(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124307
(43)【公開日】2022-08-25
(54)【発明の名称】成形体及びこれを用いた包装容器
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20220818BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20220818BHJP
C08L 23/00 20060101ALI20220818BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20220818BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/34
C08L23/00
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021021992
(22)【出願日】2021-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】▲崎▼山 徹三
(72)【発明者】
【氏名】藤井 愛沙子
(72)【発明者】
【氏名】小沼 健太
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 優絵
【テーマコード(参考)】
3E086
4J002
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AD03
3E086AD04
3E086BA15
3E086BA35
3E086BB01
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3E086BB35
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3E086BB55
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3E086CA01
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3E086DA03
4J002AA001
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4J002AA012
4J002AA013
4J002BB031
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4J002GP00
(57)【要約】
【課題】良好な膜質と高いバリア性を保持することが可能な層状鉱物を含有する成形体及び包装容器を提供する。
【解決手段】ベース樹脂1と、分散相を形成する分散相樹脂2と、相溶化剤3と、層状鉱物4とを含む層状鉱物含有成形体5であって、分散相は、相溶化剤3で周囲を包まれた状態でベース樹脂1中に複数個独立して存在し、層状鉱物4は、ベース樹脂1中よりも高い割合で相溶化剤3中に存在し、層状鉱物含有成形体5の厚み方向で対向する2つの面のうちの一方の面から他方の面に向かう方向に延びる全ての直線は、少なくとも1つの分散相を貫き、ベース樹脂1と層状鉱物4との重量濃度の比が、200/1以上20/1以下の範囲内の値である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース樹脂と、分散相を形成する分散相樹脂と、相溶化剤と、層状鉱物とを含む成形体であって、
前記分散相は、前記相溶化剤で周囲を包まれた状態で前記ベース樹脂中に複数個独立して存在し、
前記層状鉱物は、前記ベース樹脂中よりも高い割合で前記相溶化剤中に存在し、
当該成形体の厚み方向で対向する2つの面のうちの一方の面から他方の面に向かう方向に延びる全ての直線は、少なくとも1つの前記分散相を貫き、
前記ベース樹脂と前記層状鉱物との重量濃度の比が、200/1以上20/1以下の範囲内の値であることを特徴とする成形体。
【請求項2】
前記分散相と前記相溶化剤との重量濃度の比が、90/10以上50/50以下の範囲内の値であり、
前記相溶化剤と前記層状鉱物との重量濃度の比が、90/10以上50/50以下の範囲内の値であることを特徴とする請求項1に記載の成形体。
【請求項3】
前記ベース樹脂と前記分散相との重量濃度の比が、80/20以上50/50以下の範囲内の値であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の成形体。
【請求項4】
前記分散相は、少なくとも直交する二方向へ伸長しており、前記分散相の厚みに対する前記二方向それぞれにおける前記分散相の最長長さの比が、8/1以上100/1以下の範囲内の値であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の成形体。
【請求項5】
前記ベース樹脂は、オレフィン樹脂を含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の成形体。
【請求項6】
前記分散相樹脂は、酸素に対するバリア性を持たないことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の成形体。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の成形体を用いてなることを特徴とする包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形体及びこれを用いた包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プラスチックフィルムは、軽量である、化学的に安定である、加工がしやすい、柔軟で強度がある、大量生産が可能などの性質を有する。このため、プラスチックフィルムは、様々なものに利用されている。プラスチックフィルムの用途は、例えば、食料品や医薬品等を包装する包装材、点滴パック、買物袋、ポスター、粘着テープ、液晶テレビ等に利用される光学フィルム、保護フィルム、窓に貼合するウィンドウフィルム、ビニールハウス、建装材等々、多岐にわたる。このような用途に対し、用途に応じて適正なプラスチック材料が選択される。さらに、プラスチックフィルムを複数種類重ねて積層体とすることもなされている。また、複数のプラスチック材料を1つの層中に混ぜることで、単一材料の欠点を補う用い方もある。多くの場合、耐熱性や機械強度、透明性などの観点から、適正なフィルム材料を選択している。
【0003】
プラスチックフィルムの機械特性やバリア性は、プラスチックフィルムの材料や層構成によって決まる。例えば、バリア性が必要な場合には、バリア性の良い材料に限定して使用するか、別の工程でバリア層を積層する必要が出てくるなど、製造時の手間やコストが問題となってくる場合がある。
これとは別に、層状鉱物を高分子中に分散させて、様々な特性を引き出す試みがなされている(特許文献1、非特許文献1~4)。期待される特性の一つにはバリア性の向上が挙げられており、射出成型や押出成形にて層状鉱物と高分子を混合させて製膜する検討も種々行われている(特許文献1、非特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】松本一昭、吉田龍史、奥山喜久夫、「表面修飾シリカナノ粒子の二軸押出機による樹脂中への分散」、粉体工学会誌、2003年、第40巻、7号、p489-496
【非特許文献2】山中寿行、外7名、「マイカ充填ポリオレフィン系複合材料の機械的性質」、東京都立産業技術研修センター研究報告、2015年、第10号、p82-83
【非特許文献3】門川泰子、山口知宏、高橋勤子、福田徳生、「マイカ/PET系コンポジットの作製と物性評価」、愛知県産業技術研究所 研究報告2010、p6-9
【非特許文献4】皆瀬慎著、「有機変性粘度鉱物の工業的利用」、オレオサイエンス、2014年、第14巻、第5号、p205-211
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、層状鉱物が高分子中で種々特性を発揮するには、単分散していることが望ましいとされている。しかしながら、高分子中で無機物を種々の特性が発現するサイズにまで分散させることは容易ではなく、非常に大きなエネルギーが必要になる上に、使用する押出機やスクリュ、鉱物の種類によって最適条件が異なり、汎用条件がない状態である(例えば、特許文献1、非特許文献1、4参照。)。
また、層状鉱物の含有量が多くなり過ぎると製膜されるフィルムがぼそぼそした質感になっていき、膜質の低下を招くこともあり、一般的に層状鉱物の添加量は数%(~5重量%)程度であるが、この程度の添加量ではバリア性の発現に限界がある。
【0007】
本発明は、上記のような点に鑑みてなされたもので、製造時のエネルギーを抑え、安定した条件で作製することが可能であり、高いバリア性を保持することが可能な層状鉱物を含有する成形体及びこれを用いた包装容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明の一態様によれば、ベース樹脂と、分散相を形成する分散相樹脂と、相溶化剤と、層状鉱物とを含む成形体であって、分散相は、相溶化剤で周囲を包まれた状態でベース樹脂中に複数個独立して存在し、層状鉱物は、ベース樹脂中よりも高い割合で相溶化剤中に存在し、成形体の厚み方向で対向する2つの面のうちの一方の面から他方の面に向かう方向に延びる全ての直線は、少なくとも1つの分散相を貫き、ベース樹脂と層状鉱物との重量濃度の比が、200/1以上20/1以下の範囲内の値である成形体が提供される。
また、本願発明の他の態様によれば、上記形態に記載の成形体を用いた包装容器が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、製造時のエネルギーを抑え、安定した条件で作製することができ、高いバリア性を保持することが可能な成形体及び包装容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る層状鉱物含有成形体の一例を模式的に示す縦断面図である。
【
図2】従来の層状鉱物含有成形体の一例を模式的に示す縦断面図である。
【
図3】従来の層状鉱物含有成形体の別の一例を模式的に示す縦断面図である。
【
図4】上面視における、分散相樹脂の形状例を示す概略図である。
【
図5】上面視における、分散相樹脂の他の形状例を示す概略図である。
【
図6】上面視における、分散相樹脂の他の形状例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、各図は模式的に示した図であり、各部の大きさや形状等は理解を容易にするために適宜誇張して示している。また、説明を簡単にするため、各図の対応する部位には同じ符号を付している。なお、
図1において、ベース樹脂1についてはハッチングを省略している。
【0012】
(層状鉱物含有成形体5の構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る層状鉱物含有成形体5の一例の概略構成を示す縦断面図である。
本実施形態に係る層状鉱物含有成形体5は互いに向かい合う面を有し、ベース樹脂1、分散相を形成する樹脂(分散相樹脂)2、相溶化剤3及び層状鉱物4を含む。
相溶化剤3は、ベース樹脂1と分散相樹脂2とが相溶することを助け、分散相樹脂2の周囲を、数百nm以上数μm以下の厚さで包み込むように配置され、この周囲を相溶化剤3で包まれた分散相樹脂2は、ベース樹脂1中に複数個独立して存在する。また、層状鉱物4は、相溶化剤3の中に選択的に存在する割合が高くなるように配置されている。本実施形態では、このように相溶化剤3中に層状鉱物4が選択的に配置されることで、層状鉱物4が相溶化剤3中で相対的に高濃度となり、密に配置されることで、バリア性が発現されるものである。
なお、
図1では相溶化剤3中の層状鉱物4がまばらにしか存在していないように見えるが、実際には三次元空間内にランダムに密に配置されている。
【0013】
また、本実施形態の層状鉱物含有成形体5の厚み方向で対向する2つの面のうちの一方の表面から他方の表面に向かう厚み方向に伸びる全ての直線Mが、それぞれ少なくとも1つの分散相樹脂(分散相)2を貫くように、分散相樹脂2が配置される。これによって、直線Mが貫く分散相樹脂2を包み込む相溶化剤3がバリア層となり、さらに、層状鉱物含有成形体5の厚み方向に伸びる全ての直線Mが少なくとも1つの分散相樹脂2を貫くため、酸素のような気体が層状鉱物含有成形体5内を透過しようとする際に、いわゆる迷路効果が発現され、層状鉱物含有成形体5のバリア性が担保されるようになっている。
【0014】
図1に示す本実施形態に係る層状鉱物含有成形体5とは異なり、層状鉱物4がベース樹脂1中に多数含まれる場合を
図2及び
図3に示す。ベース樹脂1中の層状鉱物4の一般的な添加量である数%(~5重量%)程度では、層状鉱物4を単分散に近い状態にしなければバリア性の発現は見込めず、また、層状鉱物4の重量濃度を上げた場合には、層状鉱物含有成形体5がボソボソとなり、層状鉱物含有成形体5の質感低下や、強度低下を招く。なお、
図2及び
図3において、ベース樹脂1についてはハッチングを省略している。
本実施形態に係る層状鉱物含有成形体5は、
図1に示すように、層状鉱物4を含有した相溶化剤3で、分散相樹脂2を包み込むことで、ベース樹脂1中において相対的に層状鉱物4の重量濃度が高い領域を形成するようにしている。
【0015】
(ベース樹脂1について)
本実施形態の層状鉱物含有成形体5において、ベース樹脂1の材料としては、射出成形もしくは押出成形可能な熱可塑性樹脂から適宜選択することが可能である。包装容器を目的とする場合には、ベース樹脂1として、性能や成形性、コストの観点から、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖上低密度ポチエチレン(LLDPE)、α―オレフィンコポリマー共重合体、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、変性ポリプロピレン、環状オレフィンコポリマーなどのオレフィン樹脂が好ましく用いられる。
【0016】
(分散相樹脂2について)
分散相樹脂2を構成する樹脂は、ベース樹脂1と共に成形した際に、顕著にデラミネーションが生じるような樹脂でなければ、射出成形もしくは押出成形可能な種々の熱可塑性樹脂から適宜選択することができる。本実施形態においては、分散相樹脂2がナイロンやEVOH、EVAのような酸素に対するバリア性を有する樹脂である必要性は特になく、安価で酸素に対して非バリア性の樹脂を用いたとしても、バリア性の担保がされるものである。
【0017】
(相溶化剤3について)
相溶化剤3は、ベース樹脂1とは異なる樹脂であって、分散相樹脂2と結合し得る反応基が付与された分子構造からなる共重合体熱可塑性樹脂であり、ベース樹脂1と分散相樹脂2の親和性を向上させる役目を担う。ベース樹脂がオレフィン樹脂である場合、相溶化剤3として機能する樹脂としては、エチレン-メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン-エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン-ブチルアクリレート共重合体(EBA)エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、マレイン酸変性ポリオレフィン(PO-g-MAH)等が挙げられる。
【0018】
(層状鉱物4について)
分散相樹脂2中に内包される層状鉱物4は、モンモリロナイト、ベントナイト、スクメタイト、合成マイカ、あるいはそれらの有機修飾物等、公知の層状鉱物から選択することができる。
【0019】
前記ベース樹脂1、分散相樹脂2、相溶化剤3、層状鉱物4以外に、造核剤、補強フィラー、酸化防止剤、熱安定剤、耐候剤、光安定剤、可塑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、分散剤、銅害防止剤、中和剤、気泡防止剤、ウェルド強度改良剤、天然油、合成油、ワックス等の添加材を用いても良い。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0020】
上記造核剤及び補強フィラーとしては、炭酸カルシウム、炭酸リチウムアルミナ、酸化チタン、アルミニウム、鉄、銀、銅等の金属、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物、セルロースミクロフィブリル、酢酸セルロース等のセルロース類、ガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ナイロン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、ポリアクリレート繊維等の繊維状フィラー、カーボンナノチューブ等のカーボン類等が挙げられる。
上記酸化防止剤としては、フェノール系化合物、有機ホスファイト系化合物、チオエーテル系化合物等が挙げられる。
上記熱安定剤としては、ヒンダードアミン系化合物等が挙げられる。
【0021】
上記紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾエート系化合物等が挙げられる。
上記帯電防止剤としては、ノニオン系化合物、カチオン系化合物、アニオン系化合物等が挙げられる。
上記難燃剤としては、ハロゲン系化合物、リン系化合物、窒素系化合物、無機化合物、ホウ素系化合物、シリコーン系化合物、硫黄系化合物、赤リン系化合物等が挙げられる。
上記難燃助剤としては、アンチモン化合物、亜鉛化合物、ビスマス化合物、水酸化マグネシウム、粘土質珪酸塩等が挙げられる。
【0022】
(重量濃度について)
分散相樹脂2と相溶化剤3の重量濃度の比は、90/10以上50/50以下であり、好ましくは90/10以上65/35以下である。分散相樹脂2と相溶化剤3の重量濃度の比が90/10よりも小さい、つまり、分散相樹脂2と相溶化剤3の重量濃度の比が90/10である場合よりも、分散相樹脂2の重量濃度に対する相溶化剤3の重量濃度が小さいと、相溶化剤3の量が不十分で、全ての分散相樹脂2を包み込むことができなくなる。また、分散相樹脂2と相溶化剤3の重量濃度の比が50/50よりも大きい、つまり、分散相樹脂2と相溶化剤3の重量濃度の比が50/50である場合よりも、分散相樹脂2の重量濃度に対する相溶化剤3の重量濃度が大きいと、相溶化剤3が過剰に含まれることになり、分散相樹脂2を包み込むだけでなく相溶化剤3単体でも分散相を形成することで、機械物性等といった望みの性能が発揮できなくなる場合がある。
【0023】
また、相溶化剤3と層状鉱物4の重量濃度の比は、90/10以上50/50以下であり、好ましくは80/20以上50/50以下である。相溶化剤3と層状鉱物4の重量濃度の比が90/10よりも小さい、つまり、相溶化剤3と層状鉱物4の重量濃度の比が90/10である場合よりも、相溶化剤3の重量濃度に対する層状鉱物4の重量濃度が小さいと、層状鉱物4の分散量が少なく、バリア性が十分に発揮できなくなる。また、相溶化剤3の重量濃度と層状鉱物4の重量濃度の比が50/50よりも大きい、つまり、相溶化剤3の重量濃度と層状鉱物4の重量濃度との比が50/50である場合よりも、相溶化剤3の重量濃度に対する層状鉱物4の重量濃度が大きいと、中間工程においてボソボソとした質感が強くなりすぎ、成形が困難となる。なおこの時、層状鉱物4の分散状態の規定は不要であり、成り行きの状態で構わない。
また、ベース樹脂1と層状鉱物4の重量濃度の比は、200/1以上20/1以下である。
【0024】
ベース樹脂1と層状鉱物4の重量濃度の比が200/1よりも小さい、つまり、ベース樹脂1の重量濃度と層状鉱物4の重量濃度との比が200/1である場合よりも、ベース樹脂1の重量濃度に対する層状鉱物4の重量濃度が小さいと、層状鉱物4の分散量が少なく、バリア性が十分に発揮できなくなる。また、ベース樹脂1と層状鉱物4の重量濃度の比が20/1よりも大きい、つまり、ベース樹脂1の重量濃度と層状鉱物4の重量濃度との比が20/1である場合よりも、ベース樹脂1の重量濃度に対する層状鉱物4の重量濃度が大きいと、部分的ではあるがボソボソとした質感が強くなりすぎ、機械物性等といった望みの性能が発揮できなくなる場合がある。
【0025】
さらに、ベース樹脂1と分散相樹脂2との重量濃度の比は、80/20以上50/50以下である。ベース樹脂1と分散相樹脂2との重量濃度の比が80/20よりも小さい、つまり、ベース樹脂1と分散相樹脂2との重量濃度の比が80/20である場合よりも、ベース樹脂1の重量濃度に対する分散相樹脂2の重量濃度が小さいと、分散相樹脂2がベース樹脂1中に十分に分散できず、結果として十分な迷路効果を発現できず、バリア性が不十分になってしまう恐れがある。また、ベース樹脂1と分散相樹脂2との重量濃度の比が50/50よりも大きい、つまり、ベース樹脂1と分散相樹脂2との重量濃度の比が50/50である場合よりも、ベース樹脂1の重量濃度に対する分散相樹脂2の重量濃度が大きいと、ベース樹脂1と分散相樹脂2の海島構造における相が逆転することになり、望みの性能が発揮できなくなる場合がある。
【0026】
(分散相樹脂2の形状について)
層状鉱物含有成形体5の表面、つまり上面視で観察した時、
図4に示すように分散相樹脂2は、少なくとも直交する二方向(d1、d2)へ伸長しており、分散相樹脂2の厚みT(
図1中に示す。)に対する、直交する二方向それぞれへの最長長さの比d1/T及びd2/Tは、それぞれ8/1以上100/1以下であり、より好ましくは、32/1以上100/1以下である。二方向それぞれへの最長長さの比d1/T及びd2/Tが8/1より小さい、つまり、最長長さの比d1/T及びd2/Tが8/1である場合よりも、直交する二方向への最長長さd1、d2に対する厚みTが大きいと、十分な迷路効果を発現できず、バリア性が不十分になってしまう恐れがある。また、最長長さの比d1/T及びd2/Tが100/1よりも大きい、つまり、最長長さの比d1/T及びd2/Tが100/1である場合よりも、直交する二方向への最長長さd1、d2に対する厚みTが小さいと、伸長時に分散相樹脂2がちぎれてしまい、製造が困難となってくる。
【0027】
また、分散相樹脂2の表面形状、つまり上面視における形状は、
図4のように長方形形状でも良いし、
図5のように円形形状でも良いし、楕円形状でも良い(図示せず)。さらには、
図6のように、直交する二方向のみに伸長した形状であっても良い。十分な迷路効果が出せるように、少なくとも直交する二方向d1、d2に分散相樹脂2が伸長していれば良い。
【0028】
また、層状鉱物含有成形体5の縦断面において、分散相樹脂2は、
図7のように楕円形状でも良いし、
図8のように左端と右端とで厚みの異なる左右非対称な形状でも良いし、
図9のように左右対象であり、くびれを有する形状でも良い。いずれの場合においても、分散相樹脂2の、厚みTに対する長さL、つまり直交する二方向の長さの最長値d1、d2それぞれの比が、8/1以上100/1以下の範囲内の値であればよい。また分散相樹脂2の形状は、
図7~
図9に示す形状に限定されるものではなく、分散相樹脂2の、厚みTと長さLとが前記要件を満たす形状であれば、適用することができる。
【0029】
(作用)
一般に、層状鉱物4を高分子中に分散させて性能の向上、例えばバリア性の向上を図ろうとする場合、ナノコンポジットとして振舞うように凝集を崩す必要がある。しかしながら、層状鉱物4を、高いエネルギーをかけてナノサイズまで分散させることは容易ではなく、また、凝集の崩壊が不十分な状態で高分子中に分散させても、十分なバリア性の向上が見られない上に、外観不良や成形体の強度低下につながる。一方、バリア性を出そうと層状鉱物4の含有率を高くし過ぎると、さらに凝集が崩れにくくなったり、シートがぼそぼそした質感になったりすることが懸念される。そのため、層状鉱物4を添加する場合、通常は3~5重量%と極少量しか添加できないため、凝集物を極力少なく分散しても、バリア性の向上には限界がある。
【0030】
一方で、分散相樹脂2を包み込むように存在する相溶化剤3の中に、層状鉱物4を分散させる構造である本実施形態の層状鉱物含有成形体5は、疑似的に有機層内に無機層を挿入した形態となり、従来の層状鉱物含有成形体とは異なる機構でバリア性を発現する。バリアされる対象である酸素などの気体は、疑似無機層となる相溶化剤3層を透過することが困難になるため、ベース樹脂1中を選択的に透過していくことになる。この相溶化剤3層を含む分散相樹脂2が、任意の箇所で厚み方向に少なくとも存在することで、いわゆる迷路構造となり、バリア性の向上につながる。さらに、層状鉱物4は分散相樹脂2を包み込む相溶化剤3層を無機層として振舞わせる働きをすればよい為、層状鉱物4に高いエネルギーをかけて、ナノコンポジットサイズに分散させなくともバリア性を発現させることができる。そのため、高いエネルギーを必要とすることなくバリア性を発現させることができその分、コスト削減を図ることができる。また、少なくともベース樹脂の重量濃度と層状鉱物の重量濃度との比を200/1以上20/1以下の値とすることによって、安定した条件でバリア性を有する層状鉱物含有成形体5を実現することができる。
【0031】
また、層状鉱物含有成形体5は相溶化剤3中の層状鉱物4によりバリア性を発現するため、ベース樹脂1や分散相樹脂2の材料自体はバリア性を有する必要がなく、ベース樹脂として一般に流通しているオレフィン樹脂を用いても、バリア性を向上させることが可能となる。
また、本実施形態の層状鉱物含有成形体5の材料樹脂はオレフィン樹脂に限定するものではなく、バリア性を有する樹脂、例えばエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)のようなバリア性を有する樹脂を用いた場合は、さらに良好なバリア性を付与することが可能になるが、安価なオレフィン樹脂のような汎用樹脂を用いても、十分にバリア性が高い成形体を提供できる例として挙げたものである。
【0032】
前述したように、本実施形態の層状鉱物含有成形体5は、単体樹脂と層状鉱物4を混合して作製する成形体に比べて、膜質を維持しやすい利点があるが、層状鉱物含有成形体5の全樹脂量に対する層状鉱物4の含有量が多くなり過ぎると、膜質の低下につながる危険性がある。これは各樹脂材料の比率や層状鉱物4の含有率を適宜調整すると、必要なバリア性能発現と層状鉱物含有成形体5の機械的性質保持、および良好な質感を両立し得る。
【0033】
以上のように、一般にバリア性を示さない樹脂や、十分な分散が見られない層状鉱物4を用いて成形体を作製しても、本実施形態の層状鉱物含有成形体5のような構成配置とすることで、製造時のエネルギーを抑え、安定した条件で作製可能であり、良質な膜質と高いバリア性を示すシートを得ることが可能となる。
【0034】
(層状鉱物含有成形体5の製造方法)
本実施形態の層状鉱物含有成形体5として層状鉱物含有シート10を適用する場合、層状鉱物含有シート10の製造方法として、押出成形、ならびに射出成形よる製造方法を用いることができる。
第1段階として、二軸押出機を用いて、所望の比率になるようにドライブレンドした、相溶化剤3と層状鉱物4をマスターバッチ化する。この時、層状鉱物4の凝集体が完全に崩れる必要はないので、トルクオーバー等のトラブルが起きない条件で適宜マスターバッチを作製すればよい。これにより、相溶化剤3中に、層状鉱物4が分散されたマスターバッチが得られる。
【0035】
次いで、各成分が所望の比率になるように、ベース樹脂1、分散相樹脂2、および上述のマスターバッチをドライブレンドして、層状鉱物含有シート10を押出製膜または射出成形をする。これにより、
図1に示すように、分散相樹脂2が、相溶化剤3と層状鉱物4とを含むマスターバッチにより包み込まれた状態で、ベース樹脂1中に分散して存在する層状鉱物含有シート10が製膜される。
この時、押出機の機構によっては、最初から全ての樹脂を押出機に投入するのではなく、例えばベース樹脂1と分散相樹脂2を最初に投入しプリブレンドしてから、途中部分からフィーダーによりマスターバッチを添加してもよい。
また、押出機のスクリュの先に、オリフィスを設置すると、分散相樹脂2の形状を、より幅広いバリエーションを持って制御できる。また、できた成形体をインラインまたはオフラインにより、必要があれば延伸処理を施しても構わない。その他、適宜必要な工程や添加剤を加えることは制限されるものではない。
【0036】
(層状鉱物含有成形体5の使用用途)
本発明の層状鉱物含有成形体5は、フィルムまたはシート状であっても、射出成形体のような異形形状であっても良い。またこれらは任意のバリア材料として使用可能であるが、好ましくはチューブやボトルなどの包装容器として好適に使用できる。フィルムまたはシート状の場合は、チューブの胴体部として使用可能で、異形形状の場合、チューブやボトルの肩部またはキャップとして好適に用いることができる。
【0037】
以上、本発明の実施形態を例示したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではないことはいうまでもない。また、以上の実施の形態を組み合わせて用いることは、任意である。
【実施例0038】
以下、本発明に基づく実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0039】
<実施例及び比較例の試験体としての層状鉱物含有成形体5の作製>
(実施例1)
ベース樹脂1として、株式会社プライムポリマー社製の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)SP3530(商品名)を用い、分散相樹脂2として宇部興産株式会社製のナイロン6(PA6)1022B 22(商品名)を用い、相溶化剤3として三井・ダウ ポリケミカル株式会社製のエチレン-ビニルアルコール(EVA)エバフレックスEV450(商品名)を用い、層状鉱物4としてビックケミー・ジャパン株式会社製のCLOISITE-20A(商品名)(有機修飾ベントナイト)を用いた。
相溶化剤(EVA)3と層状鉱物(CLOISITE)4の重量比が90:10となるように各々用意し、株式会社東洋精機社製のラボプラストミルを用いて二軸押出により、EVAマスターバッチを作製した。その後、LLDPEとPA6とEVAマスターバッチの重量比が70:25:5となるようにドライブレンドし、ラボプラストミルを用いてオリフィスを有した単軸押出成形により、200μm厚の層状鉱物含有成形体5を作製した。
このとき、相溶化剤3と層状鉱物4の重量濃度比は90/10、ベース樹脂1と層状鉱物4の重量濃度比は126/1、分散相樹脂2と相溶化剤3の重量濃度比は25/5、ベース樹脂1と分散相樹脂2との重量濃度比は70/25であった。また、作製した層状鉱物含有成形体5の分散相樹脂2の、直交する二方向d1、d2それぞれにおける最長長さと分散相樹脂2の厚みTとの比は8/1であった。
【0040】
(実施例2)
相溶化剤3と層状鉱物4の重量比が60:40になるようにドライブレンドした以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2の層状鉱物含有成形体5を作製した。
このとき、相溶化剤3と層状鉱物4の重量濃度比は60/40、ベース樹脂1と層状鉱物4の重量濃度比は21/1、分散相樹脂2と相溶化剤3の重量濃度比は25/5、ベース樹脂1と分散相樹脂2との重量濃度比は70/25であった。また、作製した層状鉱物含有成形体5の分散相樹脂2の、直交する二方向d1、d2それぞれにおける最長長さと分散相樹脂2の厚みTとの比は8/1であった。
【0041】
(実施例3)
ベース樹脂1として、株式会社プライムポリマー社製のホモポリプロピレン(PP)F-300SP(商品名)を用い、分散相樹脂2として三菱ケミカル株式会社製のエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)ソアノールD2908(商品名)を用い、相溶化剤3として三井化学株式会社製の無水マレイン酸変性ポリプロピレンのアドマーQE060(商品名)を用いた。それ以外は、実施例1と同様の方法で、実施例3の層状鉱物含有成形体5を作製した。
このとき、相溶化剤3と層状鉱物4の重量濃度比は90/10、ベース樹脂1と層状鉱物4の重量濃度比は126/1、分散相樹脂2と相溶化剤3の重量濃度比は25/5、ベース樹脂1と分散相樹脂2との重量濃度比は70/25であった。また、作製した層状鉱物含有成形体5の分散相樹脂2の、直交する二方向d1、d2それぞれにおける最長長さと分散相樹脂2の厚みTとの比は10/1であった。
【0042】
(実施例4)
相溶化剤3と層状鉱物4の重量比が60:40になるようにドライブレンドした以外は、実施例3と同様の方法で、実施例4の層状鉱物含有成形体5を作製した。
このとき、相溶化剤3と層状鉱物4の重量濃度比は60/40、ベース樹脂1と層状鉱物4の重量濃度比は21/1、分散相樹脂2と相溶化剤3の重量濃度比は25/5、ベース樹脂1と分散相樹脂2との重量濃度比は70/25であった。また、作製した層状鉱物含有成形体5の分散相樹脂2の、直交する二方向d1、d2それぞれにおける最長長さと分散相樹脂2の厚みTとの比は10/1であった。
【0043】
(実施例5)
分散相樹脂2として日本ポリエチレン株式会社製の低密度ポリエチレン(LDPE)ノバテックLD LC600A(商品名)を用いた以外は、実施例4と同様の方法で、実施例5を作製した。
このとき、相溶化剤3と層状鉱物4の重量濃度比は60/40、ベース樹脂1と層状鉱物4の重量濃度比は21/1、分散相樹脂2と相溶化剤3の重量濃度比は25/5、ベース樹脂1と分散相樹脂2との重量濃度比は70/25であった。また、作製した層状鉱物含有成形体5の分散相樹脂2の、直交する二方向d1、d2それぞれにおける最長長さと分散相樹脂2の厚みTとの比は10/1であった。
【0044】
(実施例6)
ベース樹脂1として、株式会社プライムポリマー社製のホモポリプロピレン(PP)F-300SP(商品名)を用い、分散相樹脂2として三菱ケミカル株式会社製のエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)ソアノールD2908(商品名)を用い、相溶化剤3として三井・ダウ ポリケミカル株式会社製のエチレン-ビニルアルコール(EVA)エバフレックスEV450(商品名)を用いた。
相溶化剤(EVA)3と層状鉱物(CLOISITE)4の重量比が80:20となるように各々用意し、株式会社東洋精機社製のラボプラストミルを用いて二軸押出により、EVAマスターバッチを作製した。その後、PPとEVOHとEVAマスターバッチの重量比が79:19:2となるようにドライブレンドし、ラボプラストミルを用いてオリフィスを有した単軸押出成形により、200μm厚の層状鉱物含有成形体5を作製した。
このとき、相溶化剤3と層状鉱物4の重量濃度比は80/20、ベース樹脂1と層状鉱物4の重量濃度比は200/1、分散相樹脂2と相溶化剤3の重量濃度比は19/2、ベース樹脂1と分散相樹脂2との重量濃度比は79/19であった。また、作製した層状鉱物含有成形体5の分散相樹脂2の、直交する二方向d1、d2それぞれにおける最長長さと分散相樹脂2の厚みTとの比は7/1であった。
【0045】
(実施例7)
相溶化剤3と層状鉱物4の重量比が64:14となり、ベース樹脂1と分散相樹脂2と相溶化剤3との重量比が70:14:16となるようにドライブレンドした以外は、実施例6と同様の方法で、実施例7の層状鉱物含有成形体5を作製した。
このとき、相溶化剤3と層状鉱物4の重量濃度比は64/14、ベース樹脂1と層状鉱物4の重量濃度比は20/1、分散相樹脂2と相溶化剤3の重量濃度比は42/48、ベース樹脂1と分散相樹脂2との重量濃度比は70/14であった。また、作製した層状鉱物含有成形体5の分散相樹脂2の、直交する二方向d1、d2それぞれにおける最長長さと分散相樹脂2の厚みTとの比は7/1であった。
【0046】
(実施例8)
相溶化剤3と層状鉱物4の重量比が91:9となり、ベース樹脂1と分散相樹脂2と相溶化剤3との重量比が44.5:50.5:5.0となるようにドライブレンドした以外は、実施例6と同様の方法で、実施例8の層状鉱物含有成形体5を作製した。
このとき、相溶化剤3と層状鉱物4の重量濃度比は91/9、ベース樹脂1と層状鉱物4の重量濃度比は90.8/1、分散相樹脂2と相溶化剤3の重量濃度比は91/9、ベース樹脂1と分散相樹脂2との重量濃度比は44.5/50.5であった。また、作製した層状鉱物含有成形体5の分散相樹脂2の直交する二方向d1、d2それぞれにおける最長長さと分散相樹脂2の厚みTとの比は7/1であった。
【0047】
(実施例9)
相溶化剤3と層状鉱物4の重量比が91:9となり、ベース樹脂1と分散相樹脂2と相溶化剤3との重量比が80:9.8:10.2となるようにドライブレンドした以外は、実施例8と同様の方法で、実施例9の層状鉱物含有成形体5を作製した。
このとき、相溶化剤3と層状鉱物4の重量濃度比は91/9、ベース樹脂1と層状鉱物4の重量濃度比は80/1、分散相樹脂2と相溶化剤3の重量濃度比は49/51、ベース樹脂1と分散相樹脂2との重量濃度比は80/9.8であった。また、作製した層状鉱物含有成形体5の分散相樹脂2の、直交する二方向d1、d2それぞれにおける最長長さと分散相樹脂2の厚みTとの比は7/1であった。
【0048】
(実施例10)
相溶化剤3と層状鉱物4の重量比が90:10となり、ベース樹脂1と分散相樹脂2と相溶化剤3との重量比が45:49.5:5.5となるようにドライブレンドした以外は、実施例8と同様の方法で、実施例10の層状鉱物含有成形体5を作製した。
このとき、相溶化剤3と層状鉱物4の重量濃度比は90/10、ベース樹脂1と層状鉱物4の重量濃度比は74/1、分散相樹脂2と相溶化剤3の重量濃度比は90/10、ベース樹脂1と分散相樹脂2との重量濃度比は45/49.5であった。また、作製した層状鉱物含有成形体5の分散相樹脂2の、直交する二方向d1、d2それぞれにおける最長長さと分散相樹脂2の厚みTとの比は7/1であった。
【0049】
(実施例11)
相溶化剤3と層状鉱物4の重量比が90:10となり、ベース樹脂1と分散相樹脂2と相溶化剤3との重量比が80:10:10となるようにドライブレンドした以外は、実施例8と同様の方法で、実施例11の層状鉱物含有成形体5を作製した。
このとき、相溶化剤3と層状鉱物4の重量濃度比は90/10、ベース樹脂1と層状鉱物4の重量濃度比は72/1、分散相樹脂2と相溶化剤3の重量濃度比は50/50、ベース樹脂1と分散相樹脂2との重量濃度比は80/10であった。また、作製した層状鉱物含有成形体5の分散相樹脂2の、直交する二方向d1、d2それぞれにおける最長長さと分散相樹脂2の厚みTとの比は7/1であった。
【0050】
(実施例12)
相溶化剤3と層状鉱物4の重量比が50:50となり、ベース樹脂1と分散相樹脂2と相溶化剤3との重量比が80:18:2となるようにドライブレンドした以外は、実施例8と同様の方法で、実施例12の層状鉱物含有成形体5を作製した。
このとき、相溶化剤3と層状鉱物4の重量濃度比は50/50、ベース樹脂1と層状鉱物4の重量濃度比は40/1、分散相樹脂2と相溶化剤3の重量濃度比は90/10、ベース樹脂1と分散相樹脂2との重量濃度比は80/18であった。また、作製した層状鉱物含有成形体5の分散相樹脂2の、直交する二方向d1、d2それぞれにおける最長長さと分散相樹脂2の厚みTとの比は7/1であった。
【0051】
(実施例13)
相溶化剤3と層状鉱物4の重量比が50:50となり、ベース樹脂1と分散相樹脂2と相溶化剤3との重量比が92:4:4となるようにドライブレンドした以外は、実施例8と同様の方法で、実施例13の層状鉱物含有成形体5を作製した。
このとき、相溶化剤3と層状鉱物4の重量濃度比は50/50、ベース樹脂1と層状鉱物4の重量濃度比は23/1、分散相樹脂2と相溶化剤3の重量濃度比は50/50、ベース樹脂1と分散相樹脂2との重量濃度比は92/4であった。また、作製した層状鉱物含有成形体5の分散相樹脂2の、直交する二方向d1、d2それぞれにおける最長長さと分散相樹脂2の厚みTとの比は7/1であった。
【0052】
(実施例14)
相溶化剤3と層状鉱物4の重量比が49:51となり、ベース樹脂1と分散相樹脂2と相溶化剤3との重量比が83.3:15.2:1.5となるようにドライブレンドした以外は、実施例8と同様の方法で、実施例14の層状鉱物含有成形体5を作製した。
このとき、相溶化剤3と層状鉱物4の重量濃度比は49/51、ベース樹脂1と層状鉱物4の重量濃度比は53.4/1、分散相樹脂2と相溶化剤3の重量濃度比は91/9、ベース樹脂1と分散相樹脂2との重量濃度比は83.3/15.2であった。また、作製した層状鉱物含有成形体5の分散相樹脂2の、直交する二方向d1、d2それぞれにおける最長長さと分散相樹脂2の厚みTとの比は7/1であった。
【0053】
(実施例15)
相溶化剤3と層状鉱物4の重量比が49:51となり、ベース樹脂1と分散相樹脂2と相溶化剤3との重量比が82.2:3.8:4となるようにドライブレンドした以外は、実施例8と同様の方法で、実施例15の層状鉱物含有成形体5を作製した。
このとき、相溶化剤3と層状鉱物4の重量濃度比は49/51、ベース樹脂1と層状鉱物4の重量濃度比は22/1、分散相樹脂2と相溶化剤3の重量濃度比は49/51、ベース樹脂1と分散相樹脂2との重量濃度比は92.2/3.8であった。また、作製した層状鉱物含有成形体5の分散相樹脂2の、直交する二方向d1、d2それぞれにおける最長長さと分散相樹脂2の厚みTとの比は7/1であった。
【0054】
(実施例16)
相溶化剤3と層状鉱物4の重量比が91:9となり、ベース樹脂1と分散相樹脂2と相溶化剤3との重量比が76:17.8:6.2となるようにドライブレンドした以外は、実施例6と同様の方法で、実施例16の層状鉱物含有成形体5を作製した。
このとき、相溶化剤3と層状鉱物4の重量濃度比は91/9、ベース樹脂1と層状鉱物4の重量濃度比は124.5/1、分散相樹脂2と相溶化剤3の重量濃度比は17.8/6.2、ベース樹脂1と分散相樹脂2との重量濃度比は81/19であった。また、作製した層状鉱物含有成形体5の、分散相樹脂2の直交する二方向d1、d2それぞれにおける最長長さと分散相樹脂2の厚みTとの比は7/1であった。
【0055】
(実施例17)
相溶化剤3と層状鉱物4の重量比が91:9となり、ベース樹脂1と分散相樹脂2と相溶化剤3との重量比が76:19:5となるようにドライブレンドした以外は、実施例16と同様の方法で、実施例17の層状鉱物含有成形体5を作製した。
このとき、相溶化剤3と層状鉱物4の重量濃度比は91/9、ベース樹脂1と層状鉱物4の重量濃度比は155/1、分散相樹脂2と相溶化剤3の重量濃度比は76/20、ベース樹脂1と分散相樹脂2との重量濃度比は80/20であった。また、作製した層状鉱物含有成形体5の、分散相樹脂2の直交する二方向d1、d2それぞれにおける最長長さと分散相樹脂2の厚みTとの比は7/1であった。
【0056】
(実施例18)
相溶化剤3と層状鉱物4の重量比が91:9となり、ベース樹脂1と分散相樹脂2と相溶化剤3との重量比が45:45:10となるようにドライブレンドした以外は、実施例16と同様の方法で、実施例18の層状鉱物含有成形体5を作製した。
このとき、相溶化剤3と層状鉱物4の重量濃度比は91/9、ベース樹脂1と層状鉱物4の重量濃度比は45.5/1、分散相樹脂2と相溶化剤3の重量濃度比は45/10、ベース樹脂1と分散相樹脂2との重量濃度比は50/50であった。また、作製した層状鉱物含有成形体5の分散相樹脂2の、直交する二方向d1、d2それぞれにおける最長長さと分散相樹脂2の厚みTとの比は7/1であった。
【0057】
(実施例19)
相溶化剤3と層状鉱物4の重量比が91:9となり、ベース樹脂1と分散相樹脂2と相溶化剤3との重量比が45:46.8:8.2となるようにドライブレンドした以外は、実施例16と同様の方法で、実施例19の層状鉱物含有成形体5を作製した。
このとき、相溶化剤3と層状鉱物4の重量濃度比は91/9、ベース樹脂1と層状鉱物4の重量濃度比は55.6/1、分散相樹脂2と相溶化剤3の重量濃度比は46.8/8.2、ベース樹脂1と分散相樹脂2との重量濃度比は49/51であった。また、作製した層状鉱物含有成形体5の分散相樹脂2の、直交する二方向d1、d2それぞれにおける最長長さと分散相樹脂2の厚みTとの比は7/1であった。
【0058】
(実施例20)
相溶化剤3と層状鉱物4の重量比が91:9となり、ベース樹脂1と分散相樹脂2と相溶化剤3との重量比が75:15:10となるようにドライブレンドした以外は、実施例6と同様の方法で、実施例20の層状鉱物含有成形体5を作製した。
このとき、相溶化剤3と層状鉱物4の重量濃度比は91/9、ベース樹脂1と層状鉱物4の重量濃度比は75.8/1、分散相樹脂2と相溶化剤3の重量濃度比は15/10、ベース樹脂1と分散相樹脂2との重量濃度比は75/15であった。また、作製した層状鉱物含有成形体5の分散相樹脂2の、直交する二方向d1、d2それぞれにおける最長長さと分散相樹脂2の厚みTとの比は7/1であった。
【0059】
(実施例21)
実施例20において、押出機先端のオリフィス形状を変えたこと以外は、実施例20と同様の方法で実施例21の層状鉱物含有成形体5を作製した。
このとき、相溶化剤3と層状鉱物4の重量濃度比は91/9、ベース樹脂1と層状鉱物4の重量濃度比は75.8/1、分散相樹脂2と相溶化剤3の重量濃度比は15/10、ベース樹脂1と分散相樹脂2との重量濃度比は75/15であった。また、作製した層状鉱物含有成形体5の分散相樹脂2の、直交する二方向d1、d2それぞれにおける最長長さと分散相樹脂2の厚みTとの比は8/1であった。
【0060】
(実施例22)
実施例20において、押出機先端のオリフィス形状を、実施例20及び実施例21で用いたオリフィス形状とは異なる形状に変えたこと以外は、実施例20と同様の方法でフィルムを作製し、その後オフラインで同時二軸延伸(延伸倍率:6倍)により、実施例22の層状鉱物含有成形体5を作製した。
このとき、相溶化剤3と層状鉱物4の重量濃度比は91/9、ベース樹脂1と層状鉱物4の重量濃度比は75.8/1、分散相樹脂2と相溶化剤3の重量濃度比は15/10、ベース樹脂1と分散相樹脂2との重量濃度比は75/15であった。また、作製した層状鉱物含有成形体5の分散相樹脂2の、直交する二方向d1、d2それぞれにおける最長長さと分散相樹脂2の厚みTとの比は100/1であった。
【0061】
(実施例23)
実施例20において、押出機先端のオリフィス形状を、実施例20、実施例21及び実施例22で用いたオリフィス形状とは異なる形状に変えたこと以外は、実施例20と同様の方法でフィルムを作製し、その後オフラインで同時二軸延伸(延伸倍率:6倍)により、実施例23の層状鉱物含有成形体5を作製した。
このとき、相溶化剤3と層状鉱物4の重量濃度比は91/9、ベース樹脂1と層状鉱物4の重量濃度比は75.8/1、分散相樹脂2と相溶化剤3の重量濃度比は15/10、ベース樹脂1と分散相樹脂2との重量濃度比は75/15であった。また、作製した層状鉱物含有成形体5の分散相樹脂2の、直交する二方向d1、d2それぞれにおける最長長さと分散相樹脂2の厚みTとの比は101/1であった。
【0062】
(比較例1)
相溶化剤3を用いずに、ベース樹脂1であるLLDPEと分散相樹脂2としてのPA6と層状鉱物4の重量比が75:25となるようにドライブレンドした以外は、実施例1と同様の方法で、比較例1を作製した。
このとき、相溶化剤3と層状鉱物4の重量濃度比は0/5、ベース樹脂1と層状鉱物4の重量濃度比は15/1、分散相樹脂2と相溶化剤3の重量濃度比は25/5、ベース樹脂1と分散相樹脂2との重量濃度比は75/25であった。また、作製した層状鉱物含有成形体5の分散相樹脂2の、直交する二方向d1、d2それぞれにおける最長長さと分散相樹脂2の厚みTとの比は10/1であった。
【0063】
(比較例2)
相溶化剤3と層状鉱物4の重量比が95:5となり、ベース樹脂1と分散相樹脂2と相溶化剤3との重量比が70:25:5となるようにドライブレンドした以外は、実施例1と同様の方法で、比較例2を作製した。
このとき、相溶化剤3と層状鉱物4の重量濃度比は95/5、ベース樹脂1と層状鉱物4の重量濃度比は266/1、分散相樹脂2と相溶化剤3の重量濃度比は25/5、ベース樹脂1と分散相樹脂2との重量濃度比は70/25であった。また、作製した層状鉱物含有成形体5の分散相樹脂2の、直交する二方向d1、d2それぞれにおける最長長さと分散相樹脂2の厚みTとの比は10/1であった。
【0064】
(比較例3)
相溶化剤3と層状鉱物4の重量比が40:60となり、ベース樹脂1と分散相樹脂2と相溶化剤3との重量比が70:25:5になるようにドライブレンドした以外は、実施例1と同様の方法で、比較例3を作製した。
このとき、相溶化剤3と層状鉱物4の重量濃度比は40/60、ベース樹脂1と層状鉱物4の重量濃度比は9.3/1、分散相樹脂2と相溶化剤3の重量濃度比は25/5、ベース樹脂1と分散相樹脂2との重量濃度比は70/25であった。また、作製した層状鉱物含有成形体5の分散相樹脂2の、直交する二方向d1、d2それぞれにおける最長長さと分散相樹脂2の厚みTとの比は10/1であった。
【0065】
(比較例4)
相溶化剤3と層状鉱物4の重量比が50:20になり、ベース樹脂1と分散相樹脂2と相溶化剤3との重量比が80:19:1となるようにドライブレンドした以外は、実施例6と同様の方法で、比較例4を作製した。
このとき、相溶化剤3と層状鉱物4の重量濃度比は50/20、ベース樹脂1と層状鉱物4の重量濃度比は201/1、分散相樹脂2と相溶化剤3の重量濃度比は95/5、ベース樹脂1と分散相樹脂2との重量濃度比は80/19であった。また、作製した層状鉱物含有成形体5の分散相樹脂2の、直交する二方向d1、d2それぞれにおける最長長さと分散相樹脂2の厚みTとの比は7/1であった。
【0066】
(比較例5)
相溶化剤3と層状鉱物4の重量比が80:18.4になり、ベース樹脂1と分散相樹脂2と相溶化剤3との重量比が70:14:16となるようにドライブレンドした以外は、比較例4と同様の方法で、比較例5を作製した。
このとき、相溶化剤3と層状鉱物4の重量濃度比は80/18.4、ベース樹脂1と層状鉱物4の重量濃度比は19/1、分散相樹脂2と相溶化剤3の重量濃度比は42/48、ベース樹脂1と分散相樹脂2との重量濃度比は70/14であった。また、作製した層状鉱物含有成形体5の分散相樹脂2の、直交する二方向d1、d2それぞれにおける最長長さと分散相樹脂2の厚みTとの比は7/1であった。
【0067】
<試験体(層状鉱物含有成形体5)の評価>
(分散相樹脂2の分散形状測定)
得られた試験体の幅方向及び流れ方向の断面観察を行った。断面観察は、試験体から2mm×5mm(観察部が2mm)になるようにサンプルを切り出し、日本電子株式会社製の可視光硬化性包埋樹脂D-800で包埋したものを、ライカマイクロシステムズ製のウルトラミクロトームEM UC7iを用いてガラスナイフ並びにダイヤモンドナイフで断面出しすることで実施した。観察試験片切出し箇所は、各サンプルの幅方向及び流れ方向共に無作為に選んだ10箇所とした。観察には、株式会社日立ハイテクノロジーズ社製の走査電子顕微鏡(SEM)S-4800を用い、1000倍観察画像にて評価を行った。
【0068】
得られたサンプルの断面観察画像において、厚み方向に分散相樹脂2が重なり合う場合、つまり、層状鉱物含有成形体の厚み方向で対向する2つの面のうちの一方の面から他方の面に向かう方向に延びる全ての直線が、少なくとも1つの分散相(分散相樹脂2)を貫き、この分散相樹脂2を包み込む相溶化剤3がバリア層となるため、迷路効果が発現される場合は〇、厚み方向に分散相樹脂2が重なり合わず迷路効果が発現しない場合は×とした。
【0069】
また、分散相樹脂2のアスペクト比、つまり、分散相樹脂2の厚みTに対する直交する二方向それぞれへの最長長さの比d1/T及びd2/Tは、画像解析ソフトimageJを用いて、1000倍観察時のSEM画像を二値化した際の直交する長軸及び短軸の長さから算出した。測定は押出時のMD方向、およびTD方向の二方向の観察を行い、両方向ともアスペクト比が8/1以上100/1以下のものを〇、外れるものを×とした。
【0070】
(バリア性評価)
試験体としての各層状鉱物含有成形体のバリア性評価は、GTRテック株式会社製の高感度水蒸気透過度測定装置GTR-3000を用いて、30℃、ドライ環境にて酸素透過度測定を実施した。各試験体について、ベース樹脂1の単層200μm厚シートの酸素透過度と比較し、試験体の酸素透過度が1/30以下であれば「〇」、1/10以上1/30未満の場合「△」、1/10未満であれば「×」とした。
【0071】
(質感評価)
試験体である各実施例及び比較例の層状鉱物含有成形体5を官能評価し、ベース樹脂単体膜と遜色ないものを〇、成形体にボソボソ感があり、手で引っ張った際の強度が弱いものを×とした。
【0072】
(総合判定)
上記の評価項目のうち、バリア性能、又は質感に一つでも×がある層状鉱物含有成形体については総合判定を×とした。また、バリア性能が△であったり、成形が困難であるものは総合判定△、それ以外のバリア性能の良好なものは総合判定〇とした。
なお、総合判定で△を得られたものの、一部に海島構造の逆転がみられたもの、また、層状鉱物含有成形体の成形が困難であったものについては、特記事項として記載した。
【0073】
実施例1~23、及び比較例1~5の評価結果を表1に示す。
【0074】
【0075】
(評価結果)
表1から分かるように、本実施形態に係る実施例1~23では、製造時のエネルギーを抑え、安定した条件で作製することが可能であり、良好な膜質を保持しつつ、高いバリア性を示すシートを提供できる事が確認された。とりわけ、実施例2、4、5のように相溶化剤に対する層状鉱物の重量濃度が大きい場合、バリア性はより良好な結果を示した。
【0076】
一方、比較例1では、層状鉱物4がベース樹脂1中に分散されており、バリア性がほとんど見られなかった。また、質感の低下も確認された。
比較例2では、相溶化剤に対する層状鉱物4の重量濃度が極端に小さいため、十分なバリア性が発現されない結果となった。
比較例3では、相溶化剤に対する層状鉱物4の重量濃度が大きすぎるため、相溶化剤3とのマスターバッチ化時に大きな凝集物が発生しており、その後の単軸押し出し成形においても十分な改善には至らず、質感が劣る結果となった。
【0077】
また、実施例6、7、比較例4、5から、厚み方向の分散相樹脂の重なりが生じた状態、すなわち層状鉱物含有成形体の厚み方向で対向する2つの面のうちの一方の面から他方の面に向かう方向に延びる全ての直線が、少なくとも1つの分散相を貫いた状態であり、さらにベース樹脂と層状鉱物との重量濃度比が200/1以上20/1以下であれば、ほぼバリア性を有し且つ良好な質感が得ることができ、総合的にみてほぼ良好な層状鉱物含有成形体が得られることが確認された。
【0078】
また、実施例8~15から、厚み方向の分散相樹脂の重なりが生じており、ベース樹脂と層状鉱物との重量濃度比が200/1以上20/1以下であって、さらに分散相と相溶化剤との重量濃度の比が、90/10以上50/50以下の範囲内の値であり、相溶化剤と層状鉱物との重量濃度の比が、90/10以上50/50以下の範囲内の値であれば、分散相と相溶化剤との重量濃度の比及び相溶化剤と層状鉱物との重量濃度の比がともにしきい値90/10程度である場合には、一部に海島逆転が生じ、逆に分散相と相溶化剤との重量濃度の比及び相溶化剤と層状鉱物との重量濃度の比がともにしきい値50/50程度である場合には、質感が多少低下するものの、総合的にみて、ほぼ良好な層状鉱物含有成形体が得られることが確認された。
【0079】
また、実施例16~19から、厚み方向の分散相樹脂の重なりが生じており、ベース樹脂と分散相との重量濃度の比が、80/20以上50/50以下の範囲外の値であるときには、一部に海島逆転が生じ、多少バリア性が低いが、ベース樹脂と分散相との重量濃度の比が、80/20以上50/50以下の範囲内の値であれば、バリア性及び質感がともに良好であり全体的にみて良好な層状鉱物含有成形体が得られることが確認された。
【0080】
また、実施例1~23から、厚み方向の分散相樹脂の重なりが生じており、分散相の厚みに対する直交する二方向それぞれにおける分散相の最長長さの比、つまりアスペクト比が8/1未満であって、8/1以上100/1以下の範囲外の値であるときには、ベース樹脂に対する層状鉱物の重量濃度が小さい場合に多少バリア性が低い(△)が、アスペクト比が例えば8/1以上100/1以下の範囲内であれば、分散相が層状の広がりを持ち、よりバリア性が良好な層状鉱物含有成形体が得られることが確認された。また、アスペクト比が100/1を超える範囲では、バリア性は良好なものの、安定的な製造が難しい。
【0081】
なお、比較例として挙げてはいないが、層状鉱物含有成形体5を形成する樹脂中の分散相樹脂の重量比が小さいこと、アスペクト比が小さいこと、相溶化剤3で周囲を包まれた分散相樹脂2のサイズが小さいこと等といった複合要因によって、厚み方向の分散相樹脂の重なりが発現しないことが確認された。