IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トーソー株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124379
(43)【公開日】2022-08-25
(54)【発明の名称】ハンガーパイプ
(51)【国際特許分類】
   A47G 25/02 20060101AFI20220818BHJP
   A47G 7/04 20060101ALN20220818BHJP
【FI】
A47G25/02 D
A47G7/04 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021022116
(22)【出願日】2021-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000109923
【氏名又は名称】トーソー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】伊東 栄治
(72)【発明者】
【氏名】山中 篤
【テーマコード(参考)】
3K099
【Fターム(参考)】
3K099AA01
3K099BA26
3K099CA09
3K099CA49
3K099CB53
3K099DA05
3K099DA13
3K099EA08
(57)【要約】
【課題】意匠性に優れるとともに、貼り付けられたたシート部材の保持に優れたハンガーパイプを提供する。
【解決手段】物を引っ掛ける用に供されるハンガーパイプ1であって、長さ方向Lに沿って延びる溝11を有するパイプ本体10と、両端部21,22が溝11に入り込んでパイプ本体10の外周面に巻き付けられているシート部材20と溝11に嵌め込まれてシート部材20の両端部21,22をパイプ本体10と挟むカバー部材30と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物を引っ掛ける用に供されるハンガーパイプであって、
長さ方向に沿って延びる溝を有するパイプ本体と、
両端部が前記溝に入り込んで前記パイプ本体の外周面に巻き付けられているシート部材と、
前記溝に嵌め込まれて前記シート部材の前記両端部を前記パイプ本体と挟むカバー部材と、
を備えることを特徴とするハンガーパイプ。
【請求項2】
前記カバー部材は、前記長さ方向に延びて互いに向かい合う前記溝の縁部と係合する脚部を有し、
前記シート部材は、前記溝の縁部と前記脚部との間において挟まれている
ことを特徴とする請求項1に記載のハンガーパイプ。
【請求項3】
前記脚部は、前記パイプ本体の周方向において所定の間隔をあけて、前記溝に挿入されて前記溝の縁部とそれぞれ係合する2つの脚部を含み、
前記2つの脚部はそれぞれ、前記溝の前記縁部に対向する面に該縁部と係合する凹部を有する
ことを特徴とする請求項2に記載のハンガーパイプ。
【請求項4】
前記カバー部材は、前記パイプ本体の外周面に対して段を形成するように前記パイプ本体に取り付けられていることを特徴とする請求項1から3までのいずれか一項に記載のハンガーパイプ。
【請求項5】
前記カバー部材は、硬質樹脂及び軟質樹脂の少なくとも1つの樹脂により形成されていることを特徴とする請求項1から4までのいずれか一項に記載のハンガーパイプ。
【請求項6】
前記カバー部材は、
硬質樹脂及び軟質樹脂を用いた二色成型品として成形されており、
外部に露出する部分に軟質樹脂により成形された軟質部分を有する
ことを特徴とする請求項5に記載のハンガーパイプ。
【請求項7】
前記カバー部材は、前記パイプ本体の周方向に延び、前記長さ方向において所定の間隔をあけて設けられている複数の窪みを有していることを特徴とする請求項1から6までのいずれか一項に記載のハンガーパイプ。
【請求項8】
前記長さ方向に延びて互いに向かい合う前記溝の縁部は、前記パイプ本体の周方向において一方の縁部に向かって突出する凸部を有することを特徴とする請求項1から7までのいずれか一項に記載のハンガーパイプ。
【請求項9】
前記パイプ本体は、前記長さ方向に交差して延びていて、前記パイプ本体の内部を2つの空間に分割する隔壁部を有することを特徴とする請求項1から8までのいずれか一項に記載のハンガーパイプ。
【請求項10】
前記隔壁部は、前記パイプ本体の前記長さ方向における両端部を閉鎖するキャップ部材、又は、前記長さ方向における他のパイプ本体との連結用の連結部材を係止する係止部を有することを特徴とする請求項9に記載のハンガーパイプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンガーパイプに関し、特に、物を引っ掛ける用に供されるハンガーパイプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表面の乾燥を促進させる目的や、錆やキズ等の防止効果を発揮するためにフッ素樹脂コーティングが施された物干し竿(ハンガーパイプ)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-237429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、錆やキズ等の防止効果を期待して表面処理が施されたハンガーパイプの場合、表面の意匠の自由度は制限されてしまっていた。そのため、ハンガーパイプの表面に意匠、例えば、木目調等の柄、模様、石目調等の凹凸のある表面を採用したい場合には、木目調又は石目調が加工されたシート部材をハンガーパイプに巻いて貼り付けることがあった。
【0005】
シート部材をハンガーパイプに貼り付ける場合、シート部材の両端部は、互いにオーバラップすることがある。シート部材のオーバラップした部分は、他の部分よりも厚みを持つことになり、さらには、上に重なったシート部材の縁がハンガーパイプの長さ方向に沿って視認可能に延びることになり、意匠性が損なわれることがあった。また、オーバラップした部分は、シート部材が剥がれる起点になりやすいことが想定される。
【0006】
また、ハンガーパイプに対してシート部材を貼り付けた場合であっても、引っ掛ける物がシート部材と頻繁に接触する箇所、例えば、鉛直方向において頂点部に繰り返し接触することにより、シート部材が破損してキズとして現れることもあった。
【0007】
そこで、本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、引っ掛ける物との接触による表面の破損を防止するとともに、意匠性に優れた技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るハンガーパイプは、物を引っ掛ける用に供されるハンガーパイプであって、長さ方向に沿って延びる溝を有するパイプ本体と、両端部が前記溝に入り込んで前記パイプ本体の外周面に巻き付けられているシート部材と、前記溝に嵌め込まれて前記シート部材の前記両端部を前記パイプ本体と挟むカバー部材と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、引っ掛ける物との接触による表面の破損を防止するとともに、意匠性に優れたハンガーパイプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施の形態に係るハンガーパイプを備えたハンギングシステムの一例を示す図である。
図2A】本実施の形態に係るハンガーパイプの分解斜視図である。
図2B】本実施の形態に係るハンガーパイプをその長さ方向に沿って見た図である。
図3A】カバー部材の構成を説明するための斜視図である。
図3B】カバー部材を長さ方向に見た図である。
図4A】パイプ本体の周りにシート部材を貼り付ける工程を示す図である。
図4B】シート部材の両端部を溝内に入れ込む工程を示す図である。
図4C】カバー部材を溝に嵌め込む工程を示す図である。
図5】変形例1に係るカバー部材を示す斜視図である。
図6】変形例2に係るカバー部材を示す斜視図である。
図7A】キャップ部材によって長手方向における端部が閉鎖されたハンガーパイプを示す図である。
図7B】ハンガーパイプに対するキャップ部材の取り付け方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
先ず、本発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0012】
本発明の代表的な実施の形態に係るハンガーパイプ(1)は、物を引っ掛ける用に供されるハンガーパイプであって、長さ方向に沿って延びる溝を有するパイプ本体(10)と、両端部(21,22)が溝(11)に入り込んでパイプ本体(10)の外周面に巻き付けられているシート部材(20)と、溝(11)に嵌め込まれてシート部材(20)の両端部(21,22)をパイプ本体(10)と挟むカバー部材(30)と、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様に係るハンガーパイプ(1)は、カバー部材(30)は、長さ方向(L)に延びて互いに向かい合う溝(11)の縁部と係合する脚部を有し、シート部材(20)は、溝(11)の縁部と脚部との間において挟まれている。
【0014】
本発明の一態様に係るハンガーパイプ(1)は、脚部は、パイプ本体(10)の周方向において所定の間隔をあけて、溝(11)に挿入されて溝(11)の縁部とそれぞれ係合する2つの脚部(35,36)を含み、2つの脚部(35,36)はそれぞれ、溝(11)の縁部に対向する面に該縁部と係合する凹部(35a,36a)を有する。
【0015】
本発明の一態様に係るハンガーパイプ(1)は、カバー部材(30)は、パイプ本体(10)の外周面に対して段を形成するようにパイプ本体(10)に取り付けられている。
【0016】
本発明の一態様に係るハンガーパイプ(1)は、カバー部材(30)は、硬質樹脂及び軟質樹脂の少なくとも1つの樹脂により形成されている。
【0017】
本発明の一態様に係るハンガーパイプ(1)は、カバー部材(30)は、硬質樹脂及び軟質樹脂を用いた二色成型品として成形されており、外部に露出する部分に軟質樹脂により成形された軟質部分(31a)を有する。
【0018】
本発明の一態様に係るハンガーパイプ(1)は、カバー部材(30)は、パイプ本体(10)の周方向(Q)に延び、長さ方向(L)において所定の間隔をあけて設けられている複数の窪み(39)を有している。
【0019】
本発明の一態様に係るハンガーパイプ(1)は、長さ方向(L)に延びて互いに向かい合う溝(11)の縁部は、パイプ本体(10)の周方向において一方の縁部に向かって突出する凸部(12,13)を有する。
【0020】
本発明の一態様に係るハンガーパイプ(1)は、パイプ本体(10)は、長さ方向(L)に交差して延びていて、パイプ本体の内部を2つの空間(S1,S2)に分割する隔壁部(10e)を有する。
【0021】
本発明の一態様に係るハンガーパイプ(1)は、隔壁部(10e)は、パイプ本体(10)の長さ方向(L)における両端部(21,22)を閉鎖するキャップ部材(300)、又は、長さ方向(L)における他のパイプ本体との連結用の連結部材を係止する係止部(14)を有する。
【0022】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
ハンギングシステム(ハンギング装置)100は、室内の天井を含む壁面に設けられて、例えば、植物用の鉢、衣類等の物200が引っ掛けられて吊り下げられる。なお、本実施の形態に係るハンガーパイプ1が適用されるハンギングシステム100に掛けられる物は、特定の物に限定されず、例えば、物の重量、ハンギングシステム100が設けられる壁面等の耐荷重を考慮して決められる。
【0024】
図1は、本実施の形態に係るハンガーパイプ1を備えたハンギングシステム100の一例を示す図である。ハンギングシステム100は、壁面ブラケット110と、吊りパイプ120と、ジョイント130と、ハンガーパイプ1と、を備える。壁面ブラケット110は、ハンギングシステム100を設置したい室内の壁面の位置に、例えば、ねじ等により固定されている。
【0025】
吊りパイプ120は、例えば、アルミニウムや樹脂等の材料により形成されている円筒状の部材である。長さ方向に交差した吊りパイプ120の断面形状は、例えば、円形又は略楕円形であっても、多角形であってもよく、特に限定されない。吊りパイプ120の一端は、壁面ブラケット110に挿入されて固定されている。
【0026】
ジョイント130は、吊りパイプ120の他端に取り付けられている。各吊りパイプ120に取り付けられたジョイント130の間に後述するハンガーパイプ1の端部がそれぞれ挿入されている。
【0027】
本実施の形態に係るハンガーパイプ1は、物200を引っ掛ける用に供されるハンガーパイプ1であって、長さ方向Lに沿って延びる溝11を有するパイプ本体10と、両端部21,22が溝11に入り込んでパイプ本体10の外周面に巻き付けられているシート部材20と、溝11に嵌め込まれてシート部材20の両端部21,22をパイプ本体10と挟むカバー部材30と、を備えることを特徴とする。以下、具体的にハンガーパイプ1の構成を説明する。
【0028】
図2Aは、本実施の形態に係るハンガーパイプ1の分解斜視図である。図2Bは、本実施の形態に係るハンガーパイプ1をその長さ方向Lに沿って見た図である。なお、図において、ハンガーパイプ1が延在する方向を長さ方向Lとし、後述する円弧壁部10a,10bの間を長さ方向Lに交差する方向を高さ方向Hとし、後述する側壁部10c,10dの間を長さ方向Lに交差する方向を幅方向Qとする。
【0029】
ハンガーパイプ1は、パイプ本体10と、シート部材20と、カバー部材30と、を備える。パイプ本体10は、例えば、アルミニウム、樹脂等の材料により押出成形により形成されている。パイプ本体10の高さ方向H及び幅方向Qの断面形状は、楕円形状であるが、これに限定されず、例えば、円形状、長円形状、小判形状であってもよい。
【0030】
パイプ本体10は、円弧状に形成された2つの円弧壁部10a,10bを有し、直線状に形成された2つの側壁部10c,10dを有している。2つの円弧壁部10a,10bは、互いに対向する位置関係にあり、2つの側壁部10c,10dは、互いに対向する位置関係にあり円弧壁部10a,10bを繋いでいる。なお、側壁部10c,10dは、直線状に形成されたものに限られず、所定の曲率をもって形成されていてもよい。
【0031】
ハンギングシステム100の使用状態においてハンガーパイプ1は、円弧壁部10aが円弧壁部10bに対して高さ方向(鉛直方向)Hにおいて上側に位置するようになっている。円弧壁部10aの肉厚は、円弧壁部10bの肉厚よりも大きくなっている。
【0032】
パイプ本体10は、溝11を有する。溝11は、円弧壁部10aにおいて、長さ方向Lに沿ってパイプ本体10の一端から他端にわたって延びている。溝11は、円弧壁部10aの側から円弧壁部10bの側に向かって凹に形成されている。
【0033】
長さ方向Lに延びて互いに向かい合う溝11の縁部は、パイプ本体10の長さ方向Lに沿って、例えば、パイプ本体10の中心を延びる軸線x周りの周方向において互いに向かい合って突出している。つまり、溝11は、縁部に一方の縁部に向かって突出する凸部12,13を有する。凸部12,13の互いに向かい合う先端部は、丸味をもって形成されている。
【0034】
パイプ本体10は、壁部として隔壁部10eを有する。隔壁部10eは、長さ方向Lに沿って延びていて、かつ側壁部10c,10dの間を幅方向Qに延びている。隔壁部10eは、パイプ本体10の内部を2つの空間S1,S2に分割している。隔壁部10eは、幅方向Qにおいて溝11と重なる位置に係止部14を有する。係止部14は、高さ方向Hとし及び幅方向Qの断面形状においてC字状又は略C字状に形成されている。
【0035】
係止部14は、円弧壁部10bに向かって開口している。なお、係止部14が開口する方向は、円弧壁部10aに向かっていてもよい。係止部14は、例えば、パイプ本体10の長さ方向Lにおける両端部を閉鎖するキャップ部材300(図7A,7B参照)が係止される。
【0036】
シート部材20は、両端部21,22が溝11に入り込んでパイプ本体10の外周面に巻き付けられている。シート部材20は、パイプ本体10に面する面に粘着性の接着材が塗布されていて、パイプ本体10の外周面に貼り付けられている。シート部材20の接着材が塗布された面とは反対側の面には、例えば、木目調の模様が印刷されていてもよく、また、石目調の凹凸が分かるように形成されていてもよい。
【0037】
パイプ本体10に巻き付けられた状態において、互いに向かい合うシート部材20の端部21,22は、それぞれ凸部12,13を超えて溝11内に位置している。シート部材20は、溝11に入れ込まれた状態において、凸部12,13と、後述するカバー部材30の脚部35,36における凹部35a,36aとに挟まれている。
【0038】
カバー部材30は、溝11に嵌め込まれていてシート部材20の両端部21,22を溝11に押し込んでいる。これにより、シート部材20は、両端部21,22が表に露出しないようになり、パイプ本体10の外周面に確実に取り付けられた状態に維持されている。
【0039】
カバー部材30は、例えば、樹脂、熱硬化性エラストマ等により成形されている。樹脂には、例えば、硬質樹脂、軟質樹脂が含まれる。硬質樹脂としては、合成樹脂(プラスチック)、より具体的には、硬質ポリ塩化ビニル、ポリカーボネイト、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ABS樹脂のいずれが用いられてもよい。
【0040】
また、軟質樹脂としては、例えば、合成樹脂、具体的には、軟質ポリ塩化ビニル、又は、熱可塑性エラストマ(TPE)、より具体的には、オレフィン系熱可塑性エラストマ(TPO)、スチレン系熱可塑性エラストマ(TPS)、ポリウレタン系熱可塑性エラストマ(TPU)及びポリエステル系熱可塑性エラストマ(TPC)があり、これらのいずれが用いられてもよい。
【0041】
また、熱硬化性エラストマとしては、例えば、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム及びシリコーンゴムのいずれが用いられてもよい。
【0042】
図3Aは、カバー部材30の構成を説明するための斜視図である。図3Bは、カバー部材30を長さ方向Lに見た図である。カバー部材30は、長さ方向Lに沿って溝11と同じ又は略同じ長さを有する。カバー部材30は、高さ方向H及び幅方向Qに沿った断面において略U字形状を有する。カバー部材30は、引っ掛ける物200と接触するハンガーパイプ1の部分に設けられて、パイプ本体10に対するキズを防止する効果がある。本実施の形態に係るカバー部材30は、硬質ポリ塩化ビニル及び軟質ポリ塩化ビニルを用いた射出成形により二色成型品として成形されている。
【0043】
カバー部材30は、ヘッド部31と、2つの脚部35,36とを有する。カバー部材30がパイプ本体10の溝11に嵌め込まれた状態(以下、「嵌込み状態」ともいう)において、ヘッド部31は、パイプ本体10の外部に露出しており、脚部35,36は、溝11内に収容されている。脚部35,36はそれぞれ、カバー部材30の外部に露出する外周面32とは反対の側に取り付けられている。
【0044】
ヘッド部31は、部分的に軟質部分31aを有する。軟質部分31aは、幅方向Qにおいてヘッド部31の中央部分に形成されており、長手方向Lに沿って延びている。軟質部分31aは、軟質ポリ塩化ビニルにより成形された部分である。軟質部分31aは、カバー部材30の外部に露出している。軟質部分31a以外のカバー部材30の部分は、硬質ポリ塩化ビニルにより成形されている。
【0045】
長さ方向Lに延在するヘッド部31の幅方向Qにおける縁部はそれぞれ、嵌込み状態においてパイプ本体10の凸部12,13に載置される。つまり、ヘッド部31は、パイプ本体10の外周面に対して高い位置にあり、段が形成されるようにパイプ本体10から突出している。ヘッド部31の外周面32は、例えば、パイプ本体10の円弧壁部10aに沿って、円弧状に形成されている。なお、ヘッド部31の外周面32の曲率は、円弧壁部10aの曲率と同じでも、異なっていてもよい。
【0046】
脚部35,36は、長さ方向Lに沿って溝11と同じ又は略同じ長さだけ延びている。脚部35,36はそれぞれ、交差方向Qにおいて互いに所定の間隔をあけて設けられている。脚部35,36は、互いに対向する方向に変位可能になっている。
【0047】
嵌込み状態において、脚部35,36はそれぞれ、長さ方向Lに沿って延びている凹部35a,36aを有する。凹部35a,36aは、パイプ本体10における凸部12,13と接触する位置に互いに凹に向かうように形成されている。交差方向Qにおける凹部35a,36aの断面は、パイプ本体10における凸部12,13の断面に対応しており、丸味をもって形成されている。これにより、シート部材20は端部21,22においてパイプ本体10の凸部12,13及びカバー部材30の凹部35a,36aの外周面に面接触するようにして挟まれている。
【0048】
脚部35,36は、先端部35b,36bにおける外周面が傾斜して形成されている。先端部35b,36bの傾斜は、凹部35a,36aの側から先端に向かって互いの脚部35,36の側に接近するようになっている。つまり、脚部35,36は、先端部35b,36bにおいて先細るように形成されている。
【0049】
脚部35,36の先端部35b,36bにおける凹部35a,36a側の縁部35c,36c間の間隔w2は、溝11の凸部12,13間の最小の間隔(図2B参照)w1よりも大きくなっている(w2>w1)。なお、間隔w1には、シート部材20の厚みが含まれていてもよい。
【0050】
<ハンガーパイプの組立て>
次に、ハンガーパイプ1の組立て方法について説明する。図4Aは、パイプ本体10の周りにシート部材20を貼り付ける工程を示す図である。図4Bは、シート部材20の両端部21,22を溝11内に入れ込む工程を示す図である。図4Cは、カバー部材30を溝11に嵌め込む工程を示す図である。
【0051】
まず、シート部材20を、接着材が塗布されているシート部材20の面においてパイプ本体10の円弧壁部10b、側壁部10c,10dに貼り付けていき、最終的に、シート部材20をパイプ本体10の円弧壁部10aに貼り付ける。
【0052】
次いで、シート部材20の両端部21,22を溝11内に押し込む。この場合、シート部材20の両端部21,22は、パイプ本体10の凸部12,13を超えて溝11内に入り込むようになっている。
【0053】
次いで、溝11内にカバー部材30を脚部35,36から嵌め込む。カバー部材30の脚部35,36は、先細るように形成されているので、脚部35,36の傾斜面を凸部12,13に当てつつ、カバー部材30を溝11内に容易に嵌め込むことができる。
【0054】
本実施の形態に係るハンガーパイプ1によれば、嵌め込み状態において、シート部材20の両端部21,22は、溝11内に位置するようになっており、シート部材20の両端部21,22は、カバー部材30により確実にパイプ本体10の溝11に押し付けられている。これにより、シート部材20は、パイプ本体10の外周面に貼り付けられ、両端部21,22が剥がれることを確実に防ぐことができる。また、カバー部材30が鉛直方向において頂点となるようにハンガーパイプ1を使用することにより、ハンガーパイプ1に物を引っ掛けた場合であっても、吊り具がパイプ本体10又はシート部材20に直接的に接触することをカバー部材30により抑制することができるので、キズ防止効果を発揮することができる。
【0055】
シート部材20の両端部21,22は、カバー部材30の凹部35a,36aによりパイプ本体10の凸部12,13に押し付けられる。さらに、カバー部材30とパイプ本体10との係合がより強固になる。なお、カバー部材30は、所定の工具により、パイプ本体10から取り外すことができる。
【0056】
さらに、シート部材20の両端部21,22は、外部に露出しておらず溝11内に位置して端部21,22は視認されないので、ハンガーパイプ1の意匠性が向上する。
【0057】
さらに、パイプ本体10は、隔壁部10eを有しているので、断面係数を大きくすることができ、パイプ本体10の強度が高められている。
【0058】
さらに、カバー部材30のヘッド部31は、パイプ本体10の外周面に対して一段高い位置にある。これにより、ハンガーパイプ1に物を引っ掛けた場合であっても、吊り具が直接的にパイプ本体10及びシート部材20に接触することを回避することができ、キズがつきにくくなる。
【0059】
さらに、カバー部材30が二色成型品として成形されて、カバー部材30において吊り具が引っ掛けられるヘッド部31の部分に軟質部分31aを有しているので、吊り具が引っ掛けられた場合には、吊り具の滑動を抑制することができる。
【0060】
さらに、パイプ本体10には凸部12,13が設けられているので、溝11に嵌め込まれたカバー部材30と接触して嵌め込み状態を確実に保持することができる。
【0061】
さらに、カバー部材30は、2つの脚部35,36を有し、それぞれの脚部35,36それぞれに凹部35a,36aが形成されているので、溝11の縁部に形成された凸部12,13がシート部材20を凹部35a,36aに押し込んで挟むことになるので、シート部材20をより強固に保持することができる。また、2つの脚部35,36は、互いに間隔をあけて設けられているので、カバー部材30を溝11内に挿入する際、脚部35,36は互いに接近するように変位する。挿入が完了した場合には、2つの脚部35,36は、再度、互いに離れるように変位するようになっているので、脚部35,36は、凹部35a,36aにおいてシート部材20を凸部12,13に押し付け、シート部材20をより確実に保持することができる。
【0062】
<その他>
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。また、例えば、上記実施の形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。例えば、カバー部材30は、幅方向Qに延びる複数の窪み39が形成されていてもよい。
【0063】
図5は、変形例1に係るカバー部材30Aを示す斜視図である。カバー部材30と同じ構成については、同じ符号を付し説明を省略する。窪み39は、長さ方向Lに沿って所定の間隔をあけて形成されている。窪み39は、外周面32から凹んで、例えば、切込みのように形成されている。例えば、吊り具等を窪み39に掛けることにより、長手方向Lに沿った吊り具の移動を抑制することができる。さらに、ハンガーパイプ1が斜めに傾斜している場合であっても、窪み39により、吊り具が長さ方向Lに沿って滑動することを確実に防ぐことができる。
【0064】
また、上記実施の形態においてカバー部材30,30Aは、硬質樹脂及び軟質樹脂により二色成型品として成形されていた。図6は、変形例2に係るカバー部材30Bを示す斜視図である。カバー部材30と同じ構成については、同じ符号を付し説明を省略する。カバー部材30Bは、例えば、硬質樹脂又は軟質樹脂のいずれかを用いて、一の材料を用いた射出成形により成形されている。
【0065】
例えば、カバー部材30Bが硬質樹脂により成形されている場合、ヘッド部31の外周面32における摩擦抵抗は小さくなっており、ハンガーパイプ1に物200が吊り具等を介して吊り下げられた場合には、長さ方向Lに沿って吊り具は摺動可能になっている。なお、カバー部材30Bに、カバー部材30Aに形成された窪み39を形成してもよい。
【0066】
また、カバー部材30Bが軟質樹脂又は熱硬化性エラストマ(ゴム)により成形されている場合、ヘッド部31の外周面32における摩擦抵抗は大きくなっており、ハンガーパイプ1に物200が吊り具等を介して吊り下げられた場合には、長さ方向Lに沿って吊り具は摺動しない又は摺動しにくくなっている。
【0067】
また、上記実施の形態において、カバー部材30,30A,30Bは、2つの脚部35,36を有していたが、1つの脚部だけを有するようになっていてもよい。この場合、凸部12,13に対応する位置に凹部35a,36aが設けられるようになっていてもよい。また、上記実施の形態においては、凹部35a,36aが設けられていたが、凹部35a,36aは設けられていなくてもよい。例えば、カバー部材30が弾性変形可能な材料(例えば、軟質樹脂、熱硬化性エラストマ等)により形成されている場合には、パイプ本体10の溝11における凸部12,13との接触により、接触部分においてカバー部材30が変形する。これにより、シート部材20の強固な保持が達成される。
【0068】
また、上記実施の形態においてハンガーパイプ1の長手方向Lにおける両端部は、ハンギングシステム100において、ジョイント130により被されていたが、例えば、パイプ本体10の両端部は、キャップ部材300によって閉鎖されていてもよい。図7Aは、キャップ部材300によって長手方向における端部が閉鎖されたハンガーパイプ1を示す斜視図である。図7Bは、ハンガーパイプ1に対するキャップ部材300の取り付け方法を説明するための図である。
【0069】
キャップ部材300は、例えば、ネジ(連結部材)Sによりがパイプ本体10に取り付けられる。キャップ部材300は、隔壁部10eに形成されたネジSを係止部14に螺合させることにより取り付けられている。パイプ本体10に取り付けられた状態において、係止部14と整合するキャップ部材300の位置に凹部310が形成されている。凹部310の底には、ネジSが挿通される孔311が形成されている。キャップ部材300をパイプ本体10に取り付けた状態において、ネジSの頭部は、凹部310に収容されている。係止部14により、ハンガーパイプ1の使用態様のバリエーションが広がる。
【0070】
また、係止部14は、複数のハンガーパイプ1同士を長手方向L連結する際に使用することもできる。ハンガーパイプ1同士を連結する連結部材は、特に限定されない。
【符号の説明】
【0071】
1…ハンガーパイプ、10…パイプ本体、10a,10b…円弧壁部、10c,10d…側壁部、10e…隔壁部、11…溝、12,13…凸部、14…係止部、20…シート部材、21,22…端部、30,30A,30B…カバー部材、31…ヘッド部、31a…軟質部分、32…外周面、35,36…脚部、35a,36a…凹部、35b,36b…先端部、35c,36c…縁部、39…窪み、100…ハンギングシステム、110…壁面ブラケット、120…パイプ、130…ジョイント、200…物、300…キャップ部材、S…ネジ(連結部材)
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7A
図7B