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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124192
(43)【公開日】2022-08-25
(54)【発明の名称】電池及び電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/02 20060101AFI20220818BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20220818BHJP
   H01M 4/70 20060101ALI20220818BHJP
   H01M 4/40 20060101ALI20220818BHJP
   H01M 50/543 20210101ALI20220818BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20220818BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20220818BHJP
   H01M 4/50 20100101ALI20220818BHJP
   H01M 6/16 20060101ALI20220818BHJP
   H01M 4/06 20060101ALI20220818BHJP
   H01M 4/08 20060101ALI20220818BHJP
   H01M 50/531 20210101ALI20220818BHJP
   H01G 11/70 20130101ALI20220818BHJP
   H01G 11/30 20130101ALI20220818BHJP
   H01G 11/26 20130101ALI20220818BHJP
【FI】
H01M4/02 Z
H01M4/13
H01M4/70 A
H01M4/40
H01M2/30 B
H01M4/04 Z
H01M4/139
H01M4/50
H01M6/16 C
H01M4/06 L
H01M4/08 F
H01M2/26 A
H01G11/70
H01G11/30
H01G11/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021021809
(22)【出願日】2021-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】特許業務法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隆二
(72)【発明者】
【氏名】眞野 司
(72)【発明者】
【氏名】池山 美紗子
(72)【発明者】
【氏名】花村 玲
【テーマコード(参考)】
5E078
5H017
5H024
5H043
5H050
【Fターム(参考)】
5E078BA09
5E078BA27
5E078BA73
5E078FA04
5E078FA12
5E078FA13
5E078FA23
5H017AA03
5H017AS02
5H017CC03
5H017CC25
5H017DD08
5H017HH03
5H024AA03
5H024AA11
5H024AA12
5H024CC04
5H024DD11
5H024DD15
5H024HH13
5H043AA01
5H043AA05
5H043BA07
5H043BA19
5H043CA08
5H043DA02
5H043EA04
5H043EA06
5H043EA22
5H043JA23E
5H043LA02E
5H050AA08
5H050AA14
5H050BA06
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA02
5H050CA08
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA04
5H050DA20
5H050FA13
5H050HA04
(57)【要約】
【課題】電極合材量を増やして電極を厚くしても、集電体と電極合材との剥がれを抑え、高い性能を得ることのできる電池を実現する。
【解決手段】電池の正極電極又は負極電極として、対向する主面11a,11bとそれらの間を貫通する貫通孔11cとを有する集電体11と、その両主面11a,11b及び貫通孔11c内、又は貫通孔11c内に設けられる電極合材12とを備える電極10を用いる。電極10は、集電体11の両主面11a,11bが対向する方向Sにおける集電体11の厚さをd1、方向Sにおける電極10の厚さをd2とした時、d1≦d2であり、d2≧150μmで、d1/d2≧0.2の関係を満たす。これにより、電極合材12を厚くしても、集電体11からの電極合材12の剥がれ及びそれによる抵抗上昇等を抑えて曲げることのできる電極10を備えた、高性能の電池が実現される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する第1主面及び第2主面と、前記第1主面と前記第2主面との間を貫通する貫通孔とを有する集電体と、
前記集電体の前記第1主面、前記第2主面及び前記貫通孔内、又は前記集電体の貫通孔内に設けられる電極合材と
を備える第1電極を含み、
前記集電体の前記第1主面と前記第2主面とが対向する第1方向における前記集電体の厚さをd1、前記第1方向における前記第1電極の厚さをd2とした時、d1≦d2であり、d2≧150μmで、d1/d2≧0.2の関係を満たすことを特徴とする電池。
【請求項2】
対向する正極電極及び負極電極と、
前記正極電極と前記負極電極との間に介在され、電解質を含有する介在層と、
前記正極電極、前記負極電極及び前記介在層を収容する外装体と
を含み、
前記第1電極は、前記正極電極又は前記負極電極であることを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項3】
対向する正極電極及び負極電極と、
前記正極電極と前記負極電極との間に介在され、電解質を含有する介在層と、
前記正極電極、前記負極電極及び前記介在層を収容する外装体と
を含み、
前記正極電極として、前記第1電極を含み、
前記負極電極として、金属層を含むことを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項4】
前記第1電極の前記電極合材は、二酸化マンガンを含み、
前記金属層は、金属リチウム又はリチウムアルミニウム合金を含むことを特徴とする請求項3に記載の電池。
【請求項5】
前記第1電極に接続される第1端子を含み、
前記集電体は、前記電極合材から露出する、平面視で多角形状の第1部位を有し、
前記第1部位は、平面視で2辺以上において前記電極合材と接し、
前記第1端子は、前記第1部位に接続されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電池。
【請求項6】
前記集電体は、前記貫通孔を複数有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の電池。
【請求項7】
対向する第1主面及び第2主面と、前記第1主面と前記第2主面との間を貫通する貫通孔とを有する集電体と、
前記集電体の前記第1主面、前記第2主面及び前記貫通孔内、又は前記集電体の貫通孔内に設けられる電極合材と
を備える第1電極を形成する工程を含み、
前記集電体の前記第1主面と前記第2主面とが対向する第1方向における前記集電体の厚さをd1、前記第1方向における前記第1電極の厚さをd2とした時、d1≦d2であり、d2≧150μmで、d1/d2≧0.2の関係を満たすことを特徴とする電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池及び電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
正極又は負極の電極合材を金属箔や金属板等の集電体と積層した構造を有する電極を備えた電池が知られている。
例えば、このような電極に関し、電極活物質が塗布される第1面と、第1面と対向し電極活物質が塗布されない第2面とを有する電極集電体の、その第2面に、電極の柔軟性のための貫通孔等のパターンを形成する技術が知られている。
【0003】
また、複数の金属繊維がランダムに配列された、気孔を有する不織布構造の導電性ネットワーク構造を持った金属繊維型集電体に対し、活物質を含侵又はコーティングして電極を形成し、これに液状プリ電解質を一体化して高分子電解質を形成する技術が知られている。
【0004】
また、正極が複数の貫通孔を有するアルミニウム箔からなる正極集電体と硫黄系正極活物質とを有し、負極が複数の貫通孔を有する銅箔からなる負極集電体とシリコン系又はスズ系負極活物質とを有するリチウムイオン二次電池において、正負極集電体の貫通孔により、リチウムイオンの移動、負極活物質へのドーピングを行う技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2017-504933号公報
【特許文献2】特表2017-529663号公報
【特許文献3】国際公開第2016/159058号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
集電体と電極合材とを含む電極を備えた電池において、そのエネルギー密度を増加させる手法の1つとして、電極に集電体と共に含まれる電極合材を厚くし、電極合材量を増やす手法が挙げられる。しかし、電極合材量を増やすと、電極が厚くなって硬くなり、曲げ等の外力に起因した応力により、集電体と電極合材との剥がれが生じる場合がある。集電体と電極合材との剥がれは、それらの間の抵抗上昇等の不具合を招き、電池の性能を低下させる恐れがある。
【0007】
1つの側面では、本発明は、電極合材量を増やして電極を厚くしても、集電体と電極合材との剥がれを抑え、高い性能を得ることのできる電池を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの態様では、対向する第1主面及び第2主面と、前記第1主面と前記第2主面との間を貫通する貫通孔とを有する集電体と、前記集電体の前記第1主面、前記第2主面及び前記貫通孔内、又は前記集電体の貫通孔内に設けられる電極合材とを備える第1電極を含み、前記集電体の前記第1主面と前記第2主面とが対向する第1方向における前記集電体の厚さをd1、前記第1方向における前記第1電極の厚さをd2とした時、d1≦d2であり、d2≧150μmで、d1/d2≧0.2の関係を満たす電池が提供される。
【0009】
また、1つの態様では、上記のような電池の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
1つの側面では、電極合材量を増やして電極を厚くしても、集電体と電極合材との剥がれを抑え、高い性能を得ることのできる電池を実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態に係る電池の一例について説明する図である。
図2】実施の形態に係る電極の一例について説明する図である。
図3】電極の別例について説明する図である。
図4】実施の形態に係る電極の集電体と電極合材との密着性について説明する図である。
図5】実施の形態に係る電極の第1のタブ接続例について説明する図である。
図6】比較例に係る電極のタブ接続例について説明する図(その1)である。
図7】比較例に係る電極のタブ接続例について説明する図(その2)である。
図8】比較例に係る電極のタブ接続例について説明する図(その3)である。
図9】実施の形態に係る電極の第2のタブ接続例について説明する図である。
図10】実施の形態に係る電極の第3のタブ接続例について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は実施の形態に係る電池の一例について説明する図である。図1(A)には実施の形態に係る電池の一例の平面図を模式的に示し、図1(B)には実施の形態に係る電池の一例の分解斜視図を模式的に示している。
【0013】
図1(A)及び図1(B)に示す電池1は、薄形電池の1種であるラミネート型電池(「積層ラミネート型電池」とも言う)の一例である。電池1は、正極電極2、負極電極3、セパレータ4、正極端子(「正極タブ」とも言う)5、負極端子(「負極タブ」とも言う)6、絶縁フィルム(「タブフィルム」とも言う)7、及び外装体8を備える。
【0014】
正極電極2には、正極活物質を含む正極材料が用いられる。正極材料には、正極活物質のほか、導電助剤、樹脂成分等が含まれてよい。正極材料が、正極活物質のほか、導電助剤、樹脂成分等を含む場合、その正極材料を「正極合材」とも言う。正極電極2は、金属箔や金属板等の集電体を含んでよく、その場合、集電体上に正極合材が設けられる。尚、正極電極2の構成の詳細については後述する。
【0015】
負極電極3には、負極活物質を含む負極材料が用いられる。負極材料には、負極活物質のほか、導電助剤、樹脂成分等が含まれてよい。負極材料が、負極活物質のほか、導電助剤、樹脂成分等を含む場合、その負極材料を「負極合材」とも言う。負極電極3は、金属箔や金属板等の集電体を含んでよく、その場合、集電体上に負極合材が設けられる。尚、負極電極3の構成の詳細については後述する。
【0016】
電池1は、例えば、二酸化マンガンリチウム一次電池とすることができる。この場合、正極電極2には、正極活物質である二酸化マンガン(MnO)を含む正極材料が、ステンレス等の集電体上に設けられたものを用いることができる。負極電極3には、負極活物質であるリチウム(Li)を含む負極材料として、金属リチウム又はリチウムアルミニウム合金を含む金属層を用いることができる。
【0017】
セパレータ4は、正極電極2と負極電極3との間に介在される介在層であって、正極電極2と負極電極3とを隔離する。介在層であるセパレータ4には、電解質が含有又は保持される。正極電極2及び負極電極3は、それらの双方又は一方に集電体が用いられる場合、互いの正極材料と負極材料とがセパレータ4を介して対向するように設けられる。セパレータ4には、セルロース繊維や合成繊維の不織布、多孔質の樹脂やセラミック等を用いることができる。
【0018】
正極タブ5は、正極電極2の正極材料と電気的に接続される。正極タブ5は、正極電極2に集電体が用いられる場合、その集電体と接続される。正極タブ5には、例えば、帯状の金属箔や金属板等のリード部材(「端子リード」とも言う)が用いられる。
【0019】
負極タブ6は、負極電極3の負極材料と電気的に接続される。負極タブ6は、負極電極3に集電体が用いられる場合、その集電体と接続される。負極タブ6には、例えば、帯状の金属箔や金属板等の端子リードが用いられる。
【0020】
上記のような正極電極2、負極電極3、セパレータ4、正極タブ5及び負極タブ6(これらを「電池素子」とも言う)が、正極タブ5及び負極タブ6の先端部が突出するように、外装体8の外装フィルム8aで包まれる。外装フィルム8aには、金属層の両主面に絶縁層が積層されたラミネートフィルムを用いることができる。例えば、外装フィルム8aには、アルミニウムやステンレス等の金属箔の両主面に、ポリアミドやポリプロピレン等の樹脂層が積層されたラミネートフィルムが用いられる。
【0021】
電池1では、例えば、2枚の外装フィルム8aの間に、電池素子がその正極タブ5及び負極タブ6の先端部が突出するように挟まれる。2枚の外装フィルム8aの、正極タブ5及び負極タブ6が突出する側の縁部(「タブ突出側縁部」とも言う)を除く3辺の縁部が加熱及び加圧により溶着(「熱圧着」とも言う)される。溶着されていないタブ突出側縁部から、電解質として電解液(図示せず)、例えば、非水系電解液が注入され、減圧含侵後、タブ突出側縁部が熱圧着される。
【0022】
ここで、2枚の外装フィルム8aのタブ突出側縁部には、先端部を突出させる正極タブ5及び負極タブ6が介在する状態で十分な密閉性を実現するため、例えば、帯状のタブフィルム7が設けられる。タブフィルム7には、例えば、変性ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂が用いられる。タブフィルム7には、ポリエチレンナフタレート等の基材の両主面に、変性ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂が積層されたものが用いられてもよい。正極タブ5及び負極タブ6を挟む2枚の外装フィルム8aの間にタブフィルム7が介在され、加熱及び加圧が行われることで、タブフィルム7が正極タブ5及び負極タブ6と接着されると共に、対向するタブフィルム7同士、タブフィルム7と外装フィルム8aとが溶着される。これにより、2枚の外装フィルム8aのタブ突出側縁部が、十分な密閉性で封止される。
【0023】
尚、2枚の外装フィルム8aの正極タブ5及び負極タブ6が突出するタブ突出側縁部の封止は、このような帯状のタブフィルム7を用いて密閉する方式(タブフィルム方式)のほか、予め端子リードの途中にタブフィルムが接着されている部材(「タブリード」とも言う)を用いて密閉する方式(タブリード方式)によって行われてもよい。
【0024】
また、正極タブ5及び負極タブ6は、上記のような外装フィルム8aの同じ側の縁部から突出する形態に限らず、外装フィルム8aの異なる縁部からそれぞれ突出する形態、例えば、対向する縁部又は隣接する縁部からそれぞれ突出する形態とされてもよい。即ち、正極タブ5及び負極タブ6の外装フィルム8aからの突出方向は、上記のような同じ方向に限らず、互いに反対の方向であってもよいし、互いに交差する方向であってもよい。
【0025】
上記電池1の正極電極2及び負極電極3について更に述べる。
図2は実施の形態に係る電極の一例について説明する図である。図2(A)には実施の形態に係る電極の集電体の一例の断面図を模式的に示し、図2(B)には実施の形態に係る電極の一例の断面図を模式的に示している。
【0026】
電池1(図1)の正極電極2及び負極電極3のうち、少なくともいずれか一方は、例えば、図2(A)に示すような集電体11を含む。集電体11には、ステンレス、アルミニウム等の金属箔又は金属板が用いられる。集電体11には、その一方の主面11aと他方の主面11bとの間を貫通する、少なくとも1つ、一例として複数の貫通孔11cが設けられる。集電体11には、例えば、複数の気孔が設けられた多孔性メッシュ構造のステンレス、アルミニウム等の金属箔又は金属板を用いることができる。正極電極2の場合には、図2(A)に示すような集電体11上に正極合材が設けられ、負極電極3の場合には、図2(A)に示すような集電体11上に負極合材が設けられる。
【0027】
ここでは、このような集電体11を含む上記正極電極2又は負極電極3(図1)を「電極」とも言い、集電体11上に設けられる正極合材又は負極合材を「電極合材」とも言う。
【0028】
図2(B)に示す電極10は、図2(A)に示すような集電体11を含む正極電極2又は負極電極3の一例である。電極10の集電体11上に、正極合材又は負極合材である電極合材12が設けられる。図2(B)に示す電極10において、電極合材12は、集電体11の一方の主面11a及び他方の主面11b、並びにそれらの間を貫通する貫通孔11c内に設けられる。電極10は、例えば、貫通孔11cを有する集電体11の両主面11a,11bに電極合材12を塗布し、加圧及び乾燥することで、形成される。図2(B)に示す電極10は、その集電体11の両主面11a,11bの対向する方向Sの厚さをd1、その方向Sの電極10の厚さをd2とした時、d1<d2であり、例えば、d2≧150μmで、d1/d2≧0.2の関係を満たすように形成される。尚、電極10の厚さd2は、集電体11(厚さd1)と電極合材12とを含む厚さである。
【0029】
このような関係を満たす電極10では、電極合材12を比較的厚くしても、即ち、電極合材12の量を増やして電極10を比較的厚くしても、集電体11と電極合材12との密着性の低下が抑えられ、集電体11からの電極合材12の剥がれ、それによる抵抗上昇等が抑えられる。
【0030】
ここで、図3は電極の別例について説明する図である。図3(A)には電極の別例の断面図を模式的に示し、図3(B)には電極の別例の曲げ時の様子の断面図を模式的に示している。
【0031】
一般に、集電体と電極合材(正極合材又は負極合材)とを含む電極(正極電極又は負極電極)を備えた電池において、そのエネルギー密度を増加させるためには、電極に集電体と共に含まれる電極合材を厚くし、電極合材量を増やすことが有効である。
【0032】
例えば、図3(A)に示すような、集電体101とその両主面101a,101bに設けられた電極合材102とを含む電極100を考える。このような電極100では、それが用いられる電池のエネルギー密度を増加させるために、集電体101上に設けられる電極合材102の厚さを厚くすると、電極100が厚くなって硬くなる。そのため、曲げられて使用され得る電池に用いられる電極100の場合、電極100が曲げられた時の応力に対し、集電体101と電極合材102との密着が維持できないことが起こり得る。その結果、電極100には、図3(B)のP部に示すような、集電体101からの電極合材102の剥がれが生じ、それによる抵抗上昇等の不具合が生じることがある。集電体101からの電極合材102の剥がれ、それによる抵抗上昇等は、電極100が用いられる電池の性能を低下させる恐れがある。
【0033】
尚、図3(A)及び図3(B)には、集電体101の両主面101a,101bに電極合材102が設けられる例を示したが、集電体101の主面101a又は主面101bのいずれか一方に電極合材102が設けられる場合にも、その電極合材102を厚くすると、同様に集電体101からの電極合材102の剥がれ、それによる抵抗上昇等が生じ、電池の性能が低下し得る。
【0034】
これに対し、実施の形態に係る電池1の電極10(正極電極2又は負極電極3)では、上記構成により、電極合材12(正極合材又は負極合材)を比較的厚くしても、集電体11と電極合材12との密着性の低下が抑えられ、集電体11からの電極合材12の剥がれ、それによる抵抗上昇等が抑えられる。
【0035】
図4は実施の形態に係る電極の集電体と電極合材との密着性について説明する図である。図4(A)には実施の形態に係る電極の一例の断面図を模式的に示し、図4(B)には実施の形態に係る電極の一例の曲げ時の様子の断面図を模式的に示している。
【0036】
電極10では、図4(A)に示すように、貫通孔11cを有する集電体11が用いられ、その両主面11a,11b並びに貫通孔11c内に電極合材12が設けられる。これにより、電極10では、集電体11の両主面11a,11bに設けられる電極合材12同士が、貫通孔11c内に設けられる電極合材12によって接続される。
【0037】
電極10では、このように集電体11の両主面11a,11bの電極合材12同士が、集電体11の貫通孔11c内の電極合材12によって接続されることで、集電体11と電極合材12との接着が補助される。そのため、図4(B)に示すように、たとえ電極10が曲げられて使用される場合でも、電極10が曲げられた時の応力に抗して集電体11と電極合材12との接着が補助され、集電体11からの電極合材12の剥がれが抑えられる。電極10では、電池1のエネルギー密度を増加させるために、電極合材12の厚さを比較的厚くしても、集電体11の貫通孔11c内の電極合材12による両主面11a,11bの電極合材12同士の接続、それによる集電体11と電極合材12との接着の補助により、集電体11からの電極合材12の剥がれが抑えられるようになる。
【0038】
ここで、電極10では、集電体11の厚さd1が厚くなるほど、その貫通孔11cの方向Sの長さが長くなり、貫通孔11c内に設けられる電極合材12による上記のような補助の強度も強くなると考えられる。実験の結果、電極合材12の厚さを厚くし、電極10の厚さd2が150μm以上となるような場合、電極10の厚さd2に対する集電体11の厚さd1の比d1/d2が0.2以上であると、集電体11からの電極合材12の剥がれが効果的に抑えられることが見出された。
【0039】
尚、電極10において、電極合材12が、集電体11の貫通孔11c内と共に、両主面11a,11bに設けられる場合、集電体11の厚さd1は、電極10の厚さd2よりも薄くなり、即ち、d1<d2、比d1/d2<1となる。電極10において、電極合材12は、両主面11a,11b及び貫通孔11c内のうち、貫通孔11c内のみに設けることもでき、即ち、d1=d2、比d1/d2=1となってもよい。d1≦d2であり、d2≧150μmで、d1/d2≧0.2の関係を満たせば、集電体11からの電極合材12の剥がれ、それによる抵抗上昇等が抑えられる。一方、電極合材12よりも外側に集電体11が来るような形態、すなわち、d1>d2となるような形態の場合には、集電体11の角部等により、短絡のリスクが高まる可能性がある点に留意する。
【0040】
以上説明したように、実施の形態に係る電極10では、貫通孔11cを有する集電体11が用いられ、その貫通孔11c内及び両主面11a,11bに電極合材12が設けられ、又は貫通孔11c内及び両主面11a,11bのうちの貫通孔11c内のみに電極合材12が設けられる。電極10は、集電体11及び電極合材12を含む電極10の厚さd2が150μm以上で、電極10の厚さd2に対する集電体11の厚さd1の比d1/d2が0.2以上となるように設定される。このような厚さd1の条件を満たす、一定長さの貫通孔11cを有する集電体11が用いられることで、電極10の厚さd2が150μm以上となるような比較的厚い電極合材12が設けられる場合でも、集電体11からの電極合材12の剥がれを抑えることが可能になる。比較的厚い電極合材12によってエネルギー密度が高められ、また、それによって厚さd2が比較的厚くなっても集電体11からの電極合材12の剥がれを抑えて曲げることのできる電極10を備えた、高性能の電池1が実現される。
【0041】
尚、電極10の集電体11には、上記図2及び図4に例示したような複数の貫通孔11cに限らず、1つの貫通孔11cのみが設けられてもよい。貫通孔11cが1つのみ設けられる集電体11の場合にも、集電体11からの電極合材12の剥がれを抑える一定の効果を得ることが可能である。
【0042】
また、電極10の集電体11には、その両主面11a,11b間を貫通する貫通孔11cを有するものであれば、多孔性メッシュ構造の金属箔又は金属板に限らず、金属繊維が用いられた不織布構造等が採用されてもよい。貫通孔11cの形状は、例示のような方向S(図2)と平行に直線的に延びる形状には限定されない。
【0043】
上記のような構成を有する電極10には、端子、即ち、電池1の正極タブ5又は負極タブ6(図1)が接続される。正極タブ5又は負極タブ6は、例えば、電極10の集電体11及び電極合材12のうち、集電体11の部位に接続される。ここでは、正極タブ5又は負極タブ6を「電極タブ」又は「タブ」とも言う。
【0044】
図5は実施の形態に係る電極の第1のタブ接続例について説明する図である。図5には実施の形態に係る電極の一例の平面図を模式的に示している。
電極10には、例えば、図5に示すように、集電体11に設けられる電極合材12から露出する、平面視で矩形状の部位11dが設けられ、その部位11dに、電極タブ13(正極タブ5又は負極タブ6)が接続される。部位11dは、例えば、集電体11に設けられる電極合材12が部分的に除去されることで形成される。電極タブ13は、例えば、集電体11の部位11dに超音波溶接等によって取り付けられ、接続部13aにおいて集電体11と接続される。
【0045】
ここで、図6図8は比較例に係る電極のタブ接続例について説明する図である。図6には比較例に係る第1の電極の平面図を模式的に示し、図7には比較例に係る第2の電極の平面図を模式的に示し、図8には比較例に係る第3の電極の平面図を模式的に示している。
【0046】
図6に示す電極100Aは、電極合材12が設けられる集電体11に、電極合材12から露出する部位11d、即ち、電極合材12が設けられない平面矩形状の部位11dが、外側に突出するように設けられた構成を有する。図7に示す電極100B及び図8に示す電極100Cは、集電体11に設けられる電極合材12の、集電体11の一辺に対応する部分に、電極合材12から露出する部位11d、即ち、電極合材12が設けられない平面矩形状の部位11dが形成された構成を有する。これらの電極100A、電極100B及び電極100Cの、各々の集電体11の部位11dには、上記のような貫通孔11cが存在し、各々の集電体11の部位11dに、電極タブ13が接続される。
【0047】
集電体11の、貫通孔11cを有する部位11dに電極タブ13が接続される場合、その部位11dには貫通孔11cが存在するため、貫通孔11cが存在しない場合に比べて、集電体11の強度は弱くなる。そのため、電極10が曲げられた際、その曲げ時の応力が、集電体11の部位11dにおける電極タブ13の接続部13aに集中し易くなる。図6図8に示す電極100A、電極100B及び電極100Cはいずれも、平面視で、電極合材12が設けられない部位11dが、その部位11dの1辺11deで電極合材12と接する構成となっている。このような部位11dを有する集電体11を備える電極100A、電極100B及び電極100Cでは、貫通孔11cが存在することで強度が低下しており且つ1辺11deのみで電極合材12と接している部位11dの支えが比較的弱い。そのため、曲げられた際の応力が、部位11dにおける電極タブ13の接続部13aに集中し易くなる。電極タブ13の接続部13aに曲げ時の応力が集中すると、その接続部13aに剥がれが生じる恐れがある。
【0048】
これに対し、実施の形態に係る電極10では、図5に第1のタブ接続例として示したように、集電体11に設けられた電極合材12から露出し、電極合材12が設けられない、集電体11の平面矩形状の部位11dが、平面視で、その2辺11da,11dbで電極合材12と接するように設けられる。図5に示す電極10では、このように2辺11da,11dbが電極合材12と接するように設けられた部位11dに、電極タブ13が接続される。これにより、貫通孔11cが存在することで強度が低下している集電体11のみの部位11dが、その2辺11da,11dbで電極合材12により支えられ、電極10が曲げられる場合にも、その集電体11の部位11dへの応力の集中が抑えられる。そのため、部位11dに接続される電極タブ13の接続部13aに剥がれが生じることが抑えられる。このように、図5に示す電極10では、電極タブ13の接続部13aに剥がれが生じることが抑えられるため、それが用いられる電池1の性能の低下が抑えられるようになる。
【0049】
電極10に対する電極タブ13の接続は、上記図5のような例に限定されるものではない。
図9は実施の形態に係る電極の第2のタブ接続例について説明する図である。図9には実施の形態に係る電極の一例の平面図を模式的に示している。
【0050】
電極10は、例えば、図9に示すように、集電体11に設けられた電極合材12から露出し、電極合材12が設けられない、集電体11の平面矩形状の部位11dが、平面視で、その3辺11da,11db,11dcで電極合材12と接するように設けられてもよい。図9に示す電極10では、このように3辺11da,11db,11dcが電極合材12と接するように設けられた部位11dに、電極タブ13が接続される。これにより、貫通孔11cが存在することで強度が低下している集電体11のみの部位11dが、その3辺11da,11db,11dcで電極合材12により支えられ、電極10が曲げられる場合にも、その集電体11の部位11dへの応力の集中が抑えられる。そのため、部位11dに接続される電極タブ13の接続部13aに剥がれが生じることが抑えられる。このように、図9に示す電極10では、電極タブ13の接続部13aに剥がれが生じることが抑えられるため、それが用いられる電池1の性能の低下が抑えられる。
【0051】
また、図10は実施の形態に係る電極の第3のタブ接続例について説明する図である。図10には実施の形態に係る電極の一例の平面図を模式的に示している。
電極10は、例えば、図10に示すように、集電体11に設けられた電極合材12から露出し、電極合材12が設けられない、集電体11の平面矩形状の部位11dが、平面視で、その4辺11da,11db,11dc,11ddで電極合材12と接するように設けられてもよい。図10に示す電極10では、このように4辺11da,11db,11dc,11ddが電極合材12と接するように設けられた部位11dに、電極タブ13が接続される。これにより、貫通孔11cが存在することで強度が低下している集電体11のみの部位11dが、その4辺11da,11db,11dc,11ddで電極合材12により支えられ、電極10が曲げられる場合にも、その集電体11の部位11dへの応力の集中が抑えられる。そのため、部位11dに接続される電極タブ13の接続部13aに剥がれが生じることが抑えられる。このように、図10に示す電極10では、電極タブ13の接続部13aに剥がれが生じることが抑えられるため、それが用いられる電池1の性能の低下が抑えられる。
【0052】
ここでは、集電体11の電極合材12から露出する部位11dの平面形状を矩形状とする例を示したが、部位11dの平面形状は、矩形状に限らず、各種多角形状(四角形のほか、三角形や五角形以上)とすることができる。上記の例に従い、集電体11の各種多角形状の部位11dを、その2辺以上で電極合材12と接するように設けることで、部位11dに接続される電極タブ13の接続部13aに剥がれが生じることを抑えることができる。
【0053】
以上、実施の形態について説明した。
尚、以上の実施の形態の説明では、上記構成を有する電極10を、正極電極2と負極電極3とを1層ずつ含む1層型の電池1(図1)の、その正極電極2及び負極電極3のうちの少なくとも一方に適用する例を示した。このほか、上記構成を有する電極10は、1層型の電池1に限らず、複数の正極電極2及び複数の負極電極3を含む多層型の電池の、その正極電極2群及び負極電極3群のうちの少なくとも一方又はいずれかに適用することもできる。
【0054】
上記構成を有する電極10は、一例として、負極材料に金属リチウム等を用いる各種リチウム一次電池の正極電極に適用することができる。例えば、電極10は、正極材料に二酸化マンガンを用いる二酸化マンガンリチウム一次電池、正極材料にフッ化黒鉛を用いるフッ化黒鉛リチウム一次電池、正極材料に硫化鉄を用いる硫化鉄リチウム一次電池、正極材料に酸化銅を用いる酸化銅リチウム一次電池等の正極電極に適用することができる。
【0055】
このほか、上記構成を有する電極10は、負極材料にリチウム等を用い且つ正極材料に二酸化マンガン等を用いるリチウム二次電池の正極電極や、負極材料にグラファイト等を用い且つ正極材料にコバルト酸リチウム等を用いるリチウムイオン二次電池の正極電極、或いは電気二重層キャパシタの正負極電極等に適用することもできる。
【0056】
上記構成を有する電極10は、リチウムイオン二次電池の一形態である固体電池の正極電極又は負極電極に適用することもできる。固体電池では、例えば、正極電極と負極電極との間に、介在層として固体電解質層が介在される。正極電極及び負極電極とそれらの間に介在される固体電解質層とが、外装体、例えば、外装フィルムを用いた外装体に収容される。固体電池の固体電解質層には、例えば、酸化物系や硫化物系の固体電解質が用いられる。固体電池の正極電極には、正極活物質を含む正極材料が用いられ、正極材料には、正極活物質のほか、導電助剤、樹脂成分、固体電解質等を含む正極合材が用いられてよい。固体電池の負極電極には、例えば、負極活物質を含む負極材料が用いられ、負極材料には、負極活物質のほか、導電助剤、樹脂成分、固体電解質等を含む負極合材が用いられてよい。このような固体電池の正極電極又は負極電極に、上記構成を有する電極10が適用される。尚、固体電池の正極電極と負極電極との間の介在層には、ポリマー電解質が用いられてもよい。また、固体電池の負極電極には、金属リチウム又はリチウムアルミニウム合金、カーボン材料等が用いられてもよい。
【0057】
以上述べた実施の形態に係る電極10に関し、その実施例及び比較例について以下に説明する。
[実施例1]
正極電極及び負極電極とそれらの間に介在されるセパレータとを含む電池素子が、非水系電解液と共に、正極電極及び負極電極にそれぞれ接続される正極タブ及び負極タブの先端部が突出するように、外装フィルムを用いた外装体に収容されたラミネート型電池(薄形電池)を準備した。
【0058】
(正極電極)
正極活物質である二酸化マンガンを91重量部、導電助剤であるアセチレンブラックを5重量部、バインダであるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を3.7重量部、ホウ素を0.3重量部含有する組成に調整した正極合材を、厚さ150μmのステンレス(SUS304)製の多孔性メッシュ構造の集電体の両主面に、プレス後の正極電極の厚さが360μmとなるように塗布し、乾燥及びプレスを行った。正極電極の厚さは、集電体と正極合材とを含む厚さである。乾燥及びプレスの後、20mm×20mmの平面サイズで切り出し、正極合材の一部を、3mm×3mmの平面サイズで除去し、集電体を露出させた。正極合材の除去は、上記図5の例に従い、平面視で、正極合材の設けられない部位の2辺が正極合材と接するような形状となるように行った。そして、正極合材を除去して露出させた集電体の部位に、ステンレス製の正極タブを、超音波溶接により接続した。
【0059】
(負極電極)
金属リチウムを、19mm×19mmの平面サイズで切り出し、ステンレス製の負極タブを、超音波溶接により接続した。
【0060】
(セパレータ)
厚さ50μmのセルロースセパレータを用いた。
(電池の作製)
正極電極、セパレータ、負極電極の順に積層し、積層体を形成した。形成された積層体を、外装フィルムであるラミネートフィルム(アルミラミネートフィルム)を用いた外装体に収容し、非水系電解液を注入して、減圧含侵後、真空封止した。ラミネートフィルムの封止幅(溶着幅又は熱圧着幅)は2mmとし、180℃のヒートバーにて4辺を封止し、電池を作製した。
【0061】
(電池の評価)
作製した電池について、樹脂を用いてカード状に成形した後、JIS X6305-1に準拠した条件で、1辺の表と裏、もう1辺の表と裏を、各250回ずつ、合計1000回曲げる曲げ試験を実施した。曲げ試験実施前及び曲げ試験実施後において、1kHzでの抵抗(インピーダンス)を測定した。
【0062】
[実施例2]
正極電極の厚さを200μmとした以外は、実施例1と同様に電池を作製し、曲げ試験を実施した。
【0063】
[実施例3]
正極電極の厚さを750μmとした以外は、実施例1と同様に電池を作製し、曲げ試験を実施した。
【0064】
[実施例4]
正極電極の厚さを150μmとした以外は、実施例1と同様に電池を作製し、曲げ試験を実施した。
【0065】
[比較例1]
正極電極の厚さを850μmとした以外は、実施例1と同様に電池を作製し、曲げ試験を実施した。
【0066】
[比較例2]
集電体に厚さ30μmのアルミニウム製のプレーン箔を用い、その片面に正極合材を形成し、正極電極の厚さを100μmとした以外は、実施例1と同様に電池を作製し、曲げ試験を実施した。
【0067】
[比較例3]
集電体に厚さ10μmのステンレス製のプレーン箔を用い、その片面に正極合材を形成し、正極電極の厚さを100μmとした以外は、実施例1と同様に電池を作製し、曲げ試験を実施した。
【0068】
[比較例4]
集電体に厚さ30μmのアルミニウム製のパンチング箔を用い、正極電極の厚さを200μmとした以外は、実施例1と同様に電池を作製し、曲げ試験を実施した。
【0069】
[比較例5]
集電体に厚さ10μmのアルミニウム製のプレーン箔を用い、その片面に正極合材を形成し、正極電極の厚さを360μmとした以外は、実施例1と同様に電池を作製し、曲げ試験を実施した。
【0070】
実施例1~4及び比較例1~5の電池の構成及び曲げ試験の結果を表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
尚、表1において、正極電極の集電体がステンレス製の多孔性メッシュ構造である場合(実施例1~4及び比較例1)、「集電体種類」を「ステンレス/メッシュ」とし、「貫通孔」を「有」としている。正極電極の集電体がアルミニウム製のプレーン箔である場合(比較例2,5)、「集電体種類」を「アルミニウム/プレーン」とし、「貫通孔」を「無」としている。正極電極の集電体がステンレス製のプレーン箔である場合(比較例3)、「集電体種類」を「ステンレス/プレーン」とし、「貫通孔」を「無」としている。正極電極の集電体がアルミニウム製のパンチング箔である場合(比較例4)、「集電体種類」を「アルミニウム/パンチング」とし、「貫通孔」を「有」としている。
【0073】
また、表1において、「集電体厚さ」は、正極電極の集電体の厚さ[μm]を表し、「電極厚さ」は、集電体と正極合材とを含む正極電極の厚さ[μm]を表し、「比」は、「電極厚さ」に対する「集電体厚さ」の比[-](=集電体厚さ/電極厚さ)を表している。
【0074】
また、表1において、「初期抵抗」は、曲げ試験実施前に測定された抵抗[Ω]を表し、「曲げ試験後抵抗」は、曲げ試験実施後に測定された抵抗[Ω]を表している。表1において、「放電容量」は、作製した電池で測定された放電容量[mAh]を表し、「体積エネルギー密度」は、作製した電池について測定された体積エネルギー密度[mWh/cm]を表している。
【0075】
表1より、正極電極の電極厚さが150μm未満の場合(比較例2,3)、集電体種類及び集電体厚さ、並びに電極厚さに対する集電体厚さの比によらず、曲げ試験後抵抗の初期抵抗からの抵抗上昇は比較的小さく抑えられる。但し、正極電極の電極厚さが150μm未満の場合、放電容量及び体積エネルギー密度が比較的低くなる。
【0076】
表1より、正極電極の電極厚さが150μm以上の場合(実施例1~4及び比較例1,4,5)、集電体が貫通孔を有していて且つ正極電極の電極厚さに対する集電体厚さの比が0.2以上であれば(実施例1~4)、曲げ試験後抵抗の初期抵抗からの抵抗上昇が比較的小さく抑えられる。更に、集電体が貫通孔を有していて、且つ正極電極の電極厚さに対する集電体厚さの比が0.2以上であると(実施例1~4)、曲げ試験後抵抗の初期抵抗からの抵抗上昇が比較的小さく抑えられると共に、比較的高い放電容量及び体積エネルギー密度が得られる。正極電極の電極厚さが150μm以上の場合、集電体に貫通孔を設け且つ正極電極の電極厚さに対する集電体厚さの比を0.2以上とすることで、200mWh/cm以上の比較的高い体積エネルギー密度を実現することができる。
【0077】
[比較例6]
上記図6の例に従い、集電体に、正極合材が設けられる平面サイズ20mm×20mmの部分から外側に突出するように、正極合材が設けられない平面サイズ3mm×3mmの部位を設け、その部位に正極タブを超音波溶接により接続した以外は、実施例1と同様に電池を作製し、曲げ試験を実施した。
【0078】
[比較例7]
上記図7の例に従い、正極電極を平面サイズ20mm×20mmで切り出した後、1辺の正極合材を平面サイズ3mm×20mmで除去し、それによって露出した集電体の部位に正極タブを超音波溶接により接続した以外は、実施例1と同様に電池を作製し、曲げ試験を実施した。
【0079】
[比較例8]
上記図8の例に従い、正極電極を平面サイズ20mm×20mmで切り出した後、1辺の正極合材を平面サイズ3mm×20mmで除去し、それによって露出した集電体の部位に正極タブを超音波溶接により接続した以外は、実施例1と同様に電池を作製し、曲げ試験を実施した。
【0080】
[実施例5]
上記図9の例に従い、正極電極を平面サイズ20mm×20mmで切り出した後、1辺の中央部の正極合材を平面サイズ3mm×3mmで除去し、それによって露出した集電体の部位に正極タブを超音波溶接により接続した以外は、実施例1と同様に電池を作製し、曲げ試験を実施した。
【0081】
[実施例6]
上記図10の例に従い、正極電極を平面サイズ20mm×20mmで切り出した後、1辺の中央部の、縁よりも内側の部位の正極合材を、平面サイズ3mm×3mmで除去し、それによって露出した集電体の部位に正極タブを超音波溶接により接続した以外は、実施例1と同様に電池を作製し、曲げ試験を実施した。
【0082】
実施例1,5,6及び比較例6~8の電池の構成及び曲げ試験の結果を表2に示す。
【0083】
【表2】
【0084】
表2において、「集電体厚さ」は、正極電極の集電体の厚さ[μm]を表し、「電極厚さ」は、集電体と正極合材とを含む正極電極の厚さ[μm]を表し、「正極合材と接する辺の数」は、平面視で、正極合材が設けられずに集電体が露出する部位の、正極合材と接する辺の数[本]を表している。
【0085】
また、表2において、「初期抵抗」は、曲げ試験実施前に測定された抵抗[Ω]を表し、「曲げ試験後抵抗」は、曲げ試験実施後に測定された抵抗[Ω]を表している。
表2より、正極合材が設けられずに集電体が露出する部位の、正極合材と接する辺の数が、1本のみの場合(比較例6~8)、曲げ試験後抵抗の初期抵抗からの抵抗上昇は比較的大きくなる。これに対し、正極合材が設けられずに集電体が露出する部位の、正極合材と接する辺の数が、2本以上となる場合(実施例1,5,6)、曲げ試験後抵抗の初期抵抗からの抵抗上昇は比較的小さく抑えられる。
【符号の説明】
【0086】
1 電池
2 正極電極
3 負極電極
4 セパレータ
5 正極タブ
6 負極タブ
7 タブフィルム
8 外装体
8a 外装フィルム
10,100,100A,100B,100C 電極
11,101 集電体
11a,11b,101a,101b 主面
11c 貫通孔
11d 部位
11da,11db,11dc,11dd,11de 辺
12,102 電極合材
13 電極タブ
13a 接続部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10