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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124195
(43)【公開日】2022-08-25
(54)【発明の名称】アルカリ蓄電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/24 20060101AFI20220818BHJP
   H01M 50/147 20210101ALI20220818BHJP
   H01M 50/10 20210101ALI20220818BHJP
【FI】
H01M10/24
H01M2/04 E
H01M2/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021021817
(22)【出願日】2021-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】倉林 貴志
(72)【発明者】
【氏名】山根 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】田村 雅伯
【テーマコード(参考)】
5H011
5H028
【Fターム(参考)】
5H011AA13
5H011CC06
5H011CC14
5H011DD00
5H011KK00
5H028AA07
5H028BB07
5H028CC08
5H028EE05
5H028FF10
5H028HH03
(57)【要約】
【課題】封口板における錆発生を抑制し、安全性向上を図るアルカリ蓄電池を提供する。
【解決手段】本発明のアルカリ蓄電池は、正極板(24)と、負極板(26)と、正極板及び負極板の間に配置されたセパレータ(28)とが互いに重ね合わされて形成された渦状電極群(22)と、渦状電極群がアルカリ電解液とともに収容され、且つ負極板と電気的に接続された導電性の外装缶(10)と、正極板に電気的に接続された正極リード(30)と、外装缶において渦状電極群から離間した位置に取付けられた封口板(11)であって、外装缶の内部及び外部を接続する接続孔部(14b)を含む封口板と、接続孔部を開閉するように構成された弁部材(18)と、を備え、封口板は、予めアルカリ電解液が含浸されて、本体部の内面に取付けられた吸水性部材(40)を含んで構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の正極板と、帯状の負極板と、前記正極板及び前記負極板の間に配置された帯状のセパレータとが互いに重ね合わされて渦巻き状に形成された渦状電極群と、
一方の側に開口部を有する有底円筒形状の外装缶であって、前記渦状電極群がアルカリ電解液とともに収容され、且つ前記負極板と電気的に接続された導電性の外装缶と、
前記正極板に電気的に接続された正極リードと、
前記外装缶の前記一方の側において前記渦状電極群から離間した位置に取付けられた封口板であって、前記開口部を閉塞する本体部と前記外装缶の内部及び外部を接続する接続孔部とを含み、前記外装缶の内部を向く前記本体部の内面に前記正極リードが電気的に接続されている封口板と、
前記外装缶の外部を向く前記本体部の外面に取付けられ、前記外装缶の内部圧力に応じて前記接続孔部を開閉するように構成された弁部材と、を備え、
前記封口板は、予め前記アルカリ電解液が含浸されて、前記本体部の内面に取付けられた吸水性部材を含んで構成されている、ことを特徴とするアルカリ蓄電池。
【請求項2】
前記吸水性部材は、吸水性不織布、又は、吸水性ポリマーにより形成されている、請求項1記載のアルカリ蓄電池。
【請求項3】
前記封口板は、鋼製材料により形成されており、
前記吸水性部材には、前記本体部の前記内面のpHが11以上となるように前記アルカリ電解液が含浸されている、請求項1又は2記載のアルカリ蓄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のアルカリ蓄電池は、カドミウム負極とニッケル正極との間にナイロン製不織布からなるセパレータを介在させて形成される渦状電極群と、渦状電極群が挿入された有底円筒形の金属製外装缶と、を含んで構成されている。当該アルカリ蓄電池において、外装缶の内部にはアルカリ電解液(水酸化カリウム水溶液)が充填されている。アルカリ蓄電池は、絶縁ガスケットを介して外装缶に封口板を取付けることで封口されている。
【0003】
渦状電極群の負極芯体は負極集電体に溶接されており、当該負極集電体が外装缶の底部に溶接されている。他方、渦状電極群の正極芯体は正極集電体に溶接されており、当該正極集電体に設けられたリード部が封口板に溶接されている。アルカリ蓄電池では、セパレータを介して対向する正極と負極との間で所定の電気化学反応が生じ、これにより充電及び放電が行われている。また、アルカリ蓄電池においては、一般的に、過充電等により発生するガスを外部に解放するために、封口板の一部に貫通開口が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-154813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、データサーバ等の電気機器に対し、災害や停電時の非常用電源としてアルカリ蓄電池を使用する需要が増えている。非常用電源としてアルカリ蓄電池を使用する場合、通常、電気機器は外部電源で稼働されており、アルカリ蓄電池は電気機器から切り離されている。他方、アルカリ蓄電池は一次電池に比べて自己放電量が大きいため、アルカリ蓄電池には常時微小な電流が流されており、これによりアルカリ蓄電池の満充電状態が維持されている(トリクル充電)。そして、停電等により外部電源が使用不能になった場合に、満充電された蓄電池を電気機器に接続し、停電状態でも継続して電気機器を使用可能としている。
【0006】
アルカリ蓄電池が非常用電源として使用される場合、長期間(例えば数年から十年以上)に亘ってトリクル充電を行うことが想定される。そして、長期間に亘るトリクル充電が行われると、蓄電池のアルカリ電解液が減少し、これにより当該蓄電池内におけるpHが低下し得る。このことは、蓄電池を構成する鋼製部材(例えば外装缶や封口板等)に錆が発生する要因となり得る。
【0007】
特に、封口板の貫通開口に錆が生じた場合、貫通開口が錆によって閉塞又は拡大されるおそれがある。貫通開口が閉塞されてしまうと蓄電池の内部圧力を十分に下げることができず、他方、貫通開口が拡大されてしまうと電解液等の内容物が外部に漏洩するおそれがある。このことは、アルカリ蓄電池の長期使用における安全性を低下させる要因となっていた。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、封口板における錆発生を抑制し、安全性向上を図るアルカリ蓄電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係るアルカリ蓄電池は、帯状の正極板と、帯状の負極板と、前記正極板及び前記負極板の間に配置された帯状のセパレータとが互いに重ね合わされて渦巻き状に形成された渦状電極群と、一方の側に開口部を有する有底円筒形状の外装缶であって、前記渦状電極群がアルカリ電解液とともに収容され、且つ前記負極板と電気的に接続された導電性の外装缶と、前記正極板に電気的に接続された正極リードと、前記外装缶の前記一方の側において前記渦状電極群から離間した位置に取付けられた封口板であって、前記開口部を閉塞する本体部と前記外装缶の内部及び外部を接続する接続孔部とを含み、前記外装缶の内部を向く前記本体部の内面に前記正極リードが電気的に接続されている封口板と、前記外装缶の外部を向く前記本体部の外面に取付けられ、前記外装缶の内部圧力に応じて前記接続孔部を開閉するように構成された弁部材と、を備え、前記封口板は、予め前記アルカリ電解液が含浸されて、前記本体部の内面に取付けられた吸水性部材を含んで構成されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るアルカリ蓄電池によれば、封口板は、予めアルカリ電解液が含浸されて、本体部の内面に取付けられた吸水性部材を含んで構成されている。つまり、吸水性部材は、外装缶に収容されたセパレータから離れた位置に配置されている。このため、吸水性部材に含浸されたアルカリ電解液が、セパレータを介して対向する正極板と負極板との間で生じる所定の電気化学反応に寄与することはない。よって、アルカリ蓄電池に対し長期間に亘るトリクル充電を行うことによって外装缶に収容されたアルカリ電解液が減少した場合であっても、吸水性部材に含浸されたアルカリ電解液の減少は抑制され、ひいては封口板近傍におけるpHの低下も抑制される。従って、アルカリ蓄電池を長期間使用する場合であっても、封口板における錆発生を抑制することができ、安全性向上を図るアルカリ蓄電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係るアルカリ蓄電池を部分的に破断して示した斜視図である。
図2図1のアルカリ蓄電池における封口板及び正極リードを下側から見た状態を概略的に示す下面図である。
図3図1のアルカリ蓄電池における封口板及び正極リードを下側から見た状態を概略的に示す下面図であって、図2とは別の態様を示すものである。
図4】鉄の電位-pH図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、一実施形態に係るアルカリ蓄電池の一例としてニッケル水素二次電池2(以下、単に「電池2」ともいう)の説明をする。なお、本実施形態として、AAサイズの円筒形の電池2について説明するが、電池2のサイズはこれに限るものではなく、例えばAAAサイズ等他のサイズでもよい。また、アルカリ蓄電池としては、電解液にアルカリ溶液を用いるものであればよく、例えばニッケルカドミウム蓄電池等でもよい。
【0013】
図1は、一実施形態に係るニッケル水素二次電池2(アルカリ蓄電池)を部分的に破断して示した斜視図である。図2は、図1の電池2における封口板11及び正極リード30を下側から見た状態を概略的に示す下面図である。図3は、図1の電池2における封口板11及び正極リード30を下側から見た状態を概略的に示す下面図であって、図2とは別の態様を示すものである。図4は、鉄の電位-pH図である。説明の便宜上、円筒形状の外装缶10の軸線xにおいて、矢印a方向を上側、矢印b方向を下側とする。ここで、上側とは、電池2における正極端子20が設けられている側を意味し、下側とは、電池2における底壁35が設けられている側であり、上側の反対側を意味する。また、軸線xに垂直な方向(以下、「径方向」ともいう。)において、軸線xから遠ざかる方向を外周側とし(矢印c方向)、軸線xに向かう方向を内周側とする(矢印d方向)。
【0014】
図1に示すように、電池2は、一方の側である上側(矢印a方向)に開口部10aを有する有底円筒形状をなす外装缶10を備えている。外装缶10は導電性を有し、下側(矢印b方向)に設けられた底壁35は負極端子として機能する。外装缶10の上側には、封口板11が配置されている。具体的には、封口板11は、外装缶10の上側において、後述する渦状電極群22から離間した位置に取付けられている。
【0015】
封口板11は、導電性を有する。具体的には、封口板11は、ニッケルメッキ鋼板(鋼製部材)により形成された蓋板14及び正極端子20を含んで構成されている。具体的には、封口板11は、SPCCに相当する鉄鋼材料を地鉄とし、その表面にニッケル層を被膜して構成されている。蓋板14は、中空円板形状の部材であり、外装缶10の開口部10aを閉塞する本体部14aと、外装缶10の内部及び外部を接続する接続孔部14bとを含んで構成されている。接続孔部14bは、本体部14aの中央(内周側(矢印d方向))において、当該本体部14aを上下方向に貫通して形成されている。外装缶10の上側には、蓋板14の本体部14aを外周側(矢印c方向)で囲むリング形状の絶縁パッキン12が配置されている。絶縁パッキン12は、外装缶10の開口縁37をかしめ加工することにより外装缶10の開口縁37に固定されている。すなわち、蓋板14及び絶縁パッキン12は互いに協働して外装缶10の開口部10aを気密に閉塞している。
【0016】
本体部14aの上側の面である外面16には、接続孔部14bを塞ぐ弁部材としてのゴム製の弁体18が配置されている。外面16は、本体部14aにおいて外装缶10の外部を向く面である。更に、本体部14aの外面16には、弁体18を覆うようにしてフランジ付き円筒形状をなす金属製の正極端子20が電気的に接続されている。この正極端子20は弁体18を蓋板14に向けて押圧している。なお、正極端子20には、図示しないガス抜き孔が開口されている。
【0017】
封口板11は、予めアルカリ電解液が含浸されて、本体部14aの内面17に取付けられた吸水性部材40を含んで構成されている。吸水性部材40には、本体部14aの内面17のpHが11以上となるように、アルカリ電解液が含侵されている。図2及び図3に示すように、吸水性部材40は、正極リード30を避けるように本体部14aの内面17に取付けられている。具体的には、吸水性部材40は、正極リード30の先端部30bを避けるように本体部14aの内面17に取付けられている。なお、内面17は、本体部14aにおいて外装缶10の内部を向く面である。吸水性部材40は、吸水性不織布、又は、吸水性ポリマーにより形成されている。吸水性部材に含浸されるアルカリ電解液としては、後述する外装缶10の内部に充填されるアルカリ電解液と同一であることが好ましい。なお、吸水性不織布、吸水性ポリマーの構成自体は公知であるため、その詳細な説明は省略する。
【0018】
弁体18は、外装缶10の内部圧力に応じて接続孔部14bを開閉するように構成されている。弁体18は、通常時、接続孔部14bを気密に閉じている。一方、外装缶10内にガスが発生し、そのガスの圧力が高まれば、弁体18はガスの圧力によって圧縮され、接続孔部14bを開き、その結果、外装缶10内から接続孔部14b及び正極端子20のガス抜き孔(図示せず)を介して外部にガスが放出される。つまり、接続孔部14b、弁体18及び正極端子20は電池2のための安全弁を形成している。
【0019】
図1に示すように、外装缶10には、渦状電極群22が収容されている。この渦状電極群22は、それぞれ帯状の正極板24、負極板26及びセパレータ28が互いに重ね合わされて形成されている。渦状電極群22は、正極板24と負極板26との間にセパレータ28が挟み込まれた状態で渦巻き状に形成されている。すなわち、セパレータ28を介して正極板24及び負極板26が互いに重ね合わされている。負極板26は、外装缶10と電気的に接続されている。
【0020】
そして、外装缶10内には、渦状電極群22と蓋板14との間に正極リード30が配置されている。正極リード30は、その一端が正極板24に電気的に接続され、その他端が蓋板14に電気的に接続されている。具体的には、正極リード30は、正極板24に接続された基端部30aと、本体部14aの内面17に電気的に接続された先端部30bと、基端部30a及び先端部30bを接続する連結部30cとから構成されている。正極リード30は、図2に示すように連結部30cが接続孔部14bを跨いで延在するように構成されてもよいし、図3に示すように先端部30bが接続孔部14bの手前で終端するように構成されてもよい。従って、正極端子20と正極板24とは、正極リード30及び蓋板14を介して互いに電気的に接続されている。なお、蓋板14と渦状電極群22との間には円形の上部絶縁部材32が配置され、正極リード30の基端部30aは、上部絶縁部材32に設けられたスリット39の中を通されて延びている。また、渦状電極群22と外装缶10の底壁35との間にも円形の下部絶縁部材34が配置されている。
【0021】
更に、外装缶10内には、所定量のアルカリ電解液(図示せず)が注入されている。このアルカリ電解液は、渦状電極群22に含浸され、正極板24と負極板26との間での充放電の際の電気化学反応(充放電反応)を進行させる。このアルカリ電解液としては、KOH、NaOH及びLiOHのうちの少なくとも一種を溶質として含む水溶液を用いることが好ましい。
【0022】
セパレータ28の材料としては、例えば、ポリアミド繊維製不織布に親水性官能基を付与したもの、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン繊維製不織布に親水性官能基を付与したもの等を用いることができる。
【0023】
正極板24は、多孔質構造を有する導電性の正極基材と、この正極基材の空孔内に保持された正極合剤とを含んでいる。このような正極基材としては、例えば、発泡ニッケルのシートを用いることができる。正極合剤は、正極活物質粒子と、結着剤とを含む。また、正極合剤には、必要に応じて正極添加剤が添加される。
【0024】
上記した結着剤は、正極活物質粒子を互いに結着させるとともに、正極活物質粒子を正極基材に結着させる働きをする。ここで、結着剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)ディスパージョン、HPC(ヒドロキシプロピルセルロース)ディスパージョンなどを用いることができる。また、正極添加剤としては、酸化亜鉛、水酸化コバルト等が挙げられる。
【0025】
正極活物質粒子としては、ニッケル水素二次電池用として一般的に用いられている水酸化ニッケル粒子が用いられる。この水酸化ニッケル粒子は、高次化されている水酸化ニッケル粒子を採用することが好ましい。上記したような正極活物質粒子は、ニッケル水素二次電池用として一般的に用いられている製造方法により製造される。
【0026】
ついで、正極板24は、例えば、以下のようにして製造することができる。まず、正極活物質粒子、水及び結着剤を含む正極合剤スラリーを調製する。調製された正極合剤スラリーは、例えば、発泡ニッケルのシートに充填され、乾燥させられる。乾燥後、水酸化ニッケル粒子等が充填された発泡ニッケルのシートは、圧延されてから裁断され、正極板24が製造される。
【0027】
次に、負極板26について説明する。負極板26は、金属製の負極芯体と、この負極芯体に担持された、負極活性物質を含む負極合剤層とを備え、全体として帯状をなしている。負極芯体は、導電性を有しており、貫通孔が分布された帯状の金属材であり、例えば、パンチングメタルシートを用いることができる。負極合剤層は、負極芯体の両面に形成されている。
【0028】
負極合剤層は、負極活性物質を含む負極合剤により形成されている。負極合剤は、負極芯体の貫通孔内に充填されるばかりでなく、負極芯体の表面及び裏面にも層状に担持されて負極合剤層を形成している。負極合剤は、負極活物質としての水素を吸蔵及び放出可能な水素吸蔵合金粒子、導電剤、結着剤及び負極補助剤を含む。
【0029】
上記した結着剤は水素吸蔵合金粒子、導電剤等を互いに結着させると同時に水素吸蔵合金粒子、導電剤等を負極芯体に結着させる働きをする。ここで、結着剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、親水性若しくは疎水性のポリマー、カルボキシメチルセルロースなどの、ニッケル水素二次電池用として一般的に用いられている結着剤を用いることができる。また、負極補助剤としては、スチレンブタジエンゴム、ポリアクリル酸ナトリウム等を用いることができる。水素吸蔵合金粒子における水素吸蔵合金としては、特に限定されるものではなく、一般的なニッケル水素二次電池に用いられているものを用いるのが好ましい。導電剤としては、ニッケル水素二次電池の負極に一般的に用いられている導電剤が用いられる。例えば、カーボンブラック等が用いられる。
【0030】
負極板26は、例えば、以下のようにして製造することができる。まず、上記のような水素吸蔵合金粒子の集合体である水素吸蔵合金粉末と、導電剤と、結着剤と、水とを準備し、これらを混練して負極合剤のペーストを調製する。また、得られたペーストは、所定温度で所定時間のアニール処理が施された負極芯体に塗着され、乾燥させられる。その後、負極板26に対し、全体的に圧延が施される圧延工程により負極合剤層の空隙率が所定の値になるように調整が行われる。このようにして、負極板26が製造される。
【0031】
以上のようにして製造された正極板24及び負極板26は、セパレータ28を介在させた状態で渦巻き状に巻回され、渦状電極群22が形成される。このようにして得られた渦状電極群22は、外装缶10内に収容される。引き続き、当該外装缶10内には所定量のアルカリ電解液が注入される。その後、渦状電極群22及びアルカリ電解液を収容した外装缶10は、正極端子20を備えた封口板11により封口され、一実施形態に係る電池2が得られる。電池2は、初期活性化処理が施され、使用可能状態とされる。
【0032】
次いで、一実施形態のニッケル水素二次電池2の作用、効果について説明する。上述したように、一実施形態に係るニッケル水素二次電池2によれば、封口板11は、予めアルカリ電解液が含浸されて、本体部14aの内面17に取付けられた吸水性部材40を含んで構成されている。つまり、吸水性部材40は、外装缶10に収容されたセパレータ28から離れた位置に配置されている。このため、吸水性部材40に含浸されたアルカリ電解液が、セパレータ28を介して対向する正極板24と負極板26との間で生じる所定の電気化学反応に寄与することはない。よって、電池2に対し長期間に亘るトリクル充電を行うことによって外装缶10に収容されたアルカリ電解液が減少した場合であっても、吸水性部材40に含浸されたアルカリ電解液の減少は抑制され、ひいては封口板11近傍におけるpHの低下も抑制される。従って、電池2を長期間使用する場合であっても、封口板11における錆発生を抑制することができ、安全性向上を図る電池2を提供することができる。
【0033】
トリクル充電中において、封口板11の電位は0.4V~0.5Vとなるところ、図4に示すように、当該電位の場合、pH=11より低くなると鉄の腐食が発生する。すなわち、図4に示す電位-pHのグラフにおいて、pHが11より小さい部分に含まれるFe2O3・nH2Oの領域は腐食域と呼ばれており、鉄が腐食する領域である。この点で、電池2で使用されるアルカリ電解液(例えば8mol/LのKOH電解液)のpHは約15である。このため、電池2の初期状態では電解液が十分に存在し、電池2の内部や封口板11(ニッケルメッキ鋼板)の内面17もpH=15に近い状態であり、封口板11が腐食することはない。しかし、長期間のトリクル充電を経た電池2は、電池2内部の電解液が減少し、電池2の内部空間や封口板11の内面17のpHが低下する。そして、pHが11より低くなると、ニッケルメッキ鋼板の母材である鋼が赤錆びとなり、封口板11に錆が発生する。そこで、一実施形態に係る電池2によれば、吸水性部材40には、本体部14aの内面17のpHが11以上となるようにアルカリ電解液が含侵されている。このため、長時間のトリクル充電を経た後でも、封口板11の内面17のpHを11以上に維持することができ、封口板11における錆発生を抑制することができ、安全性向上を図る電池2を提供することができる。
【0034】
[実施例]
本実施例において、上記実施形態において説明したように製造された正極板24、負極板26、及びセパレータ28を渦巻き状に巻回して成る渦状電極群22を外装缶10に収容し、当該外装缶10内に所定量のアルカリ電解液を注入して、AA1000mAhの円筒形アルカリ蓄電池2を準備した。本実施例に係るアルカリ蓄電池2において、封口板11の内面17には、外装缶10に収容されたセパレータ28と同一材料(アルカリ電解液が含侵された吸水性不織布)が接着されている。他方、比較例に係るアルカリ蓄電池において、封口板の内面には、外装缶に収容されたセパレータと同一材料(アルカリ電解液が含侵された吸水性不織布)が接着されていない。このような本実施例に係るアルカリ蓄電池2及び比較例に係るアルカリ蓄電池に対し、60℃環境下において、電流値0.1Cのトリクル充電を1年間実施する試験を行った。試験終了後、両方の電池を解体し、封口板における錆発生の有無を確認した。この結果、下表に示すように、本実施例に係る電池2では、封口板11において錆の発生が確認されなかった。これに対し、比較例に係る電池では、封口板において錆の発生が確認された。本実施例に係る電池2のように封口板11にアルカリ電解液が含侵された吸水性不織布を取り付けた場合、封口板11において錆が発生しないことが確認できた。
【表1】
【0035】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に係るニッケル水素二次電池2に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、各構成を適宜選択的に組み合わせても良い。また、上記実施の形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的態様によって適宜変更され得る。
【0036】
例えば、上記実施形態では、封口板11において、本体部14aの中央に接続孔部14bが1つ形成される態様を説明した。しかし、接続孔部14bは、本体部14aの中央以外に複数個形成されていてもよい。
【0037】
また、上記実施形態では、吸水性部材40が、封口板11の本体部14aの内面17に取付けられる態様を説明した。しかし、吸水性部材40は、本体部14aの内面17に加え、接続孔部14bに取付けられてもよい。これにより、封口板11の接続孔部14bにおける錆発生を抑制することができる。
【符号の説明】
【0038】
2 ニッケル水素電池(アルカリ蓄電池)
10 外装缶
10a 開口部
11 封口板
14a 本体部
14b 接続孔部
16 外面
17 内面
18 弁体(弁部材)
22 渦状電極群
24 正極板
26 負極板
28 セパレータ
30 正極リード
40吸水性部材
図1
図2
図3
図4