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特開2022-124150三次元造形物の製造方法およびシート裁断装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124150
(43)【公開日】2022-08-25
(54)【発明の名称】三次元造形物の製造方法およびシート裁断装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 3/16 20060101AFI20220818BHJP
   B29C 64/245 20170101ALI20220818BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20220818BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220818BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20220818BHJP
   B22F 3/105 20060101ALI20220818BHJP
   C22C 38/00 20060101ALN20220818BHJP
【FI】
B22F3/16
B29C64/245
B29C64/153
B33Y10/00
B33Y30/00
B22F3/105
C22C38/00 302N
C22C38/00 302R
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021021746
(22)【出願日】2021-02-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000132725
【氏名又は名称】株式会社ソディック
(72)【発明者】
【氏名】樋口 茂雄
【テーマコード(参考)】
4F213
4K018
【Fターム(参考)】
4F213AC04
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL13
4F213WL56
4F213WL73
4K018AA24
4K018BA16
4K018CA44
4K018EA51
4K018EA60
4K018FA06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】歪みや破損を生じさせることなく、固定プレートへの薄板の脱着を容易に行うことができる三次元造形物の製造方法を提供する。
【解決手段】厚さ1mm以下の薄板の上に板厚方向に複数の貫通孔である接着剤投入孔が形成された固定プレートを載置し薄板を固定プレートの所定位置に位置決めする位置決め工程と、接着剤投入孔に接着剤を滴下し固定プレートと薄板とを接着する接着工程と、固定プレートおよび薄板を薄板が上になる位置で積層造形装置の鉛直方向に移動可能に構成された造形テーブルに固定する載置工程と、積層造形装置により薄板の上に造形材料からなる複数の固化層を形成し薄板と固化層とが一体となった三次元造形物を得る積層造形工程と、積層造形装置から固定プレートおよび三次元造形物を取り出し接着剤に対応したはがし液を使用して薄板と固定プレートとの接着を解除する接着解除工程と、を備える、三次元造形物の製造方法が提供される。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ1mm以下の薄板の上に板厚方向に複数の貫通孔である接着剤投入孔が形成された固定プレートを載置し、前記薄板を前記固定プレートの所定位置に位置決めする位置決め工程と、
前記位置決め工程後、前記接着剤投入孔に接着剤を滴下し、前記固定プレートと前記薄板とを接着する接着工程と、
前記接着工程後、前記固定プレートおよび前記薄板を、前記薄板が上になる位置で積層造形装置の鉛直方向に移動可能に構成された造形テーブルに固定する載置工程と、
前記載置工程後、前記積層造形装置により前記薄板の上に造形材料からなる複数の固化層を形成し、前記薄板と前記固化層とが一体となった三次元造形物を得る積層造形工程と、
前記積層造形工程後、前記積層造形装置から前記固定プレートおよび前記三次元造形物を取り出し、前記接着剤に対応したはがし液を使用して前記薄板と前記固定プレートとの接着を解除する接着解除工程と、を備える、三次元造形物の製造方法。
【請求項2】
前記積層造形工程は、前記造形テーブルに前記造形材料からなる材料層を形成する材料層形成工程と、レーザ光または電子ビームを前記材料層に照射して固化層を形成する固化工程と、を繰り返す、請求項1に記載の三次元造形物の製造方法。
【請求項3】
前記接着解除工程後、前記三次元造形物に対して二次加工を行う二次加工工程をさらに備える、請求項1または請求項2に記載の三次元造形物の製造方法。
【請求項4】
前記位置決め工程において、
位置決め部材が取り付けられた位置決めプレートに前記薄板が載置され、
前記薄板が前記位置決め部材に当接されて位置決めされ、
前記固定プレートが前記位置決め部材に嵌合されて位置決めされる、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の三次元造形物の製造方法。
【請求項5】
前記載置工程において、
取付プレートに前記固定プレートが固定され、
前記取付プレートが前記造形テーブルと接するよう、前記取付プレート、前記固定プレート、前記薄板が前記造形テーブルに固定される、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の三次元造形物の製造方法。
【請求項6】
前記取付プレートは、前記固定プレートよりも底面積が大きい、請求項5に記載の三次元造形物の製造方法。
【請求項7】
前記積層造形工程時に前記薄板が水平となるよう、前記載置工程の前に前記取付プレートの裏面を加工する裏面加工工程をさらに備える、請求項5または請求項6に記載の三次元造形物の製造方法。
【請求項8】
前記薄板の熱膨張係数は、5.0×10-6/℃以下である、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の三次元造形物の製造方法。
【請求項9】
前記薄板は、インバー材からなる、請求項8に記載の三次元造形物の製造方法。
【請求項10】
前記薄板の前記厚さは、0.5mm以下である、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の三次元造形物の製造方法。
【請求項11】
円筒形状の芯材と、前記芯材に巻き付けた刃部と、を有するカッターを備えるシート裁断装置の製造方法であって、
前記刃部を前記三次元造形物として、請求項1から請求項10のいずれか1項の三次元造形物の製造方法により製造した、シート裁断装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元造形物の製造方法に関する。また、本発明は、三次元造形物の製造方法を用いるシート裁断装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元造形物の積層造形法としては種々の方式が知られている。例えば、粉末床溶融結合を実施する積層造形装置は、粉末の造形材料を均して材料層を形成し、レーザ光や電子ビームを照射して材料層を焼結または溶融させ固化層を形成する。材料層の形成と固化層の形成が繰り返されて複数の固化層が積層され、所望の三次元造形物が製造される。
【0003】
特許文献1に開示されるように、一般的には、固化層はベースプレートと呼ばれる板状部材を土台にして形成される。ベースプレートは鉛直方向に移動可能に構成された造形テーブルに固定され、ベースプレート上に材料層および固化層が形成される。固化層は、ベースプレートと互いに固着される。積層造形後、ベースプレートは必要に応じて固化層と切り離されるが、ベースプレートを含んで最終的な製品とすることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6564111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のベースプレートよりも薄い薄板を土台として、薄板上に固化層を積層造形し、薄板と複数の固化層とが一体となった三次元造形物を製造したいという需要がある。薄板を直接造形テーブルに固定するのは困難であるので、薄板を板状部材である固定プレートに取り付け、固定プレートを介して造形テーブル上に薄板を載置することが考えられる。
【0006】
このとき、積層造形中に薄板が歪まないように、薄板を固定プレートに取り付ける必要がある。また、積層造形後に、薄板と固化層とからなる三次元造形物を固定プレートから容易に、破損させずに取り外すことが求められる。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、薄板と固化層からなる三次元造形物を製造するにあたり、歪みや破損を生じさせることなく、固定プレートへの薄板の脱着を容易に行うことができる三次元造形物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、厚さ1mm以下の薄板の上に板厚方向に複数の貫通孔である接着剤投入孔が形成された固定プレートを載置し、薄板を固定プレートの所定位置に位置決めする位置決め工程と、位置決め工程後、接着剤投入孔に接着剤を滴下し、固定プレートと薄板とを接着する接着工程と、接着工程後、固定プレートおよび薄板を、薄板が上になる位置で積層造形装置の鉛直方向に移動可能に構成された造形テーブルに固定する載置工程と、載置工程後、積層造形装置により薄板の上に造形材料からなる複数の固化層を形成し、薄板と固化層とが一体となった三次元造形物を得る積層造形工程と、積層造形工程後、積層造形装置から固定プレートおよび三次元造形物を取り出し、接着剤に対応したはがし液を使用して薄板と固定プレートとの接着を解除する接着解除工程と、を備える、三次元造形物の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
固定プレートには板厚方向に複数の貫通孔である接着剤投入孔が形成されており、接着剤投入孔に接着剤が滴下されて固定プレートと薄板との固定が行われる。そのため、薄板と固定プレートとの固定を容易に行うことができる。また、薄板を含む三次元造形物を固定プレートから取り外す際も、貫通孔にはがし液を供給することで、三次元造形物に負荷を与えることなく、容易に固定を解除できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】積層造形装置の概略構成図である。
図2】照射装置の概略構成図である。
図3】サブプレートの上面図である。
図4図3のA-A矢視断面図である。
図5】固定プレートの上面図である。
図6図5のB-B矢視断面図である。
図7】本実施形態の三次元造形物の製造方法のフローチャートである。
図8】位置決め工程時のサブプレート、薄板および固定プレートの上面図である。
図9】位置決め工程時のサブプレート、薄板および固定プレートの側面断面図である。
図10】載置工程時のサブプレート、薄板および固定プレートの上面図である。
図11】載置工程時のサブプレート、薄板および固定プレートの側面断面図である。
図12】シート裁断装置のカッターの外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に説明される各種変形例は、それぞれ任意に組み合わせて実施することができる。
【0012】
所望の三次元造形物85は、例えば、図1に示される積層造形装置1によって積層造形される。本実施形態の積層造形装置1は、粉末床溶融結合を実施する装置である。積層造形装置1は、チャンバ11と、材料層形成装置2と、照射装置3と、を備える。
【0013】
チャンバ11は、実質的に密閉されるように構成され、所望の三次元造形物85が形成される領域である造形領域Rを覆う。造形中、チャンバ11には不図示の不活性ガス供給装置から不活性ガスが供給され、所定濃度の不活性ガスがチャンバ11内に充満する。不活性ガス供給装置は、例えば、空気から不活性ガスを生成する不活性ガス生成装置または不活性ガスが貯留されるガスボンベである。また、固化層83の形成時に発生するヒュームを含んだ不活性ガスは、チャンバ11内から排出される。望ましくは、チャンバ11から排出された不活性ガスは、不図示のヒュームコレクタによりヒュームが除去された上でチャンバ11内に返送される。ヒュームコレクタは、例えば、電気集塵機またはフィルタである。不活性ガスは、材料層81や固化層83と実質的に反応しないガスをいい、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等から造形材料の種類に応じて適当なものが選択される。
【0014】
材料層形成装置2はチャンバ11内に設けられ、所定厚みの材料層81を形成する。材料層形成装置2は、造形領域Rを有するベース台21と、ベース台21上に配置されるリコータヘッド23と、を含む。リコータヘッド23は、任意のアクチュエータを有する不図示のリコータヘッド駆動装置により水平方向に移動可能に構成される。造形領域Rには、造形テーブル25が配置される。造形テーブル25の上面には、ボルト77と螺合する複数の締結穴が所定の位置に設けられている。造形テーブル25は、任意のアクチュエータを有する造形テーブル駆動装置27により鉛直方向に移動可能に構成される。
【0015】
造形時には、固化層83を形成する土台として薄板6が造形テーブル25上に配置され、薄板6の上に1層目の材料層81が形成される。本実施形態においては、薄板6は、サブプレート4および固定プレート5を介して、造形テーブル25に固定される。
【0016】
リコータヘッド23は、材料収容部と、材料供給口と、材料排出口と、を含む。材料収容部は、造形材料を貯留する。材料供給口は、材料収容部の上面に設けられ、不図示の材料供給装置から材料収容部に供給される造形材料の受口となる。材料排出口は、材料収容部の底面に設けられ、材料収容部内の造形材料を排出する。材料排出口は、リコータヘッド23の移動方向に直交する水平方向に延びるスリット形状を有する。リコータヘッド23の側面には、造形材料を均して材料層81を形成するブレードが設けられる。リコータヘッド23は、材料収容部内に収容した造形材料を材料排出口から排出しながら造形領域R上を水平方向に往復移動する。このとき、ブレードは排出された造形材料を平坦化して材料層81を形成する。
【0017】
本実施形態においては、造形材料は、例えば金属の粉体である。特に、最終製品を製造するにあたり、三次元造形物85を曲げる必要がある場合には、靭性の比較的高い造形材料が求められる。本実施形態においては、コバルトを実質的に含まないマルエージング鋼相当の鋼材(以下、Coフリーマルエージング鋼)が使用される。Coフリーマルエージング鋼は、一例として、0.03重量%以下の炭素と、0.4重量%以下の珪素と、0.12重量%以下のマンガンと、17重量%以上19重量%以下のニッケルと、1.5重量%以上2.5重量%以下のモリブデンと、0.5重量%以上2.0重量%以下のチタンと、1.5重量%以下のアルミニウムと、0.03重量%以下の酸素と、を含み、残部は鉄と不可避不純物とからなる。造形材料は他の材料でもよく、例えば、マルエージング鋼が使用されてもよい。マルエージング鋼は、一例として、0.03重量%以下の炭素と、0.12重量%以下の珪素と、0.12重量%以下のマンガンと、16.5重量%以上19.0重量%以下のニッケルと、7.0重量%以上9.5重量%以下のコバルトと、4.5重量%以上5.2重量%以下のモリブデンと、0.8重量%以下のチタンと、0.15重量%以下アルミニウムと、を含み、残部は鉄と不可避不純物とからなる。
【0018】
照射装置3は、チャンバ11の上方に設けられる。照射装置3は、造形領域R上に形成される材料層81の所定の照射領域にレーザ光Lを照射して、照射位置の材料層81を溶融または焼結させ、固化層83を形成する。照射領域は、造形領域R内に存在し、所定の分割層における三次元造形物の輪郭形状で囲繞される領域とおおよそ一致する。図2に示されるように、照射装置3は、光源31と、コリメータ33と、フォーカス制御ユニット35と、走査装置37と、を含む。
【0019】
光源31はレーザ光Lを生成する。ここで、レーザ光Lは、材料層81を焼結または溶融可能なものであればその種類は限定されず、例えば、ファイバレーザ、COレーザ、YAGレーザ、グリーンレーザまたは青色レーザである。コリメータ33は、光源31より出力されたレーザ光Lを平行光に変換する。フォーカス制御ユニット35は、焦点調節レンズと、焦点調節レンズを前後に移動させるレンズアクチュエータとを有し、光源31より出力されたレーザ光Lを所望のスポット径に調整する。走査装置37は、例えば、ガルバノスキャナである。走査装置37は、X軸ガルバノミラー37xと、X軸ガルバノミラー37xを回転させるX軸ミラーアクチュエータと、Y軸ガルバノミラー37yと、Y軸ガルバノミラー37yを回転させるY軸ミラーアクチュエータと、を有する。X軸ガルバノミラー37xおよびY軸ガルバノミラー37yは回転角度が制御され、光源31より出力されたレーザ光Lを2次元走査する。
【0020】
X軸ガルバノミラー37xおよびY軸ガルバノミラー37yを通過したレーザ光Lは、チャンバ11の上面に設けられたウインドウ13を透過して、造形領域Rに形成された材料層81に照射される。ウインドウ13は、レーザ光Lを透過可能な材料で形成される。例えば、レーザ光LがファイバレーザまたはYAGレーザの場合、ウインドウ13は石英ガラスで構成可能である。
【0021】
チャンバ11の上面には、ウインドウ13を覆うように汚染防止装置15が設けられる。汚染防止装置15は、円筒状の筐体と、筐体内に配置された円筒状の拡散部材を含む。筐体と拡散部材の間に不活性ガス供給空間が設けられる。また、拡散部材の内側の筐体の底面には、開口部が設けられる。拡散部材には多数の細孔が設けられており、不活性ガス供給空間に供給された清浄な不活性ガスは細孔を通じて清浄室に充満される。そして、清浄室に充満された清浄な不活性ガスは、開口部を通じて汚染防止装置15の下方に向かって噴出される。このようにして、ウインドウ13に、ヒュームが付着することが防止される。
【0022】
なお、本実施形態の照射装置3はレーザ光Lを照射して固化層83を形成するように構成されるが、照射装置は電子ビームを照射するものであってもよい。例えば、照射装置は、電子を放出するカソード電極と、電子を収束して加速するアノード電極と、磁場を形成して電子ビームの方向を一方向に収束するソレノイドと、被照射体である材料層81と電気的に接続されカソード電極との間に電圧を印加するコレクタ電極と、を有するよう構成されてもよい。
【0023】
積層造形装置1は、固化層83の表面や不要部分に対して切削を行う切削装置を備えていてもよい。切削装置は、例えば、加工ヘッドと、加工ヘッドをチャンバ11内の所望の位置に移動させる加工ヘッド駆動装置と、加工ヘッドに設けられ切削工具を把持して回転させるスピンドルと、を含む。
【0024】
本実施形態において固化層83の土台となる薄板6は、サブプレート4を使用して固定プレート5に位置決めされ、固定プレート5に接着される。また、薄板6は、サブプレート4および固定プレート5を介して、造形テーブル25に固定される。換言すれば、本実施形態においては、サブプレート4は、薄板6を位置決めする位置決めプレートおよび薄板6および固定プレート5を造形テーブル25に固定する取付プレートとして使用される。
【0025】
図3および図4に示されるように、サブプレート4は、位置決め穴41と、締結穴43と、締結孔45とが、それぞれ板厚方向に形成された板状部材である。本実施形態のサブプレート4は機械構造用炭素鋼S50Cからなるが、他の材料から構成されてもよい。位置決め穴41は、ノックピン等の位置決め部材71が挿通される有底穴である。位置決め穴41は少なくとも2つ設けられればよく、本実施形態においてはサブプレート4に4つの位置決め穴41が形成されている。位置決め時には位置決め穴41に位置決め部材71が挿通され、位置決め部材71に薄板6を当接させることにより薄板6の位置決めが行われる。締結穴43は、サブプレート4と固定プレート5とを締結するボルト75が螺合する有底穴である。締結孔45は、サブプレート4と造形テーブル25とを締結するボルト77が挿通される貫通孔である。
【0026】
なお、本実施形態においては、位置決めプレートおよび取付プレートを兼用するものとしてサブプレート4が使用されるが、それぞれ別体の位置決めプレートおよび取付プレートが使用されてもよい。すなわち、位置決め部材71が挿通される位置決め穴が形成された板状部材を位置決めプレートとして使用し、サブプレート4と固定プレート5とを締結するボルト75が螺合する締結穴43およびサブプレート4と造形テーブル25とを締結するボルト77が挿通される締結孔45が形成された板状部材を取付プレートとして使用してもよい。
【0027】
また、本実施形態においては、位置決め穴41に挿通された位置決め部材71により薄板6の位置決めを行うが、薄板6の位置決めは他の方法でなされてもよい。例えば、位置決めプレート(としてのサブプレート4)に薄板6と同形状の凹部を形成し、凹部に薄板6を嵌め込むことで薄板6の位置決めが行われてもよい。あるいは、薄板6に位置決め部材71を挿通させる孔を形成してもよければ、位置決めプレートを使用せず、直接固定プレート5と薄板6とを位置決め部材71で位置合わせしてもよい。
【0028】
また、本実施形態においては、取付プレート(としてのサブプレート4)を介して固定プレート5および薄板6を造形テーブル25に固定するが、固定プレート5を直接造形テーブル25に固定してもよい。但し、取付プレートを使用することで、造形テーブル25の締結孔の位置を気にせず、より固定プレート5を小さく構成することができ、望ましい。すなわち、取付プレートは、固定プレート5よりも底面積が大きいことが望ましい。固定プレート5を比較的小さく構成することで、固定プレート5と薄板6との接着を解除するときに使用するはがし液の量を少なくすることができる。また、造形時に薄板6の上面の平行度を高めたい場合、取付プレートの裏面を加工することで、薄板6をより水平に調整することができる。
【0029】
図5および図6に示されるように、固定プレート5は、接着剤投入孔51と、位置決め孔53と、締結孔55とが、それぞれ板厚方向に形成された板状部材である。本実施形態の固定プレート5は合金工具鋼SKD11からなるが、他の材料から構成されてもよい。接着剤投入孔51は、接着剤が滴下される貫通孔である。接着剤投入孔51は、固定プレート5の全面にわたって複数設けられることが好ましく、本実施形態においては固定プレート5に387個の接着剤投入孔51が形成されている。位置決め孔53は、位置決め部材71が挿通される貫通孔である。位置決め孔53は、サブプレート4の位置決め穴41と対応する箇所に形成されている。締結孔55は、サブプレート4と固定プレート5とを締結するボルト75が挿通される貫通孔である。
【0030】
薄板6は、厚さ1mm以下、より好ましくは厚さ0.5mm以下の、金属板である。薄板6は可撓性を有していてもよい。薄板6は、従来のベースプレートに比べて、固化時の熱の影響を受けやすい。そのため、薄板6の熱膨張係数は低いことが望ましく、具体的に、5.0×10-6/℃以下であることが望ましい。具体的に、本実施形態の薄板6は、低熱膨張合金の一種である、インバー材(Fe-36Ni合金)からなる。インバー材は、一例として、0.4重量%以下の炭素と、0.7重量%以下のマンガンと、35重量%以上38重量%以下のニッケルと、を含み、残部は鉄と不可避不純物とからなる。インバー材の熱膨張係数は2.0×10-6/℃以下であり、例えば約1.2×10-6/℃である。
【0031】
ここで、本実施形態の三次元造形物の製造方法を説明する。図7に示されるように、本実施形態の三次元造形物の製造方法は、位置決め工程と、接着工程と、裏面加工工程と、載置工程と、積層造形工程と、接着解除工程と、二次加工工程と、を備える。
【0032】
はじめに、位置決め工程(S11)が行われる。まず、位置決めプレートであるサブプレート4の位置決め穴41に位置決め部材71が挿通され、サブプレート4の上に薄板6が載置される。次に、位置決め部材71に薄板6を当接させ、薄板6が所定位置に位置決めされる。そして、固定プレート5の位置決め孔53と位置決め部材71が嵌合するように、固定プレート5が薄板6の上に載置され、固定プレート5が所定位置に位置決めされる。このようにして、薄板6が固定プレート5の所定位置に位置決めされる。
【0033】
位置決め工程後、接着工程(S12)が行われる。サブプレート4、薄板6、固定プレート5が下から順に重なった状態で、固定プレート5の接着剤投入孔51から接着剤が滴下される。接着剤は接着剤投入孔51内で固化して接着層73となり、図8および図9に示されるように、固定プレート5と薄板6とが接着される。接着剤は固定プレート5および薄板6を接着可能である限りにおいて任意の種類のものであってよいが、耐熱性があり、対応するはがし液により除去可能であるものが望ましい。本実施形態においては、接着剤としてシアノアクリレート系接着剤が使用され、対応するはがし液は例えばアセトンである。接着工程後、位置決めプレートであるサブプレート4から互いに接着された固定プレート5および薄板6が取り外され、サブプレート4から位置決め部材71が取り外される。
【0034】
このような位置決め工程および接着工程によれば、容易に薄板6を固定プレート5に位置決めして固定することができる。また、薄板6の裏面が固定プレート5に接着されるので、薄板6の周縁を固定プレート5に接着するよりも強固に接着ができ、また、接着層73が材料層81の形成の妨げにならない。
【0035】
ここで、必要に応じて、薄板6の平行度が測定される(S13)。まず、固定プレート5および薄板6が、薄板6が上になる位置で、ボルト75により取付プレートであるサブプレート4に締結される。そして、サブプレート4、固定プレート5および薄板6が平坦な場所に設置され、マイクロメーター等を使用して薄板6の上面の平行度が測定される。但し、薄板6に高い平行度が求められない場合、本工程は省略されてもよい。
【0036】
薄板6の上面の平行度を測定し、薄板6が十分な平行度を有していない場合、裏面加工工程(S14)が行われる。現在の薄板6の平行度のデータを基にして、取付プレートであるサブプレート4の裏面、すなわち、固定プレート5および薄板6が取り付けられている面とは逆側の面に対して、薄板6が水平となるよう加工が行われる。サブプレート4の裏面を加工する方法は任意でよいが、例えば、研削装置を使用して加工が行われる。このようにして、積層造形工程時に薄板6が水平となるように調整される。
【0037】
裏面加工工程後、または裏面加工工程を省略した場合は接着工程後、載置工程(S15)が行われる。図10および図11に示されるように、薄板6が接着された固定プレート5がボルト75によりサブプレート4に締結され、サブプレート4がボルト77により造形テーブル25に締結される。このようにして、取付プレートであるサブプレート4、固定プレート5および薄板6が、薄板6が上になる位置で、積層造形装置1の造形テーブル25に固定される。
【0038】
載置工程後、積層造形工程が行われる。本実施形態の積層造形工程は、積層造形装置1を使用して、材料層形成工程(S16)と、固化工程(S17)とを、所望の数の固化層83が得られるまで繰り返す。
【0039】
材料層形成工程においては、まず造形テーブル25が所定厚みの材料層81が形成できる適切な高さに調整され、リコータヘッド23が造形領域R上を水平方向に移動する。リコータヘッド23から撒布された造形材料はブレードによって均され、造形テーブル25上に造形材料からなる材料層81が形成される。
【0040】
固化工程においては、照射装置3がレーザ光Lを材料層81の所定の照射領域に照射し、固化層83を形成する。前述の通り、レーザ光Lに代えて電子ビームで固化層83の形成が行われてもよい。
【0041】
以上に説明した材料層形成工程および固化工程が、所望の数の固化層83が形成されるまで繰り返される(S18)。薄板6と、薄板6の上に形成された複数の固化層83とは、互いに固着する。このようにして、積層造形装置1により薄板6の上に造形材料からなる複数の固化層83が形成され、薄板6と固化層83とが一体となった三次元造形物85が得られる。
【0042】
なお、積層造形装置1が切削装置を備えている場合、所定数の固化層83が形成される毎に、固化層83の表面に対して切削を行う切削工程が実施されてもよい。
【0043】
積層造形工程後、接着解除工程(S19)が行われる。まず、取付プレートであるサブプレート4から、固定プレート5と三次元造形物85とが取り外される。そして、接着剤投入孔51内の接着層73に対し、はがし液が使用される。例えば、はがし液が貯留された容器の中に、固定プレート5および三次元造形物85を浸漬させ、接着層73にはがし液を供給する。はがし液により接着層73は溶解され、薄板6を含む三次元造形物85と、固定プレート5との接着が解除される。このとき、三次元造形物85に負荷を与えることなく、固定プレート5から三次元造形物85を取り外すことができるので、三次元造形物85に歪みや破損が発生しにくい。
【0044】
接着解除工程後、三次元造形物85の用途に応じて、二次加工工程(S20)が行われてもよい。例えば、三次元造形物85がマシニングセンタ等任意の二次加工機に移設され、三次元造形物85に対して所望の二次加工が行われる。なお、三次元造形物85を二次加工機に載置するにあたっては、例えばマグネットクランプで装置内に固定される。また、積層造形装置1が切削装置を備えている場合、積層造形装置1を二次加工機として使用して二次加工工程を実施してもよい。
【0045】
本発明は、既にいくつかの例が具体的に示されているように、図面に示される実施形態の構成に限定されず、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で種々の変形または応用が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本実施形態の三次元造形物の製造方法は、シート裁断装置の製造に利用することができる。シートカッターは、円筒形状の芯材91と、芯材91に巻き付けた刃部と、を有するカッター9を備える。シート裁断装置は、シールやステッカー等のシート上においてカッター9を転がして、シートを所望の形状に裁断する。
【0047】
前述した三次元造形物の製造方法を使用して、カッター9の刃部を作成する。例えば、薄板6には厚さ0.3mmのインバー材が用いられ、造形材料にはCoフリーマルエージング鋼が用いられる。積層造形装置1により薄板6上に所望の形状の固化層83が形成され、二次加工機により固化層83の上端は鋭利に加工される。このようにして得られた三次元造形物85はカッター9の刃部として使用される。図12に示されるように、三次元造形物85が芯材91に巻き付けられて固定され、シート裁断装置のカッター9が製造される。
【0048】
従来、このような刃部を製造するにあたってはエッチング法が用いられていたが、本実施形態の三次元造形物の製造方法を用いることで、エッチング液を使用せずに製造を行うことができる。本製造方法によれば、エッチング液およびその交換・廃棄に係るコストを抑え、安全性が高く、環境負荷が低い方法で刃部を製造できる。
【符号の説明】
【0049】
1 積層造形装置
4 サブプレート
5 固定プレート
6 薄板
9 カッター
25 造形テーブル
51 接着剤投入孔
81 材料層
83 固化層
85 三次元造形物
91 芯材
L レーザ光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2021-10-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図7
【補正方法】変更
【補正の内容】
図7
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図8
【補正方法】変更
【補正の内容】
図8