質ガスが、追加流路20の影響を受けることなく放電空間17まで達する。このため、追加流路20がレーザ発振に与える影響を、より低減させることができる。
【0026】
次に、図5を参照してさらに他の実施例によるレーザ発振器について説明する。以下、図1図3に示したレーザ発振器と共通の構成については説明を省略する。
【0027】
図5は、本実施例によるレーザ発振器に用いられている追加流路20の模式図である。図1図3に示した実施例では、追加流路20が配管等で構成されており、配管によってレーザ媒質ガスが流れる領域が規制されている。これに対して本実施例では、ガスの流れの向きを変える複数のガス流調整板20Aで追加流路20が構成されている。
【0028】
仕切り板11とチェンバ10とで画定されるガス流通部11Aを通過したレーザ媒質ガスの一部が、ガス流調整板20Aによって流れの方向を曲げられ、共振器ミラー16F及びウィンドウ25に向かう。さらに、複数のガス流調整板20Aによって流れの方向が変えられて、一部のレーザ媒質ガスが、共振器ミラー16F及びウィンドウ25の表面に噴きつけられる。
【0029】
次に、上記実施例の優れた効果について説明する。
上記実施例においても、図1図3に示した実施例と同様に、共振器ミラー16F、16R、及びウィンドウ25の汚れを抑制することができる。本実施例のように、追加流路20を、ガスの流れの方向を変える複数のガス流調整板20Aで構成してもよい。なお、ガス流調整板20Aとガス配管とを組み合わせて追加流路20を構成してもよい。
【0030】
次に、上記実施例の種々の変形例について説明する。
上記実施例では、フロント側の共振器ミラー16Fの両側の表面、リア側の共振器ミラー16Rの内側の表面、ウィンドウ25の内側の表面にレーザ媒質ガスを噴きつけているが、これら複数の表面から選択された少なくとも一つの表面にレーザ媒質ガスを噴きつける構成を採用してもよい。
【0031】
また、上記実施例では、チェンバ10内の空間が仕切り板11に仕切られているが、必ずしも仕切り板11を配置する必要はない。放電空間17から流出したレーザ媒質ガスを放電空間17に再流入させるガスの循環経路が画定されればよい。この場合、循環経路に配置される送風機30から放電空間17までの循環経路内のレーザ媒質ガスの流れの一部を分岐させて、追加流路20に流入させる構成とするとよい。送風機30と放電空間17との間の循環流路から追加流路20に分岐させることにより。共振器ミラー16F、16R、及びウィンドウ25に噴きつけるレーザ媒質ガスの十分な流速を確保することができる。
【0032】
上述の各実施例は例示であり、異なる実施例で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。複数の実施例の同様の構成による同様の作用効果については実施例ごとには逐次言及しない。さらに、本発明は上述の実施例に制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0033】
10 チェンバ
11 仕切り板
11A ガス流通部
12A 第1室
12B 第2室
15 放電電極
16 光共振器
16F、16R 共振器ミラー
17 放電空間
18 ダクト
19 光軸
20 追加流路
20A ガス流調整板
25 ウィンドウ
30 送風機
31 回転翼
32 整流板
33 モータ
35 熱交換器

図1
図2
図3
図4
図5