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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124085
(43)【公開日】2022-08-25
(54)【発明の名称】シートスライド装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/07 20060101AFI20220818BHJP
【FI】
B60N2/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021021647
(22)【出願日】2021-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】598106326
【氏名又は名称】トヨタ車体精工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503225593
【氏名又は名称】株式会社緑技研
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白木 晋
(72)【発明者】
【氏名】中村 素久
(72)【発明者】
【氏名】仲 良史
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BA02
3B087BB03
3B087BB04
(57)【要約】
【課題】本明細書は、シートスライド装置に関し、アッパレールを円滑に移動させるローラまたは摺動部材の取り付け構造を工夫してローラまたは摺動部材の支持構造のコストを下げる。
【解決手段】本明細書が開示するシートスライド装置は、車体に取り付け可能なロアレールと、シートに取り付け可能であり、ロアレールに対してスライド可能に係合しているアッパレールを備える。アッパレールは、ロアレールの底板に接するローラまたは摺動部材と、ローラまたは摺動部材を支持する突起を備える。突起はアッパレールに一体に成形されている。ローラまたは摺動部材を支持する突起をアッパレールに一体に成形したのでローラまたは摺動部材の支持構造のコストを低減できる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に取り付け可能なロアレールと、
シートに取り付け可能であり、前記ロアレールに対してスライド可能に係合しているアッパレールと、
を備えており、
前記アッパレールは、前記ロアレールの底板に接するローラまたは摺動部材と、前記ローラまたは前記摺動部材を支持する突起を備えており、前記突起は前記アッパレールと一体に成形されている、シートスライド装置。
【請求項2】
前記突起の内側が空洞になっている、請求項1に記載のシートスライド装置。
【請求項3】
前記ローラは、前記突起に固定される内輪と、前記内輪の外側に位置する外輪と、前記内輪と前記外輪の間に配置されている複数の転動体と、を備えており、
前記突起は、前記内輪の側面に接する大径部と、前記内輪に挿通される小径部とを備えているとともに、前記突起の内側の前記空洞が、前記大径部に対応する大径孔部と、前記小径部に対応する小径孔部を備えている、請求項2に記載のシートスライド装置。
【請求項4】
前記突起の側面先端が押し広げられて前記内輪が固定されている、請求項3に記載のシートスライド装置。
【請求項5】
前記突起の先端が開口している、請求項1から4のいずれか1項に記載のシートスライド装置。
【請求項6】
前記突起は塑性加工で作られている、請求項1から5のいずれか1項に記載のシートスライド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、自動車のシートをスライドさせるシートスライド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シートをスライドさせるシートスライド装置は、車体に取り付け可能なロアレールと、シートの下部に取り付け可能なアッパレールを備えている。アッパレールはロアレールに対してスライド可能に係合している。アッパレールにはローラが取り付けられており、ローラはロアレールの底板に接する(例えば特許文献1)。ローラが回転することで、アッパレールは円滑にスライドする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-47777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のシートスライド装置では、ローラはピンでアッパレールに支持されている。ピンは、アッパレールの板を貫通している。本明細書は、ローラの取り付け構造を工夫し、ローラ(または摺動部材)の支持構造のコストを低減する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示するシートスライド装置は、車体に取り付け可能なロアレールと、シートに取り付け可能であり、ロアレールに対してスライド可能に係合しているアッパレールを備える。アッパレールは、ロアレールの底板に接するローラまたは摺動部材と、ローラまたは摺動部材を支持する突起を備える。突起はアッパレールと一体に成形されている。ローラまたは摺動部材を支持する突起をアッパレールと一体に成形するようにしたので、ローラまたは摺動部材の支持構造のコスト(突起の製造コスト)を低減することができる。
【0006】
突起の内側が空洞になっているとよい。突起の内側を空洞にすることで、突起の材料コストを低減できるとともに、突起を軽量化することができる。内側が空洞の突起をアッパレールに一体に成形するには、塑性加工(例えばプレス加工)が適している。塑性加工を採用することで、突起の製造コストを効果的に下げることができる。
【0007】
典型的なローラは、突起に固定される内輪と、内輪の外側に位置する外輪と、内輪と外輪の間に配置されている複数の転動体を備える。その場合、突起は、内輪の側面に接する大径部と、内輪に挿通される小径部を備えるとともに、突起の内側の空洞が、大径部に対応する大径孔部と、小径部に対応する小径孔部を備えているとよい。すなわち、突起の外側と内側がともに2段になっている。突起の外側と内側をともに2段にすることで、突起の剛性を高めることができ、ローラをしっかりと支持することができる。また、内輪の側面が大径部に接することで、アッパレールの側板と外輪の間に隙間が確保され、外輪が円滑に回転することができる。
【0008】
突起の側面先端が押し広げられて内輪が固定されていてもよい。ローラの内輪を簡単な構造で突起に固定することができ、ローラ支持構造の製造コストをさらに抑えることができる。突起の先端は開口していてもよい。
【0009】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例のシートスライド装置の側面図である。
図2】アッパレールとロアレールの斜視図である。
図3】シートスライド装置の側面図である。
図4図3のIV-IV線に沿った断面図である。
図5図4の破線矩形Vの範囲の拡大図である。
図6図4の破線矩形Vの範囲の拡大図である(ローラを仮想線で描画)。
図7】変形例の突起を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照して実施例のシートスライド装置2を説明する。図1に、自動車に取り付けられたシートスライド装置2の側面図を示す。シートスライド装置2は、ロアレール10とアッパレール20で構成されている。ロアレール10は長尺である。アッパレール20は、ロアレール10に対してその長手方向にスライド可能に取り付けられている。ロアレール10は車体のフロアパネル90に固定される。アッパレール20は、シート80のシートクッション81の下部に取り付けられる。アッパレール20は、不図示のフレームを介してシートクッション81の下部に取り付けられる。シートスライド装置2は、シートクッション81の下部の左右に夫々取り付けられる。図中の座標系のX方向がレール長手方向に相当する。Y方向がレール短手方向に相当する。図中の座標系の+Z方向が上方を示す。各座標軸とシートスライド装置2の各部との位置関係は、全ての図で同じである。
【0012】
不図示のフレームから前方へロックレバー83が延びている。アッパレール20は通常はロアレール10に対してロック(固定)されている。ユーザがロックレバー83を操作すると、アッパレール20のロックが解除され、アッパレール20(シート80)がロアレール10に対してスライド可能となる。
【0013】
図2に、アッパレール20をロアレール10から分離した斜視図を示す。まず、ロアレール10の形状を説明する。ロアレール10は、車体(フロアパネル90)に取り付けられる底板3と、一対の外縦板4と、一対の上板5と、一対の内縦板6を備える。一対の外縦板4は、レール短手方向(図中のY方向)で底板3の両端の夫々から上方に向かって延びている。一対の上板5は、夫々の外縦板4の上端からレール短手方向の中央へ向けて横方向に延びている。一対の内縦板6は、夫々の上板5の内側端から下方へ延びている。一対の内縦板6は、互いに対向している。一対の内縦板6のそれぞれには、レール長手方向に並んでいる複数のロック孔7が設けられている。一対の内縦板6の間で、ロアレール10は上方に向けて開口している。ロアレール10は、上面がレール長手方向に沿って細長く開口している。
【0014】
アッパレール20について説明する。アッパレール20は、本体下部22がロアレール10の内部に位置し、ロアレール10の開口を通じて本体上部21がロアレール10よりも上方へ突き出る。図2は、アッパレール20をロアレール10から分離した図であるので、本体下部22もロアレール10から離脱していることに留意されたい。
【0015】
アッパレール20の本体下部22のレール長手方向の中央において、ロックピン26がレール短手方向(Y方向)に突出している。ロックピン26がロアレール10のロック孔7に係合することで、アッパレール20がロアレール10に対して固定される。
【0016】
詳しい説明は省略するが、ロックピン26は、図1で示したロックレバー83に連動して本体下部22の内側へ後退する。すなわち、乗員がロックレバー83を引き上げると、ロックピン26が後退してロック孔7から外れ、アッパレール20のロックが解除され、アッパレール20がロアレール10に対して移動可能となる。
【0017】
アッパレール20の本体上部21の端にナット部材25が配置されている。シート80のフレームが、不図示のボルトでナット部材25に固定される。すなわちシート80がアッパレール20に固定される。ナット部材25は本体上部21のレール長手方向の両端に設けられている。
【0018】
アッパレール20の本体下部22は、レール長手方向からみてU字形状に湾曲している側板24を有している。U字形状の側板24において、レール短手方向(Y方向)でアッパレール20の中心に近い側の板をU字内板24aと称し、中心から遠い側の板をU字外板24bと称する。
【0019】
U字外板24bが、ロアレール10の外縦板4と内縦板6の間の空間に位置する。アッパレール20の側板24(U字外板24b)に、ローラ30が支持されている。ローラ30も、ロアレール10の外縦板4と内縦板6の間の空間に位置する。ローラ30の外周面がロアレール10の底板3に当接する。アッパレール20の移動に伴ってローラ30が回転し、アッパレール20が円滑に移動する。
【0020】
以下、ローラ30の支持構造を説明する。図3は、シートスライド装置2の前部の側面図である。図4に、図3のIV-IV線に沿った断面図を示す。図4は、レール長手方向(X方向)に直交する平面であってローラ30を支持する突起40を通過する平面でシートスライド装置2をカットした断面を示す。先に述べたように、ローラ30とアッパレール20のU字外板24bがロアレール10の内縦板6と外縦板4の間に位置し、ローラ30はU字外板24bに支持される。より詳しくは、ローラ30は、U字外板24bに設けられた突起40に支持される。突起40は、U字外板24bをプレス加工することで形成される。
【0021】
図4の破線矩形Vの範囲の拡大図を図5に示す。図6は、図5と同じ図であるが、突起40の形状を理解し易くするために、ローラ30を仮想線で描いた図である。ローラ30はアッパレール20の左右両側に設けられており、ローラ30の支持構造は左右で同じである。図4の左側におけるローラ30の支持構造は、図5図6に示す支持構造と同じである。
【0022】
ローラ30は、軸受けであり、図5に示すように、ローラ30は内輪31、外輪32、複数の転動体33で構成される。なお、図4ではローラ30を簡略化して描いてある。内輪31と外輪32はリングであり、内輪31と外輪32の間に複数の転動体33が挟まれる。内輪31が突起40に固定される。複数の転動体33が内輪31の周に沿って移動し、外輪32が円滑に回転する。
【0023】
突起40は、プレス加工で作られており、その内側に空洞50が形成されている。空洞50は、突起40が設けられているアッパレール20の側板24(U字外板24b)の側で開口している。突起40は、U字外板24bにパンチを押し当てることで形成される。あるいは、突起40は、深絞り加工で作られる。金属板にパンチを押し当てる加工法(張出し加工)、および、深絞り加工は、いずれもプレス加工の一種である。
【0024】
突起40は詳細には、U字外板24bに近い部位に形成されている大径部41と、大径部41から突起40の先端に向かって形成されている小径部42を含む(図5、6参照)。小径部42の外径は大径部41の外径よりも小さい。ローラ30の内輪31は小径部42に嵌合し、内輪31の側面が大径部41の側面41aに当接する。大径部41の外径は、ローラ30の外輪32の内径よりも小さい。大径部41はU字外板24bの側面から突出しており、外輪32とU字外板24bの間には隙間SPが確保される。それゆえ、外輪32はU字外板24bと接触せずに円滑に回転することができる。
【0025】
また、突起40の側面先端40aが突起の周方向の外側に押し広げられている。小径部42に嵌合した内輪31は、大径部41の側面41aと押し広げられた側面先端40aに挟まれ、突起40にしっかりと固定される。突起40の側面先端40aは、突起40の頭頂面にポンチを押し当てることで外側へ押し広げられる。突起40の側面先端40aを押し広げるという簡単な工程で内輪31を突起40(アッパレール20)に固定することができる。ローラ30の取り付けコストを抑えることができる。
【0026】
突起40の外形状が大径部41と小径部42で形成されているのに対応して突起40の内部の空洞50も、大径孔部51と小径孔部52を有する。別言すれば、大径部41に対応して大径孔部51が形成され、小径部42に対応して小径孔部52が形成される。先に述べたように、突起40は絞り加工で形成される。大径部41と小径部42(大径孔部51と小径孔部52)は、例えば、二段階の深絞り加工で形成される。
【0027】
突起40の利点について述べる。突起40は内部が空洞であるので軽量である。空洞50を有する突起40を採用することで、アッパレール20(シートスライド装置2)を軽量化することができる。突起40の材料コストも下げることができる。
【0028】
空洞50を有する突起40はプレス加工で作られる。プレス加工を採用することで突起40の製造コスト(ローラ支持構造のコスト)を抑えることができる。また、仮に、U字外板24bにピンを取り付けて突起を形成する場合、U字内板24aに作業用の孔を設ける必要がある。作業用の孔を通じてピンを固定する治具をピンに当てるためである。U字内板24aに作業用の孔を設けると、ローラ30の固定箇所付近における側板24の剛性が下がる。突起40をプレス加工で形成することで、U字内板24aに作業用の孔を設ける必要がなく、ローラ30の固定箇所付近の剛性低下を回避することができる。
【0029】
突起40はプレス加工(深絞り加工あるいは張出し加工)で作られる。別言すれば、側板24と突起40は同じ材料で作られているとともに継ぎ目なく(シームレス)につながっている。突起40は、型転写構造を備えた塑性加工で作られることが望ましい。突起40は、プレス加工以外の塑性加工、例えば、鍛造加工で作られてもよい。鍛造加工を採用する場合には、材料硬化(加工硬化)という利点が得られる。また、塑性加工で突起40を作るときの素材の温度は何度であってもよい。
【0030】
突起40は大径部41と小径部42を備えているとともに、その内部の空洞50も大径孔部51と小径孔部52を有する。突起40の外形状が2段になっているとともに、内部の空洞50も2段になっている。突起40の外側と内側をともに2段にすることで、突起40の剛性が高くなる。すなわち、ローラ30をしっかりと支持することができる。
【0031】
図7に、変形例の突起140を示す。図7は、図5に対応する拡大断面図である。突起140の先端が開口しており、突起140の内側の空洞50が突起140の外側と連通している。この変形例のように、突起140の先端は開口していてもよい。この場合、突起140の先端の開口にポンチを押し当てることで、側面先端140aを押し広げることができる。ローラ30の内輪31の内側に突起140の小径部142が挿通され、内輪31は大径部141の側面と側面先端140aの間に挟まれる。
【0032】
実施例で説明した技術に関する留意点を述べる。突起40は、アッパレール20の本体下部22の側板24に一体に成形されている。アッパレール20が複数の部品で構成されている場合、突起40は、アッパレール20を構成する複数の部品のいずれかに一体に成形されていればよい。例えば、側板24に金属製のブラケットあるいは金属製の補強板が組み付けられる場合、突起40は、ブラケットあるいは補強板に対して一体に成形されていてもよい。いずれの場合も、突起40はアッパレール20に一体に成形される。
【0033】
ローラ30の代わりに摺動部材が突起40に支持されていてもよい。摺動部材は、底面を有する直方体であったり、あるいは、アッパレール20の側方から見て台形の形状である。アッパレール20がロアレール10に対して移動する際、直方体の摺動部材の底面、あるいは台形の摺動部材の底面がロアレール10の底板3に対して摺動する。摺動部材は、レール短手方向(図中のY方向)に貫通孔を有しており、その貫通孔に突起40が嵌合するように構成されていてもよい。別言すれば、摺動部材は揺動可能に突起40に支持されていてもよい。摺動部材が揺動することで、ロアレール10の底板3のうねりに対しても摺動部材は良く追従するようになる。
【0034】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独で、あるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0035】
2 :シートスライド装置
3 :底板
4 :外縦板
5 :上板
6 :内縦板
7 :ロック孔
10 :ロアレール
20 :アッパレール
21 :本体上部
22 :本体下部
24 :側板
24a:U字内板
24b:U字外板
25 :ナット部材
26 :ロックピン
30 :ローラ
31 :内輪
32 :外輪
33 :転動体
40、140:突起
40a、140a:側面先端
41、141:大径部
42、142:小径部
50 :空洞
51 :大径孔部
52 :小径孔部
80 :シート
81 :シートクッション
83 :ロックレバー
90 :フロアパネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7