(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022012437
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】ガラス容器及びガラス容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 6/32 20060101AFI20220107BHJP
C03C 21/00 20060101ALI20220107BHJP
C03C 15/00 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
B65D6/32 B
C03C21/00 101
C03C15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020114262
(22)【出願日】2020-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000148689
【氏名又は名称】株式会社村上開明堂
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100154759
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 貴子
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】菊池 英幸
(72)【発明者】
【氏名】深澤 彰彦
【テーマコード(参考)】
3E061
4G059
【Fターム(参考)】
3E061AA30
3E061AB03
3E061AC09
3E061DB03
4G059AA04
4G059AB11
4G059AC03
4G059AC16
4G059AC30
4G059BB04
4G059BB16
4G059HB03
4G059HB14
4G059HB23
(57)【要約】
【課題】液体を収容し且つ液体の必要時に液体を滴下しうるガラス容器を提供する。
【解決手段】ガラスを材料として構成される容器本体10と、容器本体10の内部において液体を収容する収容部20と、液体を収容部20から容器本体10の外面に導く通路30と、を有し、容器本体10において収容部20に隣接した位置には、外力を受けることで可逆的に変形する可逆的変形部40が形成され、可逆的変形部40が容器本体10の内側に変形すると収容部20の内容積が縮小し、収容部20に収容される液体Lが通路30を介して吐出されるガラス容器1。
【選択図】
図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスを材料として構成される容器本体を有し、
前記容器本体には、前記容器本体の内部において液体を収容する収容部と、前記液体を前記収容部から前記容器本体の外面に導く通路と、前記収容部に隣接した位置において外力を受けることで可逆的に変形する可逆的変形部と、が形成され、
前記可逆的変形部が前記容器本体の内側に変形すると前記収容部の内容積が縮小し、前記収容部に収容される前記液体が前記通路を介して吐出されるガラス容器。
【請求項2】
前記容器本体は、化学強化されたガラスで構成される、
請求項1に記載のガラス容器。
【請求項3】
前記通路において、前記液体が流れる方向と直交する方向の断面における幅は、50μm以上3mm以下である、
請求項1又は2に記載のガラス容器。
【請求項4】
前記可逆的変形部において、前記容器本体の外面から前記収容部までの厚みは、50μm以上200μm以下である、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のガラス容器。
【請求項5】
前記可逆的変形部が前記容器本体の内側に変形した場合、前記収容部から前記通路を介して吐出される液体の吐出量は、0.065ml以上0.2ml以下である、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のガラス容器。
【請求項6】
複数の板ガラスのうち少なくとも1つの板ガラスをエッチングすることで、液体を収容する収容部の一部と前記収容部に収容した液体を吐出するための通路と
を形成するエッチング工程と、
前記複数の板ガラスを互いに接合することで容器本体を形成する接合工程と、を有し、
前記エッチング工程では、前記収容部の一部を形成すると同時に、前記容器本体の外面から前記収容部の一部に対して外力を受けることで可逆的に変形する可逆的変形部が形成されるようにエッチングを行うガラス容器の製造方法。
【請求項7】
前記エッチング工程では、フッ酸を用いてエッチングする、
請求項6に記載のガラス容器の製造方法。
【請求項8】
前記エッチング工程の後で且つ前記接合工程の前において、前記複数の板ガラスを化学強化する化学強化工程を有する
請求項6又は7に記載のガラス容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を収容し且つ液体の必要時に液体を滴下しうるガラス容器及びガラス容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器内部に収容した液体(内容液)の必要時に液体を滴下しうる樹脂製の滴下容器がある(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1の樹脂製の滴下容器は、内容液の必要時に、容器本体を逆さにし、容器本体の胴部を押圧することで内容液を吐出、滴下する。樹脂製の容器では、胴部が可撓性を有するため、押圧することで胴部が容易に変形するという特徴がある。
【0003】
樹脂製の容器は、可撓性を有する胴部の表面が傷つきやすく、耐久性の点で問題がある。また、樹脂製の胴部は、意匠性や高級感が足りないという課題がある。これらの課題を解決するため、容器をガラス製にすることで、容器の表面に耐久性を持たせるとともに、意匠性や高級感を与えることが考えられる。
【0004】
しかしながら、ガラスは、容易に変形しない特徴があるため、内容液を滴下させるために、可撓性の胴部を形成することが困難である。このため、ガラス製の滴下容器を形成することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、液体を収容し且つ液体の必要時に液体を滴下しうるガラス容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、
ガラスを材料として構成される容器本体と、
前記容器本体の内部において液体を収容する収容部と、
前記液体を前記収容部から前記容器本体の外面に導く通路と、を有し、
前記容器本体において前記収容部に隣接した位置には、外力を受けることで可逆的に変形する可逆的変形部が形成され、
前記可逆的変形部が前記容器本体の内側に変形すると前記収容部の内容積が縮小し、前記収容部に収容される前記液体が前記通路を介して吐出されるガラス容器である。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、可逆的変形部がガラス製の容器本体の内側に変形すると収容部の内容積が縮小し、収容部に収容される液体が通路を介して吐出される。このため、液体を収容し且つ液体の必要時に液体を滴下しうるガラス容器を提供することができる。また、ガラス容器は、樹脂製の容器と比べて、容器表面の耐傷性が高く、容器としての耐久性も高い。また、ガラス容器は、樹脂製の容器と比べて、透明性や光沢感が大きいため、意匠性に優れ、高級感を備えた容器となる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、
前記容器本体は、化学強化されたガラスで構成される、
請求項1に記載のガラス容器である。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、容器本体が化学強化されたガラスで構成されることで、容器本体の外面及び内面の両方に圧縮応力層が形成され、耐傷性が高くなる。また、化学強化されたガラスは、曲げ応力に強くなり、その他、耐久性、耐衝撃性も高くなる。さらに、物理強化とは異なり、化学強化を行ったとしても、ガラスに歪みを生じさせることはなく、透明性や光沢感を維持することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、
前記通路において、前記液体が流れる方向と直交する方向の断面における幅は、50μm以上3mm以下である、
請求項1又は2に記載のガラス容器である。
【0012】
請求項3に記載の発明のように通路の幅を設定することで、液体の使用時には、液体が通路を通過して容器外に排出される一方、液体の非使用時には、液体が通路から自然に容器外に排出されることを防止する。このため、液体を効果的に収容しうる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、
前記可逆的変形部において、前記容器本体の外面から前記収容部までの厚みは、50μm以上200μm以下である、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のガラス容器である。
【0014】
請求項4に記載の発明のように可逆的変形部の厚みを設定することで、可逆的変化部の強度を確保しつつ、可逆的変化部を弾性変形させることが可能となる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、
前記可逆的変形部が前記容器本体の内側に変形した場合、前記収容部から前記通路を介して吐出される液体の吐出量は、0.065ml以上0.2ml以下である、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のガラス容器である。
【0016】
請求項5に記載の発明のように吐出量を設定することで、収容した液体を所定の必要量だけ吐出させることができる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、
複数の板ガラスのうち少なくとも1つの板ガラスをエッチングすることで、液体を収容する収容部の一部と前記収容部に収容した液体を吐出するための通路とを形成するエッチング工程と、
前記複数の板ガラスを互いに接合することで容器本体を形成する接合工程と、を有し、
前記エッチング工程では、前記収容部の一部を形成すると同時に、前記容器本体の外面から前記収容部の一部に対して外力を受けることで可逆的に変形する可逆的変形部が形成されるようにエッチングを行うガラス容器の製造方法である。
【0018】
請求項6に記載の発明のように、エッチング工程によって板ガラスの表面に収容部の一部を形成するとともに、複数の板ガラスを互いに接合することでガラス容器を形成する。ここで、エッチング工程において、収容部の一部を形成すると同時に、可逆的変形部が形成されるようにエッチング処理を行うことで、収容部を形成する工程と可逆的変形部を形成する工程を別にした場合と比べて、少ない工程でガラス容器を製造することができる。
【0019】
請求項7に記載の発明は、
前記エッチング工程では、フッ酸を用いてエッチングする、
請求項6に記載のガラス容器の製造方法である。
【0020】
請求項7に記載の発明のように、エッチング工程において、フッ酸を用いてエッチング処理を行うことにより、透明又はきめの細かい乳白色のガラスに仕上げることができ、意匠性が高くなる。また、フッ酸を用いた化学処理が行われることで、手あかなどの汚れがつきにくくなり、防汚性も高くなる。
【0021】
請求項8に記載の発明は、
前記エッチング工程の後で且つ前記接合工程の前において、前記複数の板ガラスを化学強化する化学強化工程を有する
請求項6又は7に記載のガラス容器の製造方法である。
【0022】
請求項8に記載の発明のように、エッチング工程の後で且つ接合工程の前において、化学強化工程を有することで、複数の板ガラスの表面もしくは全面に圧縮応力層が形成される。これにより、特に、エッチング工程において形成された可逆的変形部の耐久性を高めることができる。また、化学強化により、複数の板ガラスの耐傷性、耐久性、耐衝撃性を高めることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、液体を収容し且つ液体の必要時に液体を滴下しうるガラス容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2A】ガラス容器の使用時において液体を収容した状態の説明図である。
【
図2B】ガラス容器の使用時において液体を滴下する状態の説明図である。
【
図4A】他の実施形態のガラス容器の斜視図である。
【
図4B】他の実施形態のガラス容器の使用状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明のガラス容器及びガラス容器の製造方法の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0026】
図1Aは、本実施形態のガラス容器1の斜視図である。
図1Bは、ガラス容器1の断面図である。
図1A及び
図1Bに示すように、ガラス容器1は、ガラスを材料として構成される容器本体10を有する。容器本体10には、容器本体10の内部において液体L(
図2参照)を収容する収容部20と、液体Lを収容部20から容器本体10の外面に導く通路30と、が形成される。また、容器本体10には、収容部20に隣接した位置に、外力を受けることで可逆的に変形する可逆的変形部40が形成される。次に、各部を具体的に説明する。
【0027】
容器本体10は、第一板ガラス11と第二板ガラス12とからなる2つの板ガラスで構成される。容器本体10を構成する第一板ガラス11及び第二板ガラス12は、いずれも、化学強化されたガラスで構成される。ガラスの素材は、化学強化用ガラスとして汎用性の高いソーダライムガラスや、ソーダライムガラスよりも必要深さの応力層を短時間で形成することが可能なアルミノシリケートガラスが好適であるが、化学強化が可能なその他の素材でもよい。容器本体10は、透明であっても半透明であってもよい。
【0028】
収容部20は、化粧料等の液体Lを収容する。ここでいう液体Lは、粘性の低い液体のみならず、クリーム状のような粘性が一定程度高い液状体をも含む。
図1Aに示すように、本実施形態の収容部20は、側面からみた形状が円形であるが、これに限るものではない。例えば、三角形や四角形等の多角形の形状であってもよく、その他、星形等の形状であってもよい。
【0029】
通路30は、収容部20に収容される液体Lを容器本体10の外部へ導くように、収容部20と吐出口35とを連通する、液体Lの通路である。通路30の幅、すなわち、液体Lが流れる方向(
図1A及び
図1Bにおける上下方向)と直交する方向(以下、「幅方向」という)の断面における長さ(幅W:
図1B参照)は、液体Lの表面張力の大きさによって調整可能である。通路30の幅Wは、液体Lの表面張力に抗して通路30を通過しうる程度の大きさが必要である一方で、液体Lが自然に滴下することを防ぐような大きさとする必要がある。このため、通路30の幅Wは、50μm以上3mm以下が好ましい。
【0030】
可逆的変形部40は、収容部20に隣接して形成される容器本体10の一部である。可逆的変形部40は、後述のように、収容部20の形成工程において形成され、容器本体10の他の部分と比較して薄く構成される。具体的には、可逆的変形部40において、容器本体10の外面から収容部20までの厚みT(
図1B参照)は、50μm以上200μm以下であることが好ましい。
【0031】
可逆的変形部40は収容部20の形成工程において形成される。このため、可逆的変形部40の形状は、収容部20と同様の形状となり、本実施形態では円形である。しかしながら、可逆的変形部40の形状は、円形に限るものではない。可逆的変形部40は、少なくとも、側面から見た形状の内部において変形部としての内接円が描けるような形状であればよい。このため、例えば、三角形や四角形等の多角形の形状であってもよく、その他、星形等の形状であってもよい。
【0032】
可逆的変形部40は、他の容器本体10の厚みよりも薄く構成されることで、弾性変形をする。具体的には、可逆的変形部40の外面を内側に向かって押圧すると、可逆的変形部40は、容器本体10の内側に変形する。一方、可逆的変形部40への押圧がなくなると、可逆的変形部40は、容器本体10の外面と同じ面に復元する。
【0033】
図2A及び
図2Bを参照して、ガラス容器1の使用状態を説明する。
図2Aは、ガラス容器1の使用時において液体Lを収容部20内に収容した状態の説明図である。
図2Bは、ガラス容器1の使用時において液体L1を滴下する状態の説明図である。
図2Aに示すように、収容部20に収容された液体Lは、液体Lの表面張力等により、通路30を通過することなく、収容部20に留まっている。
【0034】
図2Bに示すように、液体Lを使用する場合に、可逆的変形部40に対して外力Fが加えられると、可逆的変形部40が容器本体10の内側に弾性変形する。これにより、収容部20の内容積が縮小し、収容部20に収容される液体Lの一部(液体L1)が通路30を介して吐出される。ここで、本実施形態において、可逆的変形部40が容器本体10の内側に変形した場合、収容部20から通路30を介して吐出される液体の吐出量は、0.065ml以上0.2ml以下である。
【0035】
次に、ガラス容器1の製造方法について、
図3を参照して説明する。
図3は、ガラス容器1の製造手順の説明図である。
図3(a)に示すように、第一板ガラス11及び第二板ガラス12を用意する。ガラス容器1の製造は、エッチング工程、化学強化工程、接合工程の順で行われる。次に、各工程について詳細に説明する。
【0036】
エッチング工程では、
図3(b)に示すように、第一板ガラス11及び第二板ガラス12のそれぞれに対して、エッチング処理をする。エッチング処理では、収容部20の形状に合わせて、板ガラス11、12をエッチングする。本実施形態では、断面円形の収容部20を形成するため、第一板ガラス11の表面を円形にエッチングすることで、円形の第一収容凹部21が形成される。同様に、第二板ガラス12の表面をエッチングすることで、円形の第二収容凹部22が形成される。
【0037】
このとき、第一板ガラス11における第一収容凹部21の裏面側の厚さは、エッチング処理により薄くなる。このため、第一収容凹部21の裏面側には、可逆的変形部40が形成される。同様に、第二板ガラス12の第二収容凹部22の裏面側には、可逆的変形部40が形成される。
【0038】
また、エッチング工程では、通路30の一部を形成するために、第一板ガラス11の表面において、第一収容凹部21から第一板ガラス11の外周に至るようにエッチングする。これにより、第一通路凹部31が形成される。同様に、第二板ガラス12の表面において、第二収容凹部22から第二板ガラス12の外周に至る第二通路凹部32が形成される。
【0039】
このように、エッチング工程においては、2つの板ガラス11、12の表面をエッチングすることで、液体を収容する収容部20と収容部20から板ガラス11、12の外周に至る通路30とを形成する。
【0040】
本実施形態のエッチング処理は、フッ酸を用いて化学的に行っている。しかしながら、エッチング処理の方法は、これに限るものではなく、他の酸を用いて化学的なエッチング処理を行ってもよく、物理的なエッチング処理を用いてもよい。また、本実施形態では、2つの板ガラス11、12のいずれに対してもエッチング処理を行ったが、これに限るものではない。例えば、2つの板ガラスのうち、一方の板ガラスのみにエッチング処理を行い、収容部20、通路30、可逆的変形部40を形成することとしてもよい。
【0041】
化学強化工程では、エッチング工程の後の第一板ガラス11及び第二板ガラス12に対して化学強化の処理がなされる。化学強化処理を行うことで、第一板ガラス11及び第二板ガラス12の両面(表面及び裏面)に、圧縮応力層が形成される。化学強化は、KNO3溶液等を用いることができるが、これに限るものではない。
【0042】
接合工程では、
図3(c)における、第一板ガラス11の表面と第二板ガラス12の表面とを互いに接合する。本実施形態における接合処理は、ガラス半田Gを、第一収容凹部21の周囲に塗布した後、第一板ガラス11の表面と第二板ガラス12の表面とを互いに接合する方法を用いる。なお、第一板ガラス11と第二板ガラス12とを接合する方法は、ガラス半田を用いる方法に限らない。例えば、ガラスフリットを接合剤として用いる方法、接合面を合わせた後にガラスの変形点以上(500~900℃)に加熱して接合する方法、赤外線レーザを用いる方法、その他の方法を用いることができる。
【0043】
図3(d)に示すように、接合工程にて第一板ガラス11と第二板ガラス12とが接合されて一体となると、容器本体10が形成される。このとき、第一収容凹部21と第二収容凹部22とが一体となることで、収容部20が形成され、第一通路凹部31と第二通路凹部32とが一体となることで、通路30が形成される。通路30の容器本体10の外周側の端部は、吐出口35となる。
【0044】
以上のように、本実施形態では、可逆的変形部40がガラス製の容器本体10の内側に変形すると収容部20の内容積が縮小し、収容部20に収容される液体Lが通路30を介して吐出口35から吐出される。このため、液体Lを収容し且つ液体Lの必要時に液体Lを吐出口3 5から滴下しうるガラス容器1を提供することができる。また、ガラス容器1は、樹脂製の容器と比べて、容器表面の耐傷性が高く、容器としての耐久性も高い。また、ガラス容器1は、樹脂製の容器と比べて、透明性や光沢感が大きいため、意匠性に優れ、高級感を備えた容器となる。
【0045】
また、本実施形態では、容器本体10が化学強化されたガラスで構成される。これにより、容器本体10に圧縮応力層が形成され、耐傷性が高くなる。また、化学強化されたガラスは、曲げ応力に強くなり、その他、耐久性、耐衝撃性も高くなる。さらに、物理強化とは異なり、化学強化を行ったとしても、ガラスに歪みを生じさせることはなく、透明性や光沢感を維持することができる。
【0046】
また、本実施形態では、通路30の幅Wを、50μm以上3mm以下となるように設定する。これにより、液体Lの使用時には、液体Lが通路30を通過して吐出口35から容器外に排出される一方、液体Lの非使用時には、液体Lが通路30から自然に容器外に排出されることを防止する。このため、液体を効果的に収容しうる。
【0047】
また、本実施形態では、可逆的変形部40の厚みTを、50μm以上200μm以下となるように設定する。これにより、可逆的変形部40の強度を確保しつつ、可逆的変形部40を弾性変形させることが可能となる。
【0048】
また、本実施形態では、可逆的変形部40が容器本体10の内側に変形した場合、収容部20から通路30を介して吐出される液体L1の吐出量を、0.065ml以上0.2ml以下となるように設定する。これにより、収容した液体Lを所定の必要量だけ吐出口35から吐出させることができる。
【0049】
また、本実施形態では、エッチング工程によって2つの板ガラス11、12の表面に収容部20の一部となる凹部21、22を形成するとともに、2つの板ガラス11、12を互いに接合することでガラス容器1を形成する。ここで、エッチング工程において、凹部21、22を形成すると同時に、可逆的変形部40が形成されるようにエッチング処理を行う。このため、収容部20の一部と可逆的変形部40とを同時に形成することができ、収容部20を形成する工程と可逆的変形部40を形成する工程を別にした場合と比べて、少ない工程でガラス容器1を製造することができる。
【0050】
また、本実施形態では、エッチング工程において、フッ酸を用いてエッチング処理を行う。このため、透明又はきめの細かい乳白色のガラスに仕上げることができ、意匠性が高くなる。また、フッ酸を用いた化学処理が行われることで、手あかなどの汚れがつきにくくなり、防汚性も高くなる。
【0051】
また、本実施形態では、エッチング工程の後に化学強化工程を有する。このため、2つの板ガラス11、12の表面もしくは全面に圧縮応力層が形成される。これにより、特に、エッチング工程において形成された可逆的変形部40の耐久性を高めることができる。また、化学強化により、2つの板ガラス11、12の耐傷性、耐久性、耐衝撃性を高めることができる。
【0052】
上記実施形態は本発明の好適な一例であり、これに限定されない。本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記実施形態では、ガラス容器1を、2枚の板ガラス11、12の片面どうしを接合することとしたが、3枚以上の複数の板ガラスを接合することとしてもよい。
図4Aは、他の実施形態のガラス容器1Aの斜視図である。
図4Bは、他の実施形態のガラス容器1Aの使用状態の説明図である。
【0053】
図4Aに示すように、ガラス容器1Aの容器本体10Aは、6枚の板ガラスから構成される。6枚の板ガラスはそれぞれ、板ガラスの外周の内面側に、45°のテーパ面を有する。容器本体10Aは、各板ガラスのテーパ面を互いに接合することで形成される。また、容器本体10Aを構成する6枚の板ガラスに囲まれた内部が液体LAの収容部20Aとなる。6枚の板ガラスのうち、
図4A中の左右側面にあたる対向する2枚の板ガラスには、それらの内面にエッチング処理がなされている。当該2枚の板ガラスは、エッチング処理がされた部分である内面側が収容部20Aの一部となるとともに、エッチング処理がされた部分の外面側が可逆的変形部40Aとなる。また、
図4A中の下面にあたる1枚の板ガラスには、収容部20Aに収容した液体LAを吐出口35Aから吐出するための通路30Aが、板ガラスの中央において、内面から外面に至るように貫通するように形成される。
【0054】
次に、ガラス容器1Aの使用状態の説明をする。まず、前提として、ガラス容器1Aの非使用時においては、収容部20Aに収容された液体LAは、液体LAの表面張力等により、通路30Aを通過することなく、収容部20Aに留まっている。
【0055】
図4Bに示すように、液体LAを使用する場合に、可逆的変形部40Aに対して外力FAが加えられると、可逆的変形部40Aが容器本体10Aの内側に弾性変形する。これにより、収容部20Aの内容積が縮小し、収容部20Aに収容される液体LAの一部(液体LA1)が通路30Aを介して吐出される。
【0056】
なお、上述の他の実施形態において、可逆的変形部40Aを形成するためにエッチング処理を行う板ガラスの枚数は、必ずしも2枚でなくともよく、複数の板ガラスのうち、少なくとも1枚にエッチング処理を行えばよい。また、通路30Aの数は、必ずしも1つでなくともよく、1枚の板ガラスに複数の通路30Aが形成されてもよく、複数枚の板ガラスのそれぞれに通路30Aが形成されてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1…ガラス容器、1A…ガラス容器、10…容器本体、10A…容器本体、11…第一板ガラス、12…第二板ガラス、20…収容部、20A…収容部、21…第一収容凹部、22…第二収容凹部、30…通路、30A…通路、31…第一通路凹部、32…第二通路凹部、35…吐出口、35A…吐出口、40…可逆的変形部、40A…可逆的変形部、F…外力、G…ガラス半田、L…液体、L1…液体、LA…液体、LA1…液体、T…可逆的変形部の厚み、W…通路の幅、