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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124298
(43)【公開日】2022-08-25
(54)【発明の名称】体組織穿孔用デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20220818BHJP
【FI】
A61B18/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021021977
(22)【出願日】2021-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】特許業務法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】谷川 昌洋
(72)【発明者】
【氏名】吉田 都世志
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK47
(57)【要約】      (修正有)
【課題】体組織穿孔用デバイスを提供する。
【解決手段】チューブ状の本体部分12を備える体組織穿孔用デバイス10であって、本体部分12は先端においてルーメン16が開放状態に維持される先端開口部20を有していると共に、本体部分12から先端側に離れて穿孔用頭部14が配置されており、先端開口部20を開放状態に維持しつつ本体部分12と穿孔用頭部14とを連結する連結部材22が設けられている。前記連結部材22は、前記本体部分12の前記先端開口部20から前記ルーメン16内へ差し入れられた状態で該本体部分12に固着されていると共に、該連結部材22の外周面と該本体部分12の内周面との間を軸方向に延びる連通路26が設けられており、該連通路26を通じて該ルーメン16が該本体部分12の先端において開放状態に維持されることで該先端開口部20が構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブ状の本体部分を備える体組織穿孔用デバイスであって、
前記本体部分は先端においてルーメンが開放状態に維持される先端開口部を有していると共に、
該本体部分から先端側に離れて穿孔用頭部が配置されており、
該先端開口部を開放状態に維持しつつ該本体部分と該穿孔用頭部とを連結する連結部材が設けられている体組織穿孔用デバイス。
【請求項2】
前記連結部材が、前記本体部分の前記先端開口部から前記ルーメン内へ差し入れられた状態で該本体部分に固着されていると共に、該連結部材の外周面と該本体部分の内周面との間を軸方向に延びる連通路が設けられており、該連通路を通じて該ルーメンが該本体部分の先端において開放状態に維持されることで該先端開口部が構成されている請求項1に記載の体組織穿孔用デバイス。
【請求項3】
前記連結部材が、前記本体部分の長さ方向に延びる複数本の線状体を用いて構成されている請求項2に記載の体組織穿孔用デバイス。
【請求項4】
前記複数本の線状体が相互に撚り合わされている請求項3に記載の体組織穿孔用デバイス。
【請求項5】
前記線状体が前記本体部分に対して該本体部分の所定の長さ領域において固着されている請求項3又は4に記載の体組織穿孔用デバイス。
【請求項6】
前記本体部分の先端部分が、可撓性を有する合成樹脂により形成されている請求項1~5の何れか1項に記載の体組織穿孔用デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心房中隔などの体組織に開存孔を形成する体組織穿孔用デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、心房細動の治療法の1つとして、左心房の適切な部位をアブレーションカテーテルによって焼灼する手技が採用されている。アブレーションカテーテルは、心房中隔を貫通して右心房から左心房へ差し入れられる場合があり、その場合には心房中隔を貫通する開存孔を予め形成しておく必要がある。心房中隔の穿孔は、例えば卵円窩を穿刺するブロッケンブロー法による開存孔の形成方法が知られている。ブロッケンブロー法では、チューブのルーメンに穿刺針を挿通した構造を有する特許第6416084号公報(特許文献1)に示された医療機器のような穿孔用デバイスを用い、右心房に差し入れられたチューブの先端から穿刺針を突出させて卵円窩を穿孔することで開存孔を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6416084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1では、チューブの遠位部分に開口部が形成されており、例えばチューブのルーメンから開口部を通じて造影剤や生理食塩水等をチューブの遠位において放出することが可能とされている。
【0005】
ところが、特許文献1に記載の穿孔用デバイスでは、チューブの遠位端側(先端側)の開口が閉塞されており、チューブの側面に開口する窓を通じてルーメンが外部に開口されている。そのために、例えばチューブを通じて流体を放出等する方向が、当該窓の開口する特定方向に制限される。また、チューブ外周の特定方向に開口する窓は、体腔内壁などへの接触で覆われる場合がある。そのために、例えばチューブのルーメンを通じての体内からの流体の吸引が制限されたり困難になるおそれがあり、また、チューブのルーメンを通じて体内の圧力検出等を行う場合に、検出の精度や安定性が低下したり、検出が困難になるおそれもあった。
【0006】
本発明の解決課題は、特許文献1に記載された従来品の内在する問題の少なくとも1つを軽減乃至は解消して使用性の向上等を図り得る、新規な体組織穿孔用デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0008】
第1の態様は、チューブ状の本体部分を備える体組織穿孔用デバイスであって、前記本体部分は先端においてルーメンが開放状態に維持される先端開口部を有していると共に、該本体部分から先端側に離れて穿孔用頭部が配置されており、該先端開口部を開放状態に維持しつつ該本体部分と該穿孔用頭部とを連結する連結部材が設けられているものである。
【0009】
本態様の体組織穿孔用デバイスによれば、チューブ状の本体部分と穿孔用頭部とが離れて配置されており、本体部分の先端には、ルーメンを開放状態に維持する先端開口部が設けられている。それ故、ルーメンの外部への開口を、特許文献1のように過度に限定されることなく、安定して確保することが可能になる。その結果、例えばルーメンを通じての流体の放出方向ひいては放出圧の分散化が容易に図られ得る。また、体内におけるルーメンの開口状態の安定化も図られ得て、例えばルーメンを通じての流体の吸引や圧力検出等を精度良く且つ安定して行うことも容易となる。
【0010】
第2の態様は、前記第1の態様に係る体組織穿孔用デバイスにおいて、前記連結部材が、前記本体部分の前記先端開口部から前記ルーメン内へ差し入れられた状態で該本体部分に固着されていると共に、該連結部材の外周面と該本体部分の内周面との間を軸方向に延びる連通路が設けられており、該連通路を通じて該ルーメンが該本体部分の先端において開放状態に維持されることで該先端開口部が構成されているものである。
【0011】
本態様の体組織穿孔用デバイスによれば、本体部分に固着される連結部材がルーメン内に配されることから、連結部材と本体部分との固着を容易に実現することが可能になる。また、連結部材の基端部を本体部分の外周側に固着する場合に比べて、当該固着部分における体組織穿孔用デバイスの大径化を軽減乃至は回避することが可能になり、体内への挿入性が向上され得る。
【0012】
第3の態様は、前記第2の態様に係る体組織穿孔用デバイスにおいて、前記連結部材が、前記本体部分の長さ方向に延びる複数本の線状体を用いて構成されているものである。
【0013】
本態様の体組織穿孔用デバイスによれば、連結部材を複数本の線状体を用いて構成したことで、連結部材の引張等の強度を確保しつつ曲げ剛性を抑えることが可能になる。また、複数本の線状体を採用することで、線状体間の隙間を利用して、チューブ状の本体部分のルーメンについて連通状態の維持や連通断面積の確保なども容易となる。更に、複数本の線状体を採用することで、非円形断面の特殊な外周形状の連結部材を用いることなく、単純な円形断面の線状体を採用しつつ、線状体相互間の隙間や線状体と本体部分との隙間を確保し、それらの隙間を利用してルーメンの連通状態や外部への開口状態を容易に確保することも可能となる。
【0014】
第4の態様は、前記第3の態様に係る体組織穿孔用デバイスにおいて、前記複数本の線状体が相互に撚り合わされているものである。
【0015】
本態様の体組織穿孔用デバイスによれば、複数の線状体が撚り合わされることで、複数の線状体による隙間を維持しつつ、複数の線状体からなる連結部材における形状安定性や強度、撓み性の向上などを図ることが可能になる。
【0016】
第5の態様は、前記第3又は第4の態様に係る体組織穿孔用デバイスにおいて、前記線状体が前記本体部分に対して該本体部分の所定の長さ領域において固着されているものである。
【0017】
本態様の体組織穿孔用デバイスによれば、線状体において本体部分のルーメンへ差し入れられた基端部分における本体部分に対する固着強度の向上と形状安定性の更なる向上が図られ得る。
【0018】
第6の態様は、前記第1~第5の何れかの態様に係る体組織穿孔用デバイスにおいて、前記本体部分の先端部分が、可撓性を有する合成樹脂により形成されているものである。
【0019】
本態様の体組織穿孔用デバイスによれば、本体部分の先端部分において、例えば連結部材の固着などに伴う変形剛性の増大を、合成樹脂の採用によって軽減することが可能になる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、チューブ状の本体部分の先端開口部においてルーメンが開放状態に維持されることとなり、特許文献1に記載されているようにチューブの先端開口部が閉塞された従来品の内在する問題の少なくとも1つを軽減乃至は解消し得る、新規な体組織穿孔用デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態としての体組織穿孔用デバイスの先端部分を示す平面図
図2図1におけるII-II断面を拡大して示す横断面図
図3図1に示された体組織穿孔用デバイスをブロッケンブロー法に用いる場合の施術用装置の具体的な一例を説明するための説明図
図4】本発明の第2実施形態としての体組織穿孔用デバイスの先端部分を示す平面図
図5図4におけるV-V断面を拡大して示す横断面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
図1,2には、本発明に係る体組織穿孔用デバイスの第1実施形態として、高周波ニードル10が示されている。高周波ニードル10は、チューブ状の本体部分12の遠位端側に穿孔用頭部14が配された構造を有している。以下、使用状態で施術者側となる高周波ニードル10の基端側を近位端側、患者側となる高周波ニードル10の先端側を遠位端側として説明する。
【0024】
本体部分12は、長さ方向に貫通するルーメン16を内部に備えた中空筒状とされている。本体部分12は、可撓性を備えており、血管などの体内管腔の湾曲に追従して変形可能とされている。本体部分12は、金属、合成樹脂、繊維強化樹脂、炭素繊維強化熱硬化性プラスチック(CFRP)等によって形成され、好適には金属製とされている。本実施形態では、本体部分12が金属によって形成されており、導電性を有している。
【0025】
本体部分12の外周側には、合成樹脂等の電気絶縁材料からなる絶縁層18が設けられている。この絶縁層18は、本体部分12のみを覆っていてもよいが、本体部分12に加えて、本体部分12から突出する後述する連結部材22(線状体24)の外周面まで覆っていてもよいし、更に、穿孔用頭部14の近位端側の外周面まで覆っていてもよい。なお、絶縁層18で連結部材22まで覆う場合には、本体部分12を覆う絶縁層18と連結部材22(線状体24)を覆う絶縁層18を非連続とすることなどにより、本体部分12の後述する遠位端開口部20が絶縁層18によって覆われることなく、開放状態に維持される。尤も、本体部分12は、全体が絶縁材料によって形成されていてもよく、その場合には絶縁層18を設ける必要はない。
【0026】
ルーメン16は、本実施形態において略一定の円形断面で、本体部分12の長さ方向となる中心軸方向に延びているが、断面形状は特に限定されないし、例えば近位端側における分岐構造を採用したり、断面の拡縮構造などを採用することも可能である。本実施形態の本体部分12は、1つのルーメン16だけを備えるシングルルーメン構造とされているが、例えば、複数のルーメンを備えるマルチルーメン構造であってもよい。ルーメン16は、遠位端部が大径の収容部19aとされており、内周面には収容部19aの近位端において環状の段差19bが形成されている。ルーメン16は、本体部分12を長さ方向に貫通しており、本体部分12の遠位端に開口する先端開口部としての遠位端開口部20を通じて遠位端側へ向けて、中心軸回り360度の全周に亘って開放されている。
【0027】
ルーメン16の収容部19aには、本体部分12の長さ方向に延びる連結部材22が配されており、当該連結部材22により本体部分12と穿孔用頭部14とが連結されている。具体的には、連結部材22の長さ寸法が連結部材22の近位端側が、本体部分12の遠位端開口部20からルーメン16内に差し入れられており、連結部材22の近位端がルーメン16の段差19bに当接している。この段差19bによって、連結部材22の近位側への移動が制限されている。連結部材22は、可撓性を備えていることが望ましく、連結部材22の可撓性に基づいて、デバイスが挿入される血管などの体内管腔の湾曲に追従するように、本体部分12と共に変形可能とされることが望ましい。連結部材22は、例えば本体部分12と同様の材質によって形成され、好適には金属製とされている。本実施形態では、連結部材22が金属によって形成されており、導電性を有している。
【0028】
特に、本実施形態では、連結部材22が、一対の線状体24,24により構成されている。これら一対の線状体24,24は、本体部分12の径方向において相互に隣接すると共に、本体部分12の長さ方向において相互に平行に延びている。線状体24は、それぞれ本体部分12の長さ寸法より短い長さ寸法を有しており、線状体24の遠位端部が本体部分12の遠位端開口部20を通じて本体部分12よりも遠位端側に突出している。この線状体24の遠位端部は、ある程度の長さ寸法をもって本体部分12よりも遠位端側に突出している。また、線状体24において本体部分12(ルーメン16)内に位置している部分は、本体部分12に固着されている。なお、線状体24は、比較的小さな外径寸法を有して本体部分12の長さ方向に延びていればよく、厳密に線状な(極めて小さな外径寸法を有する)態様に限定されるものではない。
【0029】
本実施形態では、線状体24が円形断面を有しており、線状体24の外径寸法が、ルーメン16の内径寸法の略1/2か僅かに大きくされている。これにより、本体部分12の径方向で隣接する線状体24,24においてそれぞれ外周側に位置する部分が本体部分12の内周面に当接している。これら本体部分12と線状体24,24とは、本体部分12の長さ方向における所定の領域において相互に固着されており、本実施形態では、線状体24の外周面と本体部分12の内周面との当接部位における略全長に亘って連続して固着されている。また、線状体24の近位端とルーメン16の段差19bとが固着されてもよい。線状体24と本体部分12との固着の方法は限定されるものではなく、ろう付けなどの手段により溶着されてもよいが、本実施形態では、レーザー溶接や抵抗溶接などにより溶接されている。なお、隣接する線状体24,24同士は、相互に固着されることが好適であるが、固着されていなくてもよい。そして、何れも金属製とされた本体部分12及び線状体24,24が相互に固着されることで、本体部分12と線状体24,24とが電気的に接続されている。
【0030】
なお、上述のように、本実施形態では、線状体24の外径寸法がルーメン16の内径寸法の略1/2か僅かに大きくされており、且つルーメン16内において線状体24が径方向(図2中の上下方向)で隣接して一対設けられている。これにより、図2に示される本体部分12の横断面において、ルーメン16が線状体24,24によって仕切られており、ルーメン16において線状体24,24を挟んだ両側(図2中の左右方向両側)には、連結部材22(線状体24,24)の外周面と本体部分12の内周面との間を軸方向(本体部分12の長さ方向であって、図1中の左右方向)に延びる連通路26,26が設けられている。そして、連通路26,26を通じてルーメン16が本体部分12の遠位端において開放状態に維持されることで、遠位端開口部20が構成されている。本実施形態では、図2に示されるように、ルーメン16の断面積に比べて連結部材22(線状体24,24)の断面積が比較的小さくされていることから、連通路26,26の断面積が比較的大きく確保されている。
【0031】
そして、本体部分12から遠位端側に突出する線状体24,24の遠位端部には、穿孔用頭部14が接続されており、これにより、本体部分12と線状体24,24と穿孔用頭部14とが電気的に接続されている。穿孔用頭部14は、一般に本体部分12の中心軸の延長線上に略同軸的に配置されており、外部からのエネルギー供給によって体組織に開存孔を形成するものであって、例えば、供給される高周波エネルギーによって体組織を焼灼して、体組織に開存孔を形成する。穿孔用頭部14への通電は、専用の配線を設けることによっても実現可能であるが、本実施形態では、導電性の本体部分12及び線状体24,24を通電用の配線として利用している。これにより、構造の簡略化や部品点数の削減などが実現される。
【0032】
穿孔用頭部14は、具体的な形状を限定されるものではないが、管腔内を移動する際に引っ掛かりが生じ難くなるように、遠位側の表面が角をもたない湾曲面とされていることが望ましく、例えば遠位に向けて凸となる略半球状とされており、全体として略ラウンドノーズ(円頭弾)の弾頭形状とされている。穿孔用頭部14において、近位端の外径は、本体部分12の内径より大きくされても小さくされてもよいが、本実施形態では本体部分12の外径と略同じとされている。なお、穿孔用頭部14における近位端の外径が本体部分12の内径と同じか小さくされることで、例えば穿孔用頭部14よりも遠位側の流体が遠位端開口部20を通じて本体部分12の内部に流動する際などの、流体の流動抵抗が低減され得る。穿孔用頭部14は、線状体24が本体部分12よりも遠位端側へ突出することで本体部分12に対して遠位端側へ離隔して配置されており、本体部分12の遠位端開口部20が穿孔用頭部14よりも近位端側において、本体部分12の遠位端側の端面上における全周囲に亘る開放状態に維持されている。即ち、本体部分12と穿孔用頭部14とが連結部材22(線状体24,24)で固定的に連結されていても、本体部分12の遠位端開口部20が開放状態に維持されている。
【0033】
なお、穿孔用頭部14と連結部材22(線状体24,24)との固着構造は特に限定されるものではなく、例えば穿孔用頭部14の基端側の端面中央に開口形成した穴へ、連結部材22(線状体24,24)の先端を圧入し、必要に応じて接着や溶接、ろう付けなどを施すことによって固着され得る。
【0034】
本実施形態では、高周波ニードル10の遠位端側部分において、穿孔用頭部14と本体部分12との間には線状体24,24が位置して外径寸法が小さくされた部分が設けられており、線状体24,24の周囲には、外部空間に連通する環状空間28が形成されている。そして、ルーメン16において本体部分12と線状体24,24との間に設けられる連通路26が、遠位端開口部20を通じて環状空間28に連通していることから、本体部分12の長さ方向に延びる連通路26が、環状空間28を通じて外部空間に連通されている。これにより、環状空間28が、ルーメン16の遠位端側における外部への開放部分として形成されている。本実施形態では、穿孔用頭部14と本体部分12とがある程度離隔しており、環状空間28が、本体部分12の長さ方向である程度の長さ寸法をもって形成されている。
【0035】
このような構造とされた高周波ニードル10は、例えば、心房中隔の卵円窩Aに開存孔を形成する手技(ブロッケンブロー法)に用いられる。高周波ニードル10は、例えば、図3に示すように、シース30に挿通されて、当該シース30を通じて体内における所望の位置まで挿入される。シース30には、必要に応じてダイレータ等の高周波ニードル10以外の器具を挿通してもよく、例えばシース30内に配されたダイレータに対して、高周波ニードル10が挿通される。なお、図3では、分かり易さのために、高周波ニードル10が、体外でシース30に挿入されたダイレータ(ダイレータ in シース)に挿通された状態を図示したが、高周波ニードル10は、シース30が図示しないガイドワイヤによって体内へ挿入された後で、シース30内に配されたダイレータに挿通される。
【0036】
高周波ニードル10の本体部分12には、高周波発生器32が接続されている。高周波発生器32により発生した高周波エネルギーが本体部分12を通じて穿孔用頭部14へ供給されることにより、穿孔用頭部14が穿孔作動する。高周波発生器32に接続された対極板34が患者に装着されることにより、高周波通電時の患者の感電が防止されている。なお、本体部分12が非導電性材料によって形成される場合には、穿孔用頭部14に高周波エネルギーを供給するための配線を、本体部分12とは別に設ければよい。或いは、連結部材22(線状体24,24)を本体部分12の近位端に至る長さ寸法で設けて、本体部分12の近位端におけるコネクタ部分で直接高周波エネルギーを受けることで、本体部分12を介さずに穿孔用頭部14に高周波エネルギーが供給されるようになっていてもよい。
【0037】
ブロッケンブロー法については、従来から知られていることから、詳細な説明は省略するが、先ず、施術者は、血管等の体内管腔に予め挿通された図示しないガイドワイヤに沿ってダイレータが挿入されたシース30を右心房まで挿入する。次に、施術者は、ガイドワイヤを抜去したシース30に挿入されたダイレータに対して高周波ニードル10を挿通して右心房まで挿入する。
【0038】
次に、施術者は、高周波ニードル10の先端である穿孔用頭部14を、シース30の遠位端から突出させて、心房中隔の卵円窩Aに押し当てる。卵円窩Aに押し当てられた穿孔用頭部14に高周波電力を供給することにより、穿孔用頭部14が穿孔作動し、卵円窩Aに開存孔を形成する。
【0039】
なお、卵円窩Aに開存孔が形成されたか否かは、例えば高周波ニードル10の近位端から供給された造影剤や生理食塩水等を本体部分12における遠位端開口部20から、患者の心臓内に放出して、X線透過画像や超音波画像を確認することで判別することができる。
【0040】
また、卵円窩Aに開存孔が形成されたか否かや、高周波ニードル10が右心房から開存孔を通じて左心房に到達したか否かは、トランスデューサ36を用いてルーメン16内の圧力を計測することによっても判別することができる。すなわち、図3に示されるように、トランスデューサ36は、本体部分12の近位端側に接続されて、ルーメン16内の圧力を電気信号化してモニター38に表示する。ルーメン16には生理食塩水を収容した加圧バッグ40が接続されている。加圧バッグ40は、ルーメン16に対して生理食塩水を血圧以上の圧力で供給することによって、血液がルーメン16を通じてトランスデューサ36へ流入しないようにしている。加圧バッグ40によるルーメン16の加圧は、例えば、ルーメン16内に作用する心臓内圧に応じて制御され得る。
【0041】
卵円窩Aに開存孔を形成する前において、高周波ニードル10の先端が右心房に位置している際には、開放されている遠位端開口部20を通じてルーメン16に作用する右心房の心臓内圧がトランスデューサ36によって計測され、モニター38に表示される。また、高周波ニードル10が卵円窩Aに開存孔を通過して左心房に進入した際には、開放されている遠位端開口部20を通じてルーメン16内に左心房の心臓内圧が作用して、左心房の心臓内圧がトランスデューサ36によって計測され、モニター38に表示される。一般に、右心房と左心房の心臓内圧は異なることから、施術者は、モニター38に表示される心臓内圧の変化により、高周波ニードル10の先端が右心房から開存孔を通じて左心房に到達したことを把握することができる。
【0042】
なお、開存孔が形成されたか否かや、高周波ニードル10の先端が左心房に到達したか否かを把握する方法は、例えば上述のX線を用いた方法や超音波を用いた方法、トランスデューサ36等を用いた方法などのうち、少なくとも2つを組み合わせて採用してもよい。尤も、本体部分12の遠位端開口部20からの造影剤や生理食塩水等の放出は、心房中隔の卵円窩Aに開存孔を形成する手技中に行われるだけでなく、手術中の適切なタイミングにおいて行われてもよい。
【0043】
本実施形態の高周波ニードル10では、本体部分12から遠位端側に突出する連結部材22(線状体24,24)により、穿孔用頭部14が本体部分12から遠位端側に離れた位置で保持されており、この結果、本体部分12の遠位端開口部20が、穿孔用頭部14で覆蓋されることなく、開放状態で維持されている。この遠位端開口部20は、本体部分12の円環状端面と穿孔用頭部14との軸方向対向面間の環状空間28を通じて、周方向の全周囲に亘って外部空間に連通していることから、本体部分12の内部を流動する造影剤や生理食塩水等の流体を、安定して且つ良好な流動効率をもって放出することができる。また、本体部分12内の流体が安定して且つ効率良く流動することで、例えば心臓内圧の変化をより精度良くトランスデューサ36で検出することができて、例えば高周波ニードル10により心房中隔の卵円窩Aに開存孔が形成されたことや、高周波ニードル10の先端が左心房に到達したことを速やかに把握することも可能となる。
【0044】
また、穿孔用頭部14を本体部分12における遠位側の離隔する位置に連結する連結部材22(線状体24,24)は、本体部分12の遠位端開口部20からルーメン16内に差し入れられている。これにより、例えば穿孔用頭部と本体部分とが、穿孔用頭部及び/又は本体部分の外周側に位置する連結部により連結される場合に比べて、高周波ニードル10の外径寸法を小さくすることができる。
【0045】
本実施形態では、連結部材22が一対の線状体24,24によって構成されていることから、本体部分12と線状体24,24の当接状態を安定して確保しつつ、ルーメン16の断面積に比して連結部材22の断面積を比較的小さくできる。これにより、本体部分12と連結部材22との間の連通路26,26の断面積を比較的大きく確保することができて、ルーメン16の内部に連結部材22を設ける場合であっても、本体部分12を流動する流体の通路断面積の確保が容易となる。
【0046】
また、本実施形態では、径方向で隣接する一対の線状体24,24における外周側の部分が本体部分12の内周面に対して本体部分12の長さ方向においてある程度の長さ寸法をもって当接しており、一対の線状体24,24と本体部分12とが当該当接部分の略全長に亘って連続して固着されている。これにより、一対の線状体24,24が比較的小径とされる場合でも、固着面積を十分に確保することができて、本体部分12に対して連結部材22(線状体24,24)、ひいては穿孔用頭部14を安定して固定することができる。特に、本実施形態では、一対の線状体24,24と本体部分12とがレーザー溶接や抵抗溶接などによる溶接にて固着されていることから、例えば連結部材(線状体)と本体部分とが接着される場合に比べて、良好な導電性が発揮される。
【0047】
次に、図4,5には、本発明に係る体組織穿孔用デバイスの第2実施形態として、高周波ニードル50が示されている。本実施形態の高周波ニードル50は、前記第1実施形態の高周波ニードル10と基本的な構造は同様であるが、本体部分52及び連結部材54の具体的な構造が異なっている。以下の説明において、前記第1実施形態と実質的に同一の部材及び部位には、図中に、前記第1実施形態と同一の符号を付すことにより詳細な説明を省略する。
【0048】
本実施形態の本体部分52はチューブ状であり、少なくとも先端部分としての遠位端部分56が可撓性を有する合成樹脂により形成されている。遠位端部分56とは、本体部分52の遠位端部からある程度の長さ寸法をもった部分であり、例えば連結部材54と略同じ長さ寸法を有しているか、連結部材54よりも短い長さ寸法を有している。本実施形態では、合成樹脂により形成された本体部分52の遠位端部分56が、連結部材54の長さ寸法よりも短い長さ寸法を有しており、遠位端部分56の長さ方向両側(遠位端側及び近位端側)から、連結部材54が、長さ方向外方に突出している。特に、本実施形態では、本体部分52における遠位端部分56よりも近位端側は、前記第1実施形態と同様に金属により形成されている。なお、本実施形態の遠位端部分56は透明の材質により形成されており、図4中では、連結部材54が遠位端部分56を透過して示されている。
【0049】
また、本実施形態の連結部材54は、前記第1実施形態と同様に、複数の線状体58により構成されている。特に、本実施形態では、5本の線状体58が設けられており、図4に示されるように、相互に撚り合わされている。なお、本実施形態においても線状体58が、金属により形成されている。このような連結部材54が、本体部分52の遠位端開口部20からルーメン16内へ差し入れられて、本体部分52に固着されている。これにより、連結部材54の近位端部は、本体部分52の遠位端部分56よりも近位端側に位置しており、本体部分52において金属製とされた部分にまで至っている。また、連結部材54の遠位端部は、穿孔用頭部14に接続されている。
【0050】
なお、本実施形態では、本体部分52の外周側に設けられる絶縁層18が、本体部分52において金属製とされる部分や、穿孔用頭部14と本体部分52との間において連結部材54が露出する部分に設けられている。尤も、絶縁層18は、本体部分52の全体に亘って設けられてもよい。また、本実施形態において、本体部分52は全長に亘って合成樹脂により形成されてもよく、この場合、本体部分52の外周側に設けられる絶縁層18は設けられなくてもよい。
【0051】
そして、本実施形態においても、連結部材54(各線状体58)において外周側に位置する部分が、本体部分52の内周面に固着されている。連結部材54と本体部分52の固着方法は限定されるものではないが、連結部材54と本体部分52において金属製とされた部分とは、前記第1実施形態と同様にレーザー等により溶接されることが好ましい。これにより、連結部材54と本体部分52とが電気的に接続される。連結部材54と本体部分52における遠位端部分56とは、例えばろう付け等により溶着されてもよいし、接着されてもよい。
【0052】
以上のような形状とされた高周波ニードル50では、連結部材54(各線状体58)の外周面と本体部分52の内周面との間だけでなく、連結部材54を構成する各線状体58間の隙間(例えば、図5中において各線状体58の内周側の部分)においても、軸方向(本体部分52の長さ方向)に延びる連通路60が形成される。そして、この連通路60が、本体部分52の遠位端において開放状態に維持されることで、本体部分52の遠位端開口部20が構成されている。それ故、本実施形態の高周波ニードル50においても、前記第1実施形態と同様の効果が発揮され得る。
【0053】
また、本実施形態では、撚り合わされることにより形成される各線状体58間の隙間においても連通路60が構成されて、造影剤や生理食塩水等の流体が流動可能であることから、流体の流動効率を向上させることもできる。更に、複数の線状体58を撚り合わせることで、連結部材54としての強度や撓み性の向上なども図られる。
【0054】
更にまた、本体部分52の遠位端部分56が合成樹脂製とされていることから、例えば金属により形成される場合に比べて、柔軟に形成することができる。これにより、連結部材54が設けられることに伴って高周波ニードル50の遠位端部分が変形しにくくなることが回避される。特に、本実施形態では、高周波ニードル50の遠位端部分が、何れも柔軟な連結部材54と遠位端部分56により形成されていると共に、本体部分52において遠位端部分56よりも近位端側は、合成樹脂製の遠位端部分56よりも撓み強度の大きい金属により形成されている。これにより、高周波ニードル50におけるプッシャビリティの向上などが図られると共に、遠位端部分における湾曲や屈曲した部位へ差し入れられる際の追従性が向上されて、例えばシース30やダイレータ、カテーテルなどの形状に追従して柔軟に変形しつつ治療部位まで到達させることが容易となる。
【0055】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、前記実施形態では、体組織穿孔用デバイスを心房中隔(卵円窩)の穿孔に用いる例について説明したが、開存孔を形成する体組織は心房中隔に限定されるものではない。
【0056】
また、前記実施形態では、連結部材22,54が、複数の線状体24,58により構成されていたが、1本の中空又は中実の線状体によって構成されてもよい。この場合においては、例えば多角形の外周断面形状のように線状体の外径寸法を周方向で部分的に異ならせる等して、大径とされた部分を本体部分の内周面に固着することで、連結部材の外周面と本体部分の内周面との間に連通路を設けることが可能となる。なお、線状体は金属製の単一構造であってもよいが、可撓性の付与などを考慮すると合成樹脂等との複合構造であってもよい。例えば金属製の芯線が合成樹脂製の絶縁被覆によって保護された複合構造とされてもよい。そして、この線状体の長さ方向両端部において絶縁被覆を剥いで芯線を露出させて、露出した芯線の一方を穿孔用頭部に接続すると共に、露出した芯線の他方を金属製の本体部分に対して溶接等により固着して導通させてもよい。線状体において絶縁被覆で覆われた部分は、本体部分の内周面に対して接着や溶着等により固着することができる。尤も、チューブ状の本体部分や連結部材における導電性能も必須ではなく、電気絶縁性の材料を採用することも可能である。穿孔用頭部への導電性が要求される場合には、リード線などの導電路や導電膜を設けることも可能である。
【0057】
さらに、前記実施形態では、連結部材22,54が本体部分12,52の遠位端開口部20からルーメン16内に差し入れられて、本体部分12,52の内周側から穿孔用頭部14と本体部分12,52とを連結していたが、例えば穿孔用頭部と本体部分とを、それぞれの外周側から連結してもよい。これにより、ルーメンの全体が連通路とされて造影剤や生理食塩水等の流体が流動可能となることから、流体の流動効率の更なる向上が図られる。
【0058】
なお、線状体24,58の具体的構造も限定されるものでなく、中空構造の線状体などを採用してもよいし、当該線状体24,58自体を複数の同一又は異なる材質や断面形状、太さの素線を互いに撚り合わせることでワイヤーの如き構造を採用することも可能である。
【0059】
また、連結部材と本体部分とは、本体部分の所定の領域において長さ方向の全長に亘って連続して固着される必要はなく、所定の領域において長さ方向で断続的に固着されてもよい。なお、連結部材と本体部分とは相互の当接部分の少なくとも一部において固着されていればよく、連結部材と本体部分との間には、穿孔作動時に連結部材の変形によって先端開口部の全体が穿孔用頭部により閉塞されない程度の連結部材の変形を許容し得る隙間が設けられてもよい。
【0060】
穿孔用頭部は、穿孔のためのエネルギーを発するものであればよく、必ずしも高周波エネルギーに限定されるものではない。例えば、通電やレーザー等によって加熱することで体組織を焼灼する昇温体(熱エネルギー)などによっても、穿孔用頭部は構成され得るし、複数のエネルギーを組み合わせて採用することも可能である。また、デバイスの外部からエネルギーを供給する態様の他、内部にエネルギーを蓄える手段を備えていても良い。更に、穿孔用頭部は、材質や硬度,形状などを特に限定されるものでなく、例えば本体部分と同じ材質であってもよい。
【0061】
なお、本体部分の先端部分(遠位端部分)には、本体部分の先端面に開口する先端開口部(遠位端開口部)に加えて、本体部分の側面に開口する開口部が設けられてもよい。
【符号の説明】
【0062】
10 高周波ニードル(体組織穿孔用デバイス)
12 本体部分
14 穿孔用頭部
16 ルーメン
18 絶縁層
19a 収容部
19b 段差
20 遠位端開口部(先端開口部)
22 連結部材
24 線状体
26 連通路
28 環状空間
30 シース
32 高周波発生器
34 対極板
36 トランスデューサ
38 モニター
40 加圧バッグ
50 高周波ニードル(体組織穿孔用デバイス)
52 本体部分
54 連結部材
56 遠位端部分(先端部分)
58 線状体
60 連通路
A 卵円窩
図1
図2
図3
図4
図5