(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124273
(43)【公開日】2022-08-25
(54)【発明の名称】保持部材
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20220818BHJP
H02N 13/00 20060101ALI20220818BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H02N13/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021021943
(22)【出願日】2021-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆太郎
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131BA19
5F131CA03
5F131EA03
5F131EB11
5F131EB78
5F131EB79
5F131EB81
5F131EB82
5F131HA21
(57)【要約】
【課題】対象物が加熱されたときでも、対象物の全体の均熱性を確保できる保持部材を提供する。
【解決手段】本開示の一態様は、外周が円形状または略円形状の半導体ウエハWを保持する上面11を備えるセラミックス部材10と、セラミックス部材10に対し上面11側とは反対側に配置され、半導体ウエハWを冷却するベース部材20と、を有する静電チャック1において、セラミックス部材10は、上面11を有する載置部51と、セラミックス部材10の外周面13にて凹むように形成されたオリフラ部41と、を備え、セラミックス部材10の外周面13の径方向について、オリフラ部41の外径D1が、載置部51の外径D2よりも小さく形成されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周が円形状または略円形状の対象物を保持する保持面を備える保持部と、
前記保持部に対し前記保持面側とは反対側に配置され、前記対象物を冷却する冷却部と、
を有する保持部材において、
前記保持部は、前記保持面を有する載置部と、前記保持部の外周面にて凹むように形成された位置合わせ部と、を備え、
前記保持部の外周面の径方向について、前記位置合わせ部の外径が、前記載置部の外径よりも小さく形成されていること、
を特徴とする保持部材。
【請求項2】
請求項1の保持部材において、
前記載置部における前記保持部と前記冷却部の配列方向の厚みは、0.1mm以上であること、
を特徴とする保持部材。
【請求項3】
請求項1または2の保持部材において、
前記位置合わせ部は、前記保持部と前記冷却部の配列方向と直交する方向に、直線状に形成されていること、
を特徴とする保持部材。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つの保持部材において、
前記保持部の外周面における前記位置合わせ部の位置で、前記保持部と前記冷却部の配列方向かつ前記保持部の外周面の径方向に沿って前記保持部を切り取った断面にて、前記位置合わせ部と前記載置部の外形は、階段状に形成されていること、
を特徴とする保持部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体ウエハなどの対象物を保持する保持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
保持部材に関する従来技術として、特許文献1には、外周の一部にオリフラ(オリエンテーションフラット)部が設けられるセラミック誘電体基板を有する静電チャックが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される静電チャックにおいて、セラミック誘電体基板のオリフラ部では、オリフラ部以外の部分と比べて、処理対象物との非接触面積が大きい。そのため、処理対象物が加熱されたときに、処理対象物においてオリフラ部に対応する部分が、セラミック誘電体基板側からの抜熱による冷却が不十分となり、ホットスポットとなるおそれがある。したがって、処理対象物が加熱されたときに、処理対象物の全体の均熱性を確保できないおそれがある。
【0005】
そこで、本開示は上記した問題点を解決するためになされたものであり、対象物が加熱されたときでも、対象物の全体の均熱性を確保できる保持部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本開示の一形態は、外周が円形状または略円形状の対象物を保持する保持面を備える保持部と、前記保持部に対し前記保持面側とは反対側に配置され、前記対象物を冷却する冷却部と、を有する保持部材において、前記保持部は、前記保持面を有する載置部と、前記保持部の外周面にて凹むように形成された位置合わせ部と、を備え、前記保持部の外周面の径方向について、前記位置合わせ部の外径が、前記載置部の外径よりも小さく形成されていること、を特徴とする。
【0007】
この態様によれば、保持部において、位置合わせ部に対して保持面側の位置に、位置合わせ部よりも外径の大きい載置部が設けられており、載置部が位置合わせ部よりも外側に突出している。これにより、対象物において位置合わせ部に対応する部分にて、対象物と保持部の接触面積が大きくなる。そのため、対象物における保持部の位置合わせ部に対応する部分の熱は、載置部を介して冷却部により抜熱され易くなる。そのため、対象物が加熱されたとき(例えば、プラズマ入熱時)に、対象物において、保持部の位置合わせ部に対応する部分が、ホットスポット(すなわち、他の部分と比べて温度が高い部分)となることを抑制できる。したがって、対象物の全体の均熱性を確保できる。
【0008】
上記の態様においては、前記載置部における前記保持部と前記冷却部の配列方向の厚みは、0.1mm以上であること、が好ましい。
【0009】
この態様によれば、載置部がない場合(厚み0mmの場合)と比べて、対象物における位置合わせ部に対応する部分がホットスポットになることを抑制できる。
【0010】
上記の態様においては、前記位置合わせ部は、前記保持部と前記冷却部の配列方向と直交する方向に、直線状に形成されていること、が好ましい。
【0011】
この態様によれば、位置合わせ部が直線状に形成されているので、例えばノッチ形状のように部分的にクラックが生じる可能性が低く、耐久性がよい。
【0012】
上記の態様においては、前記保持部の外周面における前記位置合わせ部の位置で、前記保持部と前記冷却部の配列方向かつ前記保持部の外周面の径方向に沿って前記保持部を切り取った断面にて、前記位置合わせ部と前記載置部の外形が、階段状に形成されていること、が好ましい。
【0013】
この態様によれば、載置部と位置合わせ部とを見分け易くなるので、対象物の位置合わせをする際に位置合わせ部が目印として見やすくなる。また、載置部と位置合わせ部を形成し易い。
【発明の効果】
【0014】
本開示の保持部材によれば、対象物が加熱されたときでも、対象物の全体の均熱性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図3】本実施形態の静電チャックの断面図(
図2のA-A断面図)である。
【
図7】解析モデルをセラミックス部材の上面側から見たときの図である。
【
図8】解析モデルをセラミックス部材の中心軸方向に切り取ったときの断面図であって、オリフラ部の深さを説明する図である。
【
図9】半導体ウエハを加熱したときの半導体ウエハの温度上昇の解析結果を示す図である。
【
図10】半導体ウエハの温度上昇の解析結果をグラフに表した図である。
【
図11】解析モデルをセラミックス部材の中心軸方向に切り取ったときの断面図であって、オリフラ部の深さと載置部の厚さを説明する図である。
【
図12】
図7に示す第1の位置において(オリフラ部の深さが1mmである場合において)、載置部の厚みを変えたときの半導体ウエハの温度上昇の解析結果をグラフに表した図である。
【
図13】
図7に示す第2の位置において(オリフラ部の深さが2mmである場合において)、載置部の厚みを変えたときの半導体ウエハの温度上昇の解析結果をグラフに表した図である。
【
図14】
図7に示す第3の位置において(オリフラ部の深さが3mmである場合において)、載置部の厚みを変えたときの半導体ウエハの温度上昇の解析結果をグラフに表した図である。
【
図15】
図7に示す第1の位置と第2の位置と第3の位置において、載置部の厚みと半導体ウエハの温度上昇幅との関係に関する解析結果をグラフに表した図である。
【
図16】比較例におけるオリフラ部の周辺を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示の保持部材に係る実施形態について説明する。本実施形態では、保持部材として、対象物である半導体ウエハWを保持する静電チャック1を例示して説明する。
【0017】
<静電チャックの全体説明>
本実施形態の静電チャック1は、半導体ウエハWを静電引力により吸着して保持する装置であり、例えば、半導体製造装置の真空チャンバー内で半導体ウエハWを固定するために使用される。なお、半導体ウエハWは、例えば、その外周が円形状または略円形状に形成されている。また、半導体ウエハWは、本開示の「対象物」の一例である。
【0018】
図1に示すように、静電チャック1は、セラミックス部材10と、ベース部材20と、セラミックス部材10とベース部材20とを接合する接合層30とを有する。なお、セラミックス部材10は本開示の「保持部」の一例であり、ベース部材20は本開示の「冷却部」の一例である。
【0019】
なお、以下の説明においては、説明の便宜上、
図1に示すようにXYZ軸を定義する。ここで、Z軸は、静電チャック1の中心軸Ca方向(
図1において上下方向)の軸であり、X軸とY軸は、静電チャック1の径方向の軸である。
【0020】
セラミックス部材10は、
図1に示すように、円盤状の部材であり、セラミックスにより形成されている。具体的には、セラミックス部材10は、直径の異なる2つの円盤が中心軸Ca(
図3参照)を共通にして重なる(詳細には、大きな直径を有する円盤状の下段部10bの上に、小さな直径を有する円盤状の上段部10aが重なる形態の)段付きの円盤状をなしている。セラミックスとしては、様々なセラミックスが用いられるが、強度や耐摩耗性、耐プラズマ性等の観点から、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ、Al
2O
3)または窒化アルミニウム(AlN)を主成分とするセラミックスが用いられることが好ましい。なお、ここでいう主成分とは、含有割合の最も多い成分(例えば、体積含有率が90vol%以上の成分)を意味する。
【0021】
図1~
図3に示すように、セラミックス部材10は、半導体ウエハWを保持する保持面である上面11と、セラミックス部材10の厚み方向(Z軸方向に一致する方向、上下方向)について上面11とは反対側に設けられる下面12とを備えている。
【0022】
また、セラミックス部材10の直径は、上段部10aが例えば150~300mm程度であり、下段部10bが例えば180~400mm程度である。セラミックス部材10の厚さは、例えば2~6mm程度である。なお、セラミックス部材10の熱伝導率は、10~50W/mK(より好ましくは、18~30W/mK)の範囲内が望ましい。
【0023】
そして、
図3に示すように、半導体ウエハWは、セラミックス部材10の上面11に支持されて、静電チャック1に保持される。
【0024】
また、セラミックス部材10は、その内部に不図示のチャック電極(吸着電極)を備えている。このチャック電極に図示しない電源から電圧が印加されることによって、チャック電極に静電引力が発生し、この静電引力によって半導体ウエハWが上面11に吸着されて保持される。
【0025】
ベース部材20は、セラミックス部材10に対し上面11側とは反対側に配置されている。このベース部材20は、例えば円柱状に形成されている。また、ベース部材20は、例えば金属(例えば、アルミニウムやアルミニウム合金等)により形成されているが、金属以外であってもよい。
【0026】
そして、ベース部材20は、
図1と
図3に示すように、上面21と、ベース部材20の厚み方向(Z軸方向に一致する方向、上下方向)にて上面21とは反対側に設けられる下面22と、を備えている。そして、ベース部材20の上面21は、セラミックス部材10の下面12と、接合層30を介して、熱的に接続されている。
【0027】
ベース部材20の直径は、例えば180~400mm程度である。また、ベース部材20の厚さ(Z軸方向の寸法)は、例えば20~50mm程度である。なお、ベース部材20(アルミニウムを想定)の熱伝導率は、160~250W/mK(好ましくは、230W/mK程度)の範囲内が望ましい。
【0028】
また、
図3に示すように、ベース部材20は、半導体ウエハWを冷却する冷媒(例えば、フッ素系不活性液体や水等)を流す冷媒流路23を備えている。そして、ベース部材20の冷媒流路23内に冷媒を流すことにより、ベース部材20が冷却され、これにより、接合層30を介してセラミックス部材10が冷却される。これにより、セラミックス部材10により半導体ウエハWが冷却されて、すなわち、セラミックス部材10と接合層30を介して半導体ウエハWとベース部材20との間で熱伝達が行われて、半導体ウエハWの抜熱が行なわれる。
【0029】
接合層30は、セラミックス部材10の下面12とベース部材20の上面21との間に配置され、セラミックス部材10とベース部材20とを熱伝達可能に接合する。
【0030】
この接合層30は、熱伝導性を有するフィラーを含む樹脂(シリコーン系樹脂やアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等)の接着材により構成されている。なお、接合層30の厚さ(Z軸方向の寸法)は、例えば0.1~1.5mm程度である。また、接合層30の熱伝導率は、例えば1.0W/mKである。なお、接合層30(シリコーン系樹脂を想定)の熱伝導率は、0.1~2.0W/mK(好ましくは、0.5~1.5W/mK)の範囲内が望ましい。
【0031】
<オリフラ部について>
図2に示すように、静電チャック1を上面視したときに(すなわち、セラミックス部材10の上面11側から静電チャック1を見たときに)、セラミックス部材10は、当該セラミックス部材10の上段部10aの外周面13と下段部10bの外周面とが、ともに円形状に形成されている。
【0032】
そして、
図3~
図5に示すように、セラミックス部材10は、その外周面13の一部に、半導体ウエハWの周方向の位置合わせを行うためのオリフラ部41(オリエンテーションフラット部、切り欠け部)を備える。このオリフラ部41は、セラミックス部材10の外周面13にて凹むように形成されている。そして、オリフラ部41は、
図4に示すように、セラミックス部材10とベース部材20の配列方向(すなわち、中心軸Ca方向、Z軸方向)と直交する方向、すなわち、上面11の面方向に、直線状に形成されている。なお、オリフラ部41は、本開示の「位置合わせ部」の一例である。
【0033】
このようにして、セラミックス部材10にオリフラ部41が形成されているので、半導体ウエハWの目印となる位置(例えば、切り欠き部の位置)とオリフラ部41の位置とを合わせることにより、半導体ウエハWの周方向の位置合わせを行うことができる。なお、オリフラ部41の幅δ(
図4参照)は、25.0mm~45.0mmとする。
【0034】
なお、オリフラ部41を有するセラミックス部材10を形成する際には、円柱状のセラミックス部材10の外周を研磨(切削)してオリフラ部41を形成してもよく、あるいは、オリフラ部41用に予め外径を調整したセラミックスの薄板を積層してセラミックス部材10を形成してもよい。
【0035】
<半導体ウエハの全体の均熱性を確保する対策について>
次に、半導体ウエハWの全体の均熱性を確保する対策について説明する。
【0036】
比較例として、オリフラ部41が
図16に示すように上面11の位置から形成されている場合を考える。この場合、オリフラ部41における半導体ウエハWとセラミックス部材10の非接触部分NC1の面積は、
図6に示すオリフラ部41以外の外周面13の部分における半導体ウエハWとセラミックス部材10の非接触部分NC2の面積よりも大きい。そのため、オリフラ部41において、ベース部材20の冷媒流路23を流れる冷媒による半導体ウエハWの抜熱が促進され難くなるおそれがある。したがって、半導体ウエハWが加熱されたとき(例えば、半導体ウエハWをプラズマ処理する際に半導体ウエハWに対して熱が加えられるプラズマ入熱時)に、半導体ウエハWにおいてオリフラ部41に対応する部分が、ホットスポット(すなわち、他の部分と比べて温度が高い部分)となるおそれがある。ゆえに、半導体ウエハWの全体の均熱性を確保できないおそれがある。
【0037】
そこで、本実施形態では、オリフラ部41の周辺の構造を工夫することにより、半導体ウエハWが加熱されたときであっても、半導体ウエハWにおいてオリフラ部41に対応する部分がホットスポットとなることを抑制して、半導体ウエハWの全体の均熱性を確保する。
【0038】
具体的には、
図3~
図5に示すように、セラミックス部材10の上段部10aは、載置部51を備えている。この載置部51は、半導体ウエハWが載置される上面11を有する。そして、セラミックス部材10の外周面13の径方向(
図4の上下方向、
図3と
図5の左右方向)について、オリフラ部41の外径D1(すなわち、セラミックス部材10の中心からオリフラ部41までの距離)が、載置部51の外径D2(すなわち、セラミックス部材10の中心から載置部51の外周までの距離)よりも小さく形成されている。
【0039】
図4に示すように載置部51の外形は円弧状に形成されており、このようにして、
図2示すように載置部51を含む上面11の外形は円形に形成されている。
【0040】
このようにして、セラミックス部材10において、オリフラ部41に対して上面11側の位置に、オリフラ部41よりも外径の大きい載置部51が設けられており、載置部51がオリフラ部41よりもセラミックス部材10の外周面13の径方向の外側に突出している。そして、これにより、オリフラ部41における半導体ウエハWとセラミックス部材10の非接触部分の面積が小さくなっている。言い換えると、オリフラ部41における半導体ウエハWとセラミックス部材10の接触部分の面積が大きくなっている。つまり、オリフラ部41における半導体ウエハWとセラミックス部材10の接触部分の面積は、オリフラ部41以外の部分における半導体ウエハWとセラミックス部材10の接触部分の面積と同じである。そのため、半導体ウエハWにおいてオリフラ部41に対応する部分の熱は、載置部51を介して、ベース部材20の冷媒流路23を流れる冷媒により抜熱され易くなっている。
【0041】
ここでは一例として、
図5に示す断面にて、オリフラ部41と載置部51の外形は、階段状に形成されている。ここで、
図5に示す断面は、セラミックス部材10の外周面13におけるオリフラ部41の位置で、中心軸Ca方向(すなわち、セラミックス部材10とベース部材20の配列方向)、かつ、セラミックス部材10の外周面13の径方向に沿って、セラミックス部材10を切り取った断面である。また、オリフラ部41と載置部51の外形は、載置部51における外周面13と下面51aと、オリフラ部41における外周面13とにより形成されている。
【0042】
また、本実施形態において、載置部51の厚みT1(詳しくは、中心軸Ca方向の厚み)を、0.1mm以上とする。
【0043】
ここで出願人は、半導体ウエハWを加熱したときの当該半導体ウエハWの温度上昇に関する確認評価を行った。
【0044】
まず、半導体ウエハWにおいてオリフラ部41に対応する部分の温度上昇について、オリフラ部41の存在の有無やオリフラ部41の深さDeの違いによってどのように変化するのかを、半導体ウエハWを保持した状態のセラミックス部材10をイメージして作成した解析モデルを用いて解析した。
【0045】
具体的には、解析モデルにおいて、
図7に示すように、半導体ウエハWを保持した状態のセラミックス部材10を上面11側から見たときに、半導体ウエハWにて第0の位置Leg0と第1の位置Leg1と第2の位置Leg2と第3の位置Leg3を設定した。そして、
図8に示すオリフラ部41の深さDeについて、第0の位置Leg0では0mmに設定し(すなわち、オリフラ部41が存在しないと設定し)、第1の位置Leg1では1mmに設定し、第2の位置Leg2では2mmに設定し、第3の位置Leg3では3mmに設定した。そして、解析条件として、半導体ウエハWが熱流束=40000W/m
2の熱量で加熱され、セラミックス部材10の下面12の温度が-10℃に冷却される、とした。
【0046】
すると、
図9と
図10に示すように、半導体ウエハWの温度上昇の大きさは、(第3の位置Leg3)>(第2の位置Leg2)>(第1の位置Leg1)>(第0の位置Leg0)となった。このように、オリフラ部41が存在する場合には(すなわち、第1の位置Leg1と第2の位置Leg2と第3の位置Leg3では)、オリフラ部41が存在しない場合(すなわち、第0の位置Leg0)に比べて半導体ウエハWの温度上昇が大きくなり、また、オリフラ部41の外径D1が小さくなるほど、すなわち、オリフラ部41の深さDeが大きくなるほど、半導体ウエハWの温度上昇が大きくなることが確認された。
【0047】
なお、
図10と後述する
図12~
図14において、横軸は、半導体ウエハWの径方向の位置を規定しており、半径が0mmの位置が半導体ウエハWの中心軸の位置であり、半径が150mmの位置が半導体ウエハWの外周の位置を示している。また、
図10と後述する
図12~
図14において、縦軸は、半導体ウエハWの温度を示している。
【0048】
次に、半導体ウエハWにおいてオリフラ部41に対応する部分の温度上昇が載置部51を設けることによりどのように改善されるかについて、確認評価を行った。
【0049】
具体的には、解析モデルにおいて、第1の位置Leg1と第2の位置Leg2と第3の位置Leg3にて、セラミックス部材10の上段部10aの厚みT0(
図11参照)を3.0mmとし、載置部51の厚みT1(
図11参照)を0.1mm~2.9mmの間で変化させながら、半導体ウエハWの温度上昇を解析した。すると、
図12~
図14に示すように、第1の位置Leg1と第2の位置Leg2と第3の位置Leg3において、いずれも、載置部51の厚みT1が0.1mm以上であれば、載置部51の厚みT1が0mmのとき(すなわち、載置部51が設けられていないとき)と比べて、半導体ウエハWにおいてオリフラ部41に対応する部分(半径125mm~150mm付近の部分)の温度上昇が抑えられた。このようにして、載置部51を設けることにより、半導体ウエハWにおいてオリフラ部41に対応する部分の温度上昇が改善されることが確認された。
【0050】
より具体的には、
図15に示すように、半導体ウエハWにおいてオリフラ部41に対応する部分(
図12~
図14における半径150mm付近の部分)の温度上昇幅ΔTについて、第1の位置Leg1と第2の位置Leg2と第3の位置Leg3において、いずれも、載置部51の厚みT1が0.1mm以上である場合に、抑えられることが確認された。
【0051】
詳しくは、第1の位置Leg1では、載置部51の厚みT1が0mmである場合(すなわち、載置部51が存在しない場合)には温度上昇幅ΔT=7.2℃であったが、載置部51の厚みT1が0.1mm~2.9mmである場合に温度上昇幅ΔT=4.8℃以下となって温度上昇幅ΔTが2.4℃以上抑えられた。
【0052】
また、第2の位置Leg2では、載置部51の厚みT1が0mmである場合には温度上昇幅ΔT=12.5℃であったが、載置部51の厚みT1が0.1mm~2.9mmである場合には温度上昇幅ΔT=8.3℃以下となって温度上昇幅ΔTが4.2℃以上抑えられた。
【0053】
さらに、第3の位置Leg3では、載置部51の厚みT1が0mmである場合には温度上昇幅ΔT=18.8℃であったが、載置部51の厚みT1が0.1mm~2.9mmである場合には温度上昇幅ΔT=13.4℃以下となって温度上昇幅ΔTが5.4℃以上抑えられた。
【0054】
このように、載置部51の厚みT1を少しでも持たせることで、具体的には、厚みT1を0.1mm~2.9mmとすることで、半導体ウエハWにおいてオリフラ部41に対応する部分の熱が載置部51を介してベース部材20の冷媒流路23を流れる冷媒により抜熱され易くなり、半導体ウエハWにおいてオリフラ部41に対応する部分の温度上昇が改善されることが確認された。そして、厚みT1を大きくするほど温度上昇の改善効果が高くなり、また、オリフラ部41の外径D1が小さくなるほど温度上昇の改善効果が高くなることが確認された。
【0055】
以上のような結果を踏まえて、セラミックス部材10の上段部10aの厚みT0を3.0mmとするとき、載置部51の厚みT1は、0.1mm以上、かつ、2.9mm以下とすることが望ましい。なお、厚みT0は最大6.0mmとすることも考えられ、この場合、厚みT1を0.1mm以上、かつ、6.0mm未満とすることが考えられる。
【0056】
<本実施形態の作用効果>
本実施形態の静電チャック1によれば、セラミックス部材10は、上面11を有する載置部51と、セラミックス部材10の外周面13に凹むように形成されたオリフラ部41と、を備えている。そして、セラミックス部材10の外周面13の径方向について、オリフラ部41の外径D1が、載置部51における外径D2よりも小さく形成されている。
【0057】
このようにして、セラミックス部材10において、オリフラ部41に対して上面11側の位置に、オリフラ部41よりも外径の大きい載置部51が設けられており、載置部51がオリフラ部41よりもセラミックス部材10の外周面13の径方向の外側に突出している。これにより、半導体ウエハWにおいてオリフラ部41に対応する部分にて、半導体ウエハWとセラミックス部材10の接触面積が大きくなる。そのため、半導体ウエハWにおいてオリフラ部41に対応する部分の熱は、載置部51を介してベース部材20により抜熱され易くなる。したがって、半導体ウエハWが加熱されたときに、半導体ウエハWにおいてオリフラ部41に対応する部分が、ホットスポットとなることを抑制できる。ゆえに、半導体ウエハWの全体の均熱性を確保できる。
【0058】
また、載置部51の中心軸Ca方向の厚みT1を0.1mm以上とすることにより、載置部51がない場合(厚み0mmの場合)と比べて、半導体ウエハWを加熱した際の温度上昇幅ΔTを十分に抑えることができるので、半導体ウエハWにおいてオリフラ部41に対応する部分がホットスポットになることを抑制できる。
【0059】
また、オリフラ部41は、上面11の面方向に直線状に形成されていることにより、例えばノッチ形状のように部分的にクラックが生じる可能性が低く、耐久性がよい。
【0060】
また、本実施形態では、オリフラ部41と載置部51の外形が、階段状に形成されているので、載置部51とオリフラ部41とを見分け易くなり、半導体ウエハWの位置合わせをする際にオリフラ部41が目印として見やすくなる。また、載置部51とオリフラ部41を形成し易くなる。
【0061】
なお、上記した実施の形態は単なる例示にすぎず、本開示を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。
【0062】
例えば、セラミックス部材10は、上下で2つの部材に分かれる2部材構造になっていてもよく、この場合、上方の部材が本開示の「保持部」の一例となる。また、例えば、セラミックス部材10とベース部材20とが一体物に形成されていてもよい。
【0063】
また、例えば、本開示の「位置合わせ部」の一例として、直線状のオリフラ部41の代わりに、V字形状のノッチ形状部であってもよい。
【0064】
また、例えば、
図5の断面に相当する断面にて、載置部51の外形がテーパ形状であってもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 静電チャック
10 セラミックス部材
10a 上段部
11 上面
13 外周面
20 ベース部材
23 冷媒流路
30 接合層
41 オリフラ部
51 載置部
W 半導体ウエハ
NC1,NC2 非接触部分
D1 (オリフラ部の)外径
D2 (載置部の)外径
T0 (セラミックス部材の上段部の)厚み
T1 (載置部の)厚み
De (オリフラ部の)深さ
Leg0 第0の位置
Leg1 第1の位置
Leg2 第2の位置
Leg3 第3の位置
ΔT 温度上昇幅