(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124292
(43)【公開日】2022-08-25
(54)【発明の名称】打撃工具
(51)【国際特許分類】
B25D 16/00 20060101AFI20220818BHJP
B25D 17/00 20060101ALI20220818BHJP
B25D 17/26 20060101ALN20220818BHJP
【FI】
B25D16/00
B25D17/00
B25D17/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021021971
(22)【出願日】2021-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】町田 吉隆
【テーマコード(参考)】
2D058
【Fターム(参考)】
2D058AA14
2D058CA05
2D058CB06
2D058CB14
2D058DA00
2D058DA27
(57)【要約】
【課題】製造コストや組み付けの手間を軽減しつつグリスの充填率を上げる。
【解決手段】ハンマドリル1は、ハウジング2内に、モータ9と、前端にビットBを装着可能なツールホルダ23と、ビットBを打撃可能な駆動機構30と、ハウジング2内で駆動機構30を支持するインナハウジング40とを有する。ハンマドリル1では、ハウジング2と、インナハウジング40と、ハウジング2とインナハウジング40との間に介在されたOリング49とにより、ハウジング2内に、駆動機構収容領域Tを含む空間が仕切形成されている。ハウジング2内には、駆動機構収容領域Tとそれ以外の空間とを仕切る隔壁54が設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に、
モータと、
前端にビットを装着可能なツールホルダと、
前記ビットを打撃可能な駆動機構と、
前記ハウジング内で前記駆動機構を支持するインナハウジングと、を有する打撃工具であって、
前記ハウジングと、前記インナハウジングと、前記ハウジングと前記インナハウジングとの間に介在されたシール部材とにより、前記ハウジング内に、駆動機構収容領域を含む空間が仕切形成され、
前記ハウジング内に、前記駆動機構収容領域とそれ以外の空間とを仕切る隔壁が設けられていることを特徴とする打撃工具。
【請求項2】
前記隔壁は、前記ハウジングと前記インナハウジングとにそれぞれ形成されたリブ同士が当接して形成されることを特徴とする請求項1に記載の打撃工具。
【請求項3】
前記ハウジング側のリブと、前記インナハウジング側のリブとのうちの少なくとも一方のリブは、他方のリブに押し付けられて変形することにより前記他方のリブに密着するリブであることを特徴とする請求項2に記載の打撃工具。
【請求項4】
前記ハウジングは樹脂製であり、前記インナハウジングの少なくとも一部は金属製であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の打撃工具。
【請求項5】
前記モータは、出力軸が前記ツールホルダの軸線方向と平行となる姿勢で配置され、
前記駆動機構は、前記ツールホルダと平行に配置されて前記出力軸の回転が伝達される中間軸を有し、前記中間軸は、前記ツールホルダに回転伝達を行うギヤを有して前記インナハウジングに支持され、
前記インナハウジング側のリブは、前記ギヤの少なくとも一部を覆うことを特徴とする請求項2又は3に記載の打撃工具。
【請求項6】
前記インナハウジングは、前記ツールホルダを支持する軸受を保持する軸受保持部を有し、前記軸受保持部に前記インナハウジング側のリブが突出形成されていることを特徴とする請求項5に記載の打撃工具。
【請求項7】
前記インナハウジング側のリブの前端は、前記インナハウジングの最前方位置に突出していることを特徴とする請求項6に記載の打撃工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンマドリル等の打撃工具に関する。
【背景技術】
【0002】
ハンマドリル等の打撃工具は、ハウジング内に、先端にビットを装着可能なツールホルダを保持している。ツールホルダは、往復動するピストン(ピストンシリンダも含む)と、空気バネの作用でピストンと連動して往復動するストライカとを有している。ハウジング内には、ツールホルダとピストンとストライカとを含み、ビットに打撃作動を付与可能な駆動機構が形成されている。駆動機構は、ハウジング内に設けられたインナハウジングに支持されている。
このような打撃工具では、駆動機構の作動性や耐久性を維持するため、ハウジング内にグリス(潤滑剤)が充填される。例えば特許文献1には、ハウジング内にグリスのガイド部材を収容して、ハウジング内にグリスの充填室を形成することでグリスの充填率を上げる構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】ドイツ公開特許公報第102013202213号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の打撃工具では、グリスの充填率を上げるために別体のガイド部材を用意してハウジング内に固定する必要があり、製造コストや組み付けの手間がかかることになる。
【0005】
そこで、本開示は、製造コストや組み付けの手間を軽減しつつグリスの充填率を上げることができる打撃工具を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示は、ハウジング内に、
モータと、
前端にビットを装着して回転可能な筒状のツールホルダと、
前記ビットを打撃可能な駆動機構と、
前記ハウジング内で前記駆動機構を支持するインナハウジングと、を有する打撃工具であって、
前記ハウジングと、前記インナハウジングと、前記ハウジングと前記インナハウジングとの間に介在されたシール部材とにより、前記ハウジング内に、駆動機構収容領域を含む空間が仕切形成され、
前記ハウジング内に、前記駆動機構収容領域とそれ以外の空間とを仕切る隔壁が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、別体のガイド部材等を用いなくても隔壁によって無駄なスペースを排除して駆動機構収容領域を小さくすることができる。よって、製造コストや組み付けの手間を軽減しつつグリスの充填率を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図5】アウタハウジングとモータハウジングとインナハウジングとの分解斜視図である。
【
図8】アウタハウジングを省略したインナハウジング及びモータハウジングの拡大正面図である。
【
図10】
図8のF-F線断面図(アウタハウジング付き)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の一実施形態において、隔壁は、ハウジングとインナハウジングとにそれぞれ形成されたリブ同士が当接して形成されていてもよい。この構成によれば、ハウジングとインナハウジングとの組み付けと同時に隔壁が形成される合理的な構造となる。
本開示の一実施形態において、ハウジング側のリブと、インナハウジング側のリブとのうちの少なくとも一方のリブは、他方のリブに押し付けられて変形することにより他方のリブに密着するリブ(潰しリブとも呼ばれる)となっていてもよい。この構成によれば、ハウジング側のリブとインナハウジング側のリブとが密着し、リブ同士の当接により隔壁を形成してもシール性が確保される。
本開示の一実施形態において、ハウジングは樹脂製であり、インナハウジングの少なくとも一部は金属製であってもよい。この構成によれば、インナハウジングの剛性を確保しつつ、ハウジング側のリブとインナハウジング側のリブとの密着性を維持することができる。
【0010】
本開示の一実施形態において、モータは、出力軸がツールホルダの軸線方向と平行となる姿勢で配置され、駆動機構は、ツールホルダと平行に配置されて出力軸の回転が伝達される中間軸を有し、中間軸は、ツールホルダに回転伝達を行うギヤを有してインナハウジングに支持され、インナハウジング側のリブは、ギヤの少なくとも一部を覆う構成となっていてもよい。この構成によれば、隔壁をギヤの外側に形成してグリスが再付着しやすくなる。
本開示の一実施形態において、インナハウジングは、ツールホルダを支持する軸受を保持する軸受保持部を有し、軸受保持部にインナハウジング側のリブが突出形成されていてもよい。この構成によれば、軸受保持部を利用してインナハウジング側のリブを簡単に形成できる。
本開示の一実施形態において、インナハウジング側のリブの前端は、インナハウジングの最前方位置に突出していてもよい。この構成によれば、ハウジング側のリブとの突き合わせがしやすくなる。
【実施例0011】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
(ハンマドリルの概略の説明)
図1は、ハンマドリルの一例を示す斜視図である。
図2は、ハンマドリルの中央縦断面図である。
図3は、
図2における駆動機構部分の拡大図である。
図4は、
図3のA-A線断面図である。
ハンマドリル1は、外郭を形成するハウジング2を有する。ハウジング2は、前側のアウタハウジング3と、その後方のモータハウジング4と、その後方のハンドルハウジング5とを有する。
モータハウジング4は、前側に正面視四角形状の連結部6を有し、後側に筒状のモータ収容部7を有する。連結部6は、
図5にも示すように、正面視の四隅で前方から4本のネジ8,8・・によってアウタハウジング3と連結されている。モータ収容部7には、モータ9が、出力軸10を前方に向けた姿勢で収容されている。
ハンドルハウジング5は、モータ収容部7に後方から外装されて前後方向へ相対移動可能である。ハンドルハウジング5は、コイルバネ11を用いた防振機構を介して後退位置に付勢されている。
【0012】
ハンドルハウジング5の後端には、下向きに延びるハンドル12が形成されている。ハンドル12内には、トリガ14を前方へ突出させたスイッチ13が収容されている。スイッチ13には、電源コード15が接続されている。電源コード15は、ハンドル12の下端から引き出されている。ハンドル12の左右の側面には、前後方向に延びる複数の吸気口16,16・・がそれぞれ形成されている。左右の吸気口16は、出力軸10の軸線を挟んで対向するように配置されている。
モータ9の出力軸10は、連結部6を貫通してアウタハウジング3内に突出している。出力軸10の前端には、ピニオン17が形成されている。連結部6内で出力軸10には、ファン18が固定されている。ファン18の後方で連結部6内には、バッフルプレート19が固定されている。ファン18の径方向外側で連結部6の下面及び右側面には、複数の後排気口20,20・・がそれぞれ形成されている。
【0013】
アウタハウジング3は、前筒部21と後筒部22とを有する。前筒部21は、前方へ延びる横断面円形の筒状である。後筒部22は、前筒部21より大径で、正面視六角形状の筒状である。前筒部21は、後筒部22の上側の偏心位置に配置されている。
前筒部21内には、筒状のツールホルダ23が同軸で収容されている。ツールホルダ23の前端は、前筒部21から前方へ突出している。前筒部21の前端には、ツールホルダ23の前部を支持する軸受24が保持されている。軸受24の前方には、前筒部21とツールホルダ23との間をシールするオイルシール25が設けられている。
前筒部21から突出するツールホルダ23の前端には、操作スリーブ26が設けられている。操作スリーブ26は、ツールホルダ23の前端でビットBを着脱操作するために設けられる。前筒部21の前端には、サイドグリップ27が装着されている。
【0014】
アウタハウジング3内には、駆動機構30が設けられている。駆動機構30は、回転/打撃作動部31と、その後方の回転/打撃切替部32とを有している。
回転/打撃作動部31は、ツールホルダ23と、ピストンシリンダ33と、ストライカ34と、インパクトボルト35とを有している。ピストンシリンダ33は、前端を開口し、ツールホルダ23の後部で前後移動可能に収容されている。ストライカ34は、ピストンシリンダ33内に空気室36を介して前後移動可能に収容されている。インパクトボルト35は、ストライカ34の前方でツールホルダ23内へ前後移動可能に収容されている。ツールホルダ23は、複数の透孔37,37によって前筒部21内と連通している。ツールホルダ23の後部は、後筒部22内に突出している。後筒部22内でツールホルダ23の外周には、トルクリミッタ付きのギヤ38が設けられている。
連結部6及び後筒部22内には、インナハウジング40が収容されている。インナハウジング40は、ギヤ38の後側でツールホルダ23の後部を支持している。インナハウジング40内には、回転/打撃切替部32が収容されている。回転/打撃切替部32は、後筒部22の下面に設けられた切替ツマミ116の操作により、動作モードを切り替えて出力軸10の回転を回転/打撃作動部31に伝達する。
【0015】
(インナハウジングの説明)
インナハウジング40は、前後に2分割されて、金属製の前ハウジング41と、樹脂製の後ハウジング42とを有している。
前ハウジング41は、
図6にも示すように、前側の軸受保持部43と、後側の胴体部44とを備えている。
軸受保持部43は、後筒部22より一回り小さい正面視六角形状を有する。軸受保持部43は、
図7にも示すように、上部の左右中央に、上貫通孔45を備えている。上貫通孔45には、ツールホルダ23の後部が挿入される。上貫通孔45内には、ツールホルダ23の後部を支持する軸受メタル46が保持されている。上貫通孔45の下方左側には、上貫通孔45より小径の下貫通孔47が形成されている。
軸受メタル46の径方向外側で軸受保持部43の外周面には、全周に亘って凹溝48が形成されている。凹溝48には、Oリング49が保持されている。Oリング49は、後筒部22の内周面を圧接して後筒部22と軸受保持部43との間をシールする。よって、アウタハウジング3とインナハウジング40との間の空間は、Oリング49を境にして前後に区画される。Oリング49の前側でツールホルダ23とアウタハウジング3との間の空間は、前方がオイルシール25によってシールされる。
【0016】
軸受保持部43の前面には、インナ側リブ50が前向きに形成されている。インナ側リブ50は、
図8にも示すように、正面視で、上貫通孔45から突出するツールホルダ23のギヤ38の下半分を下方から囲む格好で正面視円弧状に形成されている。インナ側リブ50の前端は、径方向でギヤ38にオーバーラップしている。但し、インナ側リブ50の左側は、下貫通孔47を外側から囲む半円状部51となっている。インナ側リブ50により、Oリング49で囲まれる軸受保持部43の前面は、上下に区画される。インナ側リブ50の左右両端は、上方へ向かうに従って後退する傾斜部50a,50aとなっている。インナ側リブ50の中間部の前端は、軸受保持部43から最も前方に位置している。
一方、アウタハウジング3において、後筒部22の前側内面には、
図9に示すように、軸受保持部43のインナ側リブ50に対向して後方へ突出するアウタ側リブ52が形成されている。アウタ側リブ52は、インナハウジング40の組み付け状態でギヤ38の下側に突出し、インナ側リブ50の前端に押し付けられて後端が変形することによりインナ側リブ50に密着するリブ(いわゆる潰しリブ)となっている。アウタ側リブ52は、インナ側リブ50とは前後で鏡面対象となるように形成されて、左側に、半円状部51と対向する半円状部53を有している。アウタ側リブ52の左右両端側の上端部52a,52aは、
図4に示すように、前方へ突出して軸受保持部43の前面に当接している。この上端部52aの後縁は、下方へ向かうに従って前進する傾斜形状となって、インナ側リブ50の左右両端の傾斜部50a,50aと合致している。
【0017】
よって、アウタハウジング3にインナハウジング40を組み付けた状態では、
図10に示すように、アウタ側リブ52とインナ側リブ50との突き合わせにより、隔壁54が形成される。よって、アウタハウジング3の内部でOリング49の前方空間は、隔壁54によって上下に仕切られる。隔壁54の上側が、オイルシール25とOリング49とによって仕切られる前側グリス室55となる。前側グリス室55は、下貫通孔47等を介してインナハウジング40内の後側グリス室56と連通している。この前側グリス室55と後側グリス室56とが駆動機構収容領域(以下「収容領域」と略称する)Tとなる。
【0018】
胴体部44は、軸受保持部43より一回り小さい正面視六角形状の筒状である。胴体部44の左右の側面には、複数の放熱フィン57,57・・がそれぞれ立設されている。各放熱フィン57は、上下方向へ延びるように形成され、前後方向へ所定間隔をおいて立設されている。各放熱フィン57の外側端縁は、
図11に示すように、後筒部22の内面に近接している。放熱フィン57の突出方向外側で後筒部22の左右の側面には、前後方向に延びる複数の前排気口58,58・・がそれぞれ形成されている。左右の前排気口58は、平面視で出力軸10の軸線方向を挟んで対向するように配置されている。
胴体部44の後端には、正面視が四角形状の前フランジ59が形成されている。前フランジ59の四隅には、半円状の4つの切欠き60,60・・がそれぞれ形成されている。
【0019】
後ハウジング42は、
図3及び
図11に示すように、略中央に後貫通孔65を有している。後貫通孔65には、出力軸10が貫通している。後貫通孔65の後部には、出力軸10を支持する軸受66が保持されている。軸受66の前側にはオイルシール67が設けられている。
後ハウジング42の前端には、胴体部44の前フランジ59と同じ正面視四角形状の後フランジ68が形成されている。後フランジ68の四隅にも、半円状の4つの切欠き69,69・・がそれぞれ形成されている。
前フランジ59と後フランジ68とは、前後に重なった状態でアウタハウジング3の後筒部22とモータハウジング4の連結部6との間に挟持される。
図5及び
図7,9に示すように、後筒部22の後端には、正面視で四隅に張り出す4つのネジ止め部70,70・・が形成されている。各ネジ止め部70の後面には、後方へ突出する円形のネジボス71がそれぞれ形成されている。
一方、連結部6の四隅には、
図5及び
図8に示すように、各ネジ止め部70に対応して、雌ネジ孔を有する4つの雌ネジ部72,72・・がそれぞれ形成されている。各雌ネジ部72の前面には、ネジボス71が嵌合する円形凹部73が形成されている。すなわち、
図12に示すように、各ネジボス71が、ネジ8によるネジ止め状態で円形凹部73に嵌合するいんろう結合となっている。
【0020】
前フランジ59と後フランジ68とは、四隅の切欠き60,69がそれぞれネジボス71の外周に内側から係合した状態で、ネジ止め部70と雌ネジ部72との間に挟持される。この状態で各ネジ止め部70と雌ネジ部72とが前方からネジ8,8・・によってネジ止めされる。すると、アウタハウジング3とモータハウジング4との連結がなされると共に、前フランジ59と後フランジ68とが前後両面から押圧されて組み付けられる。このとき各ネジ止め部70の後端面と各雌ネジ部72の前端面とは非接触となっている。こうしてアウタハウジング3の後部でインナハウジング40が位置決めされる。
この位置決め状態で後筒部22と前後フランジ59,68との間には、
図3及び
図11に示すように、上側に隙間Sが形成されている。よって、ファン18が収容される連結部6内は、Oリング49の後方で隙間Sと連通する。隙間Sは、後筒部22と前ハウジング41との間の空間と連通し、放熱フィン57の間を介して前排気口58と連通することになる。
後フランジ68の前面で前フランジ59との当接部位には、
図6に示すように、全周に亘って溝74が形成されている。溝74内には、Oリング75が保持されている。Oリング75は、インナハウジング40の組み付け状態で前フランジ59の後面に当接して前フランジ59と後フランジ68との間をシールする。
【0021】
(回転/打撃切替部の説明)
回転/打撃切替部32は、
図6,7及び
図11,13にも示すように、ツールホルダ23の下側で左右2本の第1、第2中間軸80,81を備えている。第1、第2中間軸80,81は、互いに平行で且つツールホルダ23と平行に配置されている。
左側の第1中間軸80は、後端が後ハウジング42に軸受82を介して回転可能に支持される。第1中間軸80の前端は、前ハウジング41の下貫通孔47を貫通して前方へ延びる。第1中間軸80の前端は、後筒部22の前側内面に軸受83を介して回転可能に支持されている。第1中間軸80の後部には、出力軸10のピニオン17と噛合する第1ギヤ84が、回転可能に外装されている。第1ギヤ84の前部外周には、ギヤ側係合部85が形成されている。
下貫通孔47より前方で第1中間軸80の前部には、第2ギヤ86が形成されている。第2ギヤ86は、ツールホルダ23のギヤ38と噛合する。第1ギヤ84の前方で第1中間軸80には、第1スプライン部87が形成されている。第1スプライン部87には、第1クラッチ88がスプライン結合されている。第1クラッチ88は、第1中間軸80と一体回転可能且つ前後移動可能に設けられて、後係合部89と前係合部90とを備えている。第1クラッチ88は、後退位置で後係合部89が第1ギヤ84のギヤ側係合部85に係合する。よって、第1ギヤ84の回転は第1クラッチ88を介して第1中間軸80に伝達される。
【0022】
第1クラッチ88の前方で前ハウジング41の下貫通孔47には、ロックリング91が保持されている。ロックリング91は、外周に4つの爪92,92・・を有する。ロックリング91は、前方のコイルバネ93によって、爪92が止めリング94に当接する後退位置に付勢されている。第1クラッチ88は、前進位置で第1ギヤ84から離間して、前係合部90がロックリング91の爪92に係合する。よって、第1ギヤ84の回転は第1中間軸80に伝達されず、第1クラッチ88と共に第1中間軸80の回転はロックされる。このときツールホルダ23も、第1中間軸80の第2ギヤ86と噛合するギヤ38を介して回転がロックされる。但し、第1クラッチ88は、前進位置と後退位置との間の中間位置では、第1ギヤ84とロックリング91との何れにも係合しない状態となる。
第1中間軸80において、ロックリング91の後側には、直径方向に貫通孔80aが形成されている。第1中間軸80の軸心には、貫通孔80aと連通する軸心孔80bが、後端面まで形成されている。軸受82の後方で後ハウジング42には、逃がし孔76が貫通形成されている。逃がし孔76は、軸心孔80bと連通している。
よって、インナハウジング40内で高まった圧力は、貫通孔80a、軸心孔80b、逃がし孔76を介してインナハウジング40の外部へ開放される。逃がし孔76の出口には、スポンジ等の吸収材77が設けられて、グリスの漏れを防いでいる。
【0023】
右側の第2中間軸81は、後端が後ハウジング42に軸受95を介して回転可能に支持される。第2中間軸81の前端は、前ハウジング41の軸受保持部43に軸受96を介して回転可能に支持される。第2中間軸81の後部には、出力軸10のピニオン17と噛合する第3ギヤ97が、一体回転可能に固定されている。第3ギヤ97の前方で第2中間軸81には、ボススリーブ98が別体で回転可能に外装されている。ボススリーブ98には、軸線を傾けたスワッシュベアリング99が設けられている。スワッシュベアリング99の外輪には、アーム100が上向きに突設されている。アーム100の先端は、ピストンシリンダ33の後端に連結されている。ピストンシリンダ33の後端と後ハウジング42との間には、コイルバネ101が介在されている。コイルバネ101は、後述するドリルモードではピストンシリンダ33を前進位置に付勢する。ボススリーブ98の前部には、ボス側係合部102が形成されている。
【0024】
ボススリーブ98の前方で第2中間軸81には、第2スプライン部103が形成されている。第2スプライン部103には、第2クラッチ104がスプライン結合されている。第2クラッチ104は、第2中間軸81と一体回転可能且つ前後移動可能に設けられて、後部にクラッチ側係合部105を備えている。第2クラッチ104は、後退位置でクラッチ側係合部105がボススリーブ98のボス側係合部102に係合する。よって、第2中間軸81の回転は第2クラッチ104を介してボススリーブ98に伝達される。第2クラッチ104が前進すると、クラッチ側係合部105がボス側係合部102から離間して第2中間軸81の回転はボススリーブ98に伝達されなくなる。
【0025】
第1、第2中間軸80,81の下方には、モード切替機構109が設けられている。モード切替機構109は、
図14にも示すように、左右2本の第1、第2ロッド110,111と、切替ツマミ116とを有している。
第1、第2ロッド110,111は、互いに平行で、且つ第1、第2中間軸80,81と平行に設けられている。
第1ロッド110は、後端が後ハウジング42に支持され、前端が前ハウジング41の軸受保持部43に支持されている。第1ロッド110は、第1プレート112を備えている。第1プレート112は、中間部が第1ロッド110と平行に延びる帯板である。第1プレート112の前後両端は、第1ロッド110側へ折曲されて第1ロッド110に貫通されている。よって、第1プレート112は、第1ロッド110に沿って前後移動可能である。第1プレート112の前端は、第1クラッチ88の外周に係合している。第1プレート112の前方で第1ロッド110には、コイルバネ113が外装されている。コイルバネ113は、第1プレート112を、後ハウジング42の前面に当接する後退位置に付勢している。この後退位置は、第1プレート112と共に後退する第1クラッチ88の後退位置となる。
【0026】
第2ロッド111は、後端が後ハウジング42に支持され、前端が前ハウジング41の軸受保持部43に支持されている。第2ロッド111は、第2プレート114を備えている。第2プレート114は、中間部が第2ロッド111と平行に延びる帯板である。第2プレート114の前後両端は、第2ロッド111側へ折曲されて第2ロッド111に貫通されている。よって、第2プレート114は、第2ロッド111に沿って前後移動可能である。第2プレート114の前端は、第2クラッチ104の外周に係合している。第2プレート114の前方で第2ロッド111には、コイルバネ115が外装されている。コイルバネ115は、第2プレート114を、後ハウジング42に当接する後退位置に付勢している。この後退位置は、第2プレート114と共に後退する第2クラッチ104の後退位置となる。
【0027】
第1、第2プレート112,114の位置は、切替ツマミ116によって変更可能である。切替ツマミ116は、
図15に示すように、後筒部22の下面へ回転操作可能に設けられている。切替ツマミ116は、
図3,11に示すように、前ハウジング41の胴体部44の下面に設けた底貫通孔117を介してインナハウジング40内に突出している。切替ツマミ116の突出端面には、2本の第1、第2偏心ピン118,119が設けられている。第1偏心ピン118は、第1プレート112の前端に後方から係合し、第2偏心ピン119は、第2プレート114の中間部に後方から係合している。
よって、切替ツマミ116を回転操作することで第1、第2偏心ピン118,119を介して第1、第2プレート112,114の前後位置を切り替えることができる。すなわち、動作モードを、ドリルモード、ハンマドリルモード、ハンマモード(回転ロック)、ハンマモード(ニュートラル)に切替可能となっている。
【0028】
(ハンマドリルの作動の説明)
切替ツマミ116をドリルモードに切り替える。すると、第1偏心ピン118は、最後退位置となり、第1クラッチ88は、第1プレート112と共に後退位置となる。よって、第1ギヤ84の回転は、第1クラッチ88を介して第1中間軸80に伝わる状態となる。そして、第1中間軸80の回転は、第2ギヤ86からギヤ38を介してツールホルダ23に伝わる状態となる。
一方、第2偏心ピン119は、最前進位置となり、第2クラッチ104は、第2プレート114と共に前進位置となる。よって、出力軸10から伝わる第2中間軸81の回転は、ボススリーブ98に伝わらない状態となる。
従って、トリガ14を押し込み操作してスイッチ13をONさせると、モータ9が駆動して出力軸10が回転する。すると、第1中間軸80を介してツールホルダ23が回転し、先端のビットBを回転させる。
【0029】
次に、切替ツマミ116をハンマドリルモードに切り替える。すると、第1偏心ピン118の最後退位置は変わらず、第1プレート112及び第1クラッチ88は後退位置のままとなる。
一方、第2偏心ピン119は、最前進位置から中間位置に後退し、第2クラッチ104は、第2プレート114と共に後退位置となる。よって、第2中間軸81の回転は、第2クラッチ104を介してボススリーブ98に伝わる状態となる。
従って、トリガ14を押し込み操作してモータ9が駆動すると、第1中間軸80を介してツールホルダが回転し、先端のビットBを回転させる。これと同時に、ボススリーブ98が回転してアーム100が前後に揺動するため、ピストンシリンダ33が往復動する。よって、ストライカ34が往復動してインパクトボルト35を介してビットBを打撃する。
【0030】
次に、切替ツマミ116をハンマモード(回転ロック)に切り替える。すると、第1偏心ピン118は、最前進位置となる。第1クラッチ88は、第1プレート112と共に前進位置となり、ロックリング91に係合する。よって、第1ギヤ84の回転は第1中間軸80に伝わらない状態となり、第1中間軸80と共にツールホルダ23の回転はロックされる。
一方、第2偏心ピン119は、最後退位置となり、第2クラッチ104は後退位置のままとなる。よって、第2中間軸81の回転は、第2クラッチ104を介してボススリーブ98に伝わる状態となる。
従って、トリガ14を押し込み操作してモータ9が駆動すると、ツールホルダ23の回転がロックされた状態で、ピストンシリンダ33が往復動し、インパクトボルト35を介してビットBがストライカ34に打撃される。
なお、第1クラッチ88が前進した際、ロックリング91の爪92の後面に当接して回転方向で係合しないことがある。しかし、この場合、コイルバネ93の付勢に抗してロックリング91が前進する。よって、第1ギヤ84との摩擦で第1中間軸80が回転して第1クラッチ88が回転すると、係合する位相でロックリング91が後退して第1クラッチ88と係合する。よって、第1中間軸80の回転はロックされる。
【0031】
次に、切替ツマミ116をハンマモード(ニュートラル)に切り替える。すると、第1偏心ピン118は、最前進位置から中間位置に後退する。第1クラッチ88は、第1プレート112と共に後退し、ロックリング91から離間する。但し、第1クラッチ88は、第1ギヤ84に係合しない中間位置となる。よって、第1ギヤ84の回転は、第1中間軸80に伝わらない状態となり、第1中間軸80と共にツールホルダ23は回転フリーとなる。
一方、第2偏心ピン119は、最後退位置から中間位置に前進し、第2クラッチ104は、第2プレート114と共に後退位置となる。よって、第2中間軸81の回転は第2クラッチ104を介してボススリーブ98に伝わる。
従って、トリガ14を押し込み操作してモータ9が駆動すると、ツールホルダ23の回転がフリーとなる状態で、ピストンシリンダ33が往復動し、インパクトボルト35を介してビットBがストライカ34に打撃される。
【0032】
こうして各動作モードでハンマドリル1が作動する際、出力軸10の回転によりファン18が回転する。すると、後方の吸気口16からモータハウジング4のモータ収容部7内に外気が吸い込まれ、前方へ移動してモータ9を冷却する。この冷却風は、連結部6内に流れて一部は後排気口20から外部に排出される。他の一部は、連結部6内を前方へ移動し、後筒部22と前後フランジ59,68との隙間Sを通って後筒部22内に流れ込む。そして、冷却風は、インナハウジング40の外側空間を通って前排気口58から排出される。このとき、冷却風が前ハウジング41に接触することで、駆動機構30で発生した熱による前ハウジング41の温度上昇は抑えられる。特に冷却風は放熱フィン57に沿って流れるため、前ハウジング41の熱は効果的に放熱される。
一方、収容領域Tにはグリスが充填される。特に、前筒部21内の前側グリス室55は、隔壁54によって無駄なスペースを省いた狭いスペースとなっているので、前側グリス室55内のグリスの充填率は高くなる。よって、回転/打撃作動部31から飛散したグリスがギヤ38等に再付着しやすくなる。
【0033】
(インナハウジングの分割に係る発明の効果)
上記形態のハンマドリル1は、ハウジング2内に、モータ9と、前端にビットBを装着して回転可能な筒状のツールホルダ23と、ツールホルダ23の回転作動及び/又はビットBの打撃作動が可能な駆動機構30と、駆動機構30に設けられ、モータ9の出力軸10の回転をビットBの打撃作動に変換可能なボススリーブ98(回転変換部材)とを有する。また、ハンマドリル1は、駆動機構30を支持すると共に、ツールホルダ23を軸受メタル46(第1の軸受)を介して支持し、出力軸10を軸受66(第2の軸受)を介して支持するインナハウジング40を有する。さらに、インナハウジング40は、軸受メタル46を保持する前ハウジング41と、前ハウジング41と別体で形成されて軸受66を保持する後ハウジング42とに分割されて、前ハウジング41と後ハウジング42とがツールホルダ23の軸線方向に連結されることで形成される。そして、前ハウジング41には、ハウジング2内でインナハウジング40の外側空間をシールするOリング49(シール部材)が設けられている。
この構成によれば、インナハウジング40を前後に2分割して前ハウジング41にOリング49を設けるので、Oリング49の後側で収容領域Tを小さくしたインナハウジング40を形成できる。よって、製品サイズのコンパクト化にも繋がる。また、モータ9の冷却風をインナハウジング40の外側まで導くことができるため、駆動機構30の好適な冷却効果も得られる。
【0034】
ボススリーブ98は、前ハウジング41内に収容されている。よって、ボススリーブ98の作動によって発生した熱が前ハウジング41を介して効果的に冷却可能となる。
Oリング49は、ボススリーブ98よりも前方に配置されている。よって、冷却風が流れるインナハウジング40の外側空間をボススリーブ98の径方向外側まで形成可能となる。
Oリング49は、軸受メタル46の径方向外側に位置している。よって、Oリング49の位置がインナハウジング40の最前方に近くなり、外側空間を広く確保できる。
外側空間におけるボススリーブ98の径方向外側に、空気流路が形成されている。よって、ボススリーブ98から伝わる熱をインナハウジング40の外側から効果的に冷却可能となる。
前ハウジング41は金属製である。よって、インナハウジング40に伝わる熱を効果的に放熱できる。
【0035】
前ハウジング41と後ハウジング42との連結面に、Oリング75(連結面シール部材)が設けられている。よって、インナハウジング40を2分割してもシール性を確保できる。
駆動機構30は、ツールホルダ23の軸線方向と平行に2本の第1、第2中間軸80,81を有し、第1中間軸80が、出力軸10の回転をツールホルダ23に伝達すると共に、第2中間軸81が、出力軸10の回転をボススリーブ98を介してビットBの打撃作動に変換する。すなわち、第1中間軸80を回転伝達用、第2中間軸81を打撃伝達用に分担させたことでそれぞれ軸方向に短くできる。よって、駆動機構30全体のコンパクト化に繋がる。
【0036】
前ハウジング41の外面に、放熱フィン57が形成されている。よって、前ハウジング41の熱を効果的に放熱できる。
モータ9は、出力軸10がツールホルダ23の軸線方向に沿って延びる姿勢で配置されて、出力軸10にファン18が設けられ、ハウジング2の後側に吸気口16が、前側に前排気口58(排気口)が、それぞれ出力軸10の軸線方向を挟んで対向するように設けられている。よって、インナハウジング40をバランス良く冷却することができる。
【0037】
なお、インナハウジングの分割に係る発明においては、以下の変更が可能である。
前ハウジングに設けられるシール部材は、Oリング以外のシール部材も採用できる。複数のシール部材を設けてもよい。
前ハウジングは、全体を金属製とせず、例えばツールホルダを支持する軸受の保持部分のみを金属製とする等、一部を金属製とすることもできる。但し、前ハウジングは樹脂製であってもよい。後ハウジングも金属製であってもよい。
前ハウジングと後ハウジングとの組み付けも、上記形態のようにアウタハウジングとモータハウジングとで挟持する構造に限らない。ネジ止め等も採用できる。
前ハウジングの外側空間の空気流路の構造は、上記形態に限らない。放熱フィンの位置や形状は変更可能である。放熱フィンを省略することもできる。
吸気口と排気口との位置及び数も適宜変更して差し支えない。例えば吸気口と排気口とを前後逆に配置して、モータよりも先にインナハウジングを冷却することもできる。
中間軸は2本でなく1本としてもよい。
【0038】
(収容領域を仕切る隔壁に係る発明の効果)
上記形態のハンマドリル1(打撃工具)は、ハウジング2内に、モータ9と、前端にビットBを装着可能なツールホルダ23と、ビットBを打撃可能な駆動機構30と、ハウジング2内で駆動機構30を支持するインナハウジング40とを有する。また、ハンマドリル1は、ハウジング2と、インナハウジング40と、ハウジング2とインナハウジング40との間に介在されたOリング49(シール部材)とにより、ハウジング2内に、収容領域Tを含む空間が仕切形成されている。そして、ハウジング2内には、収容領域Tとそれ以外の空間とを仕切る隔壁54が設けられている。
この構成によれば、別体のガイド部材等を用いなくても隔壁54によって無駄なスペースを排除して収容領域Tを小さくすることができる。よって、製造コストや組み付けの手間を軽減しつつグリスの充填率を上げることができる。
【0039】
隔壁54は、アウタハウジング3(ハウジング)とインナハウジング40とにそれぞれ形成されたアウタ側リブ52とインナ側リブ50とが当接して形成される。よって、アウタハウジング3とインナハウジング40との組み付けと同時に隔壁54が形成される合理的な構造となる。
アウタ側リブ52(ハウジング側のリブ)は、インナ側リブ50(インナハウジング側のリブ)に押し付けられて変形することによりインナ側リブ50に密着するリブとなっている。よって、アウタ側リブ52とインナ側リブ50とが密着し、リブ同士の当接により隔壁54を形成してもシール性が確保される。
アウタハウジング3は樹脂製であり、インナハウジング40の前ハウジング41は金属製である。よって、インナハウジング40の剛性を確保しつつ、アウタ側リブ52とインナ側リブ50との密着性を維持することができる。
【0040】
モータ9は、出力軸10がツールホルダ23の軸線方向と平行となる姿勢で配置され、駆動機構30は、ツールホルダ23と平行に配置されて出力軸10の回転が伝達される第1中間軸80を有し、第1中間軸80は、ツールホルダ23に回転伝達を行うギヤ38を有してインナハウジング40に支持され、インナ側リブ50は、ギヤ38の一部を覆う構成となっている。よって、隔壁54をギヤ38の外側に形成してグリスが再付着しやすくなる。
インナハウジング40は、ツールホルダ23を支持する軸受メタル46を保持する軸受保持部43を有し、軸受保持部43にインナ側リブ50が突出形成されている。よって、軸受保持部43を利用してインナ側リブ50を簡単に形成できる。
インナ側リブ50の前端は、インナハウジング40の最前方位置に突出している。よって、アウタ側リブ52との突き合わせがしやすくなる。
【0041】
なお、収容領域を仕切る隔壁に係る発明においては、以下の変更が可能である。
インナ側リブとアウタ側リブとのそれぞれの前後長さは、上記形態に限らない。インナ側リブとアウタ側リブとの前後長さを大きく異ならせることもできる。
隔壁は、リブ同士の当接による形成に限らない。アウタハウジングとインナハウジングとの何れか一方のみに、他方の表面に当接するリブを形成してもよい。
隔壁による仕切形状は、上記形態に限らない。ツールホルダ及びギヤを囲む半円状とせず、例えば左右方向に延びる平面状の隔壁とすることもできる。
隔壁の位置は、上記形態に限らない。アウタハウジング及びインナハウジングの形状に合わせて、上記形態より上側若しくは下側にあってもよい。
この発明は、ハンマドリルへの適用に限らない。電動ハンマ等の他の打撃工具であっても適用可能である。
打撃工具としては、中間軸(1本でもよい)と回転変換部材とでピストンシリンダを往復動させる構造に限らない。例えば、クランク機構を採用してコネクティングロッドでピストンシリンダを往復動させる打撃工具であってもよい。
【0042】
(アウタハウジングとモータハウジングとインナハウジングとの組み付けに係る発明の効果)
上記形態のハンマドリル1(打撃工具)は、 ハウジング2内に、モータ9と、前端にビットBを装着可能な筒状のツールホルダ23と、ビットBを打撃可能な駆動機構30と、駆動機構30を支持するインナハウジング40とを有する。また、ハウジング2は、前側のアウタハウジング3と、アウタハウジング3の後側に組み付けられてモータ9を収容するモータハウジング4とを有し、アウタハウジング3とモータハウジング4とインナハウジング40とがツールホルダ23の軸線方向に連結される。また、アウタハウジング3に、アウタハウジング3とモータハウジング4とをネジ止めするためのネジボス71が、モータハウジング4側へ突出形成されている。そして、モータハウジング4及びインナハウジング40は、ネジボス71と係合して位置決めされている。
この構成によれば、アウタハウジング3とモータハウジング4とを全体でインロー結合しないため、内部部品の配置や意匠面に影響を受けにくくなる。また,ネジボス71を設けたアウタハウジング3に対してモータハウジング4とインナハウジング40とを容易に位置決めできる。よって、アウタハウジング3とモータハウジング4とインナハウジング40とを、設計の自由度を確保しつつ精度良く組み付けることができる。
【0043】
ネジボス71は、4箇所設けられている。よって、回転方向の位置決めが確実に行える。
インナハウジング40は、アウタハウジング3とモータハウジング4とで挟持される。よって、インナハウジング40をアウタハウジング3とモータハウジング4とを利用して位置決めできる。
インナハウジング40は、アウタハウジング3とモータハウジング4とで前後両面から押圧される。よって、インナハウジング40をアウタハウジング3とモータハウジング4との間で強固に固定できる。
インナハウジング40は、ツールホルダ23の軸線方向に2分割されている。よって、後ハウジング42を樹脂製として軽量化が可能となる。
【0044】
ネジボス71は、円筒状であり、インナハウジング40におけるネジボス71との係合部は、半円状の切欠き69となっている。よって、ネジボス71に切欠き69を係合させて確実に位置決めできる。
ネジボス71は、アウタハウジング3側に形成され、モータハウジング4に、ネジボス71を貫通させたネジ8が螺合する雌ネジ部72が形成される。よって、アウタハウジング3の前方からのネジ止めが容易に行える。
インナハウジング40の前ハウジング41は金属製である。よって、インナハウジング40の剛性を確保することができる。
【0045】
なお、アウタハウジングとモータハウジングとインナハウジングとの組み付けに係る発明においては、以下の変更が可能である。
ネジボスは、アウタハウジングでなくモータハウジングに設けて、モータハウジングの後方からネジ止めするようにしてもよい。ネジボスと係合する他方側のハウジングには、円形凹部以外の形状を形成してもよい。
ネジボスは、円筒状でなくてもよい。よって、インナハウジングに設ける係合部は、半円状の切欠きとせず、ネジボスの外形に合わせて変更すればよい。
インナハウジングは、2分割としなくてもよい。一体のインナハウジングに、アウタハウジングとモータハウジングとに挟持される被挟持部を形成してもよい。
インナハウジングは、全体が金属製であってもよいし、全体が樹脂製であってもよい。
ネジボスの数は、各ハウジングの回転方向の位置決めが可能であれば、少なくとも2箇所あればよい。
この発明は、ハンマドリルへの適用に限らない。電動ハンマ等の他の打撃工具であっても適用可能である。
打撃工具としては、中間軸(1本でもよい)と回転変換部材とでピストンシリンダを往復動させる構造に限らない。例えば、クランク機構を採用してコネクティングロッドでピストンシリンダを往復動させる打撃工具であってもよい。
【0046】
以下、各発明に共通する変更例について説明する。
モータの向きは、前後方向に限らず、適宜変更できる。
モータは、ブラシ付きモータに限らず、ブラシレスモータも採用できる。
電源は、商用電源でなく、バッテリパックであってもよい。
選択できる動作モードは、4つに限らない。切替ツマミの位置も適宜変更できる。
打撃作動は、ピストンシリンダでなく、固定されたシリンダ内でピストンが往復動する構造であってもよい。インパクトボルトがなく、ストライカが直接ビットを打撃する構造であってもよい。
1・・ハンマドリル、2・・ハウジング、3・・アウタハウジング、4・・モータハウジング、5・・ハンドルハウジング、6・・連結部、7・・モータ収容部、8・・ネジ、9・・モータ、10・・出力軸、21・・前筒部、22・・後筒部、23・・ツールホルダ、30・・駆動機構、31・・回転/打撃作動部、32・・回転/打撃切替部、33・・ピストンシリンダ、34・・ストライカ、40・・インナハウジング、41・・前ハウジング、42・・後ハウジング、43・・軸受保持部、44・・胴体部、45・・上貫通孔、46・・軸受メタル、49・・Oリング、50・・インナ側リブ、52・・アウタ側リブ、54・・隔壁、55・前側グリス室、56・・後側グリス室、58・・前排気口、59・・前フランジ、60,69・・切欠き、68・・後フランジ、70・・ネジ止め部、71・・ネジボス、72・・雌ネジ部、73・・円形凹部、80・・第1中間軸、81・・第2中間軸、84・・第1ギヤ、86・・第2ギヤ、88・・第1クラッチ、97・・第3ギヤ、98・・ボススリーブ、104・・第2クラッチ、109・・モード切替機構、116・・切替ツマミ、T・・駆動機構収容領域、B・・ビット。