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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124343
(43)【公開日】2022-08-25
(54)【発明の名称】プレス装置
(51)【国際特許分類】
   B30B 1/26 20060101AFI20220818BHJP
【FI】
B30B1/26 C
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021022054
(22)【出願日】2021-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】518057099
【氏名又は名称】大野精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】特許業務法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】中根 眞一
【テーマコード(参考)】
4E090
【Fターム(参考)】
4E090AA01
4E090AB01
4E090BA02
4E090BA05
4E090CC03
4E090CD01
4E090EC01
4E090FA01
(57)【要約】
【課題】推力特性の任意設定を可能とするプレス装置を提供する。
【解決手段】本発明のプレス装置では、カム機構7は、駆動軸3に固定され、駆動軸心O周りで回動可能なアーム体63と、駆動軸心Oから離隔するとともに駆動軸心Oと平行に延びる回転軸心Q周りでアーム体63に回動可能に支持され、回転軸心Qと同軸のカム面69aを有するローラ69と、カム面69aによって押圧されてプレスラム5が第1方向TBに変位するようにプレスラム5に形成されたフォロワ面50aとを有する。フォロワ面50aは、第1方向TBと直交する方向に延びる基本形状SLに対して変形した変形形状SCとされている。駆動軸3の駆動軸心O周りの回転角θの変化に応じてプレスラム5が第1方向TBに変位するストロークは、基本形状SLによる基本ストロークに対し、変形形状SCによって補正されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延びる案内面が形成されたハウジングと、
前記ハウジングに回動可能に支持され、前記第1方向と直交する駆動軸心周りで駆動力によって回動可能な駆動軸と、
前記案内面によって前記第1方向に移動可能に支持されるプレスラムと、
前記駆動軸の回動によって前記プレスラムを前記第1方向に移動させるカム機構とを備え、
前記カム機構は、前記駆動軸に固定され、前記駆動軸心周りで回動可能なアーム体と、
前記駆動軸心から離隔するとともに前記駆動軸心と平行に延びる回転軸心周りで前記アーム体に回動可能に支持され、前記回転軸心と同軸のカム面を有するローラと、
前記カム面によって押圧されて前記プレスラムが前記第1方向に変位するように前記プレスラムに形成されたフォロワ面とを有し、
前記フォロワ面は、前記第1方向と直交する方向に延びる基本形状に対して変形した変形形状とされ、
前記駆動軸の前記駆動軸心周りの回転角の変化に応じて前記プレスラムが前記第1方向に変位するストロークは、前記基本形状による基本ストロークに対し、前記変形形状によって補正されていることを特徴とするプレス装置。
【請求項2】
前記プレスラムは、前記ローラを収容する溝カムを有し、
前記溝カムは、前記プレスラムが前記第1方向の一方に向かって移動する際に前記ローラが転動する前記フォロワ面と、前記フォロワ面と対面し、前記プレスラムが前記第1方向の他方に向かって移動する際に前記ローラが転動する第2フォロワ面とを有している請求項1記載のプレス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプレス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2に従来のプレス装置が開示されている。これらのプレス装置は、ハウジングと、駆動軸と、プレスラムと、カム機構とを備えている。ハウジングには、上下方向に延びる案内面が形成されている。駆動軸は、水平方向に延びる駆動軸心周りで駆動力によって回動可能であり、ハウジングに回動可能に支持されている。プレスラムは案内面によって上下方向に移動可能に支持されている。
【0003】
カム機構は偏心カムとフォロワ面とを有している。偏心カムは、水平方向に延びる中心線を有する円柱状をなしており、中心線は駆動軸心と平行でありながら駆動軸心から偏心している。偏心カムは、駆動軸の駆動軸心周りの回転によって円筒状のカム面を変位させる。フォロワ面は、カム面によって押圧されてプレスラムが上下方向に変位するようにプレスラムに形成されている。
【0004】
これらのプレス装置では、モータや手動によって駆動軸を駆動軸心周りで回動させることにより、偏心カムが駆動軸心周りで回動する。このため、プレスラムが上下動し、プレスラムに設けた金型等によってプレス加工を行うことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2-229697号公報
【特許文献2】実開昭63-184691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来のプレス装置では、カム機構に偏心カムを用いているため、駆動軸の駆動軸心と偏心カムの中心軸との偏心量だけでプレスラムの上死点から下死点までの運動特性、つまり駆動軸の駆動軸心周りの回転角とプレスラムの上下方向の変位量と、速度とが決定される。そして、駆動軸の回転トルクが決定されることにより、推力が決定される。
【0007】
プレス加工には推力と変位とが必要なため、プレス装置は両方を満足する必要がある。すなわち、プレス装置においては、加工開始位置がばらつく場合や、削り加工のように同一推力で長ストロークを必要とする場合等のように、プレスラムのストロークと推力とを調整したい場合が多々生ずる。
【0008】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、プレスラムのストロークと推力、すなわち推力特性の任意設定を可能とするプレス装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のプレス装置は、第1方向に延びる案内面が形成されたハウジングと、
前記ハウジングに回動可能に支持され、前記第1方向と直交する駆動軸心周りで駆動力によって回動可能な駆動軸と、
前記案内面によって前記第1方向に移動可能に支持されるプレスラムと、
前記駆動軸の回動によって前記プレスラムを前記第1方向に移動させるカム機構とを備え、
前記カム機構は、前記駆動軸に固定され、前記駆動軸心周りで回動可能なアーム体と、
前記駆動軸心から離隔するとともに前記駆動軸心と平行に延びる回転軸心周りで前記アーム体に回動可能に支持され、前記回転軸心と同軸のカム面を有するローラと、
前記カム面によって押圧されて前記プレスラムが前記第1方向に変位するように前記プレスラムに形成されたフォロワ面とを有し、
前記フォロワ面は、前記第1方向と直交する方向に延びる基本形状に対して変形した変形形状とされ、
前記駆動軸の前記駆動軸心周りの回転角の変化に応じて前記プレスラムが前記第1方向に変位するストロークは、前記基本形状による基本ストロークに対し、前記変形形状によって補正されていることを特徴とする。
【0010】
本発明のプレス装置では、偏心カムを等価のアーム体と偏心カム径より小径のローラに置き換えているので、カム機構に偏心カムを用いるよりも、フォロワ面にアンダーカットを生じ難く、プレスラムの運動特性の補正自由度を高くすることができる。また、プレス装置の小型化も実現し易い。
【0011】
また、このプレス装置では、フォロワ面が第1方向と直交する方向に延びる基本形状に対して変形した変形形状とされている。そして、駆動軸の駆動軸心周りの回転角の変化に応じてプレスラムが第1方向に変位するストロークは、基本形状による基本ストロークに対し、変形形状によって補正されている。
【0012】
このため、このプレス装置によれば、プレスラムの運動特性、つまり駆動軸の駆動軸心周りの回転角とプレスラムの上下方向の変位との関係を任意に設定できる。このことは、推力も任意設定が可能となることを意味する。
【0013】
プレスラムは、ローラを収容する溝カムを有し得る。溝カムは、プレスラムが第1方向の一方に向かって移動する際にローラが転動するフォロワ面と、フォロワ面と対面し、プレスラムが第1方向の他方に向かって移動する際にローラが転動する第2フォロワ面とを有し得る。この場合、アーム体が駆動軸心周りで一方向にある角度だけ揺動することにより、ローラがフォロワ面を転動し、プレスラムが第1方向の一方に向かって移動してプレス加工を行うことができる。この後、アーム体が駆動軸心周りで他方向にその角度だけ揺動することにより、ローラが第2フォロワ面を転動し、プレスラムが第1方向の他方に向かって移動することが可能になる。このため、プレスラムをプレス加工前の位置に戻すためのバネ等の付勢部材が不要になり、動力損失を抑制できるとともに、部品点数の削減を実現できる。
【0014】
駆動軸には、圧力流体の供給作用下に揺動する揺動軸を有する流体圧ロータリアクチュエータを接続することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のプレス装置では、プレスラムの変位と推力との関係を示す推力特性を任意に設定可能であることから、加工開始位置がばらつく場合や、削り加工のように同一推力で長ストロークを必要とする場合等に適用が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施例1のプレス装置を一部分解して示す斜視図である。
図2図2は、実施例1のプレス装置を一部分解し、かつ一部を水平方向の断面とした断面図である。
図3図3は、実施例1のプレス装置に係り、反時計方向回転端状態であるロータリアクチュエータの垂直方向の断面図である。
図4図4は、実施例1のプレス装置に係り、時計方向回転端状態であるロータリアクチュエータの垂直方向の断面図である。
図5図5は、図(A)はプレスラムの裏面図、図(B)はプレスラムの垂直方向の断面図である。
図6図6は、実施例1のプレス装置に係り、カバー及びプレスラムを外した原位置状態の正面図である。
図7図7は、実施例1のプレス装置に係り、カバー及びプレスラムを外した終端位置状態の正面図である。
図8図8は、実施例1のプレス装置に係り、駆動軸の回転角と、プレスラムの変位、速度及び推力との関係を示すグラフである。
図9図9は、比較例のプレス装置に係り、駆動軸の回転角と、プレスラムの変位、速度及び推力との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。実施例のプレス装置は、図1及び図2に示すように、ハウジング1と、駆動軸3と、プレスラム5と、カム機構7と、カップリング27と、ロータリアクチュエータ11とを備えている。
【0018】
ハウジング1は、L字状の支持台13と、四角柱状のブロック15と、板状のカバー17とからなる。支持台13はワーク台13aを有している。ブロック15は支持台13の上部前端に図示しないボルトによって固定されている。ブロック15の後端にシリンダ取付けブラケット9が設けられ、これにロータリアクチュエータ11が設けられている。
【0019】
ブロック15の前面には、カバー17の厚さ及び左右の幅だけ後方に凹む第1凹部151が凹設されている。第1凹部151は、上下方向TBに延び、ブロック15の上面及び下面に開口している。また、第1凹部151の底面には、プレスラム5の厚さ及び左右の幅だけ後方に凹む第2凹部152が凹設されている。第2凹部152も、上下方向TBに延び、ブロック15の上面及び下面に開口している。上下方向TBが本発明の第1方向に相当する。
【0020】
プレス装置は、第2凹部152にプレスラム5が収納され、第1凹部151にカバー17が収納され、カバー17がブロック15に図示しないボルトによって固定されている。プレスラム5と対面するカバー17の背面17aと、第2凹部152の左右の側面15a、15bと、第2凹部152の前面15cとがプレスラム5を上下方向TBに案内する案内面である。
【0021】
図2に示すように、ブロック15には、上下方向TBに直交する水平な前後方向に延びる駆動軸心Oを中心軸とする円柱状の軸孔153と、駆動軸心Oを中心軸とする円柱状の第3凹部154とが凹設されている。軸孔153の後部はブロック15の後面に開口しており、軸孔153の前部は第3凹部154と連通している。第1凹部151及び第2凹部152は第3凹部154によって抉られている。
【0022】
駆動軸3は軸孔153内に挿通されている。軸孔153内には駆動軸3との間で前後に軸受19、21が設けられており、軸受19、21間にはスペーサ23、25が設けられている。駆動軸3の先端部3aは第3凹部154内に突出している。先端部3aにはキー溝3bが凹設されている。
【0023】
ロータリアクチュエータ11は揺動角度が100°の空気圧ダブルベーンタイプである。このロータリアクチュエータ11はシリンダ取付けブラケット9の後端に図示しないボルトによって固定されている。駆動軸3の後端部3cはシリンダ取付けブラケット9内に突出している。ロータリアクチュエータ11は、図3及び図4に示すように、水平な前後方向に延びる回転軸25を有している。図2に示すように、回転軸25の先端部25aはシリンダ取付けブラケット9内に突出している。
【0024】
シリンダ取付けブラケット9内には、カップリング27と、2個の締結具27a、27bとが設けられている。カップリング27は、駆動軸3の後端部3cと回転軸25の先端部25aとを駆動軸心Oを同軸として接続している。締結具27a、27bはカップリング27の前端及び後端を締結している。
【0025】
ロータリアクチュエータ11は、図3及び図4に示すように、アクチュエータハウジング31を有し、アクチュエータハウジング31内には回転軸25が図示しない前後の軸受によって駆動軸心O周りで回転可能に支持されている。回転軸25にベーン35が固定され、アクチュエータハウジング31内はベーン35によって4つのシリンダ室31a~31dに仕切られている。また、アクチュエータハウジング31内には、ストッパ37、39が上下に離隔して図示しないボルトによって固定されている。ストッパ37、39は、それぞれ駆動軸心O側にシール材41、43を有している。シール材41、43はベーン35の円筒面に当接している。ベーン35はストッパ37とストッパ39との角度だけ揺動できるようになっている。
【0026】
プレスラム5は、図5(A)及び(B)に示すように、カバー17の背面17aと対面する被案内面5aと、ブロック15の側面15aと対面する被案内面5bと、ブロック15の側面15bと対面する被案内面5cと、ブロック15の前面15cと対面する被案内面5dとを有する略四角柱状をなしている。プレスラム5は、被案内面5a、5b、5c、5dがそれぞれ背面17a、側面15a、側面15b及び前面15cを摺動することにより、上下方向TBに移動可能である。プレスラム5の下端には加工工具類を固定するための固定孔5eが凹設されている。
【0027】
図2図6及び図7に示すように、ブロック15の第3凹部154内では、駆動軸3の先端部3aにアーム体63が設けられている。アーム体63は、先端部3aを挿入可能な軸孔63aを有している。軸孔63aには、先端部3aのキー溝3bと整合し、回り止めの機能を発揮する凸部63bが突設されている。軸孔63aは、凸部63bとは反対側において、アーム体63の側面まで延びるスリット63cと連通している。アーム体63にはスリット63cと直交するようにボルト65が螺合されている。アーム体63は、ボルト65を締め付けることによりスリット63cの幅が狭まり、先端部3aが軸孔63a内に強固に固定される。
【0028】
アーム体63には、スリット63cとは反対側において、駆動軸心Oと平行に延びる回転軸心Qを中心軸とする円柱状のピン孔63cが貫設されている。ピン孔63cにはローラ軸67が挿通されている。ローラ軸67の前端には、ローラ軸67との間に図示しない軸受を有するローラ69が設けられている。ローラ軸67の後端にはローラ69をアーム体63に固定するためのナット71が螺合されている。ローラ69の円筒状の外周面69aがカム面に相当する。
【0029】
図6及び図7に示すように、アーム体63には、駆動軸心Oと回転軸心Qとを接続する仮想線Lと直交する方向に延びるストップピン73が螺合されている。ストップピン73の頭部は、アーム体63が駆動軸3によって駆動軸心O周りで揺動する際にローラ69よりも先行側の側面に突出している。
【0030】
図2図6及び図7に示すように、ブロック15には左側面から水平な左右方向にストッパボルト75が螺合されている。ストッパボルト75の軸部75aは第3凹部154内に突出している。軸部75aの突出量は軸部75aに螺合するナット77によって調整されるようになっている。ナット77によって位置が調整される軸部75aの先端面は、アーム体63が揺動することによってストップピン73の頭部と当接し、駆動軸3の回転角θ、つまりアーム体63の回転角θの終端を調整することでプレスラム5の下降端位置を調整することができるようになっている。
【0031】
図2並びに図5(A)及び(B)に示すように、プレスラム5には溝カム50が被案内面5dから凹設されている。溝カム50の下面は第1転動面50aとされており、溝カム50の上面は第2転動面50bとされている。第1転動面50aがフォロワ面に相当し、第2転動面50bが第2フォロワ面に相当する。第1転動面50aと第2転動面50bとの間には、ローラ69が第1転動面50aと第2転動面50bとを転動するように収納されている。アーム体63、ローラ69及び溝カム50がカム機構7に相当する。
【0032】
上記のように構成されたプレス装置は、支持台13のワーク台13a上に図示しないワークを載置し、プレス加工に供する。図3で示したロータリアクチュエータの原位置、すなわちアーム体63が図6の回転角θ=100°の原位置状態から、制御弁ユニット57を切り替えることにより、図4で示したロータリアクチュエータの作動端、すなわちアーム体63が図7に示す回転角θ=0°の状態へ向かって変化を始める。
【0033】
この間、アーム体63は、ストップピン73の頭部がストッパボルト75の軸部75aの先端面と当接するまで、駆動軸心O周りで右周りに揺動する。このため、プレス装置は、ローラ69が第1転動面50aを転動し、プレスラム5が下方に向かって移動し、プレス加工を行うことができる。
【0034】
この際、このプレス装置におけるアーム体63の回転角θと、プレスラム5の変位及びプレスラム5の速度・推力の関係を図8に示す。図9は、特許文献1、2の偏心カムを採用した場合における同様の関係を上記と同一回転角θの範囲について示す。図9に示されるように、偏心カムを採用した場合は、回転角θ=0に向かって速度がゼロに近づくことで推力が無限大になって行くが、プレスラム5の変位もゼロになって行くため加工も不可能になって行く。これに対し、実施例のプレス装置では、第1転動面50aが上下方向TBと直交する水平方向に直線で延びる基本形状SLに対して変形した変形形状SCとされている。そして、駆動軸3の駆動軸心O周りの回転角θの変化に応じたプレスラム5の変位は、基本形状SLによる基本ストロークに対し、変形形状SCによって補正している。
【0035】
このため、このプレス装置によれば、ローラ69の中心位置の第一方向の変位は偏心カム方式と同一であるが、駆動軸3の回転角θの変化に対するプレスラム5の上下方向TBの変位を条件範囲内で任意に設定できる。つまり、運動特性あるいは推力特性の任意設定が可能である。この実施例では一定推力を長ストロークに亘って出力させている。
【0036】
したがって、実施例のプレス装置では、プレスラム5の変位と推力との関係を示す推力特性を任意に設定可能であることから、加工開始位置がばらつく場合や、削り加工のように同一推力で長ストロークを必要とする場合等に適用が容易である。
【0037】
また、このプレス装置では、カム機構7がアーム体63及びローラ69を有するため、カム機構に偏心カムを採用するよりも、第1転動面50aにアンダーカットを生じ難く、プレスラム5を精度よく変位させることができる。また、ローラ69を小径にし易いことから、プレス装置の小型化も実現し易い。
【0038】
再び、制御弁ユニット57にて揺動回転方向を切り替えると、アーム体63は駆動軸心O周りで左周りに揺動し、ローラ69が第2転動面50bを転動する。このため、プレス装置は、プレスラム5が上方に向かって移動してプレス加工前の位置に戻る。すなわち、このプレス装置は、プレスラム5がローラ69を収容する溝カム50を有し、溝カム50が第1転動面50aと第2転動面50bとを有するため、プレスラム5をプレス加工前の位置に戻すためのバネ等の付勢部材が不要になり、動力損失を抑制できるとともに、部品点数の削減を実現できる。
【0039】
さらに、このプレス装置は、駆動軸3がロータリアクチュエータ11に接続されているため、人力を要さず、エアーの圧力により、プレス加工と、プレスラム5をプレス加工前の位置への戻しとを行うことができる。
【0040】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0041】
例えば、上記実施例では、アーム体63が揺動を継続している間、推力は一定値とされているが、カム溝50の第1転動面50aのプロフィールの変更により、推力を徐々に上昇させることも可能である。
【0042】
また、本発明のプレス装置では、駆動軸3を回動させる駆動力として、手動やモータ等によって駆動軸3を回動させてもよい。なお、本発明において、回動は揺動を含む概念である。このため、駆動軸3が連続して同一方向に回転をするプレス装置も本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明のプレス装置は、曲げ加工装置、かしめ装置等に利用可能である。
【符号の説明】
【0044】
TB…第1方向(上下方向)
17a、15a、15b、15c…案内面(17a…背面、15a、15b…側面、15c…前面)
1…ハウジング(13…支持台、15…ブロック、17…カバー)
O…駆動軸心
3…駆動軸
5…プレスラム
7…カム機構
63…アーム体
69…ローラ
Q…回転軸心
69a…外周面(カム面)
50…溝カム
50a…第1転動面(フォロワ面)
50b…第2転動面(第2フォロワ面)
θ…回転角
11…ロータリアクチュエータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2022-04-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延びる案内面が形成されたハウジングと、
前記ハウジングに回動可能に支持され、前記第1方向と直交する駆動軸心周りで駆動力によって回動可能な駆動軸と、
前記案内面によって前記第1方向に移動可能に支持されるプレスラムと、
前記駆動軸の回動によって前記プレスラムを前記第1方向に移動させるカム機構とを備え、
前記駆動軸は、前記駆動軸心周りで原位置から終端位置まで揺動し、
前記カム機構は、前記駆動軸に固定され、前記駆動軸心周りで揺動可能なアーム体と、
前記駆動軸心から離隔するとともに前記駆動軸心と平行に延びる回転軸心周りで前記アーム体に回動可能に支持され、前記回転軸心と同軸のカム面を有するローラと、
前記カム面によって押圧されて前記プレスラムが前記第1方向に変位するように前記プレスラムに形成されたフォロワ面とを有し、
前記プレスラムは、前記ローラを収容する溝カムを有し、
前記溝カムは、前記プレスラムが前記第1方向の一方に向かって移動する際に前記ローラが転動する前記フォロワ面と、前記フォロワ面と対面し、前記プレスラムが前記第1方向の他方に向かって移動する際に前記ローラが転動する第2フォロワ面とを有し、
前記フォロワ面は、前記第1方向と直交する方向に延びる基本形状に対して変形した変形形状とされ、
前記駆動軸の前記駆動軸心周りの回転角の変化に応じて前記プレスラムが前記第1方向に変位するストロークは、前記基本形状による基本ストロークに対し、前記変形形状によって補正されていることを特徴とするプレス装置。
【請求項2】
揺動する揺動軸を有するロータリアクチュエータを備え、
前記駆動軸は、前記揺動軸に接続されている請求項1記載のプレス装置。
【請求項3】
前記ロータリアクチュエータは、前記揺動軸を圧力流体の供給作用下に揺動させる請求項2記載のプレス装置。
【請求項4】
前記圧力流体は空気である請求項3記載のプレス装置。
【請求項5】
前記プレスラムは、前記案内面と摺動し、前記駆動軸の先端部と対面する被案内面を有し、
前記溝カムは前記被案内面から凹設されている請求項1乃至4のいずれか1項記載のプレス装置。
【請求項6】
前記ハウジングは、ブロックとカバーとを有し、
前記ブロックには、前記第1方向に延びて前記カバーを収納する第1凹部と、前記第1凹部から凹設されて前記第1方向に延び、前記カバーとともに前記プレスラムを収納する第2凹部とが形成されている請求項5記載のプレス装置。
【請求項7】
前記ハウジングと前記アーム体とは、前記駆動軸の回転角の終端を調整する請求項1乃至6のいずれか1項記載のプレス装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明のプレス装置は、第1方向に延びる案内面が形成されたハウジングと、
前記ハウジングに回動可能に支持され、前記第1方向と直交する駆動軸心周りで駆動力によって回動可能な駆動軸と、
前記案内面によって前記第1方向に移動可能に支持されるプレスラムと、
前記駆動軸の回動によって前記プレスラムを前記第1方向に移動させるカム機構とを備え、
前記駆動軸は、前記駆動軸心周りで原位置から終端位置まで揺動し、
前記カム機構は、前記駆動軸に固定され、前記駆動軸心周りで揺動可能なアーム体と、
前記駆動軸心から離隔するとともに前記駆動軸心と平行に延びる回転軸心周りで前記アーム体に回動可能に支持され、前記回転軸心と同軸のカム面を有するローラと、
前記カム面によって押圧されて前記プレスラムが前記第1方向に変位するように前記プレスラムに形成されたフォロワ面とを有し、
前記プレスラムは、前記ローラを収容する溝カムを有し、
前記溝カムは、前記プレスラムが前記第1方向の一方に向かって移動する際に前記ローラが転動する前記フォロワ面と、前記フォロワ面と対面し、前記プレスラムが前記第1方向の他方に向かって移動する際に前記ローラが転動する第2フォロワ面とを有し、
前記フォロワ面は、前記第1方向と直交する方向に延びる基本形状に対して変形した変形形状とされ、
前記駆動軸の前記駆動軸心周りの回転角の変化に応じて前記プレスラムが前記第1方向に変位するストロークは、前記基本形状による基本ストロークに対し、前記変形形状によって補正されていることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
プレスラムは、ローラを収容する溝カムを有る。溝カムは、プレスラムが第1方向の一方に向かって移動する際にローラが転動するフォロワ面と、フォロワ面と対面し、プレスラムが第1方向の他方に向かって移動する際にローラが転動する第2フォロワ面とを有る。この場合、アーム体が駆動軸心周りで一方向にある角度だけ揺動することにより、ローラがフォロワ面を転動し、プレスラムが第1方向の一方に向かって移動してプレス加工を行うことができる。この後、アーム体が駆動軸心周りで他方向にその角度だけ揺動することにより、ローラが第2フォロワ面を転動し、プレスラムが第1方向の他方に向かって移動することが可能になる。このため、プレスラムをプレス加工前の位置に戻すためのバネ等の付勢部材が不要になり、動力損失を抑制できるとともに、部品点数の削減を実現できる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
駆動軸3は軸孔153内に挿通されている。軸孔153内には駆動軸3との間で前後に軸受19、21が設けられており、軸受19、21間にはスペーサ23、26が設けられている。駆動軸3の先端部3aは第3凹部154内に突出している。先端部3aにはキー溝3bが凹設されている。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
ロータリアクチュエータ11は揺動角度が100°の空気圧ダブルベーンタイプである。このロータリアクチュエータ11はシリンダ取付けブラケット9の後端に図示しないボルトによって固定されている。駆動軸3の後端部3cはシリンダ取付けブラケット9内に突出している。ロータリアクチュエータ11は、図3及び図4に示すように、水平な前後方向に延びる揺動軸25を有している。図2に示すように、揺動軸25の先端部25aはシリンダ取付けブラケット9内に突出している。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0024】
シリンダ取付けブラケット9内には、カップリング27と、2個の締結具27a、27bとが設けられている。カップリング27は、駆動軸3の後端部3cと揺動軸25の先端部25aとを駆動軸心Oを同軸として接続している。締結具27a、27bはカップリング27の前端及び後端を締結している。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0025】
ロータリアクチュエータ11は、図3及び図4に示すように、アクチュエータハウジング31を有し、アクチュエータハウジング31内には揺動軸25が図示しない前後の軸受によって駆動軸心O周りで回転可能に支持されている。揺動軸25にベーン35が固定され、アクチュエータハウジング31内はベーン35によって4つのシリンダ室31a~31dに仕切られている。また、アクチュエータハウジング31内には、ストッパ37、39が上下に離隔して図示しないボルトによって固定されている。ストッパ37、39は、それぞれ駆動軸心O側にシール材41、43を有している。シール材41、43はベーン35の円筒面に当接している。ベーン35はストッパ37とストッパ39との角度だけ揺動できるようになっている。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0042
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0042】
また、本発明のプレス装置では、駆動軸3を揺動させる駆動力として、手動やモータ等によって駆動軸3を揺動させてもよい。なお、本発明において、回動は揺動を含む概念である
【手続補正9】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正の内容】
図2