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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124190
(43)【公開日】2022-08-25
(54)【発明の名称】容器保持具
(51)【国際特許分類】
   B65D 25/22 20060101AFI20220818BHJP
【FI】
B65D25/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021021806
(22)【出願日】2021-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】500479038
【氏名又は名称】株式会社マインド
(74)【代理人】
【識別番号】100146732
【弁理士】
【氏名又は名称】横島 重信
(72)【発明者】
【氏名】内藤 寛
【テーマコード(参考)】
3E062
【Fターム(参考)】
3E062AA10
3E062AB02
3E062BB02
3E062BB06
3E062BB10
3E062GA02
3E062GB08
3E062GB09
3E062GC03
3E062HA03
3E062HB04
3E062HC04
(57)【要約】
【課題】各種の形態や大きさ等を有するカップ等の容器について、当該形態等の違いによらず簡便且つ安定的に保持可能として、主に吊り下げて搬送可能とする容器保持具を提供すること。
【解決手段】容器側面に接触して容器を保持するための環状保持部と、当該環状保持部に取り付けられた吊下げ部を有することで、容器を吊り下げ可能とする保持具であって、当該環状保持部は、可撓性を有する板状体と、当該板状体間を締結して環状とする締結部を有することを特徴とする保持具。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器側面に接触して容器を保持するための環状保持部と、当該環状保持部に取り付けられた吊下げ部を有することで、容器を吊り下げ可能とする保持具であって、
当該環状保持部は、可撓性を有する板状体と、当該板状体間を締結して環状とする締結部を有することを特徴とする保持具。
【請求項2】
上記締結部は紐状体によって上記板状体間を締結するものであって、上記吊下げ部を構成する吊下げ具の少なくとも一部が当該締結部を構成する紐状体と連続していることにより、当該吊下げ具を吊り下げることによって締結部に張力が生じることを特徴とする請求項1に記載の保持具。
【請求項3】
上記吊下げ具と連続する紐状体は全体として環状を成していることを特徴とする請求項2に記載の保持具。
【請求項4】
上記吊下げ具と連続する紐状体の端部は、上記板状体に設けられた係止部において当該板状体に係止されていることを特徴とする請求項2に記載の保持具。
【請求項5】
上記環状保持部は複数の板状体を含むことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップ等の容器を、主に吊り下げ可能に保持するための容器保持具に係るものである。
【背景技術】
【0002】
コーヒーショップやコンビニエンスストア、ファストフード店等の店舗でカップ入りの飲料を購入し、これを持ち帰り用として購入者が店舗外に搬出して消費するような消費形態が定着している。
上記持ち帰り用の飲料の入ったカップ等は、簡易的なキャップ等が取り付けられるのみで密封等がされていないことが一般的である。このため、その購入者は典型的には手のひらでカップ等を把持して、これを傾けないように注意しながら搬送することが求められる。この結果として、飲料の入ったカップ等を把持する購入者の腕が当該カップ等に専有され、各種の不便を生じることとなる。
【0003】
上記のような不便を解消するために、例えば、特許文献1等に記載されるような、カップの底部を挿入して保持可能な形態に段ボール等を成形して成る保持具を使用し、この保持具に底部を挿入した状態でカップをレジ袋等に収納することで転倒を防止して、他のバッグ等と同様に搬送可能とする工夫が一般に適用されている。
【0004】
また、例えば、特許文献2には、カップを挿入可能な穴部を設けたシート状物を使用することで、カップを腕に吊り下げることによって搬送可能とする容器吊り下げ具が提案されている。また、特許文献3には、カップの径に対応した円周長を有する環部によってカップの側面を保持して、当該環部を吊り下げ可能とした容器ホルダーが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-132481号公報
【特許文献2】特開2005-82228号公報
【特許文献3】WO2012/144092号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1~3に記載されるカップの保持具等は、いずれも一回の使用の後に廃棄される、いわゆる使い捨てを前提とするものである。そして、使い捨てを前提とする保持具等においては、使用対象であるカップの形態や大きさが予め定まっているために、単純な構成によって所定の機能性を発揮させることが可能である。
【0007】
しかしながら、地球環境の保全等の観点からは、飲料を入れたカップ等を搬送するという目的のために、過分の資源を消費することは望ましいことではない。一方、店舗や飲料の種類等によって使用されるカップの形態や大きさが異なるため、カップ等の容器を保持するための保持具を繰り返して使用可能とするためには、当該店舗が提供するカップの形態や大きさに応じて保持具の形態等が適切に変化することで、汎用的に使用可能であることが求められ、その実現の困難性が繰り返して使用される保持具の普及を妨げているものと考えられる。
【0008】
本発明は、各種の形態や大きさ等を有するカップ等の容器について、当該形態等の違いによらず簡便且つ安定的に保持可能とすることにより汎用的に繰り返して使用可能であり、主に吊り下げて搬送可能とする容器保持具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する手段として、本発明は、容器側面に接触して容器を保持するための環状保持部と、当該環状保持部に取り付けられた吊下げ部を有することで、容器を吊り下げ可能とする保持具であって、当該環状保持部は、可撓性を有する板状体と、当該板状体間を締結して環状とする締結部を有する保持具を提供する。
上記保持具によれば、上記締結部が存在することによって容器を保持する環状保持部の周長や、板状体が容器側面に接する際の角度が調整可能となり、各種の形態を有する容器に対して、その側面部に環状の保持部を接触して容器を保持することが可能となる。
【0010】
また、本発明は、上記締結部は紐状体によって上記板状体間を締結するものであって、上記吊下げ部を構成する吊下げ具の少なくとも一部が当該締結部を構成する紐状体と連続していることにより、吊下げ具を吊り下げることによって締結部に張力が生じる保持具を提供する。当該保持具によれば、保持具を容器に装着する際に、容器の重量に起因する力によって締結部が自立的に形成され、容器に容易に装着することが可能となる。
【0011】
また、本発明は、上記吊下げ具と連続する紐状体が全体として環状を成している保持具を提供する。当該保持具によれば、当該紐状体を上記環状保持部に沿って取り回すことが可能になり、重量の大きい容器であっても安定して保持可能となる。
また、本発明は、上記吊下げ具と連続する紐状体の端部が、上記板状体に設けられた係止部において当該板状体に係止されている保持具を提供する。当該保持具によれば、より簡便に保持具を容器に装着することができる。
また、本発明は、上記環状保持部が複数の板状体を含む保持具を提供する。当該保持具によれば、保持具を容器に装着する際の形状的な自由度が向上し、より多様な形態の容器を保持可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る容器保持具を用いることにより、各種の形態や大きさ等を有するカップ等の容器を簡便且つ安定的に保持して搬送することが可能となり、繰り返して使用可能な容器保持具が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る容器保持具の実施形態の一例を示す図である。
図2】本発明に係る容器保持具の実施形態の一例を示す図である。
図3】本発明に係る容器保持具の実施形態の一例を示す図である。
図4】本発明に係る容器保持具の実施形態の一例を示す図である。
図5】本発明に係る容器保持具の実施形態の一例を示す図である。
図6】本発明に係る容器保持具の実施形態の一例を示す図である。
図7】本発明に係る容器保持具を収納した際の形態の一例を示す図である。
図8】本発明に係る容器保持具において、紐の緩みを防止するための構造の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明者が種々の検討を行ったところ、可撓性を有する板状体の端部の間を締結部によって締結することで形成される環状体によって容器の側面を保持すると共に、当該環状体に吊下げ部を取り付けてなる構造を有する容器保持具とすることにより、大きさや形態の異なるカップ等の容器であっても、簡便且つ安定的に保持して搬送することが可能となることを見出し、本発明に至ったものである。
【0015】
図1には、本発明に係る容器保持具の一例を示す。図1に示す容器保持具においては、保持対象である略円形の断面形状を有する有底の容器に対して、その側面の円周長を基準として、長辺の長さをその80%程度とした短冊形状のシリコーンゴム等のエラストマー素材であって、その長辺方向の端部付近に紐状体5を通すための穴部6を設けたものを板状体3として使用し、当該板状体3に設けた穴部6に通した紐状体5によって板状体3の長辺の端部同士が向き合うように締結して締結部4を形成することで、容器20の側面を保持可能な環状保持部1を構成している。
【0016】
なお、本発明に係る保持具によって保持される容器20は、主に飲料や食物等を入れるために使用される容器であって、一般的に側面が略筒状体であり、当該略筒状体の一方に底部を有すると共に、他方が開口部等とされた容器を意味するものとする。
また、店頭等で飲料等を販売する際に使用される容器は、未使用時の収納性を高める等の目的で同一形状の容器を相互に嵌合して積み重ね可能とするために、略筒状体の断面の大きさ(径)が、底部を基準として開口部に近づく程に大きくなるように形成されている。この結果、当該容器は、側面をなす略筒状の部分が底部に対して垂直でなく、所定のテーパーを有することが一般的である。本発明に係る保持具は、略筒状体の側面が底部に対して垂直である容器の他、上記側面が所定のテーパー角を有する容器等に対しても好ましく使用することができる。
【0017】
上記板状体3として使用されるシリコーンゴム等のエラストマー素材は、通常に使用する範囲では塑性変形を生じ難く自己保形性を有する一方で、所定の弾性変形能を有することによって良好な可撓性を示すことが知られている。本発明は、上記エラストマー素材等が示す可撓性を利用し、可撓性を示す板状体を用いて保持対象である容器の側面を包み込むように環状に面接触させることにより、側面方向等に十分な強度を有しない容器についても良好に保持させるものである。
【0018】
また、上記板状体3を用いて構成される環状の保持部1の一部に各種の紐状体等により形成される締結部4を設けることで、環状保持部4の円周長等を調整可能として、各種の形態や大きさ等を有する容器を保持可能とするものである。当該締結部4として、例えば、図1に示すように、板状体に設けられた穴部6を用いて紐状体5により編み上げる等の構造とすることによって、保持対象である容器の円周長に応じて環状保持部1を形成可能である。また、側面が所定のテーパー角を有する容器等を保持する場合にも、当該容器の側面部が有するテーパー角度に応じた環状保持部1を形成可能であり、板状体3を保持対象である容器20の側面に容易に面接触させることで、強度の低い使い捨ての紙コップ等の容器も安定して保持することが可能となる。
【0019】
また、本発明に係る容器保持具においては、上記容器を保持するための環状保持部1に吊下げ具8を取り付けることにより吊下げ部2とし、当該吊下げ部2によって環状保持部1に保持された容器を吊り下げ可能とするものである。この際に、当該吊下げ部2の長さを適宜設定することによって、使用者が当該吊下げ部2を掌で把持する以外に、使用者の手首、肘、頸等に当該吊下げ具を掛けることが可能であり、飲み物等が入った容器を搬送する際にも両手を自由にすることができる。
【0020】
本発明に係る容器の保持具は主に容器の側面に取り付けられるものであるため、容器に当該保持具を取り付けた状態でも、容器の底部や、上部の開口部(飲み口)の付近が保持具から露出した状態とすることができる。このため、保持具を装着した状態でも容器をテーブル等に置いたり、使用者が容器内部の飲み物を飲んだりすることが可能であり、保持具の装着により生じる不都合を低減することが可能である。
【0021】
更に、本発明に係る容器保持具は、環状保持部1を構成する締結部4の締結を解く等により、実施的に板状体3に固有の平板状の形状とする等、容易にガサ張らない形態にすることが可能である。このため、使用しない際には他に携行するバッグや衣服のポケット等に収納することで常に携帯して、必要な際に使用するような使用形態に適するものであり、使用者の日常の助けとなることで環境負荷の小さな繰り返しの使用を促すものである。
【0022】
本発明に係る容器の保持具の環状保持部を構成する板状体3は、容易に全体的な変形を生じて容器の側面に面接触を生じることのできる一方で、特に締結部4を構成する紐状体5等により局部的な変形を生じない程度の強度を有するような可撓性の材質を使用し、適用される容器の重量等に応じた適宜の厚み等で形成されることが好ましい。また、容器を良好に保持するために、容器20と板状体3間の滑りを生じ難い程度の摩擦係数を有する板状体が好ましく使用される。
【0023】
当該板状体を構成する材質としては、上記のシリコーンゴムの他、例えば、天然ゴムや、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)等のジエン系ゴム、ブチルゴム(イソブチエン・イソプレンゴム(IIR))、エチレン・プロピレンゴム(EPM)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、ウレタンゴム(U)、フッ素ゴム(FKM)等の非ジエン系ゴム、スチレン系、オレフィン系、エステル系、ウレタン系、アミド系、PVC系、フッ素等の熱可塑性エラストマー等のエラストマー素材等が好ましく使用される。また、上記エラストマー素材等を適宜の手段で発泡させて多孔質の形態とすることで、軽量化と表面の摩擦係数を向上することが可能である。
【0024】
上記エラストマー素材等では、一般に硬度が高くなることで変形に対する強度が増加する一方で、表面の摩擦係数が低下する傾向が見られる。このため、容器を良好に保持可能な程度の摩擦抵抗を生じることのできる硬度を有する素材を使用し、且つ、局所的な変形を生じない程度の厚みを付与することにより、良好な板状体とすることができる。
【0025】
具体的には、JIS-A硬度として、例えば20~70度程度の硬度を有するエラストマー素材等が好ましく使用される。また、硬度の異なる複数のエラストマー素材等を使用して、上記板状体3の容器側面に接する側の面を硬度が20~50度程度の比較的柔軟なエラストマー素材等とし、その裏面に硬度が40~70度程度の強度の高いエラストマー素材等を設けることにより、局所的な変形を防止するための強度と、容器に接する面の摩擦係数を両立できる点で好ましい。
【0026】
その他、容器に接触する板状体3の表面に、各種の微細な起伏(リブ)を設けることで摩擦抵抗を向上することも好ましい。また、板状体の厚みを板状体内で適宜変更することにより、容器を保持した際の板状体3の変形挙動を好ましい形態にすることができる。
【0027】
本発明に係る容器の保持具は、例えば、上記エラストマー素材等からなる平板から、所定の大きさの板状体3を切り抜き、これに所定の穴部6等を形成する等の方法によって製造することができる。一方、上記の熱可塑性エラストマーを使用して、金型内で板状体3を所定の形状に押出し成形することにより、その表面に上記のようなリブ模様を容易に設けられる他、以下に説明するような締結部4を構成する紐状体5等を通す穴部6の緩み止めなどを容易に形成することが可能である。また、押出し成形の際に予め板状体3に所定の曲率を付与する等、立体形状を持たせることによって、より安定的に容器を保持可能とすることができる。
【0028】
また、本発明に係る容器の保持具は、主に容器側面に接触して容器を保持可能とするものであるが、例えば、上記板状体の一辺に所定の突起を設けることにより、容器の側面だけでなく、その底部を保持可能としても良い。また、本発明に係る容器の保持具を使用する際に、容器の開口部付近に飲み口等として設けられた環状の突起を利用して、これに環状保持部1を突き当てることで保持具の脱落等を防止してもよい。
【0029】
上記板状体の長手方向の長さは、保持しようとする容器20の円周長に対して50~95%程度の長さにすることが好ましく、特に60~90%程度の長さや、70~90%程度の長さとすることで容器の保持性と汎用性を確保できる点で望ましい。板状体3の長さを保持しようとする容器20の円周長よりも短くすることにより、当該板状体3と締結部4からなる環状の保持部1により容器の側面を保持することが可能となる。一方、板状体3の長さを保持しようとする容器の円周長に比べて50%以上とすることにより、容器を保持する際に容器の面に生じる圧力が軽減され、強度が十分でない容器についても安定して保持することが可能となる。
【0030】
例えば、一般的な持ち帰り用の飲料に使用される容器の平均的な円周長は18~28cm程度であることから、板状体3の長さを9~27cm程度とすることに良好な環状の保持部1を形成することができる。また、板状体3の長さを14~22cm程度とすることで、一般的に使用される飲料用の容器に幅広く対応可能な環状の保持部1を形成することが可能である。
【0031】
また上記板状体3の幅(長手方向に垂直な方向の長さ)は、使用の支障にならない範囲で広くすることで、容器を保持する際に容器の面に生じる圧力を軽減することができる。一方、例えば、板状体の幅を10mm以上、或いは20mm以上とすることで、一般的な容器を安定して保持することが可能であり、特に意匠的な観点から板状体の幅を適宜変化させて各種形状を有する板状体とすることができる。
【0032】
板状体3の厚みは、使用する素材等に応じて適宜の厚みとすることができる。典型的には、締結部4によって拘束されることで容易に環状の保持部1を形成することができると共に、容器を保持した際に適宜の変形を生じて容器に面接触を生じ、略均一な面圧により容器を保持可能な程度の厚みにすることが好ましい。また、締結のために紐状体5を通す穴部6や、吊下げ具8を取り付けた際の局部的な変形を防止するために、部分的に厚みを厚くする等により補強を行うことも好ましい。
【0033】
上記エラストマー素材等を用いて板状体3とする際の典型的な厚みは2~6mm程度、より好ましくは3~5mm程度とすることが好ましく、当該範囲の厚みとすることにより、保持される容器の側面に良好な面接触を生じると共に、紐状体を通す穴部6や、吊下げ具8を取り付けた際の局部的な変形を防止することが可能である。
板状体は、図1に示すように、一枚の板状体3の両端を締結部4によって締結することで環状の保持部を形成する他、例えば、2~3枚の板状体3を使用して、それぞれを締結部4によって締結することで環状の保持部1を形成することも可能である。
【0034】
本発明に係る容器の保持具において、環状保持部1を構成する締結部4は、板状体の端部の間を締結することにより環状を保持し、特に容器を保持した際に容器の重量等によって当該対向する板状体の端部の間隔が必要以上に広がることを防止できる構造であれば適宜の構造とすることができる。
例えば、図1に示すように、締結部4を板状体に設けられた穴部6を用いて紐状体5により編み上げる構造とすることにより、保持する容器の円周長に応じて環状保持部1の円周長を調整できると共に、側面にテーパー角を有する容器に対しても、板状体3を当該テーパー角に応じた形状とすることが可能であり、容器側面と板状体間の面接触を良好に維持することができる。
【0035】
上記締結部を構成するために使用される紐状体5は、保持される容器の重量等に起因して紐状体に生じる引張応力に耐えるものであれば、適宜の紐状体を使用することができる。また、板状体3に設けた穴部6に紐状体5を通して締結部4を構成する際には、当該穴部に生じる応力を緩和するために、例えば、2~6mm程度の直径を有する紐状体5が好ましく使用される。
【0036】
また、紐状体5の柔軟性を確保すると共に、穴部6と紐状体5間に適度の摩擦を生じさせる観点から、複数の糸を編むことで形成される編み紐や、特に平形に編まれた編み紐、ゴムチューブ製の紐を用いることも好ましい。また、周期的に太さが変化した紐を用いる等により、締結部の弛緩を防止することも好ましい。
締結部の構造は図1に示すものに限定されず、上記紐状体5に代えて、ベルト状に編まれた紐を、樹脂等を用いて形成されたバックル等と組み合わせて使用することで長さを調整可能としたものや、いわゆるマジックテープ(登録商標)を用いて締結部を構成することも可能である。
【0037】
本発明に係る容器の保持具においては、容器を吊り下げて保持可能とするために、上記環状の保持部に適宜の方法で取り付けられた吊下げ部2を有する。当該吊下げ部2によって環状保持部1に保持された容器を吊り下げて保持可能であり、当該吊下げ部2の長さを適宜設定することによって、使用者が当該吊下げ具を把持する等によって容器の内容物がこぼれることを防止しながら容易に搬送することが可能である。なお、本発明において、環状保持部1に吊下げ部2を取り付けると記載する場合には、その取り付けの形態を問わず、吊下げ部2によって容器を保持する環状保持部1が吊り下げ可能であることを意味するものとする。
【0038】
当該吊下げ部2は、変形が自在な紐状体で構成する他、当該吊下げ部2を把持するなどして容器を搬送する際の持ち易さを向上する点から、帯状やベルト状、個別の部材を組み合わせてなるチェーン等の形態とすることも可能である。
当該吊下げ部2は、環状保持部1を介して容器を吊下げ可能な範囲でその形態を適宜決定することが可能であり、例えば、図1に記載するように、環状の保持部1を構成する板状体に設けた取り付け部7に吊下げ具8を締結して吊下げ部2とする他、以下で説明するように、環状の保持部1の締結部4を構成する紐状体5と吊下げ具8を一体のものとしてなる構造とすること等も可能である。
【0039】
図2には、本発明に係る容器の保持具の他の形態を示す。図2に示す形態においては、吊下げ部2を構成する吊下げ具8を、締結部4を構成する紐状体5と連続したものとすることにより、吊下げ具8を吊り下げることによって締結部4に張力を生じるようにしたものである。図2に示す形態では、締結部4を弛緩させた環状保持部1に容器を挿入した後に吊下げ具8を引くことで環状保持部1の円周長が縮小し、板状体3が容器の側面に面接触した状態で保持することが可能である。また、吊下げ具8を把持等して容器を搬送する際には、容器の重量に起因して紐状体5に生じる張力によって締結部4が締め付けられるため、図1に示すように、締結部4を構成するために紐状体を結ぶ場合と同様に、安定して容器を保持することが可能となる。
【0040】
なお、本明細書において、上記吊下げ部2を構成する吊下げ具8と、締結部4を構成する紐状体5が連続すると記載する場合には、例えば、図2に示すように、締結部4を構成する紐状体5の一部を吊下げ具8として使用する形態の他、吊下げ具8としてのベルト材等と締結部を構成する紐状体5を適宜の方法で連結する等して連続させた形態を含むものとする。
【0041】
また、図2に示す形態において、締結部を構成する紐状体5は吊下げ具8として機能する部分を含んで全体として環状であり、保持具として使用する際に末端を有しない形態とされている。本発明は当該形態に限定されず、例えば、締結部及び吊下げ具8として機能する紐状体5が端部を有し、当該紐状体5の端部を板状体3の適宜の位置に係止することによっても同様の機能を生じる保持具を形成することが可能である。
【0042】
図3には、本発明に係る容器の保持具の他の形態を示す。上記環状の紐状体5を使用する際には、環状保持部を構成する板状体3に沿って紐状体5を取り回すことが可能となり、板状体3に付加される張力を軽減することが可能となる。これを利用して、例えば、硬度の低い高い摩擦係数を示す軟質のエラストマー素材等を用いて板状体3を構成して、容器の保持安定性を高めることができる。また厚みや幅の小さい板状体3とすることがすることが可能になるために、各種の意匠を施すことが可能となる。また、上記板状体3に沿って取り回される紐状体5の環状部が当該板状体3から離脱することを防止するため、板状体3の適宜の紐通し部10等を設けることができる。
【0043】
図2,3に示すように、締結部4を構成する紐状体5を結ぶ構造(図1)に代えて、容器の重量に起因する力によって締結部4を締め付ける場合には、容器をより安定的に保持する目的で板状体3に設ける穴部6に、例えば、図8に示すような緩み止めの構造を設けることも好ましい。図8に示す緩み止めの構造においては、穴部6の内部に薄肉のリブが設けられており(図8(a))、当該穴部に紐状体5を通すことにより当該リブが変形することで、当該リブの変形抵抗によって紐状体5が逆方向に抜け難くすることができる。
【0044】
図4には、本発明に係る容器の保持具の他の形態を示す。図4に示す形態では、環状保持部1が二枚の板状体3を有し、当該板状体3の間に2箇所の締結部4が設けられている。図4に示す形態とすることにより、環状の保持部1を構成して容器に装着した際の板状体3の配置の自由度が向上し、板状体3と容器側面の間の面接触をより容易に実現することができる。
【0045】
また、図1~3に示すように環状保持部が一枚の板状体によって構成される場合、側面のテーパー角が大きい容器を保持する際には、当該板状体3が当該テーパー角に応じた傾斜角を持って容器に面接触を生じる結果、容器に対する保持具の対称性が低下し、容器を保持した際の安定性が低下する問題を生じる。これに対して、図4に示すように、環状保持部1が二枚の板状体3を有する形態とすることにより、側面のテーパー角が大きい容器を保持した際の対称性が向上して、安定的に容器を保持することが可能となる。
【0046】
また、図7に示すように、板状体3を二枚にすることにより、容器を保持しない場合に当該板状体3同士を重ね合わせて収納可能になり、締結部4を解くことなくコンパクトな形態にすることが可能であるため、日常的な携帯性を向上することができる。
【0047】
図5には、本発明に係る容器の保持具の他の形態を示す。図2~4に示すような、締結部4を構成する紐状体5と吊下げ具8を連続させて、吊り下げられる容器の重量に起因して紐状体5に生じる張力によって締結部4を締める形態においては、使用する紐状体5の形態等に応じて、紐状体5が板状体3に設けられた穴部6を通過する際の摩擦によって当該張力が緩和され、当該穴部6を通過した後の紐状体5には十分な張力を生じにくい場合が存在する。このため、例えば、図3,4等に示す形態の保持具を、板状体3の背面を通る紐状体5の部分に弛みが残留した状態で容器に装着した際には、その後に締結部4が緩みを生じる原因になる場合が存在する。
【0048】
一方、図5に示す形態においては、板状体3として十分な強度を有するものを使用し、紐状体5の端部を板状体の適宜の位置に係止する構造にすることにより、容器に装着した後の紐状体5の緩みを容易に排除可能であり、容器を安定して保持することが可能になる。また、図5に示す形態にすることで紐状体5の取り回しが減少し、図7に示すような形態で収納された状態から環状保持部1を形成して容器を保持させる際の操作が簡便になり、操作性を向上することができる。
【0049】
図5に示す形態で紐状体5を取り回す場合には、板状体3には紐状体5を移動自在に通過させる穴部6(通過穴)の他に、紐状体を係止する係止部9が設けられる。当該係止部9は、図5に示すように、板状体に設けた穴部6に通した紐状体5の端部を結ぶ等してその脱落を防止することで、容器を保持した際に紐状体5が板状体3に固定される形態とすることができる。また、他の係止部9の形態として、接着や縫い付ける等の手段によって紐状体5を板状体3に接合することによって係止部9を形成しても良い。一方、通過穴6には、図8に示すような緩み止め構造を設けて、容器の保持安定性を高める他、板状体の局所的な変形を防止するための補強等がなされることも望ましい。
【0050】
図4,5に示すように複数の板状体3から構成される環状保持部1とした際には、締結部4と吊下げ具8を兼ねる紐状体5の張力によって板状体3が容器側面に引きつけられて湾曲し、容器側面に面接触を生じることによって容器を安定して保持することができる。当該板状体3に生じる湾曲の形態は、使用する板状体3の形状や厚みの分布や、上記通過穴6と係止部9の位置等に応じて変化し、これを利用して板状体3が容器側面に接触する際の接触圧力の分布等を調整することができる。
【0051】
図6には、図4に示す形態において、主に板状体における通過穴6と係止部9の位置を変えた際の板状体3の変形挙動の変化について示す。図5では、全幅が約10cmのシリコーンゴム性の板状体(厚み:3mm。JIS-A硬度:50度。)に対して、係止部9を当該板状体3の端部近くに設け、通過穴とされる穴部6をその内側に設けたものについて、紐状体5としての編み紐を取り付けて張力を掛けた際の状態を示す。図6から、当該係止部9と通過穴6の位置関係を変化させることで、板状体3に生じる湾曲の様子が変化することが示される。
【0052】
図6に示す形態で紐状体5に加えられた張力は、板状体3上の係止部9を作用点として、対向する板状体3の穴部6(通過穴)の方向に係止部9を引きつけるように作用すると考えられる。このため、当該板状体の幅をより有効に活用して、容器側面に付加される接触圧力を分散する観点からは、当該力の作用点である係止部9間の距離を大きくすることが好ましいと考えられる。
【0053】
また、図6に示すように、通過穴6を係止部9よりも内側に設けて通過穴間の距離を係止部間の距離よりも小さくすることにより、紐状体5に加えられる張力は板状体3を容器に沿って湾曲させるように作用すると考えられる。このため、当該構成とすることで、容器に装着した際に容器側面に付加される接触圧力を分散し、特に板状体3の中心部付近に集中し易い接触圧力を緩和することができる。
【0054】
更に、係止部9間に通過穴6を直線上に配置する(図6(b))ことで板状体3内に生じる捻りが抑制され、円筒状の環状保持部1を形成し易い保持具とすることができる。一方、保持することが予定される容器の重量などに応じて、穴部6(通過穴)を係止部9に対して上下方向にずらして配置することにより、図6(a),(c)に見られるように上方、又は下方に大きく開口した錐状の環状保持部を形成することが可能となり、容器側面に対する接触圧力の分布等を調整することができる。
【0055】
本発明に係る保持具によって保持される容器の断面形状は特に限定されず、一般的な円形の断面形状を有する容器の他、角に丸みを与えられた略四角形の容器や、六角形、八角形等の多角形等の断面形状を有する容器に対しても使用することができる。特に、上記複数の板状体3から構成される環状保持部1を有する保持具を用いることで、回転対称性の低い断面形状を有する容器であっても安定的に保持することが可能になる。本発明に係る保持具によって保持される際の容器の内容物は飲料等の液状物に限定されず、ポップコーン等のスナック菓子等、適宜の物を入れた容器に対して本発明に係る保持具を使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に係る容器の保持具によれば、各種の形態の異なる容器に対して汎用に使用することが可能であると共に、保持具として使用しない際の携行性に優れるために、簡便に繰り返しの使用が可能となり、環境保全に等にも寄与するものである。
【符号の説明】
【0057】
1 環状保持部
2 吊下げ部
3 板状体
4 締結部
5 紐状体
6 穴部(通過穴)
7 取り付け部
8 吊下げ具
9 係止部
10 紐通し部
20 容器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8