IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日本トリムの特許一覧

特開2022-124171金属コロイド水生成装置及び金属コロイド水生成方法
<>
  • 特開-金属コロイド水生成装置及び金属コロイド水生成方法 図1
  • 特開-金属コロイド水生成装置及び金属コロイド水生成方法 図2
  • 特開-金属コロイド水生成装置及び金属コロイド水生成方法 図3
  • 特開-金属コロイド水生成装置及び金属コロイド水生成方法 図4
  • 特開-金属コロイド水生成装置及び金属コロイド水生成方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124171
(43)【公開日】2022-08-25
(54)【発明の名称】金属コロイド水生成装置及び金属コロイド水生成方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/461 20060101AFI20220818BHJP
   C25C 1/20 20060101ALI20220818BHJP
【FI】
C02F1/461 Z
C25C1/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021021779
(22)【出願日】2021-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】591201686
【氏名又は名称】株式会社日本トリム
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】雨森 大治
(72)【発明者】
【氏名】山内 悠平
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼渦 恭臣
(72)【発明者】
【氏名】名木 祐貴
【テーマコード(参考)】
4D061
4K058
【Fターム(参考)】
4D061DA02
4D061DB20
4D061EA02
4D061EB02
4D061EB04
4D061EB12
4D061EB19
4D061EB27
4D061EB28
4D061EB30
4D061EB31
4D061EB39
4D061GC12
4K058AA30
4K058BA20
4K058BA36
4K058BB02
4K058CA16
4K058CA22
(57)【要約】
【課題】微粒子分散剤を用いることなく、高濃度かつ分散性の高い金属コロイド水を容易に生成できる金属コロイド水生成装置等を提供する。
【解決手段】金属コロイド水生成装置1は、電解される水溶液が充填される電解槽2と、電解槽2内に配された一対の給電体21、22と、一対の給電体21、22間に電解電流を通すための電源装置3とを含む。給電体21、22の表面には、イオン性化合物の貴金属塩を含む被覆層が形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属コロイド水の生成装置であって、
電解される水溶液が充填される電解槽と、
前記電解槽内に配された一対の給電体と、
前記一対の給電体間に電解電流を通すための電源装置とを含み、
前記給電体の表面には、イオン性化合物の貴金属塩を含む被覆層が形成されている、
金属コロイド水生成装置。
【請求項2】
前記貴金属塩は、白金塩である、請求項1に記載の金属コロイド水生成装置。
【請求項3】
前記白金塩は、白金カルボン酸塩、及び白金塩化物の中から選択される少なくとも1つを含む、請求項2に記載の金属コロイド水生成装置。
【請求項4】
前記被覆層は、卑金属化合物を含む、請求項1ないし3のいずれかに記載の金属コロイド水生成装置。
【請求項5】
前記卑金属化合物は、チタン酸化物、鉄塩化物、及びアルミニウム塩化物の中から選択される少なくとも1つを含む、請求項4に記載の金属コロイド水生成装置。
【請求項6】
金属コロイド水の生成方法であって、
電解される水溶液を電解槽に充填する第1ステップと、
イオン性化合物の貴金属塩を含む被覆層が表面に形成され前記電解槽内に配された一対の給電体間に、電解電流を通すことにより、前記水溶液中に貴金属元素を溶出させる第2ステップとを含む、
金属コロイド水生成方法。
【請求項7】
前記第2ステップでの電解電流密度は32.9mA/cm以下であり、通電時間は20秒以下である、請求項6に記載の金属コロイド水生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属コロイド水の生成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気分解前の電解質水溶液に金属コロイドを添加する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3569270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
飲用に供される水溶液では、微粒子分散剤などの薬品を用いることなく生成されるのが望ましい。しかしながら、このような水溶液は、金属粒子が凝縮しやすくなり、高濃度の金属コロイド水を生成することが困難となる。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、微粒子分散剤を用いることなく、高濃度かつ分散性の高い金属コロイド水を容易に生成できる金属コロイド水生成装置等を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、金属コロイド水の生成装置であって、電解される水溶液が充填される電解槽と、前記電解槽内に配された一対の給電体と、前記一対の給電体間に電解電流を通すための電源装置とを含み、前記給電体の表面には、イオン性化合物の貴金属塩を含む被覆層が形成されている。
【0007】
本発明に係る前記金属コロイド水生成装置において、前記貴金属塩は、白金塩である、ことが望ましい。
【0008】
本発明に係る前記金属コロイド水生成装置において、前記白金塩は、白金カルボン酸塩、及び白金塩化物の中から選択される少なくとも1つを含む、ことが望ましい。
【0009】
本発明に係る前記金属コロイド水生成装置において、前記被覆層は、卑金属化合物を含む、ことが望ましい。
【0010】
本発明に係る前記金属コロイド水生成装置において、前記卑金属化合物は、チタン酸化物、鉄塩化物、及びアルミニウム塩化物の中から選択される少なくとも1つを含む、ことが望ましい。
【0011】
また、本発明は、金属コロイド水の生成方法であって、電解される水溶液を電解槽に充填する第1ステップと、イオン性化合物の貴金属塩を含む被覆層が表面に形成され前記電解槽内に配された一対の給電体間に、電解電流を通すことにより、前記水溶液中に貴金属元素を溶出させる第2ステップとを含む。
【0012】
本発明に係る前記金属コロイド水生成方法において、前記第2ステップでの電解電流密度は32.9mA/cm以下であり、通電時間は20秒以下である、ことが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の前記金属コロイド水生成装置では、表面に前記イオン性化合物の前記貴金属塩を含む前記被覆層が形成されている前記給電体を用いて、前記水溶液を電気分解することにより前記金属コロイド水を生成する。本願の発明者は、鋭意研究の結果、前記イオン性化合物の前記貴金属塩を前記被覆層に含ませることで、前記給電体への通電時の金属溶出性が高まり、コロイドを高濃度で形成可能となるだけでなく、コロイドの分散性を高めることにも効果的であることを見出した。従って、本発明の前記金属コロイド水生成装置によれば、微粒子分散剤を用いることなく、高濃度かつ分散性の高い金属コロイドを含有する金属コロイド水を容易に生成できるようになる。
【0014】
本発明の前記金属コロイド水生成方法では、表面に前記イオン性化合物の前記貴金属塩を含む前記被覆層が形成されている前記給電体を用いて、前記第2ステップで前記水溶液を電気分解することにより前記金属コロイド水を生成する。前記金属コロイド水生成装置と同様に、本発明の前記金属コロイド水生成方法によれば、微粒子分散剤を用いることなく、高濃度かつ分散性の高い金属コロイドを含有する金属コロイド水を容易に生成できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の金属コロイド水生成装置の概略構成を示す図である。
図2図1の給電体の構成を示す断面図である。
図3】本発明の金属コロイド水生成方法の手順を示すフローチャートである。
図4】実施例2-1で生成・濃縮された金属コロイド水のSEM写真である。
図5】比較例2-1で生成・濃縮された金属コロイド水のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態の金属コロイド水生成装置1を示している。金属コロイド水生成装置1は、電気分解によって金属コロイド水を生成するための装置である。本金属コロイド水生成装置1を用いて生成されたコロイド水に含まれる金属コロイドは、粒子径が非常に小さく、「金属ナノコロイド」とも称される。
【0017】
金属コロイド水生成装置1は、電解される水溶液が充填される電解槽2と、一対の給電体21、22と、給電体21、22間に電解電流を通すための電源装置3とを含んでいる。
【0018】
電解槽2には、電解される水溶液が連続的または断続的に供給される。
【0019】
給電体21、22は、電解槽2内で互いに対向するように配されている。給電体21、22は、例えば、矩形の板状に形成されている。電気分解の際には、給電体21、22の内の一方が陽極、他方が陰極として機能する。給電体21、22は、金属成分が通電によって水溶液に溶出し、コロイドの形成に必要な金属イオンの供給源となる。
【0020】
本実施形態では、給電体21、22の間に膈膜23が設けられている。膈膜23は、電解槽2によって区画された電解室を、陽極室と陰極室とに区分する。膈膜23には、例えば、陽イオン交換膜が適用される。
【0021】
電源装置3は、給電体21、22間に直流電圧を印加して、給電体21、22に電解電流を供給する。給電体21、22間に直流電圧が印加されることにより、給電体21、22間が通電する。電源装置3は、制御部(図示せず)によって制御される。
【0022】
図2は、給電体21、22の断面が示されている。給電体21、22は、金属基体41と、金属基体41の表面に形成された被覆層42とを含んでいる。給電体21、22の表面に配される。
【0023】
金属基体41には、種々の金属が適用されうる。給電体21、22が使用される環境によっては強酸性や酸化性雰囲気に曝されることもある。このため、金属基体41の材質としては、チタン、ジルコニウム、ニオブ、鉄、タンタル、バナジウム及びそれらの金属を主成分とする合金からなる金属等が挙げられる。上記金属の表面に不動態層が形成されることにより防食性を高めた金属が望ましい。
【0024】
より具体的には、チタンまたはチタン合金が好ましい。チタン合金としては、チタンを主体とする耐食性のある導電性の合金が使用され、例えばTi-Ta-Nb、Ti-Pd、Ti-Zr、Ti-W、Ti-Al等の組合せからなる、通常給電体材料として使用されているTi基合金が挙げられる。
【0025】
これらの材料は板状、有孔板状、棒状、網板状等の所望の形状に加工して金属基体41として用いることができる。
【0026】
金属基体41には、予め前処理をするのが望ましい。金属基体10の前処理方法としては、研削材を吹き付けて機械的に粗面化するブラスト処理方法や、シュウ酸など酸溶液の流動浴又は静止浴に浸漬させて、金属基体41の表面を溶解させる化学的エッチング法などがある。
【0027】
被覆層42は、少なくとも貴金属を含んでいる。被覆層42の厚さは、特に限定されるものではないが、0.05μm~100μmであることが好ましく、0.1μm~10μmであることがより好ましい。
【0028】
被覆層42は、イオン性化合物の貴金属塩を含んでいる。本願の発明者は、鋭意研究の結果、イオン性化合物の貴金属塩を含む被覆層42は、単体の貴金属から成る被覆層よりも、溶媒和による電離促進が期待できることを見出した。さらに、発明者は、電解の際に、貴金属元素と化合物を形成していたアニオンも同時に溶出し、コロイド中へ取り込まれるかあるいはコロイド表面に付着することでコロイド間の静電反発作用が生じ、コロイドの分散性を高める効果も期待できることを見出した。
【0029】
発明者は、このような被覆層42が表面に形成された給電体を用いることにより、給電体21、22への通電時に貴金属の溶出性が高まり、コロイドを高濃度で形成可能となるだけでなく、コロイドの分散性を高めることにも効果的であることを検証した(後述する実施例を参照)。従って、本発明の金属コロイド水生成装置1によれば、微粒子分散剤を用いることなく、高濃度かつ分散性の高い金属コロイドを含有する金属コロイド水を容易に生成できるようになる。
【0030】
電解による貴金属の溶出性を効果的に高めることができる化合物としては、白金塩、特に白金カルボン酸塩、及び白金塩化物から選択される少なくとも1つを含むものが例示できるが、上記例示に限定されるものではない。
【0031】
被覆層42における貴金属塩の含有量は、5~99mol%が好ましい。貴金属化合物の割合が5mol%以上であることにより、電解による貴金属の溶出性が十分に維持され、金属コロイドの濃度が容易に確保される。一方、貴金属化合物の割合が99mol%以下であることにより、電解による貴金属の溶出量を容易に制御可能となる。このような観点から、被覆層42における貴金属塩のより好ましい含有量は、10~97.5mol%である。なお、これら含有モル比率は、被覆層42の総量に対する比率とする(以下、同様である)。
【0032】
被覆層42には、上記貴金属塩の他、貴金属単体や貴金属の溶出性を高めるための卑金属化合物を含んでいてもよい。卑金属化合物は、貴金属のイオン化溶出において、いわば促進作用を奏する。発明者は、卑金属化合物が被覆層42に存在することで、電解に寄与する貴金属化合物の表面積が制限され、局所的に電流密度が高まってイオン化溶出が促進されると考えている。
【0033】
貴金属のイオン化溶出の促進が期待できる卑金属化合物の具体例としては、チタン酸化物、鉄塩化物、及びアルミニウム塩化物の中から選択される少なくとも1つを含む、ものが望ましい。ジルコニウムやマンガンの酸化物・塩化物等の人体への影響が少なく、水中での反応性も低い卑金属の化合物が適用されてもよい。
【0034】
被覆層42における卑金属化合物の含有量は、0.1~95mol%が好ましい。卑金属化合物の割合が0.1mol%以上であることにより、電解に寄与する貴金属化合物の表面積の制限が容易となり、貴金属の溶出を促進する作用を十分に発揮させることが可能となる。一方、卑金属化合物の割合が95mol%以下であることにより、電解に寄与する貴金属化合物の局所的な電流密度が抑制され、貴金属のイオン化溶出量の制御が容易となる。このような観点から、被覆層42における卑金属化合物のより好ましい含有量は、0.5~50mol%である。
【0035】
給電体21、22の表面に被覆層42を形成する方法としては、気相中におけるスパッタ法、イオンプレーティング法等の方法のほか、熱分解(焼成)法による方法であってもよい。上記方法の中では、特に、熱分解法が好ましい。
【0036】
熱分解法では、貴金属塩をアルコール溶媒に溶解させて塗布液を作製する工程、金属基体41の表面に塗布液を塗布する工程、塗布液を乾燥させる工程、塗布膜を焼成する工程が順次実行されることにより、被覆層42が形成される。塗布液には、上述した卑金属化合物が適宜添加される。
【0037】
金属塩の形態としては、塩化物、フッ化物、臭化物、金属アルコキシド、有機金属化合物、酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、及び硫酸塩等が挙げられる。塗布液の保存安定性、環境負荷およびコストの観点から、好ましくは塩化物が挙げられる。
【0038】
塗布工程では、スプレー塗布法、噴霧法、刷毛塗り法、カーテンフローコート法、ドクターブレード法、ディップ法により塗布し、塗布膜を得ることができる。乾燥工程は、10~120℃ の温度で10分程度行うのが好ましく挙げられる。焼成工程は、200~450℃の温度で、5分から300分の焼成時間で行うのが好ましいが、300~450℃ の温度で、10~60分で行うのが好ましく挙げられる。この塗布・乾燥・焼成を複数回繰り返して、被覆層42が積層されてもよい。
【0039】
以上、本発明の金属コロイド水生成装置1が詳細に説明されたが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施される。すなわち、金属コロイド水生成装置1は、少なくとも、電解される水溶液が充填される電解槽2と、電解槽2内に配された一対の給電体21、22と、一対の給電体21、22間に電解電流を通すための電源装置3とを含み、給電体21、22の表面には、イオン性化合物の貴金属塩を含む被覆層42が形成されていればよい。
【0040】
図3は、本発明の金属コロイド水生成方法の手順を示している。金属コロイド水生成方法は、水溶液を電解槽2に充填する第1ステップS1と、一対の給電体21、22間に電解電流を通すことにより、水溶液中に貴金属元素を溶出させる第2ステップS2とを含んでいる。
【0041】
金属コロイド水生成方法では、表面に被覆層42が形成されている給電体21、22を用いて、第2ステップS2で水溶液を電気分解することにより金属コロイド水を生成する。金属コロイド水生成装置1と同様に、本発明の金属コロイド水生成方法によれば、微粒子分散剤を用いることなく、高濃度かつ分散性の高い金属コロイドを含有する金属コロイド水を容易に生成できるようになる。
【0042】
第2ステップS2では、給電体21、22間に直流電流のほかパルス電流を通すことにより、電解及び貴金属元素の溶出が実行される。
【0043】
第2ステップでの好ましい電解電流密度は、32.9mA/cm以下で、好ましい通電時間は、20秒間以下である。電解電流密度が32.9mA/cm以下で、かつ通電時間が20秒以下であることにより、給電体21、22の消耗が抑制される。また、金属コロイドの凝縮が抑制される。このような観点から、第2ステップでのより好ましい電解電流密度は、16.5mA/cm以下であり、より好ましい通電時間は、10秒以下である。
【0044】
以上、本発明の金属コロイド水生成方法が詳細に説明されたが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施される。すなわち、金属コロイド水生成方法は、少なくとも、電解される水溶液を電解槽2に充填する第1ステップS1と、イオン性化合物の貴金属塩を含む被覆層42が表面に形成され電解槽2内に配された一対の給電体21,22間に、電解電流を通すことにより、水溶液中に貴金属元素を溶出させる第2ステップS2とを含んでいればよい。
【0045】
(実施例)
図2に示される基本構造の給電体が表1の仕様に基づき試作され、図1に示される金属コロイド水生成装置を用いて生成された金属コロイド水が評価された。各給電体の詳細は、以下の通りである。
【0046】
[実施例1-1]
金属基体としてチタン板、被覆層として白金、及び酢酸白金からなる給電体が作製された。作製された給電体を陽極及び陰極として、水溶液中で給電体に通電することによって金属コロイド水が生成された。
(1)金属基体の作製
チタンを基体として、アルコール洗浄されたJIS1種チタン板素材(t0.5mm×100mm×100mm)が、20℃の8重量%弗化水素酸水溶液中で2分間浸漬され、次いで120℃の60重量%硫酸水溶液中で3分間浸漬された。その後、チタン基体は、硫酸水溶液から取り出され、窒素雰囲気中で冷水の噴霧により急冷された。さらに、チタン基体は、20℃の0.3重量%弗化水素酸水溶液中に2分間浸漬された後、水洗された。
(2)被覆層の作製
被覆層形成用の塗布液として、1-ブタノールに酢酸白金160g/kgが溶解された溶液が作製された。刷毛にて上記塗布液が表面に塗布された上記チタン基体が、25℃の大気中で10分間乾燥され、さらに300℃の大気中で10分間焼成された。この塗布・乾燥・焼成を2回繰り返すことで、被覆層が白金、及び酢酸白金からなる給電体が作製された。
(3)金属コロイド水の生成
作製した給電体(電解面積75.9cm)を陽極及び陰極として電解槽(セル)に設置した。各給電体の間に配される膈膜には住友電工ファインポリマー社製ポアフロン(商品名)が適用された。電解水溶液の温度は25℃で、陽極室の液量は200ml、陰極室の液量は1000mlである。各給電体は、電流密度13.8mA/cmの定電流で8.4秒間通電され、電解後の陰極室内の水溶液が金属コロイド水として回収された。
【0047】
[実施例1-2]
金属基体としてチタン板、被覆層として白金、及び塩化白金(II)からなる給電体が作製された。作製された給電体を陽極及び陰極として、水溶液中で給電体に通電することによって金属コロイド水が製造された。
(1)金属基体の作製
実施例1-1と同様の要領で、チタン基体が作製された。
(2)被覆層の作製
被覆層形成用の塗布液として、1-ブタノールに塩化白金酸(HPtCl)210g/kgを溶解した溶液が作製された。刷毛にて上記塗布液が表面に塗布された上記チタン基体が、25℃の大気中で10分間乾燥され、さらに450℃の大気中で10分間焼成された。この塗布・乾燥・焼成を2回繰り返すことで、被覆層が白金、及び塩化白金(II)からなる給電体が作製された。
(3)金属コロイド水の生成
実施例1-1と同様の手法で、金属コロイド水が生成された。
【0048】
[実施例1-3]
金属基体としてチタン板、被覆層として白金、塩化白金(II)、塩化鉄(II)、及び塩化アルミニウムからなる給電体が作製された。作製された給電体を陽極及び陰極として、水溶液中で給電体に通電することによって金属コロイド水が生成された。
(1)金属基体の作製
実施例1-1と同様の手法で、チタン基体が作製された。
(2)被覆層の作製
被覆層形成用の塗布液として、1-ブタノールに塩化白金酸(HPtCl)210g/kg、塩化鉄(II)四水和物10g/kg、塩化アルミニウム六水和物12g/kgを溶解した溶液が作製された。刷毛にて上記塗布液が表面に塗布された上記チタン基体が、25℃の大気中で10分間乾燥され、さらに350℃の大気中で10分間焼成された。この塗布・乾燥・焼成を2回繰り返すことで、被覆層が白金、塩化白金(II)、塩化鉄(II)、及び塩化アルミニウムからなる給電体が作製された。
(3)金属コロイド水の生成
陽極室の電解液量は217ml、陰極室の液量は2083mlとされ、通電時間が4.0秒とされ、それ以外は実施例1-1と同様の手法で、金属コロイド水が生成された。
【0049】
[実施例1-4]
金属基体としてチタン板、被覆層として白金、塩化白金(II)、及び酸化チタン(IV)からなる給電体が作製された。作製した給電体を陽極及び陰極として、水溶液中で給電体に通電することによって金属コロイド水が生成された。
(1)金属基体の作製
実施例1-1と同様の手法で、チタン基体が作製された。
(2)被覆層の作製
被覆層形成用の塗布液として、1-ブタノールに塩化白金酸(HPtCl)210g/kg、塩化チタン(IV)20g/kgを溶解した溶液が作製された。刷毛にて上記塗布液が表面に塗布された上記チタン基体が、25℃の大気中で10分間乾燥され、さらに350℃の大気中で10分間焼成された。この塗布・乾燥・焼成を2回繰り返すことで、被覆層が白金、塩化白金(II)、及び酸化チタン(IV)からなる給電体が作製された。
(3)金属コロイド水の生成
実施例1-1と同様の手法で、金属コロイド水が生成された。
【0050】
[実施例1-5]
金属基体としてチタン板、被覆層として白金、塩化白金(II)、及び酸化チタン(IV)からなる給電体が作製された。作製した給電体を陽極及び陰極として、水溶液中で給電体に通電することによって金属コロイド水が生成された。
(1)金属基体の作製
実施例1-1と同様の手法で、チタン基体が作製された。
(2)被覆層の作製
塗布液の焼成温度を300℃とした以外は実施例1-5と同様の手法で、被覆層が白金、塩化白金(II)、及び酸化チタン(IV)からなる給電体が作製された。
(3)金属コロイド水の生成
実施例1-1と同様の手法で、金属コロイド水が生成された。
【0051】
[比較例1-1]
金属基体としてチタン板、被覆層として白金からなる給電体が作製された。作製された給電体を陽極及び陰極として、水溶液中で給電体に通電することによって金属コロイド水が製造された。
(1)金属基体の作製
実施例1-1と同様の手法で、チタン基体が作製された。
(2)被覆層の作製
前記チタン基体上を水洗後、ジニトロジアンミン白金[Pt(NH(NO]を硫酸溶液に溶解させてPt含有量5g/L、pH≒2、50℃に調整された状態の白金めっき浴中で、電流密度15mA/cm2の定電流にて、電解時間0.1秒、電解時間と電解停止時間の比が1:9、電解時間と電解停止時間の繰り返し回数が840回の条件でパルスめっきすることで、被覆層が白金からなる給電体が作製された。
(3)金属コロイド水の生成
実施例1-1と同様の手法で、金属コロイド水が生成された。
【0052】
<金属種の同定>
生成された金属コロイド水の成分がSEM(走査電子顕微鏡)を用いて分析された。
【0053】
<濃度>
生成された金属コロイド水の濃度がICP-MAS(誘導結合プラズマ質量分析法)を用いて算出された。
【0054】
【表1】
【0055】
表1から明らかなように、実施例の金属コロイド水生成装置及び金属コロイド水生成方法によれば、比較例に比べて高濃度の金属コロイド水を生成できることが確認された。
【0056】
[実施例2-1]
実施例1-4で生成された金属コロイド水が500倍に濃縮された。濃縮された金属コロイド水のSEM写真が図4に示される。
【0057】
[比較例2-1]
比較例1-1で生成された金属コロイド水が500倍に濃縮された。濃縮された金属コロイド水のSEM写真が図5に示される。
【0058】
<金属種の同定>
濃縮された金属コロイド水の成分がSEM(走査電子顕微鏡)を用いて分析された。
【0059】
<粒子径>
レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラックベル社製ゼータビュー(商品名))を用い、金属コロイド水に含まれる金属コロイドの粒子径分布が測定された。得られた粒子径分布から体積累積粒子径D50、D90及び粒子径比(D90/D50)が算出された。
【0060】
【表2】
【0061】
表2から明らかなように、実施例2-1の体積累積粒子径D50と比較例2-1の体積累積粒子径D50とは、同等であった。一方、実施例2-1の体積累積粒子径D90は、比較例2-1の体積累積粒子径D90よりも有意に小さく、実施例2-1の粒子径比(D90/D50)は、比較例2-1の粒子径比(D90/D50)よりも有意に小さい。以上より、実施例の金属コロイド水生成装置及び金属コロイド水生成方法によれば、比較例に比べて、分散性の高い金属コロイド水を生成できることが確認された。
【符号の説明】
【0062】
1 金属コロイド水生成装置
2 電解槽
3 電源装置
21 給電体
22 給電体
42 被覆層
S1 第1ステップ
S2 第2ステップ
図1
図2
図3
図4
図5