(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124152
(43)【公開日】2022-08-25
(54)【発明の名称】頭部のフケ、かゆみ又は脱毛の予防又は軽減剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9728 20170101AFI20220818BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20220818BHJP
A61K 8/9794 20170101ALI20220818BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20220818BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20220818BHJP
A61K 35/745 20150101ALI20220818BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20220818BHJP
A61K 36/899 20060101ALI20220818BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220818BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20220818BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220818BHJP
A61K 35/74 20150101ALI20220818BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20220818BHJP
【FI】
A61K8/9728
A61K8/44
A61K8/9794
A61Q5/02
A61Q5/12
A61K35/745
A61K31/198
A61K36/899
A61P17/00
A61P17/14
A61P43/00 121
A61K35/74 A
A61K35/74 G
A23L33/135
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021021748
(22)【出願日】2021-02-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】500101243
【氏名又は名称】株式会社ファーマフーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】中村 唱乃
(72)【発明者】
【氏名】山下 裕輔
(72)【発明者】
【氏名】坂下 真耶
(72)【発明者】
【氏名】金 武祚
【テーマコード(参考)】
4B018
4C083
4C087
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4B018MD19
4B018MD49
4B018MD87
4B018ME14
4B018MF13
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4C083AA031
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4C083AC581
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4C083CC33
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4C087AA01
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4C087NA14
4C087ZA89
4C087ZA92
4C087ZC75
4C088AB74
4C088AC04
4C088AC14
4C088CA25
4C088MA02
4C088MA63
4C088NA05
4C088NA14
4C088ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA53
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4C206MA83
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA89
4C206ZA92
4C206ZC75
(57)【要約】
【課題】 本発明の目的は、表皮ブドウ球菌の増殖を促進、黄色ブドウ球菌の増殖を抑制し、菌叢を改善し、又は、頭部のフケ、かゆみ若しくは脱毛を予防若しくは軽減できる組成物又は剤を提供することである。
【解決手段】ビフィズス菌又はその培養液、グルタミン酸若しくはその重合体又はその塩、及び、米糠由来の発酵生産物からなる群から選択される2以上を含有することを特徴とする、組成物、並びに、当該組成物を含有する表皮ブドウ球菌増殖促進、黄色ブドウ球菌増殖抑制、菌叢改善剤、又は頭部のフケ、かゆみ若しくは脱毛の予防若しくは軽減剤。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビフィズス菌又はその培養液、グルタミン酸若しくはその重合体又はその塩、及び、米糠由来の発酵生産物からなる群から選択される2以上を含有することを特徴とする組成物。
【請求項2】
ビフィズス菌又はその培養液、グルタミン酸若しくはその重合体又はその塩、及び、米糠由来の発酵生産物を含有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
皮膚に適用されることを特徴とする請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
頭皮に適用されることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
化粧品、医薬品、医薬部外品、雑貨又は食品であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
シャンプー又はコンディショナーであることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の組成物を含有することを特徴とする表皮ブドウ球菌増殖促進、黄色ブドウ球菌増殖抑制又は菌叢改善剤。
【請求項8】
請求項1~6のいずれかに記載の組成物を含有することを特徴とする頭部のフケ、かゆみ又は脱毛の予防又は軽減剤。
【請求項9】
ビフィズス菌又はその培養液、グルタミン酸若しくはその重合体又はその塩、及び、米糠由来の発酵生産物を含有することを特徴とする請求項7に記載の剤。
【請求項10】
ビフィズス菌又はその培養液、グルタミン酸若しくはその重合体又はその塩、及び、米糠由来の発酵生産物を含有することを特徴とする請求項8に記載の剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭部のフケ、かゆみ又は脱毛の予防又は軽減剤等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、キダチキンバイ及びタコノキ属植物抽出物から選択される1種又は2種以上と、ニガリを有効成分とする、皮膚常在菌の生態系バランス調整剤が開示されている。特許文献2には、オウレン抽出物を有効成分とする皮膚常在菌正常化剤が開示されている。特許文献3には、リタの果実からの抽出物を含有する皮膚常在菌バランスを改善するための皮膚洗浄料が開示されている。
【0003】
しかしながら、ビフィズス菌又はその培養液、グルタミン酸若しくはその重合体若しくはその塩、米糠由来の発酵生産物、又はこれらの2以上の組み合わせが、表皮ブドウ球菌の増殖を促進し、黄色ブドウ球菌の増殖を抑制し、皮膚等の常在菌叢を改善し、又は、頭部のフケ、かゆみ若しくは脱毛を予防若しくは軽減できることについては、知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-153800号公報
【特許文献2】特開2010-202604号公報
【特許文献3】特開2017-7984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、表皮ブドウ球菌の増殖を促進し、黄色ブドウ球菌の増殖を抑制し、菌叢を改善し、又は、頭部のフケ、かゆみ若しくは脱毛を予防若しくは軽減できる組成物又は剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、ビフィズス菌又はその培養液、グルタミン酸若しくはその重合体若しくはその塩、米糠由来の発酵生産物、又はこれらの2以上の組み合わせが、表皮ブドウ球菌の増殖を促進し、黄色ブドウ球菌の増殖を抑制し、菌叢を改善し、又は、頭部のフケ、かゆみ若しくは脱毛を予防若しくは軽減できることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の各発明を包含する。
〔1〕ビフィズス菌又はその培養液、グルタミン酸若しくはその重合体又はその塩、及び、米糠由来の発酵生産物からなる群から選択される2以上を含有することを特徴とする組成物。
〔2〕ビフィズス菌又はその培養液、グルタミン酸若しくはその重合体又はその塩、及び、米糠由来の発酵生産物を含有することを特徴とする〔1〕に記載の組成物。
〔3〕皮膚に適用されることを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載の組成物。
〔4〕頭皮に適用されることを特徴とする〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の組成物。
〔5〕化粧品、医薬品、医薬部外品、雑貨又は食品であることを特徴とする〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の組成物。
〔6〕シャンプー又はコンディショナーであることを特徴とする〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の組成物。
〔7〕〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の組成物を含有することを特徴とする表皮ブドウ球菌増殖促進、黄色ブドウ球菌増殖抑制又は菌叢改善剤。
〔8〕〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の組成物を含有することを特徴とする頭部のフケ、かゆみ又は脱毛の予防又は軽減剤。
〔9〕ビフィズス菌又はその培養液、グルタミン酸若しくはその重合体又はその塩、及び、米糠由来の発酵生産物を含有することを特徴とする〔7〕に記載の剤。
〔10〕ビフィズス菌又はその培養液、グルタミン酸若しくはその重合体又はその塩、及び、米糠由来の発酵生産物を含有することを特徴とする〔8〕に記載の剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明の組成物又は剤は、表皮ブドウ球菌等の善玉菌の増殖を促進し、黄色ブドウ球菌等の悪玉菌の増殖を抑制し又は菌叢(好ましくは、皮膚、腸内、口腔内又は鼻腔内の常在細菌叢)を改善できる。このような組成物又は剤は、頭部のフケ、かゆみ又は脱毛を予防又は軽減できる。本発明は、好ましくは頭皮との接触時間が4分以内で表皮ブドウ球菌増殖促進、黄色ブドウ球菌増殖抑制又は菌叢改善可能な組成物又は剤を提供することができる。本発明の組成物又は剤の4分以内の使用時間は、使用上便宜である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、各単独サンプルの善玉菌の増殖促進作用を調べた結果を示すグラフである(t-検定による有意差、*:p<0.05 vs.control、**:p<0.01 vs.control、***:p<0.001 vs.control)。
【
図2】
図2は、組み合わせサンプルの善玉菌の増殖促進作用を調べた結果を示すグラフである(t-検定による有意差、*:p<0.05 vs.control、**:p<0.01 vs.control)。
【
図3】
図3は、番号4、6及び9の単独サンプル並びに番号Eの組み合わせサンプルの善玉菌の増殖促進作用を調べた結果を示すグラフである(t-検定による有意差、***:p<0.001 vs.control)。
【
図4】
図4は、各単独サンプルの悪玉菌の増殖抑制作用を調べた結果を示すグラフである(t-検定による有意差、**:p<0.01 vs.control、***:p<0.001 vs.control)。
【
図5】
図5は、組み合わせサンプルの悪玉菌の増殖抑制作用を調べた結果を示すグラフである(t-検定による有意差、*:p<0.05 vs.control)。
【
図6】
図6は、番号4、6及び9の単独サンプル並びに番号Eの組み合わせサンプルの悪玉菌の増殖抑制作用を調べた結果を示すグラフである(t-検定による有意差、***:p<0.001 vs.control)。
【
図7】
図7は、各単独サンプルの菌叢改善作用を調べた結果を示すグラフである。
【
図8】
図8は、組み合わせサンプルの菌叢改善作用を調べた結果を示すグラフである(t-検定による有意差、*:p<0.05 vs.control、**:p<0.01 vs.control、***:p<0.001 vs.control)。
【
図9】
図9は、番号4、6及び9の単独サンプル並びに番号Eの組み合わせサンプルの菌叢改善作用を調べた結果を示すグラフである(t-検定による有意差、***:p<0.001 vs.control)。
【
図10】
図10は、番号4、6及び9の単独サンプル3種の組み合わせサンプルの善玉菌の増殖促進作用を調べた結果を示すグラフである(t-検定による有意差、*:p<0.05 vs.control、**:p<0.01 vs.control)。
【
図11】
図11は、番号4、6及び9の単独サンプル3種の組み合わせサンプルの菌叢改善作用を調べた結果を示すグラフである(t-検定による有意差、*:p<0.05 vs.control)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の組成物又は剤は、ビフィズス菌又はその培養液、グルタミン酸若しくはその重合体又はその塩、及び、米糠由来の発酵生産物からなる群から選択される2以上を含有する。本発明の組成物又は剤は、ビフィズス菌又はその培養液、グルタミン酸若しくはその重合体又はその塩、及び、米糠由来の発酵生産物を含有することがより好ましい。
【0010】
〔成分1:ビフィズス菌又はその培養液〕
ビフィズス菌の例として、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・インファンティス、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス、ビフィドバクテリウム・プシュードロンガム、ビフィドバクテリウム・サーモフィルム等のビフィドバクテリウム属細菌を挙げることができる。これらの菌体は、例えばATCC又はIFOなどの機関や財団法人 日本ビフィズス菌センターなどから容易に入手することができる。また、市販されているものを適宜使用することもできる。
【0011】
ビフィズスの培養液として、上記菌を培地で培養した液を使用することができる。培地及び好適な培養条件は、従来十分に確立されているので、本発明においてもそれに従ってよい。また、ビフィズスの培養液として、それを含む市販品を購入することもできる。そのような市販品として例えば、プロバイオバランスCLR NP(商品名、株式会社 寿ケミカル製)を好適に使用することができる。
【0012】
〔成分2:グルタミン酸若しくはその重合体又はその塩〕
グルタミン酸の重合体として、化学式[-NH-CH(COOH)-CH2CH2-CO-]n(nは2以上)で示されるポリグルタミン酸が例示される。重合度は通常1000~10000程度であるが、これに限定されない。ポリグルタミン酸として、γ位のカルボキシル基とα位のアミノ基がペプチド結合を形成しているγ-ポリグルタミン酸(γ-PGA)が例示される。塩としては、薬理学的に許容される塩が好ましく、そのような塩として例えば、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、フィチン酸、アジピン酸、グルコン酸又はコハク酸等の有機酸との塩;塩酸、硫酸、硝酸、ホウ酸、アミド硫酸、臭化水素酸又はリン酸等の無機酸との塩;カルシウム又はマグネシウム等のアルカリ土類金属との塩;リチウム、カリウム又はナトリウム等のアルカリ金属との塩;エチレンジアミン、ジエタノールアミン又はN-メチルグルカミン等の有機塩基との塩等が挙げられる。これらは単独の塩であってもよく、2種以上の塩であってもよい。
グルタミン酸若しくはその重合体又はその塩として、それを含む市販品等の組成物を購入して使用することもできる。そのような組成物として例えば、γ-ポリグルタミン酸、精製水、1,3-ブチレングリコールを含む組成物が挙げられる。またそのような市販品として例えば、バイオPGA溶液 HB(商品名、一丸ファルコス株式会社製)を好適に使用することができる。
【0013】
〔成分3:米糠由来の発酵生産物〕
米糠由来の発酵生産物は、例えば、米糠にα-アミラーゼ、β-アミラーゼ等のデンプンを加水分解する酵素を加えて得られる米糠糖化液に酵母を加えて発酵させて得られる抽出物からエタノールを留去したもの等が挙げられる。米糠由来の発酵生産物は、ビタミンB、ビタミンE、ミネラル、フェルラ酸、γ-オリザノール等を含んでいることが好ましい。
米糠由来の発酵生産物として、それを含む市販品等の組成物を購入することもできる。そのような組成物として例えば、米糠にα-アミラーゼ及びβ-アミラーゼを加えて得られる米糠糖化液に酵母を加えて発酵させて得られるエキスからエタノールを留去したもの、1,3-ブチレングリコール、水等を含む組成物が挙げられる。またそのような市販品として例えば、コメヌカ発酵エキスBG30(商品名、丸善製薬株式会社製)を好適に使用することができる。
【0014】
〔質量部の比又は質量比〕
組成物又は剤における上記成分1、2及び3の質量比は特に限定されず、成分1、2及び3の合計質量部を100として、質量部の比(成分1:成分2:成分3)は、(1~99質量部):(1~99質量部):0であってもよく、(1~99質量部):0:(1~99質量部)であってもよく、0:(1~99質量部):(1~99質量部)であってもよく、(1~99質量部):(1~99質量部):(1~99質量部)であってもよい。但し、各質量部の合計は100である。
質量比(成分1:成分2:成分3)は、1:(0.1~10):(0.1~10)であってもよく、(0.1~10):1:(0.1~10)であってもよく、(0.1~10):(0.1~10):1であってもよく、1:1:1であってもよい。
【0015】
組成物又は剤は、例えば上記成分1、2及び3を、上記質量部の比又は質量比で混合することにより製造することができる。さらに上記成分1、2及び3以外の成分を組成物又は剤に含めてもよい。そのような成分として、例えば、pH調整剤、pH緩衝剤、光沢剤、酸化防止剤、保存料、乳化剤、乳化安定剤、乳化助剤、殺菌料、漂白剤、発色剤、香料、防かび剤、抽出溶剤、被膜剤、小麦粉処理剤、膨張剤、栄養強化剤、賦形剤、安定剤、矯味剤、溶解補助剤、緩衝剤、懸濁化剤、着香剤、粘稠剤、収斂剤、紫外線吸収剤、紫外線防御剤、紫外線散乱剤、紫外線遮蔽剤、ナノ化物質、防腐剤、界面活性剤、金属封鎖剤、油剤、保護剤、保湿剤、洗浄剤、消炎剤、抗菌剤、美白剤、抗たるみ剤、皮膜剤、剥離剤、結合剤、エモリエント剤、可塑剤、ビタミン剤、感触改良剤、泡安定剤、安定化剤、加脂肪剤、滑剤、可溶化剤、還元剤、酸化剤、顔料、基剤、希釈剤、起泡剤、吸着剤、緊張剤、経皮吸収促進剤、結合剤、血行促進剤、ゲル化剤、抗酸化剤、抗脂漏剤、コンディショニング剤、細胞賦活剤、柔軟剤、浸透剤、スクラブ剤、成形改良剤、成形剤、洗浄剤、造膜剤、帯電防止剤、中和剤、鎮静剤、パール化剤、肌荒れ防止剤、撥水剤、発泡剤、発毛促進剤、付着剤、分散剤、噴霧剤、変性剤、抱水剤、保香剤、保留剤、溶解剤、溶剤、育毛剤、養毛剤、増粘安定剤、酵素、調味料、強化剤、製造用剤、着色料、甘味料、苦味料、酸味料、ガムベース、水、1,3-ブチレングリコール等が挙げられる。組成物又は剤における、これらの成分の配合量又は配合割合は、本発明の効果を奏する限り、特に限定されない。
【0016】
〔皮膚〕
本発明の組成物又は剤は、皮膚に適用されることが好ましい。皮膚の部位としては、特に限定されないが、頭部、顔、首、手、腹部、鼠径部、足(足裏を含む)等が挙げられる。中でも、本発明の組成物又は剤は、頭皮に適用されることが好ましい。
【0017】
〔使用される分野〕
本発明の組成物又は剤は、化粧品、医薬品、医薬部外品、雑貨若しくは食品又はその素材等の分野で使用されてもよい。本発明の組成物又は剤の使用量は、本発明の効果を奏する限り特に限定されない。本発明の組成物又は剤の1回分の使用量は、例えば10~100gであってもよく、10~50gであってもよい。
【0018】
〔化粧品、医薬部外品〕
本発明の組成物又は剤が、化粧品、医薬部外品又はその素材として使用される場合、当該化粧品は特に限定されないが、例えば、シャンプー、コンディショナー、リンス、トリートメント、洗い流さないトリートメント、入浴剤、染毛剤、毛髪美容液、ヘアカラー、ヘアスプレー、ヘアワックス、洗口液、歯磨き粉、口紅、乳液、化粧水、保湿パック、美容液、ファンデーション、洗顔剤、コンシーラー、ベース、クレンジング、アイカラー、アイブロウ、チークカラー、フェイスカラー、ルージュ、グロス、又はリップライナー等が挙げられ、中でもシャンプー、コンディショナー、リンス、トリートメント、洗い流さないトリートメントが好ましい。
使用方法は、それぞれの化粧品又は医薬部外品の種類において従来十分に確立されているので、本発明においてもそれに従ってよい。本発明の組成物又は剤が、シャンプー、コンディショナー、リンス、トリートメント、洗い流さないトリートメントにおいて使用される場合、1回分の使用量として、通常容器の一部として使用されるトリガー1~3プッシュ分(10~50g)が例示される。
【0019】
〔医薬品〕
本発明の組成物を医薬の形態で実施する場合、経皮または非経皮のいずれかの経路で哺乳動物に投与することができるが、経皮投与が好ましい。経皮剤としては、例えば、経鼻投与製剤、経皮製剤、軟膏剤等の外用剤が挙げられる。皮膚外用剤には、必要に応じて、水、低級アルコール、溶解補助剤、界面活性剤、乳化安定化剤、ゲル化剤、粘着剤、又はその他所望する剤型を得るために通常使用される基剤成分を配合でき、使用目的に応じて血管拡張剤、副腎皮質ホルモン、保湿剤、殺菌剤、清涼化剤、ビタミン類、香料、又は色素等を本発明の効果を損なわない範囲で適宜に配合することも可能である。
【0020】
投与経路が非経皮の場合、経口剤(例えば、顆粒剤、散剤、錠剤(糖衣錠を含む)、丸剤、カプセル剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤)、注射剤(例えば、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤)、点滴剤、坐剤(例えば、直腸坐剤、膣坐剤)等が挙げられる。これらの製剤は、当該分野で通常行われている手法により、薬学上許容される担体を用いて製剤化することができる。薬学上許容される担体としては、賦形剤、結合剤、希釈剤、添加剤、香料、緩衝剤、増粘剤、着色剤、安定剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤等が挙げられ、例えば、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、砂糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、澱粉、ゼラチン、トラガント、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、低融点ワックス、カカオバター等を担体として使用できる。
【0021】
経口用の固形剤(錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤等)は、有効成分を賦形剤(ラクトース、マンニトール、グルコース、微結晶セルロース、デンプン等)、結合剤(ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等)、崩壊剤(繊維素グリコール酸カルシウム等)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム等)、安定剤、溶解補助剤(グルタミン酸、アスパラギン酸等)等と混合し、常法に従って製剤化することができる。必要に応じて、コーティング剤(白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)で被覆していてもよいし、また2以上の層で被覆していてもよい。
【0022】
経口用の液剤(水剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤等)は、有効成分を一般的に用いられる希釈剤(精製水、エタノールまたはそれらの混液等)に溶解、懸濁または乳化して製剤化される。さらにこの液剤は、湿潤剤、懸濁化剤、乳化剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、保存剤、緩衝剤等を含有していてもよい。
【0023】
注射剤は、溶液、懸濁液、乳濁液、および用時溶剤に溶解または懸濁して用いる固形の注射剤を包含する。注射剤は、有効成分を溶剤に溶解、懸濁または乳化して製剤化される。溶剤として、例えば注射用蒸留水、生理食塩水、植物油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノールのようなアルコール類等およびそれらの組み合わせが用いられる。さらにこの注射剤は、安定剤、溶解補助剤(グルタミン酸、アスパラギン酸、ポリソルベート80(登録商標)等)、懸濁化剤、乳化剤、無痛化剤、緩衝剤、保存剤等を含んでいてもよい。これらは最終工程において滅菌するか無菌操作法によって製造される。また無菌の固形剤、例えば凍結乾燥品を製造し、その使用前に無菌化または無菌の注射用蒸留水または他の溶剤に溶解して使用することもできる。
【0024】
〔雑貨〕
本発明の組成物又は剤が、雑貨又はその素材として使用される場合、当該雑貨は特に限定されないが、例えば、歯ブラシ;櫛、ヘアピン、ヘアゴム等のヘアセット用品、ヘアケア用品;等が挙げられる。
【0025】
〔食品〕
本発明の組成物又は剤が、食品又はその素材として使用される場合、当該食品は特に限定されず、機能性表示食品、特定保健用食品、健康食品又は病者用食品が含まれる。食品の形態は特に限定されないが、例えば、自然流動食、半消化態栄養食若しくは成分栄養食、飲料又は食品添加剤等の形態とすることもできる。食品の具体例として、茶飲料、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料、発酵飲料、アルコール飲料等の飲料;そば、うどん、中華麺、即席麺等の麺類;飴、キャンディー、ガム、チョコレート、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子、パン等の菓子及びパン類;かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳、発酵乳等の乳製品;サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料;カレー、シチュー、丼、お粥、雑炊等のレトルトパウチ食品;アイスクリーム、シャーベット、又はかき氷等の冷菓、卵加工食品等を挙げることができる。また、食品は、表皮ブドウ球菌増殖促進、黄色ブドウ球菌増殖抑制し、菌叢(好ましくは、皮膚、腸内、口腔内又は鼻腔内の常在細菌叢)改善、頭部のフケ、かゆみ又は脱毛の予防又は軽減をコンセプトとする旨が表示されている機能性表示食品、特定保健用食品、健康食品又は病者用食品等を含む。また、食品は、例えば、乳糖、デンプン、結晶セルロース、又はリン酸ナトリウム等の賦形剤を含んでいてもよい。
【0026】
〔表皮ブドウ球菌増殖促進〕
表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)は、主として鼻腔や表皮に常在する。表皮ブドウ球菌は、通常は非病原性であり、他の病原菌から表皮を守るバリアや、表皮を健康に保つ役目を果たしている菌である。表皮ブドウ球菌は、善玉菌に分類される。表皮ブドウ球菌等の善玉菌は、頭皮を弱酸性に保ち、抗菌物質を産生し、頭皮のバリア機能を維持し、又は皮脂膜を形成することが知られている。
【0027】
例えば、Tryptic soy broth等の培地に、表皮ブドウ球菌及び対象サンプルを添加し、一晩振盪培養後、600nmの吸光度を測定することにより表皮ブドウ球菌量を求め、対象サンプル群の表皮ブドウ球菌量が、対象サンプル無添加群のそれと比較して多い場合に、表皮ブドウ球菌増殖促進効果があると判断できる。表皮ブドウ球菌増殖促進効果の確認方法として後述の実施例を参照してもよい。
【0028】
一般に、与えられた2種類のサンプルを混合して添加した際に期待される菌の増殖促進の相乗効果は下記の式1のコルビーの計算式により求められる。
「式1」;E=X+Y-(X*Y)/100(ここで*は「掛ける」を示す。以下同じ。)
X:サンプルAを添加したときの増殖促進率
Y:サンプルBを添加したときの増殖促進率
E:サンプルA及びBを混和して添加したときに期待される増殖促進率(増殖促進率期待値)
組み合わせた2種類の組成物の増殖促進率が、増殖促進率期待値以上であった場合に、増殖促進相乗効果を示すとみなされる(S.R.Colby,(1967)Weeds,15,20-22参照)。
同様に、与えられた3種類のサンプルを混合して処理した際に期待される増殖促進相乗効果は、下記の式2のコルビーの計算式により求められる。
「式2」;E=X+Y+Z-(X*Y+X*Z+Y*Z)/100+X*Y*Z/10000
X:サンプルAを処理したときの増殖促進率
Y:サンプルBを処理したときの増殖促進率
Z:サンプルCを処理したときの増殖促進率
E:サンプルA、B及びCを混和して処理したときに期待される菌の増殖促進率(増殖促進率期待値)
組み合わせた3種類の組成物の増殖促進率が、増殖率期待値以上であった場合に、増殖促進相乗効果を示すとみなされる(同上の文献参照)。
【0029】
〔黄色ブドウ球菌増殖抑制〕
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)とは、ヒトや動物の皮膚、消化管(腸)常在菌(腸内細菌)であるブドウ球菌の一つである。黄色ブドウ球菌は、悪玉菌に分類される。黄色ブドウ球菌等の悪玉菌は、増殖することにより、頭皮の炎症を引き起こし、脱毛関連因子(IL-1β、IL-6、TGFβ、TNFα等の炎症性サイトカイン)を増加させ、フケを増加させ、毛包細胞の増殖を抑制し、又は退行期を早め、結果としてフケ症又は薄毛を進行させることが知られている。
【0030】
例えば、Tryptic soy broth等の培地に、黄色ブドウ球菌及び対象サンプルを添加し、一晩振盪培養後、600nmの吸光度を測定することにより黄色ブドウ球菌量を求め、対象サンプル群の黄色ブドウ球菌量が、対象サンプル無添加群のそれと比較して少ない場合に、黄色ブドウ球菌増殖抑制効果があると判断できる。黄色ブドウ球菌増殖抑制効果の確認方法として後述の実施例を参照してもよい。
【0031】
一般に、与えられた2種類のサンプルを混合して添加した際に期待される菌の増殖抑制の相乗効果は下記の式1’のコルビーの計算式により求められる。
「式1’」;E’=X’+Y’-(X’*Y’)/100
X’:サンプルAを添加したときの増殖抑制率
Y’:サンプルBを添加したときの増殖抑制率
E’:サンプルA及びBを混和して添加したときに期待される増殖抑制率(増殖抑制率期待値)
組み合わせた2種類の組成物の増殖抑制率が、増殖抑制率期待値以上であった場合に、増殖抑制相乗効果を示すとみなされる(同上の文献参照)。
同様に、与えられた3種類のサンプルを混合して処理した際に期待される増殖抑制相乗効果は、下記の式2’のコルビーの計算式により求められる。
「式2’」;E=X’+Y’+Z’-(X’*Y’+X’*Z’+Y’*Z’)/100+X’*Y’*Z’/10000
X’:サンプルAを処理したときの増殖抑制率
Y’:サンプルBを処理したときの増殖抑制率
Z’:サンプルCを処理したときの増殖抑制率
E’:サンプルA、B及びCを混和して処理したときに期待される菌の増殖抑制率(増殖抑制率期待値)
組み合わせた3種類の組成物の増殖抑制率が、増殖抑制率期待値以上であった場合に、増殖抑制相乗効果を示すとみなされる(同上の文献参照)。
【0032】
〔菌叢改善〕
菌叢は、表皮ブドウ球菌等の善玉菌と黄色ブドウ球菌等の悪玉菌とのバランスで成り立っている。すなわち、表皮ブドウ球菌等の善玉菌の増殖及び/又は黄色ブドウ球菌等の悪玉菌の減少により菌叢が改善され、表皮ブドウ球菌等の善玉菌の減少及び/又は黄色ブドウ球菌等の悪玉菌の増殖により菌叢が悪化することが知られている。特に、本開示において、
図6及び9から、悪玉菌の減少により菌叢が改善されることが示されている。
菌は常に集団(コロニー)を作製するが、その際、膜(バイオフィルム)を作ることで外部の刺激(環境、薬品等)から集団を守る。そこで、例えば、黄色ブドウ球菌等の悪玉菌による膜(バイオフィルム)の形成の程度を菌叢バランスの指標とすることができる。
【0033】
例えば、グルコースを0.2%含有するTryptic soy broth等の培地に、表皮ブドウ球菌、黄色ブドウ球菌及び対象サンプルを添加し、一晩静置培養後、600nmの吸光度を測定することによりバイオフィルム形成率を求め、対象サンプルのバイオフィルム形成率が、対象サンプル無添加群のバイオフィルム形成率と比較して低い場合に、菌叢改善効果があると判断できる。すなわち、菌叢改善効果を、バイオフィルム形成抑制効果と言い換えることができる。菌叢改善効果の確認方法として後述の実施例を参照してもよい。
【0034】
一般に、与えられた2種類のサンプルを混合して添加した際に期待される菌叢改善の相乗効果は下記の式1’’のコルビーの計算式により求められる。
「式1’’」;E’’=X’’+Y’’-(X’’*Y’’)/100
X’’:サンプルAを添加したときのバイオフィルム形成抑制率
Y’’:サンプルBを添加したときのバイオフィルム形成抑制率
E’’:サンプルA及びBを混和して添加したときに期待されるバイオフィルム形成抑制率(バイオフィルム形成抑制率期待値)
組み合わせた2種類の組成物のバイオフィルム形成抑制率が、バイオフィルム形成抑制率期待値以上であった場合に、菌叢改善相乗効果を示すとみなされる(同上の文献参照)。
同様に、与えられた3種類のサンプルを混合して処理した際に期待されるバイオフィルム形成抑制相乗効果は、下記の式2’’のコルビーの計算式により求められる。
「式’’2」;E’’=X’’+Y’’+Z’’-(X’’*Y’’+X’’*Z’’+Y’’*Z’’)/100+X’’*Y’’*Z’’/10000
X’’:サンプルAを処理したときのバイオフィルム形成抑制率
Y’’:サンプルBを処理したときのバイオフィルム形成抑制率
Z’’:サンプルCを処理したときのバイオフィルム形成抑制率
E’’:サンプルA、B及びCを混和して処理したときに期待される菌のバイオフィルム形成抑制率(バイオフィルム形成抑制率期待値)
組み合わせた3種類の組成物のバイオフィルム形成抑制率が、バイオフィルム形成抑制率期待値以上であった場合に、バイオフィルム形成抑制相乗効果を示すとみなされる(同上の文献参照)。
【0035】
〔頭部のフケ、かゆみ又は脱毛の予防又は軽減〕
上述したように、表皮ブドウ球菌等の善玉菌の増殖及び/又は黄色ブドウ球菌等の悪玉菌の減少により菌叢が改善され、表皮ブドウ球菌等の善玉菌の減少及び/又は黄色ブドウ球菌等の悪玉菌の増殖により菌叢が悪化することが知られている。また、頭皮の菌叢が改善されることにより、頭皮の状態(頭部のフケ、かゆみ又は脱毛)も改善(予防又は軽減)されることが知られている。
さらには、上述したように、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)とは、ヒトや動物の皮膚、消化管(腸)常在菌(腸内細菌)であるブドウ球菌の一つである。黄色ブドウ球菌は、悪玉菌に分類される。黄色ブドウ球菌等の悪玉菌は、増殖することにより、頭皮の炎症を引き起こし、脱毛関連因子(IL-1β、IL-6、TGFβ、TNFα等の炎症性サイトカイン)を増加させ、フケを増加させ、毛包細胞の増殖を抑制し、又は退行期を早め、結果としてフケ症又は薄毛を進行させることが知られている。
したがって、(1)表皮ブドウ球菌等の善玉菌の増殖、(2)黄色ブドウ球菌等の悪玉菌の減少及び/又は(3)菌叢が改善作用を有する本発明の組成物又は剤は、頭皮の状態を改善、すなわち頭部のフケ、かゆみ又は脱毛を予防又は軽減、より詳細には、頭皮の炎症を引き起こし、脱毛関連因子(IL-1β、IL-6、TGFβ、TNFα等の炎症性サイトカイン)の増加を抑制させ、フケの増加を抑制させ、毛包細胞の増殖を促進し、又は退行期の早期化を抑制し、結果としてフケ症又は薄毛の進行を抑えことができる。
【0036】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例0037】
〔1〕各サンプルの調製
(1)単独サンプル
実施例に用いた各単独サンプルの番号、一般名称、商品名及びメーカー名の対応関係を以下の表1に示す。
【0038】
【表1】
(2)3種の組み合わせサンプル
実施例に用いた各3種の組み合わせサンプルの番号と、組み合わせられた単独サンプルの番号と対応関係を以下の表2に示す。尚、各3種の組み合わせサンプルにおいて、組み合わせられた単独サンプルの質量比は1:1:1であった。
【0039】
【0040】
〔2〕試験例1:表皮ブドウ球菌の増殖促進作用(その1)
単独サンプル(サンプル番号1~15)及び3種の組み合わせサンプル(サンプル番号A~E)について、表皮ブドウ球菌の増殖促進作用を調べた。
具体的には、試験管に、10mlの培地(Tryptic soy broth、Becton Dickinson社)、善玉菌である表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis、 NBRC番号12993、前培養液(約1×1013CFU/mL)0.1v/v%)及び各単独サンプル(最終濃度0.1v/v%)又は3種の組み合わせサンプル(最終濃度0.3v/v%)を添加し、37℃で、一晩振とう培養(往復振とう180rpm)した。培養後、生理食塩水にて3分の1希釈を行い、吸光度測定(測定波長600nm、使用機器SHIMADZU, UV―1700)を行った。尚、吸光度測定は、使用機器の取扱説明書に従って行った。
尚、controlでは、サンプルを添加しなかった。
【0041】
表皮ブドウ球菌の増殖促進作用を調べた結果を
図1~3に示す。
図1から明らかなように、番号4及び9の単独サンプルは、善玉菌の増殖促進作用を示し、番号6の単独サンプルは、善玉菌の増殖促進作用を示さなかったが、
図2から明らかなようにこれらの組み合わせである番号Eの組み合わせサンプルは、他の組み合わせサンプルよりも優れた善玉菌の増殖促進作用を示した。また、
図3から明らかなように、これらは各単独サンプルの組み合わせによる相乗効果であることが示された。このことは、上記コルビーの式に当てはめた場合の期待値E(15.5)よりも、実測値(39.4)の方が大きいことからも裏付けられた。
【0042】
〔3〕試験例2:黄色ブドウ球菌の増殖抑制作用
単独サンプル(サンプル番号1~15)及び3種の組み合わせサンプル(サンプル番号A~E)について、黄色ブドウ球菌の増殖抑制作用を調べた。
具体的には、試験管に、10mlの培地(Tryptic soy broth、Becton Dickinson社)、悪玉菌である黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus、 NBRC番号12732、前培養液(約1×1014CFU/mL)0.1v/v%)及び各単独サンプル(最終濃度0.1v/v%)又は3種の組み合わせサンプル(最終濃度0.3v/v%)を添加し、37℃で、一晩振とう培養(往復振とう180rpm)した。培養後、生理食塩水にて6分の1希釈を行い、吸光度測定(測定波長600nm、使用機器SHIMADZU, UV―1700)を行った。尚、吸光度測定は、使用機器の取扱説明書に従って行った。
尚、controlでは、サンプルを添加しなかった。
【0043】
黄色ブドウ球菌の増殖促進作用を調べた結果を
図4~6に示す。
図4から明らかなように、番号4、6及び9の単独サンプルは、悪玉菌の増殖抑制作用を示さなかったが、
図5から明らかなようにこれらの組み合わせである番号Eの組み合わせサンプルは、他の組み合わせサンプルよりも優れた悪玉菌の増殖抑制作用を示した。また、
図6から明らかなように、これらは各単独サンプルの組み合わせによる相乗効果であることが示された。このことは、上記コルビーの式に当てはめた場合の期待値(1.1)よりも、実測値(9.3)の方が大きいことからも裏付けられた。
【0044】
〔4〕試験例3:菌叢改善作用(その1)
単独サンプル(サンプル番号1~15)及び3種の組み合わせサンプル(サンプル番号A~E)について、菌叢改善作用を調べた。
具体的には、6穴プレート(Greiner Bio-One)に、3mlの培地(グルコース0.2%含有Tryptic soy broth、Becton Dickinson社)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis、 NBRC番号12993、最終濃度1×102CFU/mL)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus、 NBRC番号12732、最終濃度1×105CFU/mL)及び各単独サンプル(最終濃度0.1v/v%)又は3種の組み合わせサンプル(最終濃度0.3v/v%)を添加し、37℃で、一晩静置培養した。培養後、上清を捨て、PBSで静かに洗浄し、改めてPBSを1ml添加してバイオフィルムをはがし、吸光度測定(測定波長600nm、使用機器SHIMADZU, UV―1700)を行った。尚、吸光度測定は、使用機器の取扱説明書に従って行った。Controlを100%として、バイオフィルム形成率を求めた。
尚、controlでは、サンプルを添加しなかった。
【0045】
菌叢改善作用を調べた結果を
図7~9に示す。
図7から明らかなように、番号4、6及び9の単独サンプルは、菌叢改善作用を示さなかったが、
図8から明らかなようにこれらの組み合わせである番号Eの組み合わせサンプルは、他の組み合わせサンプルよりも優れた菌叢改善作用を示した。また、
図9から明らかなように、これらは各単独サンプルの組み合わせによる相乗効果であることが示された。このことは、上記コルビーの式に当てはめた場合の期待値E(41.1)よりも、実測値(47.9)の方が大きいことからも裏付けられた。
【0046】
また、
図6及び9から、黄色ブドウ球菌等の悪玉菌の減少により菌叢が改善されることが示された。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は、ヒトや動物の、皮膚以外にも、消化管(腸)、口腔内及び鼻腔内にも存在するため、番号4、6及び9の単独サンプルの組み合わせである番号Eの組み合わせサンプルは、消化管(腸)、口腔内及び鼻腔内の常在菌叢を改善する作用を有し得る。
【0047】
〔5〕試験例4:表皮ブドウ球菌の増殖促進作用(その2)
試験例1で用いた番号Eの3種の組み合わせサンプルでは、そこに含まれる単独サンプル4、6及び9の質量比は1:1:1であり、当該3種の組み合わせサンプル最終濃度は、0.3v/v%であったところ、試験例4において、当該3種の組み合わせサンプルについて、単独サンプル4、6及び9の質量比(単独サンプル4:単独サンプル6:単独サンプル9)を0.1:1:0.6にし、最終濃度を0.06v/v%又は0.2v/v%とし、それ以外の条件は試験例1と同様に試験を行い、当該3種の組み合わせサンプルの表皮ブドウ球菌の増殖促進作用を確認した。
【0048】
表皮ブドウ球菌の増殖促進作用を調べた結果を
図10に示す。
図10から明らかなように、単独サンプル4、6及び9の質量比が1:1:1でない場合でも、これらのサンプルを組み合わせることにより、表皮ブドウ球菌の増殖促進作用を示すことが示された。また、
図10から明らかなように、単独サンプル4、6及び9の濃度が試験例1におけるそれよりも低い場合でも、これらのサンプルを組み合わせることにより、表皮ブドウ球菌の増殖促進作用を示すことが示された。
【0049】
〔6〕試験例5:菌叢改善作用(その2)
試験例3で用いた番号Eの3種の組み合わせサンプルでは、そこに含まれる単独サンプル4、6及び9の質量比は1:1:1であり、当該3種の組み合わせサンプル最終濃度は、0.3v/v%であったところ、試験例5において、当該3種の組み合わせサンプルについて、単独サンプル4、6及び9の質量比(単独サンプル4:単独サンプル6:単独サンプル9)を0.1:1:0.6にし、最終濃度を0.06v/v%又は0.2v/v%とし、それ以外の条件は試験例3と同様に試験を行い、当該3種の組み合わせサンプルのバイオフィルム形成率を求めた。
【0050】
菌叢改善作用を調べた結果を
図11に示す。
図11から明らかなように、単独サンプル4、6及び9の質量比が1:1:1でない場合でも、これらのサンプルを組み合わせることにより、菌叢改善作用を示すことが示された。また、
図11から明らかなように、単独サンプル4、6及び9の濃度が試験例3におけるそれよりも低い場合でも、これらのサンプルを組み合わせることにより、菌叢改善作用を示すことが示された。