(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124073
(43)【公開日】2022-08-25
(54)【発明の名称】植物栽培装置
(51)【国際特許分類】
A01G 7/00 20060101AFI20220818BHJP
A01G 9/02 20180101ALI20220818BHJP
【FI】
A01G7/00 601A
A01G7/00 602A
A01G9/02 101G
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021021625
(22)【出願日】2021-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】508092163
【氏名又は名称】内山 久和
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古在 豊樹
(72)【発明者】
【氏名】内山 久和
【テーマコード(参考)】
2B022
2B327
【Fターム(参考)】
2B022AA03
2B022DA03
2B022DA05
2B022DA12
2B022DA19
2B327NE07
2B327NE09
2B327QA05
2B327QB02
2B327SB04
2B327TA04
2B327TA09
2B327TA22
2B327TB02
2B327UB03
2B327UB21
2B327UB22
(57)【要約】
【課題】効率よく植物を栽培するための植物栽培装置を提供する。
【解決手段】枠体10と、その枠体に支持される棚板20と、棚板20の下方に設けられる照明装置30と、棚板20に載置される栽培容器40とを備えた植物栽培装置1。照明装置30は、光を下方に照射する第1照明部31と、光を上方に照射する第2照明部32とを有する。植物栽培装置1は、栽培空間Sの植物に対して、上方から第1照明部31の光を照射し、下方から第2照明部32の光を棚板20を介して照射する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を栽培するための培地を収容する栽培容器と、上方から植物に光を照射する上位照明と、下方から植物に光を照射する下位照明とを備えており、
前記下位照明は、前記栽培容器の開口部より下方に設けられている、
植物栽培装置。
【請求項2】
前記下位照明と前記上位照明とが一体化されている、
請求項1記載の植物栽培装置。
【請求項3】
前記栽培容器を支持する基材を備えており、
前記基材は少なくとも一部で光を通すことができ、
前記下位照明は、前記基材の下方に設けられている、
請求項1または2記載の植物栽培装置。
【請求項4】
前記下位照明が基材を兼ねている、または、前記下位照明と基材とが一体化されている、
請求項3記載の植物栽培装置。
【請求項5】
植物を栽培するための培地を収容する樋型の栽培容器と、上方から植物に光を照射する上位照明と、下方から植物に光を照射する下位照明とを有し、
複数の前記栽培容器が並列されており、
前記下位照明は、並列される複数の栽培容器の間に設けられている、
植物栽培装置。
【請求項6】
前記並列される複数の栽培容器は連結板によって連結されており、
前記下位照明は、前記連結板の上に配置されている、または、前記連結板の下方に配置されている、
請求項5記載の植物栽培装置。
【請求項7】
栽培空間を制御する気体を供給するダクトをさらに有し、
前記ダクトは、左右に並んだ栽培容器の間に設けられている、
請求項6記載の植物栽培装置。
【請求項8】
植物を栽培するための培地を収容する栽培容器と、その栽培容器を支持する基材と、上方から植物に光を照射する上位照明と、下方から植物に光を照射する下位照明とを備えており、
前記基材は、少なくとも一部で光を通すことができ、
前記基材は、複数の溝が並列して形成されており、
前記栽培容器は、前記溝に収容され、
前記下位照明は、前記基材の下方であって隣り合う溝の間に設けられている、
植物栽培装置。
【請求項9】
植物を栽培するための培地を収容する栽培容器と、その栽培容器を支持する基材と、上方から植物に光を照射する上位照明と、前記栽培空間を制御する空気を供給するダクトとを備えており、
前記基材は、複数の溝が並列して形成されており、
前記栽培容器は、前記溝に収容され、
前記ダクトは、左右に並んだ溝の間に設けられている、
植物栽培装置。
【請求項10】
植物を栽培するための培地を収容する樋型の栽培容器と、上方から植物に光を照射する上位照明と、前記栽培容器を支持する基材と、前記栽培空間を制御する空気を供給するダクトとを備えており、
前記栽培容器は複数が並列されており、かつ、前記並列される複数の栽培容器は、連結板によって連結されており、
前記ダクトは、左右に並んだ栽培容器の外壁と、連結板と、基材とに囲まれた空間に設けられている、
植物栽培装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、これまで植物栽培装置に関わる多くの発明を提案している。例えば、特許文献1では、多数の種苗を栽培するためのトレイと、そのトレイを入り口側から出口側まで搬送するコンベアと、トレイに水および栄養を供給する供給手段と、トレイの植物に光を照射する照明手段とを備え、供給手段および照明手段がコンベアに沿って配列されている植物栽培装置を提案している。これによって、コンベアによって搬送されるトレイの植物が各生長の状態に合わせて適切な栄養や水分を与え、適切な光を照射する。
また本出願人は、多数の植物が生長しても栽培液を効率よく循環させることができる栽培容器および栽培方法についても提案している(特許文献2)。
【0003】
一方、植物が生長して上下に葉が重なり、下側の葉(下位葉)に光が届かなくなることにより、下位葉の光合成の効率が悪くことが知られている。このように光合成の効率が悪くなる下位葉は一般的に老化する。そして、通常、そのように老化した下位葉は摘み取られている。
近年、植物の下側から上向光を照射させることにより、第1層から第3層に位置する下位葉の老化を抑制することができるとの報告がある(非特許文献)。
また下位葉の老化を抑制することを直接の目的としたものではないが、特許文献3には、反射体を用いて植物の下方から光を照射する方法が開示されている。そして、特許文献4には、葉の裏面には多くの気孔が存在することから、葉の裏面に光を照射することによって、植物の生育調節、生育促進を図るための植物等栽培用人工光源ユニットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4279379号
【特許文献2】特開2020-162507号公報
【特許文献3】特開昭49-117222号公報
【特許文献4】特開2002-272271号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Zhang, G., S. Shen, M. Takagaki, T. Kozai, and W. Yamori. Frontiers in Plant Science, December 2015, Volume 6, Article 1110
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献3のように反射板を用いる場合、上位葉と同様に光合成させるための十分な光量を下位葉に与えることができない。特に、植物が生長し、葉が二重、三重と生い茂ることにより影ができてしまい、反射光の照射範囲も限られてくる。また非特許文献および特許文献4の栽培方法は、いずれも植物の栽培する培地の上に光源を配置するものであるため、長期間の栽培には適していない。例えば、植物栽培装置ではスペースを効率良く使用するため、植物の大きさに伴って植物間を離すスペーシング工程を行うことがあるが、培地の上に光源を配置する場合、そのようなスペーシング工程が煩雑になる。そして、植物栽培装置の各装置や栽培容器のメンテナンスも煩雑となる。また光源の熱が植物に伝達され、植物の生長を阻害するおそれもある。さらに、特許文献4のような防水加工を施した光源ユニットであっても、培地の上で水等が供給される植物の下に長期間設置し続けたときの耐久性については考慮されていない。
本発明は、このような課題を考慮したものであり、効率よく植物を栽培するための植物栽培装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の植物栽培装置は、植物を栽培するための培地を収容する栽培容器と、上方から植物に光を照射する上位照明と、下方から植物に光を照射する下位照明とを備えており、前記下位照明は、前記栽培容器の開口部より下方に設けられていることを特徴としている。ここで栽培容器の開口部より下方とは、栽培容器の外であって、上面に開口した水平面より下方といい、液体を栽培容器内に満たしたときの水面より下方という。
【0008】
本発明の植物栽培装置は、下方から植物に光を照射する下位照明を備えているため、生長した植物の下位葉の老化を防止できる。そのため、特に、レタスなどの葉菜類に好ましい。また下位照明を、栽培容器の開口部より下方に設けているため、下位照明と培地との間に少なくとも栽培容器の壁面が介在することになり、培地から離すことができ、下位照明が劣化しにくい。また栽培する植物の生長を阻害しない。
【0009】
本発明の植物栽培装置であって、下位照明と上位照明とが一体化されているものが好ましい。この場合、熱源となる光源を一体化することにより、栽培空間内の温度制御が簡単になる。また、植物栽培装置内の清掃やメンテナンスも容易になる。
本発明の植物栽培装置であって、前記栽培容器を支持する基材を備えており、前記基材は少なくとも一部で光を通すことができ、前記下位照明は、前記基材の下方に設けられている。この場合、下位照明と培地との間に基材も介在されることになるため、一層、下位照明の劣化を防止できる。なお、下位照明が基材を兼ねている、または、基材と下位照明とが一体化されていてもよい。この場合、植物栽培装置内のメンテナンスが容易になる。なお、下位照明は、栽培容器の下方に設けられるのが好ましい。
本発明の植物栽培装置であって、前記栽培容器が栽培空間内で吊り下げられているものが好ましい。特に、下位照明が、栽培容器の下方に設けられるのが好ましい。
【0010】
本発明の植物栽培装置の第2の態様は、植物を栽培するための培地を収容する樋型の栽培容器と、上方から植物に光を照射する上位照明と、下方から植物に光を照射する下位照明とを有し、複数の前記栽培容器が並列されており、前記下位照明は、並列される複数の栽培容器の間に設けられていることを特徴としている。
本発明の植物栽培装置の第2の態様も、下方から植物に光を照射する下位照明を備えているため、生長した植物の下位葉の老化を防止できる。また下位照明が、並列される複数の栽培容器の間に設けられているため、下位照明を培地から離すことができ、下位照明が劣化しにくい。また栽培する植物の生長を阻害しない。
【0011】
本発明の植物栽培装置の第2の態様であって、前記並列される複数の栽培容器は連結板によって連結されており、前記下位照明は、前記連結板の上に配置されている、または、前記連結板の下方に配置されているものが好ましい。その場合、栽培空間を制御する気体を供給するダクトをさらに有し、前記ダクトは、左右に並んだ栽培容器の間の空間に設けられているのが好ましい。特に、栽培容器の外壁と、連結板と、基材とに囲まれた空間に設けられているものが好ましい。
【0012】
本発明の植物栽培装置の第3の態様は、植物を栽培するための培地を収容する栽培容器と、その栽培容器を支持する基材と、上方から植物に光を照射する上位照明と、前記栽培空間を制御する空気を供給するダクトとを備えており、前記基材は、複数の溝が並列して形成されており、前記栽培容器は、前記溝に収容され、
前記ダクトは、左右に並んだ溝の間に設けられていることを特徴としている。
本発明の植物栽培装置の第4の態様は、植物を栽培するための培地を収容する樋型の栽培容器と、上方から植物に光を照射する上位照明と、前記栽培容器を支持する基材と、前記栽培空間を制御する空気を供給するダクトとを備えており、前記栽培容器は複数が並列されており、かつ、前記並列される複数の栽培容器は、連結板によって連結されており、前記ダクトは、左右に並んだ栽培容器の外壁と、連結板と、基材とに囲まれた空間に設けられていることを特徴としている。
本発明の植物栽培装置の第3および第4の態様は、栽培容器の間にダクトが設けられており、省スペース化が可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の植物栽培装置は、栽培する植物の下位葉の老化を防止できる。また植物栽培装置内の清掃やメンテナンスが容易である。本発明の植物栽培装置は、高品質の植物を効率高く生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の植物栽培装置の第1の実施形態を示す斜視図である。
【
図3】
図3aは
図1の植物栽培装置に用いられる照明装置の断面図であり、
図3bは
図1の植物栽培装置に用いられる栽培容器の断面図であり、
図3c、dはそれぞれ植物装置に用いられる異なる栽培容器の平面図である。
【
図4】本発明の植物栽培装置を用いて栽培方法を示す工程図である。
【
図5】
図5a、bは、それぞれ
図1の植物栽培装置の棚板の他の形態を示す平面図であり、
図5c、dは、それぞれ
図1の植物栽培装置の照明装置の他の形態を示す断面図であり、
図5eは、植物栽培装置の他の形態を示す断面図である。
【
図6】本発明の植物栽培装置の第2の実施形態を示す断面図である。
【
図7】
図7aは本発明の植物栽培装置の第3の実施形態を示す断面図であり、
図7bはその一部拡大図であり、
図7cは他の形態を示す一部拡大図である。
【
図8】
図8aは本発明の植物栽培装置の第3の実施形態を示す断面図であり、
図8bはその栽培容器を示す断面図であり、
図8cは栽培容器の他の形態を示す断面図である。
【
図9】
図9a、bは、それぞれ栽培容器のさらに他の形態を示す断面図である。
【
図10】
図10a、
図10bは、それぞれ本発明の植物栽培装置の第4、第5の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
「植物栽培装置1」
図1、
図2の多段式の植物栽培装置1は、枠体10と、その枠体に支持される棚板20と、棚板20の下方に設けられる照明装置30(
図2のみ)と、棚板20に載置される栽培容器40とを備えている。
図1の植物栽培装置1では、天板20Aを省略している。
図2に示すように、天板20Aには、下向きのみに光を照射する照明装置30Aが設けられており、一番下の棚板20Bの下面には、上向きのみに光を照射する照明装置30Bが設けられている。植物栽培装置1は、6段の栽培空間Sを備えているが、その段数は特に限定されるものではない。
【0016】
「枠体10」
図1に戻って、枠体10は、長方形状に四方に配設される柱11と、それらを水平長辺方向に連結する桁12と、それらを水平短辺方向に連結する梁13とを備えている。棚板20、20Bおよび天板20Aは、桁12および梁13に支持されている。また特に限定するものではないが、四方の柱11を覆うように前後左右に壁(図示せず)を設けてもよい。壁を設けることにより、栽培空間を密閉することができ、栽培空間内の環境の制御が行いやすくなる。また少なくとも一つの壁を開閉自在とすることにより栽培容器40や棚板20の取り出しや設置が可能となる。
しかし、枠体10の構造は、棚板20を上下に所定の間隔で支持できれば、特に限定されるものではない。例えば、桁や梁の一部や全部を省略してもよく、柱11間に支柱を設けたりしてもよい。
【0017】
「棚板20」
棚板20(及び棚板20B)は、後述する栽培容器40を支持し、透光性を有する板である。棚板20は、前後を長辺とする長方形状を呈する。この棚板20によって、枠体10内を上下複数の栽培空間Sに区切る。栽培空間Sは,前後方向を長辺とする直方体状の空間である。棚板20に透光性を与えることにより、棚板20の下方に位置する照明装置30からの光を遮ることなく植物に照射することができる。
棚板20としては、ガラス、合成樹脂板が挙げられる。なお、棚板20の色は、特に限定されず、栽培する植物や栽培条件に応じて適宜選択される。
なお、一方、天板20Aは、特に限定されるものではないが、不透明の板から構成されるのが好ましい。
【0018】
「照明装置30」
照明装置30は、
図3aに示すように、光を下向きに照射するパネル状の第1照明部31(上位照明)と、光を上向きに照射するパネル状の第2照明部32(下位照明)とを一体化したものである。照明装置30は、栽培空間Sの長手方向に沿って棚板20の下面あるいは下方に設けられている。
照明装置30を詳述すると、下から順番に第1透明板31a、第1導光板31b、遮蔽部P第2導光板32b、第2透明板32aとが積層された積層部30aと、その積層部の第1導光板31bの両測部に沿って第1導光板31bに光を照射する第1光源31cと、第2導光板32bの両側部に沿って第2導光板32bに光を照射する第2光源32cと、第1光源31cと第2光源32cとを介して積層部の側部に設けられるコ字状の枠体36とを備えている。枠体36と、積層部31aとは、封止材30bによって固定されている。
第1透明板31aおよび第2透明板32aは、それぞれ透光性を有するものであれば、特に限定されない。しかし、透明とすることにより、効率よく光を対象物に照射できる。これらの材質としては、例えば、ガラスや樹脂板が挙げられる。なお、第1透明板31aおよび第2透明板32aは省略してもよいが、第1透明板31aおよび第2透明板32aを設けることにより、防水性を向上させることができる。
第1導光板31bおよび第2導光板32bは、それぞれ側部から受ける光を下向きおよび上向きに導く。
第1光源31cおよび第2光源32cは、それぞれ縦長の基板(図示せず)と、基板の長手方向に均等に並べられた複数の発光ダイオード(LED)(図示せず)とを備えている。しかし、光源は、LEDに限定されるものではなく、蛍光灯、電球、エレクトロル・ルミネッセンス(EL)などの人工光源を用いてもよい。なお、第1光源31cおよび第2光源32cは、それぞれ第1導光板31bおよび第2導光板32bの両側部に設けられているが、一方の側部だけにしてもよい。
遮蔽部35は、特に限定されるものではないが、例えば、アルミ箔などの反射板(反射シート)が好ましく挙げられる。これにより光を効率良く照射することができる。なお、遮蔽部35を設けなくてもよい。しかし、遮蔽部35を設けない場合、上下隣接する栽培空間の光の漏れが生じ、光の制御がしにくくなる。
枠体36は、第1照明部31および第2照明部32を一体化できるものであれば、特に限定されるものではない。
【0019】
照明装置30は、第1照明部31および第2照明部32を備えているため、その照明装置30の下方に栽培されている植物に上方から光を照射することができ、かつ、その照明装置30の上方に栽培されている植物(上の栽培空間)に棚板20を介して下方から光を照射することができる。
照明装置30は、第1照明部31および第2照明部32が一体化されているため、取り付けや取り外しが簡単にでき、掃除等のメンテナンスが簡単にできる。
照明装置30は、棚板20の下方(特に、下面)に設けられているため、植物等に供給する水や養液等が直接、照明装置30にかかることがない。そのため、長期間の使用でも劣化しにくい。一方、照明装置30が発生する熱による影響も小さくでき、栽培する植物にも優しい。
照明装置30は、導光板を用いているため、熱を発生する光源を栽培空間の端部、枠体11の桁12または梁13に沿って配置することができ、植物への影響をさらに軽減させることができる。
【0020】
「栽培容器40」
栽培容器40は、植物を栽培するための培地を収容するためのものであり、
図3bに示すように、上方が開口した断面コ字状の樋型の容器本体41と、その開口に設けられる蓋42とを備えている。
蓋42は、樋軸長手方向に延びる溝42aと、その溝底に設けられる孔42bとを有する。蓋42は、
図3cに示すように、1個あるいは複数の孔42bを有する蓋部材が長手方向に複数並んでいても、
図3dに示すように、一体としてもよい。
図3cに示すように、複数の蓋部材を複数並べることにより、長手方向のスペーシングが可能となる。いずれの場合も、孔42bは、長手方向に所定の間隔で複数設けられ、栽培する植物を支持する。なお、この栽培容器40の開口部とは、点線で示すように、蓋42の溝42aの上端である。
容器本体41および蓋42は、不透明の材質が用いられる。容器本体41を不透明とすることにより、容器本体41内への第1照明部31及び第2照明部32からの光の侵入を防止することができる。水耕栽培の場合、容器内への光を遮ることにより、容器内での藻の発生を抑制することができる。しかし、栽培する植物や栽培方法によっては、容器本体41を透光性を有する材質から成形してもよい。
栽培容器40は、複数の植物を1列または複数列に支持または収容するものである。並べる列の数は、特に限定されるものではないが、2列以下が好ましく、1列が特に好ましい。1列であれば栽培容器40の両側から植物に第2照明装置32の光を下位葉の下面に照射することができ、2列であっても少なくとも片側から照射できる。なお、3列以上であっても容器本体41を透光性とすることにより、効率よく栽培する植物の下位葉の下面への光の照射が可能である。
容器本体41の幅は、1列とする場合、栽培する植物が生長する大きさに対して小さくするのが好ましい。つまり、生長した植物が栽培容器40からはみ出さない場合、効率よく植物の下位葉に光を照射することができないおそれがある。しかし、栽培する植物の種類に応じて栽培容器の大きさ適宜選択すればよい。
栽培容器40内に収容される培地としては、植物を栽培するために用いる養分などを含む溶液や用土等が挙げられ、例えば、水、養液、堆肥などの土、石などが挙げられる。
【0021】
次に、
図4に示すように、この植物栽培装置1を用いた植物の栽培方法について説明する。
初めに、植物の苗を定植する(工程1)。つまり、栽培容器40に培地を充填し、栽培する植物の苗をその培地に植える。
つぎに、植物容器40に定植した苗を、第1照明部31のみの光で栽培する(工程2)。つまり、苗に第1照明部31のみの光を照射する。なお、第2照明部32を点灯してもよいが、苗の状態では上方からの光でも下位葉に光が届くため、特に必要がない。このように工程2において、第2照明部32(下位照明)を使用しないことによって、生産効率を向上させることができる。
次いで、生長した植物に、第1照明部31および第2照明部32の光で栽培する(工程3)。ここで生長した植物とは、上位葉が生成した状態をいう。特に、上位葉が複数重なるように生成し、上方からの光が下位葉に届かない、あるいは、十分届かないような状態をいう。このような状態において、第2照明部32から光を照射することにより、下位葉の老化が防止できる。
最後に、植物を収穫する(工程4)。
【0022】
このように構成されているため、植物栽培装置1は、植物を効率よく栽培することができ、総合的に生産性が高い。
つまり、生長した植物に対して、上方から光を照射しつつ、下方からも光を照射することができるため、植物の生長を妨げることなく、下位葉の老化が防止でき、摘み葉を最小限に抑えることができる。よって、植物栽培装置1は、特に、レタスなどの葉菜類に好ましく、一房当たりの重量の大きいものが収穫できる。
また植物栽培装置1は、照明装置30を棚板20の下方に設けているため、照明装置30が発生する熱が植物に直接影響を与えるおそれが小さい。さらに、照明装置30も培地、特に、養液から隔離されているため、劣化しにくく、照明装置30への防水処理も施しやすい。
植物栽培装置1は、複数の植物を収容した栽培容器40を用いているため、栽培容器40を移動させることにより、簡単に生長した植物同士のスペーシングが簡単にできる。また栽培容器40を出し入れするだけで、植物栽培装置1の全体の清掃や照明装置30のメンテナンスも簡単にできる。
【0023】
図1の植物栽培装置1は、上記の形態に限定されるものではない。
図1の植物栽培装置1の棚板20は、少なくとも一部において光を通すものであればよい。例えば、
図5aの棚板20のように、栽培容器40の間となるように光を通すための複数の孔25を設けたものや、
図5bの棚板20のように、複数のパイプ26を所定の間隔を空けて長方形状に固定したものを用いてもよい。なお、孔25やパイプ26の間に透光性を有するフィルム等を設けるのが好ましい。
図1の植物栽培装置1の照明装置30は、第1照明部31および第2照明部32が一体化されず、別体としてもよい。この場合も、耐久性は特に変わらない。
図1の植物栽培装置1の照明装置30の第1照明部31および第2照明部32は、導光板が用いられているが、例えば、
図5cの照明装置30のように透明板37aと反射板37bとを所定の間隔で積層し、その空間内に内部反射板37cを設け、光源37dの光を反射板37bおよび内部反射板37cで反射させるリフレクター型照明装置を用いてもよく、
図5dの照明装置30のようにパネル38aに光源38bを直接設けるようにしてもよい。なお、符号38cは透明板である。
図1の植物栽培装置1の栽培容器40は、複数の植物を1列以上に支持するものであるが、1個以上の植物を支持できれば、特に限定されるものではない。例えば、1つずつ支持するものであってもよい。この場合、植物の数だけ栽培容器は並べられる。なお、栽培容器は、2~5個の複数個ずつ支持するようにしてもよい。しかし、栽培される植物は、少なくとも直方体状の栽培空間の長手方向に沿って並べられるのが好ましい。
図1の植物栽培装置1は、複数段の栽培空間を有するものであるが、
図5eの植物栽培装置1Aのように、天板20Aおよび棚板20Bによって1段の栽培空間Sを構成してもよい。
【0024】
次に、植物栽培装置の他の実施形態を説明する。
「植物栽培装置1A」
図6の植物栽培装置1Aは、枠体10と、その枠体に支持される照明装置30と、照明装置30に載置される栽培容器40とを備えている。つまり、
図1の植物栽培装置1において、棚板20を省略し、照明装置30に棚板を兼用させたものである。その他は、植物栽培装置1と同じである。
【0025】
「植物栽培装置2」
図7aの植物栽培装置2は、枠体10と、その枠体に支持される棚板27と、栽培容器40と、上方から植物に光を照射する第1照明装置70(上位照明)と、下方から植物に光を照射する第2照明装置80と(下位照明)と、ダクト90とを備えている。
枠体10および栽培容器40は、
図1の植物栽培装置1の枠体10および栽培容器40と実質的に同じものである。
【0026】
棚板27は、
図7bに示すように、前後方向に延びる溝27aと、それらを繋ぐ連結板27bとを有する透光板である。連結板27bには、空調用孔27cが形成されている。
【0027】
第1照明装置70および第2照明装置80は、直方体状の栽培空間Sの長手方向に沿って設けられている。
第1照明装置70は、パネル状の照明である。第1照明装置70は、棚板27の下面に設けられる。
第2照明装置80は、線状の照明である。第2照明装置80は、棚板27の隣り合う溝27aの間であって、連結板27bの下方に収容されている。なお、この形態では、第1照明装置70に載置されているが、
図7cに示すように、連結板27bの下面に固定してもよい。この場合、栽培容器40の大きさにもよるが、栽培容器40の横からも光を照射することになるため、植物の株元(培地から出ている部位)にも光を効率よく照射できる。
第1照明装置70および第2照明装置80としては、公知の照明装置が用いられる。
【0028】
ダクト90は、左右に並んだ棚板27の溝27aの間の空間を用いたものである。例えば、植物栽培装置2の前方から後方に向かって二酸化炭素が流される。このダクト90内に二酸化炭素を流すことにより、連結板27bに設けられる空調用孔27cから二酸化炭素が栽培空間S内に供給され、栽培空間の二酸化炭素量を制御することができる。なお、ダクト90に流す気体は、二酸化炭素に限らず、酸素や窒素や空気等の栽培に必要な気体が挙げられる。また冷却した気体または加熱した空気を流すことにより、栽培空間内の温度制御も可能となる。
【0029】
このように構成されているため、植物栽培装置2も、植物栽培装置1と同様に、植物を効率よく栽培することができ、総合的に生産性が高い。
特に、栽培容器40を溝27a内に収容するため、栽培容器40の配置が簡単である。また第2照明装置80と栽培容器40との間に棚板27を介在させることができ、かつ、第2照明装置80を栽培容器40に対して開口面に近い高さに設置できるため、より一層効率よく栽培することができる。
【0030】
「植物栽培装置3」
図8aの植物栽培装置3は、枠体10と、その枠体に支持される棚板50と、その棚板50に載置される栽培用パネル60と、上方から植物に光を照射する第1照明装置70(上位照明)と、下方から植物に光を照射する第2照明装置80(下位照明)と、ダクト90とを備えている。枠体10は、
図1の植物栽培装置1の枠体10であって、前後左右に壁を備えたものと実質的に同じものである。棚板50は、不透明であってもよいことを除けば、
図1の植物栽培装置1の棚板20と実質的に同じものである。
【0031】
栽培用パネル60は、
図8bに示すように、2個以上並列された樋型の栽培容器61と、左右に並んだ栽培容器の隙間を閉じるように設けられる連結板62とを有する。連結板62は、栽培容器61の蓋としても作用しており、溝62aおよび植物を支持する孔62bを有する。
栽培容器61は、不透明の材質によって形成されている。各栽培容器61は、複数の植物を1列以上に収容または支持する。各栽培容器61が支持または主要する植物の列は、特に限定されないが、2列以下が好ましく、1列以下が特に好ましい。なお、3列以上であってもよい。その場合、栽培容器61に透光性を持たすことにより、下位葉に効率よく第2照明装置80の光を照射できる。
連結板62は、透光性を有する合成樹脂またはガラスから成形されている。また連結板62には、栽培空間と栽培容器61の間の空間S1を連通するように所定の間隔で空調用孔62cが設けられている。なお、連結板62において、栽培容器61の蓋として作用する部位に、遮蔽フィルム等を設けるのが好ましい。なお、連結板62は、栽培容器61の上端に設けられているが、空間S1を形成するものであれば、つまり、栽培容器61の下端以外であれば、その位置は特に限定されるものではない。この連結板62は、栽培容器61の蓋としても作用するが、栽培容器61同士を連結する部位と、蓋に対応する部位とを別体としてもよい。
図8bにおいて、点線は、栽培容器61の開口部を示す。
【0032】
第1照明装置70および第2照明装置80は、直方体状の栽培空間Sの長手方向に沿って設けられている。
第1照明装置70は、棚板50の下面に設けられるパネル状の照明である。
第2照明装置80は、栽培用パネル60の栽培容器61と栽培容器61の間に設けられる細長い空間S1に設けられる線状の照明である。空間S1は、隣接する樋の外壁61aと、連結板62と、棚板50とによって形成されている。なお、
図8bの想像線のように、連結板62の下面に取り付けてもよい。
第1照明装置70および第2照明装置80としては、公知の照明装置が用いられる。
【0033】
ダクト90は、左右に並んだ栽培容器61の間の空間S1を用いたものである。例えば、植物栽培装置3の前方から後方に向かって二酸化炭素が流される。このダクト90内に二酸化炭素を流すことにより、連結板62に設けられる空調用孔62cから二酸化炭素が栽培空間S内に供給され、栽培空間の二酸化炭素量を制御することができる。なお、ダクト90に流す気体は、二酸化炭素に限らず、酸素や窒素や空気等の栽培に必要な気体が挙げられる。また冷却した気体または加熱した空気を流すことにより、栽培空間内の温度制御も可能となる。
【0034】
植物栽培装置3は、ダクト90を備えているため、栽培空間S内の環境の制御ができる。また植物栽培装置3において、第2照明装置80の光は、透光性を有する連結板65を介して栽培空間S内の植物に照射される。そのため、植物Pに対して上下方向から光を照射させることができ、下位葉の老化を防止できる。
植物栽培装置3において、棚板50を透明とし、棚板50と第1照明装置70との間に第2照明装置80を設けてもよい。
植物栽培装置3において棚板50を省略し、栽培用パネル60を枠体10に支持させてもよい。この場合、栽培容器61の間の空間S1の下側を塞ぐべき、第2連結板を設ける。
図8cの植物栽培装置3は、連結板62が突出部62dを有するものである。この突出部62dの下面に第2照明装置80が設けられている。そのため、第2照明装置80は、これまでの実施形態と異なり、栽培容器61の開口部より上方設けられている。そのため、植物の株元に光を照射させることができ、より効率よく光を照射できる。さらに、連結板62(隔壁)が第2照明装置80(下位照明)と培地との間にある。つまり、下位照明と培地との間に少なくとも連結板(隔壁)が介在することになり、培地から離すことができ、下位照明が劣化しにくい。また植物の生長を阻害しにくい。
図9aの植物栽培装置30の栽培用パネル60は、栽培容器61と、連結板62とが一体したものである。例えば、一枚のアルミ板等の金属板に曲げ加工を施して形成することができる。そして、蓋63が各栽培容器61に取り付けられている。
図9bの植物栽培装置30の栽培用パネル60は、連結板62が溝部62eを有するものである。そして、この溝部62eの上面に第2照明装置80が設けられている。このようにダクト90の外側に第2照明装置80を設けてもよい。
【0035】
「植物栽培装置4」
図10aの植物栽培装置4は、枠体10と、その枠体に支持される棚板50と、棚板50に載置される栽培容器40と、上方から植物に光を照射する第1照明装置70と、棚板50に載置され、下方から植物に光を照射する第2照明装置80とを有する。枠体10は、
図1の植物栽培装置1の枠体10と実質的に同じある。棚板50、第1照明装置70および第2照明装置80は、それぞれ
図8の植物栽培装置3の棚板50、第1照明装置70および第2照明装置80と実質的に同じである。つまり、第2照明装置80が、隣り合う栽培容器40の間に設けられている。
この植物栽培装置4は、第2照明装置80が棚板50に載置されているため、植物に散布する水等を受ける可能性がある。しかし、水等の供給管を栽培容器40内に直接連結すれば、そのようなおそれも最小限にできる。この場合も、植物に対して光を上下から照射できるため、栽培する植物の下位葉の老化が防止できる。また第2照明装置80と培地との間には、栽培容器40が介在することになるため、劣化がしにくい。
【0036】
「植物栽培装置5」
図10bの植物栽培装置5は、枠体10と、その枠体に支持される棚板50と、栽培空間S内に吊り下げられる栽培容器40と、上方から植物に光を照射する第1照明装置70と、下方から植物に光を照射する第2照明装置80とを有する。
このように栽培容器40を上方から吊り下げるようにして支持してもよい。なお、栽培容器40は、複数の植物を支持するものであっても、1つずつ支持するものであってもよい。
【符号の説明】
【0037】
S 栽培空間
S1 空間
1、2、3、4、5 植物栽培装置
10 枠体
11 柱
12 桁
13 梁
20 棚板
20A 天板
20B 一番下の棚板
25 孔
26 パイプ
27 棚板
27a 溝
27b 連結板
27c 空調用孔
30、30A、30B 照明装置
30a 積層部
30b 封止材
31 第1照明部
31a 第1透明板
31b 第1導光板
31c 第1光源部
32 第2照明部
32a 第2透明板
32b 第2導光板
32c 第2光源
35 遮蔽部
36 枠体
37a 透明板
37b 反射板
37c 内部反射板
37d 光源
38a パネル
38b 光源
40 栽培容器
41 容器本体
42 蓋
42a 溝
42b 孔
50 棚板
60 栽培容器
61 栽培容器
61a 外へ基
62 連結板
62a 溝
62b 孔
62c 空調用孔
63 蓋
70 第1照明装置
80 第2照明装置
90 ダクト