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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124302
(43)【公開日】2022-08-25
(54)【発明の名称】撹拌装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 27/80 20220101AFI20220818BHJP
   B01F 23/41 20220101ALI20220818BHJP
   B01F 27/808 20220101ALI20220818BHJP
   B01F 27/90 20220101ALI20220818BHJP
【FI】
B01F7/16 H
B01F3/08 A
B01F7/16 E
B01F7/18 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021021984
(22)【出願日】2021-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】502369746
【氏名又は名称】住友重機械プロセス機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】曽我部 寛
(72)【発明者】
【氏名】竹中 克英
【テーマコード(参考)】
4G035
4G078
【Fターム(参考)】
4G035AB38
4G035AB40
4G035AE15
4G078AA01
4G078AA13
4G078AB05
4G078BA05
4G078BA09
4G078BA11
4G078CA13
4G078DA01
4G078DA14
4G078DA21
4G078DB02
4G078EA03
(57)【要約】
【課題】剪断処理を効率的に行える撹拌装置を提供することを目的とする。
【解決手段】撹拌装置は、粒子を含有する被処理流体を収容する撹拌槽と、撹拌槽内に配置され被処理流体を撹拌するゲート翼と、撹拌槽内のゲート翼の底部側にあるディスパー空間Sの下端を定め、所定軸回りに回転することによりディスパー空間S内の粒子を分散させる剪断翼16とを備え、ディスパー空間Sの上端から剪断翼16までの距離は、剪断翼16の直径の5%~35%である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子を含有する被処理流体を収容する撹拌槽と、
前記撹拌槽内に配置され前記被処理流体を撹拌する撹拌翼と、
前記撹拌槽内の前記撹拌翼の底部側にあるディスパー空間の下端を定め、所定軸回りに回転することにより前記ディスパー空間内の粒子を分散させる剪断翼とを備え、
前記ディスパー空間の上端から前記剪断翼までの距離は、前記剪断翼の直径の5%~35%である、撹拌装置。
【請求項2】
前記ディスパー空間の上端は、前記撹拌翼の下端により定められる、請求項1に記載の撹拌装置。
【請求項3】
前記剪断翼の側方に前記剪断翼から隙間をあけて配置され前記所定軸と平行に延びる側部材を備える、請求項1又は2に記載の撹拌装置。
【請求項4】
前記側部材から前記剪断翼までの距離は、前記剪断翼の直径の5%~35%である、請求項3に記載の撹拌装置。
【請求項5】
前記ディスパー空間の上端から前記剪断翼までの距離は、前記剪断翼の直径の5%~25%である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の撹拌装置。
【請求項6】
前記ディスパー空間の上端から前記剪断翼までの距離は、前記剪断翼の直径の10%~25%である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の撹拌装置。
【請求項7】
前記側部材から前記剪断翼までの距離は、前記剪断翼の直径の5%~25%である、請求項3に記載の撹拌装置。
【請求項8】
前記側部材から前記剪断翼までの距離は、前記剪断翼の直径の10%~25%である、請求項3に記載の撹拌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は撹拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被処理流体を撹拌するための撹拌装置が知られている。撹拌装置は、被処理流体の粘度等の性質に応じて様々な機能を有している。例えば、ヘアケア用品やスキンケア用品で用いられる乳化液は、油相(例えばシリコーンオイル)を微細化して水相中に分散させたものであり、このような乳化液を形成するため、油相にせん断力を与えて微細化する乳化方法が存在する。このような乳化液には、分散した粒子が分離しない安定した状態が長期にわたって要求される。また、低粘度の乳化液においては、分散した粒子にサブミクロン以下の粒子径が要求される。このような用途の撹拌装置としては、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/093287号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の撹拌装置は、ガイドリングの内部でディスパー翼を回転させることで、ガイドリングの内周面とディスパー翼の外周縁との間の空間内で、せん断力を撹拌対象物に与える。ところが被処理流体の粘度が高い場合、被処理流体が空間に連続的に流入せず、効率的に剪断処理を行えないかもしれない。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、剪断処理を効率的に行える撹拌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために撹拌装置は、粒子を含有する被処理流体を収容する撹拌槽と、撹拌槽内に配置され被処理流体を撹拌する撹拌翼と、撹拌槽内の前記撹拌翼の底部側にあるディスパー空間の下端を定め、所定軸回りに回転することによりディスパー空間内の粒子を分散させる剪断翼とを備え、ディスパー空間の上端から剪断翼までの距離は、剪断翼の直径の5%~35%である。
【発明の効果】
【0007】
この構成により、剪断処理を効率的に行える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態による撹拌装置の縦断面図である。
図2図1のA-A断面における断面図である。
図3】撹拌装置の縦断面図である。
図4】剪断翼の拡大図である。
図5】変形例による撹拌装置の剪断翼の拡大図である。
図6】実施例にて用いた剪断翼及びゲート翼との位置関係を示す模式図である。
図7】実施例の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態による撹拌装置について説明する。実施形態では、化粧品や食品等の種々の素材を乳化させるために用いられる撹拌装置を例に挙げ詳細な説明を行う。なお本発明は、乳化液を攪拌する攪拌装置に限られず、セルロースナノファイバーを分散処理する攪拌装置にも適用可能である。
【0010】
図1は実施形態による撹拌装置の縦断面図であり、図2図1のA-A断面における断面図である。図1及び図2に示すように、撹拌装置10は、被処理流体を収容する撹拌槽12と、流動翼14と、剪断翼16と、ゲート翼18とを備えている。流動翼14、剪断翼16、及びゲート翼18は撹拌槽12内に収容されており、それぞれ鉛直方向に延びる駆動軸回りに回転駆動する。流動翼14、剪断翼16、及びゲート翼18は、撹拌槽12外に設けられたモータ等の駆動部により別個に駆動される。したがって流動翼14、剪断翼16、及びゲート翼18は、互いに独立して異なる回転速度で、異なる方向に回転可能である。流動翼14、剪断翼16、及びゲート翼18の回転速度及び回転方向R3は、被処理流体の性質に応じて適宜決定される。
【0011】
撹拌槽12は、内周壁12aの側断面形状が円形の容器である。この撹拌槽12は、上部に円筒状の直胴部20を備え、下部に円錐台状の絞り部22を備える。直胴部20と絞り部22とは、一体に形成されている。直胴部20の内径は、上下方向で一定とされている。絞り部22の内径は底部に向かうに従って小さくなる。図1では撹拌槽12は上端部が開放されているが、上端部を閉鎖してもよい。撹拌槽12の外部には、加熱・冷却部としてのジャケット部24が形成されている。このジャケット部24には熱媒又は冷媒が流れ、これにより撹拌槽12内の被処理流体を加熱又は除熱(冷却)できる。
【0012】
流動翼14は、撹拌槽12の内周壁12aに沿って設けられ、駆動軸回りに回転する。流動翼14はリボン翼の形態を有しており、流動翼14が回転すると撹拌槽12の内周壁12aに沿って底部に向けた誘導流が形成される。撹拌槽12内に誘導流が形成されると、被処理流体は混合され、底部に設けられた剪断翼16により乳化される。
【0013】
図1及び図2に示すように流動翼14は、撹拌槽12の内周壁12aに沿うように配置され、所定幅を有する2枚の流動翼本体26と、これら2枚の流動翼本体26を径内位置で支持する複数の支持棒28、及び、流動翼本体26を下方で連結支持する支持リング30とを備える。流動翼本体26、支持棒28、及び支持リング30は溶接等により一体とされる。各支持棒28は上下方向に延びる直棒体であり、上方と下方とで流動翼本体26に固定される。各支持棒28は、流動翼用駆動軸34を介して、撹拌槽12の上方に設けられる流動翼用駆動部(図示しない)に接続される。支持リング30は、各流動翼本体26の下端同士を固定する。
【0014】
各流動翼本体26は湾曲帯状に形成されている。各流動翼本体26は、直胴部20内に配置された2枚の上部翼36と、絞り部22内に配置された2枚の下部翼38とを備える。2枚の上部翼36はそれぞれ、上面視において駆動軸回りを180度旋回するように延びる。2枚の上部翼36は上面視において180度間隔をもって配置される。2枚の下部翼38は上面視において駆動軸回りを90度旋回するように延びる。上部翼36は、撹拌槽12の内周壁12aから一定距離をおいて配置され、周方向に一定の角度で傾斜しつつ旋回しながら頂部から底部に延びる。上部翼36を回転させると、直胴部20内の被処理流体は撹拌され、且つ底部に向けて流れる。
【0015】
下部翼38の直径は、絞り部22の内側形状に対応している。具体的には下部翼38の直径は頂部において直胴部20の内周壁よりも僅かに小さく、底部において剪断翼16の駆動軸の外径とほぼ同一になる。下部翼38は、上面視にて、回転方向R3とは逆方向に膨出するよう湾曲した形状とされている(特に図2参照)。
【0016】
上部翼36と下部翼38とは、接合部40にて接続され両者は連続している。具体的には、図2に示すように、上部翼36と下部翼38は、上部翼36を構成する帯状体の径内側端縁に、下部翼38を構成する帯状体の表面が当接した状態で、接合部40において溶接等により接続される。これにより上部翼36と下部翼38とが一体となっている。
【0017】
下部翼38は、上部翼36により形成された旋回しつつ下方に向かう被処理流体を撹拌槽12の中心に向けて流す。これにより被処理流体が剪断翼16の方向に導かれる。
【0018】
図3は撹拌装置の縦断面図である。より具体的には図3は、剪断翼及びその周辺を拡大した縦断面図である。剪断翼16は、回転により被処理流体に剪断力を与える。剪断翼16としては、ディスパー翼が用いられている。ディスパー翼は、回転可能な円板部42と、円板部42の外周に設けられた複数の剪断歯44とを備える。剪断歯44は、円板部42の外周縁に沿って間欠的に配置され、円板部42の面と直交して延びる。剪断歯44は、上面視において円板部42の外周縁の接線方向に対して傾斜して延びる。本実施形態の剪断歯44は、円板部42の上下方向に均等に突出しているが、少なくとも上下方向の一方に突出していればよく、上方向に突出した剪断歯44と下方向に突出した剪断歯44とを交互に配置することもできる。また、剪断歯44を円板部42の外周縁以外に設けることもできる。
【0019】
剪断翼16には、下方に延びる剪断翼用駆動軸46が接続されている。なお、図示は省略しているが、撹拌槽12と剪断翼用駆動軸46との間には、撹拌対象物が漏れないようにシールが施されている。剪断翼用駆動軸46は、撹拌槽12の下方に設けられる剪断翼用駆動部(図示しない)に接続されている。これにより、剪断翼16を上下方向に延びる縦軸まわりに回転させることができる。
【0020】
図1に戻り、ゲート翼18は、図示のように回転中心(縦軸)に対して対称形状である長方形枠状に形成されたゲート翼本体48を備える。ゲート翼本体48は、それぞれ棒状に形成された上側水平部材48U、左側部材48L、右側部材48R、及び下側水平部材48Dを一体に組み合わせて形成され、細長い棒状部材によるフレーム構造を有する。ゲート翼18は、流動翼14に対して逆方向に回転し、又は流動翼14とは異なる回転数で流動翼14と同方向に回転する。本実施形態ではゲート翼18が「撹拌翼」に相当する。ゲート翼18を回転させるためのゲート翼用駆動部(図示しない)は撹拌槽12の上方に位置する。ゲート翼本体48の上方に位置し、ゲート翼用駆動部に接続されるゲート翼用駆動軸52と流動翼用駆動軸34とは同心に配置される。なお、ゲート翼用駆動部は流動翼用駆動部と兼ねることができる。この場合、減速機等を介して流動翼14とゲート翼18とで異なる回転数(または異なる回転方向)の駆動力を供給するよう構成される。流動翼14及びゲート翼18の回転速度は剪断翼16と比較して十分に遅く設定される。また流動翼14と剪断翼16が回転している間、ゲート翼18は全く回転せず静止状態を維持してもよい。
【0021】
流動翼14とゲート翼18とが組み合わせられたことで、撹拌槽12内における、ゲート翼18の回転に伴う撹拌対象物の移動と流動翼14の回転に伴う撹拌対象物の移動とに差異が生じる。このため、撹拌槽12内で撹拌対象物が流動翼14と一致して動いてしまうような「供回り」を抑制でき、撹拌槽12内の全体で円滑に撹拌対象物を流動させられる。
【0022】
図4は、剪断翼の拡大図である。具体的には図4は、図3と同一の断面において流動翼14を取り除いた状態を示す。剪断翼16の上端とゲート翼18の下端の間には、ディスパー空間Sが設けられている。ディスパー空間Sは、鉛直方向において剪断翼16とゲート翼18との間に設けられた空間であり、剪断翼16とゲート翼18が共働してディスパー空間S内に高剪断場を作り出す。ディスパー空間Sは上面視において剪断翼16と重複する。つまりディスパー空間Sは、剪断翼16の直径と同一の幅、剪断翼16の上端からゲート翼18の下端までの距離に相当する高さ、及び下側水平部材48Dの厚みと同一の奥行きを有する板状空間である。剪断翼16に剪断歯44が設けられている場合、剪断翼16の上端とは剪断歯44の頂部をいう。剪断翼16が剪断歯44を有しておらず剪断翼16が円板部42のみで構成されている場合、剪断翼16の上端とは円板部42の上面をいう。したがって本実施形態では、ディスパー空間Sの下端は、剪断翼16の構成部品の上端により定められる。ゲート翼18の下端とは、枠状のゲート翼18の最下部の下側水平部材48Dの底面をいう。
【0023】
ディスパー空間Sの高さ、つまりゲート翼18の下端から剪断翼16の上端までの距離Hは、ディスパー空間S内に被処理流体が十分に流入でき、かつディスパー空間内に高剪断場を作り出せるように最適化されている。具体的には距離Hは、剪断翼16の直径L(つまり円板部42の直径)の5%~35%の範囲内に設定される。距離Hは、直径Lの5%~25%であることがより好ましく、10%~25%であることが更に好ましい。発明者等の実験によれば、距離Hと直径Lとを上記範囲とすることにより、ディスパー空間S内に被処理流体が十分に流れ込み、ディスパー空間S内に形成される高剪断場内で被処理流体に十分な剪断力が作用することが判明した。これにより、粒子を被処理流体内で好適に分散させられる。距離Hが直径Lに対して小さすぎる(例えば5%未満になる)と、剪断翼16とゲート翼18との間に被処理流体が入り込みにくくなり、かつ剪断翼16とゲート翼18とが接触し易くなる傾向がある。この傾向は被処理流体の粘度が高い場合に特に顕著になる。反対に距離Hが直径Lに対して大きすぎる(例えば35%よりも大きい)と、剪断翼16とゲート翼18によりディスパー空間内に十分な剪断力を生じさせられなくなる。
【0024】
次に撹拌装置10の動作を説明する。図1乃至図3を参照して、被処理流体が撹拌槽12内に注入され、ゲート翼用駆動部、流動翼用駆動部、及び剪断翼駆動部がオン状態にされると、流動翼14、剪断翼16、及びゲート翼18はそれぞれ予め決定された方向に回転駆動する。これにより流動翼本体26が直胴部20内の被処理流体を底部に向けて押し出し、撹拌槽12内で内周壁12aに沿って底部に向かう誘導流Fが生じる。誘導流Fにより被処理流体が剪断翼16に連続的に供給される。
【0025】
剪断翼16に供給された被処理流体の流れは、剪断翼用駆動軸46に沿って頂部に向きを変え、ディスパー空間Sに向けて連続的に流れる。ディスパー空間S内及びその近傍では、剪断翼16の回転により被処理流体に剪断力が作用し、被処理流体中に含まれる粒子が被処理流体中で分散する。その後、被処理流体は直胴部20に向けて頂部方向に流れ、一連の循環を繰り返す。
【0026】
以上のように撹拌装置10によれば、ディスパー空間Sの寸法を剪断翼16の直径に対して最適化することで被処理流体をディスパー空間S内に連続的に流せる。これにより被処理流体に含まれる粒子を好適に分散させられる。
【0027】
また既存のゲート翼18と剪断翼16の組み合わせによりディスパー空間Sを定めることで、新たな部材を撹拌装置10に組み込む必要がなくなる。
【0028】
上述の実施形態では、既存のゲート翼18の下側水平部材48Dと剪断翼16の間にディスパー空間Sを形成することとした。しかしながらディスパー空間Sは、剪断翼16の上に配置され、剪断翼16の回転速度よりも十分に低速な部材、又は他の静止している他の部材で形成されていてもよい。剪断翼16が回転しているときに他方の部材が静止し、又は剪断翼16よりも低速で回転している部材と剪断翼16との間にディスパー空間を形成できれば、ディスパー空間内に十分な剪断力を発生させられる。
【0029】
次に実施形態の変形例について説明する。
【0030】
図5は変形例による撹拌装置の剪断翼の拡大図である。図5は、図4と同一の断面において流動翼14を取り除いた状態を示す。
【0031】
図5に示すように撹拌装置100は、一対の側部材102を備える。一対の側部材102は、ゲート翼18と一体にされ、ゲート翼18の下側水平部材48Dの底面から撹拌槽12の底部に向けて延びる。一対の側部材102は、例えば角型の棒部材により形成される。一対の側部材102は、剪断翼16の両側に配置され、上面視において剪断翼16の中心と一直線上に並ぶ。側部材102の長さは剪断翼16の下端よりも底部側まで延びるよう決定される。側部材102の径は被処理流体の粘度に応じて適宜決定され、被処理流体の粘度が高い場合には高負荷に耐えられるよう大きくするのがよい。側部材102及びゲート翼18の下側水平部材48Dは、剪断翼16の三方を囲むような門形をなす。一対の側部材102は、ディスパー空間Sの幅方向の範囲を定める。本変形例では、ディスパー空間Sの下端は、剪断翼16の構成部品の下端により定められる。したがって、この例においてディスパー空間Sは、側部材102及びゲート翼18の下側水平部材48Dにより囲まれる空間により定められる。ディスパー空間Sは、棒状の側部材102、及び棒状の下側水平部材48Dからなるフレーム構造により定められる、とも言える。
【0032】
側部材102から剪断翼16までの距離Wは、ディスパー空間S内に被処理流体が十分に流入でき、かつディスパー空間S内に高剪断場を作り出せるように最適化されている。具体的には距離Wは、剪断翼16の直径Lの5%~35%の範囲内に設定される。距離Wは、直径Lの5%~25%であることがより好ましく、10%~25%であることが更に好ましい。なお剪断翼16が剪断歯44を有する場合、距離Wは、実質的には円板部42と側部材102との間の距離をいう。
【0033】
実施形態では、剪断翼16の頂部側に高剪断場を作り出せるよう距離Hを最適化したが、変形例ではこれに加えて剪断翼16の側部にも高剪断場を作り出せるよう距離Wを最適化している。
【0034】
このような変形例によれば、実施形態よりも更に好適に被処理流体に含まれる粒子を分散させられる。
【0035】
変形例では側部材がゲート翼18の下側水平部材48Dの底面から延びる棒状部材であるとしたが、側部材の配置はこれに限られるものではない。側部材は、剪断翼16の回転速度よりも十分に低速な部材、又は他の静止している部材で支持されていてもよい。剪断翼16が回転しているときに側部材が静止し、又は剪断翼16よりも低速で回転していれば、ディスパー空間内に十分な剪断力を発生させられる。
【0036】
以下、本発明の実施例について説明する。実施例では、シミュレータを用いて、剪断翼の直径に対して剪断翼とゲート翼との間の距離を変化させたときの高剪断場の形成される模様を観測した。
【0037】
図6は実施例にて用いた剪断翼16及びゲート翼18との位置関係を示す模式図である。剪断構造としては変形例による、側部材102を有する構造を用いた。剪断翼16の直径に対する、剪断翼16とゲート翼18との間の距離(つまりディスパー空間Sの高さ)の割合をB1とする。
【0038】
図7は、実施例の測定結果を示すグラフである。具体的には図7は、ディスパー空間を側面視したときに、ディスパー空間内における高剪断場(この例では2MPa以上の剪断力が発生している箇所)が占める割合と、値B1との関係を示すグラフである。図7に示すように、値B1が35%を越えると高剪断場の割合が著しく低下する。
【0039】
本発明は上述の実施形態又はその変形例に限定されるものではなく、実施形態等の各構成は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0040】
上述の実施形態及び変形例を一般化すると、本発明に加えて以下のような態様が得られる。
【0041】
粒子を含有する被処理流体を収容する撹拌槽と、
前記撹拌槽内に配置され前記被処理流体を撹拌する、剪断翼を含むロータのような駆動側部材と、
前記撹拌槽内の前記駆動側部材の底部側に配置され、前記ロータよりも低速で駆動し、又は前記ロータの駆動時に静止している固定側部材とを備え、
前記駆動部材と前記固定部材との間に隙間が形成され、隙間は前記駆動側部材の例えば直径のような寸法に基づいて決定される、撹拌装置。
【0042】
この態様において隙間はディスパー空間に相当し、この構成によっても、被処理流体に含まれる粒子を分散させられる。
【符号の説明】
【0043】
10 撹拌装置、 12 撹拌槽、 14 流動翼、 16 剪断翼、 18 ゲート翼、 100 撹拌装置、 102 側部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7